説明

圧縮ガス式模擬銃における発射威力自律制御装置

【課題】高温下或いは低温下でも威力を安定させることができ、温度差に影響されにくい射撃レスポンスを保持する圧縮ガス式模擬銃における発射威力自律制御装置を提供する。
【解決手段】圧縮ガスを噴射するノズル部を先端に備えたシリンダー、シリンダー内部に設けたピストン、シリンダーの内部の前部に配置して流入した圧縮ガスをノズル部に通ずるガス流路を有するノズルバルブを具備した圧縮ガス式模擬銃において、シリンダー内部に流入した圧縮ガスをノズル部15へ通ずるガス流路24を有するノズルパイプ27をノズルバルブ25の前部に設け、ノズルパイプに対して摺動可能に組み合わせたノズルバルブをノズルパイプから離れる方向へ弾性部材30により付勢し、シリンダー内部に流入した圧縮ガスの圧力が弾性部材の付勢力よりも過大なときに上記ノズルバルブが上記付勢力に抗して移動し、それによって上記ノズルバルブのガス流路を閉じるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮ガス式模擬銃における発射威力自律制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遊戯銃ないしトイガンとして扱われ、また、主としてガスガンとも呼ばれるものには、ボンベ入りの圧縮ガスを銃本体内部のタンクに充填して、弾丸発射などを行う銃があり、この種の銃には、実銃を模して弾丸発射とともにスライドを後退させるいわゆるブローバックメカニズムを搭載したものがある。ブローバックを行う方式には、圧力差を利用して弾丸を発射させる途中でスライド側にブローバックを開始させるノズルバルブを使用するもの(例えば特開2001−66096号等)と、弾丸を発射させた後でスライドのブローバックを行わせるために、圧縮ガス圧力の作用方向を銃身側とスライド側に切り換える開閉弁を持ったもの(例えば特開平6−323786号)がある。
【0003】
こうした圧縮ガスを動力源に使用している模擬銃では、夏季の高温下における圧力の上昇と、冬季の低温下における圧力の低下に見られるように、気温差による気体圧力の変動が著しいという問題がある。年間を通じて適正と考えられる設定を模擬銃に施しても、冬季には威力が下がり、夏季には威力が高まって射撃レスポンスが一定しないという弱点がこの種の銃に付きまとう問題として存在する。特に圧力の上昇による問題は、予期しない衝撃を命中部分に与えることになり、当業界における自主的な取り決めで決められた威力を大幅に上回ることになれば、取り決めの意味がないばかりか、不測の事態を引き起こす原因にもなり得ると考えられるので注意を要する。
【0004】
【特許文献1】特開2001−66096号
【特許文献2】特開平6−323786号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記の点に着目してなされたもので、その課題は、高温下でも、また、低温下でも威力を安定させることができ、温度差に影響されにくい射撃レスポンスを保持し得る圧縮ガス式模擬銃における発射威力自律制御装置を提供することである。また、本発明の他の課題は、発射威力自律制御装置のもたらす威力の安定化によって、圧縮ガス式模擬銃の安全性を高め、従来よりもさらに安心して使用できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するため、本発明は、弾丸を発射させるための銃身と、銃身の後部に位置して全体として銃本体の前後方向へ移動可能に設けられ、銃身後端の装弾部に配置された弾丸に圧縮ガスを噴射するノズル部を先端に備えたシリンダーと、シリンダー内部の後部に配置され、シリンダー内部に流入した圧縮ガスによって、銃本体の前後方向にスライド可能に設けられているスライド部材の移動に伴って後退し、かつ、戻しばねによってスライド部材の移動に伴って前進可能に設けられているピストンと、上記シリンダーの内部の前部にて銃本体の前後方向へ移動可能に設けられ、シリンダー内部に流入した圧縮ガスをノズル部に通ずるガス流路を内部に有するノズルバルブを具備した圧縮ガス式模擬銃において、
シリンダー内部に流入した圧縮ガスをノズル部へ通ずるガス流路を内部に有するノズルパイプを上記ノズルバルブの前部に設けるとともに、ノズルバルブをノズルパイプに対して摺動可能に組み合わせ、かつ、ノズルバルブをノズルパイプから離れる方向へ付勢する弾性部材を配置し、発射操作に伴いシリンダー内部に流入した圧縮ガスの圧力が弾性部材の付勢力よりも過大なときに上記ノズルバルブが上記付勢力に抗して移動し、それによって上記ノズルバルブのガス流路を閉じるように構成するという手段を講じたものである。
【0007】
本発明において圧縮ガスとは、人の生活する温度において気体の性状を示すもの一般を指す文言として使用しており、この意味で圧縮空気も含む。そして、上記の構成における圧縮ガスは、シリンダーの外部からシリンダー内部に導入されるものであり、それによって、所定の位置に装填されている弾丸を発射し、かつまた、スライドにブローバック動作を起こさせるためなどの動力源として利用される。
【0008】
本発明装置を適用する対象は、弾丸を発射させるための銃身と、銃身の後部に位置して全体として銃本体の前後方向へ移動可能に設けられ、銃身後端の装弾部に配置された弾丸に圧縮ガスを噴射するノズル部を先端に備えたシリンダーと、シリンダー内部の後部に配置され、シリンダー内部に流入した圧縮ガスによって、銃本体の前後方向にスライド可能に設けられているスライド部材の移動に伴って後退し、かつ、戻しばね(リコイルスプリング)によってスライド部材の移動に伴って前進可能に設けられているピストンと、上記シリンダーの内部の前部にて銃本体の前後方向へ移動可能に設けられて、シリンダー内部に流入した圧縮ガスをノズル部に通ずるガス流路を内部に有するノズルバルブを具備した圧縮ガス式模擬銃である。
【0009】
上記のような構成を有する圧縮ガス式模擬銃において、圧縮ガスは、シリンダーの外部からシリンダー内部に導入し、シリンダー先端のノズル部から弾丸に向けて噴射することによって弾丸の発射に使われ、その一方では、ピストンを介して、スライドのブローバックに使われる。このシリンダー内部における圧縮ガスの作用は、圧力差を利用して弾丸を発射させる途中でスライド側にブローバックを開始させるノズルバルブを使用する方式であり、従って、前述した公知の技術に属するものを使用することができる。
【0010】
本発明では、シリンダー内部に流入した圧縮ガスをノズル部へ通ずるガス流路を内部に有するノズルパイプを上記ノズルバルブの前部に設けるとともに、ノズルバルブとノズルパイプは摺動可能に嵌合させ、かつ、ノズルバルブは弾性部材によってノズルパイプから離れる方向へ移動可能に付勢するという構成を取っている。従って、圧縮ガスはノズルバルブにその後方から流入するので、ノズルバルブを前方へ押すことになり、その結果ノズルバルブに作用する弾性部材の付勢力と圧縮ガスの圧力が対抗することになるから、圧縮ガスの圧力によって弾性部材の付勢力に打ち克つことができる間は、圧縮ガスの圧力がそのまま弾丸に及ぶので発射が行われる。
【0011】
そして、本発明の装置では、前記の課題を解決するために、発射操作に伴いシリンダー内部に流入した圧縮ガスの圧力が弾性部材の付勢力よりも過大なときに上記ノズルバルブが上記付勢力に抗して移動し、それによって上記ノズルバルブのガス流路を閉じるように構成している。温度上昇によって圧縮ガスの圧力が過大になると、それまでは対抗していた弾性部材の付勢力が負けてノズルバルブが移動し、過大な圧力が弾丸に及ばないようにガス流路を閉じるので、弾性部材によって設定される以上の圧力で弾丸の発射される恐れはない。
【0012】
即ち、本発明の装置は、
・低温、低圧のときは、シリンダー内部のバルブを完全には閉鎖させず、ノズル部側のガス流路における流量の適正化によって、弾速の最大値を規準範囲内に収め、
・高温、高圧のときは、シリンダー内部のバルブを、ガスの圧力、流速等に応じて閉鎖させ、弾速の最大値を規準範囲内に収める、
という発想を実施するものである。
上記シリンダー内部のバルブについて、その作動をガスの圧力、流速等に応じて制御するための具体的手段は、ノズルバルブとノズルパイプのガス流路のサイズ、ノズルバルブの移動距離、バルブノズルを付勢する弾性部材の弾性力であり、これらにさらに次に述べる排気口が組み合わされる。
【0013】
本発明の装置において、圧縮ガスの圧力が弾性部材の付勢力よりも過大なときに、上記圧縮ガスをシリンダーの外部へ排気するために、ノズルバルブ外面とシリンダー内面との間に空間部を設けるとともに、排気口をシリンダー前部側の内面に設けることができる。これらの空間部ないし排気口を設けなくても、圧力上昇が顕著でない範囲では、所要の効果を奏するものであるが、圧力上昇が顕著になると動作が不安定になり易いという傾向が見られる。そこで、上記圧縮ガスの排気構成を付加することによって、圧縮ガスが流入するシリンダー後部の圧力に対してシリンダー前部の圧力差を確保し、ノズルバルブの高速作動を安定させながら弾速の最大値を規準範囲内に収めるようにするものである。
【0014】
ノズルバルブが中心に貫通状のガス流路を有する筒状のもので、ノズルパイプは、ノズルバルブのガス流路に設けられた弁座に接触したときにガス流路を閉じる弁頭部を後部に有し、かつ、上記弁頭部が弁座に接触しないときにはノズルバルブのガス流路と通じるガス流路を、上記弁頭部よりも前部に有する筒状とすることは、選択し得る様々な形態の中でもっとも望ましい形態である。この形態では、ノズルバルブのガス流路もノズルパイプのガス流路も筒の中心に位置するので、圧縮ガスはほぼ一直線上に弾丸に向かうことになる。しかしながら、ノズルバルブの太さが十分に大きい場合、或いは設計上筒の中心を外す必要がある場合には、ガス流路を筒の中心に配置しなくても実施できることは当然である。また、ノズルパイプに直線的貫通構造が要求されないのと同様に、ノズルバルブについても直線的貫通構造が要求されるものではない。
【0015】
ノズルパイプがシリンダー内部のノズル部直後に配置されており、付け根部分は、ノズルバルブに後部を接触させて配置した弾性部材の前部を受け止めるばね受けになっているという形態は、弾性部材によってノズルパイプを固定することができるもので、これも実施し易い形態である。これに対して、ノズルパイプがシリンダー内部のノズル部直後に、一体成型によってシリンダーの一部として形成し、ノズルバルブに後部を接触させて配置した弾性部材の前部を、その周囲の適当な箇所にて受け止めるという形態も容易に実施可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明は以上のように構成され、ノズルバルブに作用する弾性部材の付勢力と圧縮ガスの圧力が対抗作用するものであるから、圧縮ガス式模擬銃における発射威力自律制御装置として、高温下でも、また、低温下でも威力を比較的安定させることができ、温度差に影響されにくい射撃レスポンスを保持し得るという効果を奏する。また、本発明によれば、模擬銃を使用する季節や土地によって気温が高い状況においても、発射に関わる圧縮ガスの圧力の上昇を抑制して圧縮ガス式模擬銃における安全性を高めるので、安心して圧縮ガス式模擬銃を使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図示の実施形態を参照して本発明の圧縮ガス式模擬銃における発射威力自律制御装置について、より詳細に説明する。図1は、本発明の発射威力自律制御装置を適用した圧縮ガス式模擬銃10を示しており、符号11は各部材及び部品等を取り付ける銃本体、12は筒状構造を有し、弾丸を発射させるための銃身であり、後部に弾丸13を装填する装弾部14が設けられている。
【0018】
銃本体11には、銃身12の後部に位置して全体として銃本体の前後方向へ移動可能に設けられ、銃身後端の装弾部14に対して圧縮ガスを噴射するノズル部15を先端に備えたシリンダー16が設けられている。銃本体11の上部には、スライド部材17が銃本体11の前後方向へスライド可能に設けられており、シリンダー内部の後部には、シリンダー内部に流入した圧縮ガスによって、スライド部材17の移動に伴って後退し、かつ、戻しばね(リコイルスプリング)18によって上記のスライド部材17の移動に伴って前進可能に設けられたピストン20が配置されている(図2参照)。上記スライド部材17、戻しばね18及びリコイルガイド19を含むスライド機構は公知であり、それを利用することができるので詳細な説明は省略する。
【0019】
上記のシリンダー16は、先端に前記のノズル部15に対して、後端にて開放された構造を有しており、ピストン20はその最大後退時にシリンダー16の後端開口よりもさらに後退することができる。これに対してピストン20の前進時には、スライド部材17の戻しばね(リコイルスプリング)18の付勢力が利用され、スライド部材17の移動に伴って前方へ戻される。符号21はストッパー、22はO−リングを示している。また、シリンダー16の中央部においてピストン20の前進位置における前端部分と、後述するノズルバルブ25の後退位置における後端部分との間には圧縮ガスの流入口23が開口している。
【0020】
上記シリンダー16の内部の前部には、銃本体11の前後方向へ移動可能に設けられていて、シリンダー内部に流入した圧縮ガスをノズル部15に通ずるガス流路24を内部に有するノズルバルブ25を具備している。図示したノズルバルブ25は筒状のもので、ガス流路24は中心を貫通しており、筒内径は前方で拡大し、内径の段差部分に逆テーパー状の段部が設けられ、この段部はガス流路24に設けられた弁座26を構成している。
【0021】
上記シリンダー16の内部の最前部にはノズルパイプ27が配置されている。ノズルパイプ27は、ノズルバルブ25に設けられた上記の弁座26に接触してガス流路24を閉じる弁頭部28を最後部に有し、図示の弁頭部28は便座26と面接触するように逆テーパー状に形成されている。また、ノズルパイプ27には、上記弁頭部28が弁座26に接触しないときにはノズルバルブ25のガス流路と通じるガス流路29を、上記弁頭部よりも前部に有している。ノズルパイプ27もおおむね筒状であるが、後端が弁頭部28によって閉じているため、ガス流路29の後端において軸方向から半径方向に向けられ、側面に開口している。
【0022】
図示のノズルパイプ27は、付け根部分27aがフランジ状になっており、ノズルバルブ25の前端部25aに後部を接触させて配置したコイルばねより成る弾性部材30の前部を受け止めるばね受けになっている。この構造の結果、ノズルパイプ27は、弾性部材30によってシリンダー16の前部の段部16aに押し付けられて固定されている。しかし、ノズルパイプ27を別部品とせず、シリンダー内部のノズル部直後に、一体成型によって設けても良いことは、前述したとおりである。
【0023】
本発明の装置では、さらに、上記ノズルバルブ25の外面とシリンダー16の内面との間に空間部31を設けるとともに、排気口32をシリンダー前部側の内面に設けた構成を有している。図示の場合、ノズルバルブ25の前端部25aとノズルパイプ27のフランジ状の付け根部分27aの間が上記空間部31を構成しており、排気口32は空間部31とシリンダー16の外部とを通じており、圧縮ガスは、最終的には、銃本体11の外部に排出される。なお、シリンダー16の内部の前部はノズルバルブ25等を配置する前室部16aとして、同じく内部の口部はピストン20を配置する後室部16bとして、前室部16aよりも大径に形成されている。
【0024】
上記のごとく構成された発射威力自律制御装置部33が組み込まれた圧縮ガス式模擬銃10について説明を捕捉すると、符号34は液化ガスが充填されたタンク、35はその気化ガス出口の開閉弁であり、非操作時はばね37によって閉弁しており、ノッカー36の打撃によって開弁する。38はハンマーであって、引き起こされて蓄力状態になるハンマースプリング39によってノッカー36を打撃する方向へ付勢され、トリガー40の操作によって作動するトリガーバー41、シアー42…を介して打撃動作を行う。なお、具体的な構造に関する公知の構成について、これ以上の説明は省略するが、シリンダー16の移動に伴ってスライド部材17以下が後退することによって、マガジン43のリップ44にて押えられていた弾丸13の装弾部14への装填が行われることになる。
【0025】
このように構成されている本発明について次に説明する。図3〜図8は低温時における動作に関するもので、この例においては気温約0〜30℃に設定されている。図3は何も操作しない状態であり、従って図1及び図2と一致している。図4はハンマー38が引き起こされた状態であり、スライド部材17のブローバックによってこの状態になるが、初弾発射時にはスライド部材17を手動で後退させることでハンマー38を引き起こして、弾丸13の装填を行い、発射準備完了状態にする。
【0026】
トリガー40を引くと(図5)、シアー42等を介してハンマー38がハンマースプリング39によって回転し、ノッカー36を介して開閉弁35が打撃されることによって開弁し、タンク34内部の気化ガスがシリンダー16の内部にその中間部分に位置する流入口23から流入する。流入した圧縮ガスは、開弁状態にあるノズルバルブ25のガス流路24、ノズルパイプ27のガス流路29及びシリンダー16のノズル部15を通過して、装弾部14に装填されている弾丸13に噴射され、弾丸13は銃身12の内部にて移動を開始する(図6)。
【0027】
弾丸13が銃身12を離れて発射状態になると、銃身内部の圧力が急激に低下し、シリンダー16の内部における圧力は相対的に高まっているので、ピストン20がスライド部材17とともに後退を開始する(図7)。いわゆるブローバック動作の始まりである。スライド部材17が後退すると、その一部17aと接触することによってハンマー38が引き起こされ、ノッカー36が後退して開閉弁35が閉弁することで、シリンダー内部圧力の上昇が止み、スライド部材17の移動は後退限界位置から前進に変わり得る状態になる(図8)。スライド部材17の後退によって開いているマガジン43のリップ44から、先端の弾丸13が前進するノズル部15によって装弾部14へ押し込まれ装填が完了し、図3の状態に戻る。よってトリガー40が引かれ、圧縮ガスが供給される限り、上記の動作が繰り返される。
【0028】
気温が約30℃を超える高温時において、弾速を規準範囲内に収めるために、本発明では以下の動作が行われる。図9は何も操作しない状態であり、従って図1、図2等と一致している。図10はハンマー38が引き起こされた状態であり、スライド部材17のブローバックによってこの状態になるが、初弾発射時にはスライド部材17を手動で後退させることで、弾丸13の装填を行い、発射準備完了状態にすることは前記の低温時と同様である。
【0029】
高温時、トリガー40を引くと(図11)、シアー42等を介してハンマー38がハンマースプリング39によって回転し、ノッカー36を介して打撃されることによって開閉弁35が開弁し、タンク34内部の気化ガスがシリンダー16の内部にその中間部分に位置する流入口23から流入する。流入した圧縮ガスは開弁状態にあるノズルバルブ25のガス流路24、ノズルパイプ27のガス流路29及びシリンダー16のノズル部15を通過して、装弾部14に装填されている弾丸13に噴射され、弾丸13が銃身12の内部にて移動を開始することは低温時と同じである(図12)。しかし圧縮ガスの圧力が高いために、弾性部材30の付勢力に打ち克ってノズルバルブ25が前方へ移動し、弁座部26と弁頭部28の間にて流量が絞られ、その結果、弾丸13に高い圧力がそのまま噴射されないため弾速の最大値を規準範囲内に抑制されることになる。そして、圧縮ガスの高い圧力はノズルバルブ外面とシリンダー内面との間の空間部31を経て、排気口32から外部へ放出されるようになる(図12)。
【0030】
弾丸13が銃身12を離れ発射されると、銃身内部の圧力が急激に低下し、シリンダー16の内部における圧力は相対的に高まっているので、ピストン20がスライド部材17の移動に伴って後退を開始し、ブローバック動作が開始される(図13)。そして、シリンダー16の内部圧力が弾性部材30に付勢力に打ち克っている間、排気口32から外部へ圧縮ガスの排気が行われる。また、スライド部材17の後退によって、その一部17aと接触するハンマー38が引き起こされ、ノッカー36が後退して開閉弁35が閉弁すると、シリンダー内部圧力の上昇が止み、スライド部材17の移動は後退限界位置から前進に変わる(図14)。その後は、スライド部材17の後退によって開いているマガジン43のリップ44から、先端の弾丸13が、前進するノズル部15によって装弾部14へ押し込まれ装填が完了し、図9の状態に戻り、上記の動作を繰り返し得る。即ち、低温時と同様である。
【0031】
本発明の装置は、ノズルバルブについても直線的貫通構造を要求するものではないことを前述したので、図15を参照してその例を説明する。この例のノズルバルブ25′が筒状のものであることは同様であるが、中心軸に直交する半径方向に後部ガス流路24bが形成されており、それより前方のガス流路24は′中心を貫通しているが筒内径は前方で拡大し、内径の段差部分に逆テーパー状の段部が設けられ、この段部にガス流路24の弁座26′が設けられている。ノズルパイプ27は前述した例の構造のままで良く、ノズルバルブ25′に設けられている弁座26′に接触してガス流路24′を閉じる弁頭部28を最後部に有し、図示の弁頭部28は便座26と面接触するように逆テーパー状に形成されている。即ち、ノズルパイプ27もおおむね筒状であるが、弁頭部28によって閉じているためガス流路29の後端において軸方向から半径方向に向けられ、側面に開口している。この例の場合、半径方向の後部ガス流路24bを多数設けることによって、より多量の圧縮ガスを導入することも可能になる。
【0032】
本発明は上記のように構成されかつ作用するので、装填されている弾丸13に作用する圧縮ガスの圧力の上限を、ガスの圧力、流速等に応じて閉鎖させるための具体的手段は、ノズルバルブとノズルパイプのガス流路のサイズ、ノズルバルブの移動距離、バルブノズルを付勢する弾性部材の弾性力等によって管理される。このような構成によって模擬銃の作動が安定し、また、模擬銃の威力の上限を管理することができるため、安全性も高めることがきる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る発射威力自律制御装置の一例を適用した圧縮ガス式模擬銃を示す側面断面説明図である。
【図2】同上の装置の要部拡大図である。
【図3】同上の装置の低温時の作動状態を示す説明図である。
【図4】同じく低温時の説明図でハンマーが引き起こされた状態である。
【図5】同じく低温時の説明図でトリガーが引かれた状態である。
【図6】同じく低温時の説明図で弾丸が移動を開始した状態である。
【図7】同じく低温時の説明図で弾丸が発射された状態である。
【図8】同じく低温時の説明図でブローバックが行われている状態である。
【図9】同上の装置の高温時の作動状態を示す説明図である。
【図10】同じく高温時の説明図でハンマーが引き起こされた状態である。
【図11】同じく高温時の説明図でトリガーが引かれた状態である。
【図12】同じく高温時の説明図で弾丸が移動を開始した状態である。
【図13】同じく高温時の説明図で弾丸が発射された状態である。
【図14】同じく高温時の説明図でブローバックが行われている状態である。
【図15】同上の装置の異なる形態のノズルバルブをもつ例を示す要部拡大図である。
【符号の説明】
【0034】
10 圧縮ガス式模擬銃
11 銃本体
12 銃身
13 弾丸
14 装弾部
15 ノズル部
16 シリンダー
17 スライド部材
18 戻しばね
19 リコイルガイド
20 ピストン
21 ストッパー
22 O−リング
23 流入口
24、24′、29 ガス流路
25、25′ ノズルバルブ
26、26′ 弁座
27 ノズルパイプ
28 弁頭部
30 弾性部材
31 空間部
32 排気口
33 発射威力自律制御装置部
34 タンク
35 開閉弁
36 ノッカー
37 ばね
38 ハンマー
40 トリガー
42 シアー
43 マガジン
44 リップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾丸を発射させるための銃身と、銃身の後部に位置して全体として銃本体の前後方向へ移動可能に設けられ、銃身後端の装弾部に配置された弾丸に圧縮ガスを噴射するノズル部を先端に備えたシリンダーと、シリンダー内部の後部に配置され、シリンダー内部に流入した圧縮ガスによって、銃本体の前後方向にスライド可能に設けられているスライド部材の移動に伴って後退し、かつ、戻しばねによってスライド部材の移動に伴って前進可能に設けられているピストンと、上記シリンダーの内部の前部にて銃本体の前後方向へ移動可能に設けられ、シリンダー内部に流入した圧縮ガスをノズル部に通ずるガス流路を内部に有するノズルバルブを具備した圧縮ガス式模擬銃において、
シリンダー内部に流入した圧縮ガスをノズル部へ通ずるガス流路を内部に有するノズルパイプを上記ノズルバルブの前部に設けるとともに、ノズルバルブをノズルパイプに対して摺動可能に組み合わせ、かつ、ノズルバルブをノズルパイプから離れる方向へ付勢する弾性部材を配置し、発射操作に伴いシリンダー内部に流入した圧縮ガスの圧力が弾性部材の付勢力よりも過大なときに上記ノズルバルブが上記付勢力に抗して移動し、それによって上記ノズルバルブのガス流路を閉じるように構成された
圧縮ガス式模擬銃における発射威力自律制御装置。
【請求項2】
ノズルバルブ外面とシリンダー内面との間に空間部を設けるとともに、排気口をシリンダー前部側の内面に設けた構成を有する請求項1記載の圧縮ガス式模擬銃における発射威力自律制御装置。
【請求項3】
ノズルバルブは中心に貫通状のガス流路を有する筒状のもので、ノズルパイプは、ノズルバルブのガス流路に設けられた弁座に接触したときにガス流路を閉じる弁頭部を後部に有し、かつ、上記弁頭部が弁座に接触しないときにはノズルバルブのガス流路と通じるガス流路を、上記弁頭部よりも前部に有する筒状のものである請求項1記載の圧縮ガス式模擬銃における発射威力自律制御装置。
【請求項4】
ノズルパイプはシリンダー内部のノズル部直後に配置されており、付け根部分は、ノズルバルブに後部を接触させて配置した弾性部材の前部を受け止めるばね受けになっている請求項1記載の圧縮ガス式模擬銃における発射威力自律制御装置。
【請求項5】
ノズルパイプはシリンダー内部のノズル部直後に、一体成型によって設けられた構成を有している請求項1記載の圧縮ガス式模擬銃における発射威力自律制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−210128(P2010−210128A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55709(P2009−55709)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(592153584)株式会社東京マルイ (29)