説明

圧縮機駆動装置

【課題】圧縮機の運転振動の伝達により発生する圧縮機駆動装置の放熱板の騒音に関して、人が耳障りとなる低周波数帯の音の発生を抑える。
【解決手段】圧縮機102を駆動する半導体素子105及びその駆動を制御する制御回路が実装されたプリント基板106と、前記プリント基板106を収納し圧縮機102に直接取付ける構造を有した樹脂ケース107と、前記半導体素子冷却用として樹脂ケース107に複数のビス108によって取付けられた放熱板109とを備え、樹脂ケース107の放熱板109を取付ける面において、隣接するビス取付け箇所の略中央部に凸部114を設けたことにより、人が耳障りとなる低周波数帯の音の発生を抑えた圧縮機駆動装置を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫等に搭載される冷却システムの圧縮機を駆動する圧縮機駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、パワーエレクトロニクスの進歩に伴い、冷却システムにはインバータ圧縮機が使用されている。例えば、冷蔵庫や空気調和機などにおいて、省エネルギーの目的でインバータ圧縮機が圧縮機駆動装置を介して使用され、機器の省エネルギーに大きく貢献している。
【0003】
このような圧縮機駆動装置に置いて、圧縮機の外郭に取付けて構成する圧縮機駆動装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、圧縮機駆動装置として、圧縮機を駆動する制御回路を実装したプリント基板を、ケース内に収納する構成も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
以下、図面を参照しながら従来の圧縮機駆動装置について説明する。
【0006】
図5は、特許文献1に記載された従来の圧縮機駆動装置を圧縮機に取付けた状態を示す側面図、図6は、特許文献2に記載された従来の圧縮機駆動装置の構成図である。
【0007】
図5において、圧縮機駆動装置1は、圧縮機2に取付けるための取付け脚3が設けられており、圧縮機2の外郭に溶接されたブラケット4に取付けられている。
【0008】
図6において、圧縮機駆動装置1は、主に圧縮機2を駆動する半導体素子5、及びその駆動を制御する制御回路が実装されたプリント基板6と、プリント基板6を収納し、圧縮機2に直接取付ける取付け脚3を有した樹脂ケース7と、前記半導体素子5の冷却用として樹脂ケースに4箇所のビス8によって取付けられる放熱板9とで構成している。
【0009】
半導体素子5の上面には、絶縁シート10を介しながら、熱拡散コンパウンド11を塗ることによって熱を放熱板に逃がしている。放熱板9の材料としては、半導体素子5及びその駆動を制御する制御回路の発生する熱量によるが、熱伝導性が良好なアルミ材料が一般的に用いられている。
【0010】
圧縮機駆動装置1が動作すると、半導体素子5及び制御回路によって、圧縮機2内の電動機を回転させるための電力を圧縮機2側へ供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−357890号公報
【特許文献2】特開2010−186846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来の構成では、圧縮機2の振動の伝達によって放熱板9が振動する際に、放熱板が(1)略平面で形成されている、(2)放熱性を確保するために面積が大きい、(3)4隅がビス固定である、ことから放熱板9の固有振動数が低くなり、人が
耳障りとなる低周波数帯の音が増大するという課題を有していた。
【0013】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、圧縮機2の振動によって放熱板が振動する際に、人が耳障りとなる低周波数帯の音の発生を抑えた圧縮機駆動装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記従来の課題を解決するために、本発明の圧縮機駆動装置は、圧縮機を駆動する半導体素子及びその駆動を制御する制御回路が実装されたプリント基板と、前記プリント基板を収納して圧縮機に直接取付ける構造を有した樹脂ケースと、前記半導体素子冷却用として樹脂ケースに複数のビスによって取付けられた放熱板とを備え、さらに、前記樹脂ケースに、前記放熱板の一部と当接し、該当接部を、前記ビスによる締め付け方向とは逆方向に付勢する付勢手段を設けたもので、放熱板自身の振動を抑制することができ、人が耳障りとなる低周波数帯の音の発生を抑えることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の圧縮機駆動装置は、圧縮機の振動によって放熱板が振動する際に、人が耳障りとなる低周波数帯の音の発生を抑えた圧縮機駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1における圧縮機駆動装置の構成と圧縮機への取付け状態を示す分解斜視図
【図2】同実施の形態1における圧縮機駆動装置の図1の組立完成後のA−A線による断面図
【図3】同実施の形態2における圧縮機駆動装置の図2相当図
【図4】同実施の形態3における圧縮機駆動装置の構成と圧縮機への取付け状態を示す分解斜視図
【図5】従来の圧縮機駆動装置を圧縮機に取付けた状態を示す側面図
【図6】従来の圧縮機駆動装置の構成図
【発明を実施するための形態】
【0017】
請求項1に記載の発明は、圧縮機を駆動する半導体素子及びその駆動を制御する制御回路が実装されたプリント基板と、前記プリント基板を収納して圧縮機に直接取付ける構造を有した樹脂ケースと、前記半導体素子冷却用として樹脂ケースに複数のビスによって取付けられた放熱板とを備え、さらに、前記樹脂ケースに、前記放熱板の一部と当接し、該当接部を、前記ビスによる締め付け方向とは逆方向に付勢する付勢手段を設けたものである。
【0018】
かかることにより、放熱板は、一部の当接手段との当接により、部分的に反り面を形成し、放熱板自身の振動を抑制することができる。その結果、人が耳障りとなる低周波数帯の音の発生を抑えた圧縮機駆動装置を提供することができる。
【0019】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記付勢手段を、前記樹脂ケースの放熱板を取付ける面の縁において、隣接するビス取付け箇所の略中央部に設けた凸部によって形成したものである。
【0020】
かかる構成とすることにより、ビスの締め付けに伴って放熱板の反りを形成することができ、作業性がよく、また、人が耳障りとなる低周波数帯の音の発生を抑えた圧縮機駆動装置を提供することができる。
【0021】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記付勢手段を、前記樹脂ケースの放熱板を取付ける面の縁において、隣接するビス取付け箇所間の縁の略中央部を頂とする弓形状の縁より形成したものである。
【0022】
かかる構成とすることにより、ビスの締め付けに伴って放熱板の反りを形成することができ、作業性がよく、また、人が耳障りとなる低周波数帯の音の発生を抑えた圧縮機駆動装置を提供することができる。
【0023】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記付勢手段を、前記樹脂ケースの略中央部に、前記放熱板を取付ける面より高い支持柱によって形成したものである。
【0024】
かかる構成とすることにより、ビスの締め付けに伴って放熱板の反りを形成することができ、作業性がよく、また、人が耳障りとなる低周波数帯の音の発生を抑えた圧縮機駆動装置を提供することができる。
【0025】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における圧縮機駆動装置の構成と圧縮機への取付けた状態を示す斜視図である。図2は、同実施の形態1における圧縮機駆動装置の図1の組立完成後のA−A線による断面図である。
【0026】
図1、図2において、圧縮機駆動装置101は、主に、圧縮機102を駆動する半導体素子105及びその駆動を制御する制御回路が実装されたプリント基板106と、プリント基板106を収納し、圧縮機102に直接取付ける取付け脚103を有した樹脂ケース107と、半導体素子105の冷却用として設けられた放熱板109とで構成している。放熱板109は、樹脂ケース107の4箇所にビス108によって取付けられる。
【0027】
圧縮機駆動装置101は、取付け脚103を介して圧縮機102の外郭に溶接されたブラケット104に取付けられる。ブラケット104内には、圧縮機駆動装置101から配線でつながれたオーバーロードプロテクター112と、圧縮機電動機へ電力を供給するクラスター接続子113が取り付くようになっている。
【0028】
さらに、樹脂ケース107の放熱板109を取付ける面で、かつ放熱板109の周縁が当接する縁において、隣接するビス取付け箇所107a間の略中央部には、図2に示すように縁面よりも若干突出する凸部114を設けている。
【0029】
そして、略平面の放熱板109の端をビス固定することによって、放熱板109は、図2に示すように反るとともに縁の中央部に押し当て力が発生する。
【0030】
以上のように構成された圧縮機駆動装置101について、以下その動作、作用を説明する。
【0031】
まず、圧縮機駆動装置101が動作すると、半導体素子105及び制御回路によって圧縮機102内の電動機を回転させるための電力を圧縮機102側へ供給する。それによって圧縮機102は運転を行い、回転動作によって振動を発生する。その振動はブラケット104を介して、樹脂ケース107や放熱板109に伝達する。
【0032】
放熱板109は、樹脂ケース107に設けた凸部114によって放熱板109における縁の中央部に押し当て力が働くことで、当該箇所が振動の節になる。それによって両隅のビス固定だけの場合に対して、放熱板109の固有振動数が高くなる。
【0033】
これによって、放熱板109からの人が耳障りとなる低周波数帯の音の発生を抑えることができる。したがって、人が耳障りとなる低周波数帯の音の発生を抑えた圧縮機駆動装置を提供することができる。
【0034】
なお、樹脂ケース107の放熱板109を取付ける面の凸部114に関して、放熱板109上部に設ける場合の説明を行ったが、上下左右の単独・複数の各場合に適用は可能である。
【0035】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2における圧縮機駆動装置の要部断面図で、実施の形態1における図2相当図である。本実施の形態2の構成は、実施の形態1との比較において、放熱板109に反りを形成する構成が相違するのみで、圧縮機駆動装置101の全体構成と圧縮機102への取付け構成は、図1とその説明を援用し、ここでは、実施の形態1と相違する構成について説明する。
【0036】
図3において、樹脂ケース107の放熱板109を取付ける面の縁において、隣接するビス取付け箇所107a間の縁の略中央部を頂部115とする弓形状としている。
【0037】
そして、略平面の放熱板109の端をビス固定することによって、放熱板109は、図3に示すように反るとともに縁の中央部に押し当て力が発生する。
【0038】
以上のように構成された圧縮機駆動装置101について、以下その動作、作用について説明する。
【0039】
実施の形態1と同様に、圧縮機駆動装置101が動作すると、半導体素子105及び制御回路によって圧縮機102内の電動機を回転させるための電力を圧縮機102側へ供給する。それによって圧縮機102は運転を行い、回転動作によって振動を発生する。その振動はブラケット104を介して、樹脂ケース107や放熱板109に伝達する。
【0040】
放熱板109は、樹脂ケース107に設けた頂部115を基点に弓なりに反り、その結果、放熱板109中央部に押し当て力が働くことで、当該箇所が振動の節になる。それによって両隅のビス固定だけの場合に対して、放熱板109の固有振動数が高くなる。
【0041】
これによって、放熱板109からの人が耳障りとなる低周波数帯の音の発生を抑えることができる。したがって、人が耳障りとなる低周波数帯の音の発生を抑えた圧縮機駆動装置を提供することができる。
【0042】
さらに、本実施の形態2では、樹脂ケース107と放熱板109の間に隙間が発生しないことから、樹脂ケース107内部へのほこり・虫等の侵入を防ぐことができ、圧縮機駆動装置101の信頼性を高めることができる。
【0043】
(実施の形態3)
図4は、実施の形態3における圧縮機駆動装置の構成と圧縮機への取付け状態を示す分解斜視図である。
【0044】
図4において、圧縮機駆動装置101は、主に、圧縮機102を駆動する半導体素子105及びその駆動を制御する制御回路が実装されたプリント基板106と、プリント基板106を収納し、圧縮機102に直接取付ける取付け脚103とを備えた樹脂ケース107と、半導体素子105の冷却用として設けられた放熱板109とで構成している。放熱
板109は、樹脂ケース107の4箇所にビス108によって取付けられる。
【0045】
圧縮機駆動装置101は、取付け脚103を介して圧縮機102の外郭に溶接されたブラケット104に取付けられる。
【0046】
さらに、樹脂ケース107の底面で、かつ4隅のビス取付け箇所107aの略中央部となる位置に、放熱板109を取付ける面より、高い支持柱116を設けている。
【0047】
そして、略平面の放熱板109の4隅をビス固定することによって、放熱板109は反るとともに中央部に押し当て力が発生する。
【0048】
以上のように構成された圧縮機駆動装置101について、以下その動作、作用を説明する。
【0049】
まず、圧縮機駆動装置101が動作すると、半導体素子105及び制御回路によって圧縮機102内の電動機を回転させるための電力を圧縮機側へ供給する。それによって圧縮機102は運転を行い、回転動作によって振動を発生する。その振動はブラケット104を介して、樹脂ケース107や放熱板109に伝達する。
【0050】
放熱板109は、樹脂ケース107に設けた支持柱116によって、放熱板109中央部に押し当て力が働くことで、当該箇所が振動の節になる。それによって、両隅のビス固定だけの場合に対して、放熱板109の固有振動数が高くなる。補足として、実施の形態1および2の構成は、2次固有振動数を高くすることに有効であるのに対して、本実施の形態3の構成は、1次固有振動数を高くすることに有効である。
【0051】
これによって、放熱板109からの人が耳障りとなる低周波数帯の音の発生を抑えることができる。したがって、人が耳障りとなる低周波数帯の音の発生を抑えた圧縮機駆動装置を提供することができる。
【0052】
さらに、本実施の形態3についても、実施の形態2と同様に、樹脂ケース107と放熱板109の間に隙間が発生しないことから、樹脂ケース107内部へのほこり・虫等の侵入を防ぐことができ、圧縮機駆動装置101の信頼性を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように、本発明にかかる圧縮機駆動装置は、放熱板の固有振動数を高くすることにより、圧縮機の運転振動の伝達によって発生する放熱板の騒音に関して、人が耳障りとなる低周波数帯の音の発生を抑えた圧縮機駆動装置を提供することができるので、冷蔵庫、空調調和機等の圧縮機駆動装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
101 圧縮機駆動装置
102 圧縮機
105 半導体素子
106 プリント基板
107 樹脂ケース
109 放熱板
114 凸部
115 頂部
116 支持柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機を駆動する半導体素子及びその駆動を制御する制御回路が実装されたプリント基板と、前記プリント基板を収納して圧縮機に直接取付ける構造を有した樹脂ケースと、前記半導体素子冷却用として樹脂ケースに複数のビスによって取付けられた放熱板とを備え、さらに、前記樹脂ケースに、前記放熱板の一部と当接し、該当接部を、前記ビスによる締め付け方向とは逆方向に付勢する付勢手段を設けた圧縮機駆動装置。
【請求項2】
前記付勢手段を、前記樹脂ケースの放熱板を取付ける面の縁において、隣接するビス取付け箇所の略中央部に設けた凸部によって形成した請求項1に記載の圧縮機駆動装置。
【請求項3】
前記付勢手段を、前記樹脂ケースの放熱板を取付ける面の縁において、隣接するビス取付け箇所間の縁の略中央部を頂とする弓形状の縁より形成した請求項1に記載の圧縮機駆動装置。
【請求項4】
前記付勢手段を、前記樹脂ケースの略中央部に、前記放熱板を取付ける面より高い支持柱によって形成した請求項1に記載の圧縮機駆動装置。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−102104(P2013−102104A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246058(P2011−246058)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】