説明

圧縮機ステータ及び軸流圧縮機

【課題】軸流圧縮機1の組立の自由度を拡げて、軸流圧縮機1の組立性を向上させること。
【解決手段】圧縮機ステータ17が軸方向に沿って分割された複数のステータセグメント17Sにより構成され、各ステータセグメント17Sは、アウターバンド19の一部を構成する環状のバンド構成部材19mと、バンド構成部材19mの内周面に周方向に等間隔に形成されかつ静翼21の一部を構成する静翼21の枚数と同数の静翼構成部材21mとを備え、軸方向に隣接するステータセグメント17S間において、軸方向前側のステータセグメント17Sにおけるバンド構成部材19mは、軸方向後側のステータセグメント17Sにおけるバンド構成部材19mに同心状に嵌合可能になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気等のガスを軸方向へ圧縮して搬送する軸流圧縮機の構成要素である圧縮機ステータ等に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン等に用いられる一般的な軸流圧縮機の構成について簡単に説明すると、次のようになる。
【0003】
一般的な軸流圧縮機は、軸方向へ延びた筒状の圧縮機ケースを具備しており、この圧縮機ケースの内部には、空気(ガスの一例)を流通させるためのガス流路が形成されている。
【0004】
圧縮機ケース内には、複数段の圧縮機ロータが軸方向に沿って設けられており、各段の圧縮機ロータは、圧縮機ケースの軸心周りに回転可能である。また、各段の圧縮機ロータは、圧縮機ケース内に圧縮機ロータの軸心周りに回転可能に設けられたディスクと、このディスクの外周部に周方向に等間隔に並んで設けられかつガス流路内に位置する複数の動翼とを備えている。
【0005】
圧縮機ケース内には、複数段の圧縮機ステータが軸方向に沿って複数段の圧縮機ロータと交互に設けられている。また、各段の圧縮機ステータは、圧縮機ケースの内壁面に設けられた環状のアウターバンドと、このアウターバンドの内側に同心状に配設された環状のインナーバンドと、アウターバンドの内周面とインナーバンドの外周面との間に連結するように設けられかつ周方向に等間隔に並びかつだガス流路内に位置する複数の静翼とを備えている。
【0006】
なお、本発明に関連する先行技術として特許文献1から特許文献3に示すものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−60544号公報
【特許文献2】特開2004−3492号公報
【特許文献3】特開平11−200808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前述の一般的な軸流圧縮機を組み立てる際には、圧縮機ロータと圧縮機ステータの互いの干渉を回避する必要があり、圧縮機ケースに対して圧縮機ロータを組付けた後に、圧縮機ステータを軸方向前側(流れ方向上流側)から圧縮機ケースの内壁面における圧縮機ステータの軸方向後側に組付けることができない。そのため、軸流圧縮機の組立の自由度が狭くなって、軸流圧縮機の組立性を向上させることは困難であるという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、前述の問題を解決することができる、新規な構成の圧縮機ステータ及び軸流圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の特徴は、ガスを軸方向へ圧縮して搬送する軸流圧縮機の構成要素である圧縮機ステータであって、環状のアウターバンドと、前記アウターバンドの内周面に周方向に等間隔に並んで設けられた複数の静翼と、を具備し、軸方向に沿って分割された複数のステータセグメントにより構成され、各ステータセグメントは、前記アウターバンドの一部を構成する環状のバンド構成部材と、前記バンド構成部材の内周面に周方向に等間隔に形成され、前記静翼の一部を構成する前記静翼の枚数と同数の静翼構成部材と、を備え、軸方向に隣接する前記ステータセグメント間において、軸方向前側の前記ステータセグメントにおける前記バンド構成部材が軸方向後側の前記ステータセグメントにおける前記バンド構成部材に同心状に嵌合可能になっていることを要旨とする。
【0011】
なお、本願の明細書及び特許請求の範囲において、「ガス」とは、空気、窒素ガス、水素ガス等を含む意である。
【0012】
第1の特徴によると、前記圧縮機ステータが軸方向に沿って分割された複数の前記ステータセグメントにより構成されているため、前記静翼構成部材の幅(コード長)が前記静翼の幅に比べて分割数に応じた分だけ短くなっており、前記ステータセグメント(前記アウターバンド)を周方向に僅かに回転させながら前記圧縮機ロータに対して相対的に軸方向へ移動させることにより、前記ステータセグメントにおける各静翼構成部材を周方向に隣接する前記動翼間を通過させることができる。また、軸方向前側の前記ステータセグメントにおける前記バンド構成部材が軸方向後側の前記ステータセグメントにおける前記バンド構成部材に同心状に嵌合可能になっているため、複数の前記ステータセグメントの芯出しを行いつつ、前記圧縮機ステータを組み立てることができる。これにより、前記圧縮機ケースに対して前記圧縮機ロータを組付けた後に、前記圧縮機ステータを軸方向前側から前記圧縮機ケースの内壁面における前記圧縮機ステータの軸方向後側に容易に組付けることができる。
【0013】
本発明の第2の特徴は、ガスを軸方向へ圧縮して搬送する軸流圧縮機であって、内部にガスを流通させるための環状のガス流路が形成された筒状の圧縮機ケースと、前記圧縮機ケース内に設けられ、前記ガス流路内に位置しかつ周方向に等間隔に並んだ複数の動翼を備え、前記圧縮機ロータの軸心周りに回転可能な圧縮機ロータと、前記圧縮機ケース内に軸方向に沿って前記圧縮機ロータと交互に設けられ、第1の特徴からなる複数段の圧縮機ステータと、を具備したことを要旨とする。
【0014】
第2の特徴によると、第1の特徴による作用と同様の作用を奏する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、前記圧縮機ケースに対して前記圧縮機ロータを組付けた後に、前記圧縮機ステータを軸方向前側から前記圧縮機ケースの内壁面における前記圧縮機ステータの軸方向後側に容易に組付けることができるため、前記軸流圧縮機の組立の自由度を拡げて、前記軸流圧縮機の組立性を向上させることできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る軸流圧縮機の側断面図である。
【図2】図2は、本発明の第1実施形態に係る軸流圧縮機の要部を示す側断面図である。
【図3】図3は、本発明の第1実施形態に係る軸流圧縮機の別態様を示す側断面図である。
【図4】図4(a)は、本発明の第1実施形態に係る軸流圧縮機の別態様を示す側断面図、図4(b)は、図4(a)におけるB−B線に沿った拡大断面図である。
【図5】図5は、本発明の第1実施形態の作用を説明する模式図である。
【図6】図6は、本発明の第2実施形態に係る軸流圧縮機の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図1から図5を参照して説明する。なお、図面中、「F」は、軸方向前側、「R」は、軸方向後側をそれぞれ指している。
【0018】
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る軸流圧縮機1は、例えば小型ガスタービン等に用いられ、空気(ガスの一例)を軸方向へ圧縮して搬送するものである。また、軸流圧縮機1は、軸方方向へ延びた筒状の圧縮機ケース3を具備しており、この圧縮機ケース3の内部には、空気を流通させるための環状のガス流路5が形成されている。
【0019】
圧縮機ケース3内には、複数段の圧縮機ロータ7が軸方向に沿って設けられており、各段の圧縮機ロータ7は、圧縮機ケース3の軸心SC周りに回転可能である。また、各段の圧縮機ロータ7は、圧縮機ケース3内に圧縮機ロータ7の軸心SC周りに回転可能に設けられたディスク9と、このディスク9の外周部に周方向に等間隔に並んで設けられかつガス流路5内に位置する複数(図1中には1つのみ図示)の動翼11とを備えている。そして、軸方向に隣接する圧縮機ロータ7におけるディスク9同士は、カービックカップリング13を介して結合されており、複数の圧縮機ロータ7におけるディスク9は、スタッキングボルト15によってアセンブリ状に一体化されている。なお、複数段の圧縮機ロータ7は、ガスタービンのタービン(図示省略)における複数段のタービンロータ(図示省略)に一体的に連結してある。
【0020】
圧縮機ケース3内には、複数段の圧縮機ステータ17が軸方向に沿って複数段の圧縮機ロータ7と交互に設けられている。そして、本発明の第1実施形態の要部である圧縮機ステータ17の具体的な構成は、次のようになる。
【0021】
図1及び図2に示すように、圧縮機ステータ17は、環状のアウターバンド19を具備しており、このアウターバンド19は、圧縮機ケース3の内壁面に取付可能である。また、アウターバンド19の内周面には、複数(図1及び図2中には1つのみ図示)の静翼21が周方向に等間隔に並んで設けられており、各静翼21は、ガス流路5内に位置している。
【0022】
圧縮機ステータ17は、軸方向に沿って分割された複数のステータセグメント17Sにより構成されている。また、各ステータセグメント17Sは、アウターバンド19の一部を構成する環状のバンド構成部材19mを備えており、このバンド構成部材19mの内周面には、静翼21の一部を構成する静翼21の枚数と同数の静翼構成部材21mが周方向に等間隔に形成されている。
【0023】
軸方向に隣接するステータセグメント17S間において、軸方向前側のステータセグメント17Sにおけるバンド構成部材19mは、軸方向後側のステータセグメント17Sにおけるバンド構成部材19mに径方向内側から同心状に嵌合可能になっている。なお、図3に示すように、軸方向前側のステータセグメント17Sにおけるバンド構成部材19mが軸方向後側のステータセグメント17Sにおけるバンド構成部材19mに径方向外側から同心状に嵌合可能になるようにしても構わない。
【0024】
図2に示すように、最も軸方向後側(最も流れ方向下流側)に位置するステータセグメント17Sにおけるバンド構成部材19mは、圧縮機ケース3の内壁面に取付ボルト23を介して取付可能になっている。同様に、最も軸方向前側(最も流れ方向上流側)に位置するステータセグメント17Sにおけるバンド構成部材19mは、圧縮機ケース3の内壁面に取付ボルト25を介して取付可能になっている。
【0025】
通常、軸方向に隣接するステータセグメント17Sにおける静翼構成部材21m同士は当接してあるが、図4(a)に示すように、軸方向に隣接するステータセグメント17Sにおける静翼構成部材21mの間に隙間27が形成されるようにしても構わない。
【0026】
図1及び図2に示すように、各ステータセグメント17Sの前側には、環状のスペーサ29が配設されており、各スペーサ29は、圧縮機ケース3の内壁面に取付ボルト31を介して取付可能になっている。
【0027】
続いて、本発明の第1実施形態の作用及び効果について説明する。
【0028】
(i) 圧縮機ステータ17の組付に関する作用
圧縮機ステータ17が軸方向に沿って分割された複数のステータセグメント17Sにより構成されているため、静翼構成部材21mの幅(コード長)が分割数に応じて短くなっており、図5に示すように、ステータセグメント17S(アウターバンド19)を周方向に僅かに回転させながら圧縮機ロータ7に対して相対的に軸方向へ移動させることにより、ステータセグメント17Sにおける各静翼構成部材21mを周方向に隣接する動翼11間を通過させることができる。また、軸方向前側のステータセグメント17Sにおけるバンド構成部材19mが軸方向後側のステータセグメント17Sにおけるバンド構成部材19mに同心状に嵌合可能になっているため、複数のステータセグメント17Sの芯出しを行いつつ、圧縮機ステータ17を組み立てることができる。これにより、圧縮機ケース3に対してアセンブリ状の複数段の圧縮機ロータ7を組付けた後に、圧縮機ステータ17を軸方向前側から圧縮機ケース3の内壁面における適宜の圧縮機ステータ17の軸方向後側に容易に組付けることができる。
【0029】
(ii) 軸流圧縮機1の運転に関する作用
ガスタービンの燃焼器(図示省略)から燃焼ガスの膨張によってガスタービンのタービン(図示省略)を駆動させて、複数段の圧縮機ロータ7をタービンにおける複数段のタービンロータ(図示省略)と一体的に回転させる。これにより、複数段の圧縮機ロータ7と複数段の圧縮機ステータ17を協働させて、ガス流路5内に取り入れた空気を軸方向へ圧縮して搬送することができる。
【0030】
ここで、軸方向に隣接するステータセグメント17Sにおける静翼構成部材21mの間に隙間27が形成されるようにした場合には、図3(b)に示すように、軸流圧縮機1の運転中に、静翼21の正圧面(圧力面)Spから負圧面Snへ隙間27を経由した漏れ流れが生じて、静翼21の負圧面Sn側の境界層の剥離を抑えることができる。
【0031】
(iii) 第1実施形態の効果
従って、本発明の第1実施形態によれば、圧縮機ケース3に対してアセンブリ状の複数段の圧縮機ロータを組付けた後に、圧縮機ステータ17を軸方向前側から圧縮機ケース3の内壁面における適宜の圧縮機ステータ17の軸方向後側に容易に組付けることができるため、軸流圧縮機1の組立の自由度を拡げて、軸流圧縮機1の組立性を向上させることできる。
【0032】
また、軸方向に隣接するステータセグメント17Sにおける静翼構成部材21mの間に隙間27が形成されるようにした場合には、静翼21の負圧面Sn側の境界層の剥離を抑えることができるため、圧縮機ステータ17内におけるエネルギー損失(圧力損失)を低減して、軸流圧縮機1の圧縮機効率を向上させることができる。
【0033】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について図6を参照して説明する。なお、図面中、「F」は、軸方向前側、「R」は、軸方向後側をそれぞれ指している。
【0034】
図6に示すように、本発明の第2実施形態に係る軸流圧縮機33は、例えば小型ガスタービン等に用いられて、空気(ガスの一例)を軸方向へ圧縮して搬送するものであって、本発明の第1実施形態に軸流圧縮機1と同様の構成を有している。以下、軸流圧縮機33の構成のうち、軸流圧縮機1の構成と異なる部分についてのみ簡単に説明する。なお、軸流圧縮機33における複数の構成要素のうち、軸流圧縮機1における構成要素と対応するものについては、図面中に同一番号を付する。
【0035】
圧縮機ケース3内には、筒状のドラム35が配設されており、このドラム35は、圧縮機ケース3の軸心SC周りに回転可能である。また、ドラム35の外周部には、複数段の圧縮機ロータ37が軸方向に沿って設けられており、各段の圧縮機ロータ37は、圧縮機ケース3の軸心SC周りにドラム35と一体的に回転可能である。更に、各段の圧縮機ロータ37は、ドラム35の外周部に周方向に等間隔に並んで設けられかつガス流路5内に位置する複数の動翼39を備えている。なお、複数段の圧縮機ロータ37は、ガスタービンのタービン(図示省略)における複数段のタービンロータ(図示省略)にドラム35を介して一体的に連結してある。
【0036】
そして、本発明の第2実施形態においても本発明の第1実施形態の作用及び効果と同様の作用及び効果を奏する。
【0037】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限られるものではなく、適宜の変更を行うことにより、種々の態様で実施可能である。また、本発明に包含される権利範囲は、これらの実施形態に限定されないものである。
【符号の説明】
【0038】
1 軸流圧縮機
3 圧縮機ケース
5 ガス流路
7 圧縮機ロータ
9 ディスク
11 動翼
13 カービックカップリング
15 スタッキングボルト
17 圧縮機ステータ
17S ステータセグメント
19 アウターバンド
19m バンド構成部材
21 静翼
21m 静翼構成部材
23 取付ボルト
25 取付ボルト
27 隙間
33 軸流圧縮機
35 ドラム
37 圧縮機ロータ
39 動翼

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを軸方向へ圧縮して搬送する軸流圧縮機の構成要素である圧縮機ステータであって、
環状のアウターバンドと、前記アウターバンドの内周面に周方向に等間隔に並んで設けられた複数の静翼と、を具備し、
軸方向に沿って分割された複数のステータセグメントにより構成され、
各ステータセグメントは、
前記アウターバンドの一部を構成する環状のバンド構成部材と、
前記バンド構成部材の内周面に周方向に等間隔に形成され、前記静翼の一部を構成する前記静翼の枚数と同数の静翼構成部材と、を備え、
軸方向に隣接する前記ステータセグメント間において、軸方向前側の前記ステータセグメントにおける前記バンド構成部材が軸方向後側の前記ステータセグメントにおける前記バンド構成部材に同心状に嵌合可能になっていることを特徴とする圧縮機ステータ。
【請求項2】
最も軸方向後側に位置する前記ステータセグメントにおける前記バンド構成部材が前記軸流圧縮機の別の構成要素である圧縮機ケースに取付可能になっていることを特徴とする請求項1に記載の圧縮機ステータ。
【請求項3】
軸方向に隣接する前記ステータセグメントにおける前記静翼構成部材の間に隙間が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の圧縮機ステータ。
【請求項4】
ガスを軸方向へ圧縮して搬送する軸流圧縮機であって、
内部にガスを流通させるための環状のガス流路が形成された筒状の圧縮機ケースと、
前記圧縮機ケース内に設けられ、前記ガス流路内に位置しかつ周方向に等間隔に並んだ複数の動翼を備え、前記圧縮機ケースの軸心周りに回転可能な圧縮機ロータと、
前記圧縮機ケース内に軸方向に沿って前記圧縮機ロータと交互に設けられ、請求項1から請求項3のうちのいずれかの請求項に記載の構成からなる複数段の圧縮機ステータと、を具備したことを特徴とする軸流圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−100784(P2013−100784A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245548(P2011−245548)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】