説明

圧縮性に乏しい治療用化合物を有する組成物の製造法

圧縮性に乏しい治療用化合物を含む固体投与形態の製造法。本方法は、例えば、治療用化合物(複数もある)と造粒賦形剤を溶融造粒するための、押出機、とりわけ二軸押出機の発明性のある使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮性に乏しいおよび/または感湿性の治療用化合物の固体経口投与形の製造法に関する。本方法は、押出機での溶融造粒を特色とする。
【背景技術】
【0002】
乏しい圧縮性は、治療用化合物を固体経口投与形、例えば、錠剤に製剤する能力に影響し得る。従来の圧縮性に乏しい治療用化合物を含む錠剤製剤は、しばしば適切な硬度を欠き、砕けやすい。故に、特別な製剤技術が、圧縮性に乏しい治療用化合物を商業的に実現可能な固体経口投与形、とりわけ錠剤への製剤に使用されている。
【0003】
治療用化合物の乏しい圧縮性に打ち勝つ一つの方法は、錠剤製剤を製造するための湿式造粒技術の利用である。これは、湿式粉砕、乾燥および乾燥した顆粒の粉砕の付加的単位操作を含む。しかしながら、湿式法で製造した錠剤は時間および貯蔵温度の関数として増加する硬度を示し得る。従って、湿式法で製造した錠剤は、変わりやすい製品性能を示し得る。さらに、ある種の治療用化合物は水と接触したときに分解されやすく;故に、水での湿式造粒は理想ではないかもしれない。
【0004】
故に、適当な硬度と良好な再現性を有する圧縮性に乏しい治療用化合物の医薬組成物を製造する方法の必要性がある。本発明は、溶融造粒技術を利用することによりこの必要性に応える。特に本発明の発明的特徴は、溶融造粒配合を可能にする押出機の使用である。
【0005】
伝統的に、製薬事情における高温での押出機は、治療用化合物の少なくとも部分的な融解を必要とした固体分散体および/または固溶体の製造に使用されている。驚くべきことに、押出機の使用が、治療用化合物の融解の必要性なく、溶融造粒した固体投与形態の製造に有用であり得ることが判明した。
【発明の開示】
【0006】
発明の要約
本発明は、圧縮性に乏しいおよび/または感湿性の治療用化合物と少なくとも1種の造粒賦形剤を合わせて混合物を形成し;治療用化合物の融点または融解範囲より低い温度まで該混合物を加熱しながら、該混合物を押出機、例えば、二軸押出機中で混合または混練し;そして該混合物を所望の金型を通して押し出して、押出物を形成する工程を含む、医薬組成物の製造法を特色とする。
【0007】
特定の局面において、本押出物は所望により顆粒に粉砕し、その後従来の手段を使用して、固体経口投与形に圧縮してよい。本発明の他の局面において、本造粒賦形剤は、治療用化合物の融点より低いガラス遷移温度を有するポリマーである。特に有用なポリマーは、水溶性、水膨潤性および水不溶性ポリマーを含む。
【0008】
本発明の発明性を有するこの方法は、即時放出型および持続放出型両方の医薬組成物の製造に使用できる。
【0009】
発明の詳細な記載
本発明は、圧縮性に乏しいおよび/または感湿性の治療用化合物の医薬組成物の製造法に関する。本発明の方法は、圧縮性に乏しい治療用化合物と造粒賦形剤の、押出機を使用した溶融造粒を特色とする。圧縮性に乏しい治療用化合物の溶融造粒は、治療用化合物を何ら融解する必要性なく、達成される。
【0010】
ここで使用する用語“医薬組成物”は、哺乳動物、例えば、ヒトに、該哺乳動物に影響している特定の疾患または状態を予防、処置または制御するために、投与すべき治療用化合物を含む混合物を意味する。
【0011】
ここで使用する用語“薬学的に許容される”は、堅実な医学的判断の範囲内で、哺乳動物、とりわけヒトの組織と接触させるのに適した、合理的な利益/危険比と釣り合う過度の毒性、刺激、アレルギー応答および他の問題合併症がない、化合物、物質、組成物および/または投与形態を意味する。
【0012】
ここで使用する用語“治療用化合物”は、治療的または薬理学的効果を有し、特に経口投与に適した組成物で、哺乳動物、例えば、ヒトに投与するのに適した全ての化合物、物質、薬剤、医薬、または活性成分を意味する。
【0013】
ここで使用する用語“圧縮性に乏しい”治療用化合物は、力をかけたとき、容易に結合して錠剤を形成しない化合物を意味する。1gの治療用化合物を秤量し、30秒未満の休止時間で5kNから25kNの範囲の力の下に圧縮することのみで製造した錠剤は、約10g(または少なくとも10単位)重量の錠剤を、圧縮直後に500回落とした後で試験したとき、1.0%(w/w)の許容される限界の、またはそれを超える破砕性を有する。このような化合物は、圧縮前に、付加的加工および特殊な製剤、例えば湿式造粒またはローラー圧縮を必要とする。高投与量の治療用化合物はまた、乏しい流動性および乏しい圧縮性のために、直接圧縮に適さない治療用化合物となり得る。
【0014】
ここで使用する用語“感湿性の”治療用化合物は、治療用化合物が水と接触したとき、治療用化合物の少なくとも1重量%が、例えば加水分解による自発的な分解に付される治療用化合物を意味する。
【0015】
治療用化合物の治療クラスの例は、制酸剤、抗炎症性物質、冠動脈拡張剤、大脳拡張剤(cerebral dilator)、末梢血管拡張剤、抗感染剤、向精神剤、抗躁剤、刺激剤、抗ヒスタミン剤、抗癌治療用化合物、緩下剤、鬱血除去剤、ビタミン剤、消化器鎮静剤、下痢止め製剤、抗狭心症性治療用化合物、血管拡張剤、抗不整脈剤、抗高血圧性治療用化合物、血管収縮剤および偏頭痛処置剤、抗凝血剤および抗血栓性治療用化合物、鎮痛剤、抗発熱剤、睡眠剤、鎮静剤、制吐剤、制嘔吐剤、抗痙攣剤(anti-convulsant)、神経筋治療用化合物、高および低血糖剤、甲状腺および抗甲状腺製剤、利尿剤、抗痙攣剤(anti-spasmodic)、子宮弛緩剤、ミネラルおよび栄養補助剤、抗肥満性治療用化合物、タンパク同化性治療用化合物、赤血球形成性治療用化合物、抗喘息剤、去痰剤、鎮咳剤、粘液溶解剤、抗尿酸血症性治療用化合物、および口内で局所的に作用する治療用化合物または物質を含むが、これらに限定されない。
【0016】
治療用化合物の例は、消化器鎮静剤、例えばメトクロプラミドおよび臭化プロパンセリン;制酸剤、例えばアルミニウムトリシリケート、水酸化アルミニウムおよびシメチジン;抗炎症性治療用化合物、例えばフェニルブタゾン、インドメタシン、ナプロキセン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、ジクロフェナク、デキサメサゾン、プレドニゾンおよびプレドニゾロン;冠拡張剤性治療用化合物、例えば三硝酸グリセリン、二硝酸イソソルビドおよび四硝酸ペンタエリスリトール;末梢および大脳血管拡張剤、例えばソロクチジラム(soloctidilum)、ビンカミン、シュウ酸ナフチドロフリル、メシル酸コ−デルゴクリン(co-dergocrine mesylate)、シクランデレート、パパベリンおよびニコチン酸;抗感染性治療用化合物、例えばステアリン酸エリスロマイシン、セファレキシン、ナリジクス酸、塩酸テトラサイクリン、アンピシリン、フルクロキサシリンナトリウム、マンデル酸ヘキサミンおよび馬尿酸ヘキサミン;神経遮断性治療用化合物、例えばフルラゼパム、ジアゼパム、テマゼパム、アミトリプチリン、ドキセピン、炭酸リチウム、硫酸リチウム、クロルプロマジン、チオリダジン、トリフロペラジン、フルフェナジン、ピペロチアジン(piperothiazine)、ハロペリドール、塩酸マプロチリン、イミプラミンおよびデスメチルイミプラミン;中枢神経刺激剤、例えばメチルフェニデート、エフェドリン、エピネフリン、イソプロテレノール、硫酸アンフェタミンおよび塩酸アンフェタミン;抗ヒスタミン性治療用化合物、例えばジフェンヒドラミン、ジフェニルピラリン、クロルフェニラミンおよびブロムフェニラミン;抗下痢性治療用化合物、例えばビサコジルおよび水酸化マグネシウム;緩下剤治療用化合物、例えばジオクチルソジウムスルホサクシネート;栄養補助剤、例えばアスコルビン酸、アルファ・トコフェロール、チアミンおよびピリドキシン;抗痙攣性治療用化合物、例えばジサイクロミンおよびジフェノキシラート;心臓のリズムに影響する治療用化合物、例えばベラパミル、ニフェジピン、ジルチアゼム、プロカインアミド、ジソピラミド、ブレチリウムトシレート、硫酸キニジンおよびグルコン酸キニジン;高血圧の処置に使用する治療用化合物、例えば塩酸プロプラノロール、一硫酸グアネチジン、メチルドーパ、塩酸オキシプレノロール、カプトプリルおよびヒドララジン;偏頭痛の処置に使用する治療用化合物、例えばエルゴタミン;凝血に作用する治療用化合物、例えばイプシロンアミノカプロン酸および硫酸プロタミン;鎮痛性治療用化合物、例えばアセチルサリチル酸、アセトアミノフェン、リン酸コデイン、硫酸コデイン、オキシコドン、酒石酸ジヒドロコデイン、オキシコデイノン、モルヒネ、ヘロイン、ナルブフィン、酒石酸ブトルファノール、塩酸ペンタゾシン、シクラゾシン、ペチジン、ブプレノルフィン、スコポラミンおよびメフェナム酸;抗癲癇性治療用化合物、例えばフェニトインナトリウムおよびバルプロ酸ナトリウム;神経筋治療用化合物、例えばダントロレンナトリウム;糖尿病の処置に使用する治療用化合物、例えばメトホルミン、トルブタミド、ダイアベナーゼ・グルカゴン(diabenase glucagon)およびインスリン;甲状腺機能不全の処置に使用する治療用化合物、例えばトリヨードサイロニン、サイロキシンおよびプロピルチオウラシル;利尿性治療用化合物、例えばフロセミド、クロルサリドン、ヒドロクロルチアジド、スピロノラクトンおよびトリアムテレン;子宮弛緩性治療用化合物、例えばリトドリン;食欲抑制剤、例えば塩酸フェンフルラミン、フェンテルミンおよび塩酸ジエチルプロプリオン;抗喘息性治療用化合物、例えばアミノフィリン、テオフィリン、サルブタモール、硫酸オルシプレナリンおよび硫酸テルブタリン、去痰剤治療用化合物、例えばグアイフェネシン;鎮咳剤、例えばデキストロメトルファンおよびノスカピン;粘液溶解剤治療用化合物、例えばカルボシステイン;抗痙攣剤、例えば塩化セチルピリジニウム、チロスリシンおよびクロルヘキシジン;鬱血除去剤治療用化合物、例えばフェニルプロパノールアミンおよびシュードエフェドリン;催眠性治療用化合物、例えばジクロラルフェナゾンおよびニトラゼパム;制吐性治療用化合物、例えばテオクル酸プロメタジン;造血性治療用化合物、例えば硫酸鉄、葉酸およびグルコン酸カルシウム、尿酸排泄性治療用化合物、例えばスルフィピラゾン、アロプリノールおよびプロベネシドなどを含むが、これらに限定されない。
【0017】
圧縮性に乏しい治療用化合物は、本発明の医薬組成物に治療的に有効な量または濃度で存在する。このような治療的有効な量または濃度は、使用する治療用化合物および取り組んでいる適応症に伴い変化する量または濃度として当業者に既知である。例えば、本発明によって、本治療用化合物は医薬組成物の重量の約0.05%から約99重量%の量で存在し得る。一つの態様において、本治療用化合物は医薬組成物の重量の約10%から約95重量%の量で存在し得る。
【0018】
ここで使用する用語“即時放出型”は、治療用化合物の大部分、例えば、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%より多くの、経口摂取後比較的短時間の、例えば、1時間、40分、30分または20分以内の急速な放出を意味する。即時放出型の特に有用な条件は、治療用化合物の少なくとも約80%またはそれと同等量の経口摂取30分以内の放出である。具体的な治療用化合物についての特定の即時放出型は当業者に認識されているか、既知である。
【0019】
ここで使用する用語“持続放出型”、または“放出調節型”は、経口摂取後の治療用化合物含量の比較的長時間にわたる、徐々にではあるが連続した、または持続した放出を意味する。この放出は、長時間にわたり続き、医薬組成物が腸に到達するまでおよびその後も続き得る。持続放出型はまた、治療用化合物の放出が、医薬組成物が胃に到達したときに直ぐには開始されないが、例えば、上昇したpHを医薬組成物からの治療用化合物の放出の引き金として使用したとき、医薬組成物が腸に到達するときまで遅れる、遅延放出型とも呼び得る。
【0020】
ここで使用する用語“造粒賦形剤”は、さらに以下に詳述するとおり圧縮性に乏しい治療用化合物と溶融造粒できる、全ての薬学的に許容される材料または物質を意味する。本造粒賦形剤は、例えば、ポリマーまたは非ポリマー物質であり得る。
【0021】
ここで使用する用語“ポリマー”は、圧縮性に乏しい治療用化合物の融点(または融解範囲)を超えないそれ自体のまたは組み合わせでのガラス遷移温度、軟化温度または融解温度を有する、ポリマーまたはポリマーの混合物を意味する。ガラス遷移温度(“Tg”)は、このようなポリマーの非常に粘性から相対的に低い粘性の塊への特徴的変化が起こる温度である。ポリマーの種類は、水溶性、水膨潤性、水不溶性ポリマーおよびこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0022】
ポリマーの例は、下記を含むが、これらに限定されない:
N−ビニルラクタムのホモポリマーおよびコポリマー、例えば、N−ビニルピロリドンのホモポリマーおよびコポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン)、N−ビニルピロリドンと酢酸ビニルまたはプロピオン酸ビニルのコポリマー;
セルロースエステルおよびセルロースエーテル(例えば、メチルセルロースおよびエチルセルロース)、ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース)、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、フタル酸セルロース(例えば、酢酸フタル酸セルロースおよびヒドロキシルプロピルメチルセルロースフタレート)およびコハク酸セルロース(例えば、コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたは酢酸・コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース);
ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドのような高分子ポリアルキレンオキシドおよびエチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマー;
ポリアクリレートおよびポリメタクリレート(例えば、メタクリル酸/アクリル酸エチルコポリマー、メタクリル酸/メタクリル酸メチルコポリマー、メタクリル酸ブチル/メタクリル酸2−ジメチルアミノエチルコポリマー、ポリ(ヒドロキシアルキルアクリレート)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート));
ポリアクリルアミド;
酢酸ビニルとクロトン酸のコポリマーのような酢酸ビニルポリマー、部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル;
ポリビニルアルコール;および
カラゲナン、ガラクトマンナンおよびキサンタンガムのようなオリゴおよびポリサッカライド、またはこれらの1種以上の混合物。
【0023】
ここで使用する用語“可塑剤”は、ポリマー鎖の間の空隙率を高めることによりポリマーのガラス遷移温度および溶融粘度を下げるため、医薬組成物中に包含され得る物質を意味する。可塑剤は、例えば、水;クエン酸エステル(例えば、クエン酸トリエチル、トリアセチン);低分子量ポリ(アルキレンオキシド)(例えば、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(エチレン/プロピレングリコール));グリセロール、ペンタエリスリトール、グリセロールモノアセテート、ジアセテートまたはトリアセテート;プロピレングリコール;ジエチルスルホコハク酸ナトリウム;および治療用化合物それ自体を含むが、これらに限定されない。本可塑剤は医薬組成物の約0%から15%、例えば、0.5%から5重量%の量で存在できる。可塑剤の例はまたThe Handbook of Pharmaceutical Additives, Ash et al., Gower Publishing (2000)に見ることができる。
【0024】
非ポリマー造粒賦形剤は、エステル、水素化油、油、天然蝋、合成蝋、炭化水素、脂肪アルコール、脂肪酸、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドおよびそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
【0025】
エステル、例えばグリセリルエステルの例は、モノステアリン酸グリセリル、例えば、Abitec Corp. (Columbus, OH)のCAPMUL GMS;グリセリルパルミトステアレート;アセチル化グリセロールモノステアレート;ソルビタンモノステアレート、例えば、Uniqema (New Castle, DE)のARLACEL 60;およびセチルパルミテート、例えば、Cognis Corp. (Duesseldorf, Germany)のCUTINA CP、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸カルシウムを含むが、これらに限定されない。
【0026】
水素化油の例は、水素化ヒマシ油;水素化綿実油;水素化ダイズ油;および水素化ヤシ油を含むが、これらに限定されない。油の例はゴマ油を含む。
【0027】
蝋の例は、カルナウバ蝋、蜜蝋および鯨蝋を含むが、これらに限定されない。炭化水素の例は、マイクロクリスタリンワックスおよびパラフィンを含むが、これらに限定されない。脂肪アルコール、すなわち、約14から約31個の炭素原子を有する高分子量の非揮発性アルコールは、セチルアルコール、例えば、Croda Corp. (Edison, NJ)のCRODACOL C-70;ステアリルアルコール、例えば、Croda CorpのCRODACOL S-95;ラウリルアルコール;およびミリスチルアルコールを含むが、これらに限定されない。約10から約22個の炭素原子を有し得る脂肪酸の例は、ステアリン酸、例えば、Crompton Corp. (Middlebury, CT)のHYSTRENE 5016;デカン酸;パルミチン酸;ラウリン酸;およびミリスチン酸を含むが、これらに限定されない。
【0028】
ここで使用する用語“溶融造粒”は、下記の工程を含む配合方法を意味する:
(a) 圧縮性に乏しい治療用化合物と少なくとも1種の造粒賦形剤の混合物を形成し;
(b) 本混合物を、本圧縮性に乏しい治療用化合物の融点(または融解範囲)より低いまたはほぼその温度で混合物を加熱しながら押出機で造粒し;そして
(c) 押出物を室温まで、例えば、制御された速度で冷却する。
【0029】
治療用化合物と造粒賦形剤の顆粒内相(すなわち、押出物から)を形成するための加熱および混合は、押出機の使用により達成される。本造粒賦形剤は、例えば、組成物中、約1%から約50重量%の量で存在し得る。一つの態様において、本造粒賦形剤は、組成物中、約3から約25重量%で存在し得る。本治療用化合物は、組成物の約50%から約99重量%の量で存在し得る。一つの態様において、本治療用化合物は約60%から約97%の量で存在し得る。湿式造粒方法の間に製造された顆粒とは異なり、本発明の溶融造粒方法は、本造粒方法中、造粒液、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノールまたはアセトンを必ずしも必要としない。
【0030】
得られる顆粒は、例えば、造粒賦形剤によりコーティングされたまたは実質的にコーティングされた治療用化合物の粒子であるか、あるいは、造粒賦形剤と共にまたはその中に包埋されたまたは実質的に包埋された治療用化合物の粒子である。
【0031】
一般に、押出機は、固定された胴内に、その胴の一端に位置する所望の金型と共に回転するスクリュー(複数もある)を有する。スクリューの全長に沿って、材料(例えば、治療用化合物、放出遅延物質、および何らかの他の必要な賦形剤)の分配的混練が、胴内のスクリュー(複数もある)の回転により提供される。概念的に、押出機は少なくとも3つの部分:供給部分;加熱部分および定量部分に分けることができる。供給部分では、原料が、例えばホッパーから、押出機に供給される。加熱部分では、原料が圧縮性に乏しい治療用化合物の融解温度より低い温度に加熱される。加熱部分の後は定量部分であり、そこでは混合された物質が所望の金型を通して特定の形に、例えば、顆粒また麺状で押し出される。本発明において特に有用な押出機のタイプは、所望により混練パドルと共に構成される、一、二および多軸押出機である。
【0032】
顆粒が得られたら、本顆粒をさらなる従来の賦形剤の添加により、経口形態、例えば、固体経口投与形、例えば錠剤、ピル、ロゼンジ、カプレット、カプセルまたはサシェットに製剤してよく、それは医薬組成物の外相を構成する。医薬組成物の外相はまたさらなる治療用化合物を含み得る。このような固体経口投与形は、例えば、単位経口投与形である。このような賦形剤の例は、放出遅延剤、可塑剤、崩壊剤、結合剤、滑剤、流動促進剤、安定化剤、増量剤および希釈剤を含むが、これらに限定されない。当業者は、通常の実験により、そして過度の負担なく、固体経口投与形の特定の望む特性に関して、1種以上の前記賦形剤を選択し得る。使用する各賦形剤の量は、当分野で慣用の範囲内で変わる。全て引用により本明細書に包含させる下記文献は、経口投与形の製剤に使用する技術および賦形剤を開示する。The Handbook of Pharmaceutical Excipients, 4th edition, Rowe et al., Eds., American Pharmaceuticals Association (2003);およびRemington: the ScienceおよびPractice of Pharmacy, 20th edition, Gennaro, Ed., Lippincott Williams & Wilkins (2003)参照。
【0033】
ここで使用する用語“放出遅延剤”は、経口摂取されたとき、医薬組成物からの治療用化合物の放出を遅らせる全ての材料または物質を意味する。当分野で既知の種々の持続放出型系、例えば、拡散系、溶解系および/または浸透圧系を、放出遅延成分の使用により達成することができる。放出遅延剤は、本質的にポリマーまたは非ポリマーであり得る。本発明の医薬組成物は、持続放出型組成物を望むとき、例えば、組成物の重量の少なくとも5%の放出遅延剤を含み得る。
【0034】
薬学的に許容される崩壊剤の例は、デンプン;粘土;セルロース;アルギネート;ガム;架橋ポリマー、例えば、架橋ポリビニルピロリドンまたはクロスポビドン、例えば、International Specialty Products (Wayne, NJ)のPOLYPLASDONE XL;架橋ナトリウムカルボキシメチルセルロースまたはクロスカルメロースナトリウム、例えば、FMCのAC-DI-SOL;および架橋カルシウムカルボキシメチルセルロース;ダイズ・ポリサッカライド;およびグアーガムを含むが、これらに限定されない。本崩壊剤は、組成物の約0%から約10重量%の量で存在し得る。一つの態様において、本崩壊剤は組成物の約0.1%から約1.5重量%の量で存在する。
【0035】
薬学的に許容される結合剤の例は、デンプン;セルロースおよびその誘導体、例えば、微晶性セルロース、例えば、FMC (Philadelphia, PA)のAVICEL PH、Dow Chemical Corp. (Midland, MI)のヒドロキシプロピルセルロースヒドロキシルエチルセルロースおよびヒドロキシルプロピルメチルセルロースMETHOCEL;スクロース;デキストロース;コーン・シロップ;ポリサッカライド;およびゼラチンを含むが、これらに限定されない。本結合剤は、組成物の約0%から約50%、例えば、10−40重量%の量で存在し得る。
【0036】
薬学的に許容される滑剤および薬学的に許容される流動促進剤の例は、コロイド状シリカ、マグネシウムトリシリケート、デンプン、タルク、三塩基性リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、ポリエチレングリコール、粉末セルロースおよび微晶性セルロースを含むが、これらに限定されない。本滑剤は、組成物の約0%から約10重量%の量で存在し得る。一つの態様において、本滑剤は、組成物の約0.1%から約1.5重量%の量で存在し得る。本流動促進剤は、約0.1%から約10重量%の量で存在し得る。
【0037】
薬学的に許容される増量剤および薬学的に許容される希釈剤の例は、粉砂糖、圧縮性糖、デキストラン(dextrates)、デキストリン、デキストロース、ラクトース、マンニトール、微晶性セルロース、粉末セルロース、ソルビトール、スクロースおよびタルクを含むが、これらに限定されない。本増量剤および/または希釈剤は、例えば、組成物の約15%から約40重量%の量で存在し得る。
【0038】
本発明の医薬組成物を製造するために、治療用化合物および造粒賦形剤を99:1から1:1比(乾燥重量基準)で、押出機のホッパーへの添加前にまたは添加により混合する。一つの例示態様において、治療用化合物対造粒賦形剤のこの比率は97:3から60:40(乾燥重量基準)の範囲であり得る。さらに別の態様において、この比率は97:3から75:25(乾燥重量基準)の範囲であり得る。所望により、可塑剤を内相に添加できる。
【0039】
本混合物を、治療用化合物の融解温度より低い温度に加熱する。混合物が加熱されるにつれ、また押出機のスクリューによりそれは混練される。本混合物をその上昇した温度で維持し、造粒生成物を形成するのに十分な時間混合する。混合物が胴の全長にわたり輸送された後、造粒生成物(押出物である)を得て、本造粒混合物を冷却する。
【0040】
冷却後、本押出物を製粉し、続いて篩を通して篩う。本顆粒(それは医薬組成物の内相を構成する)を、次いで固体経口投与形賦形剤(医薬組成物の外相)、すなわち、増量剤、結合剤、崩壊剤、滑剤などと合わせる。この合わせた混合物をさらに、例えば、V型ブレンダーを通して混合し、その後錠剤に、例えばモノリシックな錠剤に圧縮または鋳造するか、カプセルに封入してよい。
【0041】
錠剤を得たら、それを所望により当分野で既知の機能的または比機能的コーティングで所望によりコーティングしてよい。コーティング技術の例は、糖コーティング、フィルムコーティング、マイクロカプセル化および圧縮コーティングを含むが、これらに限定されない。コーティングのタイプは、腸溶性コーティング、持続放出型コーティング、制御放出コーティングを含むが、これらに限定されない。
【0042】
全ての本発明の医薬組成物の有用性は、例えば、治療用化合物の治療的に有効な血中レベルを提供する薬剤用量;例えば75kgの哺乳動物、例えば、成人に2.5−1000mg/日の範囲の治療用化合物の投与量を使用する、既知の適応症における標準臨床試験でおよび標準動物モデルで観察され得る。
【0043】
本発明は、治療用化合物で処置可能な疾患、状態または障害を有する対象の処置法であって、治療的に有効量の本発明の医薬組成物を、そのような処置を必要とする対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0044】
下記実施例は説明であり、ここに記載の本発明の範囲を限定するために提供するものではない。実施例は本発明を実施する方法を示唆するのみである。
【0045】
本発明において適当な治療用化合物の例は塩酸メトホルミンである。塩酸メトホルミンの単位投与形態、例えば、一つの錠剤またはカプセルは、250mgから2000mgの塩酸メトホルミン、例えば、250mg、500mg、750mg、850mgまたは1000mgのメトホルミンを含み得る。本発明において、塩酸メトホルミンは最終固体経口投与形の内相中に存在し得る。
【実施例】
【0046】
【表1】

内相成分、すなわち塩酸メトホルミン、およびHercules Chemical Co. (Wilmington, Delaware)からKLUCEL EXFとして入手可能なヒドロキシプロピルセルロースを合わせ、ビン・ブレンダー(bin blender)中で、約200回転混合する。本混合物を二軸押出機の供給部分、またはホッパーに入れる。適当な二軸押出機は、Thermo Electron Corp. (Waltham, Massachusetts)から入手可能なPRISM 16 mm医療用二軸押出機である。
【0047】
二軸押出機の末端に位置しているのは、約3mmの内径の金型である。本二軸押出機は、5つの独立した胴ゾーン、または部分からなり、異なるパラメーターに独立して調節できる。ホッパーから始まり金型までで、このゾーンは各々下記温度に加熱される:40℃、110℃、130℃、170℃および185℃。加熱ゾーンの温度は約232℃である塩酸メトホルミンの融解温度を超えてはならない。スクリュー速度は150rpmに設定するが、400rpmまで速くすることができ、定量的供給速度は、1分あたり約30から45gの材料を送達するように調節する。処理速度は4g/分から80g/分に調節できる。
【0048】
次いで、押出機からの押出物、または顆粒を、それらを約15分から20分放置することにより室温に冷却する。冷却した顆粒をその後18メッシュ篩(すなわち、1mm篩)を通して篩う。
【0049】
外相について、ステアリン酸マグネシウムは最初に18メッシュを篩過させる。次いで、本ステアリン酸マグネシウムを、得られた顆粒と、適当なビン・ブレンダーを使用して約60回転混合する。得られる最終混合物を、6kNから25kNの圧縮力を使用する従来の回転打錠機(Manesty Beta Press)を使用して、錠剤へと圧縮する。得られる錠剤はモノリスであり、5kPから35kPの硬度を有する。15kPから35kPの硬度を有する錠剤は、500回落下させた後、1.0%w/wより低い許容される破砕性をもたらす。さらに、これらの錠剤は、37℃で0.1N HClのディスクで20分以下の崩壊時間を有する。
【0050】
対照的に、実施例1の製剤を、湿式造粒または直接圧縮により錠剤にしたとき、得られる錠剤は、6kNから26kNの圧縮力で圧縮したとき、3kPから7kPの硬度を有する。さらに、これらの錠剤は、500回落下後に1%(w/w)より大きい破砕性をもたらす。故に、この結果は、本溶融造粒方法が、圧縮性に乏しい治療用化合物の圧縮性を高めることを示す。
【0051】
本発明をその詳細な説明と併せて記載しているが、上記の記載は本発明を説明することを意図し、範囲を限定するものではなく、それは添付の特許請求の範囲により定義される。他のsss局面、利点および変法は本発明の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮性に乏しい治療用化合物と少なくとも1種の造粒成分を合わせて混合物を形成し;
該治療用化合物の融点よりも低い温度で加熱しながら、該混合物を押出機中で混練し;そして
該混合物を押し出して顆粒を形成する:
工程を含む、医薬組成物の製造法。
【請求項2】
該顆粒を圧縮して固体経口投与形を形成する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
該造粒成分が該融点より低いガラス遷移温度(Tg)を有するポリマーである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
該ポリマーが水溶性ポリマー、水膨潤性ポリマーおよび水不溶性ポリマーから成る群から選択される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
該加熱温度が該Tgより高いまたは等しい、請求項4記載の方法。
【請求項6】
該混合物が可塑剤をさらに含む、請求項3記載の方法。
【請求項7】
該医薬組成物が即時放出型組成物である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
該医薬組成物が持続放出型組成物である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
該医薬組成物が放出遅延剤を含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
該押し出しが金型を介する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
該押出機が二軸押出機である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
感湿性の治療用化合物と少なくとも1種の造粒成分を合わせて混合物を形成し;
該治療用化合物の融点よりも低い温度で加熱しながら、該混合物を押出機中で混練し;そして
該混合物を押し出して顆粒を形成する:
工程を含む、医薬組成物の製造法。
【請求項13】
圧縮性に乏しい治療用化合物と少なくとも1種の造粒成分を合わせて混合物を形成し;
該治療用化合物の融点よりも低い温度で加熱しながら、該混合物を押出機中で混練し;
該混合物を押し出して顆粒を形成し;そして
該顆粒を錠剤に圧縮する:
工程を含む、圧縮性に乏しい治療用化合物を含む錠剤の破砕性を改善する方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法により製造した医薬顆粒。
【請求項15】
該治療用化合物が塩酸メトホルミンである、請求項14記載の医薬顆粒。
【請求項16】
請求項14または15に記載の医薬顆粒および付加的治療用化合物を含む、医薬組成物。
【請求項17】
該塩酸メトホルミンが250mgから2000mg存在する、請求項15記載の医薬顆粒。
【請求項18】
15kPから35kPの硬度を有する、請求項1に記載の顆粒を含む医薬組成物。
【請求項19】
圧縮性に乏しい治療用化合物を含む組成物の破砕性を改善するための、押出機の使用。
【請求項20】
圧縮性に乏しい治療用化合物を含む医薬組成物の製造のための、押出機の使用。
【請求項21】
感湿性の治療用化合物を含む医薬組成物の製造のための、押出機の使用。

【公表番号】特表2008−540540(P2008−540540A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511233(P2008−511233)
【出願日】平成18年5月8日(2006.5.8)
【国際出願番号】PCT/US2006/017708
【国際公開番号】WO2006/122021
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】