説明

圧縮性流体の連続非定常流量発生装置および連続非定常流量発生方法、ならびに圧縮性流体の流量計検定装置

【課題】往復流を含む圧縮性流体の非定常流量を連続して高精度に発生する。
【解決手段】圧縮性流体の流入量を計測する流量計12と、流入量を規制する第1サーボ弁13と、圧縮性流体を等温状態に保持する第1等温化圧力容器14と、第1等温化圧力容器14内の圧力を計測する第1圧力計15と、真空源により真空状態に保持される第2等温化圧力容器16と、第2等温化圧力容器16内の圧力を計測する第2圧力計17と、第1等温化圧力容器14からの流出又は第2等温化圧力容器16への流入を選択的に規制する第2サーボ弁18と、第2サーボ弁18の外方の圧力を測定する第3圧力計19と、流入量と第1等温化圧力容器14内の圧力とに基づき第2サーボ弁18からの流出量を制御すると共に第2等温化圧力容器16内の圧力と第2サーボ弁18の外方の圧力とに基づき第2サーボ弁18からの圧縮性流体の流入量を制御する流量制御手段22とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、往復流対応型の圧縮性流体の連続非定常流量発生装置および連続非定常流量発生方法、ならびに往復流対応型の圧縮性流体の流量計検定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
連続して流体を用いる機器では、その流体の流量を迅速かつ正確に計測することが求められる。例えば、近年、開発が進む燃料電池では、発電要求量に応じて燃料電池セル内に所定量の水素を正確に供給することが求められ、しかも発電要求量の変動に迅速に応答して前段階の供給量から次の段階の供給量に、短い遷移時間で、迅速に正確な流量で水素を供給できるようにすることが求められる。また、半導体製造工程では、CVD、PVD、スパッタリング、熱酸化、ドライエッチング等の各種プロセスにおいて、不活性ガスの流量、酸素、水素、反応性物質ガス等の気体の流量を正確に制御して供給することが求められる。この半導体製造工程における気体の流量制御は、得られる半導体装置の性能、ひいては半導体製造工程における製品の歩留りを左右する重要な制御因子である。また、これらの用途に限らず、空気圧釘打ち機等の空気圧アクチュエータ、薬液注入装置等の空気圧により各種の機能・動作を制御する機器、血圧測定器等の空気圧を利用する測定機器などにおいても、圧縮性流体である空気を、必要に応じて迅速かつ正確な流量で供給することが求められる。
【0003】
以上のとおり、流体の流量を制御することが求められる機器またはシステムでは、高い応答速度で正確に流量を計測できる流量計が必要となる。しかし、気体等の圧縮性流体は、圧力のみならず温度によっても密度が変化するため、流量計の動特性を正確に計測することは困難である。そのため、流量計の動特性を検定する方法は未だ確立されていない状況である。よって、市販されている気体用流量計の応答を統一的に比較する方法はISOやJIS等でも規定されていない。そのため、従来は、気体の流量をバルブ等でステップ的に変化させ、その際に流量計の応答を計測し、動特性、すなわち応答性を評価しているに過ぎなかった。
【0004】
そこで、本発明者らは、先に、容器内に熱伝導性が高く体積が小さい熱伝導材料を内部空気との接触面積が大きくなるように収容することによって、内部の空気温度の変化を小さくして空気圧を速やかに安定させ、容器内の空気の状態変化をほぼ等温にできる圧力容器を提案した(特許文献1)。この圧力容器によれば、容器内の圧力変化から容器から流出され、あるいは容器内に充填される気体の非定常流量を正確に計測できる。
更に、本発明者らは、この圧力容器を用いて、連続的に非定常流量の流体流を発生させる連続非定常流量発生装置を提案した(特許文献2)。
【特許文献1】特開平6−147320号公報(請求項1、図1等)
【特許文献2】特開2006−64418号公報(段落0016〜段落0028、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献2に記載の連続非定常流量発生装置は、一方向の流れに対する流体を発生するに留まっていた。往復脈動流の発生には、例えば、ピストンシリンダを用いることが考えられるが、圧縮及び膨張に伴う温度変化の影響を受けてしまい、精度の高い往復流量の発生の実現は困難であった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、計測基準とするに十分な精度の往復流を含む非定常流量の流体流を連続的に発生させることができるようにして、圧縮性流体の動特性試験や空気圧機器などの流量特性試験に有用な圧縮性流体の連続非定常流量発生装置および連続非定常流量発生方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、前記した往復流を含む連続非定常流量発生装置によって発生する流体流を基準として用いて、被検定対象の流量計の計測精度を検定できる流量計検定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記目的を達成するために創案されたものであり、請求項1に記載の圧縮性流体の連続非定常流量発生装置は、流体供給源から供給される圧縮性流体の流入量を計測する流量計と、前記流量計を通って流入する前記圧縮性流体の流入量を規制する第1サーボ弁と、前記第1サーボ弁を通って流入する前記圧縮性流体を等温状態に保持する第1等温化圧力容器と、前記第1等温化圧力容器内の圧縮性流体の圧力を計測する第1圧力計と、真空源によって真空状態に保持される第2等温化圧力容器と、前記第2等温化圧力容器内の圧縮性流体の圧力を計測する第2圧力計と、前記第1等温化圧力容器からの圧縮性流体の流出又は前記第2等温化圧力容器への圧縮性流体の流入の何れかを選択的に規制する第2サーボ弁と、第2サーボ弁の外方の圧縮性流体の圧力を測定する第3圧力計と、前記流量計によって計測された圧縮性流体の流入量と、前記第1圧力計によって計測された前記第1等温化圧力容器内の圧縮性流体の圧力とに基づいて、前記第2サーボ弁からの圧縮性流体の流出量を制御すると共に、前記第2圧力計と前記第3圧力計とによって計測された圧縮性流体の圧力に基づいて、前記第2サーボ弁からの圧縮性流体の流入量を制御する流量制御手段とを備えるよう構成した。
なお、第2サーボ弁の外方とは、正方向及び負方向の往復流を含む圧縮性流体の流量を出力する側であって、正方向の流量発生時の下流側であり、負方向の流量発生時の上流側を指す。
【0008】
かかる構成によれば、圧縮性流体の連続非定常流量発生装置は、第1サーボ弁を制御して、流体供給源から圧縮性流体を第1等温化圧力容器に供給すると共に、流量計によって、第1等温化圧力容器に流入する流量を計測する。第1等温化圧力容器に供給された圧縮性流体は等温状態に保持され、圧縮性流体の連続非定常流量発生装置は、第1圧力計によって、第1等温化圧力容器内の圧縮性流体の圧力を計測する。そして、流量制御手段によって、第1等温化圧力容器に流入した流量と圧力とに基づいて、第2サーボ弁の開度を制御し、第1等温化圧力容器から圧縮性流体を流出させ、正方向の流量を発生する。
【0009】
また、圧縮性流体の連続非定常流量発生装置は、第2圧力計によって、第2等温化圧力容器内の圧縮性流体の圧力(負方向の流量発生時における第2サーボ弁の下流側)を計測すると共に、第3圧力計によって、第2サーボ弁の外方、すなわち流量発生の出力側(負方向の流量発生時における第2サーボ弁の上流側)の圧縮性流体の圧力を計測する。そして、流量制御手段によって、第2サーボ弁の上流側の圧力と下流側の圧力とに基づいて、第2サーボ弁の開度を制御し、第2等温化圧力容器に圧縮性流体を流入させることで、負方向の流量を発生する。
【0010】
請求項2に記載の圧縮性流体の連続非定常流量発生装置は、請求項1に記載の圧縮性流体の連続非定常流量発生装置において、前記第1等温化圧力容器及び前記第2等温化圧力容器は、金属細線の集束体または多孔質金属体からなる熱伝導性材料が内部に充填されている構成とした。
【0011】
かかる構成によれば、第1等温化圧力容器及び第2等温化圧力容器は、圧縮性流体の流入又は流出による温度変化を速やかに吸収して等温状態を保持することができる。
【0012】
請求項3に記載の圧縮性流体の連続非定常流発生方法は、請求項1又は請求項2に記載の圧縮性流体の連続非定常流量発生装置を用いた圧縮性流体の連続非定常流量発生方法であって、前記第1サーボ弁を開いて前記流体供給源から前記圧縮性流体を供給し、前記第1等温化圧力容器を所定の圧力になるまで昇圧する第1工程と、前記第2サーボ弁の開度を制御して、前記第1等温化圧力容器から流出される圧縮性流体の流出量を連続的に制御する第2工程と、前記第2サーボ弁の出力側の圧力と前記第2等温化圧力容器の圧力とに基づいて、前記第2サーボ弁の開度を算出する第3工程と、前記第2サーボ弁を前記算出した開度で開き、前記第2等温化圧力容器へ圧縮性流体を流入する第4工程と、を含み、前記第1工程乃至前記第4工程を順次繰り返して行う際に、前記第3工程又は前記第4工程と並行して前記第1工程を行うようにした。
【0013】
かかる手順によれば、第1工程において、第1等温化圧力容器内の圧縮性流体の圧力を所定の圧力まで昇圧し、第2工程において、第1工程で所定の圧力まで昇圧しておいた第1等温化圧力容器から、第2サーボ弁の開度を連続的に制御して圧縮性流体を流出させることで、正方向の流量を発生する。続いて、第3工程において、第2サーボ弁の上流側の圧力と下流側の圧力とに基づいて、第2サーボ弁の開度を算出し、第4工程において、第3工程で算出した第2サーボ弁の開度で第2サーボ弁を開き、第2等温化圧力容器に圧縮性流体を流入させることで、負方向の流量を発生させる。また、次の正方向の流量発生のために、第3工程又は第4工程と並行して、再び、第1工程によって第1等温化圧力容器を所定の圧力まで昇圧し、第2工程によって正方向の流量を発生する。このようにして、第1工程から第4工程を繰り返し行うことで、往復流を含む圧縮性流体の非定常流を連続して発生する。
【0014】
請求項4に記載の圧縮性流体の連続非定常流発生方法は、請求項1又は請求項2に記載の圧縮性流体の連続非定常流量発生装置を用いた圧縮性流体の連続非定常流量発生方法であって、前記第2サーボ弁から前記圧縮性流体が流出する方向の流量波形成分の平均流量に対応する前記第1サーボ弁の開度を算出する第5工程と、前記第1サーボ弁を前記算出した開度で開いて前記流体供給源から前記圧縮性流体を前記第1等温化圧力容器に供給する第6工程と、前記第1等温化圧力容器内の圧縮性流体の圧力に基づいて、前記第2サーボ弁の開度を制御して、前記第1等温化圧力容器から流出する流量を連続的に制御する第7工程と、前記第2サーボ弁の出力側の圧力と前記第2等温化圧力容器の圧力とに基づいて、前記第2サーボ弁の開度を算出する第8工程と、前記第2サーボ弁を前記第8工程で算出した開度で開き、前記第2等温化圧力容器へ圧縮性流体を流入する第9工程と、前記第1等温化圧力容器の圧力及びその微分値に基づいて、前記第1サーボ弁の開閉を制御し、前記流体供給源から前記圧縮性流体を前記第1等温化圧力容器に供給する第10工程と、を含み、前記第10工程は、前記第8工程又は前記第9工程と並行して行い、前記第7工程乃至前記第10工程を順次繰り返し行うようにした。
【0015】
かかる手順によれば、第5工程において、圧縮性流体が流出する方向の流量波形成分の平均流量に対応する第1サーボ弁の開度を算出し、第6工程において、第5工程で算出した開度で第1サーボ弁を開いて、第1等温化圧力容器に圧縮性流体を流入させると共に、第7工程において、第1等温化圧力容器の圧力に基づいて第2サーボ弁の開度を制御して、第1等温化圧力容器から圧縮性流体を流出させることで、正方向の流量を発生する。
続いて、第8工程において、第2サーボ弁の出力側(負方向の流量発生時における上流側)の圧力と、第2等温化圧力容器(負方向の流量発生時における下流側)の圧力とに基づいて、第2サーボ弁の開度を算出する。第9工程において、第8工程で算出した開度で第2サーボ弁を開いて、第2等温化圧力容器に圧縮性流体を流入させることで、負方向の流量を発生する。また、次の正方向の流量発生のために、第10工程において、第1等温化圧力容器の圧力及びその微分値に基づいて、第1サーボ弁の開閉を制御し、流体供給源から圧縮性流体を第1等温化圧力容器に供給する。この第10工程は、負方向の流量を発生するための第8工程又は第9工程と並行して行われる。そして、第7工程に戻って、第2サーボ弁を制御して、第1等温化圧力容器から圧縮性流体を流出させることで、正方向の流量を発生する。以降は、第7工程から第10工程を繰り返し行うことで、往復流を含む圧縮性流体の非定常流を連続して発生する。
【0016】
請求項5に記載の流量計検定装置は、請求項1または請求項2に記載の圧縮性流体の連続非定常流量発生装置の第2サーボ弁を通って流出される圧縮性流体を被検定対象の流量計に流入させて、当該流量計による流量の計測精度を検定するように構成した。
【0017】
かかる構成によれば、圧縮性流体の連続非定常流量発生装置によって、往復流を含む圧縮性流体の非定常流量を連続的に発生し、第2サーボ弁の出力側に接続された流量計へ供給し、当該流量計の計測精度の検定を行う。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、往復流を含む圧縮性流体の連続非定常流を高精度に発生することができる。
請求項2に記載の発明によれば、圧縮性流体の流入又は流出による第1等温化圧力容器及び第2等温化圧力容器の温度変化を速やかに吸収して等温状態を保つことができるため、立ち上がり及び立ち下りが急峻に変化する流量波形を発生することができる。
請求項3に記載の発明によれば、発生する流量波形の平均流量がゼロの場合に、簡単な制御で往復流を含む非定常流量を連続的に発生することができる。
請求項4に記載の発明によれば、発生する流量波形の平均流量がゼロでない場合に、精度よく往復流を含む非定常流量を連続的に発生することができる。
請求項5に記載の発明によれば、連続非定常流量発生装置によって発生する往復流を含む圧縮性流体の非定常流量を基準として用いて、被検定対象の流量計の計測精度を正確に検定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る連続非定常流量発生装置の構成を示す概念図である。この実施形態は、圧縮性流体として気体を用いる場合を示す。気体は、図1の左から右の方向に流れる方向を正方向とし、右から左の方向に流れる方向を負方向とする。
【0020】
この連続非定常流量発生装置1は、図1に示すとおり、気体流量計12と、圧力計11と、圧力計15と、圧力計17と、圧力計19と、第1サーボ弁13と、第2サーボ弁18と、第1等温化圧力容器14と、第2等温化圧力容器16と、A/D変換器20と、D/A変換器21と、コンピュータ22とを備える。各機器の間は、導管23a、23b、23c、23d、23e、23f、24で連絡されている。
【0021】
気体流量計12と、気体流量計12の後流に第1サーボ弁13と、第1等温化圧力容器14と、第2サーボ弁18とが順次接続され、さらに、第2等温化圧力容器16が第2サーボ弁18と接続されている。これらの機器の間は、それぞれ導管23b、導管23c、導管23d及び導管23fで連絡されている。また、気体流量計12の上流側には、気体供給源30が減圧弁31を介して接続されており、第2等温化圧力容器16には真空源であるエジェクタ33が減圧弁34と共に接続されている。そして、気体流量計12は、減圧弁31と導管23aで連絡され、第2等温化圧力容器16は、エジェクタ33と導管23eで接続されている。また、第2サーボ弁18の出力側(図1において右側)は、導管24によって外部機器と接続されるようになっている。
【0022】
また、導管23a、第1等温化圧力容器14、第2等温化圧力容器16及び導管24には、それぞれ圧力計11、圧力計15、圧力計17及び圧力計19が接続されている。気体流量計12及び各圧力計11,15,17,19の出力値(測定値)は図中に破線で示した信号線を介してA/D変換器20に送られる。A/D変換器20は、これらの出力値をデジタル値に変換してコンピュータ22に出力する。第1サーボ弁13及び第2サーボ弁18には、コンピュータ22から出力され、D/A変換器21によってアナログ値に変換された制御信号が図中に破線で示した信号線を介して入力される。
【0023】
気体流量計(流量計)12は、減圧弁31を介し、気体供給源30から第1サーボ弁13を通って第1等温化圧力容器14に供給される気体の流量を計測するものである。計測された気体の流量に関する検出信号は、A/D変換器20を介して、コンピュータ22に送信される。
気体流量計12としては、層流型流量計、オリフィス流量計、熱式流量計等の流量計などを用いることができるが、特に、層流型流量計は圧力損失が小さいことから好ましい。
【0024】
また、気体供給源(流体供給源)30としては、コンプレッサ、圧縮気体を充填したボンベ等を用いることができる。
また、減圧弁31は、気体供給源30から供給される気体の圧力を所定の圧力に調節するためのものである。この減圧弁31は、特に制限されるものではなく、常用のものを用いることができる。ここで、気体供給源30から供給される気体の圧力は、200kPa〜1MPaの範囲に減圧弁31によって調節することが好ましい。圧力がこの範囲にあると、気体の音速流れが確保できることから、圧力制御が容易となり、また、通常のコンプレッサ等で供給できるという利点があるからである。
【0025】
エジェクタ(真空源)33は、第2等温化圧力容器16内の気体を排気して真空状態にするための負圧源であり、減圧弁34によって圧力が調整されるようになっている。この減圧弁34は、特に制限されるものではなく、常用のものを用いることができる。なお、本実施形態では負圧源としてエジェクタ33を用いたが、他の真空ポンプなどの真空発生装置を用いることもできる。
【0026】
第1サーボ弁13は、コンピュータ22からD/A変換器21を介して送信される制御信号を受信して、その制御信号に基づいて、弁の開閉および開度を調整して、気体供給源30から供給されて第1等温化圧力容器14に流入させる気体の流量を調節し、第1等温化圧力容器14に流入させる気体の平均流量を管理するものである。ここで、平均流量とは、発生する非定常流量の波形を時間平均したときの流量の平均値を示す。
この第1サーボ弁13は、特に制限されず、常用のものを用いることができるが、目標発生流量に応じて流入流量が可変となるため、流量制御型である空気圧スプール型サーボ弁を用いることが好ましい。
【0027】
なお、第1サーボ弁13を用いずに、第2サーボ弁18から正方向に流量を発生するときに、圧力計11によって計測される圧力値と気体流量計12によって計測される流量とに基づいて、第2サーボ弁18の開度を調整して正方向の流量を制御することもできる。但し、本発明のように、負方向の流量を含む往復流を発生するときには、第1サーボ弁13を設けて平均流量を管理することが好ましい。これによって、正方向に発生する流量を安定化することができる。
【0028】
第2サーボ弁18は、コンピュータ22からD/A変換器21を介して送信される制御信号を受信して、その制御信号に基づいて、第2サーボ弁18の入力側に接続される第1等温化圧力容器14及び第2等温化圧力容器16と、第2サーボ弁18の出力側との接続を切り替える三方弁であり、その接続時の弁の開度を調整して、正方向の流量を発生するときには、第1等温化圧力容器14から流出する気体の流量を連続的に調節し、負方向の流量を発生するときには、第2等温化圧力容器16へ流入する気体の流量を連続的に調節するものである。
この第2サーボ弁18は、特に制限されず、常用の三方弁を用いることができるが、好ましくは空気圧スプール型サーボ弁を用いることができる。
【0029】
第1等温化圧力容器14は、気体流量計12を通って流入する気体を等温状態に保持するものである。この第1等温化圧力容器14は、通常、金属で形成される。
この第1等温化圧力容器14の形状は、円筒状、多角柱体、球体、楕円体など種々の形状を採用することができる。いずれか一方の底面側から気体を流入させる。このとき、気体の流入方向の奥行きは、断面の最大幅の2倍以下とすることが好ましい。断面の最大幅は、例えば、円筒状の形状の場合、円筒の高さ(奥行き)は底面の直径の2倍以下であることが好ましい。円筒の高さ(奥行き)がこの範囲にあると気体の流入時における、圧力勾配の発生を抑えることができる。また、多角柱体の形状の場合、断面中の最大幅、楕円体であれば奥行き方向の中心の断面における直径である。
【0030】
この第1等温化圧力容器14は、バッファタンクの役割を有するため、第1等温化圧力容器14の内容積は、気体の流出量Qout(NL/min)に対して、5.0×10-6out〜7.0×10-5out(m3)の範囲にあることが好ましい。この範囲は、前記した気体用機器の質量速度の適している範囲に対応させたものである。
【0031】
この第1等温化圧力容器14の内部には、金属細線の集束体または多孔質金属体からなる表面積の大きな熱伝導性材料が充填されている。この熱伝導性材料を第1等温化圧力容器14の内部に充填することによって、内部における伝熱面積を増大させることができる。そして、この熱伝導性材料によって、第1等温化圧力容器14への気体の流入および第1等温化圧力容器14からの気体の流出に際して、第1等温化圧力容器14内の気体の温度変化が抑制される。そして、この熱伝導性材料による温度変化の抑制は、第1等温化圧力容器14も熱伝導性の高いものにすればさらに有効である。
【0032】
この表面積の大きな熱伝導性材料として、例えば、スチールウール等の金属細線の集束体、銅線等の多孔質金属体、あるいは木綿やプラスチック製の綿状体などを採用することができる。すなわち、金属細線の集束体または木綿やプラスチック製の綿などの繊維状の形態である場合は、その繊維径が10〜50μmの範囲にあるものが、伝熱面積を大きくとれることから好ましい。また、この熱伝導性材料は、熱伝導度が0.05W/mK以上であることが好ましい。この熱伝導性材料は、第1等温化圧力容器14に保持される圧縮性流体の温度変化を3K程度に抑制できるように、その材質および第1等温化圧力容器14への充填量等が調整される。このように、第1等温化圧力容器14にスチールウール等の熱伝導性材料を充填することで第1等温化圧力容器14の伝熱面積を増大させることができる。
【0033】
また、熱伝導性材料の充填密度は200〜400kg/m3 の範囲にあることが好ましい。充填密度がこの範囲にあると、第1等温化圧力容器14内の温度変化を十分に抑制することができる。
【0034】
第2等温化圧力容器16は、エジェクタ33によって内部の気体が排気されて真空状態となり、第2サーボ弁18を介し導管24を通して外部の気体を流入することで、負方向の流量を発生する。このとき、第2サーボ弁18を通って第2等温化圧力容器16に流入する気体を等温状態に保持するものである。
第2等温化圧力容器16は、前記した第1等温化圧力容器14と同様の容器を用いることができ、第2等温化圧力容器16からの気体の排出および第2等温化圧力容器16への気体の流入に際して、第2等温化圧力容器16内の気体の温度変化が抑制される。
【0035】
圧力計11は、減圧弁31を介して供給される気体の圧力を計測し、その計測結果(圧力値)に関する検知信号を、A/D変換器20を介してコンピュータ22に送信するものである。この圧力計11は、気体の圧力値を電気信号として出力できるものであれば、特に制限されない。例えば、半導体式圧力センサ等を用いることができる。そして、圧力計11の測定可能範囲は、大気圧〜減圧弁31の設定圧力の範囲にあることが好ましい。また、圧力計11の計測精度は0.1kPa以下であることが好ましい。計測精度がこの範囲にあると流量特性の計測精度を十分なものにすることができるからである。
【0036】
圧力計(第1圧力計)15は、第1等温化圧力容器14に保持される気体の圧力を計測し、その計測結果(圧力値)に関する検知信号を、A/D変換器20を介してコンピュータ22に送信するものである。この圧力計15は、圧力計11と同様のものを用いることができる。
【0037】
圧力計17(第2圧力計)は、第2等温化圧力容器16に保持される気体の圧力を計測し、その計測結果(圧力値)に関する検知信号を、A/D変換器20を介してコンピュータ22に送信するものである。この圧力計17は、圧力計11と同様のものを用いることができる。
【0038】
圧力計(第3圧力計)19は、第2サーボ弁18の出力側の気体の圧力を計測し、その計測結果(圧力値)に関する検知信号を、A/D変換器20を介してコンピュータ22に送信するものである。この圧力計19は、圧力計11と同様のものを用いることができる。
【0039】
導管23c、導管23d、導管23e、導管23fおよび導管24の断面積は、第2サーボ弁18の有効断面積の4倍以上になることが好ましい。導管23c、導管23d、導管23e、導管23fおよび導管24の断面積が、この範囲にあると、導管による圧力降下をほとんど無視することができるからである。
【0040】
A/D変換器20は、気体流量計12、圧力計11、圧力計15、圧力計17及び圧力計19からのアナログ信号をデジタル信号に変換するものである。また、D/A変換器21は、コンピュータ22からの、第1サーボ弁13及び第2サーボ弁18の開閉、接続切り替えに関するデジタル信号をアナログ信号に変換するものである。
【0041】
コンピュータ(流量制御手段)22は、気体流量計12によって計測された気体の流入量に関する検出信号と、圧力計11、圧力計15、圧力計17及び圧力計19によって計測された各部の気体の圧力に関する検出信号とを、A/D変換器20を介してデジタル信号として受信し、それらの検出信号に基づいて、第1サーボ弁13から第1等温化圧力容器14への気体の流入量及び第2サーボ弁18から外部へ出力される正方向及び負方向の気体の流出量を制御する制御信号を、D/A変換器21を介して、それぞれ第1サーボ弁13及び第2サーボ弁18に送信するものである。このコンピュータ22において、気体流量計12によって計測された気体の流入量Qinと、圧力計11、圧力計15、圧力計17及び圧力計19によって計測された各部の気体の圧力P11,P15,P17,P19とを適宜用いて、第1サーボ弁13の開閉または開度、及び第2サーボ弁18の開閉または開度を制御するための演算が行なわれる。
【0042】
例えば、正方向の流量を発生するときは、コンピュータ22は、気体流量計12からA/D変換器20を介して入力された第1等温化圧力容器14への気体の流入量に関する検出信号と、圧力計15からA/D変換器20を介して入力された第1等温化圧力容器14内の気体の圧力P15に関する検出信号とに基づいて、第2サーボ弁18にD/A変換器21を介して制御信号を出力して、第2サーボ弁18から導管24に非定常流量の気体流が発生するように第2サーボ弁18を制御する。その際、コンピュータ22において、圧力計15によって計測された圧力P15から第1等温化圧力容器14内の圧力変化を求め、この圧力変化から第1等温化圧力容器14に流入した気体の流入量と容器から流出した流出量の差ΔQが求められる。一方、気体流量計12では、第1等温化圧力容器14に流入する気体の流入量Qinが計測される。この流入量と流出量との差ΔQと、気体の流入量Qinとから、第2サーボ弁18から導管24に流出される気体流の流量(流出量)Qout(Qin−ΔQ=Qout)を求めることができる。このとき、第1等温化圧力容器14内の気体は、等温状態に保持されるため、第1等温化圧力容器14内の気体の圧力P15を計測すれば、圧力P15の微分値に係数を掛けることでΔQを求めることができる。したがって、この導管24に流出される気体流の流量Qoutが所望の値になるように、第1等温化圧力容器14に対する第2サーボ弁18の開閉または開度をフィードバック制御することによって、基準とするに十分な精度で所定の正方向の流量の気体流を第2サーボ弁18から流出させることができる。
【0043】
ここで、第1等温化圧力容器14への気体の流入量Qinに関する検出信号と、第1等温化圧力容器14内の気体の圧力P15に関する検出信号とは、それぞれ10〜15秒間の計測を行ない、その計測は10m秒以内のサンプリング時間で行ない、計測結果をコンピュータ22に入力することが好ましい。サンプリング時間がこの範囲にあると、流量の検出精度を十分に高くすることができる。
【0044】
なお、第1等温化圧力容器14へ気体(作動流体)を流入させる際には、第1サーボ弁13を流れる気体がチョーク状態で通過するように、圧力計11及び圧力計15によって計測される第1サーボ弁13の前後の圧力P11,P15を確認し、必要に応じて減圧弁31を調節する。
【0045】
また、負方向の流れは、第2サーボ弁18の下流側(図1の左側)に、第2等温化圧力容器16を介してエジェクタ33を用いた真空源を接続し、第2サーボ弁18を操作することによって、第2等温化圧力容器16に流入させる気体の流量を制御し、負方向の非定常流を発生する。このとき、気体(作動流体)は、第2サーボ弁18をチョーク状態で通過するように、圧力計19及び圧力計17によって、第2サーボ弁18の前後の絶対圧P19,P17を計測して確認し、必要に応じてエジェクタ33及び減圧弁34を調節すると共に、これらの圧力P19及び圧力P17と第2サーボ弁18の有効断面積とに基づいて、第2等温化圧力容器16に流入した流量ΔQを算出して、負方向の流量Qoutとする。更に、第2等温化圧力容器16の圧力変化を圧力計17によって計測して第2等温化圧力容器16に流入した流量ΔQを算出し、負方向の流量Qoutの精度補償を行う。
【0046】
次に、図1に示した連続非定常流量発生装置1によって、連続的に第2サーボ弁18から所定の流量の気体の往復流を発生させる方法について説明する。
本実施形態の連続非定常流量発生装置1では、正方向の流れは、第1サーボ弁13を操作することによって、気体供給源30からの流入量の制御をして、連続的に流量発生を行う。一方、第2サーボ弁18を操作することによって、第1等温化圧力容器14内の圧力変化を制御し、任意の正方向の非定常流を発生する。
【0047】
また、負方向の流れは、第2サーボ弁18の下流側(図1の左側)に、第2等温化圧力容器16を介してエジェクタ33を用いた真空源を接続し、第2サーボ弁18を操作することによって、第2等温化圧力容器16に流入させる気体の流量を制御し、負方向の非定常流を発生する。
【0048】
次に、正方向の流れの発生について詳細に説明する。
正方向の流れは、まず、減圧弁31を開けて、気体供給源30から導管32、導管23aを通って、気体流量計12に流入させる。このとき、減圧弁31を操作して、気体供給源30から気体流量計12を通って連続非定常流量発生装置1に流入する気体の供給圧力を所定圧力に設定する。供給圧は400〜600kPaの範囲に設定することが好ましい。供給圧がこの範囲にあると、通常の流量計等の機器を使用する場合の圧力範囲となり、動特性や流量特性を精度良く測定する上で、望ましい。
また、圧力計11によって、減圧弁31を介して流入する気体の圧力P11が計測される。圧力計11によって計測された気体の圧力P11に関する検出信号は、A/D変換器20を介してアナログ信号からデジタル信号に変換されてコンピュータ22に入力される。
【0049】
気体流量計12に流入した気体は、第1サーボ弁13が開かれると、導管23b及び導管23cを通って第1等温化圧力容器14に流入する。このとき、気体流量計12によって、導管23b、第1サーボ弁13及び導管23cを通って第1等温化圧力容器14に流入する気体の流入量が計測される。気体流量計12によって計測された気体の流入量に関する検出信号は、A/D変換器20を介してアナログ信号からデジタル信号に変換されてコンピュータ22に入力される。
【0050】
また、第1サーボ弁13は、コンピュータ22から出力され、D/A変換器21を介してデジタル信号からアナログ信号に変換された制御信号にしたがって、弁の開閉が操作される。
【0051】
そして、第1等温化圧力容器14に流入した気体は、等温状態に保持される。このとき、第1等温化圧力容器14内に充填された熱伝導性材料は、第1等温化圧力容器14への気体の流入および第1等温化圧力容器14からの気体の流出に際して、第1等温化圧力容器14内の気体の温度変化を抑制する機能を有する。例えば、第1サーボ弁13の開放前に、第1等温化圧力容器14内に気体を急激に流入させた場合、第1等温化圧力容器14内の圧力が急激に高くなるため、内部の気体の温度が上昇する。しかし、この気体の熱エネルギーは、熱伝導性材料を通じて第1等温化圧力容器14の内壁に伝達され、さらに第1等温化圧力容器14から外部に放熱される。このとき、熱伝導性材料は熱伝導性がよく、熱伝達速度が速いから、第1等温化圧力容器14内の気体の温度上昇は低く抑制される。このように、気体を流入させる際に圧力の上昇とともに内部の気体の温度が高くなろうとするが、その熱は熱伝導性材料を経て第1等温化圧力容器14から放熱されてしまうため、全体の温度の上昇は小さくなる。
【0052】
次に、第2サーボ弁18が開放されると、第1等温化圧力容器14に保持された気体は、導管23dを通って、第2サーボ弁18から導管24に流出される。このとき、第1等温化圧力容器14から瞬間的に大量の気体が流出するので、第1等温化圧力容器14内の気体が急激に膨張し、この膨張に伴って温度が低下することになる。この場合は、熱伝導性材料から速やかに熱が供給され、さらに第1等温化圧力容器14が外部から熱吸収し、熱伝導性材料に対して熱の供給が行なわれるから、結局、全体の温度の低下が抑制される。
【0053】
ここで、圧力計15によって、第1等温化圧力容器14内の気体の圧力が計測され、計測された圧力値は、A/D変換器20を介してアナログ信号からデジタル信号に変換されてコンピュータ22に入力される。
また、第2サーボ弁18は、コンピュータ22から出力され、D/A変換器21を介してデジタル信号からアナログ信号に変換された制御信号にしたがって、三方弁の接続方向(開閉)が操作され、その開度が調整される。
【0054】
そして、第2サーボ弁18が開放されたとき、第1等温化圧力容器14に保持された気体は、導管23dを通って第2サーボ弁18から導管24に流出され、正方向の流量が発生する。
【0055】
次に、負方向の流れについて説明する。
第2等温化圧力容器16は、エジェクタ33によって導管23eを通って真空状態に保持される。また、エジェクタ33による真空圧は、導管35を通って接続される減圧弁34によって調整される。
このとき、第2等温化圧力容器16内の圧力は低くなり、内部の気体の温度が低下するが、前記した第1等温化圧力容器14と同様に、第2等温化圧力容器16内の熱伝導材料を通じて速やかに熱が供給され、内部の気体は等温状態に保持される。
【0056】
次に、第2サーボ弁18が操作され、第2等温化圧力容器16が第2サーボ弁18の外部側に開放されると、外気(気体)が導管24を通って、第2サーボ弁18から導管23fに流入し、さらに第2等温化圧力容器16内に流入する。
このとき、流入した気体により、第2等温化圧力容器16内の圧力が急激に高くなるため、内部の温度が上昇する。しかし、この気体の熱エネルギーは、熱伝導材料を通じて速やかに第2等温化圧力容器16の外部に放熱され、流入した気体は等温状態に保持される。そして、第2等温化圧力容器16に流入した気体は、エジェクタ33によって、導管23eを通って排気される。
このとき、第2等温化圧力容器16内の圧力が再び低下するため、内部の温度が低下するが、熱伝導材料を通じて速やかに熱が供給され、内部の気体は等温状態に保持される。
【0057】
ここで、圧力計17及び圧力計19によって、それぞれ、第2等温化圧力容器16内の気体の圧力及び第2サーボ弁18から流出する気体の圧力が計測され、計測された圧力値は、A/D変換器20を介してアナログ信号からデジタル信号に変換されてコンピュータ22に入力される。
また、第2サーボ弁18は、コンピュータ22から出力され、D/A変換器21を介してデジタル信号からアナログ信号に変換された制御信号にしたがって、三方弁の接続方向(開閉)が操作され、その開度が調整される。
【0058】
そして、第2サーボ弁18が開放されたとき、外部から気体が導管24を通って第2サーボ弁18から導管23fに流入し、さらに第2等温化圧力容器16に流入する。これによって、負方向の流量が発生する。
【0059】
本実施形態においては、正方向及び負方向の流量を含む往復流の発生に際して、発生する往復流の流量波形の平均流量がゼロの場合と、平均流量がゼロでない場合とに応じて、二種類の制御方法を使い分ける。
以下、それぞれの制御方法について説明する。
【0060】
(平均流量がゼロの場合)
まず、図3を参照(適宜図1参照)して、発生する往復流の流量波形の平均流量がゼロの場合の連続非定常流量発生装置1の制御について説明する。ここで、図3は、本発明の実施形態に係る連続非定常流量発生装置の、平均流量がゼロの場合における処理の流れを示すフローチャートである。
【0061】
発生する流量波形の平均流量がゼロの場合は、正方向の流れを生成する場合と、負方向の流れを生成する場合とによって、第1サーボ弁13と第2サーボ弁18との動作が異なる。
まず、正方向の流れを発生する場合は、第1サーボ弁13を開放して、気体供給源30から第1等温化圧力容器14に気体を流入させて、発生する流量波形に必要な所定の圧力まで第1等温化圧力容器14を昇圧する(ステップS11(第1工程))。
【0062】
次に、正方向の流れの流量波形を実現する操作信号を、コンピュータ22からD/A変換器21を介して、第2サーボ弁18に出力し、正方向の流量を発生する(ステップS12(第2工程))。なお、ステップS11において、第1等温化圧力容器14を所定の圧力に昇圧した後は、第1サーボ弁13は全閉の状態にする。すなわち、正方向の流れは、基本的には、第1等温化圧力容器14からの気体の放出過程のみとする。
これによって、正方向の流量を発生する。
【0063】
次に、負方向の流れを発生する場合は、圧力計17及び圧力計19によって、それぞれ第2サーボ弁18の下流側の絶対圧及び上流側の大気圧(外部側の圧力)を計測し、コンピュータ22は、これらの計測値に基づいて、第2サーボ弁18の適切な開度を算出する(ステップS13(第3工程))。算出した開度にしたがって第2サーボ弁18を制御して、第2等温化圧力容器16に導管24から気体を流入させることで、負方向の流量を発生する(ステップS14(第4工程))。また、このとき、エジェクタ33及び減圧弁34は、作動流体(気体)が第2サーボ弁18を通過するときにチョーク状態となる絶対圧が保持されるように調整されている。
【0064】
一方、正方向の流れを生成したために第1等温化圧力容器14は減圧されている。そこで、負方向の流量を発生している間(ステップS13からステップS14)に、並行して、第1サーボ弁13を開放して、気体供給源30から第1等温化圧力容器14に、次回発生分の作動流体を充填し、所定の圧力まで昇圧する(ステップS15(第1工程))。また、昇圧後は、第1サーボ弁13は全閉の状態にする。
【0065】
なお、発生する流量波形の平均流量がゼロの場合は、正方向と負方向の流量波形は、ゼロを基準に対称であるから、正方向で放出した流量による圧力変化と負方向での圧力変化とは、正負の符号が逆の圧力変化となる波形を目標として、ステップS15において、第1サーボ弁13を操作して第1等温化圧力容器14を昇圧する。
【0066】
ステップS14において、負方向の流量発生を行った後は、再びステップS12に戻り、ステップS15において昇圧しておいた第1等温化圧力容器14と第2サーボ弁18とを接続し、第2サーボ弁を操作して正方向の流量を発生する。
【0067】
以降、ステップS12からステップS15を繰り返すことで、平均流量がゼロの場合の往復流を精度よく連続して発生することができる。
【0068】
(平均流量がゼロでない場合)
次に、図4を参照(適宜図1参照)して、発生する往復流の流量波形の平均流量がゼロでない場合の連続非定常流量発生装置1の制御について説明する。ここで、図4は、本発明の実施形態に係る連続非定常流量発生装置の、平均流量がゼロでない場合における処理の流れを示すフローチャートである。
【0069】
発生する流量波形の平均流量がゼロでない場合については、正方向の流れを生成する場合と、負方向の流れを生成する場合とに分けて順次説明する。
【0070】
まず、正方向の流れを発生する場合は、発生する流量の正方向の流量波形成分(すなわち、流量がゼロ以上となる部分)のみの平均流量値を算出し(ステップS21(第5工程))、その算出値に相当する第1サーボ弁13の開度で第1サーボ弁13を開いて、気体供給源30から第1等温化圧力容器14へ流入させる気体の流量を制御する(ステップS22(第6工程))。また、このとき、減圧弁31は、作動流体(気体)が第1サーボ弁13を通過するときにチョーク状態となる圧力が保持されるように調整されている。
【0071】
一方、第1等温化圧力容器14の下流側の第2サーボ弁18は、発生流量に相当する第1等温化圧力容器14の圧力の制御を行い、正方向の流量を発生する(ステップS23(第7工程))。
【0072】
次に、負方向の流れを発生する場合は、圧力計17及び圧力計19によって、それぞれ第2サーボ弁18の下流側の絶対圧及び上流側の大気圧(外部側の圧力)を計測し、コンピュータ22は、これらの計測値に基づいて、第2サーボ弁18の適切な開度を算出する(ステップS24(第8工程))。そして、ステップS24で算出した開度にしたがって第2サーボ弁18を制御して、第2等温化圧力容器16に導管24から気体を流入させることで、負方向の流量を発生する(ステップS25(第9工程))。また、このとき、エジェクタ33及び減圧弁34は、作動流体(気体)が第2サーボ弁18を通過するときにチョーク状態となる絶対圧が保持されるように調整されている。
【0073】
ここで、第1サーボ弁13は、次回の正方向の流れを生成するために、第1等温化圧力容器14の圧力を維持する必要がある。しかし、発生する流量波形が、例えば、正弦波などの周期的波形の場合は、第1等温化圧力容器14内の圧力値が、前回の正方向の流れを発生したときと同一であっても、圧力の微分値(時間微分)は同一とは限らず、この微分値も同一でなければ、滑らかな流量波形を得ることができない。すなわち、微分値が異なれば、流量がゼロの近傍において、精度よく流量波形の生成を行うことが困難である。
【0074】
そこで、負方向の流量を発生している間(ステップS24からステップS25)に、並行して、次回の正方向の流れを生成する最初の時点における第1等温化圧力容器14内の圧力の微分値が、前回の正方向の流れを生成する最初の時点の圧力の微分値と同一になるよう、第1サーボ弁13を操作して、第1等温化圧力容器14の圧力制御を行い、圧力値と圧力の微分値の調整を行う(ステップS26(第10工程))。また、このとき、減圧弁31は、作動流体(気体)が第1サーボ弁13を通過するときにチョーク状態となる圧力が保持されるように調整されている。
【0075】
ステップS25において、負方向の流量発生を行った後は、再びステップS23に戻り、ステップS26において圧力値および圧力の微分値を調整しておいた第1等温化圧力容器14と第2サーボ弁18とを接続し、第2サーボ弁18を操作して正方向の流量を発生する。
【0076】
以降、ステップS23からステップS26を繰り返すことで、平均流量がゼロでない場合の往復流を精度よく連続して発生することができる。
【0077】
以上のようにして、第2サーボ弁18の出力側に設けられた導管24に発生する気体の往復流の流量が高精度に制御される。したがって、導管24に、流量の動特性試験や流量特性試験を行なう機器を接続して、連続非定常流量発生装置1から連続的に発生する計測基準となる非定常流量と、接続された機器の応答結果とを比較することで、それらの機器の検定を行なうことができる。例えば、図2に示す実施形態の流量計検定装置2のように、連続非定常流量発生装置1の第2サーボ弁18を通って流出及び流入される気体を被検定対象の流量計40に導き、当該流量計40による流量の計測精度を検定できる。この流量計検定装置2においては、流量計40による気体の流量の計測結果を、A/D変換器20によってデジタル値に変換してコンピュータ22に入力する。そして、コンピュータ22においては、流量計40による流量の計測結果と、第2サーボ弁18から導管24に出力される気体の往復流の流量(基準値)とを比較することによって、流量計40における流量の計測精度を検定することができる。そして、第1サーボ弁13を操作するとともに、前記コンピュータ22によって、第2サーボ弁18の開閉および開度を調節して第2サーボ弁18から出力される気体の往復流の流量(基準値)を動的に変化させ、その流量が変化する気体流に対する流量計40の計測結果を連続して計測して、コンピュータ22によって基準値と比較対照すれば、流量計40の動特性を検定することができる。
【0078】
本発明によれば、今まで有効な方法がなかった気体用流量計の往復流に対する動特性試験が行えるばかりか、空気圧機器の流量特性試験が行えるなど、その有用性は極めて高い。
【0079】
以上、実施形態として、圧縮性流体として気体を用いる場合を示したが、本発明は、この実施形態に限定されず、他の圧縮性流体を用いる場合にも適用可能である。
【実施例】
【0080】
図2に示した構成の連続非定常流量発生装置1を用いて、第2サーボ弁18から導管24に出力される空気の流量を制御した。用いた連続非定常流量発生装置の各構成機器の諸元および実験条件は、下記の通りである。また、各機器の間は、内径6mmのナイロン製の導管で連絡した。
気体供給源:アネスト岩田(株)製、圧縮機
エジェクタ:妙徳(株)製、エジェクタ(CVコンバム)
減圧弁:SMC社製、精密減圧弁
気体流量計:東京メータ社製、層流型流量計
圧力計(11,15,17,19):豊田工機社製、半導体式圧力センサ
第1等温化圧力容器、第2等温化圧力容器:
内容積:0.1L(リットル)
材質:アルミニウム
形状:円筒
熱伝導性材料
材質:銅線(東京メータ社製、線径:50μm)
充填密度:300kg/m3
第1サーボ弁:フェスト社製、スプール式サーボ弁
第2サーボ弁:フェスト社製、スプール式サーボ弁
コンピュータ:サンプリング周期 0.2m秒
【0081】
(流量波形の平均流量がゼロの場合)
図5に、図2に示した流量計検定装置2を用いて、被検定対象の流量計40として、層流型流量計(QFS)を接続し、流量波形の平均流量がゼロの往復流を発生し、この層流型流量計によって流量を測定した結果を示す。
図5において、破線は連続非定常流量発生装置1に与える流量波形の目標値を示し、実線は連続非定常流量発生装置1によって実際に発生した流量波形を示し、2点鎖線は、被検定対象の流量計40(層流型流量計(QFS))による測定結果を示している。
【0082】
図2に示すように、この連続非定常流量発生装置1に被検定対象の流量計40を接続した流量計検定装置2を構成し、この流量計検定装置2において、コンピュータ22によって第1サーボ弁13、第2サーボ弁18などを制御して、図5に破線で示したように、平均流量0(NL/min)、流量の変動振幅10(NL/min)、変動周波数1Hzの振動流を目標値として発生させた。このとき、気体流量計12、圧力計15、圧力計17及び圧力計19で計測された流量及び圧力値に基づいて計算される流量を、図5に実線で示し、流量計40で測定された流量を、図5に2点鎖線で示した。
【0083】
その結果、図5に示すとおり、実際の発生流量(実線)と目標値(破線)と被検定対象の層流型流量計(2点鎖線)とはよく一致しており、平均流量がゼロの往復流が正確に発生できることがわかる。
気体流量計12の計測精度は2%以内であることから、この装置によれば、5%以内の精度で正確な流量が保証できることが分かる。
【0084】
(流量波形の平均流量がゼロでない場合)
図6に、図2に示した流量計検定装置2を用いて、被検定対象の流量計40として、層流型流量計(QFS)を接続し、流量波形の平均流量がゼロでない往復流を発生し、この層流型流量計によって流量を測定した結果を示す。
図6において、破線は連続非定常流量発生装置1に与える流量波形の目標値を示し、実線は連続非定常流量発生装置1によって実際に発生した流量波形を示し、2点鎖線は、被検定対象の流量計40(層流型流量計(QFS))による測定結果を示している。
【0085】
図2に示すように、この連続非定常流量発生装置1に被検定対象の流量計40を接続した流量計検定装置2を構成し、この流量計検定装置2において、コンピュータ22によって第1サーボ弁13、第2サーボ弁18などを制御して、図6に破線で示したように、平均流量5(NL/min)、流量の変動振幅10(NL/min)、変動周波数1Hzの振動流を目標値として発生させた。このとき、気体流量計12、圧力計15、圧力計17及び圧力計19で計測された流量及び圧力値に基づいて計算される流量を、図6に実線で示し、流量計40で測定された流量を、図6に2点鎖線で示した。
【0086】
その結果、図6に示すとおり、実際の発生流量(実線)と目標値(破線)と被検定対象の層流型流量計(2点鎖線)とはよく一致しており、平均流量がゼロでない往復流が正確に発生できることがわかる。
気体流量計12の計測精度は2%以内であることから、この装置によれば、5%以内の精度で正確な流量が保証できることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の実施形態に係る連続非定常流量発生装置の構成を示す概念図である。
【図2】本発明の実施形態に係る流量計検定装置の構成を示す概念図である。
【図3】本発明の実施形態に係る連続非定常流量発生装置の、平均流量がゼロの場合における処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態に係る連続非定常流量発生装置の、平均流量がゼロでない場合における処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】本発明の連続非定常流量発生装置による、平均流量がゼロの場合における往復流の発生結果を示すグラフである。
【図6】本発明の連続非定常流量発生装置による、平均流量がゼロでない場合における往復流の発生結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0088】
1 連続非定常流量発生装置
2 流量計検定装置
11 圧力計
12 気体流量計(流量計)
13 第1サーボ弁
14 第1等温化圧力容器
15 圧力計(第1圧力計)
16 第2等温化圧力容器
17 圧力計(第2圧力計)
18 第2サーボ弁
19 圧力計(第3圧力計)
20 A/D変換器
21 D/A変換器
22 コンピュータ(流量制御手段)
30 気体供給源(流体供給源)
31 減圧弁
33 エジェクタ(真空源)
34 減圧弁
40 被検定対象の流量計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体供給源から供給される圧縮性流体の流入量を計測する流量計と、
前記流量計を通って流入する前記圧縮性流体の流入量を規制する第1サーボ弁と、
前記第1サーボ弁を通って流入する前記圧縮性流体を等温状態に保持する第1等温化圧力容器と、
前記第1等温化圧力容器内の圧縮性流体の圧力を計測する第1圧力計と、
真空源によって真空状態に保持される第2等温化圧力容器と、
前記第2等温化圧力容器内の圧縮性流体の圧力を計測する第2圧力計と、
前記第1等温化圧力容器からの圧縮性流体の流出又は前記第2等温化圧力容器への圧縮性流体の流入の何れかを選択的に規制する第2サーボ弁と、
前記第2サーボ弁の外方の圧縮性流体の圧力を測定する第3圧力計と、
前記流量計によって計測された圧縮性流体の流入量と、前記第1圧力計によって計測された前記第1等温化圧力容器内の圧縮性流体の圧力とに基づいて、前記第2サーボ弁からの圧縮性流体の流出量を制御すると共に、前記第2圧力計と前記第3圧力計とによって計測された圧縮性流体の圧力に基づいて、前記第2サーボ弁からの圧縮性流体の流入量を制御する流量制御手段と
を備えることを特徴とする圧縮性流体の連続非定常流量発生装置。
【請求項2】
前記第1等温化圧力容器及び前記第2等温化圧力容器は、金属細線の集束体または多孔質金属体からなる熱伝導性材料が内部に充填されていることを特徴とする請求項1に記載の圧縮性流体の連続非定常流量発生装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の圧縮性流体の連続非定常流量発生装置を用いた圧縮性流体の連続非定常流量発生方法であって、
前記第1サーボ弁を開いて前記流体供給源から前記圧縮性流体を供給し、前記第1等温化圧力容器を所定の圧力になるまで昇圧する第1工程と、
前記第2サーボ弁の開度を制御して、前記第1等温化圧力容器から流出される圧縮性流体の流出量を連続的に制御する第2工程と、
前記第2サーボ弁の外方の圧力と前記第2等温化圧力容器の圧力とに基づいて、前記第2サーボ弁の開度を算出する第3工程と、
前記第2サーボ弁を前記算出した開度で開き、前記第2等温化圧力容器へ圧縮性流体を流入する第4工程と、を含み、
前記第1工程乃至前記第4工程を順次繰り返して行う際に、前記第3工程又は前記第4工程と並行して前記第1工程を行うことを特徴とする圧縮性流体の連続非定常流発生方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の圧縮性流体の連続非定常流量発生装置を用いた圧縮性流体の連続非定常流量発生方法であって、
前記第2サーボ弁から前記圧縮性流体が流出する方向の流量波形成分の平均流量に対応する前記第1サーボ弁の開度を算出する第5工程と、
前記第1サーボ弁を前記算出した開度で開いて前記流体供給源から前記圧縮性流体を前記第1等温化圧力容器に供給する第6工程と、
前記第1等温化圧力容器内の圧縮性流体の圧力に基づいて、前記第2サーボ弁の開度を制御して、前記第1等温化圧力容器から流出する流量を連続的に制御する第7工程と、
前記第2サーボ弁の外方の圧力と前記第2等温化圧力容器の圧力とに基づいて、前記第2サーボ弁の開度を算出する第8工程と、
前記第2サーボ弁を前記第8工程で算出した開度で開き、前記第2等温化圧力容器へ圧縮性流体を流入する第9工程と、
前記第1等温化圧力容器の圧力及びその微分値に基づいて、前記第1サーボ弁の開閉を制御し、前記流体供給源から前記圧縮性流体を前記第1等温化圧力容器に供給する第10工程と、を含み、
前記第10工程は、前記第8工程又は前記第9工程と並行して行い、前記第7工程乃至前記第10工程を順次繰り返し行うことを特徴とする圧縮性流体の連続非定常流発生方法。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の圧縮性流体の連続非定常流量発生装置の第2サーボ弁を通って流出される圧縮性流体を被検定対象の流量計に流入させて、当該流量計による流量の計測精度を検定するようにしたことを特徴とする圧縮性流体の流量計検定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−76134(P2008−76134A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−253848(P2006−253848)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)