説明

圧縮木製品の製造方法

【課題】木目が自然な感じで連続的に変化し、意匠性にも優れた木目模様を生じさせることができる圧縮木製品の製造方法を提供する。
【解決手段】周回して閉じた周縁部が第1の平面を通過し、かつ前記第1の平面によって分けられる二つの空間の一方にのみ複数の凸状の頂点を含む起伏を有し、かつ前記複数の凸状の頂点のうち任意の二つの頂点は、該二つの頂点を通過するとともに前記第1の平面と直交する第2の平面上で見たとき、前記第1の平面からの高さが高い頂点ほど中心部の近くに位置し、かつ圧縮によって減少する分の容積を加えた容積を有する形状をなすブランク材を形成するブランク材形成工程と、前記ブランク材形成工程で形成したブランク材を軟化させる軟化工程と、前記軟化工程で軟化したブランク材を、大気よりも高温高圧の水蒸気雰囲気中で圧縮することによって略椀状に変形させる圧縮工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材を所定の三次元形状に圧縮成形する圧縮木製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自然素材である木材が注目されている。木材はさまざまな木目を有するため、原木から形取る箇所に応じて個体差が生じ、その個体差が製品ごとの個性となる。また、長期の使用によって生じる傷や色合いの変化自体も、独特の風合いとなって使用者に親しみを生じさせることがある。これらの理由により、合成樹脂や軽金属を用いた製品にはない、個性的で味わい深い製品を生み出すことの出来る素材として木材が注目されており、その成形技術も飛躍的に進歩しつつある。
【0003】
上述した木材の成形技術の一つとして、木材を所定の三次元形状に圧縮成形する技術がある。例えば、軟化処理した状態で圧縮した1枚の木材を仮固定し、この木材を型に入れて回復させることによって三次元形状を有する木材を成形する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この技術では、まず木材を軟化させた状態で木材を圧縮して仮固定を行う。その後、仮固定した木材をスライスした板材を金型にセットし、高圧水蒸気内で再度板材を軟化させ、曲げ処理を行なう。続いて、曲げ処理を行なった湾曲状の部材を再度金型にセットして再び軟化させ、プレス機によってプレスすることにより、最終形状を得る。
【0004】
また、別な木材の圧縮成形技術として、抗膨潤能(ASE)を向上させることによって寸法安定性が向上した木材を製造するために、木材に蒸気加熱加圧処理を施した後、二次工程としてその木材に加熱加圧処理を行う技術が知られている(例えば、特許文献2を参照)。この技術では、実施例として、平板状の木材に対して加熱加圧処理を行うことにより、その木材の寸法安定性が向上することの記載がなされている。
【0005】
木材の圧縮成形技術の一応用例として、木目を変化させる装飾模様を容易に形成することを可能にする技術も知られている(例えば、特許文献3を参照)。この技術では、成形用の金型の金型面の凹凸に沿う湾曲面と、湾曲面から突出または陥没することによって木目が露出した凸部または凹部を有する略椀状のブランク材を形取り、凸部または凹部を近傍と滑らかに接続する平滑面とする圧縮成形を行っている。このような特許文献3に記載の技術によれば、従来の技術では得られない多様で意匠性に優れた木目模様を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−77619号公報
【特許文献2】特許第2855139号公報
【特許文献3】特開2005−205618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献3に記載の従来技術は、局所的に設けられた凸部または凹部を圧縮時に押しつぶして成形しているため、圧縮後の木材表面には不連続的に変化する木目模様が現れることとなる。その結果、圧縮後の木目模様が不自然な印象を与えてしまう場合があった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、木目が自然な感じで連続的に変化し、意匠性にも優れた木目模様を生じさせることができる圧縮木製品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る圧縮木製品の製造方法は、木材を圧縮することによって曲面を含む3次元形状を有する圧縮木製品を製造する圧縮木製品の製造方法であって、周回して閉じた周縁部が第1の平面を通過し、かつ前記第1の平面によって分けられる二つの空間の一方にのみ複数の凸状の頂点を含む起伏を有し、かつ前記複数の凸状の頂点のうち任意の二つの頂点は、該二つの頂点を通過するとともに前記第1の平面と直交する第2の平面上で見たとき、前記第1の平面からの高さが高い頂点ほど中心部の近くに位置し、かつ圧縮によって減少する分の容積を加えた容積を有する形状をなすブランク材を形成するブランク材形成工程と、前記ブランク材形成工程で形成したブランク材を軟化させる軟化工程と、前記軟化工程で軟化したブランク材を、大気よりも高温高圧の水蒸気雰囲気中で圧縮することにより、略椀状に変形させる圧縮工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る圧縮木製品の製造方法は、上記発明において、前記圧縮工程後の前記ブランク材の周縁部付近における前記第1の平面に対する傾斜は、前記圧縮工程前の前記ブランク材の周縁部付近における前記第1の平面に対する傾斜より急であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る圧縮木製品の製造方法は、上記発明において、前記圧縮工程は、 一対の金型を用いて前記ブランク材を挟持して圧縮力を加えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る圧縮木製品の製造方法は、上記発明において、前記圧縮工程で圧縮した前記ブランク材を、前記一対の金型によって挟持したまま前記水蒸気雰囲気よりも高温高圧の水蒸気雰囲気中に配置することにより、前記圧縮工程後の前記ブランク材の形状を固定化する固定化工程をさらに有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、周回して閉じた周縁部が第1の平面を通過し、かつ前記第1の平面によって分けられる二つの空間の一方にのみ複数の凸状の頂点を含む起伏を有し、かつ前記複数の凸状の頂点のうち任意の二つの頂点は、該二つの頂点を通過するとともに前記第1の平面と直交する第2の平面上で見たとき、前記第1の平面からの高さが高い頂点ほど中心部の近くに位置し、かつ圧縮によって減少する分の容積を加えた容積を有する形状をなすブランク材を形成し、このブランク材を圧縮するため、木目が自然な感じで連続的に変化する木目模様を生じさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態に係る圧縮木製品の製造方法の概要を示すフローチャートである。
【図2】図2は、本発明の一実施の形態に係る圧縮木製品の製造方法のブランク材形成工程の概要を模式的に示す図である。
【図3】図3は、ブランク材の構成を示す断面図(図2のA−A線断面図)である。
【図4】図4は、本発明の一実施の形態に係る圧縮木製品の製造方法の圧縮工程の概要を模式的に示す図である。
【図5】図5は、図4のA−A線断面図である。
【図6】図6は、本発明の一実施の形態に係る圧縮木製品の製造方法の圧縮工程において、ブランク材の変形がほぼ完了した状態を示す図である。
【図7】図7は、本発明の一実施の形態に係る圧縮木製品の製造方法の加熱整形工程の概要を模式的に示す図である。
【図8】図8は、本発明の一実施の形態に係る圧縮木製品の製造方法の加熱整形工程において、対をなす加熱整形用凹金型と加熱整形用凸金型とを型締めした状態を模式的に示す図である。
【図9】図9は、本発明の一実施の形態に係る圧縮木製品の製造方法の加熱整形工程後のブランク材の構成を示す斜視図である。
【図10】図10は、本発明の一実施の形態に係る圧縮木製品の製造方法によって製造された圧縮木製品の適用例であるデジタルカメラの外装体の構成を示す斜視図である。
【図11】図11は、図10に示す外装体によって外装されるデジタルカメラの外観構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」という)を説明する。なお、以下の説明で参照する図面は模式的なものであって、同じ物体を異なる図面で示す場合には、寸法や縮尺等が異なる場合もある。
【0016】
図1は、本発明の一実施の形態に係る圧縮木製品の製造方法の処理の概要を示すフローチャートである。まず、原木から後述するような形状をなすブランク材を形取ることによってブランク材を形成する(ステップS1)。図2は、ブランク材形成工程の概要を模式的に示す図である。ブランク材形成工程では、無圧縮状態にある無垢材などの原木1からブランク材2を切削等によって形取る。
【0017】
図3は、図2に示すブランク材2のA−A線断面図である。ブランク材2は、周回して閉じた周縁部が平面P(第1の平面)を通過し、この平面Pによって分けられる二つの空間のうち一方の空間(図3では平面Pの上方の空間)にのみ複数の凸状の頂点T1、T2を含む起伏を有する。また、ブランク材2は、頂点T1、T2を通過し、平面Pと直交する第2の平面上(図3の紙面上)で見たとき、平面Pからの高さが高い頂点T1(高さh1)の方が、それより低い高さh2の頂点T2よりも、平面Pと直交する高さ方向の中心軸Oの近くに位置している。具体的には、図3では、頂点Tと中心軸Oとの距離r1が、頂点T2と中心軸Oとの距離r2より小さい(r1<r2)。このようにして形成されるブランク材2は、略均一な肉厚を有し、後述する圧縮工程によって減少する分の容積を加えた容積を有しており、自然な感じで連続的に変化する木目Gが表面に露出している。なお、ブランク材2の形状は、その大きさや製造による形状変化など、様々な要件を考慮して設定することが望ましい。
【0018】
本実施の形態に係る圧縮木製品の製造方法のブランク材形成工程で形成されるブランク材は、より一般には、次の性質を満たしていればよい。すなわち、ブランク材形成工程で形成されるブランク材は、周回して閉じた周縁部が第1の平面を通過し、かつこの第1の平面によって分けられる2つの空間のうち一方の空間に複数の凸状の頂点を含む起伏を有し、かつ複数の凸状の頂点のうち任意の二つの頂点は、該二つの頂点を通過するとともに第1の平面と直交する第2の平面上で見たとき、第1の平面からの高さが高い頂点ほど中心部の近くに位置し、かつ略均一な肉厚を有する形状をなしていればよい。したがって、例えばブランク材が有する凸状の頂点の数は3以上であってもよい。
【0019】
次に、ブランク材2を、高温高圧の水蒸気雰囲気中で所定時間放置して、ブランク材2を軟化させる(ステップS2)。この水蒸気雰囲気は、圧力が0.1〜0.8MPa程度であり、温度が100〜170℃程度である。このような水蒸気雰囲気は、圧力容器を用いることによって実現される。圧力容器を用いる場合には、上記水蒸気雰囲気を有する圧力容器の中にブランク材2を放置することによって軟化させればよい。なお、高温高圧の水蒸気雰囲気中でブランク材2を軟化させる代わりに、ブランク材2に水分を吸収させた後、マイクロ波によってブランク材2を加熱して軟化させてもよい。またブランク材2を煮沸して軟化させてもよい。
【0020】
この後、軟化させたブランク材2を圧縮する(ステップS3)。この工程では、軟化工程と同じ水蒸気雰囲気中で一対の金型を用いてブランク材2を挟持して圧縮力を加えることにより、ブランク材2を所定の3次元形状に変形させる。圧力容器の中でブランク材2を軟化させた場合には、引き続きその圧力容器の中でブランク材2を圧縮すればよい。
【0021】
図4は、圧縮工程の概要を示すとともに、圧縮工程で使用する金型の要部の構成を示す図である。図5は、図4のA−A線断面図である。図4および図5に示すように、ブランク材2は、一対の凹金型101、凸金型102によって挟持され、所定の圧縮力が加えられる。
【0022】
圧縮工程の際にブランク材2の上方から圧縮力を加える凹金型101は、ブランク材2の突出している外側面に当接する平滑面を有する凹部111を備える。一方、圧縮工程の際にブランク材2の下方から圧縮力を加える凸金型102は、ブランク材2の窪んでいる内側面に当接する平滑面を有する凸部121を備える。凹金型101の凹部111の外周に位置する下端面と、凸金型102の凸部121の外周に位置する上端面は平面をなしている。凹金型101と凸金型102とを型締めした状態で、凹部111の下端面と凸部121の上端面は重なり合う。この型締めした状態で凹部111と凸部121との間に生じる隙間の形状は、圧縮工程後のブランク材2の形状に相当する。
【0023】
凹金型101の下端面に対する凹部111の内側傾斜面の傾斜は、ブランク材2の周縁部付近の平面Pに対する傾斜よりも急である。同様に、凸金型102の上端面に対する凸部121の外側傾斜面の傾斜は、ブランク材2の周縁部付近の平面Pに対する傾斜よりも急である。このように、本実施の形態においては、圧縮前のブランク材2は、圧縮成形用の金型の形状とは異なった形状を有している。
【0024】
圧縮工程において、ブランク材2は、凸部121に載置され、上方から凹部111と接する。その際、ブランク材2は、周縁部が通過する平面Pから見て高さが高い頂点(頂点T1)ほど中心部の近くに位置しているため、最も高い頂点から順に凹部111に当接する。したがって、凹金型101を凸金型102に近づけていく途中でブランク材2が凸部121から倒れてしまうことがない。その結果、凹部111および凸部121と大きく異なる形状を有するブランク材2を用いても、確実に圧縮することができる。
【0025】
図6は、圧縮工程において、凹金型101および凸金型102によってブランク材2が挟持されて所定の圧力が加えられた状態を示す図であり、ブランク材2の変形がほぼ完了した状態を示す図である。図6に示す状態で、ブランク材2は、凹金型101および凸金型102から圧縮力を受けることにより、所定の三次元形状に変形する。ここでいう所定の三次元形状とは、凹金型101と凸金型102が最接近した状態で凹部111および凸部121が形成する隙間に相当する形状である。この三次元形状は、後述する加熱整形工程(ステップS6)を経て得られる最終形状と略相似する形状をなしており、その最終形状よりも大きい容積を有する。
【0026】
ところで、図6において、凹金型101の下端面と凸金型102の上端面が重なり合った平面Qは、略椀状をなすブランク材2の周縁部を通過している。この意味で、平面Qは平面Pと同様、第1の平面である。圧縮工程後のブランク材2の周縁部付近の平面Qに対する傾斜は、圧縮工程前のブランク材2の周縁部付近の平面Pに対する傾斜より急である。このように、本実施の形態では、圧縮前後のブランク材2の形状が大きく異なるため、連続的に変化する木目模様を出しやすい。
【0027】
圧縮工程が終了した後、凹金型101および凸金型102によってブランク材2を挟持し、所定の三次元形状に保持したままの状態で、上述した水蒸気雰囲気よりもさらに高温高圧の水蒸気雰囲気を凹金型101および凸金型102の周囲に形成することにより、ブランク材2の形状を固定化する(ステップS4)。このときの水蒸気雰囲気は、圧力が0.7〜3.4MPa程度であり、温度が160〜240℃程度である。この固定化処理を圧力容器中で行う場合には、軟化工程における容器内圧力を上述した範囲に含まれる値とすればよい。
【0028】
続いて、凹金型101、凸金型102、およびブランク材2を大気中へ放出し、ブランク材2を乾燥させる(ステップS5)。この際には、凹金型101と凸金型102を離間することによってブランク材2の乾燥を促進するようにしてもよい。
【0029】
乾燥工程後のブランク材2の肉厚は、圧縮工程前のブランク材2の厚さの20〜50%程度であるのが好ましい。ここで、ブランク材2は、厚さに若干のバラツキを有している可能性がある。そのため、本実施の形態においては、ブランク材2の肉厚の最小値が、後述する加熱整形工程によって整形される最終形状の肉厚以上となるように設定されることが望ましい。
【0030】
乾燥工程の後、大気中でブランク材2に熱を加えながら最終形状に整形する(ステップS6)。図7は、この加熱整形工程の概要を模式的に示す図である。加熱整形工程では、一対の加熱整形用凹金型201および加熱整形用凸金型202によってブランク材2を挟持することにより、ブランク材2を加熱しながら最終形状に整形する。
【0031】
図7でブランク材2の上方に位置する加熱整形用凹金型201は、ブランク材2の突出している側の表面に当接する平滑面を有する凹部211を備える。一方、図7でブランク材2の下方に位置する加熱整形用凸金型202は、ブランク材2の窪んでいる側の表面に当接する平滑面を有する凸部221を備える。加熱整形用凹金型201の凹部211の外周に位置する下端面と、加熱整形用凸金型202の凸部221の外周に位置する上端面は平面をなしている。図8に示すように、加熱整形用凹金型201と加熱整形用凸金型202とを型締めした状態で、凹部211の下端面と凸部221の上端面は重なり合う。この型締めした状態で凹部211と凸部221との間に生じる隙間の形状は、ブランク材2の最終形状である略椀状に対応している。この略椀状の最終形状の容積は、加熱整形工程によって減少する分だけ、圧縮工程後のブランク材2の容積よりも小さい。
【0032】
加熱整形用凹金型201および加熱整形用凸金型202の内部には、熱を発生するヒータ203、204がそれぞれ設けられている。ヒータ203、204は、温度制御機能を有する制御装置205にそれぞれ接続されており、制御装置205のもとで発熱し、加熱整形用凹金型201および加熱整形用凸金型202にそれぞれ熱を加える。制御装置205は、ブランク材2を挟持している時の金型温度を、木質部の非結晶領域が結晶化する温度以上であって木質部の熱分解温度以下となるように制御する。
【0033】
このようして、制御装置205が金型温度を制御することにより、加熱整形工程の最中に木質部の結晶化が進むと同時に木質部の密度が一段と高くなるため、木質部の表面硬度が増加する。その結果、吸湿がなく形状安定性に優れた圧縮木製品を得ることができる。
【0034】
また、ブランク材2の表面を大気中で加熱整形することにより、木質部の細胞壁の内部に含まれている物質が表面に抽出され、その表面に色、艶が生じる。その結果、木材ならではの独特の風合いを醸し出すことができる。
【0035】
なお、凹部211と対向するブランク材2の外側表面に整形代を設けるようにすれば、加熱整形時にブランク材2の外側表面に働く引っ張り力を極力抑えることができる。したがって、加熱整形時におけるブランク材2の表面の割れ等を一段と確実に防止することができる。
【0036】
図9は、加熱整形工程を行うことによって得られたブランク材(以下、「圧縮木製品3」という)の構成を示す斜視図である。同図に示す圧縮木製品3は、略長方形の表面を有する平板状の主板部3aと、主板部3aの表面で対向する二つの長辺部の各々から主板部3aに対して湾曲して延在する二つの側板部3bと、主板部3aの表面で対向する二つの短辺部の各々から主板部3aに対して湾曲して延在する二つの側板部3cと、を備える。
【0037】
図10は、以上説明した圧縮木製品の製造方法によって製造された圧縮木製品の適用例であるデジタルカメラの外装体の構成を示す斜視図である。同図に示す外装体4は、デジタルカメラの前面側(被写体と対向する側)を外装するものであり、圧縮木製品3の主板部3aおよび側板部3b、3cにそれぞれ対応する主板部4aおよび側板部4b、4cを備える。主板部4aは、デジタルカメラの撮像部を表出する円筒形状の開口部41と、デジタルカメラのフラッシュを表出する直方体形状の開口部42とを有する。側板部4bは、シャッターボタンを表出する半円筒形状の切り欠き43を有する。
【0038】
図11は、外装体4によって前面側が外装されるデジタルカメラの外観構成を示す斜視図である。同図に示すデジタルカメラ301は、撮像部302と、フラッシュ303と、シャッターボタン304とを有する。撮像部302およびフラッシュ303が表出するデジタルカメラ301の前面側は、外装体4によって外装される。一方、デジタルカメラ301の背面側は、圧縮木製品3を用いて外装体4と同様に形成される外装体5によって外装される。このように、本実施の形態に係る圧縮木製品の製造方法によって製造された圧縮木製品を、デジタルカメラの外装体として適用する場合には、肉厚が1.6〜2.0mm程度となるようにすればより好ましい。
【0039】
以上説明した本発明の一実施の形態によれば、周回して閉じた周縁部が第1の平面を通過し、かつ前記第1の平面によって分けられる二つの空間の一方にのみ複数の凸状の頂点を含む起伏を有し、かつ前記複数の凸状の頂点のうち任意の二つの頂点は、該二つの頂点を通過するとともに前記第1の平面と直交する第2の平面上で見たとき、前記第1の平面からの高さが高い頂点ほど中心部の近くに位置し、かつ圧縮によって減少する分の容積を加えた容積を有する形状をなすブランク材を形成し、このブランク材を圧縮するため、木目が自然な感じで連続的に変化する木目模様を生じさせることができる。
【0040】
なお、本発明に係る圧縮木製品の製造方法によって製造された圧縮木製品は、デジタルカメラ以外の電子機器用外装体としても適用可能である。また、本発明に係る圧縮木製品の製造方法によって製造された圧縮木製品は、例えば食器、各種筐体、建材などにも適用可能である。
【0041】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 原木
2 ブランク材
3 圧縮木製品
3a、4a 主板部
3b、3c、4b、4c 側板部
4、5 外装体
101 凹金型
102 凸金型
111、211 凹部
121、221 凸部
201 加熱整形用凹金型
202 加熱整形用凸金型
203,204 ヒータ
205 制御装置
301 デジタルカメラ
302 撮像部
303 フラッシュ
304 シャッターボタン
G 木目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材を圧縮することによって曲面を含む3次元形状を有する圧縮木製品を製造する圧縮木製品の製造方法であって、
周回して閉じた周縁部が第1の平面を通過し、かつ前記第1の平面によって分けられる二つの空間の一方にのみ複数の凸状の頂点を含む起伏を有し、かつ前記複数の凸状の頂点のうち任意の二つの頂点は、該二つの頂点を通過するとともに前記第1の平面と直交する第2の平面上で見たとき、前記第1の平面からの高さが高い頂点ほど中心部の近くに位置し、かつ圧縮によって減少する分の容積を加えた容積を有する形状をなすブランク材を形成するブランク材形成工程と、
前記ブランク材形成工程で形成したブランク材を軟化させる軟化工程と、
前記軟化工程で軟化したブランク材を、大気よりも高温高圧の水蒸気雰囲気中で圧縮することによって略椀状に変形させる圧縮工程と、
を有することを特徴とする圧縮木製品の製造方法。
【請求項2】
前記圧縮工程後の前記ブランク材の周縁部付近における前記第1の平面に対する傾斜は、前記圧縮工程前の前記ブランク材の周縁部付近における前記第1の平面に対する傾斜より急であることを特徴とする請求項1記載の圧縮木製品の製造方法。
【請求項3】
前記圧縮工程は、
一対の金型を用いて前記ブランク材を挟持して圧縮力を加えることを特徴とする請求項1または2記載の圧縮木製品の製造方法。
【請求項4】
前記圧縮工程で圧縮した前記ブランク材を、前記一対の金型によって挟持したまま前記水蒸気雰囲気よりも高温高圧の水蒸気雰囲気中に配置することにより、前記圧縮工程後の前記ブランク材の形状を固定化する固定化工程をさらに有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の圧縮木製品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−189571(P2011−189571A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56328(P2010−56328)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】