説明

圧迫装置

上下肢に巻きつける圧迫帯1であって、ポンプ(図示せず)によって膨張される空気袋3を具備することにより、前述の上下肢の静脈を空にするために前記上下肢の特定の領域を圧迫し、且つ、前記空気袋3の収縮による圧力開放の際、動脈系において血流が増加する。また、前記圧迫帯1は組織を通常、摂氏32度から42度の間で加温し、前記加温は、電気エネルギーを熱へ転換する導体物質5を介した電流を通過させることによって実現される。前記物質5と前記圧迫帯の外側の層6とは、内部の前記空気袋3を取り囲むそれらの周辺部で接合される。前記圧迫帯1は、動脈血流の改善に効果的であると立証されており、使用者にとってより快適な、前記上下肢の全体的な加温と、低圧での前記上下肢の一部の漸近的な圧迫とを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨張可能な圧迫装置、特に、動脈血流を改善するための膨張可能な圧迫装置に関する。
【背景技術】
【0002】
動脈血流を改善するための既存の膨張可能な圧迫装置は、膨張可能な空気袋を有する、巻きつける形の圧迫帯を具備しており、圧迫帯は、下肢に巻きつけられ、且つ、ポンプによって前記空気袋を膨張させることにより、下肢を圧迫する。通常、空気袋は、静脈圧を減少させながら下肢の静脈を空にするために高圧で急速に膨張され、その後、空気袋が急速に収縮すると、減少した静脈圧が動脈系における血流増加(充血反応(hyperaemic response))をもたらす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そのような膨張可能な圧迫装置は、時間がたてば、主要な血管の血流を増加させるとともに、動脈の疾病の症状を緩和することが知られているが、一般に、高圧での急速膨張を使用するので、使用者にとって不快であった。
【0004】
本発明は改善を試みるものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、本発明は、上下肢を取り巻く圧迫帯を具備し、前記圧迫帯は、覆われた上下肢の特定の領域を圧迫する、ポンプによって膨張可能な少なくとも1つの空気袋を有し、実質的に覆われた上下肢の全体を加温する手段をさらに有する膨張可能な圧迫装置を提供する。
【0006】
圧迫と加温とを組み合わせることは、ただ単に圧迫のみ、または、ただ単に加温のみを行うシステムより効率的である。前記装置は、圧迫位置で組織に作用するとともに静脈を空にすることにより、動脈での充血(hyperaemic)応答を促進し、それにより、動脈血流を改善する。時間がたつにつれて、疾患のある動脈の側副血流(collateral flow)は改善される。加温を付加することは、細動脈(arteriole)および毛細血管(capillaries)の血管拡張(vasodilatation)により表面組織への血流を促進する。この全体領域の加温が、局所的な圧迫の効果を増すとともに引き立たせ、総合的な効果は、それぞれの方法を単独で使用するより優れているというものである。組織を加温することは、潰瘍(ulcer)と損傷(lesion)が発生している部分への血流を増加させ、そうすることで、それらの治療に寄与する。圧迫は、加温によって加速が促進される代謝の生成物が蓄積することを妨げるとともに、充血(hyperemia)を促進することによって、酸素を豊富に含んだ血液の組織への再潅流(re-perfusion)を確実にする。したがって、圧迫と加温とを組み合わせることは、一般的な上下肢の体液の流れ、すなわち、動脈を経た上下肢への栄養分の流れ、および、損傷部での体液の流出の両方を著しく改善する。
【0007】
好ましくは、前記上下肢に加えられた圧力は、低く、且つ、漸近的であるので、本発明の圧迫装置は既存の圧迫装置より非常に低い圧力で動作する。
【0008】
加温に伴って前記空気袋が漸近的に膨張することは、はるかにより快適であり、且つ、使用者が十分に耐えられるとともに、患者が確実に応諾(patient compliance)するようになる。私たちは、圧迫帯で覆われた上下肢の全体領域の加温が、上下肢の一部だけの加温より良い血流測定をもたらすことを発見した。さらに、動脈血流は、圧迫帯で覆われた上下肢の特定の領域だけに圧迫することによって改善がなされ、結果として、小さな空気袋を要するだけの簡潔な圧迫帯と、患者からのさらに良い応諾とを得る。都合の良いことに、この圧迫と加温の組み合わせは、血流系と表面組織との両方に同時に作用する。
【0009】
好ましい実施形態において、前記加温手段は、前記圧迫帯の内側の層を形成する電気的に熱せられる可撓性の物質を具備する。また、前記加温は、前記圧迫帯の内側の層に取り付けられた発熱要素によって実現されても良い。加温する他の物質の可能性としては、導電性高分子、炭素繊維、およびフォイル(foil)である。好ましくは、前記圧迫帯の内側の層は、外側の層と、それらの周辺部において互いに接合し、周辺部はその層の間の前記空気袋を取り囲み、より好ましくは、前記圧迫帯の両方の層は、蒸気透過性があることにより、上下肢から大気への汗の透過を可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下の例によって、添付図面を参照して本発明を説明する。
図1は、本発明の好ましい実施形態の概略図である。
図2は、図1におけるX−Xに沿った圧迫帯の断面図を示す。
【0011】
図1を参照すると、前記装置は、下肢を取り巻き、且つ、フックファスナ2で適当な位置に固定される圧迫帯1から構成される。ここで、ジッパー、または、圧迫帯を滑らせてはめるような他の手段が使用されても良い。
【0012】
前記圧迫帯1は、膨張すると、局所的に、例えば、下肢のふくらはぎを圧迫する空気袋3を具備する。空気袋3は、不可欠の供給ホース4とともに互いに溶着されて気密空間を形成する可撓性プラスチックフィルムで構成される。空気袋3は、前記圧迫帯より小さく、前記圧迫帯によって覆われる下肢の特定の領域のみを圧迫するのに足りる、いかなる形状を取っても良い。前記空気袋3は、前記ホース4を通してポンプ(図示せず)を用いて所望の治療に適した圧力および継続時間で膨張する。前記空気袋3は、前記圧迫帯の外側の層6に取り付けられている。
【0013】
また、前記圧迫帯1は、物質5を介して電流を通過させることにり、組織を加温(通常摂氏32度から46度の間)するための熱伝導物質5を内側の層に具備する。可能性のある前記物質としては、導電性高分子と、炭素繊維と、ワイヤ要素と、フォイル(foil)である。他の実施形態において、前記内側の層5は、下肢の周囲全体に熱を提供するために、適切に絶縁されるとともに、圧迫帯の全体領域に広がる電気的発熱体を収容する物質5でも良い。前記圧迫帯の内側の層5および外側の層6は、その層の間の空気袋3を取り囲む、それらの周辺部において互いに接合する。圧迫帯1の外側の層6は、空気袋の膨張の際に伸張しないことによって、効果的な下肢の圧迫をもたらし、その結果、空気袋が膨張する時、同様に下肢を圧迫する周辺の物質に対し、反力もまた伝達される。
【0014】
外側および内側の層5,6の両方は、通気性を持つことによって、水蒸気の透過を可能にし、それによって、下肢の発汗を防ぐ。
【0015】
私たちは、1サイクル60mmHgの圧力を10−12秒間加えた後に続いて、静脈系の再充填を可能にする49秒間の減圧をすることが、動脈血流の改善に最も効果的であるということを発見した。また、私たちは、既存のシステムと比較すると、たった10−12秒間の60mmHgの低圧力の私たちのプロトコルだけが、充血(hyperaemic)応答を実現し、その結果、動脈血流を増加させるために必要とされるということを発見した。
【0016】
本発明は、覆われた下肢の一部だけに低圧力をかけるとともに、覆われた下肢全体を加温することにより動脈血流を改善することが立証されている、より快適な圧迫帯を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の好ましい実施形態の概略図である。
【図2】図1におけるX−Xに沿った圧迫帯の断面図を示す。
【符号の説明】
【0018】
1 圧迫帯
2 フックファスナ
3 空気袋
4 供給ホース
5 物質(熱伝導物質、内側の層)
6 外側の層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下肢を取り巻く圧迫帯を具備し、
前記圧迫帯は、
覆われた上下肢の特定の領域を圧迫する、ポンプによって膨張可能な少なくとも1つの空気袋を有し、
実質的に覆われた上下肢の全体を加温する手段をさらに有する膨張可能な圧迫装置。
【請求項2】
前記加温手段は、電気的に熱せられる可撓性の物質を具備する請求項1に記載の膨張可能な圧迫装置。
【請求項3】
前記加温手段は、発熱要素を具備する請求項1に記載の膨張可能な圧迫装置。
【請求項4】
前記圧迫帯は、前記加温手段を有する物質の内側の層を有し、
前記圧迫帯の前記内側の層は、前記圧迫帯の外側の層と、それらの周辺部において互いに接合し、周辺部はその層の間の前記空気袋を取り囲む請求項1または2または3のいずれか1項に記載の膨張可能な圧迫装置。
【請求項5】
前記圧迫帯の前記内側の層および前記外側の層の両方は、蒸気透過性を持つ請求項4に記載の膨張可能な圧迫装置。
【請求項6】
前記上下肢の前記圧迫は、10−12秒にわたって60mmHgである請求項1−5のいずれか1項に記載の膨張可能な圧迫装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−513668(P2007−513668A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543628(P2006−543628)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【国際出願番号】PCT/GB2004/005207
【国際公開番号】WO2005/055913
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(503003337)ハントリー テクノロジー ピーエルシー (18)
【Fターム(参考)】