説明

圧空成形用金型及び圧空成形方法

【課題】優れた外観や賦形性、強度、高い寸法精度を有する成形品の成形を可能とする圧空成形方法の実行に適した圧空成形用金型を提供する。
【解決手段】本発明の圧空成形用金型30は、下側に向かって突出した上型突出部42が外周部に設けられており、圧縮気体を導入する導入孔43を有する上型41、及び、上型突出部42に対向して、上側に向かって突出した下型突出部52が外周部に設けられた下型51から構成され、型締時、上型突出部42と下型突出部52とが圧空成形用材料を介して接し、上型41には上下動する上型可動コア部46が備えられており、下型51には上下動する下型可動コア部56が備えられており、下型可動コア部56の頂面57と対向する上型可動コア部46の底面47には、下型可動コア部56の外縁部と相似形のリング状の突起部48が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧空成形用金型及び圧空成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
箱状の成形品(筐体)を作製する技術として、現在、射出成形法が一般的である。ところで、最近の電子部品や自動車内装部品においては、薄肉、軽量化や、高級感を出すためのデザイン性が、強く求められている。然るに、1.5mm以下の厚さを有する成形品を射出成形法に基づき成形しようとした場合、成形品の面積にも依るが、屡々、射出成形法において使用する金型に設けられたキャビティ内を溶融熱可塑性樹脂で完全には充填できない。このような問題を解決するための方法として、分子量が低く、充填性に優れた熱可塑性樹脂を用いる方法があるが、靭性不足に起因した成形品の割れ等の不具合が発生している。また、別の方法として、ゲート点数を増やして、キャビティ内への溶融熱可塑性樹脂の充填時の流動距離を短くする方法があるが、ウェルドラインが多く発生し、強度が低下したり、外観不良を招いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−166436号公報
【特許文献2】特開平08−052796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
射出成形方法における問題点を解決し、箱状の成形品を作製する方法として、圧空成形方法が考えられる。圧空成形方法は、例えば、特開平10−166436号公報や特開平08−052796号公報から周知である。しかしながら、圧空成形方法は、雑貨や食品容器類、電灯カバー類の成形に適用されているものの、成形品の外観や賦形性、強度、寸法精度の観点から、電子機器や電子部品、自動車内装部品等の成形に適用された例は、本発明者が調べた限り、知られていない。
【0005】
従って、本発明の目的は、優れた外観や賦形性、強度、高い寸法精度を有する成形品の成形を可能とする圧空成形方法、及び、係る圧空成形方法の実行に適した圧空成形用金型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本発明の圧空成形用金型は、
下側に向かって突出した上型突出部が外周部に設けられており、圧縮気体を導入する導入孔を有する上型、及び、
上型突出部に対向して、上側に向かって突出した下型突出部が外周部に設けられた下型、
から構成され、型締時、上型突出部と下型突出部とが圧空成形用材料を介して接する圧空成形用金型であって、
上型には、上下動する上型可動コア部が備えられており、
下型には、上下動する下型可動コア部が備えられており、
下型可動コア部の頂面と対向する上型可動コア部の底面には、下型可動コア部の外縁部と相似形のリング状の突起部が設けられていることを特徴とする。
【0007】
上記の目的を達成するための本発明の圧空成形方法は、
下側に向かって突出した上型突出部が外周部に設けられており、圧縮気体を導入する導入孔を有する上型、及び、
上型突出部に対向して、上側に向かって突出した下型突出部が外周部に設けられた下型、
から構成され、
上型には、上下動する上型可動コア部が備えられており、
下型には、上下動する下型可動コア部が備えられており、
下型可動コア部の頂面と対向する上型可動コア部の底面には、下型可動コア部の外縁部と相似形のリング状の突起部が設けられている圧空成形用金型を用いた圧空成形方法であって、
上型可動コア部を上方に配置し、下型可動コア部を下方に配置し、圧空成形用材料を下型突出部上に配して、圧空成形用材料を加熱し、次に、
上型と下型とを型締めして、加熱された圧空成形用材料を介して上型突出部と下型突出部とを接した状態とした後、
上型可動コア部を下降させ、下型可動コア部を上昇させ、圧空成形用材料を上型可動コア部及び下型可動コア部で挟み、次いで、圧空成形用材料を上型可動コア部及び下型可動コア部で挟んだ状態で、上型可動コア部及び下型可動コア部を最下降位置まで下降させ、次いで、
導入孔から圧縮気体を導入して圧空成形用材料を賦形する、
各工程から成ることを特徴とする。
【0008】
本発明の圧空成形方法において、圧縮気体の圧力は1×106Pa乃至5×106Paとすることが好ましい。圧縮気体として、空気を例示することができるが、これに限定するものではなく、例えば、窒素ガス等を用いることもできる。
【0009】
上記の好ましい形態を含む本発明の圧空成形方法にて使用される圧空成形用金型、あるいは又、本発明の圧空成形用金型(以下、これらを総称して、『本発明の圧空成形用金型等』と呼ぶ)において、
下型には、下型可動コア部格納部、及び、下型可動コア部格納部と連通した空所部が設けられており、
下型可動コア部が最下降位置まで下降させられたとき、下型可動コア部は下型可動コア部格納部内に格納され、
上型可動コア部が最下降位置まで下降させられたとき、上型可動コア部の側面と空所部の側面が対向する構成とすることが好ましい。そして、このような好ましい形態を含む本発明の圧空成形方法にあっては、
前記導入孔から圧縮気体を導入して圧空成形用材料を賦形する工程においては、上型可動コア部の側面と空所部の側面との間に位置する圧空成形用材料の部分と、上型可動コア部の側面との間に、圧縮気体を導入し、以て、上型可動コア部の側面と空所部の側面との間に位置する圧空成形用材料の部分が空所部の側面に押し付けられる形態とすることが好ましい。
【0010】
また、上記の好ましい構成を含む本発明の圧空成形用金型等にあっては、上型可動コア部及び下型可動コア部によって圧空成形用材料を挟んだとき、上型可動コア部の底面と下型可動コア部の頂面上に位置する圧空成形用材料の部分との間には隙間が存在することが望ましい。隙間が存在することで、上型可動コア部の底面と圧空成形用材料とが接触することが無くなり、しかも、下型可動コア部の頂面上に位置する圧空成形用材料の部分と下型可動コア部の頂面との間に圧縮気体が巻き込まれることを防止できる結果、成形品に一層優れた外観を付与することができる。尚、この隙間として、0.5mm乃至5mmを例示することができる。
【0011】
以上に説明した好ましい構成を含む本発明の圧空成形用金型等にあっては、下型可動コア部の頂面上には剥離促進層が形成されている形態とすることができ、この場合、剥離促進層は、SiC層、TiC層、TiN層、CrN層、DLC層、TiAlN層、TiSin層、AlCrN層、CrSiN層、TiBN層、AlCrSiN層、AlZrN層、AlZrSiN層及びCrBN層から成る群から選択された少なくとも1層から成る形態とすることができる。これによって、下型可動コア部の頂面から成形品を容易に剥離することができる結果、優れた外観、高い寸法精度を有する成形品の成形が可能となる。
【0012】
更には、以上に説明した好ましい構成、形態を含む本発明の圧空成形用金型等にあっては、圧空成形用材料と接する下型可動コア部の頂面の少なくとも一部にはマット処理が施されている形態とすることができる。これによって、圧空成形用材料と接する下型可動コア部の頂面の少なくとも一部に形成されたマット柄を、圧空成形用材料に転写することができるし、下型可動コア部の頂面から成形品を容易に剥離することができる結果、優れた外観、高い寸法精度を有する成形品の成形が可能となる。マット処理を施すためには、サンドブラスト装置を用いて、下型可動コア部の頂面に、ガラスビーズ、セラミック粒子等を圧力約0.2MPaの圧縮空気を用いて吹き付ければよい。表面粗さとして、JIS B−0601:2001で規定されるRzで3μm乃至50μmの範囲を挙げることができ、これによって、好ましいマット柄の質感を得ることができる。尚、このようにマット柄を圧空成形用材料に転写する際、圧空成形用材料と接する下型可動コア部の温度を、圧空成形用材料のガラス転移温度Tg以上とすることが好ましい。ここで、圧空成形用材料が、例えば、アクリル系樹脂層(具体的には、例えば、PMMA樹脂層)とポリカーボネート樹脂層の積層構造を有する場合であって、PMMA樹脂層にマット柄を付与する場合、PMMA樹脂のガラス転移温度である105゜C以上とすればよいし、ポリカーボネート樹脂層にマット柄を付与する場合、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度である145゜C以上とすればよい。あるいは又、圧空成形用材料がポリカーボネート樹脂層単層の場合、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度である145゜C以上とすればよい。そして、導入孔から圧縮気体を導入して圧空成形用材料を賦形するので、成形品全体を容易に圧縮気体で冷却することができる。
【0013】
以上に説明した好ましい構成、形態を含む本発明の圧空成形方法において、圧空成形用材料はポリカーボネート樹脂層を有することが好ましく、更には、この場合、圧空成形用材料は、アクリル系樹脂層とポリカーボネート樹脂層の積層構造を有することが好ましく、更には、これらの場合、ポリカーボネート樹脂層の外面(例えば、箱状の形状を有する成形品の内面を構成する面)の少なくとも一部分には印刷が施されていることが好ましい。そして、これらの場合、ポリカーボネート樹脂層が上型可動コア部と接することが好ましく、あるいは又、圧空成形用材料は、ポリカーボネート樹脂層の一方の面に、厚さが50μm乃至120μmのアクリル系樹脂層が共押出しによって積層されて成り、総厚が0.5mm乃至1.5mmであり、アクリル系樹脂層の鉛筆硬度が2H以上であることが望ましい。アクリル系樹脂層上にはハードコート層が形成されていてもよい。ハードコート層の形成は、成形に使用する前の圧空成形用材料に対して行ってもよいし、成形品に対して行ってもよい。
【0014】
本発明の圧空成形方法によって得られる成形品は、例えば、
矩形の平面形状を有する底面、及び、底面の外縁部から上方に延びる側面を有し、継ぎ目の無い(シームレスの)箱状の成形品であって、
底面の縦方向の長さは、1cm乃至1m、好ましくは、5cm乃至35cmであり、横方向の長さは、1cm乃至80cm、好ましくは、5cm乃至35cmであり、
底面の厚さは、0.5mm乃至1.5mm、好ましくは、0.7mm乃至1.2mmであり、
外面の鉛筆硬度は、2H以上、好ましくは、3H以上であり、
反り量は、0.4mm以下、好ましくは、0.3mm以下である。
【0015】
成形品は、例えば、上述したとおり、箱状の形状を有する。即ち、成形品の外観は、例えば、直方体であるが、側面と側面とが交わる部分は丸みを帯びていてもよい。即ち、底面は矩形の平面形状を有するが、この矩形の平面形状の四隅が丸みを帯びていてもよい。また、底面と側面とが交わる部分は丸みを帯びていてもよい。
【0016】
成形品は、上述したとおり、ポリカーボネート樹脂から成形されている形態とすることができ、更には、外側に位置するアクリル系樹脂層、及び、内側に位置するポリカーボネート樹脂層の積層構造を有する材料から成形されている形態とすることができ、この場合、アクリル系樹脂層の厚さは50μm乃至120μmであることが望ましく、更には、これらの場合、ポリカーボネート樹脂層の表面(例えば、箱状の形状を有する成形品の内面)の少なくとも一部分には印刷が施されている形態とすることが好ましい。ポリカーボネート樹脂は、高い靱性を有することが好ましく、具体的には、ISO179に規定されたシャルピー衝撃強さ(ノッチ付き)が50kJ/m2以上の値を有することが好ましい。また、ポリカーボネート樹脂の数平均分子量は、2×104以上であることが望ましい。尚、PMMAのシャルピー衝撃強さは2kJ/m2以下であり、高流動性のポリカーボネート樹脂のシャルピー衝撃強さは9kJ/m2以下である。
【0017】
成形品から電子機器や電子部品、自動車内装部品を構成することができ、具体的には、携帯電話やスマートフォンの筐体の他、タブレット型の含むパーソナルコンピュータの筐体、PDA(携帯情報端末,Personal Digital Assistant)の筐体、携帯型の音楽プレーヤの筐体、ゲーム機の筐体、電子ブックの筐体、電子辞書の筐体、デジタルカメラやビデオカメラの筐体、テレビジョン受像機の筐体、自動車用のヒータ等のコントロールパネルやスイッチ類、木目パーツの筐体を例示することができる。成形品から携帯電話やスマートフォンの筐体を構成する場合、筐体に設けられた透明な窓部分を成形品の透明な部分から構成し、筐体のそれ以外の部分を成形品の印刷された部分から構成すればよく、この場合、例えば、黒色インクを用いてポリカーボネート樹脂層の表面を印刷すればよい。透明なアクリル系樹脂層を介してポリカーボネート樹脂層の印刷面を眺めるので、印刷面の見栄えが格段に向上する。尚、筐体に設けられた透明な窓部分の下方には、通常、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス表示装置等が配される。成形品にプレス加工又はNC加工を施して、所望の外形形状への加工、穴部の加工等を行ってもよい。
【0018】
成形品は、箱状の基体を内側に備えている構成とすることができる。ここで、基体を構成する材料として、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金を挙げることができるし、あるいは又、基体として、例えば、射出成形法に基づき熱可塑性樹脂から作製、成形された成形品を挙げることもできる。尚、この場合、成形品の裏面を基体(箱状であってもよいし、箱状でなくともよい)に、接着剤あるいは粘着剤を用いて接着してもよいし、あるいは又、超音波接合法に基づき接着してもよい。箱状の基体に突起部やスナップ部、切欠部、凹部、印籠構造部等を設けることで、他の部品への取り付け、他の部品との嵌合等を容易に行うことができる。そして、これによって、ASSY(アッシー)化を図ることができる。
【0019】
鉛筆硬度の測定は、JIS K5600−5−4:1999に準拠して行えばよい。また、反りは、成形品の底面にて測定すればよく、23゜C、相対湿度50%の環境に、24時間、放置した後の平面度(JIS B0419−1991に準拠)と、85゜C、相対湿度85%、120時間の環境試験を実行した後、23゜C、相対湿度50%の環境に、4時間、放置した後の平面度との変化量である。
【0020】
上型可動コア部や下型可動コア部の上下動や上型の上下動は、例えば、油圧シリンダや空気圧シリンダを用いて行うことができる。圧空成形用材料の加熱は、例えば、ヒータを用いて行えばよい。圧空成形用金型それ自体は、周知の構成、構造を有し、周知の材料、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金、炭素鋼等から作製すればよく、耐久性の観点から、炭素鋼から作製することが好ましい。リング状の突起部を含む上型可動コア部や下型可動コア部は、例えば、圧空成形用金型を構成する材料と同じ材料から作製すればよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の圧空成形用金型あるいは圧空成形方法において使用される圧空成形用金型においては、上型可動コア部及び下型可動コア部が設けられており、成形品の成形時、上型可動コア部及び下型可動コア部によって圧空成形用材料を挟むので、優れた賦形性、優れた外観、高い印刷位置精度、高い寸法精度を有する成形品の成形が可能となる。しかも、成形品を構成する材料の選択自由度が高いが故に、高強度を有する材料を選択することができ、高強度の成形品を成形することができる。加えて、一層低い圧力の圧縮気体を用いることができるので、高い安全性を得ることができるし、金型強度を低くすることができるので金型製作コストの低減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、実施例1の圧空成形用金型の型開き時の模式的な端面図である。
【図2】図2は、実施例1の圧空成形方法を説明するための圧空成形用金型等の端面図である。
【図3】図3は、図2に引き続き、実施例1の圧空成形方法を説明するための圧空成形用金型等の端面図である。
【図4】図4は、図3に引き続き、実施例1の圧空成形方法を説明するための圧空成形用金型等の端面図である。
【図5】図5は、図4に引き続き、実施例1の圧空成形方法を説明するための圧空成形用金型等の端面図である。
【図6】図6は、図5に引き続き、実施例1の圧空成形方法を説明するための圧空成形用金型等の端面図である。
【図7】図7は、図6に引き続き、実施例1の圧空成形方法を説明するための圧空成形用金型等の端面図である。
【図8】図8は、図7に引き続き、実施例1の圧空成形方法を説明するための圧空成形用金型等の端面図である。
【図9】図9の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例1の成形品の模式的な断面図、及び、所望の外形形状への加工前の成形品の模式的な平面図である。
【図10】図10は、実施例2の圧空成形用金型の型開き時の模式的な端面図である。
【図11】図11の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例5及び実施例6の成形品の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。
【実施例1】
【0024】
実施例1は、本発明の圧空成形用金型及び本発明の圧空成形方法に関する。
【0025】
実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例6における成形品10は、矩形の平面形状を有する底面11、及び、底面11の外縁部から上方に延びる側面12を有し、継ぎ目の無い(シームレスの)箱状の成形品である。そして、底面11の縦方向の長さは、1cm乃至1m、好ましくは、5cm乃至35cmであり、横方向の長さは、1cm乃至80cm、好ましくは、5cm乃至35cmであり、底面の厚さは、0.5mm乃至1.5mm、好ましくは、0.7mm乃至1.2mmであり、外面の鉛筆硬度は、2H以上、好ましくは、3H以上であり、反り量は、0.4mm以下、好ましくは、0.3mm以下である。より具体的には、底面11の縦方向の長さ(外寸法)は114.0mmであり、横方向の長さ(外寸法)は54.0mmであり、底面11及び側面12の厚さは1.0mmである。側面12と側面12とが交わる部分は丸みを帯びており、底面11と側面12とが交わる部分も丸みを帯びている。丸みの半径を1.5mmとした。尚、実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例4における成形品10の模式的な断面図を図9の(A)に示す。
【0026】
実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例6における成形品10は、外側に位置するアクリル系樹脂層、及び、内側に位置するポリカーボネート樹脂層の積層構造を有する圧空成形用材料21から成形されている。尚、アクリル系樹脂層の厚さは50μm乃至120μmであることが望ましく、具体的には、アクリル系樹脂層の厚さは0.06mmであり、ポリカーボネート樹脂層の厚さは0.94mmである。また、ポリカーボネート樹脂層の表面の少なくとも一部分には(具体的には、一部分には)、黒色のインクを用いて印刷が施されている。実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例6における成形品10からスマートフォンの筐体が構成される。ここで、成形品(筐体)10には透明な窓部分13が設けられており、窓部分13は圧空成形用材料21の透明な部分から構成されている。また、成形品(筐体)10のそれ以外の部分は圧空成形用材料21の印刷された部分(印刷部分14)から構成されている。最終的な成形品の組立後にあっては、透明な窓部分13の下方には、タッチパネル機能を有するITO電極付きのPETフィルム、及び、OCA(Optical Clear Adhesive)テープを介して、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス表示装置が配される。
【0027】
実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例6において、圧空成形用材料21は、上述したように、アクリル系樹脂層とポリカーボネート樹脂層の積層構造を有し、ポリカーボネート樹脂層の外面の少なくとも一部分(具体的には、外面の一部分)には、予め印刷が施されている。そして、ポリカーボネート樹脂層が上型可動コア部46と接し、アクリル系樹脂層が下型可動コア部56と接するように配される。圧空成形用材料21は、ポリカーボネート樹脂層の一方の面に、厚さが50μm乃至120μmのアクリル系樹脂層が共押出しによって積層されて成り、総厚が0.7mm乃至1.5mmであり、アクリル系樹脂層の鉛筆硬度が2H以上であり、より具体的には、上述したとおりである。
【0028】
型開きした状態を図1の模式的な端面図に示すように、実施例1の圧空成形用金型30は、
下側に向かって突出した上型突出部42が外周部に設けられており、圧縮気体を導入する導入孔43を有する上型41、及び、
上型突出部42に対向して、上側に向かって突出した下型突出部52が外周部に設けられた下型51、
から構成され、型締時、上型突出部42と下型突出部52とが圧空成形用材料21を介して接する圧空成形用金型である。そして、
上型41には、上下動する上型可動コア部46が備えられており、
下型51には、上下動する下型可動コア部56が備えられており、
下型可動コア部56の頂面57と対向する上型可動コア部46の底面47には、下型可動コア部56の外縁部と相似形のリング状の突起部48が設けられている。
【0029】
実施例1の圧空成形用金型にあっては、更に、
下型51には、下型可動コア部格納部54、及び、下型可動コア部格納部54の上方に位置し、下型可動コア部格納部54と連通した空所部53が設けられており、
下型可動コア部56が最下降位置まで下降させられたとき、下型可動コア部56は下型可動コア部格納部54内に格納され、
上型可動コア部46が最下降位置まで下降させられたとき、上型可動コア部46の側面46Aと空所部53の側面53Aが対向する。
【0030】
また、上型可動コア部46及び下型可動コア部56によって圧空成形用材料21を挟んだとき、上型可動コア部46の底面47と、下型可動コア部56の頂面57上に位置する圧空成形用材料21の部分との間には、隙間が存在する。隙間は、リング状の突起部48の高さに相当する。
【0031】
圧縮気体は空気から成り、導入孔43は図示しない配管を介して、図示しないエアーコンプレッサーに接続されている。上型41の上下動及び上型可動コア部46の上下動は、図示しない第1油圧シリンダ及び第2油圧シリンダ31を用いて行うことができるし、下型可動コア部56の上下動は、第3油圧シリンダ33を用いて行うことができる。参照番号32は、第2油圧シリンダ31を駆動するためのオイルであり、参照番号34は、第3油圧シリンダ33を駆動するためのオイルである。圧空成形用材料21の加熱は、図示しないヒータを用いて行えばよい。圧空成形用金型30それ自体は、周知の構成、構造を有し、炭素鋼から作製されている。リング状の突起部48を含む上型可動コア部46、及び、下型可動コア部56は、圧空成形用金型30を構成する材料と同じ材料から作製されている。下型可動コア部56の大きさは、112.0mm×52.0mmである。また、上型可動コア部46の底面47に設けられたリング状の突起部48の外寸法も、112.0mm×52.0mmである。リング状の突起部48の高さを2.0mmとした。リング状の突起部48の平面形状は「ロ」の字状である。また、図5に示すように、上型可動コア部46の側面46Aと空所部53の側面53Aとの間の隙間の距離(間隔,LS)をLS=1.0mm とした。尚、成形すべき成形品の厚さ(あるいは、多少のクリアランスを加えた厚さ)をtSとしたとき、(LS−tS)の値として、具体的には、0mm乃至0.5mmを例示することができる。
【0032】
以下、実施例1の圧空成形方法の説明を行うが、説明に先立ち、先ず、実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例6において用いた圧空成形用材料21の製造についての説明を行う。
【0033】
ポリカーボネート樹脂を押し出す押出成形機(メイン押出機)として、バレル直径65mm、スクリューの長さ/直径比=35のものを使用し、シリンダー温度を270゜Cとした。また、被覆層を構成するアクリル系樹脂層を押し出す押出成形機(サブ押出機)として、バレル直径32mm、スクリューの長さ/直径比=32のものを使用し、シリンダー温度を250゜Cに設定した。そして、2種類の樹脂を同時に溶融押し出しして積層するために、フィードブロックを使用した。ポリカーボネート樹脂として、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、商品名:ユーピロンE−2000(数平均分子量:2.8×104)を用いた。そして、ポリカーボネート樹脂層の片面にアクリル系樹脂層を積層した。ダイヘッド内の温度を260゜Cとし、ダイ内で積層一体化された樹脂を、鏡面仕上げされた横型配置の3本のポリッシングロールに導いた。尚、第1番ロールの温度を110゜C、第2番ロールの温度を140゜C、第3番ロールの温度を185゜Cに設定した。そして、第1番ロールと第2番ロールとの間でバンクを形成した後、第2番ロールと第3番ロールとの間を通過させた。引取り速度を1.5m/分として、厚さ1.0mmの共押出シート(圧空成形用材料21)を押し出した。このとき、メイン押出機とサブ押出機の回転数を、吐出量比がメイン押出機/サブ押出機=470/30となるように設定した。尚、1.0mm厚さの共押出シート(圧空成形用材料21)におけるアクリル系樹脂層の厚さは60μmであった。
【0034】
こうして得られた圧空成形用材料21のポリカーボネート樹脂層側に、帝国インキ株式会社製造製IPX−HFインク(黒色インク)を用いてスクリーン印刷を行い、80゜Cにて加熱・硬化させた後、ピン固定用の穴22(図9の(B)参照)を4箇所設けた。
【0035】
以下、図2〜図8を参照して、実施例1の圧空成形方法の説明を行う。尚、圧空成形機(エヌケイエンタープライズ株式会社製)に圧空成形用金型30を取り付けておく。圧空成形機は、搬入ゾーン、加熱ゾーン、プレスゾーン、搬出ゾーンから構成されている。以下の実施例においても同様である。
【0036】
[工程−100]
先ず、上型可動コア部46を上方に配置し、下型可動コア部56を下方に配置し、圧空成形用材料21を下型突出部52上に配する。具体的には、圧空成形用材料21に設けられたピン固定用の穴22に嵌合するピン55を下型突出部52に設けておく。尚、上型突出部42には、ピン55と嵌合する孔から成る嵌合部45が設けられている。ピン55よりも外側の下型突出部52の部分、及び、嵌合部45よりも外側の上型突出部42の部分には、それぞれ、連続した溝部(図示せず)が設けられ、溝部には「O」リング(図示せず)が挿入されており、上型突出部42と下型突出部52とを接した状態としたとき、密閉状態が保持できる構造となっている。そして、圧空成形機の搬入ゾーンにおいて、例えば、作業者が圧空成形用材料21に設けられたピン固定用の穴22に下型突出部52に設けられたピン55を嵌合させることで、圧空成形用材料21を下型突出部52上に配する(図2参照)。圧空成形用材料21のポリカーボネート樹脂層が上型可動コア部46と対向し、アクリル系樹脂層が下型可動コア部56と接するように、圧空成形用材料21を下型突出部52上に配する。金型温度を80゜Cに設定した。そして、圧空成形用材料21が配された下型51を圧空成形機の加熱ゾーンへ搬送し、圧空成形用材料21をヒータ(図示せず)によって150゜Cまで加熱する。尚、下型可動コア部56を、下型可動コア部格納部54に格納した状態としてもよいし、圧空成形用材料21と接しない程度に上昇させておいてもよい。
【0037】
[工程−110]
圧空成形機のプレスゾーンにおいては、上型可動コア部46は上方に配置され、上型41も上方に配置された状態にある。そして、圧空成形用材料21が配された下型51をプレスゾーンへ搬送し(図3参照)、第1油圧シリンダを作動させて上型41を下降させる。こうして、上型41と下型51とを型締めして、加熱された圧空成形用材料21を介して上型突出部42と下型突出部52とを接した状態とし、密閉状態とする(図4参照)。
【0038】
[工程−120]
その後、第2油圧シリンダ31を作動させて上型可動コア部46を下降させ、第3油圧シリンダ33を作動させて下型可動コア部56を上昇させ、圧空成形用材料21を上型可動コア部46及び下型可動コア部56で挟む(図5参照)。次いで、圧空成形用材料21を上型可動コア部46及び下型可動コア部56で挟んだ状態で、第2油圧シリンダ31及び第3油圧シリンダ33を作動させて、上型可動コア部46及び下型可動コア部56を最下降位置まで下降させる(図6参照)。
【0039】
[工程−130]
その後、導入孔43から圧縮気体(圧縮空気であり、圧力は2×106Pa)を、2秒間、導入して、圧空成形を行い、圧空成形用材料21を賦形する(図7参照)。尚、この工程にあっては、上型可動コア部46の側面46Aと空所部53の側面53Aとの間に位置する圧空成形用材料21の部分と、上型可動コア部46の側面46Aとの間に、圧縮気体を導入する。そして、その結果、上型可動コア部46の側面46Aと空所部53の側面53Aとの間に位置する圧空成形用材料21の部分が空所部53の側面53Aに押し付けられる。
【0040】
[工程−140]
その後、第2油圧シリンダ31を作動させて上型可動コア部46を上方に移動させ、更に、第1油圧シリンダを作動させて上型41を上方に移動させ、型開きする(図8参照)。この状態における成形品(所望の外形形状への加工前の成形品)の模式的な平面図を図9の(B)に示す。そして、圧空成形用材料21(成形品10)が配された下型51を圧空成形機の搬出ゾーンに搬出し、下型から圧空成形用材料21(成形品10)を取り外す。その後、成形品にプレス加工を施して、所望の外形形状への加工(打ち抜き加工)を行い、成形品を完成させる。
【0041】
得られた成形品は、射出成形品並みの非常に高い賦形性を有しており、底面と側面の交わる部位にエッジが出るほど、空所部53の形状が転写されていた。また、非常に深みのある外観を有していた。アクリル系樹脂層が表側に設けられているにも拘わらず、ポリカーボネート樹脂層との積層物であるため、成形品は、割れることなく打ち抜き加工することができた。しかも、分子量が高いポリカーボネート樹脂を用いているため、1mmの肉厚(側面の厚さは0.6mm)であるにも拘らず、成形品を手で曲げても割れることもなく、高い剛性を有していた。また、アクリル系樹脂層が表側に設けられているため、鉛筆硬度が「2H」と非常に優れた表面硬度を有していた。また、施した印刷の変形やズレも発生していなかった。
【0042】
比較例1として、実施例1の[工程−120]の実行を省略した。即ち、実施例1の[工程−110]に引き続き(但し、下型可動コア部56は、図2に示した状態のままとする)、実施例1の[工程−130]と同様に、導入孔43から圧縮気体(圧縮空気であり、圧力は2×106Pa)を、2秒間、導入して、圧空成形を行い、圧空成形用材料21を賦形した。得られた比較例1の成形品は、底面と側面の交わる部位の転写が悪く、エッジは丸みを帯びていた。また、成形品外周から20mm程度の範囲で印刷が伸ばされており、ズレも大きく発生していた。
【0043】
実施例1の圧空成形用金型あるいは圧空成形方法において使用される圧空成形用金型にあっては、上型可動コア部及び下型可動コア部が設けられており、成形品の成形時、上型可動コア部及び下型可動コア部によって圧空成形用材料を挟むので、優れた賦形性、優れた外観、高い印刷位置精度、高い寸法精度を有する成形品を成形することができる。しかも、成形品を構成する材料の選択自由度が高いが故に、高強度を有する材料を選択することができ、高強度の成形品を成形することができる。加えて、一層低い圧力の圧縮気体を用いることができるので、高い安全性を得ることができるし、金型強度を低くすることができるので金型製作コストの低減を図ることが可能となる。
【実施例2】
【0044】
実施例2は、実施例1の変形である。図10に模式的な端面図を示す実施例2にあっては、下型可動コア部56の頂面57の上には、スパッタリング法にて形成された厚さ1μmのTiN層から成る剥離促進層60が形成されている。この点を除き、実施例2の圧空成形用金型は、実施例1の圧空成形用金型と同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。
【0045】
実施例2にあっては、実施例1の[工程−100]と同様の工程において、金型温度を130゜Cに設定した。また、圧空成形用材料21をヒータによって135゜Cまで加熱した。以上の点を除き、実施例2の圧空成形方法は、実施例1の圧空成形方法と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【0046】
実施例2にあっては、実施例1よりも金型温度を高く設定したので、賦形性が一層向上した。また、下型可動コア部の頂面の上には剥離促進層が形成されているので、離型性が非常に高く、しかも、圧空成形時、圧縮気体の巻き込みも認められなかった。
【実施例3】
【0047】
実施例3は、実施例1〜実施例2の変形である。実施例3にあっては、得られた成形品のアクリル系樹脂層の表面に、紫外線硬化型アクリル樹脂系ハードコート剤をスプレーガンにて約5μmの塗膜厚さとなるように塗工処理を行った。そして、80゜Cでの乾燥後、出力80W/cm2の高圧水銀灯を用い、光源下12cmの位置でコンベアスピード1.5m/分の条件で紫外線を照射してハードコート剤を硬化させた。こうして得られた成形品の鉛筆硬度は「5H」であった。
【0048】
実施例1〜実施例3で得られた成形品と使用した圧空成形用材料の、23゜C、相対湿度50%の環境に、24時間、放置した後の平面度を、JIS B0149−1991に準拠して、三次元測定機により測定した。その後、成形品及び圧空成形用材料に対して、85゜C、相対湿度85%、120時間の環境試験を実行し、その後、23゜C、相対湿度50%の環境に、4時間、放置した後の平面度を三次元測定機により測定した。そして、平面度の変化量を「反り」として求めた。実施例1〜実施例3における変化量は0.2mm以下であった。また、シート状の圧空成形用材料は環境変化によって形状が大きく変化するが、箱型形状の成形品に成形することによって、環境変化によっても形状が変化し難いことを見出した。
【実施例4】
【0049】
実施例4は、実施例1〜実施例3の変形である。実施例4にあっては、圧空成形用材料21と接する下型可動コア部56の頂面57の少なくとも一部(実施例4においては、具体的には、頂面57の全面)に、マット処理が施されている。マット処理を施すために、サンドブラスト装置を用いて、下型可動コア部56の頂面57に、ガラスビーズ、セラミック粒子等を圧力約0.2MPaの圧縮空気を用いて吹き付けた。JIS B−0601:2001で規定される表面粗さRzが20μmとなるように、マット処理を施した。また、マット柄を圧空成形用材料21に転写する際、即ち、実施例1の[工程−120]と同様の工程において、圧空成形用材料21と接する下型可動コア部56を、圧空成形用材料のガラス転移温度Tg以上、具体的には、アクリル系樹脂のガラス転移温度である105゜C以上、より具体的には、120゜Cとした。これによって、圧空成形用材料21と接する下型可動コア部56の頂面57に形成されたマット柄を、圧空成形用材料21のアクリル系樹脂層に転写することができたし、好ましいマット柄の質感を得ることができ、しかも、下型可動コア部56の頂面57から成形品を容易に剥離することができた結果、優れた外観、高い寸法精度を有する成形品の成形が可能となった。
【実施例5】
【0050】
実施例5は、実施例1〜実施例4の変形である。図11の(A)に模式的な断面図を示すように、実施例5にあっては、実施例1〜実施例4の成形品を別部材あるいは別部品に組み込むためのアッシー部品を作製した。即ち、実施例5の成形品は、箱状の基体15を内側に備えている。具体的には、実施例1〜実施例4の成形品の内形に合うように、52.0mm×112.0mmの寸法を有し、肉厚が2.0mmの射出成形品から成る基体15が得られるような射出成形用金型を作製した。尚、別部材あるいは別部品に組み込むために、基体15にボス16を設けた。基体15の平面形状は「ロ」の字状である。
【0051】
基体15の成形材料としてポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製H3000)を用いた。成形収縮率は5/1000であり、基体15と実施例1〜実施例4の成形品とを組み立てた後にも、隙間は生じない。
【0052】
射出成形機として株式会社日本製鋼所製J110ADを用い、樹脂温度280゜C、金型温度80゜C、射出圧8×107Paにて射出成形を行い、基体(射出成形品)15を得た。得られた基体15と実施例1〜実施例4で成形した成形品とを、アクリル系紫外線硬化型接着剤を用いて接合した。アクリル系紫外線硬化型接着剤を硬化させるために、出力80W/cm2の高圧水銀灯を用い、光源下12cmの位置でコンベアスピード1.5m/分の条件で紫外線を照射した。成形品は基体15に強固に接着され、別部材あるいは別部品とのアッシー化が可能となった。
【実施例6】
【0053】
実施例6は、実施例5の変形である。実施例6の成形品の模式的な断面図を図11の(B)に示すが、実施例6の成形品も、箱状の基体17を内側に備えている。具体的には、基体17は、アルミニウムやアルミニウム合金から予め作製され、あるいは又、例えば、射出成形法に基づき熱可塑性樹脂から予め作製、成形されている。幅1.0mm、深さ0.5mmの凹部18が、基体17の外側側面を一周して設けられている。実施例6の成形品の側面は、この凹部18に倣って凹んでいる。基体17の内側面には切欠部19が設けられており、この切欠部19と別部品の突起部とを嵌合させることで、成形品と別部品とのアッシー化が可能である。尚、成形品の裏面を基体17に、接着剤あるいは粘着剤を用いて接着したが、これに限定するものではなく、超音波接合法に基づき接着してもよい。
【0054】
以上、本発明を好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこれらの実施例に限定するものではない。実施例における圧空成形用金型の構成、構造、圧空成形方法の条件、成形品の形状、寸法等は例示であり、適宜、変更することができる。
【符号の説明】
【0055】
10・・・成形品、11・・・成形品の底面、12・・・成形品の側面、13・・・成形品の窓部分、14・・・印刷部分、15,17・・・基体、16・・・ボス、18・・・凹部、19・・・切欠部、21・・・圧空成形用材料、22・・・ピン固定用の穴、30・・・圧空成形用金型、31・・・第2油圧シリンダ、32,34・・・オイル、33・・・第3油圧シリンダ、41・・・上型、42・・・上型突出部、43・・・導入孔、45・・・嵌合部、46・・・上型可動コア部、46A・・・上型可動コア部の側面、47・・・上型可動コア部の底面、48・・・突起部、51・・・下型、52・・・下型突出部、53・・・空所部、53A・・・空所部の側面、54・・・下型可動コア部格納部、55・・・ピン、56・・・下型可動コア部、57・・・下型可動コア部の頂面、60・・・剥離促進層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下側に向かって突出した上型突出部が外周部に設けられており、圧縮気体を導入する導入孔を有する上型、及び、
上型突出部に対向して、上側に向かって突出した下型突出部が外周部に設けられた下型、
から構成され、型締時、上型突出部と下型突出部とが圧空成形用材料を介して接する圧空成形用金型であって、
上型には、上下動する上型可動コア部が備えられており、
下型には、上下動する下型可動コア部が備えられており、
下型可動コア部の頂面と対向する上型可動コア部の底面には、下型可動コア部の外縁部と相似形のリング状の突起部が設けられていることを特徴とする圧空成形用金型。
【請求項2】
下型には、下型可動コア部格納部、及び、下型可動コア部格納部と連通した空所部が設けられており、
下型可動コア部が最下降位置まで下降させられたとき、下型可動コア部は下型可動コア部格納部内に格納され、
上型可動コア部が最下降位置まで下降させられたとき、上型可動コア部の側面と空所部の側面が対向する請求項1に記載の圧空成形用金型。
【請求項3】
上型可動コア部及び下型可動コア部によって圧空成形用材料を挟んだとき、上型可動コア部の底面と下型可動コア部の頂面上に位置する圧空成形用材料の部分との間には隙間が存在することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の圧空成形用金型。
【請求項4】
下型可動コア部の頂面上には剥離促進層が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の圧空成形用金型。
【請求項5】
剥離促進層は、SiC層、TiC層、TiN層、CrN層、DLC層、TiAlN層、TiSin層、AlCrN層、CrSiN層、TiBN層、AlCrSiN層、AlZrN層、AlZrSiN層及びCrBN層から成る群から選択された少なくとも1層から成ることを特徴とする請求項4に記載の圧空成形用金型。
【請求項6】
圧空成形用材料と接する下型可動コア部の頂面の少なくとも一部にはマット処理が施されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の圧空成形用金型。
【請求項7】
下側に向かって突出した上型突出部が外周部に設けられており、圧縮気体を導入する導入孔を有する上型、及び、
上型突出部に対向して、上側に向かって突出した下型突出部が外周部に設けられた下型、
から構成され、
上型には、上下動する上型可動コア部が備えられており、
下型には、上下動する下型可動コア部が備えられており、
下型可動コア部の頂面と対向する上型可動コア部の底面には、下型可動コア部の外縁部と相似形のリング状の突起部が設けられている圧空成形用金型を用いた圧空成形方法であって、
上型可動コア部を上方に配置し、下型可動コア部を下方に配置し、圧空成形用材料を下型突出部上に配して、圧空成形用材料を加熱し、次に、
上型と下型とを型締めして、加熱された圧空成形用材料を介して上型突出部と下型突出部とを接した状態とした後、
上型可動コア部を下降させ、下型可動コア部を上昇させ、圧空成形用材料を上型可動コア部及び下型可動コア部で挟み、次いで、圧空成形用材料を上型可動コア部及び下型可動コア部で挟んだ状態で、上型可動コア部及び下型可動コア部を最下降位置まで下降させ、次いで、
導入孔から圧縮気体を導入して圧空成形用材料を賦形する、
各工程から成ることを特徴とする圧空成形方法。
【請求項8】
圧空成形用金型にあっては、
下型には、下型可動コア部格納部、及び、下型可動コア部格納部と連通した空所部が設けられており、
下型可動コア部が最下降位置まで下降させられたとき、下型可動コア部は下型可動コア部格納部内に格納され、
上型可動コア部が最下降位置まで下降させられたとき、上型可動コア部の側面と空所部の側面が対向し、
前記導入孔から圧縮気体を導入して圧空成形用材料を賦形する工程においては、上型可動コア部の側面と空所部の側面との間に位置する圧空成形用材料の部分と、上型可動コア部の側面との間に、圧縮気体を導入し、以て、上型可動コア部の側面と空所部の側面との間に位置する圧空成形用材料の部分が空所部の側面に押し付けられることを特徴とする請求項7に記載の圧空成形方法。
【請求項9】
圧空成形用材料は、ポリカーボネート樹脂層を有することを特徴とする請求項8に記載の圧空成形方法。
【請求項10】
圧空成形用材料は、アクリル系樹脂層とポリカーボネート樹脂層の積層構造を有することを特徴とする請求項9に記載の圧空成形方法。
【請求項11】
ポリカーボネート樹脂層の外面の少なくとも一部分には印刷が施されていることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の圧空成形方法。
【請求項12】
ポリカーボネート樹脂層が上型可動コア部と接することを特徴とする請求項9乃至請求項11のいずれか1項に記載の圧空成形方法。
【請求項13】
圧空成形用材料は、ポリカーボネート樹脂層の一方の面に、厚さが50μm乃至120μmのアクリル系樹脂層が共押出しによって積層されて成り、総厚が0.5mm乃至1.5mmであり、アクリル系樹脂層の鉛筆硬度が2H以上であることを特徴とする請求項9乃至請求項11のいずれか1項に記載の圧空成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−91267(P2013−91267A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235210(P2011−235210)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【出願人】(597003516)MGCフィルシート株式会社 (33)
【Fターム(参考)】