圧縮機
【課題】圧縮機構が軸方向へ振動することを防ぐ。
【解決手段】密閉ケーシング3の内部には、駆動機構4及び圧縮機構5が、軸方向に上下に並んでいる。圧縮機構5は、シリンダ50と、シリンダ50の軸方向両端に配置されるフロントヘッド60及びリアヘッド70とを有している。シリンダ50は、その径方向外側において、胴部31に固定されている。密閉ケーシング3内において、リアヘッド70の下方に、支持部材9が設けられている。支持部材9の上端はリアヘッド70のボス部72に当接していると共に、支持部材9の下端はボトム33の底面に当接している。
【解決手段】密閉ケーシング3の内部には、駆動機構4及び圧縮機構5が、軸方向に上下に並んでいる。圧縮機構5は、シリンダ50と、シリンダ50の軸方向両端に配置されるフロントヘッド60及びリアヘッド70とを有している。シリンダ50は、その径方向外側において、胴部31に固定されている。密閉ケーシング3内において、リアヘッド70の下方に、支持部材9が設けられている。支持部材9の上端はリアヘッド70のボス部72に当接していると共に、支持部材9の下端はボトム33の底面に当接している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒を圧縮するための圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機は、特許文献1に示すように、ケーシングの内部に上下に並んで配置された駆動機構及び圧縮機構を有しているものが一般的である。そして、この圧縮機の圧縮機構は、圧縮室が形成されたシリンダと、その両端に配置されたフロントヘッド(主軸受部材)及びリアヘッド(副軸受部材)とを有しており、シリンダの径方向外側において、ケーシングにスポット溶接により固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−318170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した圧縮機では、ケーシングの内部において、圧縮機構から吐出されたガスは圧力脈動を有しており、その圧力脈動によって、圧縮機構が軸方向(上下方向)に振動するという問題がある。特に、上記の圧力脈動の周波数と、圧縮機構を構成する部材(フロントヘッド、シリンダ及びリアヘッドなど)の固有周波数とが一致した場合、共振が発生して、圧縮機構が軸方向に大きく振動してしまう。
【0005】
そこで、本発明は、圧縮機構が軸方向に振動するのを抑制することができる圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る圧縮機は、駆動機構と、前記駆動機構により駆動される圧縮機構とが、ケーシング内において軸方向に並んで配置されており、前記圧縮機構は、その径方向外側において前記ケーシングに固定されると共に、前記駆動機構と反対側から支持される。
【0007】
この圧縮機では、圧縮機構が駆動機構と反対側から支持されており、圧縮機構が駆動機構と反対側へ移動しないように構成されている。したがって、圧縮機構が、軸方向に振動するのを抑制することができる。
【0008】
第2の発明に係る圧縮機は、第1の発明に係る圧縮機において、前記ケーシング内において前記圧縮機構に対して前記駆動機構と反対側に設けられた支持部材を備え、前記支持部材は、その一端が前記圧縮機構に当接し且つ他端が前記ケーシングの底面に当接することによって、前記圧縮機構を支持する。
【0009】
この圧縮機では、圧縮機構を支持するための構成を容易に構成できる。
【0010】
第3の発明に係る圧縮機は、第2の発明において、前記支持部材は、環状の部材である。
【0011】
この圧縮機では、支持部材が環状の部材であるため、圧縮機構を安定した状態で支持することができる。
【0012】
第4の発明に係る圧縮機は、第2又は第3の発明に係る圧縮機において、前記支持部材は、その内周側領域と外周側領域とを連通させる開口を有している。
【0013】
この圧縮機では、支持部材がその内周側領域と外周側領域とを連通させる開口を有しており、支持部材の外周側領域に貯留された潤滑油が支持部材の内周側領域に流れなくなることを防ぐことができる。
【0014】
第5の発明に係る圧縮機は、第2〜第4のいずれかの発明において、前記支持部材は、弾性を有する部分を有している。
【0015】
この圧縮機では、支持部材によって圧縮機構に作用する力を吸収することができるので、圧縮機構が軸方向に振動することをより一層抑制することができる。
【0016】
第6の発明に係る圧縮機は、第1の発明に係る圧縮機において、前記ケーシングは、円筒形状の胴部と、前記胴部の一端を塞ぐ第1閉塞部材と、前記胴部の内周面に固定され且つ前記胴部の他端を塞ぐ第2閉塞部材とを有しており、前記第2閉塞部材は、その周縁部が前記圧縮機構に当接することによって、前記圧縮機構を支持する。
【0017】
この圧縮機では、圧縮機構を支持するための構成を、支持部材などの部品を用いることなく構成できる。
【0018】
第7の発明に係る圧縮機は、第1〜第6のいずれかの発明において、前記圧縮機構は、前記ケーシングの前記駆動機構側に向かって押圧された状態で前記駆動機構と反対側から支持される。
【0019】
この圧縮機では、圧縮機構が駆動機構側に向かって押圧された状態で駆動機構と反対側から支持されており、圧縮機構が駆動機構と反対側へ移動しないと共に、駆動機構側へ移動しないように構成されている。したがって、圧縮機構が、軸方向に振動するのを効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上の説明に述べたように、本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0021】
第1の発明では、圧縮機構が駆動機構と反対側から支持されており、圧縮機構が駆動機構と反対側へ移動しないように構成されている。したがって、圧縮機構が、軸方向に振動するのを抑制することができる。
【0022】
第2の発明では、圧縮機構を支持するための構成を容易に構成できる。
【0023】
第3の発明では、支持部材が環状の部材であるため、圧縮機構を安定した状態で支持することができる。
【0024】
第4の発明では、支持部材がその内周側領域と外周側領域とを連通させる開口を有しており、支持部材の外周側領域に貯留された潤滑油が支持部材の内周側領域に流れなくなることを防ぐことができる。
【0025】
第5の発明では、支持部材によって圧縮機構に作用する力を吸収することができるので、圧縮機構が軸方向に振動することをより一層抑制することができる。
【0026】
第6の発明では、圧縮機構を支持するための構成を、支持部材などの部品を用いることなく構成できる。
【0027】
第7の発明では、圧縮機構が駆動機構側に向かって押圧された状態で駆動機構と反対側から支持されており、圧縮機構が駆動機構と反対側へ移動しないと共に、駆動機構側へ移動しないように構成されている。したがって、圧縮機構が、軸方向に振動するのを効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態に係る圧縮機の概略断面図である。
【図2】図1に示した圧縮機のシリンダの断面図であって、図1のII−II線に沿った断面図である。
【図3】図1に示した圧縮機のリアヘッドの下面図である。
【図4】(a)は図1に示した支持部材の平面図であり、(b)は支持部材の斜視図である。
【図5】圧縮機構を支持するための構成を示す図である。
【図6】図1に示した圧縮機を組み立てる工程を示した模式図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る圧縮機の概略断面図である。
【図8】(a)は図7に示した支持部材の平面図であり、(b)は支持部材の斜視図である。
【図9】圧縮機構を支持するための構成を示す図である。
【図10】図7に示した圧縮機を組み立てる工程を示した模式図である。
【図11】本発明の第3実施形態に係る圧縮機の概略断面図である。
【図12】本発明の第4実施形態に係る圧縮機の概略断面図である。
【図13】本発明の第5実施形態に係る圧縮機の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について説明する。
【0030】
本実施形態は、1シリンダ型のロータリ圧縮機に本発明を適用した一例である。図1に示すように、本実施形態の圧縮機1は、アキュムレータ2と、密閉ケーシング(ケーシング)3と、密閉ケーシング3内に配置された駆動機構4および圧縮機構5を備えている。なお、図1では、駆動機構4の断面を示すハッチングを省略して表示している。また、図1の上下方向を単に上下方向として、以下に、圧縮機1について説明する。
【0031】
この圧縮機1は、例えば、空調装置などの冷凍サイクルに組み込まれて使用される。圧縮機1では、アキュムレータ2の入口管2aから導入された冷媒(本実施形態では、R410A)は、吸入管6から密閉ケーシング3内に導入され、圧縮機構5で圧縮された後、排出管7から排出される。
【0032】
密閉ケーシング3は、略円筒形状の胴部31と、トップ(第1閉塞部材)32と、ボトム(第2閉塞部材)33とを有している。胴部31は、上下方向に延在するとともに上端及び下端が開口した部材である。トップ32は、胴部31の上端の開口を塞ぐ部材であって、ボトム33は、胴部31の下端の開口を塞ぐ部材である。また、ボトム33は、その底部の外周部から上方に向かって立設した環状の周縁部33aを有している。トップ32は、胴部31の上端の内側面に固定され、ボトム33は、胴部31の下端の内周面に固定されている。したがって、密閉ケーシング3の内部に、胴部31、トップ32及びボトム33によって囲まれた密閉空間が形成されている。
【0033】
トップ32には、圧縮された冷媒を排出するための排出管7と、駆動機構4の後述するステータ40aのコイルに電流を供給するためのターミナル端子8が設けられている。また、胴部31には、アキュムレータ2から圧縮機1へ冷媒を導入するための吸入管6が設けられている。また、密閉ケーシング3の底部には、圧縮機構5の摺動部の動作を滑らかにするための潤滑油Lが貯留されている。
【0034】
密閉ケーシング3の内部には、駆動機構4と圧縮機構5とが、上下方向(軸方向)に並んで配置されている。駆動機構4は、密閉ケーシング3の内部の上端側に配置されており、圧縮機構5は、密閉ケーシング3の内部の下端側に配置されている。また、密閉ケーシング3の内部には、圧縮機構5の下方に配置された支持部材9が設けられている。したがって、密閉ケーシング3の内部には、上方から順に、駆動機構4、圧縮機構5、支持部材9が並んで配置されている。
【0035】
駆動機構4は、圧縮機構5を駆動するものであって、駆動源となるモータ40と、モータ40に取り付けられたシャフト41とから構成されている。
【0036】
モータ40は、密閉ケーシング3の内周面に固定された略円環状のステータ40aと、このステータ40aの径方向内側にエアギャップを介して配置されるロータ40bとを備えている。ロータ40bは磁石(図示省略)を有し、ステータ40aはコイルを有している。モータ40は、コイルに電流を流すことによって発生する電磁力によって、ロータ40bを回転させる。
【0037】
シャフト41は、モータ40の駆動力を圧縮機構5に伝達するものであって、ロータ40bの内周面に固定されており、ロータ40bと一体的に回転する。また、シャフト41は、後述する圧縮室51内となる位置に設けられた偏心部41aを有している。偏心部41aには、圧縮機構5の後述するローラ81(図2参照)が装着されている。また、シャフト41は、その内部において上下方向に延在する給油路41bを有しており、その回転に伴って潤滑油Lを給油路41b内に吸い上げ、複数の排出孔41cから排出するように構成されている。
【0038】
圧縮機構5は、圧縮室51が形成されたシリンダ50と、圧縮室51の上端を閉塞したフロントヘッド(第1端板部材)60と、圧縮室51の下端を閉塞したリアヘッド(第2端板部材)70とを備えている。シリンダ50は、フロントヘッド60及びリアヘッド70とともにボルトにより固定されている。また、シリンダ50は、その径方向外側において、スポット溶接によって複数の位置で密閉ケーシング3の胴部31に固定されている。また、フロントヘッド60の上方には、マフラー部材85が配置されている。マフラー部材85は、冷媒がフロントヘッド60の吐出孔60a(図2参照)から密閉ケーシング3内(圧縮機構5の外)に吐出される際に生じる騒音を低減するものである。
【0039】
図2に示すように、シリンダ50は、略円環状の部材である。シリンダ50には、上述したように圧縮室51と、圧縮室51内に冷媒を導入するための吸入孔52と、圧縮室51と連通したブレード収容部53が形成されている。また、シリンダ50には、上下方向に貫通する複数の油戻し孔54が周方向に並んで形成されている。そして、シリンダ50の内部には、ローラ81と、ローラ81の外周面から突出したブレード82を有するピストン80が配置されている。
【0040】
ブレード収容部53は、圧縮室51の径方向に延在しており、吸入孔52とフロントヘッド60に形成された吐出孔60aとの間に形成されている。ブレード収容部53内には、周方向に揺動可能な一対のブッシュ55が配置されており、ブレード82が一対のブッシュ55間に対して進退可能に設けられている。
【0041】
圧縮機構5から吐出された冷媒は、ステータ40aとロータ40bとの間のエアギャップなどを通過した後、最終的に、排出管7から密閉ケーシング3の外に排出される。このとき、シャフト41の排出孔41cから圧縮室51内に供給された潤滑油Lの一部は、冷媒と共にマフラー空間Mに吐出された後、マフラー部材85のマフラー吐出孔(図示省略)から密閉ケーシング内に吐出される。
【0042】
図1及び図3に示すように、リアヘッド70は、略円環状の部材であって、シャフト41が回転可能に内挿される軸受け孔71aが形成された環状円盤状の本体部71と、軸受け孔71aを囲むように本体部71から下方に突出した円筒状のボス部72とから構成されている。
【0043】
次に、図4及び図5を参照しつつ、支持部材9の構成を詳細に説明する。
【0044】
図4(a)及び(b)に示すように、支持部材9は、リアヘッド70のボス部72と略同一の断面形状を有した環状の部材である。支持部材9の内径は、ボス部72の内径(軸受け孔71aの外径(図3参照))と略同一であり、支持部材9の外径は、ボス部72の外径と略同一である。
【0045】
図4(b)に示すように、支持部材9の下端部には、支持部材9の下面から上方向に凹んだ6個の半円形状の溝90が、周方向に、等間隔に並んで形成されている。溝90は、支持部材9の内周面に囲まれた内周側領域A1と、支持部材9の外周面の外側の領域である外周側領域B1とを連通させる開口として形成されている。したがって、図1に示すように、密閉ケーシング3の底部において、支持部材9の外周側領域B1に貯留された潤滑油Lが、溝90を通過して支持部材9の内周側領域A1に流れる。支持部材9は、弾性を有する部分を有しておらず、例えば、金属により構成されている。
【0046】
図1に示すように、支持部材9の上端はリアヘッド70のボス部72の下端に当接しているとともに、支持部材9下端はボトム33の底面に当接している。これにより、圧縮機構5は、支持部材9により下方(駆動機構4と反対側)から支持されている。支持部材9の中空部には、シャフト41の下端部が配置されている。
【0047】
また、図4(b)に示すように、支持部材9の高さ(溝90が形成されていない部分の高さ)は、高さh1となっている。
【0048】
ここで、ボトム33は、図5(a)に示すように、リアヘッド70のボス部72の下面からボトム33の底面までの距離が距離H1となるように、胴部31に固定される。そして、本実施形態では、支持部材9の高さh1は、距離H1と同一である(h1=H1)。したがって、図5(b)に示すように、圧縮機構5の下方(圧縮機構5に対して駆動機構4と反対側)に支持部材9を設けた上で、ボトム33が胴部31に固定された場合でも、リアヘッド70のボス部72の下面からボトム33の底面までの距離が、距離H1(h1)となる。
【0049】
なお、図5では、シリンダ50の外周面を胴部31に固定するための溶接部材Wを模式的に示している。本実施形態では、図5(a)及び図5(b)のいずれにおいても、シリンダ50が、上下方向のいずれにも押圧されることなく、支持部材9によって支持されていることから、溶接部材Wは、ほぼ水平方向に延在した状態で維持されている。
【0050】
続いて、図6を参照しつつ、圧縮機1を組み立てる方法を説明する。
【0051】
図6(a)に示すように、トップ32が上端に固定された胴部31の内部に、ステータ40aを取り付ける。そして、ステータ40aの径方向内側にロータ40b及びシャフト41を配置するとともに、ステータ40a及びロータ40bの下方に圧縮機構5を配置して、シリンダ50の外周面を溶接により胴部31に固定する。次に、図6(b)に示すように、支持部材9を、リアヘッド70のボス部72の下方に配置する。最後に、図6(c)に示すように、ボトム33を胴部31の下端部の所定の位置まで挿入し、ボトム33を胴部31の内周面に固定する。
【0052】
以上のように、本実施形態の圧縮機1では、圧縮機構5が下方から支持されており、圧縮機構5が下方へ移動しないように構成されている。したがって、圧縮機構5が、上下方向に振動するのを抑制することができる。
【0053】
また、本実施形態の圧縮機1では、圧縮機構5の下方に設けられた支持部材9によって圧縮機構5を支持しており、圧縮機構5を支持するための構成を容易に構成できる。
【0054】
さらに、本実施形態の圧縮機1では、支持部材9が環状の部材であるため、圧縮機構5を安定した状態で支持することができる。
【0055】
加えて、本実施形態の圧縮機1では、支持部材9がその内周側領域A1と外周側領域B1とを連通させる溝90を有しており、支持部材9の外周側領域B1に貯留された潤滑油Lが支持部材9の内周側領域A1に流れなくなることを防ぐことができる。
【0056】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態に係る圧縮機101は、第1実施形態では支持部材9がリアヘッド70のボス部72とボトム33との間に設けられているのに対して、第2実施形態では支持部材19がリアヘッド70の本体部71とボトム33との間に設けられている点と、第1実施形態の圧縮機構が上方に向かって押圧されていない状態で支持部材9により下方から支持されているのに対して、第2実施形態の圧縮機構が上方に向かって押圧された状態で支持部材19により下方から支持されている点において、第1実施形態に係る圧縮機1と異なっている。なお、その他の構成は、上記第1実施形態と同様であるため、同じ符号を用いて適宜その説明を省略する。
【0057】
以下に、図7〜9を参照しつつ、支持部材19の構成を詳細に説明する。
【0058】
図7及び図8(a)に示すように、支持部材19は、環状の部材である。支持部材19の内径はリアヘッド70のボス部72の外径より大きいとともに、支持部材19の外径はリアヘッド70の本体部71の外径より小さい。支持部材19の中空部には、シャフト41の下端部及びリアヘッド70のボス部72が配置されている。
【0059】
図8(b)に示すように、支持部材19には、その高さ方向についての中央付近に、支持部材19の厚み方向に貫通した4個の貫通孔190が、周方向に、等間隔に並んで形成されている。貫通孔190は、支持部材19の内周面に囲まれた内周側領域A2と、支持部材19の外周面の外側の領域である外周側領域B2とを連通させる開口として形成されている。したがって、図7に示すように、密閉ケーシング3の底部において、支持部材19の外周側領域B2に貯留された潤滑油Lが、貫通孔190を通過して支持部材9の内周側領域A2に流れる。
【0060】
図7に示すように、支持部材19の上端はリアヘッド70の本体部71の下端に当接していると共に、支持部材19の下端はボトム33の底面に当接している。
【0061】
また、図8(b)に示すように、支持部材19の高さは、高さh2となっている。
【0062】
ここで、ボトム33は、図9(a)に示すように、リアヘッド70の本体部71の下面からボトム33の底面までの距離が距離H2となるように、胴部31に固定される。そして、本実施形態では、支持部材9の高さh2は、距離H2より少し高くなっている(h2>H2)。したがって、図9(b)に示すように、圧縮機構5の下方(圧縮機構5に対して駆動機構4と反対側)に支持部材19を設けた上で、ボトム33が胴部31に固定された場合は、リアヘッド70の本体部71の下面からボトム33の底面までの距離が、距離h2となる。
【0063】
なお、図9では、シリンダ50の外周面を胴部31に固定するための溶接部材Wを模式的に示している。本実施形態では、図9(a)においては、溶接部材Wが、ほぼ水平方向に延在した状態で維持されている。しかし、図9(b)においては、シリンダ50が、上方へ向かって押圧された状態で、支持部材19によって支持されていることから、溶接部材Wが変形する。これにより、圧縮機構5は、支持部材19が圧縮機構5の下方に設けられていない場合(図9(a)に示す位置(図9(b)の2点鎖線で示す位置))より上方に移動した状態で胴部31に固定される。
【0064】
続いて、図10を参照しつつ、圧縮機101を組み立てる方法を説明する。
【0065】
図10(a)に示すように、トップ32が上端に固定された胴部31の内部に、ステータ40aを取り付ける。そして、ステータ40aの径方向内側にロータ40b及びシャフト41を配置するとともに、ステータ40a及びロータ40bの下方に圧縮機構5を配置して、シリンダ50の外周面を溶接により胴部31に固定する。次に、図10(b)に示すように、リアヘッド70の本体部71の下方に支持部材19を配置する。最後に、図10(c)に示すように、ボトム33を胴部31の下端部の所定の位置まで押し上げながら挿入し、ボトム33を胴部31の内周面に固定する。
【0066】
以上のように、本実施形態の圧縮機101では、第1実施形態の圧縮機1と同様に、圧縮機構5が下方から支持されており、圧縮機構5が下方へ移動しないように構成されている。したがって、圧縮機構5が、上下方向に振動するのを抑制することができる。
【0067】
また、本実施形態の圧縮機101では、圧縮機構5が上方に向かって押圧された状態で下方から支持されており、圧縮機構5が下方へ移動しないと共に、上方へ移動しないように構成されている。したがって、圧縮機構5が、上下方向に振動するのを効果的に抑制することができる。
【0068】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態に係る圧縮機201は、第1実施形態では支持部材9がリアヘッド70のボス部72とボトム33との間に設けられているのに対して、第3実施形態では支持部材29がシリンダ50とボトム33との間に設けられている点において、第1実施形態に係る圧縮機1と異なっている。その他の構成は、上記第1実施形態と同様であるため、同じ符号を用いて適宜その説明を省略する。
【0069】
支持部材29は、環状の部材である。図11に示すように、支持部材29の内径はリアヘッド70の本体部71の外径よりも大きいと共に、支持部材29の外径はシリンダ50の外径より小さい。支持部材29の中空部には、シャフト41の下端部及びリアヘッド70が配置されている。
【0070】
支持部材29の下端部には、第1実施形態の支持部材9と同様に、6個の溝が形成されている。溝は、支持部材29の内周面に囲まれた内周側領域A3と、支持部材29の外周面の外側の領域である外周側領域B3とを連通させ開口として形成されている。したがって、密閉ケーシング3の底部において、支持部材29の外周側領域B3に貯留された潤滑油Lが、溝を通過して支持部材29の内周側領域A3に流れる。
【0071】
支持部材29の上端はシリンダの下端に当接していると共に、支持部材29の下端はボトム33の底面に当接している。
【0072】
以上のように、本実施形態の圧縮機201では、第1実施形態の圧縮機1と同様に、圧縮機構5が下方から支持されており、圧縮機構5が下方へ移動しないように構成されている。したがって、圧縮機構5が、上下方向に振動するのを抑制することができる。
【0073】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態に係る圧縮機301は、第1実施形態では圧縮機構が支持部材9により下方から支持されているのに対して、第4実施形態では圧縮機構が密閉ケーシング303のボトム333により下方から支持されている点において、第1実施形態に係る圧縮機1と異なっている。その他の構成は、上記第1実施形態と同様であるため、同じ符号を用いて適宜その説明を省略する。
【0074】
図12に示すように、ボトム333は、その底部の外周部から上方に向かって立設した環状の周縁部333aを有している。周縁部333aは、シリンダ50の下端まで上方に向けて延在している。また、周縁部333aの上端は、シリンダ50の下端に当接している。なお、ボトム333のその他の構成は、上述した第1実施形態のボトム33と同様である。
【0075】
次に、圧縮機301を組み立てる方法を説明する。
【0076】
トップ32が上端に固定された胴部31の内部に、ステータ40aを取り付ける。そして、ステータ40aの径方向内側にロータ40b及びシャフト41を配置するとともに、ステータ40a及びロータ40bの下方に、圧縮機構5を配置して、シリンダ50の外周面を溶接により胴部31に固定する。次に、ボトム333の周縁部333aの上端がシリンダ50の下端に当接するように、ボトム333を胴部31の下端部の所定の位置まで挿入し、ボトム333を胴部31の内周面に固定する。
【0077】
以上のように、本実施形態の圧縮機301では、第1実施形態の圧縮機1と同様に、圧縮機構5が下方から支持されており、圧縮機構5が下方へ移動しないように構成されている。したがって、圧縮機構5が、上下方向に振動するのを抑制することができる。
【0078】
また、本実施形態の圧縮機301では、ボトム333によって圧縮機構5を支持しており、圧縮機構5を支持するための構成を、支持部材などの部品を用いることなく構成できる。
【0079】
<第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態について説明する。第5実施形態の圧縮機は、第1実施形態では支持部材9がリアヘッド70のボス部72とボトム33の底面との間に設けられているのに対して、第5実施形態では支持部材49がシリンダ50とボトム433の周縁部433aとの間に設けられている点において、第1実施形態に係る圧縮機1と異なっている。その他の構成は、上記第1実施形態と同様であるため、同じ符号を用いて適宜その説明を省略する。
【0080】
図13に示すように、ボトム433は、その底部の外周部から上方に向かって立設した環状の周縁部433aを有している。周縁部433aは、第1実施形態の周縁部33aより上方向に長い。なお、ボトム433のその他の構成は、上述した第1実施形態のボトム33と同様である。
【0081】
支持部材49は、環状の部材であって、胴部31の内周面に沿って設けられている。支持部材49は、弾性を有する部分を有しており、弾性を有する部材である樹脂又はゴムなどから構成されている。
【0082】
支持部材49の上端はシリンダの下端に当接していると共に、支持部材49の下端はボトム433の周縁部433aの上端に当接している。
【0083】
次に、圧縮機401を組み立てる方法を説明する。
【0084】
トップ32が上端に固定された胴部31の内部に、ステータ40aを取り付ける。そして、ステータ40aの径方向内側にロータ40b及びシャフト41を配置するとともに、ステータ40a及びロータ40bの下方に圧縮機構5を配置して、シリンダ50の外周面を溶接により胴部31に固定する。次に、支持部材49を、胴部31の内周面に沿って、シリンダ50の下方に配置する。そして、ボトム33を胴部31の下端部の所定の位置まで挿入し、ボトム33を胴部31の内周面に固定する。
【0085】
以上のように、本実施形態の圧縮機401では、第1実施形態の圧縮機1と同様に、圧縮機構5が下方から支持されており、圧縮機構5が下方へ移動しないように構成されている。したがって、圧縮機構5が、上下方向に振動するのを抑制することができる。
【0086】
また、支持部材49が弾性を有する部分を有しており、支持部材49によって圧縮機構5に作用する力を吸収することができるので、圧縮機構5が上下方向に振動することをより一層抑制することができる。
【0087】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0088】
例えば、上述の第1〜第5実施形態では、圧縮機構5を密閉ケーシング3に固定する方法として、シリンダ50を胴部31に固定する場合について説明したが、これには限定されない。例えば、フロントヘッド60及びリアヘッド70の少なくとも1つが、胴部31に固定されていてもよい。
【0089】
また、上述の第1実施形態及び第2実施形態では、支持部材9,19の上端がリアヘッド70に当接し、上述の第3実施形態では、支持部材29の上端がシリンダ50に当接している場合について説明したが、これには限定されない。例えば、支持部材の上端がフロントヘッド60,シリンダ50及びリアヘッド70のいずれかに当接してもよい。
【0090】
また、上述の第4実施形態では、ボトム333の周縁部333aの上端がシリンダ50に当接する場合について説明したが、これには限定されない。例えば、ボトム333の周縁部333aの上端がフロントヘッド60,シリンダ50及びリアヘッド70のいずれかに当接してもよい。
【0091】
また、上述の第1実施形態の支持部材9に形成された溝90及び第2実施形態の支持部材19に形成された貫通孔190は支持部材の内周側領域と外周側領域とを連通させるものであれば、形状、数及び位置は変更可能なものである。
【0092】
また、上述の第1〜3実施形態では、支持部材9,19,29が、環状に形成されている場合について説明したが、これには限定されない。例えば、支持部材は環状でない部材であってもよいし、複数の支持部材が、周方向に離れて配置されると共に環状に配置されていてもよい。また、支持部材は、環状に配置されている場合に限られず、圧縮機構の少なくとも一部を下方から支持するものでもよい。
【0093】
また、上述の第1〜第3実施形態では、支持部材9,19,29が弾性を有する部分を有していない場合について説明したが、支持部材9,19,29が弾性を有する部分を有していてもよい。
【0094】
また、上述の第1実施形態では、圧縮機構5が上方に向けて押圧されていない状態で支持され、上述の第2実施形態では、圧縮機構5が上方に向けて押圧されている状態で支持されている場合について説明したが、上述の第3〜第5実施形態では、圧縮機構5が上方に向けて押圧されていない状態で支持されていてもよく、圧縮機構5が上方に向けて押圧された状態で支持されていてもよい。
【0095】
また、上述の第1〜5実施形態では、シリンダ50の外周面が密閉ケーシング3,303の胴部31に固定されていたが、シリンダ50が支持ブラケットを介して密閉ケーシング3,303に固定されてもよい。さらに、フロントヘッド60、シリンダ50及びリアヘッド70のいずれかが支持ブラケットを介して密閉ケーシング3,303に固定されてもよい。この支持ブラケットは、圧縮機構に含まれるため、支持ブラケットを用いた場合、支持ブラケットが支持部材又はボトムの周縁部により駆動機構と反対側から支持される構成としてもよい。
【0096】
また、上述の第1〜5実施形態では、1シリンダ型のロータリ圧縮機に本発明を適用しており、この圧縮機の圧縮機構5は、フロントヘッド60、シリンダ50及びリアヘッド70を有しているが、2シリンダ型のロータリ圧縮機に本発明を適用してもよい。2シリンダ型のロータリ圧縮機の圧縮機構は、上から順に配置されたフロントヘッド、第1シリンダ、仕切り板、第2シリンダ及びリアヘッドを有している。したがって、2シリンダ型のロータリ圧縮機に本発明を適用した場合、フロントヘッド、第1シリンダ、仕切り板、第2シリンダ及びリアヘッドのいずれかを、支持部材又はボトムの周縁部により駆動機構と反対側から支持してもよい。また、フロントヘッド、第1シリンダ、仕切り板、第2シリンダ及びリアヘッドのいずれかが支持ブラケットを介して密閉ケーシング3に固定されてもよい。この場合、支持ブラケットが支持部材又はボトムの周縁部により駆動機構と反対側から支持される構成としてもよい。
【0097】
また、上述の第1〜5実施形態では、圧縮機構5が溶接により密閉ケーシング3に固定されている場合について説明したが、これには限定されない。例えば、圧縮機構5が、圧入又は焼き嵌めにより密閉ケーシング3に固定されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明を利用すれば、圧縮機構が軸方向へ振動することを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0099】
1,101,201,301,401 圧縮機
3,303,403 密閉ケーシング(ケーシング)
4 駆動機構
5 圧縮機構
60 フロントヘッド(第1端板部材)
50 シリンダ
51 圧縮室
80 ピストン
81 ローラ
82 ブレード
70 リアヘッド(第2端板部材)
31 胴部
32 トップ(第1閉塞部材)
33,333,433 ボトム(第2閉塞部材)
33a,333a,433a 周縁部
9,19,29,49 支持部材
90 溝
190 貫通孔
W 溶接部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒を圧縮するための圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機は、特許文献1に示すように、ケーシングの内部に上下に並んで配置された駆動機構及び圧縮機構を有しているものが一般的である。そして、この圧縮機の圧縮機構は、圧縮室が形成されたシリンダと、その両端に配置されたフロントヘッド(主軸受部材)及びリアヘッド(副軸受部材)とを有しており、シリンダの径方向外側において、ケーシングにスポット溶接により固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−318170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した圧縮機では、ケーシングの内部において、圧縮機構から吐出されたガスは圧力脈動を有しており、その圧力脈動によって、圧縮機構が軸方向(上下方向)に振動するという問題がある。特に、上記の圧力脈動の周波数と、圧縮機構を構成する部材(フロントヘッド、シリンダ及びリアヘッドなど)の固有周波数とが一致した場合、共振が発生して、圧縮機構が軸方向に大きく振動してしまう。
【0005】
そこで、本発明は、圧縮機構が軸方向に振動するのを抑制することができる圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る圧縮機は、駆動機構と、前記駆動機構により駆動される圧縮機構とが、ケーシング内において軸方向に並んで配置されており、前記圧縮機構は、その径方向外側において前記ケーシングに固定されると共に、前記駆動機構と反対側から支持される。
【0007】
この圧縮機では、圧縮機構が駆動機構と反対側から支持されており、圧縮機構が駆動機構と反対側へ移動しないように構成されている。したがって、圧縮機構が、軸方向に振動するのを抑制することができる。
【0008】
第2の発明に係る圧縮機は、第1の発明に係る圧縮機において、前記ケーシング内において前記圧縮機構に対して前記駆動機構と反対側に設けられた支持部材を備え、前記支持部材は、その一端が前記圧縮機構に当接し且つ他端が前記ケーシングの底面に当接することによって、前記圧縮機構を支持する。
【0009】
この圧縮機では、圧縮機構を支持するための構成を容易に構成できる。
【0010】
第3の発明に係る圧縮機は、第2の発明において、前記支持部材は、環状の部材である。
【0011】
この圧縮機では、支持部材が環状の部材であるため、圧縮機構を安定した状態で支持することができる。
【0012】
第4の発明に係る圧縮機は、第2又は第3の発明に係る圧縮機において、前記支持部材は、その内周側領域と外周側領域とを連通させる開口を有している。
【0013】
この圧縮機では、支持部材がその内周側領域と外周側領域とを連通させる開口を有しており、支持部材の外周側領域に貯留された潤滑油が支持部材の内周側領域に流れなくなることを防ぐことができる。
【0014】
第5の発明に係る圧縮機は、第2〜第4のいずれかの発明において、前記支持部材は、弾性を有する部分を有している。
【0015】
この圧縮機では、支持部材によって圧縮機構に作用する力を吸収することができるので、圧縮機構が軸方向に振動することをより一層抑制することができる。
【0016】
第6の発明に係る圧縮機は、第1の発明に係る圧縮機において、前記ケーシングは、円筒形状の胴部と、前記胴部の一端を塞ぐ第1閉塞部材と、前記胴部の内周面に固定され且つ前記胴部の他端を塞ぐ第2閉塞部材とを有しており、前記第2閉塞部材は、その周縁部が前記圧縮機構に当接することによって、前記圧縮機構を支持する。
【0017】
この圧縮機では、圧縮機構を支持するための構成を、支持部材などの部品を用いることなく構成できる。
【0018】
第7の発明に係る圧縮機は、第1〜第6のいずれかの発明において、前記圧縮機構は、前記ケーシングの前記駆動機構側に向かって押圧された状態で前記駆動機構と反対側から支持される。
【0019】
この圧縮機では、圧縮機構が駆動機構側に向かって押圧された状態で駆動機構と反対側から支持されており、圧縮機構が駆動機構と反対側へ移動しないと共に、駆動機構側へ移動しないように構成されている。したがって、圧縮機構が、軸方向に振動するのを効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上の説明に述べたように、本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0021】
第1の発明では、圧縮機構が駆動機構と反対側から支持されており、圧縮機構が駆動機構と反対側へ移動しないように構成されている。したがって、圧縮機構が、軸方向に振動するのを抑制することができる。
【0022】
第2の発明では、圧縮機構を支持するための構成を容易に構成できる。
【0023】
第3の発明では、支持部材が環状の部材であるため、圧縮機構を安定した状態で支持することができる。
【0024】
第4の発明では、支持部材がその内周側領域と外周側領域とを連通させる開口を有しており、支持部材の外周側領域に貯留された潤滑油が支持部材の内周側領域に流れなくなることを防ぐことができる。
【0025】
第5の発明では、支持部材によって圧縮機構に作用する力を吸収することができるので、圧縮機構が軸方向に振動することをより一層抑制することができる。
【0026】
第6の発明では、圧縮機構を支持するための構成を、支持部材などの部品を用いることなく構成できる。
【0027】
第7の発明では、圧縮機構が駆動機構側に向かって押圧された状態で駆動機構と反対側から支持されており、圧縮機構が駆動機構と反対側へ移動しないと共に、駆動機構側へ移動しないように構成されている。したがって、圧縮機構が、軸方向に振動するのを効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態に係る圧縮機の概略断面図である。
【図2】図1に示した圧縮機のシリンダの断面図であって、図1のII−II線に沿った断面図である。
【図3】図1に示した圧縮機のリアヘッドの下面図である。
【図4】(a)は図1に示した支持部材の平面図であり、(b)は支持部材の斜視図である。
【図5】圧縮機構を支持するための構成を示す図である。
【図6】図1に示した圧縮機を組み立てる工程を示した模式図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る圧縮機の概略断面図である。
【図8】(a)は図7に示した支持部材の平面図であり、(b)は支持部材の斜視図である。
【図9】圧縮機構を支持するための構成を示す図である。
【図10】図7に示した圧縮機を組み立てる工程を示した模式図である。
【図11】本発明の第3実施形態に係る圧縮機の概略断面図である。
【図12】本発明の第4実施形態に係る圧縮機の概略断面図である。
【図13】本発明の第5実施形態に係る圧縮機の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について説明する。
【0030】
本実施形態は、1シリンダ型のロータリ圧縮機に本発明を適用した一例である。図1に示すように、本実施形態の圧縮機1は、アキュムレータ2と、密閉ケーシング(ケーシング)3と、密閉ケーシング3内に配置された駆動機構4および圧縮機構5を備えている。なお、図1では、駆動機構4の断面を示すハッチングを省略して表示している。また、図1の上下方向を単に上下方向として、以下に、圧縮機1について説明する。
【0031】
この圧縮機1は、例えば、空調装置などの冷凍サイクルに組み込まれて使用される。圧縮機1では、アキュムレータ2の入口管2aから導入された冷媒(本実施形態では、R410A)は、吸入管6から密閉ケーシング3内に導入され、圧縮機構5で圧縮された後、排出管7から排出される。
【0032】
密閉ケーシング3は、略円筒形状の胴部31と、トップ(第1閉塞部材)32と、ボトム(第2閉塞部材)33とを有している。胴部31は、上下方向に延在するとともに上端及び下端が開口した部材である。トップ32は、胴部31の上端の開口を塞ぐ部材であって、ボトム33は、胴部31の下端の開口を塞ぐ部材である。また、ボトム33は、その底部の外周部から上方に向かって立設した環状の周縁部33aを有している。トップ32は、胴部31の上端の内側面に固定され、ボトム33は、胴部31の下端の内周面に固定されている。したがって、密閉ケーシング3の内部に、胴部31、トップ32及びボトム33によって囲まれた密閉空間が形成されている。
【0033】
トップ32には、圧縮された冷媒を排出するための排出管7と、駆動機構4の後述するステータ40aのコイルに電流を供給するためのターミナル端子8が設けられている。また、胴部31には、アキュムレータ2から圧縮機1へ冷媒を導入するための吸入管6が設けられている。また、密閉ケーシング3の底部には、圧縮機構5の摺動部の動作を滑らかにするための潤滑油Lが貯留されている。
【0034】
密閉ケーシング3の内部には、駆動機構4と圧縮機構5とが、上下方向(軸方向)に並んで配置されている。駆動機構4は、密閉ケーシング3の内部の上端側に配置されており、圧縮機構5は、密閉ケーシング3の内部の下端側に配置されている。また、密閉ケーシング3の内部には、圧縮機構5の下方に配置された支持部材9が設けられている。したがって、密閉ケーシング3の内部には、上方から順に、駆動機構4、圧縮機構5、支持部材9が並んで配置されている。
【0035】
駆動機構4は、圧縮機構5を駆動するものであって、駆動源となるモータ40と、モータ40に取り付けられたシャフト41とから構成されている。
【0036】
モータ40は、密閉ケーシング3の内周面に固定された略円環状のステータ40aと、このステータ40aの径方向内側にエアギャップを介して配置されるロータ40bとを備えている。ロータ40bは磁石(図示省略)を有し、ステータ40aはコイルを有している。モータ40は、コイルに電流を流すことによって発生する電磁力によって、ロータ40bを回転させる。
【0037】
シャフト41は、モータ40の駆動力を圧縮機構5に伝達するものであって、ロータ40bの内周面に固定されており、ロータ40bと一体的に回転する。また、シャフト41は、後述する圧縮室51内となる位置に設けられた偏心部41aを有している。偏心部41aには、圧縮機構5の後述するローラ81(図2参照)が装着されている。また、シャフト41は、その内部において上下方向に延在する給油路41bを有しており、その回転に伴って潤滑油Lを給油路41b内に吸い上げ、複数の排出孔41cから排出するように構成されている。
【0038】
圧縮機構5は、圧縮室51が形成されたシリンダ50と、圧縮室51の上端を閉塞したフロントヘッド(第1端板部材)60と、圧縮室51の下端を閉塞したリアヘッド(第2端板部材)70とを備えている。シリンダ50は、フロントヘッド60及びリアヘッド70とともにボルトにより固定されている。また、シリンダ50は、その径方向外側において、スポット溶接によって複数の位置で密閉ケーシング3の胴部31に固定されている。また、フロントヘッド60の上方には、マフラー部材85が配置されている。マフラー部材85は、冷媒がフロントヘッド60の吐出孔60a(図2参照)から密閉ケーシング3内(圧縮機構5の外)に吐出される際に生じる騒音を低減するものである。
【0039】
図2に示すように、シリンダ50は、略円環状の部材である。シリンダ50には、上述したように圧縮室51と、圧縮室51内に冷媒を導入するための吸入孔52と、圧縮室51と連通したブレード収容部53が形成されている。また、シリンダ50には、上下方向に貫通する複数の油戻し孔54が周方向に並んで形成されている。そして、シリンダ50の内部には、ローラ81と、ローラ81の外周面から突出したブレード82を有するピストン80が配置されている。
【0040】
ブレード収容部53は、圧縮室51の径方向に延在しており、吸入孔52とフロントヘッド60に形成された吐出孔60aとの間に形成されている。ブレード収容部53内には、周方向に揺動可能な一対のブッシュ55が配置されており、ブレード82が一対のブッシュ55間に対して進退可能に設けられている。
【0041】
圧縮機構5から吐出された冷媒は、ステータ40aとロータ40bとの間のエアギャップなどを通過した後、最終的に、排出管7から密閉ケーシング3の外に排出される。このとき、シャフト41の排出孔41cから圧縮室51内に供給された潤滑油Lの一部は、冷媒と共にマフラー空間Mに吐出された後、マフラー部材85のマフラー吐出孔(図示省略)から密閉ケーシング内に吐出される。
【0042】
図1及び図3に示すように、リアヘッド70は、略円環状の部材であって、シャフト41が回転可能に内挿される軸受け孔71aが形成された環状円盤状の本体部71と、軸受け孔71aを囲むように本体部71から下方に突出した円筒状のボス部72とから構成されている。
【0043】
次に、図4及び図5を参照しつつ、支持部材9の構成を詳細に説明する。
【0044】
図4(a)及び(b)に示すように、支持部材9は、リアヘッド70のボス部72と略同一の断面形状を有した環状の部材である。支持部材9の内径は、ボス部72の内径(軸受け孔71aの外径(図3参照))と略同一であり、支持部材9の外径は、ボス部72の外径と略同一である。
【0045】
図4(b)に示すように、支持部材9の下端部には、支持部材9の下面から上方向に凹んだ6個の半円形状の溝90が、周方向に、等間隔に並んで形成されている。溝90は、支持部材9の内周面に囲まれた内周側領域A1と、支持部材9の外周面の外側の領域である外周側領域B1とを連通させる開口として形成されている。したがって、図1に示すように、密閉ケーシング3の底部において、支持部材9の外周側領域B1に貯留された潤滑油Lが、溝90を通過して支持部材9の内周側領域A1に流れる。支持部材9は、弾性を有する部分を有しておらず、例えば、金属により構成されている。
【0046】
図1に示すように、支持部材9の上端はリアヘッド70のボス部72の下端に当接しているとともに、支持部材9下端はボトム33の底面に当接している。これにより、圧縮機構5は、支持部材9により下方(駆動機構4と反対側)から支持されている。支持部材9の中空部には、シャフト41の下端部が配置されている。
【0047】
また、図4(b)に示すように、支持部材9の高さ(溝90が形成されていない部分の高さ)は、高さh1となっている。
【0048】
ここで、ボトム33は、図5(a)に示すように、リアヘッド70のボス部72の下面からボトム33の底面までの距離が距離H1となるように、胴部31に固定される。そして、本実施形態では、支持部材9の高さh1は、距離H1と同一である(h1=H1)。したがって、図5(b)に示すように、圧縮機構5の下方(圧縮機構5に対して駆動機構4と反対側)に支持部材9を設けた上で、ボトム33が胴部31に固定された場合でも、リアヘッド70のボス部72の下面からボトム33の底面までの距離が、距離H1(h1)となる。
【0049】
なお、図5では、シリンダ50の外周面を胴部31に固定するための溶接部材Wを模式的に示している。本実施形態では、図5(a)及び図5(b)のいずれにおいても、シリンダ50が、上下方向のいずれにも押圧されることなく、支持部材9によって支持されていることから、溶接部材Wは、ほぼ水平方向に延在した状態で維持されている。
【0050】
続いて、図6を参照しつつ、圧縮機1を組み立てる方法を説明する。
【0051】
図6(a)に示すように、トップ32が上端に固定された胴部31の内部に、ステータ40aを取り付ける。そして、ステータ40aの径方向内側にロータ40b及びシャフト41を配置するとともに、ステータ40a及びロータ40bの下方に圧縮機構5を配置して、シリンダ50の外周面を溶接により胴部31に固定する。次に、図6(b)に示すように、支持部材9を、リアヘッド70のボス部72の下方に配置する。最後に、図6(c)に示すように、ボトム33を胴部31の下端部の所定の位置まで挿入し、ボトム33を胴部31の内周面に固定する。
【0052】
以上のように、本実施形態の圧縮機1では、圧縮機構5が下方から支持されており、圧縮機構5が下方へ移動しないように構成されている。したがって、圧縮機構5が、上下方向に振動するのを抑制することができる。
【0053】
また、本実施形態の圧縮機1では、圧縮機構5の下方に設けられた支持部材9によって圧縮機構5を支持しており、圧縮機構5を支持するための構成を容易に構成できる。
【0054】
さらに、本実施形態の圧縮機1では、支持部材9が環状の部材であるため、圧縮機構5を安定した状態で支持することができる。
【0055】
加えて、本実施形態の圧縮機1では、支持部材9がその内周側領域A1と外周側領域B1とを連通させる溝90を有しており、支持部材9の外周側領域B1に貯留された潤滑油Lが支持部材9の内周側領域A1に流れなくなることを防ぐことができる。
【0056】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態に係る圧縮機101は、第1実施形態では支持部材9がリアヘッド70のボス部72とボトム33との間に設けられているのに対して、第2実施形態では支持部材19がリアヘッド70の本体部71とボトム33との間に設けられている点と、第1実施形態の圧縮機構が上方に向かって押圧されていない状態で支持部材9により下方から支持されているのに対して、第2実施形態の圧縮機構が上方に向かって押圧された状態で支持部材19により下方から支持されている点において、第1実施形態に係る圧縮機1と異なっている。なお、その他の構成は、上記第1実施形態と同様であるため、同じ符号を用いて適宜その説明を省略する。
【0057】
以下に、図7〜9を参照しつつ、支持部材19の構成を詳細に説明する。
【0058】
図7及び図8(a)に示すように、支持部材19は、環状の部材である。支持部材19の内径はリアヘッド70のボス部72の外径より大きいとともに、支持部材19の外径はリアヘッド70の本体部71の外径より小さい。支持部材19の中空部には、シャフト41の下端部及びリアヘッド70のボス部72が配置されている。
【0059】
図8(b)に示すように、支持部材19には、その高さ方向についての中央付近に、支持部材19の厚み方向に貫通した4個の貫通孔190が、周方向に、等間隔に並んで形成されている。貫通孔190は、支持部材19の内周面に囲まれた内周側領域A2と、支持部材19の外周面の外側の領域である外周側領域B2とを連通させる開口として形成されている。したがって、図7に示すように、密閉ケーシング3の底部において、支持部材19の外周側領域B2に貯留された潤滑油Lが、貫通孔190を通過して支持部材9の内周側領域A2に流れる。
【0060】
図7に示すように、支持部材19の上端はリアヘッド70の本体部71の下端に当接していると共に、支持部材19の下端はボトム33の底面に当接している。
【0061】
また、図8(b)に示すように、支持部材19の高さは、高さh2となっている。
【0062】
ここで、ボトム33は、図9(a)に示すように、リアヘッド70の本体部71の下面からボトム33の底面までの距離が距離H2となるように、胴部31に固定される。そして、本実施形態では、支持部材9の高さh2は、距離H2より少し高くなっている(h2>H2)。したがって、図9(b)に示すように、圧縮機構5の下方(圧縮機構5に対して駆動機構4と反対側)に支持部材19を設けた上で、ボトム33が胴部31に固定された場合は、リアヘッド70の本体部71の下面からボトム33の底面までの距離が、距離h2となる。
【0063】
なお、図9では、シリンダ50の外周面を胴部31に固定するための溶接部材Wを模式的に示している。本実施形態では、図9(a)においては、溶接部材Wが、ほぼ水平方向に延在した状態で維持されている。しかし、図9(b)においては、シリンダ50が、上方へ向かって押圧された状態で、支持部材19によって支持されていることから、溶接部材Wが変形する。これにより、圧縮機構5は、支持部材19が圧縮機構5の下方に設けられていない場合(図9(a)に示す位置(図9(b)の2点鎖線で示す位置))より上方に移動した状態で胴部31に固定される。
【0064】
続いて、図10を参照しつつ、圧縮機101を組み立てる方法を説明する。
【0065】
図10(a)に示すように、トップ32が上端に固定された胴部31の内部に、ステータ40aを取り付ける。そして、ステータ40aの径方向内側にロータ40b及びシャフト41を配置するとともに、ステータ40a及びロータ40bの下方に圧縮機構5を配置して、シリンダ50の外周面を溶接により胴部31に固定する。次に、図10(b)に示すように、リアヘッド70の本体部71の下方に支持部材19を配置する。最後に、図10(c)に示すように、ボトム33を胴部31の下端部の所定の位置まで押し上げながら挿入し、ボトム33を胴部31の内周面に固定する。
【0066】
以上のように、本実施形態の圧縮機101では、第1実施形態の圧縮機1と同様に、圧縮機構5が下方から支持されており、圧縮機構5が下方へ移動しないように構成されている。したがって、圧縮機構5が、上下方向に振動するのを抑制することができる。
【0067】
また、本実施形態の圧縮機101では、圧縮機構5が上方に向かって押圧された状態で下方から支持されており、圧縮機構5が下方へ移動しないと共に、上方へ移動しないように構成されている。したがって、圧縮機構5が、上下方向に振動するのを効果的に抑制することができる。
【0068】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態に係る圧縮機201は、第1実施形態では支持部材9がリアヘッド70のボス部72とボトム33との間に設けられているのに対して、第3実施形態では支持部材29がシリンダ50とボトム33との間に設けられている点において、第1実施形態に係る圧縮機1と異なっている。その他の構成は、上記第1実施形態と同様であるため、同じ符号を用いて適宜その説明を省略する。
【0069】
支持部材29は、環状の部材である。図11に示すように、支持部材29の内径はリアヘッド70の本体部71の外径よりも大きいと共に、支持部材29の外径はシリンダ50の外径より小さい。支持部材29の中空部には、シャフト41の下端部及びリアヘッド70が配置されている。
【0070】
支持部材29の下端部には、第1実施形態の支持部材9と同様に、6個の溝が形成されている。溝は、支持部材29の内周面に囲まれた内周側領域A3と、支持部材29の外周面の外側の領域である外周側領域B3とを連通させ開口として形成されている。したがって、密閉ケーシング3の底部において、支持部材29の外周側領域B3に貯留された潤滑油Lが、溝を通過して支持部材29の内周側領域A3に流れる。
【0071】
支持部材29の上端はシリンダの下端に当接していると共に、支持部材29の下端はボトム33の底面に当接している。
【0072】
以上のように、本実施形態の圧縮機201では、第1実施形態の圧縮機1と同様に、圧縮機構5が下方から支持されており、圧縮機構5が下方へ移動しないように構成されている。したがって、圧縮機構5が、上下方向に振動するのを抑制することができる。
【0073】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態に係る圧縮機301は、第1実施形態では圧縮機構が支持部材9により下方から支持されているのに対して、第4実施形態では圧縮機構が密閉ケーシング303のボトム333により下方から支持されている点において、第1実施形態に係る圧縮機1と異なっている。その他の構成は、上記第1実施形態と同様であるため、同じ符号を用いて適宜その説明を省略する。
【0074】
図12に示すように、ボトム333は、その底部の外周部から上方に向かって立設した環状の周縁部333aを有している。周縁部333aは、シリンダ50の下端まで上方に向けて延在している。また、周縁部333aの上端は、シリンダ50の下端に当接している。なお、ボトム333のその他の構成は、上述した第1実施形態のボトム33と同様である。
【0075】
次に、圧縮機301を組み立てる方法を説明する。
【0076】
トップ32が上端に固定された胴部31の内部に、ステータ40aを取り付ける。そして、ステータ40aの径方向内側にロータ40b及びシャフト41を配置するとともに、ステータ40a及びロータ40bの下方に、圧縮機構5を配置して、シリンダ50の外周面を溶接により胴部31に固定する。次に、ボトム333の周縁部333aの上端がシリンダ50の下端に当接するように、ボトム333を胴部31の下端部の所定の位置まで挿入し、ボトム333を胴部31の内周面に固定する。
【0077】
以上のように、本実施形態の圧縮機301では、第1実施形態の圧縮機1と同様に、圧縮機構5が下方から支持されており、圧縮機構5が下方へ移動しないように構成されている。したがって、圧縮機構5が、上下方向に振動するのを抑制することができる。
【0078】
また、本実施形態の圧縮機301では、ボトム333によって圧縮機構5を支持しており、圧縮機構5を支持するための構成を、支持部材などの部品を用いることなく構成できる。
【0079】
<第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態について説明する。第5実施形態の圧縮機は、第1実施形態では支持部材9がリアヘッド70のボス部72とボトム33の底面との間に設けられているのに対して、第5実施形態では支持部材49がシリンダ50とボトム433の周縁部433aとの間に設けられている点において、第1実施形態に係る圧縮機1と異なっている。その他の構成は、上記第1実施形態と同様であるため、同じ符号を用いて適宜その説明を省略する。
【0080】
図13に示すように、ボトム433は、その底部の外周部から上方に向かって立設した環状の周縁部433aを有している。周縁部433aは、第1実施形態の周縁部33aより上方向に長い。なお、ボトム433のその他の構成は、上述した第1実施形態のボトム33と同様である。
【0081】
支持部材49は、環状の部材であって、胴部31の内周面に沿って設けられている。支持部材49は、弾性を有する部分を有しており、弾性を有する部材である樹脂又はゴムなどから構成されている。
【0082】
支持部材49の上端はシリンダの下端に当接していると共に、支持部材49の下端はボトム433の周縁部433aの上端に当接している。
【0083】
次に、圧縮機401を組み立てる方法を説明する。
【0084】
トップ32が上端に固定された胴部31の内部に、ステータ40aを取り付ける。そして、ステータ40aの径方向内側にロータ40b及びシャフト41を配置するとともに、ステータ40a及びロータ40bの下方に圧縮機構5を配置して、シリンダ50の外周面を溶接により胴部31に固定する。次に、支持部材49を、胴部31の内周面に沿って、シリンダ50の下方に配置する。そして、ボトム33を胴部31の下端部の所定の位置まで挿入し、ボトム33を胴部31の内周面に固定する。
【0085】
以上のように、本実施形態の圧縮機401では、第1実施形態の圧縮機1と同様に、圧縮機構5が下方から支持されており、圧縮機構5が下方へ移動しないように構成されている。したがって、圧縮機構5が、上下方向に振動するのを抑制することができる。
【0086】
また、支持部材49が弾性を有する部分を有しており、支持部材49によって圧縮機構5に作用する力を吸収することができるので、圧縮機構5が上下方向に振動することをより一層抑制することができる。
【0087】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0088】
例えば、上述の第1〜第5実施形態では、圧縮機構5を密閉ケーシング3に固定する方法として、シリンダ50を胴部31に固定する場合について説明したが、これには限定されない。例えば、フロントヘッド60及びリアヘッド70の少なくとも1つが、胴部31に固定されていてもよい。
【0089】
また、上述の第1実施形態及び第2実施形態では、支持部材9,19の上端がリアヘッド70に当接し、上述の第3実施形態では、支持部材29の上端がシリンダ50に当接している場合について説明したが、これには限定されない。例えば、支持部材の上端がフロントヘッド60,シリンダ50及びリアヘッド70のいずれかに当接してもよい。
【0090】
また、上述の第4実施形態では、ボトム333の周縁部333aの上端がシリンダ50に当接する場合について説明したが、これには限定されない。例えば、ボトム333の周縁部333aの上端がフロントヘッド60,シリンダ50及びリアヘッド70のいずれかに当接してもよい。
【0091】
また、上述の第1実施形態の支持部材9に形成された溝90及び第2実施形態の支持部材19に形成された貫通孔190は支持部材の内周側領域と外周側領域とを連通させるものであれば、形状、数及び位置は変更可能なものである。
【0092】
また、上述の第1〜3実施形態では、支持部材9,19,29が、環状に形成されている場合について説明したが、これには限定されない。例えば、支持部材は環状でない部材であってもよいし、複数の支持部材が、周方向に離れて配置されると共に環状に配置されていてもよい。また、支持部材は、環状に配置されている場合に限られず、圧縮機構の少なくとも一部を下方から支持するものでもよい。
【0093】
また、上述の第1〜第3実施形態では、支持部材9,19,29が弾性を有する部分を有していない場合について説明したが、支持部材9,19,29が弾性を有する部分を有していてもよい。
【0094】
また、上述の第1実施形態では、圧縮機構5が上方に向けて押圧されていない状態で支持され、上述の第2実施形態では、圧縮機構5が上方に向けて押圧されている状態で支持されている場合について説明したが、上述の第3〜第5実施形態では、圧縮機構5が上方に向けて押圧されていない状態で支持されていてもよく、圧縮機構5が上方に向けて押圧された状態で支持されていてもよい。
【0095】
また、上述の第1〜5実施形態では、シリンダ50の外周面が密閉ケーシング3,303の胴部31に固定されていたが、シリンダ50が支持ブラケットを介して密閉ケーシング3,303に固定されてもよい。さらに、フロントヘッド60、シリンダ50及びリアヘッド70のいずれかが支持ブラケットを介して密閉ケーシング3,303に固定されてもよい。この支持ブラケットは、圧縮機構に含まれるため、支持ブラケットを用いた場合、支持ブラケットが支持部材又はボトムの周縁部により駆動機構と反対側から支持される構成としてもよい。
【0096】
また、上述の第1〜5実施形態では、1シリンダ型のロータリ圧縮機に本発明を適用しており、この圧縮機の圧縮機構5は、フロントヘッド60、シリンダ50及びリアヘッド70を有しているが、2シリンダ型のロータリ圧縮機に本発明を適用してもよい。2シリンダ型のロータリ圧縮機の圧縮機構は、上から順に配置されたフロントヘッド、第1シリンダ、仕切り板、第2シリンダ及びリアヘッドを有している。したがって、2シリンダ型のロータリ圧縮機に本発明を適用した場合、フロントヘッド、第1シリンダ、仕切り板、第2シリンダ及びリアヘッドのいずれかを、支持部材又はボトムの周縁部により駆動機構と反対側から支持してもよい。また、フロントヘッド、第1シリンダ、仕切り板、第2シリンダ及びリアヘッドのいずれかが支持ブラケットを介して密閉ケーシング3に固定されてもよい。この場合、支持ブラケットが支持部材又はボトムの周縁部により駆動機構と反対側から支持される構成としてもよい。
【0097】
また、上述の第1〜5実施形態では、圧縮機構5が溶接により密閉ケーシング3に固定されている場合について説明したが、これには限定されない。例えば、圧縮機構5が、圧入又は焼き嵌めにより密閉ケーシング3に固定されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明を利用すれば、圧縮機構が軸方向へ振動することを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0099】
1,101,201,301,401 圧縮機
3,303,403 密閉ケーシング(ケーシング)
4 駆動機構
5 圧縮機構
60 フロントヘッド(第1端板部材)
50 シリンダ
51 圧縮室
80 ピストン
81 ローラ
82 ブレード
70 リアヘッド(第2端板部材)
31 胴部
32 トップ(第1閉塞部材)
33,333,433 ボトム(第2閉塞部材)
33a,333a,433a 周縁部
9,19,29,49 支持部材
90 溝
190 貫通孔
W 溶接部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動機構と、前記駆動機構により駆動される圧縮機構とが、ケーシング内において軸方向に並んで配置されており、
前記圧縮機構は、その径方向外側において前記ケーシングに固定されると共に、前記駆動機構と反対側から支持されることを特徴とする圧縮機。
【請求項2】
前記ケーシング内において前記圧縮機構に対して前記駆動機構と反対側に設けられた支持部材を備え、
前記支持部材は、その一端が前記圧縮機構に当接し且つ他端が前記ケーシングの底面に当接することによって、前記圧縮機構を支持することを特徴とする請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記支持部材は、環状の部材であることを特徴とする請求項2に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記支持部材は、その内周側領域と外周側領域とを連通させる開口を有していることを特徴とする請求項2又は3に記載の圧縮機。
【請求項5】
前記支持部材は、弾性を有する部分を有していることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の圧縮機。
【請求項6】
前記ケーシングは、円筒形状の胴部と、前記胴部の一端を塞ぐ第1閉塞部材と、前記胴部の内周面に固定され且つ前記胴部の他端を塞ぐ第2閉塞部材とを有しており、
前記第2閉塞部材は、その周縁部が前記圧縮機構に当接することによって、前記圧縮機構を支持することを特徴とする請求項1に記載の圧縮機。
【請求項7】
前記圧縮機構は、前記ケーシングの前記駆動機構側に向かって押圧された状態で前記駆動機構と反対側から支持されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の圧縮機。
【請求項1】
駆動機構と、前記駆動機構により駆動される圧縮機構とが、ケーシング内において軸方向に並んで配置されており、
前記圧縮機構は、その径方向外側において前記ケーシングに固定されると共に、前記駆動機構と反対側から支持されることを特徴とする圧縮機。
【請求項2】
前記ケーシング内において前記圧縮機構に対して前記駆動機構と反対側に設けられた支持部材を備え、
前記支持部材は、その一端が前記圧縮機構に当接し且つ他端が前記ケーシングの底面に当接することによって、前記圧縮機構を支持することを特徴とする請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記支持部材は、環状の部材であることを特徴とする請求項2に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記支持部材は、その内周側領域と外周側領域とを連通させる開口を有していることを特徴とする請求項2又は3に記載の圧縮機。
【請求項5】
前記支持部材は、弾性を有する部分を有していることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の圧縮機。
【請求項6】
前記ケーシングは、円筒形状の胴部と、前記胴部の一端を塞ぐ第1閉塞部材と、前記胴部の内周面に固定され且つ前記胴部の他端を塞ぐ第2閉塞部材とを有しており、
前記第2閉塞部材は、その周縁部が前記圧縮機構に当接することによって、前記圧縮機構を支持することを特徴とする請求項1に記載の圧縮機。
【請求項7】
前記圧縮機構は、前記ケーシングの前記駆動機構側に向かって押圧された状態で前記駆動機構と反対側から支持されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の圧縮機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−102676(P2012−102676A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251977(P2010−251977)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
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