説明

圧縮機用吐出バルブ装置

【目的】 その製造が容易となるように単純化された構造を有し、動作時の騒音を極力低下すること。
【構成】 バルブプレート20の凹部21に、その底面29が凹部21の底面から隆起されてバルブシート23と同一の高さをなすチャンネル部25を形成し、バルブリード30を、チャンネル部25に配置される基部32と、この基部32から延在しバルブシート23と接触する円形部33とにより構成するとともに、バルブスプリング31を、バルブリード30に圧接する折曲部分34とバルブリード30によって弾力的に変形可能な湾曲部分35とにより構成し、バルブプレート20の凹部21の両端部に、それぞれバルブスプリング31の両端部に係合するストッパ28の形成されたトラップ26,27を設けてバルブスプリング31を保持するように構成したもの。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は圧縮機用吐出バルブ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】密閉型冷蔵庫に使用される圧縮機には、一般に、リードタイプの吐出バルブ装置が設けられている。このような圧縮機用吐出バルブ装置のひとつとして、ジャック、エフ、フリッチマンに与えられた米国特許第4,352,377号明細書に開示されたものがあり、この吐出バルブ装置は図5に示されている。
【0003】図5において、シリンダブロック1には、ピストン3が往復運動するように装着されたシリンダボア2が形成されている。前記シリンダブロック1の上方に位置するシリンダヘッド5に設置されている吐出バルブ装置は、前記シリンダブロック1とシリンダヘッド5との間に介装されているバルブプレート4と、このバルブプレート4に形成されている吐出孔8と、前記バルブプレート4に装着されている1対のガイドポスト9と、前記吐出孔8を被覆するバルブリード10と、前記バルブプレート4に対して前記バルブリード10を弾力的に押圧するためのバルブスプリング11と、このバルブスプリング11を元の位置に保持するバルブストップ12と、このバルブストップ12上に配置されたリテーナ11とにより構成されており、前記バルブリード10、バルブスプリング11、バルブストップ12およびリテーナ13は、前記ガイドポスト9に積層状に支持されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述した従来の吐出バルブ装置は、数多くの部品を有しているため、その構造が複雑になるばかりでなく、動作時に大きな騒音が発生されるという問題点があった。
【0005】本発明の目的は、その製造が容易となるように単純化された構造を有する圧縮機用吐出バルブ装置を提供するものである。
【0006】また、本発明の他の目的は、動作時の騒音を極力低下した圧縮機用吐出バルブ装置を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明による圧縮機用吐出バルブ装置は、バルブシートが形成された吐出孔を設けた凹部が形成されているバルブプレートと、このバルブシートと気密接触するように前記凹部に装着されている板状のバルブリードと、このバルブリードに押圧接触するようにバルブリード上に装着され、バルブリードの動きにより弾力的に変形されうるバルブスプリングとを有しており、前記バルブプレートの凹部に、その底面が前記凹部の底面から隆起されて前記バルブシートと同一の高さをなすチャンネル部を形成し、前記バルブリードを、前記チャンネル部に配置される基部と、この基部から延在し前記バルブシートと接触する円形部とにより構成するとともに、前記バルブスプリングを、前記バルブリードに圧接する折曲部分と前記バルブリードによって弾力的に変形可能な湾曲部分とにより構成し、前記バルブプレートの凹部の両端部に、それぞれ前記バルブスプリングの両端部に係合するストッパの形成されたトラップを設けて前記バルブスプリングを保持するように構成したことを特徴としている。
【0008】
【作用】本発明によれば、圧縮機の吸入行程下において、バルブリードは、バルブスプリングの折曲部分によって作用される押圧力と吐出室の圧力とによってバルブシートと気密接触されるように維持され、吐出孔を閉鎖している。このとき、冷媒ガスは吸入孔を介してシリンダボア内に流入される。
【0009】つぎに、圧縮機の吐出行程下において、シリンダボア内でピストンによって圧縮された冷媒ガスの圧力が、吐出室の圧力ならびにバルブスプリングの押圧力より大きくなると、バルブリードの円形部は、バルブスプリングの折曲部分の押圧力に対向して作用する圧縮された冷媒ガス吐出圧によってバルブシートの上方に押し退けられて吐出孔を開放する。
【0010】そして、圧縮機が圧縮行程から吸入行程に変更されると、バルブリードの上方に撓んだ円形部は、バルブスプリングの折曲部分の押圧力によってバルブシート上に着座する位置に復帰される。
【0011】
【実施例】図1および図2は圧縮機用吐出バルブ装置の実施例を示すものであり、これらの図において、シリンダ1、ピストン3およびシリンダヘッド5についての構成は通常の圧縮機用吐出バルブ装置と同様である。したがって、これらの部品は本発明の要部ではないため、これらの部品に対しては図5に表示したものと同一の参照符号を使用する。
【0012】図1および図2において、シリンダブロック1に装着されたバルブプレート20には、吐出用リードバルブ装置を装着するための凹部21が吐出孔22の周囲に形成されている。前記吐出孔22には前記バルブプレート20の上面より低位に位置するバルブシート23が接続されている。また、前記バルブプレート20には、通常的な方法により吸入孔24が形成されている。
【0013】前記凹部21内には、凹部21の底面から隆起された底面29を有するチャンネル部25が形成されており、前記チャンネル部25の底面29は吐出孔22のバルブシート23と同一の高さとされている。さらに、前記凹部21の両側の端部には、ストッパをなすそれぞれ上向きの段部28を有するトラップ26,27が形成されている。
【0014】前記吐出用リードバルブ装置は、バルブリード30と、このバルブリード30上に装着されるバルブスプリング31を有している。前記バルブリード30は、細長い基部32と、この基部32から延在している円形部33とにより構成されている。前記基部32は凹部21のチャンネル部25に配置されており、前記円形部33は、前記吐出孔22を閉じるように前記バルブシート23に着座されるようになっている。また、前記バルブスプリング31は弾性材料により構成されており、先端側を上向きに折曲され下向きに頂線が突出している折曲部分34と、ベントチップ36が先端に形成され先端側を下向きに湾曲された湾曲部分35とにより構成されている。
【0015】前記折曲部分34は前記チャンネル部25の隆起された底面29の内側の角に対応する位置において前記バルブリード30を押圧するようにバルブリード30に接触している。また、前記バルブスプリング31の湾曲部35は、前記バルブリード30の開放動作時にバルブリード30の動きにより上方に弾力的に変形されることになる。
【0016】なお、前記バルブリード30上へのバルブスプリング31の装着は、バルブスプリング31の全体を湾曲してその両端部を各トラップ26,27内に形成されている各段部28に係合させる。すると、前記トラップ26,27内に位置する前記バルブスプリング31の両端部の動きが拘束され、バルブスプリング31がトラップ26,27から抜け止めされ元の位置に維持されることになる。したがって、本実施例による吐出バルブ装置は、別途の工具を必要とせず作業者によって簡単に組立てられることになる。
【0017】つぎに、前述した構成からなる本実施例の作用について説明する。
【0018】図3は圧縮機の吸入行程下における吐出バルブを示したものである。
【0019】図3において、前記バルブリード30は、バルブスプリング31の折曲部分34によって作用される押圧力と吐出室の圧力とによってバルブシート34と気密接触されるように維持され、吐出孔22を閉鎖している。このとき、冷媒ガスは、図3に示す吸入孔24を介してシリンダボア2内に流入される。
【0020】図4は圧縮機の吐出行程下の吐出バルブを示したものである。
【0021】図4において、前記シリンダボア2内でピストン3によって圧縮された冷媒ガスの圧力が、吐出室の圧力ならびにバルブスプリング31の押圧力より大きくなると、本実施例の吐出バルブを介して排出される。
【0022】すなわち、前記バルブリード30の円形部33は、前記バルブスプリング31の折曲部分34の押圧力に対向して作用する圧縮された冷媒ガス吐出圧によってバルブシート23の上方に押し退けられて吐出孔22を開放する。
【0023】このとき、前記バルブリード30の押し退けられた円形部33はバルブスプリング31の湾曲部分35の底面と接触して、湾曲部分35を外側にさらに変形させ、これにより、前記バルブリード30は吐出孔22を完全に開放することになる。しかしながら、前記バルブリード30の基部32はバルブスプリング31の折曲部分34の押圧力によってチャンネル部25の底面に接触された状態に保持される。バルブスプリング31のベントチップ36はトラップ27の壁に沿ってスライドすることができるが、トラップ27に形成された段部(ストッパ)28と係合して停止される。
【0024】そして、圧縮機が圧縮行程から吸入行程に変更されると、前記バルブリード30の上方に撓んだ円形部33は、前記バルブスプリング31の折曲部分34の押圧力によって図3に示すようにバルブシート23上に着座する位置に復帰される。
【0025】したがって、本発明の吐出バルブ装置は安定され正確な動作をすることができる。
【0026】前述した実施例によれば、単純化された構成により容易に製造することができる。
【0027】また、摺接している少数の部品により構成されているので、動作時の騒音を極力低下することができる。すなわち、吐出バルブの開口上には、バルブリード30の自由端が、バルブスプリング31の底面に摺動しうるように接触し、かつ、バルブスプリング31のベントチップ36が、トラップ27の壁に沿って摺動するような構成とされており、全体として少数の部品により構成されているので、動作時の騒音を極力低下することができる。
【0028】なお、本発明は、前述した実施例に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【0029】
【発明の効果】本発明の圧縮機用吐出バルブ装置は、減少された数の部品により構成され組立が簡単であるという構造的な利点と、動作が正確かつ円滑で、しかも騒音の発生を極力低下できるという性能上の利点とがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の圧縮機用吐出バルブ装置の実施例を示す縦断面図
【図2】図1の圧縮機用吐出バルブ装置の分解斜視図
【図3】図1の圧縮機用吐出バルブ装置の閉鎖時の状態を示す縦断面図
【図4】図1の圧縮機用吐出バルブ装置の開放時の状態を示す縦断面図
【図5】従来の圧縮機用吐出バルブ装置の縦断面図
【符号の説明】
1 シリンダ
3 ピストン
5 シリンダヘッド
20 バルブプレート
21 凹部
22 吐出孔
23 バルブシート
24 吸入孔
25 チャンネル部
26,27 トラップ
30 バルブリード
31 バルブスプリング
34 折曲部分
35 湾曲部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】 バルブシートが形成された吐出孔を設けた凹部が形成されているバルブプレートと、このバルブシートと気密接触するように前記凹部に装着されている板状のバルブリードと、このバルブリードに押圧接触するようにバルブリード上に装着され、バルブリードの動きにより弾力的に変形されうるバルブスプリングとを有しており、前記バルブプレートの凹部に、その底面が前記凹部の底面から隆起されて前記バルブシートと同一の高さをなすチャンネル部を形成し、前記バルブリードを、前記チャンネル部に配置される基部と、この基部から延在し前記バルブシートと接触する円形部とにより構成するとともに、前記バルブスプリングを、前記バルブリードに圧接する折曲部分と前記バルブリードによって弾力的に変形可能な湾曲部分とにより構成し、前記バルブプレートの凹部の両端部に、それぞれ前記バルブスプリングの両端部に係合するストッパの形成されたトラップを設けて前記バルブスプリングを保持するように構成したことを特徴とする圧縮機用吐出バルブ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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