説明

圧縮機を搭載するユニット及びその振動低減方法

【課題】圧縮機の運転周波数の全域にわたって圧縮機を搭載するユニット内の冷媒配管の振動を抑制することである。
【解決手段】圧縮機31を搭載する室外機30は、圧縮機31にアキュムレータ33を介して接続され、ケーシング内に配置されている冷媒配管43を備えている。この冷媒配管43の宙吊り部分には、振動吸収材70の一方が巻付けられている。振動吸収材70の他方は、ケーシングの底板51に粘着している。この振動吸収材70は、冷媒配管43に巻付けられた部分から底板51に粘着している部分まで延在している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍装置ユニットなどの圧縮機を搭載するユニット及びその振動低減方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍装置ユニットなどの圧縮機を搭載するユニットにおいては、圧縮機が運転されると、圧縮機内部の駆動部品の運動によって圧縮機が揺さぶられる。通常、圧縮機の運転に伴って発生する振動がユニットの筐体に伝わらないように、圧縮機は、防振ゴムなどを介して筐体に設置されている。それにより、圧縮機による筐体の振動が緩和されているが、圧縮機自身は、筐体内で振動をしており、圧縮機の運転周波数によってその振動周波数も変化する。
【0003】
圧縮機に冷媒を供給したり、圧縮機から冷媒を吐出したりするために、通常、圧縮機には金属製の冷媒配管が接続されている。これら冷媒配管は、圧縮機とともに振動する。そのため、圧縮機の運転周波数が冷媒配管の固有振動数に近づくと、冷媒配管は共振によって大きく振動して大きな騒音を発生することがある。そのため、従来は、例えば特許文献1(特開平9−145098号公報)に記載されているように、圧縮機に接続されている冷媒配管の宙吊り部分にゴムを重りとして取り付けて防振装置とすることが行なわれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の防振装置では、冷媒配管の固有振動数を防振装置で変更でき、またその重さによって多少は振動を抑えることができるものの、圧縮機の運転周波数が変更後の固有振動数に近づくと、少なからず冷媒配管が振動するという問題が発生する。
【0005】
本発明の課題は、圧縮機の運転周波数の全域にわたって圧縮機を搭載するユニット内の冷媒配管の振動を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係る圧縮機を搭載するユニットは、圧縮機が筐体に取り付けられてなる圧縮機を搭載するユニットである。圧縮機を搭載するユニットは、圧縮機に接続され、筐体内に配置されている冷媒配管と、筐体に固定され又は筐体の一部をなす板金部材と、冷媒配管の宙吊り部分に巻付けられている巻付け領域から板金部材に接触させられている接触領域まで延在する振動吸収材と、を備えるものである。
【0007】
第1観点に係るユニットによれば、圧縮機に接続されている冷媒配管の宙吊り部分が圧縮機の運転周波数によっては共振を起す場合でも、振動吸収材が板金部材と冷媒配管との間を繋ぐことによって、振動吸収材が冷媒配管の振動を吸収することができ、冷媒配管の振動が防止される。
【0008】
本発明の第2観点に係る圧縮機を搭載するユニットは、第1観点に係るユニットにおいて、板金部材は、冷媒配管の近傍に配置されている筐体の底板、筐体の天板、筐体の側板、筐体に熱交換器を固定するための管板及び筐体内の空間を仕切る仕切板のうちの少なくとも1つである。
【0009】
第2観点のユニットによれば、板金部材のうちの冷媒配管の近傍に配置されている底板などに振動吸収材を接触させるため、冷媒配管と板金部材との間に延びる振動吸収材の長さを短くでき、振動吸収効果を向上させると共に振動吸収材の使用量を削減することができる。
【0010】
本発明の第3観点に係る圧縮機を搭載するユニットは、第1観点又は第2観点のユニットにおいて、振動吸収材は、粘着材の存する粘着面を接触領域に有し、粘着面で板金部材に粘着している。
【0011】
第3観点のユニットによれば、振動吸収材は単に接触しているだけでなく、接触領域が板金部材に粘着することで、振動吸収材の変形によって振動を吸収することができる。
【0012】
本発明の第4観点に係る圧縮機を搭載するユニットは、第3観点のユニットにおいて、振動吸収材は、粘着面で10mm以上にわたって板金部材に粘着している。
【0013】
第4観点のユニットによれば、粘着面で10mm以上粘着していることにより、粘着面が板金部材から外れ難くなる。
【0014】
本発明の第5観点に係る圧縮機を搭載するユニットは、第1観点から第4観点のいずれかのユニットにおいて、振動吸収材は、合成ゴムを主成分として含むものである。
【0015】
第5観点のユニットによれば、合成ゴムを用いることで、振動吸収材に適当な耐熱性を付与できるとともに適度な柔軟性を持つので取り扱い易くかつ振動吸収効果も大きい。
【0016】
なお、ここで主成分とは、組成全体のうちの50体積%以上を占める成分を意味する。
【0017】
本発明の第6観点に係る圧縮機を搭載するユニットは、第5観点のユニットにおいて、合成ゴムは、ブチルゴムである。
【0018】
第6観点のユニットによれば、一般に広く流通しているブチルゴムを用いることで、耐熱性と振動吸収効果を向上させた振動吸収材が量産に適したものとなる。
【0019】
本発明の第7観点に係る圧縮機を搭載するユニットは、第5観点又は第6観点のユニットにおいて、振動吸収材は、金属粉を含むものである。
【0020】
第7観点のユニットによれば、金属粉によって振動吸収材の密度が増すので、合成ゴム(ブチルゴム)の柔軟性とも相俟って板金部材と強く接触させることができる。
【0021】
本発明の第8観点に係る圧縮機を搭載するユニットは、第1観点から第7観点のいずれかのユニットにおいて、冷媒配管は、U字型に湾曲した湾曲部を宙吊り部分に有し、振動吸収材は、巻付け領域が冷媒配管の湾曲部に巻付けられている。
【0022】
第8観点のユニットによれば、湾曲部はU字型形状を有する冷媒配管の大きく振動し易い部分であるので、そのような湾曲部の振動を抑えることで、振動抑制などの効果が大きくなる。
【0023】
本発明の第9観点に係る圧縮機を搭載するユニットの振動低減方法は、筐体と、筐体に取り付けられている圧縮機と、圧縮機に接続されて筐体内に配置されている冷媒配管と、筐体に固定され又は筐体の一部をなす板金部材とを備える圧縮機搭載ユニットの振動低減方法であって、振動吸収材の第1領域を冷媒配管の宙吊り部分に巻付けるとともに、振動吸収材の第2領域を板金部材に接触させるものである。
【0024】
第9観点の振動低減方法によれば、 圧縮機に接続されている冷媒配管の宙吊り部分が圧縮機の運転周波数によっては共振を起す場合でも、振動吸収材が板金部材と冷媒配管との間に介在することによって、振動吸収材が冷媒配管の振動を吸収することができ、冷媒配管の振動が防止される。
【発明の効果】
【0025】
本発明の第1観点に係る圧縮機を搭載するユニット又は第9観点に係る圧縮機を搭載するユニットの振動低減方法では、振動吸収材が冷媒配管の振動を吸収して冷媒配管の振動を防止するので、重りをつけるなどの従来の構成に比べ、圧縮機の運転周波数の全域にわたって冷媒配管の振動を抑制することができる。
【0026】
本発明の第2観点に係る圧縮機を搭載するユニットでは、冷媒配管の近傍に配置されている底板などの板金部材に振動吸収材を接触させることにより、振動吸収材のコストを削減して冷媒配管の振動防止を安価に行うことができる。
【0027】
本発明の第3観点に係る圧縮機を搭載するユニットでは、粘着面により取り付けが容易になりかつ、振動吸収材の変形によって振動を吸収でき、圧縮機の運転周波数の全域にわたって冷媒配管に対して大きな抑制効果を発揮できる。
【0028】
本発明の第4観点に係る圧縮機を搭載するユニットでは、粘着面が板金部材から外れ難く、高い耐久性が得られる。
【0029】
本発明の第5観点に係る圧縮機を搭載するユニットでは、合成ゴムを主成分とすることによって、冷媒の温度が室温よりも高くなる場合でも使用でき、汎用性と振動吸収効果の向上の両方を得ることができる。
【0030】
本発明の第6観点に係る圧縮機を搭載するユニットでは、ブチルゴムを用いることによって量産に適したものとなり、コストを抑えることができる。
【0031】
本発明の第7観点に係る圧縮機を搭載するユニットでは、合成ゴムを主成分とする振動吸収材が板金部材と強く接触することで、高い制振効果を持続させ易くなる。
【0032】
本発明の第8観点に係る圧縮機を搭載するユニットでは、湾曲部に振動吸収材を巻付けることにより、U字型の冷媒配管に対して振動吸収材が制振効果を発揮して騒音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】一実施形態に係る空気調和装置の外観を示す斜視図。
【図2】空気調和装置の冷凍回路の概要を示す回路図。
【図3】空気調和装置の室外機の分解斜視図。
【図4】圧縮機周辺の冷媒配管への振動吸収材の取付け構造の一例を示す斜視図。
【図5】冷媒配管とそれに取り付けられた振動吸収材の断面図。
【図6】振動吸収材による振動抑制効果を説明するためのグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0035】
(1)空気調和装置の外観
本発明の一実施形態に係る圧縮機を搭載するユニットについて、図1に示す空気調和装置10の室外機30を例に挙げて説明する。空気調和装置10は、室内の壁面などに取り付けられる室内機20と、室外に設置される室外機30とを備えている。これら室内機20と室外機30との間は、冷媒配管、伝送線及び通信線などを集合した集合連絡配管11によって接続されている。
【0036】
(2)空気調和装置の冷媒回路
図2に示すように、室内機20には、室内熱交換器21や送風ファン22などが設けられており、これらが図1に示すケーシング23内に収容されている。一方、室外機30には、圧縮機31、四路切換弁32、アキュムレータ33、室外熱交換器34、電動膨張弁35、フィルタ36、液閉鎖弁37、ガス閉鎖弁38及び送風ファン39などが設けられており、これらが図1に示すケーシング50内に収容されている。
【0037】
集合連絡配管11の冷媒配管12,13によって、室内機20の室内熱交換器21の一方の出入口と他方の出入口が室外機30の液閉鎖弁37とガス閉鎖弁38とに接続されている。液閉鎖弁37からフィルタ36及び電動膨張弁35を介して室外熱交換器34の一方の出入口まで室外機30の内部の冷媒配管によって接続されている。この室外熱交換器34の他方の出入口から四路切換弁32の第2ポートに室外機30の内部の冷媒配管によって接続されている。そして、四路切換弁32の第4ポートが室外機30の内部の冷媒配管によってガス閉鎖弁38に接続されている。
【0038】
また、四路切換弁32の第1ポートには、圧縮機31の吐出口に接続された吐出側の冷媒配管41が接続されており、第2ポートには、内部の冷媒配管43によってアキュムレータ33が接続されている。圧縮機31の吸入口とアキュムレータ33との間は吸入側の冷媒配管42によって接続されている。この四路切換弁32は、空気調和装置10において暖房を行なう場合には、第1ポートから第2ポートに冷媒が流れるとともに第4ポートから第3ポートに冷媒が流ながれる、実線で示されている接続に切り換えられる。一方、冷房を行う場合には、第1ポートから第4ポートに冷媒が流れるとともに第2ポートから第3ポートに冷媒が流れる、点線で示されている接続に四路切換弁32が切り換えられる。
【0039】
上述のように、室内機20と室外機30とが集合連絡配管11の冷媒配管12,13によって接続されることにより冷媒回路が構成される。この冷媒回路において、暖房時には、圧縮機31から四路切換弁32の第1ポート及び第2ポート、室外熱交換器34、電動膨張弁35、フィルタ36、液閉鎖弁37、室内熱交換器21、ガス閉鎖弁38、四路切換弁32の第4ポート及び第3ポート、並びにアキュムレータ33を順に経て再び圧縮機31に冷媒が戻る。また、冷房時の冷媒回路においては、圧縮機31から四路切換弁32の第1ポート及び第4ポート、ガス閉鎖弁38、室内熱交換器21、液閉鎖弁37、フィルタ36、電動膨張弁35、室外熱交換器34、四路切換弁32の第2ポート及び第3ポート、並びにアキュムレータ33を順に経て再び圧縮機31に冷媒が戻る。
【0040】
(3)室外機の構成
図3は室外機30の分解斜視図であるが、図3において、実施形態の説明にとってあまり重要でないパーツの記載は一部省略されている。室外機30は、図3に示すように、ケーシング50(図1参照)を構成する底板51、前板53、左側板54、右側板55、閉鎖弁カバー56、及び天板57に囲まれた空間内に圧縮機31を収容している。これらのケーシング50を構成する部材のうち、底板51、左側板54、右側板55、及び天板57は板金を成形加工して形成されたものである。
【0041】
圧縮機31は、底板51の取り付けボルト51aに防振ゴム61を介して取り付けられる。そのため、圧縮機31の振動が防振ゴム61で吸収されて、振動が底板51に伝わり難くなっており、圧縮機31にとって底板51は静止した部材になる。一方、この圧縮機31には、アキュムレータ33が取り付けられて、アキュムレータ33が圧縮機31と一体化されている。そのため、アキュムレータ33は圧縮機31と一緒に振動する部材になる。
【0042】
圧縮機31の吐出側の冷媒配管41もアキュムレータ33の冷媒配管43も四路切換弁32に接続されるまでの間に、比較的長く真直ぐ伸びた直管部41a、43aとU字型に湾曲した湾曲部41b,43bを有している。これら冷媒配管41,43の直管部41a、43aとU字型の湾曲部41b,43bとは、宙吊りの状態になっている。
【0043】
圧縮機31やアキュムレータ33と四路切換弁32とを最短距離で接続せずに湾曲部41a,43aを形成した冷媒配管41,43を比較的長く設けるのは、圧縮機31の振動や圧縮機31と一体的に振動するアキュムレータ33の振動によって冷媒配管41,43が破損したり、冷媒配管41,43の接続部が外れたり、四路切換弁32が故障したりする不具合の発生を抑えるためである。冷媒配管41,43は、このような構造のため、圧縮機31の運転周波数に応じて共振して比較的大きく振動する場合がある。この振動を防止するため、冷媒配管43の湾曲部43bには、振動を吸収するための振動吸収材70が取り付けられている。
【0044】
四路切換弁32から延びた冷媒配管は、ガス閉鎖弁38に接続されており、ガス閉鎖弁38や液閉鎖弁37を介して右側板55に取り付けられる。右側板55のさらに外側には閉鎖弁カバー56が取り付けられる。
【0045】
液閉鎖弁37は、図3には記載されていない電動膨張弁35(図2参照)などを介して室外熱交換器34に接続される。室外熱交換器34は、室外機30の背面側及び左側面側に配置するため、平面視において略L字型の構造を有している。この室外熱交換器34は、管板58によって底板51に固定される。管板58は底板51にビスなどによって固定される。室外熱交換器34の左側面は、左側板54に沿って底板51に固定され、左側板54によって保護される。
【0046】
室外熱交換器34の前には、送風ファン39が配置される。送風ファン39はファンモータ62に取り付けられて、ファンモータ62がファンモータ台63に固定される。そして、このファンモータ台63は、前板53の内面に固定される。ベルマウス64は、前板53の内面に沿って前板53の内面に固定され、送風ファン39の周囲を覆うように配置される。送風ファン39により発生する空気流は、室外機30の背面側から室外熱交換器34を通り、ベルマウス64の開口および前板53の吹出し孔を通って室外機30の外部へと流れる。
【0047】
前板53、左側板54、及び右側板55の上部には天板57が固定されている。底板51、前板53、左側板54、右側板55及び天板57で囲まれるケーシング50内の空間は、底板51、前板53及び右側板55に固定される仕切板52によって仕切られて、圧縮機31などが配置される機械室と、送風ファン39などが配置される通気室に分けられる。仕切板52は、圧縮機31などの振動によって発生する騒音が通気室を抜けて外部に漏れないように、騒音に対する防壁の役割も兼ねている。この仕切板52には、電装品箱65などが取り付けられる。
【0048】
(4)振動吸収材の構成と取付け方法
圧縮機31及びアキュムレータ33の周囲の冷媒配管と一部部材を図4に示す。図2及び図3に示したように、圧縮機31の吸入側の冷媒配管43の湾曲部43bには、振動吸収材70が取り付けられる。冷媒配管43の湾曲部43bと振動吸収材70の断面図を図5に示す。
【0049】
振動吸収材70は、ゴム状部材71とフィルム72とで構成されている。ゴム状部材71は、ブチルゴムなどの合成ゴムを主成分とし、鉄粉などの金属粉が合成ゴム中に分散されたものである。厚みは、3mmから10mm程度であり、5mmのものが好適に用いられる。この実施形態で用いられている振動吸収材70の大きさは、30mm×170mm程度である。このような略直方体形状のゴム状部材71の一方の面にポリエステルフィルムなどの耐熱プラスチック製のフィルム72が貼付されている。そして、フィルム72の貼付されている面に対向する面には、粘着材が塗布されている。その粘着材が塗布された粘着面73,74,75,76は、対象物に粘着されるまでは、離形用のフィルムなどで保護される。
【0050】
上述のような構成を有する略直方体状の振動吸収材70を冷媒配管43の湾曲部43bに巻付けるとともに底板51に貼り付けて、湾曲部43bと底板51との間に延在させた状態が図5に示す状態である。このように湾曲部43bに振動吸収材70を巻付けて底板51に貼り付ける作業は、フィルム72が薄くてゴム状部材71も柔らかく調整されていることにより、作業者が工具を使わずに手作業で行うことができる。
【0051】
この振動吸収材70の一方の端部78よりも中央寄りの部分を湾曲部43bに巻き付けたところが、巻付け領域70aである。巻付け領域70aでは、粘着面74の粘着材によって、振動吸収材70が湾曲部43bに粘着している。そのため、湾曲部43bを振動させる応力の殆どが振動吸収材70に掛かる。振動吸収材70の一方の端部78の近傍は、巻付け領域70aよりも他方の端部79に寄った部分に貼り付けられて、連結領域70bを構成する。この連結領域70bでは、粘着材が塗布された粘着面75,76同士が張り合わされるので、接着剤などを用いなくても振動吸収材70が湾曲部43bに巻き付いた状態を長期間にわたって保持し続けることができる。
【0052】
振動吸収材70の他方の端部79の近傍は、粘着面73の粘着材によって底板51に貼り付けられる接触領域70cになる。図5に示す接触領域70cの断面における粘着長さについては、15mmから20mmがよく用いられるが、10mm以上あれば十分な粘着力を発揮して接触領域70cが動かないように固定できる。
【0053】
(5)特徴
(5−1)
ケーシング40内において圧縮機31に接続されている冷媒配管43は、なんらの振動対策も施されない場合には図6の一点鎖線の曲線P0で示すように、圧縮機31の運転周波数が比較的高いところで共振して冷媒配管43に大きな応力が発生する。従来のように重りとなるパテが冷媒配管43に取り付けられた場合には、図6の点線の曲線P1で示すように、圧縮機31の運転周波数が比較的低い側に冷媒配管43の共振周波数が移行する。そのため、圧縮機31の運転周波数の範囲外にまで共振周波数が低くなるときはその共振が防止されるので、冷媒配管43の比較的大きな振動は防止されるが、運転周波数の範囲外にまで共振周波数を低くするのはかなり難しい。
【0054】
上記実施形態では、圧縮機31に接続されている冷媒配管43の宙吊り部分が圧縮機31の運転周波数が比較的低い場合に共振を起すようなときでも、振動吸収材70が冷媒配管43の振動を抑制することができる。それは、振動吸収材70が底板51(板金部材)と冷媒配管43との間を繋ぐことによって、振動吸収材70が冷媒配管43の振動を吸収することができるからであり、重りをつけるなどの従来の構成に比べ、圧縮機31の運転周波数の全域にわたって冷媒配管43の振動を抑制することができる。上記実施形態では、防振ゴム61によって圧縮機31の振動が底板51に伝わり難くなっているため、そのような底板51に振動吸収材70を接触させることで振動吸収が行ない易くなっている。
【0055】
上記実施形態では、圧縮機31に固定され圧縮機31とともに振動するアキュムレータ33に接続されている冷媒配管43、つまり、圧縮機31に間接的に接続され圧縮機31の振動が伝わる冷媒配管43に振動吸収材70を適用した場合について説明した。勿論、圧縮機31に直接接続されている冷媒配管41などの湾曲部41bに振動吸収材70を適用してもよい。この場合、冷媒配管41が圧縮機31の吐出部に接続されているため、振動吸収材70を構成する部材には、耐熱性の高い部材が選択される。また、アキュムレータ33が圧縮機31から分離されていてもっぱら冷媒配管42が振動する場合には、冷媒配管42に振動吸収材70を取り付ける。この場合には、圧縮機31に直接接続された冷媒配管42に振動吸収材70が取り付けられる構成になる。
【0056】
(5−2)
上述の実施形態において、振動吸収材70は、底板51(板金部材)に取り付けられている。このような場所に取付けられたのは、この室外機30(圧縮機を搭載するユニット)の構造においては、冷媒配管43の湾曲部43bに最も近いところに底板51が配置されていたためである。従って、他の構造を持つ室外機(圧縮機を搭載するユニット)において、冷媒配管43の近傍にケーシング40の仕切板52及び管板58(筐体に固定された部材)並びに、左側板54、右側板55あるいは天板57(筐体の一部を成す部材)があるときにはそれらに振動吸収材70が接触させられる。
【0057】
それにより、振動吸収材70が繋ぐ底板51(板金部材)と冷媒配管43の距離が短くなり、振動吸収材70の使用量が少なくて済む。使用量の削減が振動吸収材70の材料費の削減になってコストを減らすことができるので、冷媒配管43の振動防止を安価に行うことができる。
【0058】
また、振動吸収材70を取り付ける位置は、図4に示すように、冷媒配管43の宙吊りになっている部分であり、しかも直管部43aが長いため、その先端の湾曲部43bにするのが好ましい。冷媒配管43は、その付け根の部分を中心に振動するため、梃子の原理により付け根から遠い所で振動を吸収する方が小さな力で振動を抑制できるからである。また、冷媒配管43が共振した場合には、湾曲部43bが最も大きく振動する部分でもあるので、その部分の振動を抑えることで効果的に騒音の抑制ができる。
【0059】
(5−3)
図5を用いて説明したように、振動吸収材70が接触領域70cの粘着面73で底板51に粘着して固定される。このような振動吸収材70の固定作業は、作業者の手作業で行えるため、接着剤などのよる固定の場合と比べれば短時間で行え、組み立て時間を短縮できる。また、振動吸収材70が劣化した場合などの補修作業も容易になる。
【0060】
この粘着面73が底板51(板金部材)に粘着することで、冷媒配管43に加わる応力を振動吸収材70の変形で吸収できるようになり、振動抑制効果が高まる。つまり、粘着せずに底板51に対して可動し得る状態で単に接触しているだけであると、冷媒配管43から応力が加わったときに、接触抵抗による振動抑制の効果だけのため粘着させる場合に比べて振動抑制の効果が小さくなる。なお、粘着材以外の方法、例えば接着剤やビスなどの固定具で固定することもできる。その場合にも、振動吸収材の変形による効果が得られる。ただし、固定具の場合には、粘弾性によって振動を吸収し易いように振動吸収材70を変形し易いものとすると、経年変化によって形状が変わることがあると振動吸収の効果の低下を招く場合があり、粘着材の方が好ましい。
【0061】
粘着面73が粘着している長さは、外れ難くするために10mm以上あることが好ましく、15mmから20mm程度であることが好ましい。そして、冷媒配管43の巻付け領域70aにも粘着面74を設けておくことが好ましい。巻付け領域70aは冷媒配管43に巻付けられているため、冷媒配管43との間でスリップを起し難いが、粘着面74を設けておくことで、さらに強く振動吸収材70が冷媒配管43に固定されるからである。
【0062】
さらには、振動吸収材70には鉄粉などの金属粉を混入させて密度を高くしておく方が好ましい。密度が高くなると、密度によってより強く粘着面74が底板51に粘着するからである。また、密度が高くなって重くなることによって、巻付けている冷媒配管43を振動させ難くする効果がある。このように振動吸収材70に金属を混入する場合には、その粘弾性の特性を阻害しないために粉体としている。
【0063】
(5−4)
振動吸収材70は、その変形時に粘性抵抗によって応力を吸収するように構成される場合には、振動吸収材70の主成分に合成ゴムのように粘弾性を持つものが選択される。また、冷媒配管43の冷媒の温度が室温よりも高温になったり、低温になったりするため、合成ゴムのように高温や低温に強い材料を用いることが好ましい。
【0064】
合成ゴムのなかでも一般に広く流通しているブチルゴムを用いることで、耐熱性と振動吸収効果を向上させた振動吸収材70が量産に適したものとなる。このブチルゴムの使用温度範囲は、−55℃から+135℃である(「化学大辞典」,第1版,第3刷,株式会社東京化学同人,1994年4月1日発行,p.1999)。
【0065】
(6)変形例
(6−1)
上記実施形態では、圧縮機を搭載するユニットとして、空気調和装置の室外機を例に上げて説明したが、このようなユニットは空気調和装置の室外機には限られない。例えば、ヒートポンプ式給湯器などであってもよい。
【0066】
(6−2)
上記実施形態では、冷媒配管43や底板51に直接振動吸収材70を粘着させる場合について説明したが、必ずしも直接固定される場合には限られない。例えば板金部材に固定されて板金部材とともに静止している部材を介して間接的に板金部材に振動吸収材が固定されてもよい。また、例えば冷媒配管に固定されて冷媒配管とともに振動する部材を介して間接的に振動吸収材が冷媒配管に固定されてもよい。
【符号の説明】
【0067】
10 空気調和装置
30 室外機
31 圧縮機
33 アキュムレータ
40 ケーシング
41,42,43 冷媒配管
51 底板
52 仕切板
54 左側板
55 右側板
57 天板
58 管板
70 振動吸収材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0068】
【特許文献1】特開平9−145098号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機(31)が筐体(40)に取り付けられてなる圧縮機を搭載するユニット(10)であって、
前記圧縮機に接続され、前記筐体内に配置されている冷媒配管(41,42,43)と、
前記筐体に固定され又は前記筐体の一部をなす板金部材(51,52,54,55,57,58)と、
前記冷媒配管の宙吊り部分に巻付けられている巻付け領域(70a)から前記板金部材に接触させられている接触領域(70c)まで延在する振動吸収材(70)と、
を備える、圧縮機を搭載するユニット。
【請求項2】
前記板金部材は、前記冷媒配管の近傍に配置されている前記筐体の底板(51)、前記筐体の天板(57)、前記筐体の側板(54,55)、前記筐体に熱交換器を固定するための管板(58)及び前記筐体内の空間を仕切る仕切板(52)のうちの少なくとも1つである、
請求項1に記載の圧縮機を搭載するユニット。
【請求項3】
前記振動吸収材は、粘着材の存する粘着面(73)を前記接触領域に有し、前記粘着面で前記板金部材に粘着している、
請求項1又は請求項2に記載の圧縮機を搭載するユニット。
【請求項4】
前記振動吸収材は、前記粘着面で10mm以上にわたって前記板金部材に粘着している、
請求項3に記載の圧縮機を搭載するユニット。
【請求項5】
前記振動吸収材は、合成ゴムを主成分として含む、
請求項1から4のいずれか1項に記載の圧縮機を搭載するユニット。
【請求項6】
前記合成ゴムは、ブチルゴムである、
請求項5に記載の圧縮機を搭載するユニット。
【請求項7】
前記振動吸収材は、金属粉を含む、
請求項5又は請求項6に記載の圧縮機を搭載するユニット。
【請求項8】
前記冷媒配管は、U字型に湾曲した湾曲部(43b)を前記宙吊り部分に有し、
前記振動吸収材は、前記巻付け領域が前記冷媒配管の前記湾曲部に巻付けられている、
請求項1から7のいずれか1項に記載の圧縮機を搭載するユニット。
【請求項9】
筐体(40)と、前記筐体に取り付けられている圧縮機(31)と、前記圧縮機に接続されて前記筐体内に配置されている冷媒配管(41,42,43)と、前記筐体に固定され又は前記筐体の一部をなす板金部材(51,52,54,55,57,58)とを備える圧縮機搭載ユニットの振動低減方法であって、
振動吸収材(70)の第1領域(70a)を前記冷媒配管の宙吊り部分に巻付けるとともに、前記振動吸収材の第2領域(70c)を前記板金部材に接触させる、
圧縮機を搭載するユニットの振動低減方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−107563(P2012−107563A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256791(P2010−256791)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】