説明

圧縮機の耐食皮膜形成方法および圧縮機

【課題】耐食性を向上すること。
【解決手段】少なくとも2つに分割されて相互の接合により内部に形成した密閉空間に、圧縮機構部を収容するハウジング2を有した圧縮機に対し、前記ハウジング2に耐食皮膜を形成する方法であって、珪酸ソーダの濃度が1.5%以上30%以下の水ガラス溶液10にハウジング2を所定時間浸漬させる浸漬工程と、次に、水ガラス溶液10からハウジング2を取り出しハウジング2の面に付着した水ガラス溶液10を乾燥させる乾燥工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機の耐食皮膜形成方法、および耐食性を有する圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機に用いられる圧縮機は、ハウジング内の密閉空間に、圧縮機構部が収容され、前記密閉空間に取り込まれた冷媒ガスを圧縮する。ハウジングは、フロントハウジングとリアハウジングとを備えてなり、これらを組み合わせてから複数本のボルト(図示せず)で結合することにより、内部に密閉空間が形成される。フロントハウジングおよびリアハウジングの相互間の接合部分は、Oリングによりシールされて密閉空間の密閉状態を保つように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−348760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載のような圧縮機は、車両用空気調和機に用いられるにあたり、融雪剤(塩化カルシウム)が撒布された場所や海岸などを車両が走行した場合での耐食性を考慮しなければならない。例えば、Oリング付近が錆びるとOシールによる密閉状態が保てなくなり、冷媒ガスが漏れだして圧縮能力が低下するおそれがある。このため、圧縮機は、塩水噴霧耐久試験において所定の試験時間を耐える必要がある。そして、近年では、上記試験でのより一層の耐食性の向上が切望されている。
【0005】
本発明は上述した課題を解決するものであり、耐食性を向上することのできる圧縮機の耐食皮膜形成方法および圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、本発明の圧縮機の耐食皮膜形成方法は、少なくとも2つに分割されて相互の接合で内部に形成した密閉空間に圧縮機構部を収容するハウジングを有し、前記密閉空間の流体を圧縮する圧縮機に対し、前記ハウジングに耐食皮膜を形成する方法であって、珪酸アルカリの濃度が1.5%以上30%以下の水ガラス溶液に前記ハウジングを所定時間浸漬させる浸漬工程と、次に、前記水ガラス溶液から前記ハウジングを取り出し前記ハウジングの面に付着した前記水ガラス溶液を乾燥させる乾燥工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
この圧縮機の耐食皮膜形成方法によれば、ハウジングの面に水ガラスからなる耐食皮膜を効率よく形成できる。
【0008】
また、本発明の圧縮機の耐食皮膜形成方法では、前記浸漬工程は、前記ハウジングを前記水ガラス溶液の濃度に応じて1分以上25分以下浸漬させることを特徴とする。
【0009】
この圧縮機の耐食皮膜形成方法によれば、水ガラス溶液は、粘性を有するものであるから、ハウジングの面に積層して付着するので、その濃度によって耐食皮膜を所望の膜厚とするまでに積層する時間が異なる。水ガラス溶液の濃度が高ければ積層する時間は短くなるので浸漬時間を短くできる。一方、水ガラス溶液の濃度が低ければ積層する時間は長くなるので浸漬時間を長くする。このため、水ガラス溶液の濃度に応じた浸漬時間とすることで、所望の膜厚の耐食皮膜を形成できる。
【0010】
また、本発明の圧縮機の耐食皮膜形成方法では、前記浸漬工程は、前記ハウジングを60℃以上80℃以下の温度の前記水ガラス溶液に浸漬させることを特徴とする。
【0011】
この圧縮機の耐食皮膜形成方法によれば、水ガラス溶液の温度が上記範囲にあると、乾燥工程の際に水分が気化しやすくなるので、乾燥工程の時間を短縮させることができる。
【0012】
また、本発明の圧縮機の耐食皮膜形成方法では、前記浸漬工程は、複数の前記ハウジングを多孔壁からなる収容部に収容し、当該収容部を容器内に貯留された前記水ガラス溶液に所定時間浸漬し、前記乾燥工程は、前記収容部を前記容器から取り出し、当該収容部を所定の回転軸の回りに回転させることを特徴とする。
【0013】
この圧縮機の耐食皮膜形成方法によれば、複数のハウジングを多孔壁からなる収容部に収容し、当該収容部を容器内に貯留された水ガラス溶液に所定時間浸漬する浸漬工程により、ハウジングの面に、所望する膜厚の耐食皮膜となるべき水ガラス溶液を積層させることができる。さらに、収容部を容器から取り出し、当該収容部を所定の回転軸の回りに回転させる乾燥工程により、ハウジングの面に積層された水ガラス溶液の水分や、余分な水ガラス溶液を遠心力で飛ばすことで、乾燥工程の時間をより短縮することができる。
【0014】
上述の目的を達成するために、本発明の圧縮機は、少なくとも2つに分割されて相互の接合で内部に形成した密閉空間に圧縮機構部を収容するハウジングを有し、前記密閉空間の流体を圧縮する圧縮機において、前記ハウジングの少なくとも接合部分の面に、水ガラスからなる耐食皮膜が形成されたことを特徴とする。
【0015】
この圧縮機によれば、ハウジングの接合部分の面を耐食皮膜で保護することで、圧縮機の耐食性を向上できる。このため、ハウジングの接合部分のシール部分での密閉性能の保持を助勢し、ハウジング内の密閉空間から外部への冷媒ガスの漏出や、ハウジング内への塵埃などの侵入の防止機能を維持することができる。
【0016】
また、本発明の圧縮機では、前記耐食皮膜は、50nm以上1μm以下の膜厚であることを特徴とする。
【0017】
この圧縮機によれば、耐食皮膜の膜厚を50nm以上1μm以下とすることで、所望とする耐食性が得られる。
【0018】
また、本発明の圧縮機では、前記耐食皮膜は、前記ハウジングの全面に形成されていることを特徴とする。
【0019】
耐食皮膜を構成する水ガラスは、絶縁性を有する。このため、この圧縮機によれば、ハウジングの全面に耐食皮膜を形成することで、圧縮機に絶縁性能を持たせることができる。しかも、耐食皮膜を接合部分の面以外にも設けることで、その膜厚により接合などでのボルトの螺着や嵌入部分の強度を向上することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、耐食性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明に係る圧縮機の概略断面図である。
【図2】図2は、図1に示す圧縮機のシール部分の概略断面図である。
【図3】図3は、本発明に係る圧縮機の耐食皮膜形成方法の工程図である。
【図4】図4は、本発明に係る圧縮機の耐食皮膜形成方法における水ガラス溶液への浸漬時間と水ガラス溶液の濃度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0023】
本実施の形態の圧縮機1は、図1に示すように、スクロール圧縮機として構成されている。この圧縮機1は、ハウジング2内の密閉空間Sに、圧縮機構部3が収容されている。ハウジング2は、例えば、アルミニウムからなり、有底筒状のハウジング本体21と、ハウジング本体21の開口を閉塞するフロントケース22とに分割されている。ハウジング本体21とフロントケース22とは、相互にボルトの締め付けなどで接合されることで密閉空間Sを形成する。また、ハウジング本体21とフロントケース22との接合部分は、シール部材(例えば、Oリング)23によりシールされて密閉空間Sの密閉状態を保つように構成されている。
【0024】
圧縮機構部3は、ハウジング本体21に固定されている固定スクロール31と、ハウジング2および固定スクロール31に対向して公転旋回する旋回スクロール32が設けられている。
【0025】
固定スクロール31は、略円板状の端板311と、端板311に立設された渦巻き状の壁体312(以下、固定渦巻体と称す)とを有している。端板311は、ボルト4によりハウジング本体21に固定されている。また、端板311の略中央には、圧縮された空気を端板311の旋回スクロール32に反する裏側に吐き出すための吐出口314が形成されている。固定渦巻体312は、端板311の旋回スクロール32に向く表面から垂直に突出し、円のインボリュート曲線(伸開線)に沿った形状で設けられている。また、固定渦巻体312の突出端面には、シール部材313が設けられている。
【0026】
旋回スクロール32は、固定スクロール31と同様に、略円板状の端板321と、端板321に立設された渦巻き状の壁体322(以下、旋回渦巻体と称す)とを有している。端板321は、固定スクロール31に反する裏面が、フロントケース22の内面であるスラスト面221に対して摺動可能に対面して支持されている。旋回渦巻体322は、端板321の固定スクロール31に向く表面から垂直に突出し、固定スクロール31の固定渦巻体312の形状を180°反転させた形状で設けられている。また、旋回渦巻体322の突出端面には、シール部材323が設けられている。
【0027】
旋回スクロール32と固定スクロール31とは、旋回渦巻体322が固定渦巻体312に対向して噛み合うようにしてハウジング2の密閉空間Sに配置されている。このように配置された状態において、旋回渦巻体322のシール部材323が、固定スクロール31の端板311の表面に接し、かつ固定渦巻体312のシール部材313が、旋回スクロール32の端板321の表面に接している。これにより、旋回スクロール32と固定スクロール31との間には、端板321、端板311、旋回渦巻体322および固定渦巻体312により区画された一対の複数の圧縮室Pが形成されている。
【0028】
また、旋回スクロール32は、公転機構により、固定スクロール31に対して公転旋回するように構成されている。公転機構は、入力軸51と、ドライブピン52と、ブッシュ53とで構成されている。入力軸51は、ハウジング2のフロントケース22に対し、ベアリング54により軸心C回りに回転可能に支持されており、先端51aがハウジング2の外部に延出され、基端51bがハウジング2内の密閉空間Sに配置されている。この入力軸51は、ハウジング2の外部から回転動力が入力される。
【0029】
ドライブピン52は、入力軸51の基端51bから軸心Cと平行に延在し、その軸心Dが軸心Cに対して偏心した位置に設けられている。
【0030】
ブッシュ53は、入力軸51の基端51b側にて、旋回スクロール32における端板321の軸心Eと軸心を一致させ、旋回スクロール32に対してベアリング55を介して相対的に回転可能に設けられている。また、ブッシュ53は、ドライブピン52が摺動により回転可能に挿入されている。なお、端板321の軸心E(ブッシュ53の軸心)は、入力軸51の軸心Cおよびドライブピン52の軸心Dに対して平行かつ偏心している。
【0031】
そして、公転機構は、入力軸51に回転力が入力されると、ドライブピン52が軸心C回りに軸心Cに対して偏心して公転する。すると、ドライブピン52の旋回に伴い、軸心Cの回りにブッシュ53が公転する。このため、ブッシュ53と共に旋回スクロール32が軸心Cの回りに公転旋回する。
【0032】
また、旋回スクロール32は、自転防止機構により、軸心E回りの回転(自転)を防止されている。自転防止機構は、ハウジング2のフロントケース22と旋回スクロール32との間に設けられ、複数対の自転防止ピン61と自転防止リング62とで構成されている。
【0033】
自転防止ピン61は、フロントケース22のスラスト面221に固定され、旋回スクロール32の端板321側に向けて突出している。一方、端板321には、円径のリング穴63が形成され、このリング穴63に円環状の自転防止リング62が設けられている。自転防止ピン61は、自転防止リング62の内側に接している。
【0034】
自転防止ピン61および自転防止リング62は、旋回スクロール32における端板321の軸心Eの周方向に所定の間隔で配列されている。公転機構により旋回スクロール32が公転旋回するとき、自転防止ピン61は、自転防止リング62に接しながら移動する。これにより、自転防止リング62は、自転防止ピン61により移動が規制される。このため、公転機構により公転旋回する旋回スクロール32は、ベアリング55によりブッシュ53に対して軸心Eの回りに回転(自転)しようとするが、その回転を防止されつつ、入力軸51の軸心C回りに公転旋回する。この結果、旋回スクロール32は、自転を防止されつつ、固定スクロール31に対して公転旋回する。
【0035】
旋回スクロール32が固定スクロール31に対して公転旋回すると、一対の圧縮室Pは、次第に容積が減少しつつ、固定スクロール31の端板311の中心部分で1つになる。これにより、圧縮室Pは、圧力が上昇して室内の冷媒ガス(流体)が圧縮される。圧縮された冷媒ガスは、固定スクロール31の端板311に形成されている吐出口314から吐き出される。
【0036】
また、圧縮機1は、上述したスクロール圧縮機として構成されることに限らず、圧縮機構部がロータの偏心回転により冷媒ガス(流体)を圧縮するロータリ圧縮機であってもよい。さらに、圧縮機1は、スクロール圧縮およびロータリ圧縮を共に行う構成であってもよい。さらに、圧縮機1は、ハウジング2の外部からの回転動力を入力する構成であるが、ハウジング2の内部(密閉空間S)に駆動部(モータなど)を有していてもよい。
【0037】
このような、圧縮機1において、図2に示すように、ハウジング2を構成するハウジング本体21およびフロントケース22の表面には、耐食皮膜7が形成されている。耐食皮膜7は、二酸化珪素と炭酸ナトリウムなどのアルカリとを融解した珪酸アルカリの濃い水ガラス(珪酸ソーダ)からなる。この耐食皮膜7は、少なくともハウジング本体21とフロントケース22との接合部分、すなわちシール部材23が接触するハウジング本体21およびフロントケース22の面に設けられ、当該面とシール部材23との間に介在されている。
【0038】
そして、耐食皮膜7は、少なくともハウジング本体21とフロントケース22との接合部分の面を覆うことから、当該接合部分の面を保護することで、圧縮機1の耐食性を向上することが可能になる。このため、シール部材23による密閉性能の保持を助勢し、ハウジング2内の密閉空間Sから外部への冷媒ガスの漏出や、ハウジング2内への塵埃などの侵入の防止機能を維持することが可能になる。
【0039】
また、耐食皮膜7は、その膜厚Tが50nm以上1μm以下とすることで、所望とする耐食性が得られる。また、膜厚Tは、100nm以上300nm以下が所望とする耐食性を得る上でより好ましい。膜厚Tが50nm未満であると、耐食性能が低下する。一方、膜厚Tが1μmを超えると、高い組み立て精度が要求される箇所において組み立て精度が低下するおそれがある。なお、耐食性能とは、塩水噴霧試験において所望とする時間を耐え得ることを意味する。
【0040】
また、耐食皮膜7は、ハウジング本体21とフロントケース22との接合部分の面だけでなく、ハウジング2の全面、すなわちハウジング本体21およびフロントケース22の全面に形成されていることが好ましい。耐食皮膜7を構成する水ガラスは、絶縁性を有する。このため、ハウジング2の全面に耐食皮膜7を形成することで、圧縮機1に絶縁性能を持たせることが可能になる。絶縁性能を有することで、例えば、電気自動車(ハイブリッドを含む)に圧縮機1を適用した場合、圧縮機1を介して車室内に電気が流れる事態を防止することが可能になる。しかも、耐食皮膜7を接合部分の面以外にも設けると、その膜厚によりボルトの螺着や嵌入部分の強度を向上することが可能になる。
【0041】
上述した耐食皮膜7は、施すべき面に塗りつけたり、吹き付けたりすることで形成することができる。その他、好適な耐食皮膜7の形成方法を以下に説明する。
【0042】
図3に示すように、本実施の形態の圧縮機の耐食皮膜形成方法は、ハウジング2(ハウジング本体21およびフロントケース22)を珪酸アルカリの濃度が1.5%以上30%以下の水ガラス溶液10に浸漬させる浸漬工程(図3(b)参照)と、浸漬工程の後、水ガラス溶液10からハウジング2を取り出しハウジング2の面に付着した水ガラス溶液10を乾燥させる乾燥工程(図3(c))とを含む。
【0043】
このように、ハウジング2を水ガラス溶液10に浸漬させた後、水ガラス溶液10から取り出して乾燥させることで、ハウジング2の面に耐食皮膜7を効率よく形成することが可能になる。
【0044】
また、浸漬工程では、ハウジング2を水ガラス溶液10の濃度に応じて1分以上25分以下浸漬させることが好ましい。水ガラス溶液10は、粘性を有するものであるから、ハウジング2の面に積層して付着するので、その濃度によって耐食皮膜7を所望の膜厚Tとするまでに積層する時間が異なる。水ガラス溶液10の濃度が高ければ積層する時間は短くなるので浸漬時間を短くできる。一方、水ガラス溶液10の濃度が低ければ積層する時間は長くなるので浸漬時間を長くする。このため、水ガラス溶液10の濃度に応じた浸漬時間とすることで、膜厚Tが50nm以上1μm以下(好ましくは100nm以上300nm以下)の耐食皮膜7を形成することが可能になる。
【0045】
また、浸漬工程では、ハウジング2を60℃以上80℃以下の温度の水ガラス溶液10に浸漬させることが好ましい。水ガラス溶液10の温度が上記範囲にあると、乾燥工程の際に水分が気化しやすくなるので、乾燥工程の時間を短縮させることが可能になる。
【0046】
また、上記浸漬工程および乾燥工程を実施するにあたり、浸漬工程では、図3(a)に示すように、複数のハウジング2をパンチングメタルなどの多孔壁からなる収容部11に収容する。そして、図3(b)に示すように、収容部11を容器12内に貯留された水ガラス溶液10(濃度:1.5%以上30%以下、温度:60℃以上80℃以下)に所定時間(1分以上25分以下)浸漬する。また、乾燥工程では、図3(c)に示すように、収容部11を容器12から取り出し、当該収容部11を所定の回転軸Rの回りに回転させる。なお、収容部11を回転させる場合、収容部11をドレン容器13に入れる。
【0047】
このように、複数のハウジング2を多孔壁からなる収容部11に収容し、当該収容部11を容器12内に貯留された水ガラス溶液10に所定時間浸漬する浸漬工程により、ハウジング2の面に、所望する膜厚Tの耐食皮膜7となるべき水ガラス溶液10を積層させることが可能になる。さらに、収容部11を容器12から取り出し、当該収容部11を所定の回転軸Rの回りに回転させる乾燥工程により、ハウジング2の面に積層された水ガラス溶液10の水分や、余分な水ガラス溶液10を遠心力で飛ばすことで、乾燥工程の時間をより短縮することが可能になる。
【0048】
ここで、浸漬時間(min)と液濃度(wt%)との関係の試験結果を図4を参照して説明する。この試験では、圧縮機1のハウジング2を濃度の異なる水ガラス溶液10(温度70℃)に浸漬時間を変えて浸漬させ、乾燥させた。その後、塩水噴霧試験とHe検査(ハウジング本体21とフロントケース22とをシール部材23を介して接合したハウジング2内の密閉空間Sにヘリウムガスを注入して漏れを検査する)とを行い、合格/不合格を決めた。
【0049】
この試験結果によれば、図4に示すように、水ガラス溶液10が濃度5%以上であれば、浸漬時間は1分程度で合格となり、浸漬時間を10分以上とすれば、水ガラス溶液10の濃度は1.5%程度で合格となることが分かる。
【0050】
以上のように、本発明に係る圧縮機の耐食皮膜形成方法および圧縮機は、耐食性を向上することに適している。
【符号の説明】
【0051】
1 圧縮機
2 ハウジング
21 ハウジング本体
22 フロントケース
23 シール部材
S 密閉空間
3 圧縮機構部
7 耐食皮膜
T 膜厚
10 水ガラス溶液
11 収容部
12 容器
13 ドレン容器
R 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つに分割されて相互の接合で内部に形成した密閉空間に圧縮機構部を収容するハウジングを有し、前記密閉空間の流体を圧縮する圧縮機に対し、前記ハウジングに耐食皮膜を形成する方法であって、
珪酸アルカリの濃度が1.5%以上30%以下の水ガラス溶液に前記ハウジングを所定時間浸漬させる浸漬工程と、
次に、前記水ガラス溶液から前記ハウジングを取り出し前記ハウジングの面に付着した前記水ガラス溶液を乾燥させる乾燥工程と、
を含むことを特徴とする圧縮機の耐食皮膜形成方法。
【請求項2】
前記浸漬工程は、前記ハウジングを前記水ガラス溶液の濃度に応じて1分以上25分以下浸漬させることを特徴とする請求項1に記載の圧縮機の耐食皮膜形成方法。
【請求項3】
前記浸漬工程は、前記ハウジングを60℃以上80℃以下の温度の前記水ガラス溶液に浸漬させることを特徴とする請求項1または2に記載の圧縮機の耐食皮膜形成方法。
【請求項4】
前記浸漬工程は、複数の前記ハウジングを多孔壁からなる収容部に収容し、当該収容部を容器内に貯留された前記水ガラス溶液に所定時間浸漬し、前記乾燥工程は、前記収容部を前記容器から取り出し、当該収容部を所定の回転軸の回りに回転させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の圧縮機の耐食皮膜形成方法。
【請求項5】
少なくとも2つに分割されて相互の接合で内部に形成した密閉空間に圧縮機構部を収容するハウジングを有し、前記密閉空間の流体を圧縮する圧縮機において、
前記ハウジングの少なくとも接合部分の面に、水ガラスからなる耐食皮膜が形成されたことを特徴とする圧縮機。
【請求項6】
前記耐食皮膜は、50nm以上1μm以下の膜厚であることを特徴とする請求項5に記載の圧縮機。
【請求項7】
前記耐食皮膜は、前記ハウジングの全面に形成されていることを特徴とする請求項5または6に記載の圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−161404(P2011−161404A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29496(P2010−29496)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】