説明

圧縮成形方法

【課題】圧縮成形金型において、圧縮時の離型フィルムの皺を防止、低減する。
【解決手段】圧縮金型108の表面が枠状金型106の表面に対して凹部140となるように当該圧縮金型108と枠状金型106とが位置決めされる工程と、上下の金型102、104を接近させる工程と、枠状金型106と基板150との間に隙間Gを保った状態で枠状金型106を位置決めする工程と、当該隙間Gを保ったままで、圧縮金型108を基板150へと移動させる工程と、圧縮金型108が所定の位置に達した段階で、枠状金型106を基板150に当接させることにより隙間Gを消滅させる工程と、更に、圧縮金型108を基板150側へと移動させる工程をへて圧縮成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂の圧縮成形の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載される樹脂モールド装置が公知である。この樹脂モールド装置を概略的に図2(A)に示す。
【0003】
樹脂モールド装置1は、相対向して配置される上型2と下型4を備え、下型4が対向方向に沿った貫通孔6Aを有した枠状金型6と当該貫通孔6Aに勘合して対向方向に進退動可能な圧縮金型8とからなり、下型4の表面に離型フィルム20が介在している。
【0004】
この樹脂モールド装置1では、圧縮金型8の表面8Aが枠状金型6の表面6Bよりも下方向に位置するように位置決めされた状態(即ちキャビティ40が形成される状態)で当該キャビティ40に封止材料としての樹脂30が投入される。
【0005】
一方上型2には、被成形品として、半導体チップ52を複数搭載した基板50が保持されている。
【0006】
封止材料の投入等が完了すると、上型2と下型4とが図示せぬプレス機構によって接近する。このとき最初に、枠状金型6の表面6Bが基板50に当接し(厳密には離型フィルム20を介して当接し)、基板50が上下の金型2、4によってクランプされた状態となる。
【0007】
その後、圧縮金型8が上昇し、キャビティ40の容積が減少すると共に投入された樹脂30が圧縮され、圧縮成形が行われる。
【0008】
その後、樹脂30が硬化する程度の時間をおいて上下の金型2、4が離間し、樹脂30にて成形(封止)された基板50が取り出される。
【0009】
【特許文献1】特開2005−88395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記樹脂モールド装置1においては、枠状金型6によるクランプ後の圧縮金型8の上昇によって、離型フィルムに「皺」が生じる場合があった。これは、枠状金型6の表面6Bと圧縮金型8の表面8Aとに段差をつけてキャビティ(凹部)40を形成していることから、当該キャビティの深さ方向(図1においては上下方向)に延在する離型フィルム20が、圧縮金型8の上昇に伴って余分となり、当該余分が「皺」となって顕在化することが原因と考えられる。特に、図2(B)にて示すように、丁度枠状金型6の表面6Bと圧縮金型8の表面8Aとの段差部分周辺に「皺」が生じることがあった。
【0011】
このような「皺」の存在は、成形品の表面に当該「皺」の形状を転写することは勿論、場合によって「皺」として折り込まれた一部が樹脂の中に埋入し、高価な半導体製品を破棄しなければならない場合もあった。
【0012】
本発明は、この「皺」の発生を解消し、高品質な圧縮成形を行うことを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、相対向して配置される第1、第2の金型を備え、当該第2の金型が前記対向方向に沿った貫通孔を有した枠状金型と当該貫通孔に勘合して前記対向方向に進退動可能な圧縮金型とからなり、前記第2の金型の表面に離型フィルムが介在する圧縮成形金型を用いた圧縮成形方法であって、前記圧縮金型の表面が前記枠状金型の表面に対して凹部となるように当該圧縮金型と枠状金型とが位置決めされる工程と、前記第1、第2の金型を接近させる工程と、当該枠状金型と第1の金型側の部材との間に所定の隙間を保った状態に当該枠状金型を位置決めする工程と、当該隙間を保ったままで、前記圧縮金型を前記第1の金型側へと移動させる工程と、該圧縮金型が所定の位置に達した段階で、前記枠状金型を前記第1の金型側の部材に当接させることにより前記所定の隙間を消滅させる工程と、更に、前記圧縮金型を前記第1の金型側へと移動させる工程を経ることにより、上記課題を解決しようとするものである。
【0014】
このように、枠状金型にて第1の金型側の部材を敢えてクランプせずに所定の隙間を設けることで、枠状金型に対して圧縮金型が相対的に移動した場合(即ち、第1の金型側に移動する場合)においても、余分となった離型フィルムが当該隙間からキャビティ外部へと押し出され、結果として「皺」の発生を防止、低減することが可能となっている。
【0015】
また、前記所定の隙間を、前記離型フィルムの厚みより大きくなるように構成することによって、離型フィルムに生じ得る皺の発生を効果的に防止、低減することができると共に、キャビティ内の不要なガス成分や水分を効率的に排出でき、品質の高い成形品を製造することが可能である。
【0016】
また、前記第1の金型側の部材を、前記第1の金型の表面に吸着保持された半導体チップ搭載基板とすれば、半導体製品に対する高品質な樹脂封止パッケージを提供することが可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明を適用することにより、圧縮成形金型の圧縮時に生じ得る、離型フィルムの皺の発生を防止、低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る圧縮成形方法を用いて圧縮成形を行った場合における圧縮成形金型の状態を示す側断面図である。
【0020】
<圧縮成形金型の構成>
圧縮成形金型100は、上下に対向して配置される上型(第1の金型)102と下型(第2の金型)104を備え、下型104が上下方向の貫通孔106Aを有した枠状金型106と当該貫通孔106Aに勘合して上下に進退動可能な圧縮金型108とからなる。下型104の表面には、図示せぬフィルム供給機構によって離型フィルム120が供給されている。
【0021】
また、図示せぬプレス機構によって当該上型102と下型104とは互いに当接・離間可能に構成され、更に、枠状金型106と圧縮金型108とが互いに独立して上下に進退動可能とされている。
【0022】
なお、上型102の表面(下型104側表面)には、半導体チップ152が搭載された基板150(第1の金型側部材)を適宜吸着保持することが可能な吸着機構が備わっている。
【0023】
また、金型の内部には、金型を所定の温度に加熱するヒータが内蔵されている。
【0024】
<圧縮成形金型の作用と圧縮成形方法>
最初に、上型102と下型104とが所定の間隔に離間した状態で、上型102には被成形品としての基板150が供給され、下型104には封止材料としての樹脂130が供給される。本実施形態では、樹脂130がキャビティ140の形状に沿った打錠樹脂(予備成形樹脂、プレ成形樹脂)とされているが、樹脂の形態に限定はない。例えば、粒状、粉状、液状等の様々な形態の樹脂を利用できる。また、樹脂の種類も特に制限されない。
【0025】
なお、下型104の表面には常時離型フィルム120が供給されている。
【0026】
また、下型104に吸引機構等を設け、必要時に当該離型フィルム120を下型104の表面に吸着できるような構成としておくとよい。
【0027】
本実施形態では、圧縮金型108の表面108Aと枠状金型106の表面106Bとが水平に一致した状態(図1(A)参照)にて下型104上に樹脂130が投入され、その後、圧縮金型108の表面108Aが枠状金型106の表面106Bよりも下方に位置するように位置決めされた状態が形成される。
【0028】
なお、例えば、樹脂130投入時点において既に圧縮金型108の表面108Aが枠状金型106の表面106Bに対して下方に位置するように位置決めされた状態(即ち圧縮金型108の表面108Aが枠状金型106の表面106Bに対して窪んでいる状態)で供給されるような構成であっても差し支えない。
【0029】
続いて、上型102と下型104とが図示せぬプレス機構によって接近する。このままプレス機構の作動を続ければ、本来であればまず最初に、枠状金型106の表面106Bが基板150に当接し(厳密には離型フィルム120を介して当接し)、基板150が上下の金型102、104によってクランプされた状態が形成されることになる。
【0030】
しかしながら、本実施形態においては、枠状金型106の表面106Bが基板150に当接する前に、基板150との間に所定の隙間Gを形成して枠状金型106の移動が停止する。この隙間Gの大きさは、基板150の大きさや使用する樹脂130の量、種類、使用する離型フィルム120の厚み、種類などによって適宜変更可能であり、固定的なものではない。但し、少なくとも離型フィルム120の厚みより大きくなるように構成されている。
【0031】
この時点において、投入された樹脂130は、金型に内蔵されたヒータによって加熱されるため膨張状態にあるが、隙間Gは、当該膨張によっても樹脂130がキャビティ140の外へと不用意に漏れ出てしまうことがない程度に調整されており問題ない。
【0032】
その後、圧縮金型108が上昇しキャビティ140の容積が減少すると共に、投入された樹脂130が圧縮され圧縮成形が開始される。このとき、隙間Gは離型フィルム120の厚みよりも大きくなるように構成されているため(例えば離型フィルムの厚みが50μであれば当該隙間G>50μ)、キャビティ140内の不要なガス成分や水分(例えば樹脂130が含有していた成分など)を効率的にキャビティ140の外部へと排出でき、品質の高い成形品を製造することが可能である。
【0033】
また、枠状金型106にて基板150を敢えてクランプせずに所定の隙間Gを設けることで、枠状金型106に対して圧縮金型108が相対的に移動した場合(即ち、基板150側に移動する場合)においても、余分となった離型フィルム120が当該隙間Gからキャビティ140の外部へと押し出され、結果として「皺」の発生を防止、低減することが可能となっている。
【0034】
その後、圧縮金型108が所定の位置まで上昇したタイミングを見計らって、枠状金型106が上昇し、隙間Gを消滅させる。これにより、樹脂130に対して圧力が加わった段階においても、樹脂130が当該隙間Gから漏れ出ることを効果的に防止することができる。
【0035】
その後、更に圧縮金型108が上昇し、樹脂130に対して規定の圧力を付与し、基板150に搭載されている半導体チップ152が樹脂130にて封止される。
【0036】
その後、樹脂130が硬化する程度の時間をおいて上下の金型102、104が離間し、成形後の基板150が取り出される。
【0037】
なお、金型に樹脂130を投入するタイミングやその時の金型の状態、および、基板150を投入するタイミングやそのときの金型の状態は本発明では特に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、例えば、半導体チップを搭載した基板を樹脂にて圧縮封止する樹脂封止装置に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る圧縮成形方法を用いて圧縮成形を行った場合における圧縮成形金型の状態を示す側断面図
【図2】特許文献1に記載される圧縮成形方法を用いて圧縮成形を行った場合における圧縮成形金型の状態を示す側断面図
【符号の説明】
【0040】
100…圧縮成形金型
102…上型
104…下型
106…枠状金型
106A…貫通孔
106B…枠状金型表面
108…圧縮金型
108A…圧縮金型表面
120…離型フィルム
130…樹脂
140…凹部(キャビティ)
150…基板
152…半導体チップ
G…隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対向して配置される第1、第2の金型を備え、当該第2の金型が前記対向方向に沿った貫通孔を有した枠状金型と当該貫通孔に勘合して前記対向方向に進退動可能な圧縮金型とからなり、前記第2の金型の表面に離型フィルムが介在する圧縮成形金型を用いた圧縮成形方法であって、
前記圧縮金型の表面が前記枠状金型の表面に対して凹部となるように当該圧縮金型と枠状金型とが位置決めされる工程と、
前記第1、第2の金型を接近させる工程と、
当該枠状金型と第1の金型側の部材との間に所定の隙間を保った状態に当該枠状金型を位置決めする工程と、
当該隙間を保ったままで、前記圧縮金型を前記第1の金型側へと移動させる工程と、
該圧縮金型が所定の位置に達した段階で、前記枠状金型を前記第1の金型側の部材に当接させることにより前記所定の隙間を消滅させる工程と、
更に、前記圧縮金型を前記第1の金型側へと移動させる工程を含む
ことを特徴とする圧縮成形方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記所定の隙間が、前記離型フィルムの厚みより大である
ことを特徴とする圧縮成形方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記第1の金型側の部材が、前記第1の金型の表面に吸着保持された半導体チップ搭載基板である
ことを特徴とする圧縮成形方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−248481(P2009−248481A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100484(P2008−100484)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】