説明

圧縮符号化装置、圧縮符号化方法およびプログラム

【課題】少ない演算量で且つ高速に、画像データを圧縮符号化するとともに、ノイズを除去しながら目標画質に適合する圧縮画像を得る。
【解決手段】ウェーブレット変換部は画像信号をウェーブレット変換して変換係数を生成する。関心領域設定部は画像信号に関心領域を設定する。量子化部は、関心領域(ROI部)36〜39と非関心領域(非ROI部)40のうち、設定情報の優先度の高いROI部ほど他の領域に比べて変換係数を下位ビット側にビットシフトさせる。符号量制御部は変換係数に符号化を施して得られる符号化データに対して、所望のノイズ除去効果が得られるまで、当該符号化データの一部を下位ビットから切り捨てるレート制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像圧縮伸長技術で使用される圧縮符号化装置、圧縮符号化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像データの次世代の高能率符号化方式として、ISO(国際標準化機構)やITU−T(国際電気通信連合電気通信標準化部門)によって、JPEG2000(Joint Photographic Experts Group 2000)方式が策定されている。JPEG2000方式は、現在主流のJPEG(Joint Photographic Experts Group)方式と比べて優れた機能を有するものであり、直交変換としてDWT(離散ウェーブレット変換;Discrete Wavelet Transform)を採用し、エントロピー符号化に、ビットプレーン符号化を行うEBCOT(Embedded Block Coding with Optimized Truncation)と称する方法を採用する点に特徴がある。
【0003】
図23は、JPEG2000方式に基づいた画像の圧縮符号化を行う圧縮符号化装置100の概略構成を示す機能ブロック図である。以下、この図23を参照しつつ、JPEG2000方式の圧縮符号化手順について概説する。
【0004】
この圧縮符号化装置100に入力する画像信号は、DCレベルシフト部102で必要に応じてDCレベル変換を施された後に、色空間変換部103に出力される。次に、色空間変換部103は、DCレベルシフト部102から入力する信号の色空間を変換する。ここで、例えば、色空間変換部103に入力するRGB信号はYCbCr信号(輝度信号Yと色差信号Cb,Crからなる信号)に変換される。
【0005】
次に、タイリング部104は、色空間変換部103から入力する画像信号を、複数の矩形状の「タイル」と称する領域成分に分割してDWT部105に出力する。DWT部105は、タイリング部104から入力する画像信号に対してタイル単位で整数型または実数型のDWTを施し、その結果得られる変換係数を出力する。DWTでは、2次元画像信号に対して、高域成分(高周波数成分)と低域成分(低周波数成分)とに分割する1次元フィルタが垂直方向と水平方向の順に適用される。JPEG2000の基本方式では、垂直方向と水平方向との双方向に低域側に分割した帯域成分のみを再帰的に帯域分割していくオクターブ分割方式が採用されている。またその再帰的に帯域分割した回数は、分解レベル(decomposition level)と呼ばれる。
【0006】
図24は、オクターブ分割方式に従って、分解レベル3のDWTを施された2次元画像120を示す模式図である。分解レベル1では、2次元画像120は、垂直方向と水平方向とに前述の1次元フィルタを順次適用することで、HH1,HL1,LH1およびLL1(図示せず)の4つの帯域成分に分割される。ここで、「H」は高域成分を、「L」は低域成分をそれぞれ示している。例えば、HL1は、分解レベル1における水平方向の高域成分Hと垂直方向の低域成分Lとからなる帯域成分である。その表記法を一般化して、「XYn」(X,YはH,Lの何れか;nは1以上の整数)は、分解レベルnにおける水平方向の帯域成分Xと垂直方向の帯域成分Yとからなる帯域成分を指すものとする。
【0007】
分解レベル2では、低域成分LL1は、HH2,HL2,LH2およびLL2(図示せず)に帯域分割される。更に、分解レベル3では、低域成分LL2は、HH3,HL3,LH3およびLL3に帯域分割される。以上で生成された帯域成分HH1〜LL3を配列したのが図24である。図24では、3次の分解レベルの例が示されているが、JPEG2000方式では、一般に、3次〜8次程度の分解レベルが採用される。
【0008】
次に、量子化部106は、DWT部105から出力された変換係数を、必要に応じてスカラー量子化する機能を有する。また量子化部106は、ROI部107による関心領域(ROI;Region Of Interest)の画質を優先させるビットシフト処理を行う機能も有している。尚、可逆(ロスレス)変換を行う場合には、量子化部106でのスカラー量子化は行われない。JPEG2000方式では、この量子化部106でのスカラー量子化と後述するポスト量子化(truncation)との2種類の量子化手段が用意されている。
【0009】
ROIの代表的な利用方法としては、JPEG2000のオプション機能に指定されるMax−shift法がある。
【0010】
Maxshift法は、ROI部分を任意の形で指定し、その部分を高画質に圧縮する一方、非ROI部分を低画質に圧縮するものである。具体的には、まず原画像に対してウェーブレット変換を行ってウェーブレット係数の分布を得た後、これらの分布の中で、非ROI部分に相当する係数分布の最も大きなウェーブレット係数の値Vmを求めておく。そして、S>=max(Vm)となるようなビット数Sを求め、ROI部分のウェーブレット係数のみを増大する方向へSビットだけシフトさせる。例えば、Vmの値が十進数で「255」(即ち、二進数で「11111111」)である場合には、S=8ビットであり、またVmの値が十進数で「128」(即ち、二進数で「10000000」)である場合にも同様にS=8ビットであるため、この場合にはROI部分のウェーブレット係数を増大する方向へS=8ビットだけシフトさせることになる。これにより、ROI部分については非ROI部分に比べて圧縮率を低く設定でき、ROI部分について高画質の圧縮データを得ることが可能となる。
【0011】
次に、量子化部106から出力された変換係数は、上述のEBCOTに従って、係数ビットモデリング部108と算術符号化部109とで、ブロックベースのエントロピー符号化を施され、符号量制御部110でレートを制御される。具体的には、係数ビットモデリング部108は、入力する変換係数の帯域成分を16×16や32×32や64×64程度の「コードブロック」と称する領域に分割し、更に、各コードブロックを、各ビットの2次元配列で構成される複数のビットプレーンに分解する。
【0012】
図25は、複数のコードブロック121,121,121,…に分解された2次元画像120を示す模式図である。また、図26は、このコードブロック121を構成するn枚のビットプレーン1220〜122n-1(n:自然数)を示す模式図である。図26に示すように、コードブロック121中の1点の変換係数の2進値123が"011…0"である場合、この2進値123を構成するビットは、それぞれ、ビットプレーン122n-1,122n-2,122n-3,…,1220に属するように分解される。図中のビットプレーン122n-1は、変換係数の最上位ビット(MSB)のみからなる最上位ビットプレーンを表し、ビットプレーン1220は、その最下位ビット(LSB)のみからなる最下位ビットプレーンを表している。
【0013】
更に、係数ビットモデリング部108は、各ビットプレーン122k(k=0〜n−1)内の各ビットのコンテクスト(context)判定を行い、図27に示すように、各ビットの有意性(判定結果)に応じて、ビットプレーン122kを3種類の符号化パス、すなわち、SIGパス(SIGnificance propagation pass),MRパス(Magnitude Refinement pass),CLパス(CLeanup pass)に分解する。各符号化パスに関するコンテクスト判定のアルゴリズムは、EBCOTで定められている。それによれば、「有意である」とは、これまでの符号化処理において注目係数がゼロでないとわかっている状態のことを意味し、「有意で無い」とは、係数値がゼロであるか、或いはゼロである可能性がある状態のことを意味する。
【0014】
係数ビットモデリング部108は、SIGパス(有意な係数が周囲にある有意でない係数の符号化パス)、MRパス(有意な係数の符号化パス)およびCLパス(SIGパス,MRパスに該当しない残りの係数情報の符号化パス)の3種類の符号化パスでビットプレーン符号化を実行する。ビットプレーン符号化は、最上位ビットプレーンから最下位ビットプレーンにかけて、各ビットプレーンのビットを4ビット単位で走査し、有意な係数が存在するか否かを判定することで行われる。有意で無い係数(0ビット)のみで構成されるビットプレーンの数はパケットヘッダに記録され、有意な係数が最初に出現したビットプレーンから実際の符号化が開始される。その符号化開始のビットプレーンはCLパスのみで符号化され、当該ビットプレーンよりも下位のビットプレーンは、上記3種類の符号化パスで順次符号化される。
【0015】
尚、図28に、レート(符号量;R)と歪み(D)の関係を表すR−D曲線を示す。このR−D曲線中、R1はビットプレーン符号化前のレート、R2はビットプレーン符号化後のレート、D1はビットプレーン符号化前の歪み、D2はビットプレーン符号化後の歪み、をそれぞれ示している。また、A,B,Cは、上述の符号化パスを表すラベルである。効率的な符号化を行うには、開始点P1(R1,D1)から終了点P2(R2,D2)へ向かう経路のうち、凸曲線のC−B−Aの経路よりも、凹曲線のA−B−Cの経路を採用するのが好ましい。このような凹曲線を実現するには、MSBプレーンからLSBプレーンに向けて符号化すればよいことが知られている。
【0016】
次に、算術符号化部109は、MQコーダを用いて、係数ビットモデリング部108からの係数列に対して、コンテクストの判定結果に基づいて符号化パス単位で算術符号化を実行する。尚、この算術符号化部109で、係数ビットモデリング部108から入力する係数列の一部を算術符号化させないバイパス処理を行うモードもある。
【0017】
次に、符号量制御部110は、算術符号化部109が出力した符号列の下位ビットプレーンを切り捨てるポスト量子化を行うことで、最終符号量を制御する。そして、ビットストリーム生成部111は、符号量制御部110が出力した符号列と付加情報(ヘッダ情報,レイヤー構成、スケーラビリティ情報、量子化テーブルなど)とを多重化したビットストリームを生成し、圧縮画像として出力する。
【0018】
以上のような構成を有する圧縮符号化装置において、画像データのデータ量を圧縮するための方法としては、例えば、符号量制御部110におけるレート制御方法を利用するレート・歪み最適化(R-D optimization)と称する手法が採用されている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】David S. Taubman and Michael W. Marcellin, "JPEG2000 IMAGE COMPRESSION FUNDAMENTALS, STANDARDS AND PRACTICE," Kluwer Academic Publishers
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、この手法では、(1)レートに対する歪量を各符号化パスで一々算出する必要があり、また或る符号化レートにおける最適解を推定しなければならず、演算量が多大になりリアルタイム性が低下する、(2)各符号化パスで算出した歪量を保存するためのメモリが必要になる、という問題がある。
【0021】
特に、圧縮符号化装置の動作性能に直接影響する量子化や符号量制御については、効率よく高速に、かつ高画質を維持しながら、処理を実現する方法が望まれている。
【0022】
また、例えば人物撮影において美肌効果を得たい場合、従来の手法では、圧縮符号化装置の前段にノイズ除去フィルタ(美肌フィルタ)を配置し、ノイズ除去フィルタによって撮影画像に対してノイズ除去処理を行った後に、圧縮符号化装置によって画像圧縮処理を行っている。しかしながら、この手法では、(1)ノイズ除去処理を行った後に画像圧縮処理を行うため、ノイズ除去処理によってせっかくノイズが除去されても、続く画像圧縮処理に起因して新たな歪みが生じる、(2)ノイズ除去フィルタと圧縮符号化装置との2段構成のため、処理が複雑化する、という問題がある。
【0023】
以上の問題等に鑑みて本発明が課題とするところは、少ない演算量で且つ高速に、画像データを圧縮符号化することにある。また、ノイズを除去しながら目標画質に適合する圧縮画像を得ることをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
第1の発明に係る圧縮符号化装置は、画像信号を圧縮符号化する圧縮符号化装置であって、ウェーブレット変換により画像信号を高域成分と低域成分とに再帰的に帯域分割して複数の帯域成分の変換係数を生成出力するウェーブレット変換部と、目標画質を示す量子化パラメータを、フィルタ係数のノルムで除算して量子化ステップサイズを求める画質制御部と、前記画像信号に関心領域を設定する関心領域設定部と、前記変換係数に対して、前記量子化ステップサイズに基づく量子化および並べ替えと、前記関心領域の設定情報に基づく並べ替えおよびビットシフトと、を施し、前記ビットシフトにおいて前記設定情報の優先度の高い関心領域ほど他の領域に比べて前記変換係数を下位ビット側にビットシフトする量子化部と、前記量子化部から入力される前記変換係数をエントロピー符号化するエントロピー符号化部と、所望のノイズ除去効果が得られるまで、前記エントロピー符号化部の出力する符号化データの一部を下位ビットから切り捨てるレート制御を行う符号量制御部と、を備えることを特徴とする。
【0025】
第2の発明に係る圧縮符号化装置は、画像信号を圧縮符号化する圧縮符号化装置であって、ウェーブレット変換により画像信号を高域成分と低域成分とに再帰的に帯域分割して複数の帯域成分の変換係数を生成出力するウェーブレット変換部と、前記画像信号に関心領域を設定する関心領域設定部と、前記変換係数の量子化を行う量子化部と、前記量子化部から入力される前記変換係数をエントロピー符号化するエントロピー符号化部と、前記エントロピー符号化部の出力する符号化データに対して、前記関心領域の設定情報に基づく並べ替えおよびビットシフトを施した符号列を生成し、所望のノイズ除去効果が得られるまで、前記符号列の一部を下位ビットから切り捨てるレート制御を行い、前記ビットシフトにおいて前記設定情報の優先度の高い関心領域ほど他の領域に比べて前記符号化データを下位ビット側にビットシフトする符号量制御部と、を備えることを特徴とする。
【0026】
第3の発明に係る圧縮符号化装置は、第2の発明に係る圧縮符号化装置であって、さらに、目標画質を示す量子化パラメータを、フィルタ係数のノルムで除算して量子化ステップサイズを求める画質制御部、を備え、前記量子化部は、前記量子化ステップサイズに基づいて前記変換係数の量子化を行い、前記符号量制御部は、前記量子化ステップサイズに基づいて前記符号化データの並べ替えを行うことを特徴とする。
【0027】
第4の発明に係る圧縮符号化装置は、第1ないし第3のいずれかの発明に係る圧縮符号化装置であって、前記関心領域設定部は、設定した各関心領域に優先度を付与し、前記関心領域の設定情報に基づく前記ビットシフトのシフト量は前記優先度に応じて決定されることを特徴とする。
【0028】
第5の発明に係る圧縮符号化装置は、第1ないし第4のいずれかの発明に係る圧縮符号化装置であって、前記符号量制御部は、前記レート制御の切り捨て対象をビットプレーン単位で決定することを特徴とする。
【0029】
第6の発明に係る圧縮符号化装置は、第1ないし第4のいずれかの発明に係る圧縮符号化装置であって、前記符号量制御部は、前記レート制御の切り捨て対象をパス単位で決定することを特徴とする。
【0030】
第7の発明に係る圧縮符号化装置は、第1、第3ないし第6のいずれかの発明に係る圧縮符号化装置であって、前記画質制御部は、フィルタ係数のノルムと人間の視覚特性に基づいて定められた所定の数値であるenergy weighting facotorとを乗算した値で、指定された前記量子化パラメータを除算して、人間の視覚特性を考慮した重み付けを施した前記量子化ステップサイズを求めることを特徴とする。
【0031】
第8の発明に係る圧縮符号化装置は、第1、第3ないし第7のいずれかの発明に係る圧縮符号化装置であって、前記画質制御部は、前記量子化ステップサイズが所定の数値より小さいときは、前記量子化ステップサイズが前記所定の数値以上になる2の累乗を乗算して得られた値を前記量子化ステップサイズとすることを特徴とする。
【0032】
第9の発明に係る圧縮符号化装置は、第8の発明に係る圧縮符号化装置であって、前記量子化ステップサイズが前記画質制御部において2の累乗を乗算して求めた値であるときは、当該量子化ステップサイズに基づく並べ替えを行うときに、前記変換係数または前記符号化データを、前記2の累乗の指数に対応するビット数分だけビットシフトすることを特徴とする。
【0033】
第10の発明に係る圧縮符号化装置は、第1または第2の発明に係る圧縮符号化装置であって、前記符号量制御部は、Viewing distanceを変更可能であり、変更後のViewing distanceについてのenergy weighting factorと、変更後のViewing distanceについてのenergy weighting factorの比に基づく量だけ、前記符号列をビットシフトすることを特徴とする。
【0034】
第11の発明に係る圧縮符号化方法は、画像信号を圧縮符号化する圧縮符号化方法であって、(a)ウェーブレット変換により画像信号を高域成分と低域成分とに再帰的に帯域分割して複数の帯域成分の変換係数を生成する工程と、(b)目標画質を示す量子化パラメータを、フィルタ係数のノルムで除算して量子化ステップサイズを求める工程と、(c)前記画像信号に関心領域を設定する工程と、(d)前記変換係数に対して、前記量子化ステップサイズに基づく量子化および並べ替えと、前記関心領域の設定情報に基づく並べ替えおよびビットシフトと、を施し、前記ビットシフトにおいて前記設定情報の優先度の高い関心領域ほど他の領域に比べて前記変換係数を下位ビット側にビットシフトする工程と、(e)前記工程(d)の処理を施した前記変換係数をエントロピー符号化する工程と、(f)所望のノイズ除去効果が得られるまで、前記工程(e)で符号化した符号化データの符号化データの一部を下位ビットから切り捨てるレート制御を行う工程と、を備えることを特徴とする。
【0035】
第12の発明に係る圧縮符号化方法は、画像信号を圧縮符号化する圧縮符号化方法であって、(a)ウェーブレット変換により画像信号を高域成分と低域成分とに再帰的に帯域分割して複数の帯域成分の変換係数を生成する工程と、(b)前記画像信号に関心領域を設定する工程と、(c)前記変換係数の量子化を行う工程と、(d)前記工程(c)で量子化した前記変換係数をエントロピー符号化する工程と、(e)前記工程(d)で符号化した符号化データに対して、前記関心領域の設定情報に基づく並べ替えおよびビットシフトを施した符号列を生成し、所望のノイズ除去効果が得られるまで、前記符号列の一部を下位ビットから切り捨てるレート制御を行い、前記ビットシフトにおいて前記設定情報の優先度の高い関心領域ほど他の領域に比べて前記符号化データを下位ビット側にビットシフトする工程と、を備えることを特徴とする。
【0036】
第13の発明に係る圧縮符号化方法は、第12の発明に係る圧縮符号化方法であって、前記量子化を行う工程は、目標画質を示す量子化パラメータを、フィルタ係数のノルムで除算して量子化ステップサイズを求める工程と、前記量子化ステップサイズに基づく前記変換係数の量子化を行う工程と、を含み、前記符号化データを並べ替える工程は、前記量子化ステップサイズに基づく前記符号化データの並べ替えを行う工程、を含むことを特徴とする。
【0037】
第14の発明に係る圧縮符号化方法は、第11ないし第13のいずれかの発明に係る圧縮符号化方法であって、前記関心領域を設定する工程は、設定した各関心領域に優先度を付与する工程、を含み、前記関心領域の設定情報に基づくビットシフトを行う工程は、前記優先度に応じて決定された所定のビット数分だけビットシフトする工程、を含むことを特徴とする。
【0038】
第15の発明に係る圧縮符号化方法は、第11ないし第14のいずれかの発明に係る圧縮符号化方法であって、前記レート制御を行う工程は、前記レート制御の切り捨て対象をビットプレーン単位で決定する工程、を含むことを特徴とする。
【0039】
第16の発明に係る圧縮符号化方法は、第11ないし第14のいずれかの発明に係る圧縮符号化方法であって、前記レート制御を行う工程は、前記レート制御の切り捨て対象をパス単位で決定する工程、を含むことを特徴とする。
【0040】
第17の発明に係る圧縮符号化方法は、第11、第13ないし第16のいずれかの発明に係る圧縮符号化方法であって、前記量子化ステップサイズを求める工程は、フィルタ係数のノルムと人間の視覚特性に基づいて定められた所定の数値であるenergy weighting facotorとを乗算した値で、指定された前記量子化パラメータを除算して、人間の視覚特性を考慮した重み付けを施した前記量子化ステップサイズを求める工程、を含むことを特徴とする。
【0041】
第18の発明に係る圧縮符号化方法は、第11、第13ないし第17のいずれかの発明に係る圧縮符号化方法であって、前記量子化ステップサイズを求める工程は、前記量子化ステップサイズが所定の数値より小さいときは、前記量子化ステップサイズが前記所定の数値以上になる2の累乗を乗算して得られた値を前記量子化ステップサイズとする工程、を含むことを特徴とする。
【0042】
第19の発明に係る圧縮符号化方法は、第18の発明に係る圧縮符号化方法であって、前記量子化ステップサイズに基づく並べ替えを行う工程は、前記量子化ステップサイズが2の累乗を乗算して求めた値であるときは、当該量子化ステップサイズで量子化された前記変換係数または前記符号化データを、前記2の累乗の指数に対応するビット数分だけビットシフトして前記符号列を生成する工程、を含むことを特徴とする。
【0043】
第20の発明に係るプログラムは、マイクロプロセッサに画像信号を圧縮符号化させるためのプログラムであって、ウェーブレット変換により画像信号を高域成分と低域成分とに再帰的に帯域分割して複数の帯域成分の変換係数を生成出力するウェーブレット変換部と、目標画質を示す量子化パラメータを、フィルタ係数のノルムで除算して量子化ステップサイズを求める画質制御部と、前記画像信号に関心領域を設定する関心領域設定部と、前記変換係数に対して、前記量子化ステップサイズに基づく量子化および並べ替えと、前記関心領域の設定情報に基づく並べ替えおよびビットシフトと、を施し、前記ビットシフトにおいて前記設定情報の優先度の高い関心領域ほど他の領域に比べて前記変換係数を下位ビット側にビットシフトする量子化部と、前記量子化部から入力される前記変換係数をエントロピー符号化するエントロピー符号化部と、所望のノイズ除去効果が得られるまで、前記エントロピー符号化部の出力する符号化データの一部を下位ビットから切り捨てるレート制御を行う符号量制御部として、前記マイクロプロセッサを機能させることを特徴とする。
【0044】
第21の発明に係るプログラムは、マイクロプロセッサに画像信号を圧縮符号化させるためのプログラムであって、ウェーブレット変換により画像信号を高域成分と低域成分とに再帰的に帯域分割して複数の帯域成分の変換係数を生成出力するウェーブレット変換部と、前記画像信号に関心領域を設定する関心領域設定部と、前記変換係数の量子化を行う量子化部と、前記量子化部から入力される前記変換係数をエントロピー符号化するエントロピー符号化部と、前記エントロピー符号化部の出力する符号化データに対して、前記関心領域の設定情報に基づく並べ替えおよびビットシフトを施した符号列を生成し、所望のノイズ除去効果が得られるまで、前記符号列の一部を下位ビットから切り捨てるレート制御を行い、前記ビットシフトにおいて前記設定情報の優先度の高い関心領域ほど他の領域に比べて前記符号化データを下位ビット側にビットシフトする符号量制御部として、前記マイクロプロセッサを機能させることを特徴とする。
【0045】
第22の発明に係るプログラムは、第21の発明に係るプログラムであって、さらに、目標画質を示す量子化パラメータを、フィルタ係数のノルムで除算して量子化ステップサイズを求める画質制御部として、前記マイクロプロセッサを機能させると共に、前記マイクロプロセッサを前記量子化部として機能させるときは、前記量子化ステップサイズに基づいて前記変換係数の量子化を行うように機能させ、前記マイクロプロセッサを前記符号量制御部として機能させるときは、前記量子化ステップサイズに基づいて前記符号化データの並べ替えを行うように機能させることを特徴とする。
【0046】
第23の発明に係るプログラムは、第20ないし第22のいずれかの発明に係るプログラムであって、前記マイクロプロセッサを前記関心領域設定部として機能させるときに、設定した各関心領域に優先度を付与するように機能させ、前記マイクロプロセッサで前記関心領域の設定情報に基づく前記ビットシフトを行うときに、前記優先度に応じて決定された所定のビット数分だけビットシフトするように機能させることを特徴とする。
【0047】
第24の発明に係るプログラムは、第20ないし第23のいずれかの発明に係るプログラムであって、前記マイクロプロセッサを前記符号量制御部として機能させるときは、前記レート制御の切り捨て対象をビットプレーン単位で決定するように機能させることを特徴とする。
【0048】
第25の発明に係るプログラムは、第20ないし第23のいずれかの発明に係るプログラムであって、前記マイクロプロセッサを前記符号量制御部として機能させるときは、前記レート制御の切り捨て対象をパス単位で決定するように機能させることを特徴とする。
【0049】
第26の発明に係るプログラムは、第20、第22ないし第25のいずれかの発明に係るプログラムであって、前記マイクロプロセッサを前記画質制御部として機能させるときは、フィルタ係数のノルムと人間の視覚特性に基づいて定められた所定の数値であるenergy weighting facotorとを乗算した値で、指定された前記量子化パラメータを除算して、人間の視覚特性を考慮した重み付けを施した前記量子化ステップサイズを求めるように機能させることを特徴とする。
【0050】
第27の発明に係るプログラムは、第20、第22ないし第26のいずれかの発明に係るプログラムであって、前記マイクロプロセッサを前記画質制御部として機能させるときは、前記量子化ステップサイズが所定の数値より小さいときは、前記量子化ステップサイズが前記所定の数値以上になる2の累乗を乗算して得られた値を前記量子化ステップサイズとするように機能させることを特徴とする。
【0051】
第28の発明に係るプログラムは、第27の発明に係るプログラムであって、前記マイクロプロセッサで前記量子化ステップサイズに基づく並べ替えを行うときに、前記量子化ステップサイズが前記画質制御部において2の累乗を乗算して求めた値であるときは、前記変換係数または前記符号化データを、前記2の累乗の指数に対応するビット数分だけビットシフトするように機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0052】
第1、第11および第20の発明によれば、関心領域に対してノイズ除去効果のある目標画質に適合する圧縮画像を容易に生成することができる。
【0053】
第2、第12および第21の発明によれば、関心領域に対してノイズ除去効果のある目標画質に適合する圧縮画像を容易に生成することができる。また、JPEG2000のオプション機能であるMax−Shift法を利用できない圧縮符号化装置においても処理を実現することができる。
【0054】
第3、第13および第22の発明によれば、目標画質に従って量子化によるデータの圧縮率を制御しながら、最適解を推定する処理が必要な従来技術に比べて少ない演算量で高速な量子化を行うことが可能である。
【0055】
第4、第14および第23の発明によれば、複数の関心領域の各々に優先度を設定することで、所望の領域の画質を維持しながら目標画質に適合する圧縮画像を生成することができる。
【0056】
第5、第15および第24の発明によれば、目標画質に合わせてビットプレーン単位で符号量を細かくかつ効率的にレート制御することができる。
【0057】
第6、第16および第25の発明によれば、目標画質に合わせてパス単位で符号量を細かくかつ効率的にレート制御することができる。
【0058】
第7、第17および第26の発明によれば、人間の視覚評価に適した高い表示画質を有する圧縮画像を容易に生成することが可能である。
【0059】
第8、第18および第27の発明によれば、目標画質に従って効率良く量子化する装置を容易に実現することができる。
【0060】
第9、第19および第28の発明によれば、目標画質に適合する圧縮画像を画質を維持しながら効率良く生成することができる。
【0061】
第10の発明によれば、圧縮用の量子化値で符号化した画像も、ノイズ除去効果のある目標画質となるよう制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】この発明の第1の実施の形態に係る圧縮符号化装置の概略構成を示す図である。
【図2】Energy weighting factorの数値テーブルを示す図である。
【図3】Energy weighting factorの数値テーブルを示す図である。
【図4】Energy weighting factorの数値テーブルを示す図である。
【図5】輝度信号のウェーブレット平面を示す図である。
【図6】YUV422形式の色差信号のウェーブレット平面を示す図である。
【図7】YUV420形式の色差信号のウェーブレット平面を示す図である。
【図8】符号列のビットシフトの処理を示す図である。
【図9】符号列の並べ替えの処理を示す図である。
【図10】YUV形式の符号列の並べ替えおよびビットシフトの処理を示す図である。
【図11】この発明の第2の実施の形態に係る圧縮符号化装置の概略構成を示す図である。
【図12】原画像の例を示す図である。
【図13】図12の原画像に対して設定された単一のマスク領域を示す図である。
【図14】図13のマスク領域をウェーブレット平面に展開した状態を示す図である。
【図15】逆ウェーブレット5×3フィルタにおける低域側及び高域側と入力側との間のマスク領域の対応関係を示す図である。
【図16】逆ウェーブレット9×7フィルタにおける低域側及び高域側と入力側との間のマスク領域の対応関係を示す図である。
【図17】画像データのROI部分の設定例を示す図である。
【図18】図17のROI設定情報をウェーブレット平面に展開した状態を示す図である。
【図19】図17のROI設定情報に基づく符号列の並べ替えおよびビットシフトの処理を示す図である。
【図20】第2の実施の形態の変形例に係る圧縮符号化装置の概略構成を示す図である。
【図21】この発明の第3の実施の形態に係る符号列の並べ替えおよびビットシフトの処理を示す図である。
【図22】この発明の第4の実施の形態に係る符号列の並べ替えおよびビットシフトの処理を示す図である。
【図23】JPEG2000方式による圧縮符号化装置の概略構成を示す図である。
【図24】オクターブ分割方式に従って帯域分割された2次元画像を示す模式図である。
【図25】複数のコードブロックに分解された2次元画像を示す模式図である。
【図26】コードブロックを構成する複数枚のビットプレーンを示す模式図である。
【図27】3種類の符号化パスを示す模式図である。
【図28】レートと歪みの関係を表すR−D曲線を示す図である。
【図29】量子化部でのROI部分のシフトを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
(第1の実施の形態)
{圧縮符号化装置}
図1は、本発明の実施形態に係る圧縮符号化装置1の概略構成を示す機能ブロック図である。この圧縮符号化装置1の構成と機能について概説した後に、本実施形態に係る量子化方法および符号化方法について詳説する。
【0064】
この圧縮符号化装置1は、DCレベルシフト部10、色空間変換部11、タイリング部12、DWT部13、量子化部14、係数ビットモデリング部20、算術符号化部(エントロピー符号化部)21、符号量制御部22、画質制御部23およびビットストリーム生成部17を備えて構成される。
【0065】
尚、この圧縮符号化装置1を構成する各処理部10〜14,17,20〜23の全部または一部は、ハードウェアで構成されてもよいし、マイクロプロセッサを機能させるプログラムで構成されていてもよい。
【0066】
この圧縮符号化装置1に入力した画像信号は、DCレベルシフト部10で必要に応じてDCレベル変換を施された後に、色空間変換部11に出力される。色空間変換部11は入力信号を色空間変換して出力する。JPEG2000方式によれば、色空間変換として、可逆変換用のRCT(Reversible Component Transformation)と、非可逆変換用のICT(Irreversible Component Transformation)とが用意されており、何れか一方を適宜選択できる。これにより、例えば、入力するRGB信号をYCbCr信号或いはYUV信号に変換する。
【0067】
次に、タイリング部12は、色空間変換部11から入力する画像信号を、複数の矩形状の「タイル」と称する領域成分に分割してDWT部13に出力する。尚、必ずしも、画像信号をタイルに分割する必要は無く、1フレーム分の画像信号をそのまま次段の機能ブロックに出力してもよい。
【0068】
次に、DWT部13は、タイリング部12から入力する画像信号に対してタイル単位で整数型または実数型のDWTを施すことで、上記オクターブ分割方式に従って画像信号を高域成分と低域成分とに再帰的に帯域分割する。その結果、図24に示したような複数の帯域成分(サブバンド)HH1〜LL3の変換係数が生成され量子化部14に出力される。具体的には、実数型DWTであれば、9×7タップ、5×3タップまたは7×5タイプなどのフィルタが使用され、整数型DWTであれば、5×3タップまたは13×7タップなどのフィルタが使用される。また、これらフィルタの処理を畳み込み演算で実行してもよいし、或いは、畳み込み演算よりも効率的なリフティング構成(Lifting scheme)で実行してもよい。
【0069】
量子化部14は、DWT部13から入力する変換係数を、画質制御部23で決定される量子化パラメータに従って、スカラー量子化する機能を有する。また量子化部14は、所定のビットシフト処理を行う機能も有している。量子化部14による量子化およびビットシフト処理の方法については後述する。
【0070】
次に、量子化部14から出力された変換係数QDは、係数ビットモデリング部20と算術符号化部21とで、ブロックベースのエントロピー符号化を施され、符号量制御部22でレートを制御される。
【0071】
係数ビットモデリング部20は、図23に示した係数ビットモデリング部108と同様に、入力する変換係数QDの帯域成分を32×32や64×64程度のコードブロックに分割し、更に、各コードブロックを、各ビットを2次元配列して構成される複数のビットプレーンに分解する。この結果、各コードブロックは、図26に示したような複数のビットプレーン1220〜122n-1に分解される。
【0072】
次に、算術符号化部21は、係数ビットモデリング部20から入力する符号化データBDを算術符号化し、その結果得た符号化データADを符号量制御部22に出力する。ここで、算術符号化部21は、前記符号化対象の一部を算術符号化せずに、当該符号化対象をそのまま符号化データADに含めて出力するバイパス処理を行う場合もある。尚、本実施の形態では算術符号化を採用するが、本発明はこれに限らず、他の方式のエントロピー符号化を採用しても構わない。
【0073】
次に、符号量制御部22は、画質制御部23からの指示に基づいて、算術符号化部21から入力する符号化データADのレートを制御する機能を有する。すなわち、符号量制御部22は、目標符号量(最終的な圧縮画像の符号量)を考慮しつつ、画面全体に対して所望のノイズ除去効果(人物撮影では美肌効果)を得るために、符号化データADを、帯域成分単位あるいはビットプレーン単位、パス単位で優先度の低いものから順に切り捨てるというポスト量子化を実行する機能を有する。符号量制御部22でのレート制御の方法については後述する。
【0074】
そして、ビットストリーム生成部17は、符号量制御部22から出力された符号化データCDと付加情報(ヘッダ情報,レイヤー構成,スケーラビリティ,量子化テーブルなど)とを多重化したビットストリームを生成し、圧縮画像として外部に出力する。
【0075】
{量子化}
次に、図1に示した画質制御部23および量子化部14によって実現される量子化の処理内容について説明する。
【0076】
画質制御部23は、外部から供給される目標画質情報(高画質,標準画質,低画質,解像度情報など)に基づいて、DWT部13から入力する変換係数を量子化部14で量子化するときの量子化ステップサイズΔbを決定する機能を有する。以下、量子化ステップサイズΔbの決定方法について説明する。
【0077】
DWT部13によって、原画像が図24に示すように、「XYn」(X,Yは高域成分Hまたは低域成分Lの何れか。nは分解レベル。)のサブバンド(帯域成分)に分割されたときに、各サブバンドの量子化に用いる量子化ステップサイズΔbを、次式(1)のように設定する。
【0078】
【数1】

【0079】
ここで、Qpは、目標画質情報に従って入力される正の数、すなわち量子化パラメータであって、高画質であるほど小さな値を入力する。量子化パラメータQpは、利用者が直接数値を入力して指定する態様であってもよいし、例えば、予め、目標画質情報を示す「高画質、標準画質、低画質」といった所定の指示語と量子化パラメータQpの数値とを関連づけた所定のテーブルを備えておき、利用者が所望する画像データの圧縮後の目標画質を指示語によって指定することで、当該テーブルにおいて関連づけられた量子化パラメータQpの値を読み出して利用する態様であっても構わない。
【0080】
bは、各サブバンドにおける量子化係数であって、合成フィルタ係数のノルムとして、次式(2)で表される。
【0081】
【数2】

【0082】
ここで、サブバンドbの重み係数Gbは、次式(3)に従って算出される。
【0083】
【数3】

【0084】
上式(3)中、sb[n]は、サブバンドbの1次元合成フィルタ係数を示している。また、記号‖x‖は、ベクトルxに関するノルムを示す。
【0085】
上述した非特許文献1に記載される数式(4.39)と(4.40)によれば、分解レベル1における低域成分L1の1次元合成フィルタ係数sL[1][n]と、同分解レベルにおける高域成分H1の1次元合成フィルタ係数sH[1][n]とは、次式(4)に従って算出される。
【0086】
【数4】

【0087】
ここで、上式(4)中、g0[n]は、画像信号を帯域分割する順変換フィルタのローパス・フィルタ係数、g1[n]は、そのハイパス・フィルタ係数をそれぞれ示している。
【0088】
また、分解レベルd(d=1,2,…,D)における低域成分Ldの1次元合成フィルタ係数sL[d][n]と、同分解レベルにおける高域成分Hdの1次元合成フィルタ係数sH[d][n]とは、次式(5)に従って算出される。
【0089】
【数5】

【0090】
そして、分解レベルdにおける低域成分Ldの1次元合成フィルタ係数のノルムの二乗は、次式(6)に従って算出される。
【0091】
【数6】

【0092】
高域成分Hdの1次元合成フィルタ係数のノルムの二乗も、上式(6)と同様にして算出することができる。
【0093】
1次元合成フィルタ係数のノルムの二乗の計算結果を表1に示す。表中のnは分解レベルを示しており、例えばGL1とは、低域成分Lの分解レベル1における計算結果を示している。
【0094】
【表1】

【0095】
次に、分解レベルd(d=1,2,…,D;Dは整数)における帯域成分LLD,HLd,LHd,HHdの2次元合成フィルタ係数は、上記1次元合成フィルタ係数の積で表現することができ、帯域成分bの2次元の重み係数Gbも、1次元の重み係数の積で表現することができる。具体的には、2次元合成フィルタ係数と2次元の重み係数とは、次式(7)に従って算出される。
【0096】
【数7】

【0097】
上式(7)中、添字LL[D]はサブバンドLLDを示し,HL[d],LH[d]およびHH[d]はそれぞれサブバンドHLd,LHdおよびHHdを表している。
【0098】
重み係数Gbの平方根がノルムである。以下の表2および表3に、表1から求めた2次元の重み係数Gbに関する計算結果を示す。表2には(9,7)フィルタ(9×7タップのフィルタ)の各帯域成分のノルムの二乗の数値を、表3には表2に対応するノルムの数値をそれぞれ示す。
【0099】
【表2】

【0100】
【表3】

【0101】
例えば、輝度信号Y、色差信号UおよびVの全てについて、同じく量子化パラメータQp=16として、表3に示した値から上式(1)および(2)を利用して求めた輝度信号Y、色差信号UおよびVの量子化ステップサイズΔbは、表4のようになる。
【0102】
【表4】

【0103】
尚、輝度信号Y、色差信号UおよびVのそれぞれについて、量子化ステップサイズΔbを求めるのに利用する量子化パラメータQpは、必ずしも同じ値をとる必要はなく、画像データの内容に応じて、異なる値を利用しても構わない。例えば、色成分を強調したい場合に、色差信号UおよびVに利用する量子化パラメータQpを輝度信号Yに比して小さくするなど、画像データの内容等を考慮して、それぞれについて適当な量子化パラメータQpを利用すればよい。
【0104】
画質制御部23では、このようにして量子化ステップサイズΔbを求め、これを量子化部14に通知する。そして、量子化部14では、各サブバンド毎に、通知された量子化ステップサイズΔbに従って量子化を行う。
【0105】
ただし、量子化ステップサイズΔbの値が1より小さくなる場合には、1以上の値となるように2の累乗を乗算してから用いる。例えば、上述した方法で計算した結果、求められたサブバンドLL5の量子化ステップサイズΔbは0.47163であるが、実際に画像データを量子化するときには、この値に22を乗算して量子化ステップサイズΔb=1.88652として量子化を行う。同様に、サブバンドHL5では、量子化ステップサイズΔb=0.93204に2を乗算して、量子化ステップサイズΔb=1.86408として量子化を行う。このように量子化ステップサイズΔbを、量子化を実現する量子化器の性能に基づいて所定の数値に変換する機能を有することで、量子化器の構成を簡素化することが可能であり、本来の量子化の目的であるデータ量の圧縮を達成することもできる。尚、量子化ステップサイズΔbを1以上の値としたのは一例であって、量子化器の機能によって、例えば1/2以上の値を利用する量子化器であれば、量子化ステップサイズΔbを1/2以上になるように変換すればよい。すなわち、量子化器の扱う下限値が1/2mであれば、全ての量子化ステップサイズΔbが、1/2m以上になるように2の累乗を乗算してから利用する態様であればよい。
【0106】
また、画質制御部23では、上述した方法のほか、人間の視覚特性を考慮して量子化ステップサイズΔbを決定することもできる。その方法は以下の通りである。
【0107】
上述した非特許文献1のChapter 16には、CSF(Contrast Sensitivity Function of human visual system )に基づいた重み付けWMSE(Weighted Mean Squared Error;WMSE)が記載されている。これを利用して、圧縮符号化後の画像データに対する人間の視覚評価を改善するために、上式(2)を次式(8)に修正する。
【0108】
【数8】

【0109】
ここで、上式(8)中、Wb[i]csfは、サブバンドb[i]の"energy weighting factor"と呼ばれており、Wb[i]csfの推奨数値は、「INTERNATIONAL STANDARD ISO/IEC 15444-1ITU-T RECOMMENDATION T.800 Information technology - JPEG 2000 image coding system: Core coding system」の文献(以下、非特許文献2と呼ぶ。)に記載されている。図2〜図4に、非特許文献2に記載される"energy weighting factor"の数値を示す。
【0110】
図2〜図4中の"level"および "Lev"は分解レベルを、"Comp"は輝度成分Yと色差成分Cb, Crをそれぞれ示しており、"Viewing distance(視距離)"が1000,1700, 2000, 3000, 4000の例が示されている。また、"Viewing distance 1000", "Viewing distance 1700", "Viewing distance 2000", "Viewing distance 3000", "Viewing distance 4000"は、それぞれ、100dpi,170dpi,200dpi,300dpi,400dpiのディスプレイまたは印刷物を10インチ離れて見たときの視距離を意味する。
【0111】
例えば、カラーの画像データについて、量子化ステップサイズΔbを求める具体的な方法を以下に説明する。尚、色空間については、RGB信号から成るカラーの入力画像を、色空間変換部11においてYUV422またはYUV420形式の色空間データに変換したものとする。
【0112】
YUV422またはYUV420形式の画像データについては、色差信号UおよびVは、輝度信号Yに比べ、そのデータ量がそれぞれ1/2および1/4となっている。輝度信号YにDWTを施したウェーブレット平面は図5のように表すことができるが、データ量が1/2であることを、図5に示したウェーブレット平面に対して水平方向にDWTを一回施したものと同等であると仮定すれば、図6中の散点部がYUV422形式の色差信号UおよびVのウェーブレット平面となる。同様に、データ量が1/4であることを、図5に示したウェーブレット平面に対して水平方向および垂直方向にDWTを一回ずつ施したものと同等であると仮定すれば、図7中の散点部がYUV420形式の色差信号UおよびVのウェーブレット平面となる。
【0113】
YUV422形式では、図6に示したように水平成分について垂直成分より一回多くフィルタリングすると仮定するので、2次元合成フィルタ係数と2次元の重み係数は、上式(7)に対して、次式(9)のように表すことができる。
【0114】
【数9】

【0115】
また、YUV420形式では、同様に、図7に示したように水平成分および垂直成分について一回ずつ多くフィルタリングすると仮定するので、上式(7)に対して、次式(10)のように表すことができる。
【0116】
【数10】

【0117】
よって、表1に示した値から上式(9)および(10)を利用して、YUV422およびYUV420形式の色差信号のノルムを求めると表5および表6のようになる。
【0118】
【表5】

【0119】
【表6】

【0120】
次に、energy weighting factor Wb[i]csfについて、非特許文献1の記載によれば、サブバンドb[i]のenergy weighting factor Wb[i]csfは1次元の水平および垂直方向の各帯域成分のenergy weighting factorの積として、次式(11)で表される。
【0121】
【数11】

【0122】
YUV422またはYUV420形式の画像データにおける輝度信号Yに係るenergy weighting factorは、上式(11)で求めることができる。尚、YUV444形式であれば、輝度信号および色差信号ともに上式(11)で求められる。
【0123】
YUV422形式の色差信号UおよびVについては、上述したように水平成分について垂直成分より一回多くフィルタリングすると仮定しているので、そのenergy weighting factorは、上式(11)に対して次式(12)のように表すことができる。
【0124】
【数12】

【0125】
また、YUV420形式の色差信号UおよびVについては、同様に、水平成分および垂直成分について一回ずつ多くフィルタリングすると仮定しているので、そのenergy weighting factorは、上式(11)に対して次式(13)のように表すことができる。
【0126】
【数13】

【0127】
非特許文献2の記載から求められるViewing distance 1000、Viewing distance 1700、およびViewing distance 3000の色差信号UおよびVのenergy weighting factorの値を表7〜表9に示す。ここで、以下の表も含め、表中のCbおよびCrはそれぞれ色差信号UおよびVを示している。
【0128】
【表7】

【0129】
【表8】

【0130】
【表9】

【0131】
そして、表7〜表9に示した値から、上式(11)〜(13)を利用して求めたYUV422およびYUV420形式の画像データに係るenergy weighting factorが表10〜表12および表13〜表15である。
【0132】
【表10】

【0133】
【表11】

【0134】
【表12】

【0135】
【表13】

【0136】
【表14】

【0137】
【表15】

【0138】
このようにして求めた表5および表6のノルムの値を上式(1)および(2)に代入すれば通常の量子化ステップサイズΔbが、表5および表6のノルムの値と、表10〜表15のenergy weighting factorの値とを上式(1)および(8)に代入すれば、人間の視覚特性を考慮して視覚的重み付けを行った量子化ステップサイズΔbが求められる。
【0139】
例えば、輝度信号Y、色差信号UおよびVの全てについて、同じく量子化パラメータQp=16として、YUV422形式のカラーの画像データにおいてViewing distance(視距離)3000の視覚的重み付けを行ったときの輝度信号Y、色差信号UおよびVの量子化ステップサイズΔbは、表5に示すノルムの値、表12に示すenergy weighting factorの値、および上式(1),(8)を用いて求められる。その結果を表16〜表18に示す。
【0140】
【表16】

【0141】
【表17】

【0142】
【表18】

【0143】
尚、輝度信号Y、色差信号UおよびVのそれぞれについて、量子化ステップサイズΔbを求めるのに利用する量子化パラメータQpは、必ずしも同じ値をとる必要はなく、画像データの内容に応じて、異なる値を利用しても構わない。例えば、色成分を強調したい場合に、色差信号UおよびVに利用する量子化パラメータQpを輝度信号Yに比して小さくするなど、画像データの内容等を考慮して、それぞれについて適当な量子化パラメータQpを利用すればよい。同様に、energy weighting factorの値についても、異なる値を利用しても構わないし、用いなくても良い。
【0144】
画質制御部23では、このようにして量子化ステップサイズΔbを求め、これを量子化部14に通知する。そして、量子化部14では、各サブバンド毎に、通知された量子化ステップサイズΔbに従って量子化を行う。このとき、量子化ステップサイズΔbが1より小さければ、2の累乗を乗算して1以上の値にしてから利用するのは、上述したのと同様である。
【0145】
以上のように、本実施の形態では、量子化によって画質を制御することにより、ノイズ除去効果(美肌効果)のある目標画質に応じた厳密な制御を行うことが可能である。このとき最適解を求めるような複雑な処理を必要としないため、少ない演算量で高速に処理することが可能である。また、人間の視覚特性を考慮し、圧縮後に高い表示画質を有する圧縮画像を生成することもできる。
【0146】
{並べ替えおよびビットシフト}
図1に示した量子化部14は、量子化ステップサイズΔbに基づいて、量子化データの並べ替えとビットシフト処理を行う。
【0147】
より小さい量子化ステップサイズΔbで量子化を行ったデータを優先してより多くの符号量を割り当て、レート制御による切り捨ての影響を受けないようにビットシフト処理を行うことで、符号化処理による画質劣化を回避または抑制することができる。
【0148】
以下に、量子化ステップサイズΔbに基づく並べ替えおよびビットシフトの処理について説明する。
【0149】
まず、目標画質として所定の量子化パラメータQpの値が指定されると、この値に基づいて、画質制御部23が、上述したように量子化ステップサイズΔbを算出し、これを量子化部14に通知する。
【0150】
量子化部14では、量子化ステップサイズΔbが通知されると、この値に基づいて、DWT部13がDWTを施した後の画像データを上述したように量子化する。
【0151】
そして、量子化部14は、量子化を行った後のデータを、量子化ステップサイズΔbの大きさに従って、その値が小さい順(昇順)に並べ替える。
【0152】
上述したように1以上になるよう変換した量子化ステップサイズΔbを利用して量子化されたデータについては、変換前の量子化ステップサイズΔbに基づいて並べ替えを行うが、このとき、量子化ステップサイズΔbを変換するときに乗算した2の累乗の指数に対応するビット数だけデータを左にビットシフトする処理を行う。具体的な処理の態様は以下の通りである。
【0153】
例えば、表4において、サブバンドLL5の量子化ステップサイズΔbは0.47163であるが、実際に画像データを量子化するときには、この値に22を乗算して1.88652を量子化ステップサイズΔbとして量子化を行う。よって、サブバンドLL5のデータは、量子化ステップサイズΔbの変換のために乗算した22の指数に対応して、2ビット左へシフトされる。同様に、サブバンドHL5では、量子化ステップサイズΔb=0,93204に2を乗算して、量子化ステップサイズΔb=1.86408として量子化を行う。よって、サブバンドHL5の符号化データADを、乗算した2の指数に対応して1ビット左へシフトされる。すなわち、2mを乗算した量子化ステップサイズΔbにより量子化した場合、該当するデータを指数mの分だけ左シフトすることで、データの優先度を調節するのである。
【0154】
表4に示す量子化ステップサイズΔbに基づいて、このようなビットシフトの処理を施した変換係数を図8に示す。図中、*印を伏した符号列は、量子化ステップサイズΔbの値を量子化に際して変換したものを示し、符号列の各ビットに伏した番号0,1,…,9は、当該ビットが属するビットプレーン番号を示している。ここで、LSB番号=0、MSB番号=9である。
【0155】
次に、各変換係数を、量子化に用いた量子化ステップサイズΔbの小さい順(昇順)に並べ替える。図8では、矢印で示した部分の量子化ステップサイズΔbの値が昇順となっていないため、これらを入れ替える。このようにして並べ替えを行った符号列を図9に示す。図9中の矢印は図8からその位置が変更された符号列を示している。
【0156】
また、カラーの画像の場合や視覚的重み付けを考慮して量子化ステップサイズΔbを計算した場合も同様の処理を行う。
【0157】
例えば、上述したように、量子化パラメータQp=16として、YUV422形式のカラーの画像データにおいて、Viewing distance(視距離)3000の視覚的重み付けを行ったときの輝度信号Y、色差信号UおよびVの量子化ステップサイズΔbは、表16〜表18に示した通りである。
【0158】
ここで、表16〜表18中の量子化ステップサイズΔbが1より小さいものは、上述したように2の累乗を乗算した上で量子化に用いられる。そして、変換後の量子化ステップサイズΔbによって量子化されたデータは、元の量子化ステップサイズΔbに乗算した2の累乗の指数に対応するビット数分だけ左シフトされる。
【0159】
カラー画像の場合、輝度信号Y、色差信号UおよびVのそれぞれについてデータが存在するが、これらのデータも信号毎に区別せず、全てのデータについて量子化ステップサイズΔbが昇順となるように並べ替えを行う。その結果得られた変換係数を図10に示す。図中、YLL5とは、輝度信号YのサブバンドLL5のデータであることを示している。
【0160】
このように、輝度信号Y、色差信号UおよびVの全てのデータについて、上述したようなビットシフトと並べ替えの処理を行う。
【0161】
量子化部14から出力された変換係数QDは、係数ビットモデリング部20と算術符号化部21とで、ブロックベースのエントロピー符号化を施され、符号量制御部22でレートを制御される。
【0162】
{符号量制御}
符号量制御部22では、量子化部14が量子化を行った後、係数ビットモデリング部20および算術符号化部21によって処理が施された符号化データADのレート制御を行う。
【0163】
符号量制御部22は、図10に示すように並べ替えおよびビットシフトが施された符号列に対して、所望のノイズ除去効果が得られるようにデータの切り捨てを行う。データの切り捨ては、右端のビットから順に行う。例えば、図10に示すVHL4の番号0のビットデータから、下方向へYHH5の番号0のビットデータ…と順に削除してゆく。そして、YHH1までのビットデータを切り捨てれば目標とするノイズ除去効果が得られるとすれば、該当する図10中の散点部のデータを切り捨てる。このとき、YHH1のデータまで切り捨てても所望のノイズ除去効果が得られないときは、続いて、VLL4の番号0のビットデータから、下方向へULL4の番号0のビットデータ、YLH5の番号0のビットデータ…と順に削除してゆく。
【0164】
尚、ビットデータ(ビットプレーン)は、図27に示すようにSIGパス,MRパス,CLパスに分解できる。符号量制御部22によるレート制御は、上述したようにビットプレーン単位で行う態様の他、パス単位で行う態様であっても構わない。
【0165】
この場合、符号量制御部22は、VHL4の番号0のCLパスから、下方向へYHH5の番号0のCLパス…と順にCLパスを削除してゆく。YHH1の番号0のCLパスまで削除しても所望のノイズ除去効果を得られないときは、続いて、VHL4に戻って、VHL4の番号0のMRパス、下方向へYHH5の番号0のMRパス…、YHH1の番号0のMRパス…と順にMRパスを削除してゆく。所望のノイズ除去効果が得られるまで、ビットデータの削除が続けられる。
【0166】
また、符号量制御部22に入力される段階で、既に利用者が意図する目標画質が得られていれば、上述したレート制御は行う必要はない。
【0167】
このように本実施の形態に係る圧縮符号化装置1によれば、量子化ステップサイズΔbの値に従って並べ替えとビットシフトを行い、さらに各サブバンドのビットデータまたはパスを、所望のノイズ除去効果が得られるまで(つまり所望の目標画質となるまで)、下位ビットから削除してゆくことで、レート制御を行う。これにより、画面全体に対して所望のノイズ除去効果を得ることができる。
【0168】
また、従来のように、レート・歪み最適化処理のために各符号化パスにおける歪み量を算出せずに済むため、リアルタイム性が高く、オーバーヘッドが大幅に低減した高効率のレート制御を実現できる。
【0169】
なお、量子化ステップサイズに基づく並び替え及びビットシフト処理は必ずしも量子化部14で実行される必要はなく、例えば符号量制御部22で実行されても良い。この場合、符号量制御部22は量子化ステップサイズΔbに基づいて符号化データADに並び替え及びビットシフトを施した後、データの切り捨てを行う。この場合、量子化部14がビットシフトに係る機能を有さない圧縮符号化装置においても、符号量制御部22の機能及び動作の変更のみで、本実施の形態を実現することができる。
【0170】
(第2の実施の形態)
{圧縮符号化装置}
図11は、本発明の第2の実施形態に係る圧縮符号化装置1の概略構成を示す機能ブロック図である。図1に示した第1の実施の形態に係る圧縮符号化装置1に、ROI部15が追加されている。
【0171】
尚、この圧縮符号化装置1を構成する各処理部10〜15,17,20〜23の全部または一部は、ハードウェアで構成されてもよいし、マイクロプロセッサを機能させるプログラムで構成されていてもよい。
【0172】
以下、本実施の形態における圧縮符号化の構成および動作について、第1の実施の形態と異なる点を中心に説明する。
【0173】
量子化部14は、DWT部13から入力する変換係数を、画質制御部23で決定される量子化パラメータに従って、スカラー量子化する機能を有する。また量子化部14は、ROI部15によって設定された関心領域(以下、ROI(Region Of Interest)部分と記す)に対して、ノイズ除去効果を得るためのビットシフト処理を行う機能も有している。ROI部15によるROI部分の設定方法、および量子化部14によるROI部分を考慮したビットシフト処理の方法については後述する。
【0174】
符号量制御部22は、画質制御部23からの指示に基づいて、算術符号化部21から入力する符号化データADのレートを制御する機能を有する。すなわち、符号量制御部22は、目標符号量(最終的な圧縮画像の符号量)を考慮しつつ、ROI部分に対してノイズ除去効果を得るために、符号化データADを、帯域成分単位あるいはビットプレーン単位、パス単位で優先度の低いものから順に切り捨てるというポスト量子化を実行する機能を有する。符号量制御部22でのレート制御の方法については後述する。
【0175】
{ROI部分の設定}
図11に示したROI部15は、画像データの中で後述するレート制御によるノイズ除去効果を得たい領域をROI部分として設定する。
【0176】
以下に、ROI部分の設定方法について説明する。
【0177】
ROI部15は、ウェーブレット変換が施された画像データに対して、重要な部分をROI部分として指定するためのマスク信号を与える。例えば、図12のような人物の画像データ(原画像)30において、美肌効果を得たい額より下の顔部分のみをROI部分とする場合、図13(a)の白抜き部分に示すように単一のマスク領域31を設定し、これをROI部分として指定する。
【0178】
このマスク領域31は、原画像30をディスプレイ装置の画面で見ながら、所謂マウス等のポインティング入力デバイスを用いて原画像30に対応して指定することができる。あるいは、画像データを解析することによって、例えば、肌色部分を含む所定領域を抽出する等、自動的にマスク領域31が指定される態様であっても構わない。
【0179】
尚、図13(a)は、原画像30に対して単一のROI部分を指定した例であるが、例えば図13(b)の白抜き部分に示すように、左目部分、右目部分、鼻および口を含む部分というように複数の領域をROI部分として指定してもよい。この場合、これらの部分はそれぞれ異なったマスク信号により規定される。
【0180】
そして、全てのROI部分についてのマスク領域31を除去した残りの部分が非ROI部分32(図13(a),(b))となる。
【0181】
ここで、複数のマスク信号が与えられた場合には、その複数のマスク信号に対して優先度をつけることもできる。この優先度が高いほど、情報量、例えばビットレートが低くなり、美肌効果が高くなることになる。
【0182】
そして、マスク領域31をウェーブレット平面に展開してマスク信号を生成する(図14)。
【0183】
ここで、マスク信号をウェーブレット平面に相当する部分に変換する方法はウェーブレット変換のフィルタのタップ数に依存する。
【0184】
例えば、図15のようにウェーブレット変換の演算処理においてリバーシブル(Reversible)5×3フィルタ(分解側のローパスフィルタのタップ数が5タップで分解側のハイパスフィルタのタップ数が3タップであるフィルタ)を適用するものとすると、原画像の偶数番目(2n番目)の画素データがROI部分として指定されている場合には、ローパスフィルタ(低域側)33のn番目のデータと、ハイパスフィルタ(高域側)34の(n−1)番目及びn番目のデータとがROI部分であるものとして、マスク信号をウェーブレット平面に展開する。また、原画像の奇数番目(2n+1番目)の画素データがROI部分として指定されている場合には、ローパスフィルタ(低域側)33のn番目及び(n+1)番目のデータと、ハイパスフィルタ(高域側)34の(n−1)番目、n番目及び(n+1)番目のデータとがROI部分であるものとして、マスク信号をウェーブレット平面に展開する。図15は原画像と最初の階層のウェーブレット平面との対応関係のみを示しているが、より深い階層の展開についても同様の再帰的な展開が行われる。
【0185】
あるいは、例えば、図16のようにウェーブレット変換の演算処理においてドビュッシー(Daubechies)9×7フィルタ(分解側のローパスフィルタのタップ数が9タップで分解側のハイパスフィルタのタップ数が7タップであるフィルタ)を適用するものとすると、原画像の偶数番目(2n番目)の画素データがROI部分として指定されている場合には、ローパスフィルタ(低域側)33の(n−1)番目、n番目及び(n+1)番目のデータと、ハイパスフィルタ(高域側)34の(n−2)番目、(n−1)番目、n番目及び(n+1)番目のデータとがROI部分であるものとして、マスク信号をウェーブレット平面に展開する。また、原画像の奇数番目(2n+1番目)の画素データがROI部分として指定されている場合には、ローパスフィルタ(低域側)33の(n−1)番目、n番目、(n+1)番目及び(n+2)番目のデータと、ハイパスフィルタ(高域側)34の(n−2)番目、(n−1)番目、n番目、(n+1)番目及び(n+2)番目のデータとがROI部分であるものとして、マスク信号をウェーブレット平面に展開する。図16は原画像と最初の階層のウェーブレット平面との対応関係のみを示しているが、より深い階層の展開についても同様の再帰的な展開が行われる。
【0186】
尚、図15及び図16の対応関係について、原画像の或る画素データとの対応による非ROI部分と、原画像の他の画素データとの対応によるROI部分とが重なり合う場合は、当該部分はROI部分であるものとして、マスク信号をウェーブレット平面に展開する。また、マスク信号の変換方法についてはリバーシブル(Reversible)5×3フィルタの場合と、ドビュッシー(Daubechies)9×7フィルタの場合の各々について説明したが、後述する符号量制御についてはドビュッシー(Daubechies)9×7フィルタを例にして説明している。
【0187】
図14(a)中の白抜き部分31aは、上記のようにして図13(a)に示したマスク領域(ROI部分)31をウェーブレット平面に展開した領域(以下「展開マスク領域」と称す)であり、この展開マスク領域31aに対応したマスク信号が生成され、ウェーブレット変換された画像データに与えられる。図14(a)中の符号32aは非ROI部分32がウェーブレット平面に展開された領域(以下「展開非マスク領域」と称す)を示している。またマスク領域(ROI部分)31と非ROI部分32とが重なり合う部分においてはマスク領域(ROI部分)31を、それぞれ選択して割り当てる。即ち、より高い優先度を選択して割り当てる。
【0188】
図13(b)に示したように複数のROI部分がマスク領域31として設定された場合には、図14(b)に示すようにウェーブレット平面上に展開されるマスク領域31aも複数になる。このようにウェーブレット平面上に展開された各マスク領域31aが複数である場合には、ここで優先度をつけることもできる。上述のように、原画像に対して複数のROI部分31を設定している場合は、各ROI部分31毎にウェーブレット平面上に展開マスク領域31aが生成される。一のROI部分31に対応する全ての展開マスク領域31aに対しては、当該ROI部分31の優先度に基づいた同一の優先度をつけ、最終的に全ての展開マスク領域31aに優先度を設定する。
【0189】
原画像に対して複数のROI部分31を設定している場合、ウェーブレット平面上のローパスフィルタ(低域側)33を通過した部分において、複数の展開マスク領域31aが重なり合うことがあり得る。この場合は、その重なり合った部分について、重なり合った複数の展開マスク領域31aのうち優先度の高い方の展開マスク領域31aであるとして優先度を決定する。
【0190】
ウェーブレット変換された画像データにおいて、どのマスク信号にもかからなかった部分が展開非マスク領域32aとなる。展開非マスク領域32aの優先度は、全ての展開マスク領域31aよりも低くなる。
【0191】
このように、複数のROI部分を設定し、各ROI部分について優先度を設定することも可能である。
【0192】
設定されたROI部分に係る情報は、量子化部14に入力される。
【0193】
{並べ替えおよびビットシフト}
図11に示した量子化部14は、量子化ステップサイズΔb、および上述したROI部15から通知されたROI部分の設定情報に基づいて、量子化データの並べ替えとビットシフト処理を行う。
【0194】
より小さい量子化ステップサイズΔbで量子化を行ったデータを優先してより多くの符号量を割り当て、レート制御による切り捨ての影響を受けないようにビットシフト処理を行うことは、上記第1の実施の形態と同様である。
【0195】
以下、ROI部分の設定情報に基づくビットシフト処理について説明する。
【0196】
上述したように、本発明では、白黒画像およびカラー画像、さらにこれらに視覚的重み付けを考慮した場合、の処理を行うことができるが、以下では、図10に示した量子化パラメータQp=16として、YUV422形式のカラーの画像データにおいて、Viewing distance(視距離)3000の視覚的重み付けを行ったときのカラー画像を用いて、処理の詳細を説明する。
【0197】
まず、ROI部15によって、上述したようにROI部分と非ROI部分が設定され、その設定情報が量子化部14に通知される。設定情報には、各画素データがROI部分であるか非ROI部分であるかを示す情報の他、複数のROI部分について優先度が設定された場合には当該優先度に係る情報も含まれる。
【0198】
量子化部14は、通知されたROI部分の設定情報に基づいて、図10の状態にある変換係数を、さらにROI部分と非ROI部分のデータに分ける。
【0199】
図10では、上述したように量子化ステップサイズΔbに基づいてビットシフトと並べ替えの処理を施された変換係数を、図5に示すサブバンド毎に示している。図5と図14の対応から分かるように、実際には、図10に示した各サブバンドの変換係数には、図14に示したROI部分31aと非ROI部分32aの両方のデータが含まれている。
【0200】
ここで、本実施の形態では、図17に示すように、画像データ上に4つのROI部分36〜39と非ROI部分40とが設定されたものとする。また、各ROI部分について、ROI部分36、ROI部分37、ROI部分38、ROI部分39の順に優先度が設定されたものとする。ROI部15は、これらのROI部分および優先度の情報に基づいて、上述したようにROI部分をウェーブレット平面へ展開する。
【0201】
ただし、ROI部分の展開は、DWTを施してウェーブレット平面に展開した画像データを所定の大きさの矩形領域に分割したコードブロック毎に行う。具体的には、例えば、各サブバンドを縦32画素×横32画素というように所定の大きさのコードブロックに分割し、コードブロック毎に、ROI部分であるか否かとROI部分である場合にはその優先度とが割り当てられて、ウェーブレット平面上に展開される。
【0202】
尚、複数のROI部分、またはROI部分と非ROI部分、の両方が、一のコードブロック内に含まれるような場合には、当該コードブロックに対しては、優先度の高いROI部分、またはROI部分、をそれぞれ選択して割り当てる。即ち、より高い優先度を選択して割り当てる。もしくは、一のコードブロック内に含まれるROI部分及び非ROI部分の割合に応じて、新たな優先度を設定してもよい。
【0203】
その結果、図17に示したROI部分および優先度の設定に対しては、図18に示すようなウェーブレット平面が展開されることとなる。図18において各サブバンドを構成している矩形がコードブロックを示している。
【0204】
このようにして設定されたROI部分に係る設定情報が、図11に示した量子化部14に入力される。
【0205】
図10では、図5に示すサブバンド毎に示しているが、図5と図18の対応から分かるように、実際には、図10に示した各サブバンドのデータには、図18に示した4つのROI部分36a〜39aと非ROI部分40aの全てのデータが含まれている。
【0206】
量子化部14は、ROI部15から通知されたROI部分の設定情報に基づいて、図10に示した符号列を、図19に示すように、4つのROI部分36〜39のデータと非ROI部分40のデータとに分離する。
【0207】
さらに、量子化部14は、ROI部分36〜39の各データを所定のビット数分だけ右方向へビットシフトする。このとき、複数のROI部分が設定されている場合には、その優先度に応じて、優先度が高いほどシフト量を大きく設定する。
【0208】
例えば図19では、非ROI部分40のデータに対して、最も優先度の低いROI部分39は1ビット(Vml=−1)、次に優先度が高いROI部分38は2ビット(Vml=−2)、次に優先度が高いROI部分37は3ビット(Vml=−3)、最も優先度の高いROI部分36は4ビット(Vml=−4)、それぞれ右方向へビットシフトされている。
【0209】
尚、ROI部分36〜39のデータおよび非ROI部分40のデータのシフト量は、予め設定された所定のビット数分であってもよいし、目標とするノイズ除去効果や圧縮符号化後の画像データの画質等に応じて、任意の値に変更する態様であっても構わない。
【0210】
また、ROI部分36〜39のデータおよび非ROI部分40のデータは、図19に示すように優先度の高い部分のデータから順に並べる態様に限るものではなく、例えば優先度の低い部分のデータから順に並べる態様等であっても構わない。データの並びは、例えば、後述する符号量制御においては下位ビットプレーンほどノイズ成分などの高調波成分を含んでいるため、目標画質に収めるためには下位ビットプレーンを対象にしたレート制御が有効である点、このときのレート制御によるデータの削除の順と各部分36〜40の優先度の関係、各部分36〜40の画像データの内容、等を考慮して決定する。
【0211】
量子化部14から出力された変換係数QDは、係数ビットモデリング部20と算術符号化部21とで、ブロックベースのエントロピー符号化を施され、符号量制御部22でレートを制御される。
【0212】
尚、非特許文献2で規格化されているJPEG2000 Part1では、Max−Shift法を用いる場合のみ、量子化部14でROI部分と非ROI部分との2種類に分けてシフトすることが許されている。従ってそのシフト量は、図29に示すように、ROI部分の最大値分を右シフトするということになる。ROIの形状はコードブロック単位である必要はなく、図14に示したROI部分31aと非ROI部分32aのウェーブレット平面状の係数単位でシフトしてもよい。
【0213】
そのため、量子化部14で複数のROIに関して任意のシフト量の優先度を設定するためには、非特許文献2で規格化されているJPEG2000 Part1を拡張する必要がある。各サブバンドのマスクの形状データと各ROIの優先度を示すシフト量を拡張データとして保存することになる。各サブバンドのマスクの形状データは、コードブロック単位でもよいし、ウェーブレット平面状の係数単位であってもよい。マスクの形状データをコードブロック単位で保存した場合は、保存すべきデータ量を減らすことができる。
【0214】
{符号量制御}
符号量制御部22では、量子化部14が量子化を行った後、係数ビットモデリング部20および算術符号化部21によって処理が施された符号化データADのレート制御を行う。
【0215】
符号量制御部22は、図19に示すように並べ替えおよびビットシフトが施された符号列に対して、目標のノイズ除去効果が得られるように(つまり目標の画質が得られるように)、データの切り捨てを行う。データの切り捨ては、右端のビットから順に行う。例えば、図19に示すROI部分36の符号列のVHL4の番号0のビットデータから、下方向へYHH5の番号0のビットデータ…と順に削除してゆく。そして、YHH1までのビットデータを切り捨てれば目標とするノイズ除去効果が達成されるとすれば、該当する図19中の散点部のデータを切り捨てる。このとき、YHH1のデータまで切り捨てても目標の画質が得られないときは、続いて、ROI部分36のVLL4の番号0のビットデータから、下方向へULL4の番号0のビットデータ、YLH5の番号0のビットデータ…と順に削除してゆく。ビットデータの削除は、目標画質が得られるまで続けられる。
【0216】
尚、ビットデータ(ビットプレーン)は、図27に示すようにSIGパス,MRパス,CLパスに分解できる。符号量制御部22によるレート制御は、上述したようにビットプレーン単位で行う態様の他、パス単位で行う態様であっても構わない。
【0217】
このように本実施の形態に係る圧縮符号化装置1によれば、量子化ステップサイズΔbの値に従って並べ替えとビットシフトを行い、さらにROI部分の設定情報に基づいて並べ替えとビットシフトを行った各サブバンドのビットデータまたはパスを、所望のノイズ除去効果が得られるまで(つまり所望の目標画質となるまで)、下位ビットから削除してゆくことで、レート制御を行う。その結果、ノイズ除去効果のある目標画質になるよう、厳密に制御することが可能となる。
【0218】
また、従来のように、レート・歪み最適化処理のために各符号化パスにおける歪み量を算出せずに済むため、リアルタイム性が高く、オーバーヘッドが大幅に低減した高効率のレート制御を実現できる。画像圧縮により、ノイズを除去した画像を生成することが可能となる。
【0219】
また、優先度の高いROI部分から順に、データの切り捨てが行われる。そのため、優先度の高いROI部分の情報がレート制御によってノイズ成分などの高周波成分を含んでいる部分を優先的に除去でき、優先度の高いROI部分のノイズ除去効果のある目標画質になるよう厳密に制御したまま圧縮符号化することが可能となる。
【0220】
例えば人間の肌などをROI部分としてレート制御することにより、肌のシワやシミなどをノイズ成分として除去することができるため、美肌効果を得ることができる。
【0221】
図20は、本実施の形態の変形例を示すブロック図である。図11に示した例と異なるのは、ROI部15で設定したROI部分に係る情報が、量子化部14ではなく符号量制御部22に入力される点である。
【0222】
図11に示した例では、量子化の段階で量子化ステップサイズに基づくデータの並べ替えおよびビットシフトの処理と、ROI部分の設定情報に基づくデータの並べ替えおよびビットシフトの処理と、を行っている。これに対し、図20に示した例では、量子化部14では、量子化ステップサイズに基づく量子化のみを行う。そして、量子化部14から出力され係数ビットモデリング部20および算術符号化部21によるブロックベースのエントロピー符号化を施された後、符号量制御部22がレート制御を行う際に、量子化ステップサイズに基づく並べ替えおよびビットシフトの処理と、ROI部分の設定情報に基づくデータの並べ替えおよびビットシフトの処理が行われる。ROI部分の設定情報に基づくデータの並べ替えおよびビットシフトの処理を、量子化部14ではなく符号量制御部22が行うということ以外は、図11に示した例と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0223】
図20に示した例では、並べ替えおよびビットシフトの処理を全て符号量制御部22で行っている。従って、量子化部14がビットシフトに係る機能を有さない圧縮符号化装置においても、符号量制御部22の機能および動作の変更のみで、本実施の形態を実現することができる。
【0224】
(第3の実施の形態)
第1の実施の形態では、量子化ステップサイズΔbを用いて量子化した後、符号量制御処理に基づいてノイズ除去効果(美肌効果)のある目標画質なるように、データの切り捨てを行った。各サブバンドの量子化に用いる量子化ステップサイズΔbは、式(1)と、合成フィルタ係数のノルムを用いた式(2)、または、非特許文献2に記載される"energy weighting factor"の数値及び合成フィルタ係数のノルムの積を用いた式(8)とによって決定されていた。
【0225】
これに対し、本実施の形態では、量子化ステップサイズΔbを用いて量子化した後、符号量制御処理において"energy weighting factor"の数値で異なる"Viewing distance(視距離)"を適応する場合についての実施例について述べる。
【0226】
以下、本実施の形態における圧縮符号化装置の構成および動作について、第1の実施の形態と異なる点を中心に説明する。
【0227】
符号量制御処理において異なる"Viewing distance(視距離)"を用いた量子化ステップサイズΔb’を次式(14)とする。
【0228】
【数14】

【0229】
ここで、Qp’は、符号量制御処理における目標画質情報に従って入力される正の数、すなわち量子化パラメータであって、高画質であるほど小さな値を入力する。Qb’は、合成フィルタ係数のノルムを用いた式(2)、または、非特許文献2に記載される"energy weighting factor"の数値と合成フィルタ係数のノルムの積を用いた式(8)と同様である。
【0230】
Δb’とΔbの関係を次式(15)のように規定する。
【0231】
【数15】

【0232】
ここで、αは、各サブバンドの量子化に用いる量子化ステップサイズΔbに対する、符号量制御処理における量子化ステップサイズΔb’の重みとなる。
【0233】
例えば、第1の実施の形態では、輝度信号Y、色差信号UおよびVの全てについて、量子化パラメータQp=16として、YUV422形式のカラーの画像データにおいてViewing distance(視距離)3000の視覚的重み付けを行ったときの輝度信号Y、色差信号UおよびVの量子化ステップサイズΔbは、表16〜表18に示されている。符号量制御処理において輝度信号Y、色差信号UおよびVの全てについて、量子化パラメータQp’=16として、YUV422形式のカラーの画像データにおいてViewing distance(視距離)1000の視覚的重み付けを行ったときの輝度信号Y、色差信号UおよびVの量子化ステップサイズΔb’になるようなαは、次式(16)となる。
【0234】
【数16】

【0235】
量子化ステップサイズΔb’の重みαは、符号量制御部22で画質制御部23から通知された量子化ステップサイズΔbと符号量制御部22に入力する目標画質情報とによって決定される。
【0236】
{並べ替えおよびビットシフト}
このように求められた、符号量制御処理において異なる"Viewing distance(視距離)"を用いた量子化ステップサイズΔb’と量子化ステップサイズの重みαとに基づいて、第1の実施の形態と同様に、並べ替えおよびビットシフトを行う。
【0237】
図1に示した符号量制御部22は、符号量制御部22内で計算された量子化ステップサイズの重みαを用いて、次式(17)のようにビットシフトするビット数Sを決定する。
【0238】
【数17】

【0239】
ここで、ROUNDは小数点を丸める関数であり、切捨て、切り上げ、四捨五入が考えられる。値が正の場合は左シフトし、負の場合は右シフトする。式(16)のViewing distance(視距離)3000の量子化ステップサイズΔbとViewing distance(視距離)1000の量子化ステップサイズΔb’で四捨五入した場合のビットシフトするビット数Sの例を表19〜表21に示す。
【0240】
【表19】

【0241】
【表20】

【0242】
【表21】

【0243】
次に、各符号列を、符号量制御部22で求められた量子化ステップサイズΔb’に基づいて、第1の実施の形態と同様にΔb’の小さい順(昇順)に並べ替える。表19〜表21のビットシフトするビット数Sに対応する量子化ステップサイズΔb’を表22〜表24に示す。量子化ステップサイズΔb’は並び替えにのみ用いられる。
【0244】
【表22】

【0245】
【表23】

【0246】
【表24】

【0247】
本実施の形態でも、画質制御部23では、量子化ステップサイズΔbを求め、これを量子化部14に通知する。そして、量子化部14では、各サブバンド毎に、通知された量子化ステップサイズΔbに従って量子化を行う。このとき、量子化ステップサイズΔbが1より小さければ、2の累乗を乗算して1以上の値にしてから利用するのは、上述したのと同様である。
【0248】
従って、実際のシフト量は上記のシフト量と式(17)のシフト量の合計になる。
【0249】
{符号量制御処理}
次に、図1に示した符号量制御部22の処理内容について説明する。第1の実施の形態との違いは、図21に示すように、量子化ステップサイズの重みαに基づいて決定されたビットシフトするビット数Sによるシフト分の違いだけである。図21に示すように、例えばYHH1に関しては8ビット左にシフトされており、UHH1に関しては4ビット左にシフトされている。
【0250】
この結果、符号量制御部22で"Viewing distance(視距離)"を自由に変更することができるため、圧縮用の量子化値で符号化した画像も、符号量制御部22でノイズ除去効果(美肌効果)のある目標画質となるよう厳密に制御することが可能である。
【0251】
なお、第1の実施の形態と同様に、並び替え及びビットシフトの処理を全て符号量制御部22で行っても良い。この場合、量子化部14がビットシフトに係る機能を有さない圧縮符号化装置においても、符号量制御部22の機能及び動作の変更のみで、本実施の形態を実現することができる。
【0252】
(第4の実施の形態)
第2の実施の形態では、量子化ステップサイズΔbを用いて量子化した後、各ROIで優先度をつけてビットシフトすることにより、符号量制御処理に基づいてノイズ除去効果(美肌効果)のある目標画質となるようにデータの切り捨てを行った。
【0253】
これに対し、本実施の形態では、第3の実施の形態と同様に、量子化ステップサイズΔbを用いて量子化した後、符号量制御処理において"energy weighting factor"の数値で異なる"Viewing distance(視距離)"を各ROIに適応する場合についての実施例について述べる。
【0254】
以下、本実施の形態における圧縮符号化の構成および動作について、第1〜第3の実施の形態と異なる点を中心に説明する。圧縮符号化装置、量子化、ROI部分の設定は、第2の実施の形態と同じである。
【0255】
{並べ替えおよびビットシフト}
図11または図20に示した量子化部14は、画質制御部23から通知された量子化ステップサイズに基づいて、入力された符号化データADの並べ替えおよびビットシフトの処理を行う。このとき、1以上になるように変換した量子化ステップサイズを利用して量子化した変換係数については、変換時に乗算した2の累乗の指数に対応するビット数だけ左方向にビットシフトする。
【0256】
例えば、第3の実施の形態と同様に、量子化パラメータQp=16として、YUV422形式のカラーの画像データにおいて、Viewing distance(視距離)3000の視覚的重み付けを行って量子化されたものに、符号量制御処理において量子化パラメータQp’=16として、YUV422形式のカラーの画像データにおいてViewing distance(視距離)1000の視覚的重み付け行った量子化ステップサイズに基づく並べ替えおよびビットシフトの処理を行うと、図22に示すような符号列が得られる。
【0257】
次に、図11に示した量子化部14または図20に示した符号量制御部22は、図10に示した符号列に対し、さらにROI部15から通知されたROI部分の設定情報に基づく並べ替えおよびビットシフトの処理を行う。非ROI部分よりもROI部分の符号量をより多く切り捨てるよう処理することで、符号化処理によるROI部分のノイズ除去効果(美肌効果)が期待できる。
【0258】
まず、図11に示した量子化部14または図20に示した符号量制御部22は、上述したように量子化ステップサイズΔb’に基づいて並べ替えとビットシフトの処理を施された符号化列を、ROI部15から通知されたROI部分の設定情報に基づいてROI部分と非ROI部分のデータに分ける。
【0259】
図5と図18の対応から分かるように、実際には、図10に示した各サブバンドのデータには、図18に示した4つのROI部分36a〜39aと非ROI部分40aの全てのデータが含まれている。
【0260】
図11に示した量子化部14または図20に示した符号量制御部22は、ROI部15から通知されたROI部分の設定情報に基づいて、図10に示した符号列を、図19に示したように、4つのROI部分36〜39のデータと非ROI部分40のデータとに分離する。
【0261】
各ROIを設定した領域に対し、符号量制御処理において異なる"Viewing distance(視距離)"を用いた量子化ステップサイズΔb’を用いるため、第3の実施の形態で用いたように、式(17)の量子化ステップサイズの重みαを用いてビットシフトするビット数Sを各ROIに適用する。
【0262】
図19では、各ROI部分に対して優先度をつけて全体をビットシフトしていただけであった。図21と同様に、各ROI部分に対しても、量子化ステップサイズΔbで用いた"Viewing distance(視距離)"を符号量制御処理において"energy weighting factor"の数値で異なる"Viewing distance(視距離)"に変更できる。
【0263】
図22では、ROI部分36,37についてはViewing distance 1000で、ROI部分38,39及び非ROI部分40についてはViewing distance 3000で、符号量制御処理を行っている。
【0264】
{符号量制御}
符号量制御部22は、図22に示したように並べ替えられた符号列に対して、ノイズ除去効果(美肌効果)のある目標画質となるようにデータの切り捨てを行う。データの切り捨ては、右端のビットから順に行う。例えば、図22に示すROI部分36のVHL4の番号0のビットデータから、下方向へYHH5の番号0のビットデータ…と順に削除してゆく。そして、YHH3までのビットデータを切り捨てれば目標画質になるとすれば、該当する部分のデータを切り捨てる。このとき、YHH3までのデータまで切り捨てても目標画質とならないときは、続いて、ROI部分36のVLL4の番号0のビットデータから、下方向へULL4の番号0のビットデータ…と順に削除してゆく。ビットデータの削除は、右側に位置するビットから順に、目標画質となるまで続けられる。
【0265】
第3の実施の形態と同様に第4の実施の形態においても、図11に示した量子化部14または図20に示した符号量制御部22で"Viewing distance(視距離)"を自由に変更することができるため、圧縮用の量子化値で符号化した画像も、ノイズ除去効果(美肌効果)のある目標画質となるよう厳密に制御することが可能となる。
【0266】
なお、第2の実施の形態と同様に、並び替え及びビットシフトの処理を全て符号量制御部22で行っても良い。この場合、量子化部14がビットシフトに係る機能を有さない圧縮符号化装置においても、符号量制御部22の機能及び動作の変更のみで、本実施の形態を実現することができる。
【符号の説明】
【0267】
1 圧縮符号化装置
10 DCレベルシフト部
11 色空間変換部
12 タイリング部
13 DWT部
14 量子化部
15 ROI部
17 ビットストリーム生成部
20 係数ビットモデリング部
21 算術符号化部
22 符号量制御部
23 画質制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像信号を圧縮符号化する圧縮符号化装置であって、
ウェーブレット変換により画像信号を高域成分と低域成分とに再帰的に帯域分割して複数の帯域成分の変換係数を生成出力するウェーブレット変換部と、
目標画質を示す量子化パラメータを、フィルタ係数のノルムで除算して量子化ステップサイズを求める画質制御部と、
前記画像信号に関心領域を設定する関心領域設定部と、
前記変換係数に対して、前記量子化ステップサイズに基づく量子化および並べ替えと、前記関心領域の設定情報に基づく並べ替えおよびビットシフトと、を施し、前記ビットシフトにおいて前記設定情報の優先度の高い関心領域ほど他の領域に比べて前記変換係数を下位ビット側にビットシフトする量子化部と、
前記量子化部から入力される前記変換係数をエントロピー符号化するエントロピー符号化部と、
所望のノイズ除去効果が得られるまで、前記エントロピー符号化部の出力する符号化データの一部を下位ビットから切り捨てるレート制御を行う符号量制御部と、
を備えることを特徴とする圧縮符号化装置。
【請求項2】
画像信号を圧縮符号化する圧縮符号化装置であって、
ウェーブレット変換により画像信号を高域成分と低域成分とに再帰的に帯域分割して複数の帯域成分の変換係数を生成出力するウェーブレット変換部と、
前記画像信号に関心領域を設定する関心領域設定部と、
前記変換係数の量子化を行う量子化部と、
前記量子化部から入力される前記変換係数をエントロピー符号化するエントロピー符号化部と、
前記エントロピー符号化部の出力する符号化データに対して、前記関心領域の設定情報に基づく並べ替えおよびビットシフトを施した符号列を生成し、所望のノイズ除去効果が得られるまで、前記符号列の一部を下位ビットから切り捨てるレート制御を行い、前記ビットシフトにおいて前記設定情報の優先度の高い関心領域ほど他の領域に比べて前記符号化データを下位ビット側にビットシフトする符号量制御部と、
を備えることを特徴とする圧縮符号化装置。
【請求項3】
請求項2に記載の圧縮符号化装置であって、さらに、
目標画質を示す量子化パラメータを、フィルタ係数のノルムで除算して量子化ステップサイズを求める画質制御部、
を備え、
前記量子化部は、前記量子化ステップサイズに基づいて前記変換係数の量子化を行い、
前記符号量制御部は、前記量子化ステップサイズに基づいて前記符号化データの並べ替えを行うことを特徴とする圧縮符号化装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の圧縮符号化装置であって、
前記関心領域設定部は、設定した各関心領域に優先度を付与し、
前記関心領域の設定情報に基づく前記ビットシフトのシフト量は前記優先度に応じて決定されることを特徴とする圧縮符号化装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の圧縮符号化装置であって、
前記符号量制御部は、前記レート制御の切り捨て対象をビットプレーン単位で決定することを特徴とする圧縮符号化装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の圧縮符号化装置であって、
前記符号量制御部は、前記レート制御の切り捨て対象をパス単位で決定することを特徴とする圧縮符号化装置。
【請求項7】
請求項1、請求項3ないし請求項6のいずれかに記載の圧縮符号化装置であって、
前記画質制御部は、フィルタ係数のノルムと人間の視覚特性に基づいて定められた所定の数値であるenergy weighting facotorとを乗算した値で、指定された前記量子化パラメータを除算して、人間の視覚特性を考慮した重み付けを施した前記量子化ステップサイズを求めることを特徴とする圧縮符号化装置。
【請求項8】
請求項1、請求項3ないし請求項7のいずれかに記載の圧縮符号化装置であって、
前記画質制御部は、前記量子化ステップサイズが所定の数値より小さいときは、前記量子化ステップサイズが前記所定の数値以上になる2の累乗を乗算して得られた値を前記量子化ステップサイズとすることを特徴とする圧縮符号化装置。
【請求項9】
請求項8に記載の圧縮符号化装置であって、
前記量子化ステップサイズが前記画質制御部において2の累乗を乗算して求めた値であるときは、当該量子化ステップサイズに基づく並べ替えを行うときに、前記変換係数または前記符号化データを、前記2の累乗の指数に対応するビット数分だけビットシフトすることを特徴とする圧縮符号化装置。
【請求項10】
請求項1または2に記載の圧縮符号化装置であって、
前記符号量制御部は、Viewing distanceを変更可能であり、変更後のViewing distanceについてのenergy weighting factorと、変更後のViewing distanceについてのenergy weighting factorの比に基づく量だけ、前記符号列をビットシフトすることを特徴とする圧縮符号化装置。
【請求項11】
画像信号を圧縮符号化する圧縮符号化方法であって、
(a)ウェーブレット変換により画像信号を高域成分と低域成分とに再帰的に帯域分割して複数の帯域成分の変換係数を生成する工程と、
(b)目標画質を示す量子化パラメータを、フィルタ係数のノルムで除算して量子化ステップサイズを求める工程と、
(c)前記画像信号に関心領域を設定する工程と、
(d)前記変換係数に対して、前記量子化ステップサイズに基づく量子化および並べ替えと、前記関心領域の設定情報に基づく並べ替えおよびビットシフトと、を施し、前記ビットシフトにおいて前記設定情報の優先度の高い関心領域ほど他の領域に比べて前記変換係数を下位ビット側にビットシフトする工程と、
(e)前記工程(d)の処理を施した前記変換係数をエントロピー符号化する工程と、
(f)所望のノイズ除去効果が得られるまで、前記工程(e)で符号化した符号化データの符号化データの一部を下位ビットから切り捨てるレート制御を行う工程と、
を備えることを特徴とする圧縮符号化方法。
【請求項12】
画像信号を圧縮符号化する圧縮符号化方法であって、
(a)ウェーブレット変換により画像信号を高域成分と低域成分とに再帰的に帯域分割して複数の帯域成分の変換係数を生成する工程と、
(b)前記画像信号に関心領域を設定する工程と、
(c)前記変換係数の量子化を行う工程と、
(d)前記工程(c)で量子化した前記変換係数をエントロピー符号化する工程と、
(e)前記工程(d)で符号化した符号化データに対して、前記関心領域の設定情報に基づく並べ替えおよびビットシフトを施した符号列を生成し、所望のノイズ除去効果が得られるまで、前記符号列の一部を下位ビットから切り捨てるレート制御を行い、前記ビットシフトにおいて前記設定情報の優先度の高い関心領域ほど他の領域に比べて前記符号化データを下位ビット側にビットシフトする工程と、
を備えることを特徴とする圧縮符号化方法。
【請求項13】
請求項12に記載の圧縮符号化方法であって、
前記量子化を行う工程は、
目標画質を示す量子化パラメータを、フィルタ係数のノルムで除算して量子化ステップサイズを求める工程と、
前記量子化ステップサイズに基づく前記変換係数の量子化を行う工程と、
を含み、
前記符号化データを並べ替える工程は、
前記量子化ステップサイズに基づく前記符号化データの並べ替えを行う工程、
を含むことを特徴とする圧縮符号化方法。
【請求項14】
請求項11ないし請求項13のいずれかに記載の圧縮符号化方法であって、
前記関心領域を設定する工程は、
設定した各関心領域に優先度を付与する工程、
を含み、
前記関心領域の設定情報に基づくビットシフトを行う工程は、
前記優先度に応じて決定された所定のビット数分だけビットシフトする工程、
を含むことを特徴とする圧縮符号化方法。
【請求項15】
請求項11ないし請求項14のいずれかに記載の圧縮符号化方法であって、
前記レート制御を行う工程は、
前記レート制御の切り捨て対象をビットプレーン単位で決定する工程、
を含むことを特徴とする圧縮符号化方法。
【請求項16】
請求項11ないし請求項14のいずれかに記載の圧縮符号化方法であって、
前記レート制御を行う工程は、
前記レート制御の切り捨て対象をパス単位で決定する工程、
を含むことを特徴とする圧縮符号化方法。
【請求項17】
請求項11、請求項13ないし請求項16のいずれかに記載の圧縮符号化方法であって、
前記量子化ステップサイズを求める工程は、
フィルタ係数のノルムと人間の視覚特性に基づいて定められた所定の数値であるenergy weighting facotorとを乗算した値で、指定された前記量子化パラメータを除算して、人間の視覚特性を考慮した重み付けを施した前記量子化ステップサイズを求める工程、
を含むことを特徴とする圧縮符号化方法。
【請求項18】
請求項11、請求項13ないし請求項17のいずれかに記載の圧縮符号化方法であって、
前記量子化ステップサイズを求める工程は、
前記量子化ステップサイズが所定の数値より小さいときは、前記量子化ステップサイズが前記所定の数値以上になる2の累乗を乗算して得られた値を前記量子化ステップサイズとする工程、
を含むことを特徴とする圧縮符号化方法。
【請求項19】
請求項18に記載の圧縮符号化方法であって、
前記量子化ステップサイズに基づく並べ替えを行う工程は、
前記量子化ステップサイズが2の累乗を乗算して求めた値であるときは、当該量子化ステップサイズで量子化された前記変換係数または前記符号化データを、前記2の累乗の指数に対応するビット数分だけビットシフトして前記符号列を生成する工程、
を含むことを特徴とする圧縮符号化方法。
【請求項20】
マイクロプロセッサに画像信号を圧縮符号化させるためのプログラムであって、
ウェーブレット変換により画像信号を高域成分と低域成分とに再帰的に帯域分割して複数の帯域成分の変換係数を生成出力するウェーブレット変換部と、
目標画質を示す量子化パラメータを、フィルタ係数のノルムで除算して量子化ステップサイズを求める画質制御部と、
前記画像信号に関心領域を設定する関心領域設定部と、
前記変換係数に対して、前記量子化ステップサイズに基づく量子化および並べ替えと、前記関心領域の設定情報に基づく並べ替えおよびビットシフトと、を施し、前記ビットシフトにおいて前記設定情報の優先度の高い関心領域ほど他の領域に比べて前記変換係数を下位ビット側にビットシフトする量子化部と、
前記量子化部から入力される前記変換係数をエントロピー符号化するエントロピー符号化部と、
所望のノイズ除去効果が得られるまで、前記エントロピー符号化部の出力する符号化データの一部を下位ビットから切り捨てるレート制御を行う符号量制御部として、
前記マイクロプロセッサを機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項21】
マイクロプロセッサに画像信号を圧縮符号化させるためのプログラムであって、
ウェーブレット変換により画像信号を高域成分と低域成分とに再帰的に帯域分割して複数の帯域成分の変換係数を生成出力するウェーブレット変換部と、
前記画像信号に関心領域を設定する関心領域設定部と、
前記変換係数の量子化を行う量子化部と、
前記量子化部から入力される前記変換係数をエントロピー符号化するエントロピー符号化部と、
前記エントロピー符号化部の出力する符号化データに対して、前記関心領域の設定情報に基づく並べ替えおよびビットシフトを施した符号列を生成し、所望のノイズ除去効果が得られるまで、前記符号列の一部を下位ビットから切り捨てるレート制御を行い、前記ビットシフトにおいて前記設定情報の優先度の高い関心領域ほど他の領域に比べて前記符号化データを下位ビット側にビットシフトする符号量制御部として、
前記マイクロプロセッサを機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項22】
請求項21に記載のプログラムであって、さらに、
目標画質を示す量子化パラメータを、フィルタ係数のノルムで除算して量子化ステップサイズを求める画質制御部として、
前記マイクロプロセッサを機能させると共に、
前記マイクロプロセッサを前記量子化部として機能させるときは、
前記量子化ステップサイズに基づいて前記変換係数の量子化を行うように機能させ、
前記マイクロプロセッサを前記符号量制御部として機能させるときは、
前記量子化ステップサイズに基づいて前記符号化データの並べ替えを行うように機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項23】
請求項20ないし請求項22のいずれかに記載のプログラムであって、
前記マイクロプロセッサを前記関心領域設定部として機能させるときに、
設定した各関心領域に優先度を付与するように機能させ、
前記マイクロプロセッサで前記関心領域の設定情報に基づく前記ビットシフトを行うときに、
前記優先度に応じて決定された所定のビット数分だけビットシフトするように機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項24】
請求項20ないし請求項23のいずれかに記載のプログラムであって、
前記マイクロプロセッサを前記符号量制御部として機能させるときは、
前記レート制御の切り捨て対象をビットプレーン単位で決定するように機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項25】
請求項20ないし請求項23のいずれかに記載のプログラムであって、
前記マイクロプロセッサを前記符号量制御部として機能させるときは、
前記レート制御の切り捨て対象をパス単位で決定するように機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項26】
請求項20、請求項22ないし請求項25のいずれかに記載のプログラムであって、
前記マイクロプロセッサを前記画質制御部として機能させるときは、
フィルタ係数のノルムと人間の視覚特性に基づいて定められた所定の数値であるenergy weighting facotorとを乗算した値で、指定された前記量子化パラメータを除算して、人間の視覚特性を考慮した重み付けを施した前記量子化ステップサイズを求めるように機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項27】
請求項20、請求項22ないし請求項26のいずれかに記載のプログラムであって、
前記マイクロプロセッサを前記画質制御部として機能させるときは、
前記量子化ステップサイズが所定の数値より小さいときは、前記量子化ステップサイズが前記所定の数値以上になる2の累乗を乗算して得られた値を前記量子化ステップサイズとするように機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項28】
請求項27に記載のプログラムであって、
前記マイクロプロセッサで前記量子化ステップサイズに基づく並べ替えを行うときに、
前記量子化ステップサイズが前記画質制御部において2の累乗を乗算して求めた値であるときは、前記変換係数または前記符号化データを、前記2の累乗の指数に対応するビット数分だけビットシフトするように機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2011−166795(P2011−166795A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48899(P2011−48899)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【分割の表示】特願2006−237961(P2006−237961)の分割
【原出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【出願人】(591128453)株式会社メガチップス (322)
【Fターム(参考)】