圧送排出装置
【課題】貯溜槽9の給水系や排水系のトラブルによる、貯溜槽9からの排水のオーバーフローを、新たな水位検知手段を設けないで防止することを可能とした圧送排水装置を提供する。
【解決手段】貯溜槽9と、流量スイッチ36と、カッター10と、フロートスイッチ12と、排水ポンプ11と、制御部8とを備えた圧送排水装置であって、フロートスイッチ12が水位を検出できない状態の下で、制御部8が、カッター10を流量スイッチ36の検知信号に基づいて、予め設定された複数回、正常に作動させたとき、これに関連して、排水ポンプ11を強制運転させるように制御し、また貯溜槽9内にトイレ排水が流入しているにも拘わらず流量スイッチ36がこの流入を検知せずカッター10が運転状態とならない状態の下で、フロートスイッチ12が排水ポンプ11の起動水位a1を正常に検知することにより、制御部8が排水ポンプ11を作動させるように制御する構成である。
【解決手段】貯溜槽9と、流量スイッチ36と、カッター10と、フロートスイッチ12と、排水ポンプ11と、制御部8とを備えた圧送排水装置であって、フロートスイッチ12が水位を検出できない状態の下で、制御部8が、カッター10を流量スイッチ36の検知信号に基づいて、予め設定された複数回、正常に作動させたとき、これに関連して、排水ポンプ11を強制運転させるように制御し、また貯溜槽9内にトイレ排水が流入しているにも拘わらず流量スイッチ36がこの流入を検知せずカッター10が運転状態とならない状態の下で、フロートスイッチ12が排水ポンプ11の起動水位a1を正常に検知することにより、制御部8が排水ポンプ11を作動させるように制御する構成である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下などの低所で生じたトイレ排水などを任意高さの場所まで排出させることのできる圧送排水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トイレ排水や生活排水に使用される圧送排水装置は、排水を溜める貯溜槽、該貯溜槽内の排水を圧送により排出する排出ポンプ、該貯溜槽内に流入する排水中の汚物を粉砕するカッター、該貯溜槽内の排水の水位を検知する水位検知手段などを備え、地上又は地下に設置されるものであり、カッターの排水流入口は水洗便器の排水出口に適宜な排水路を介して連結される。水洗便器から排出されたトイレ排水中の汚物は、カッターで粉砕され、排水ポンプで排水と一緒に外方へ圧送される。このような圧送排水装置は、例えば特許文献1、2などに開示されている。
【0003】
この種の圧送排水装置においては、水洗便器を経て貯溜槽へ水を供給するための給水系のトラブルや、貯溜槽内の排水を外方へ圧送する排水系のトラブルによって発生する貯溜槽からの排水のオーバーフローを防止することが重要である。このため、特に特許文献1に開示された技術では、水位検知手段として、高価な感圧センサや電極式センサが用いられ、これらセンサにより貯溜槽内の排水の水位が検知され、この検知に基づいて排水ポンプの運転が制御されるようになっている。
【0004】
また特許文献2に開示された技術では、水位検知手段として、3つのフロートスイッチが用いられており、これらフロートスイッチの作動に関連して排水ポンプの運転が制御されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−28918号公報
【特許文献2】特許第3462892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、貯溜槽の給水系や排水系のトラブルによる、貯溜槽からの排水のオーバーフローを、新たな水位検知手段を設けないで防止することを可能とした圧送排水装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る圧送排水装置は、排水を貯溜するための貯溜槽と、該貯溜槽内にトイレ排水が流入していることを検知する流量スイッチと、該流量スイッチにより前記貯溜槽内にトイレ排水が流入している期間を検知し該期間中に運転状態となって該トイレ排水中の汚物を粉砕するカッターと、該貯溜槽内の排水の水位を検知するフロートスイッチと、該フロートスイッチの検知信号に基づき運転状態となって前記貯溜槽内に流入した排水を外方へ圧送する排水ポンプと、各部を制御する制御部とを備えた圧送排水装置であって、前記フロートスイッチが水位を検出できない状態の下で、前記制御部が前記カッターを前記流量スイッチの検知信号に基づいて、予め設定された複数回、正常に作動させたとき、これに関連して前記制御部が前記排水ポンプを強制運転させ該強制運転を監視するように制御し、また前記貯溜槽内にトイレ排水が流入しているにも拘わらず前記流量スイッチがこの流入を検知せず前記カッターが運転状態とならない状態の下で、前記フロートスイッチが前記排水ポンプの起動水位を正常に検知することにより、前記制御部が前記排水ポンプを作動させ該作動状況を監視するように制御することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フロートスイッチが貯溜槽内の水位上昇を検出できない状態となっても、この状態下でカッターが複数回、作動して貯溜槽内にトイレ排水が許容限界を超えない程度に貯まった時点で、排水ポンプが、該カッターの複数回の作動に基づいて強制運転され、貯溜槽内の排水が外方へ圧送されるのであり、したがって排水系のフロートスイッチのトラブルによる貯溜槽からの排水のオーバーフローが新たな他の水位検知手段を設けることなく防止できるのである。
【0009】
また貯溜槽へのトイレ排水の流入を検知するための給水系の検知手段である流量スイッチが必要な検知をすることができない状態下において、カッターが作動しないままトイレ排水が貯溜槽内に流入した場合に、フロートスイッチが排水ポンプの起動水位を正常に検知することにより、排水ポンプが運転され貯溜槽内の排水が外方へ圧送されて、貯溜槽からの排水のオーバーフローが防止されるのであり、また給水系の流量スイッチにトラブルが生じた状態の下での排水ポンプの作動の回数の計数に基づいて、新たな他の水位検知手段を設けることなく流量スイッチのトラブルを認識することが可能となって該トラブルに早期に対処することができるのであり、したがってカッターで粉砕されないまま貯溜槽内に流入したトイレ排水が排水ポンプの圧送管路内を閉塞する事態が回避され、該事態に起因した貯溜槽からの排水のオーバーフローが防止されるのである。
【0010】
以上のように、給水系の流量スイッチと、排水系のフロートスイッチとが相補的に互いのトラブルを監視し合うものとなって、新たな水位検知手段を設けることなく、貯溜槽からの排水のオーバーフローが防止されるのである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例に係る圧送排水装置を含むトイレ装置の施工図である。
【図2】上記圧送排水装置の本体部を示し、Aは平面図でBは正面図である。
【図3】上記本体部のカッター周辺を示し一部を断面とされた側面図である。
【図4】上記本体部の排水ポンプ周辺を示し一部を断面とされた側面図である。
【図5】上記トイレ装置の通常運転の場合の動作フロー図である。
【図6】上記通常運転時の各部の作動を示すタイムチャートである。
【図7】上記本体部のフロートスイッチが故障した場合におけるトイレ装置の動作フロー図である。
【図8】上記フロートスイッチが故障した場合におけるトイレ装置の作動を示すタイムチャートである。
【図9】上記本体部の流量スイッチが故障した場合におけるトイレ装置の動作フロー図である。
【図10】上記流量スイッチが故障した場合におけるトイレ装置の作動を示すタイムチャートである。
【図11】上記流量スイッチが故障した場合におけるトイレ装置の作動を示すタイムチャートである。
【図12】上記トイレ装置が排水不能状態となった場合における動作フローを示している。
【図13】上記トイレ装置の制御部による異常表示がされた後の動作フローを示している。
【図14】トイレ装置の他の施工例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態を次の実施例により詳細に説明する。
【実施例】
【0013】
図1は本発明の一実施例に係る圧送排水装置を含むトイレ装置の施工図である。
図1中、1はトイレ室であり、2は上水配管室である。これらトイレ室1及び上水配管室2はトイレ室1と同フロアに形成されている。トイレ室1よりも下層フロアに形成された3は機械室であり、トイレ室1よりも下層フロアに形成される。トイレ室1、上水配管室2及び機械室3には、本発明の一実施例である圧送排水装置4を含むトイレ装置が形成されている。トイレ室1の床面1a上には、洋式の水洗便器40が設置されると共に、この便器40の後部にロータンク5が配設されている。
【0014】
圧送排水装置4は、機械室3内の床面3a上に設置された本体部4Aと、上水配管室2内に設けられ市水ライン6に接続された電磁弁セット7と、トイレ室1内に設置された制御部8とからなっている。
【0015】
図2は本体部4Aを示し、Aは平面図でBは正面図である。図2にも示すように、本体部4Aは、内容積が例えば12リットル程度とされ内部が密閉状とされる箱形の貯溜槽9を備え、この貯溜槽9の上面壁9aにカッター10、排水ポンプ11、及び、フロートスイッチ12が水密状に装着されるほか排水ポンプ11の排水出口を接続される排水送出口13(図1参照)及び、通気口14が形成された構成となっている。
【0016】
図3はカッター10周辺を示し一部を断面とされた側面図である。カッター10は上面壁9aの上側に配設された駆動モータ10aと、貯溜槽9の内方に形成された粉砕部10bとからなる。粉砕部10bは駆動モータ10aの縦向き出力軸15の下端に固定された刃部16と、この刃部16の外周囲を取り巻いた状態の包囲体17とを備えている。
【0017】
刃部16は縦向き出力軸15を下方へ延長し縦向き出力軸15と同体にネジ固定された回転軸部16aと、この回転軸部16aの下面にネジ固定され該下面の縦向き出力軸15回りの3等分位置のそれぞれから斜め下方へ向け且つ回転軸部16aの回転半径外方へ向け延伸された切刃16bとからなる。
【0018】
包囲体17は貯溜槽9内に位置され平面視5角形以上の多角形とされた有底筒体であって、切刃16の真横や下方となる部位17aを下方へ向かうほどすぼまるような漏斗状とされ且つ、切刃16bよりも高い回転軸部16aの横方を包囲した縦向き多角筒形の側周部17bを備え、この側周部17bにトイレ排水の流入口17cとトイレ排水の流出孔17dとを形成されている。
【0019】
このさい、流出孔17dは貯溜槽9内に貯溜されるトイレ排水の水位と関連した高さとされるのであり、具体的には、流出孔17dの最下部は駆動モータ11aが自動的に起動されるときのトイレ排水の水位(起動水位)a1と同一あるいはこれよりも高く設定されている。そして、流入口17cの最下部は流出孔17dのそれよりも低く設定されている。また包囲体17の内方で流入口17cと刃部16との間には流入口17cからのトイレ排水の真っ直ぐな流入を妨げるための邪魔板18がほぼ起立状に固設されている。したがって、流入口17cから包囲体17内へ流入したトイレ排水は邪魔板18の案内作用により先ず下向きへ流動して切刃16b周辺に到達し、その後、上向きへ流動して流出口17dから包囲体17の外方へ流出するようになる。
【0020】
図2などに示す貯溜槽9の側面壁9bには排水ホース接続口19が外方への張出し状に形成されている。この排水ホース接続口19は貯溜槽9内において包囲体17の流入口17cに図3に示す通水管20を介して連通されている。
【0021】
図4は排水ポンプ11周辺を示し一部を断面とされた側面図である。排水ポンプ11は、前記カッター10に隣接して上面壁9aの上側に位置された駆動モータ11aと、貯溜槽9の内方に形成されたポンプ本体部11bとからなる。駆動モータ11aは上面壁9aの開口b1を覆う中間板21及び水封部材22を介して上面壁9aに位置保持されている。ポンプ本体部11bはトイレ排水に送液エネルギを付与するポンプ室23と、このポンプ室23の真下に形成された給水口23aと、ポンプ室23から吐出されるトイレ排水の通過する吐出内管23bとを備えており、吐出内管23bの末端は中間板21に設けられた接続口部材24に接続されている。ポンプ本体部11bの下部には複数の脚部25が形成されており、これら脚部25が貯溜槽9の底面壁9c上面に当接されてポンプ本体部11bは安定的に固定された状態となっている。
【0022】
図2に示すフロートスイッチ12は貯溜槽9内に貯溜したトイレ排水の水位が図3中の起動水位a1に達したことを検知するためのものであり、水面に浮いた図示しないフロート部が水面の上下移動に連動して変位することにより自身のスイッチ部が入り切り作動する構造となっている。
【0023】
接続口部材24の上側で貯溜槽9の上方には吐出管26が接続されており、この吐出管26は長さ途中にチャッキ弁27やボールバルブ28が設けられている。また吐出管26にはチャッキ弁27をバイパスするためのドレン管29が形成されており、このドレン管29の長さ途中にはドレン弁30が設けられており、このドレン弁30を開放することにより、チャッキ弁27の下流側の吐出管26内のトイレ排水が貯溜槽9内に流下する構成となっている。また通気口14には管接続部材14aが連通状に固定されている。また、トイレの手洗い水を直接、貯溜槽9に受ける流入口19aが、オプショナルとして設けられることがある。以上が本体部4Aの構成である。
【0024】
図1に示すように、便器40の排水出口40aは排水管31及び排水ホース32を介して本体部4Aのホース接続口19と連通されている。また本体部4Aの吐出管26の端末には排水圧送管33が接続されており、この排水圧送管33の端末が図示しない汚水槽まで導かれている。また管接続部材14Aには通気立ち上がり管34が連通されており、その端末は通風性の良好な場所に導かれている。
【0025】
電磁弁セット7は水入口側から順に給水電磁弁35及び流量スイッチ36が設けられており、電磁弁セット7の水出口がロータンク5に設けられたボールタップ37の水入口に給水管38を介して接続されている。ロータンク5には洗浄レバー39が設けられており、この洗浄レバー39を揺動操作して開放することによりロータンク5内に貯溜された水が便器40内に供給される。
【0026】
制御部8は、電源41から電力を供給されると共に、カッター10、排水ポンプ11、フロートスイッチ12、給水電磁弁35及び流量スイッチ36のそれぞれと信号線で接続され必要な制御を行う構成とされている。
【0027】
上記したトイレ装置の作動について図を参照しながら下記A:、B:、C:、D:、E:、F:、G:の各場合に分けて説明する。以下の説明で各部を動作させる主体が特に明記されてないとき、各部は基本的に制御部8により制御され動作する。
A:各部が正常に作動する通常運転の場合
図5は通常運転の場合のトイレ装置の動作フロー図である。
【0028】
トイレ装置の管理者により制御部8の電源スイッチが入り状態とされることにより、ステップs101にて制御部8は各部が故障発生中であるか否かを判断し、否(No)であれば、ステップs102にて給水電磁弁35を開放する。これにより、ボールタップ37はロータンク5内の給水停止水位まで市水を流入させる。このとき流量スイッチ36は入り(オン)状態となるが、この使用準備段階での流量スイッチ36の入り作動に関連した作動は生じないように設計されている。こうして使用準備が完了した状態の下で、トイレ装置の使用者が洗浄レバー37を開放操作することにより、ロータンク5内の水が便器40内に流入し、トイレ排水(汚物などを含む排水)が排水管31及び排水ホース32を通じて貯溜槽9内に流動し、貯溜槽9内では通水管20及び流入口17cを経てカッター10の粉砕部10b内に到達する。
【0029】
一方では、ロータンク5内の水の流出に関連して、ボールタップ37が給水電磁弁35や流量スイッチ36を通じロータンク5内の給水停止水位まで市水を流入させる。ステップs103において、ロータンク5内への市水の流入を流量スイッチ36が検知して入り作動し、ステップs104にて制御部8に組み込まれたカッター連続作動回数カウンタの計数値(カッター連続カウント)が「1」だけ増加され、続いてステップs105にて制御部8に組み込まれた排水ポンプ連続作動回数カウンタの計数値(排水ポンプ連続カウント)が「0」にリセットされ、続いてステップs106にてカッター10が起動(オン)される。
【0030】
次にステップs107にて、カッター連続カウントが「4」に達しているか否かが判断され、否であれば、ステップs108にてカッター10が起動されてから180秒が経過したか否かが判断され、否(No)であればステップs109にて流量スイッチ36が切り(オフ)状態であるか否かが判断され、是(Yes)であればステップs110にてカッター10が停止(オフ)される。これにより、今回の洗浄レバー39の開放操作によるカッター10の作動は終了する。ステップs109にて流量スイッチ36が入り状態である限り、及び、カッター連続カウントが「4」に到達しない限り、及び、カッター10が180秒間の運転を終了するまで、ステップs106からステップs107までの作動が繰り返される。
【0031】
以後、トイレ装置の使用者が洗浄レバー39を開放操作するごとに、ステップs103からステップs110までの作動が繰り返されるのである。
【0032】
次にカッター10の運転によるトイレ排水の粉砕処理について、図3を参照して説明する。
流入口17cから包囲体17内に流入したトイレ排水は水平方向の流動を邪魔板18で遮られ下方へ案内され、切刃16b周辺に到達する。そして、縦向き出力軸15回りへ回転される切刃16bがその周辺に達したトイレットペーパや汚物を粉砕する。このように粉砕された汚物などは後続して流入口17cから流入するトイレ排水に押されて上昇され、流出口17dに達した後、切刃の遠心力が加わり、ここから包囲体17の外方へ流出される。このようなU字形経路を経たトイレ排水の流動過程における汚物などの、切刃16bによる粉砕はトイレ排水の直線的な流動過程における粉砕よりも効果的に行われ、汚物などの微細化が促進される。
【0033】
トイレ装置が使用されるたびに、貯溜槽9内には粉砕された汚物を含むトイレ排水が流入して貯溜槽9内のトイレ排水の水位が上昇する。そしてステップs111にて、この水位が予め定めた高さ(起動水位a1)に達したか否かが判断されるのであり、起動水位a1に達したときはフロートスイッチ12が入り(オン)状態となる。
【0034】
ステップs112にて、フロートスイッチ12が入り状態となったことに関連して、排水ポンプ連続カウントが「1」増加し、続いてステップs113にて、カッター連続カウントが「0」にリセットされ、続いてステップs114にて、制御部8に組み込まれた排水ポンプ強制連続カウンタの計数値(排水ポンプ強制連続カウント)が「0」にリセットされる。
【0035】
ステップs115において、排水ポンプ連続カウントが「2」に達したか否かが判断され、否であれば、ステップs116にて排水ポンプ11が起動(オン)される。
【0036】
ステップs117では、排水ポンプ11が起動してから15秒が経過したか否かが判断され、是であれば、ステップs118にて排水ポンプ11が停止(オフ)される。これにより、フロートスイッチ12の1回の入り状態による排水ポンプ11の作動が終了し、貯溜槽9内に残留する排水は殆ど無くなり、フロートスイッチ12は切り状態となる。
【0037】
次に通常運転時の各部の作動を図6に基づいてさらに具体的且つ時系列的に説明する。
図6は通常運転時の各部の作動を示すタイムチャートである。
図6中、縦軸方向の最上段から最下段までの8つの各段には、上から順に、カッター連続カウントのチャートCH1、排水ポンプ連続カウントのチャートCH2、排水ポンプ強制連続カウントの欄(チャートは存在しない)、流量スイッチ36の作動状態を示すチャートCH3、フロートスイッチ12の作動状態を示すチャートCH4、カッター10の作動状態を示すチャートCH5、排水ポンプ11の作動状態を示すチャートCH6、給水電磁弁35の作動状態を示すチャートCH7を示している。横軸は経過時間を示し、この経過時間を表す符号taに添えられている数字はこの経過時間taの大きさの順を示すもので経過時間taの大きいものほど大きなものとなっている。
【0038】
チャートCH7は、制御部8の電源スイッチを時間ta0に入り状態にされたことにより給水電磁弁35が開放され、その後は、継続して開放状態となっていることを示している。チャートCH3及びチャートCH5は洗浄レバー39が時間ta1、ta3、ta5、ta9、ta11のそれぞれの時点で開放操作されたことを示しており、また時間ta1から時間ta2までの期間、時間ta3から時間ta4までの期間、時間ta5から時間ta7までの期間、時間ta9から時間ta10までの期間、及び、時間ta11から時間ta12までの期間のそれぞれは、流量スイッチ36が入り状態に、そしてカッター10が運転状態になっていることを示している。チャートCH1は時間ta1から時間ta6までの期間内にフロートスイッチ12が入り状態となることなく、流量スイッチ36が3回の洗浄レバー39の開放操作(トイレ装置の使用)により3回入り状態となったことを示しており、また時間ta9から時間ta12までの期間内にフロートスイッチ12が入り状態となることなく、流量スイッチ36が2回の洗浄レバー39の開放操作(トイレ装置の使用)により2回入り状態となったことを示している。ここでチャートCH1内の数はカッター連続カウントの数であり、チャートCH1の計数値「1」が時間ta9から時間ta11までの長い期間となっているのは、流量スイッチ36の入り状態の時間間隔(トイレ使用間隔)が大きいからである。チャートCH4はフロートスイッチ12が時間ta6と時間ta13で一定時間だけ検知状態となったことを示している。チャートCH6は排水ポンプ11がフロートスイッチ12の各入り時点ta6,ta13から15秒間運転されたことを示している。チャートCH2内の数は排水ポンプ連続カウントの数がフロートスイッチ12の入り時点ta6からその後の流量スイッチ36の入り時点ta9まで、及びフロートスイッチ12の入り時点ta13以降、1であることを示している。以上の各チャートは各部が正常に作動していることを意味している。
【0039】
B:排水ポンプ11が強制運転される場合(フロートスイッチ12が故障した場合)
例えば、フロートスイッチ12の可動部の固着や、スイッチ部の損傷などにより、フロートスイッチ12が貯溜槽9の水位上昇を検出できない切り状態に固定された場合には、排水ポンプ11が運転状態とならないため、トイレ排水が便器40から溢れ出る恐れがある。このような事態に対処するべく、本実施例では各部が制御部8により次のように制御される。
【0040】
図7はフロートスイッチ12が故障した場合におけるトイレ装置の動作フロー図である。図8はフロートスイッチ12が故障した場合における各部の作動を示すタイムチャートである。図中、一部図5のフローを記述している(破線、左側)。
流量スイッチ36が入り状態となるたびに、カッター10が起動されると同時に、カッター連続カウントが「1」だけ増加される。ここでは、フロートスイッチ12が入り状態とならない故障が一時的に生じているため、トイレ装置が使用されて流量スイッチ36が入り状態となるごとにカッター連続カウントの数はゼロにリセットされることなく増加していく。
【0041】
また貯溜槽9の有効貯溜水量が12リットルであり、一回の洗浄レバー39の開放操作により6リットルのトイレ排水が便器40の排水出口40aから流出されるものとする。そして、貯溜槽9内のトイレ排水の量が12リットルに到達したとき、排水ポンプ11が1回運転されるように設定されているものとする。
【0042】
このような条件の下で、洗浄レバー39が4回、開放操作されると、図8中のチャートCH3及びチャートCH5で示すように、時間tb1から時間tb2まで、時間tb3から時間tb4まで、時間tb5から時間tb6まで、時間tb7から時間tb10までの各期間中、流量スイッチ36が入り状態に、そしてカッター10が運転状態となる。そしてチャートCH1が示すように時間tb7でカッター連続カウントが「4」になる。そして、ステップs107にてカッター連続カウントの数が4であることが判別され、ステップs201にてチャートCH8で示すように排水ポンプ強制連続カウントが、ゼロに「1」を加算した数である「1」となる。
【0043】
次にステップs202にて、カッター連続カウントが「0」にリセットされる。そしてステップs203にて排水ポンプ強制連続カウントが「3」であるか否かが判断され、否であれば、ステップ116に移行し、チャートCH5で示すように排水ポンプ11が時間tb8からtb9までの15秒間、運転されるのであり、以後、通常運転時と同様に図5中のステップs117及びステップs118の作動が実行される。
【0044】
この後、トイレ装置が使用されて洗浄レバー39が2回、開放操作されると、図8中のチャートCH3及びチャートCH5で示すように、時間tb11から時間tb12まで、時間tb13から時間tb14までの各期間中、流量スイッチ36が入り状態に、そしてカッター10が運転状態となる。そしてチャートCH1で示すように時間tb13からカッター連続カウントが「2」になる。この時点で、フロートスイッチ12の故障が修復されていると、以後は図5に示す通常運転時のステップs111からステップs118までの場合と同様に作動するのであり、即ち、チャートCH4で示すように、フロートスイッチ12が起動水位a1を検知して時間tb15から暫くの期間、入り状態となり、これに関連して、排水ポンプ連続カウントの数がチャートCH2で示すように時間tb15から「1」となり、またチャートCH6で示すように排水ポンプ11が時間tb15からtb16までの15秒間、運転される。以後は図5に示す通常運転時の作動フローに従って各部が作動する。
【0045】
一方、フロートスイッチ12が故障状態にある下で、トイレ装置が使用されて洗浄レバー39が12回、開放操作されると、排水ポンプ強制連続カウントの数が「3」となるのであり、ステップs203にてこのことが判別される。そして、ステップs204にてフロートスイッチ異常を意味する異常表示がされ、また警報出力が発せられる。
【0046】
C:流量スイッチ36が常時入り状態となる場合(流量スイッチ36が故障した場合)
この場合には、カッター10が連続運転され、駆動モータ10aとしての電動機が温度上昇し或いは焼損する恐れがある。このような事態に対処するべく、本実施例では各部が制御部8により次のように制御される。
【0047】
図9は流量スイッチが故障した場合におけるトイレ装置の動作フロー図である。図10は流量スイッチが故障した場合における各部の作動を示すタイムチャートである。図中、一部図5のフローを記述している(破線、下側)。
先と同様に、貯溜槽9の有効貯溜水量が12リットルであり、一回の洗浄レバー39の開放操作により6リットルのトイレ排水が便器40の排水出口40aから流出されるものとする。そして、貯溜槽9内のトイレ排水の量が12リットルに到達したとき、排水ポンプ11が1回運転されるように設定されているものとする。
【0048】
このような条件の下で、通常運転時に、トイレ装置が使用されて洗浄レバー39が一回目の開放操作を実行されると、図10中のチャートCH3で示すように、流量スイッチ36が時間tc1から時間tc2まで入り状態となり、その後、トイレ装置が使用されて洗浄レバー39が二回目の開放操作を実行され、ここで流量スイッチ36が常時入り状態となる故障が発生したとき、流量スイッチ36は時間tc3の後に入り状態を継続される。一方では通常運転時の場合と同様に、チャートCH5で示すように、カッター10が時間tc1から時間tc2までの期間、及び、時間tc3以降に運転状態となる。これに関連してカッター連続カウントは時間tc1から時間tc3まで「1」となり、時間tc3以降では「2」となる。
【0049】
上記のような作動では、ステップs108にて、流量スイッチ36が時間tc3で入り状態となってから180秒が経過したか否かが判断され、是であれば、ステップs301にて時間tc4以降、流量スイッチ異常を意味する異常表示がされる。
【0050】
D:流量スイッチ36が常時切り状態となる場合(流量スイッチ36が故障した場合)
この場合には、カッター10が起動できないため、トイレ排水に含まれる汚物などが破砕されず、通水管20や粉砕部10b内に汚物などが詰まり、トイレ装置が使用不能となる恐れがある。このような事態に対処する必要があり、本実施例ではこのような故障の場合、制御部8により各部は次のように作動される。
【0051】
図11は流量スイッチ36が故障した場合における各部の作動を示すタイムチャートである。
この場合は貯溜槽9の有効貯溜水量が比較的大きく、カッター10が例えば3回以上連続して運転されたときに排水ポンプ11が1回運転される程度に、トイレ排水が貯溜槽9内に溜まるものとする。
【0052】
このような条件の下で、通常運転時に、トイレ装置が使用されて洗浄レバー39が一回目の開放操作を実行されると、図11中のチャートCH3及びチャートCH5で示すように、時間td1から時間td2まで、時間td3から時間td4までの各期間に、流量スイッチ36が入り状態に、そしてカッター10が運転状態となる。これに関連して、チャートCH1で示すように、カッター連続カウントが時間td3以降「2」となる。
【0053】
この後、流量スイッチ36が常時切り状態となる故障が発生し、この故障状態の下でトイレ装置が使用されて、洗浄レバー39が3回目の開放操作を実行されても、流量スイッチ36は常時切り状態を維持される。したがって、この後はカッター10は起動されることが不可能となり、トイレ排水は粉砕されることなく貯溜槽9内に流入し、トイレ排水の水位が上昇することになる。そして、チャートCH4で示すように、トイレ排水が起動水位a1に達した時点である時間td5で、フロートスイッチ12が暫くの期間入り状態となり、チャートCH2で示すように排水ポンプ連続カウントが時間td5から「1」となり、またチャートCH6で示すように排水ポンプ11が時間td5から時間td6までの15秒間、運転状態となる。
【0054】
この後、トイレ装置が使用されて洗浄レバー39が開放操作されると、流量スイッチ36が切り状態を維持されたまま貯溜槽9内のトイレ排水の水位が上昇する。そして、トイレ排水が時間td7で再び起動水位a1に達すると、チャートCH4で示すようにフロートスイッチ12が入り状態となる。これに関連して、チャートCH2で示すように、排水ポンプ連続カウントが時間td7以降「2」に増加する。
【0055】
上記のような作動中、図9中のステップs115に到達したとき、ここで排水ポンプ連続カウントの数が「2」になっていることが判別され、ステップs301にて時間td8以降、流量スイッチ異常を意味する異常表示がされる。
【0056】
E:排水不能状態となった場合
例えば、排水ポンプ11の駆動モータ11aのオートカット発生や、排水性能の低下、及び、排水圧送管33の詰まりによる排水不能に陥った場合は、貯溜槽9内の水位が上昇して、便器40内の水位が上昇し、汚物などが便器40から溢れ出る恐れがある。このような事態に対処するべく、本実施例では各部が制御部により次のように制御される。
【0057】
図12は排水不能状態となった場合におけるトイレ装置の作動フローを示している。
ステップs111にてフロートスイッチ12が入り(オン)状態であるか否かが判断され、是であれば、ステップs401にてフロートスイッチ12が切り状態であるか否かが判断される。このステップs401での判断が否であれば、フロートスイッチ12が入り状態となってから10秒間が経過したか否かが判断され、否であれば、ステップs401に戻る。こうして、フロートスイッチ12が切り状態とならない限り、10秒間に亘って、フロートスイッチ12が切り状態となったか否かが判断される。そして、ステップs402にて10秒間が経過してもフロートスイッチ12が切り状態とならないときは、制御部8は排水不能状態であると判断し、ステップs403にて貯溜槽9内が満水となっていることを意味する異常表示がされる。
【0058】
F:図7中のステップs204、図9中のステップs301、又は、図12中のステップs403に至った場合
図13は各ステップs204、s301、s403に至った後のトイレ装置の作動フローを示している。
ステップs501にて、図10や図11中のチャートCH7で示すように給水電磁弁35が時間tc4、時間td8で切り状態となってロータンク5への給水が停止され、また警報出力が発せられると共に、トイレ装置の自動運転が停止される。ステップs502にて排水ポンプ連続カウントが「0」にリセットされ、ステップs503にてカッター連続カウントが「0」にリセットされ、ステップs504にて排水ポンプ強制連続カウントが「0」にリセットされる。
【0059】
G:その他
(1)排水ポンプ11やカッター10が過負荷となった場合には、制御部8はこれに組み込まれた排水ポンプ11用のサーマルリレーやカッター10用のサーマルリレーによりこれらの過負荷を検出して、警報出力を発すると共に、自動運転を停止させる。
【0060】
(2)排水ポンプ11やカッター10の電気回路の漏電の場合には、制御部8はこれに設けられた漏電ブレーカにより排水ポンプ11やカッター10の漏電を検出して、警報出力を発すると共に、自動運転を停止させる。
【0061】
(3)制御部8に組み込まれたプログラマブルコントローラ(シーケンサ)が故障した場合には制御部8はこの故障を従来同様に検出して、警報出力を発すると共に自動運転を停止させる。
【0062】
図14はトイレ装置の他の施工例を示す図である。
図1の施工例においては、トイレ室1及び上水配管室2は同フロアに形成され、機械室3は下層フロアに形成されていたのに対し、この例においては機械室3も同フロアに形成されている。トイレ室1の便器40は床上排水便器であり、圧送排水装置4は便器40と同フロアに設置されている。尚、図中、図1と同じものは同一符号を付してある。
【符号の説明】
【0063】
4 圧送排水装置
8 制御部
9 貯溜槽
10 カッター
11 排水ポンプ
12 フロートスイッチ
15 縦向き回転軸(縦軸)
16 刃部
16b 切刃
17 包囲体
17c 流入口
17d 流出孔
36 流量スイッチ
a1 排水ポンプ11の起動水位
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下などの低所で生じたトイレ排水などを任意高さの場所まで排出させることのできる圧送排水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トイレ排水や生活排水に使用される圧送排水装置は、排水を溜める貯溜槽、該貯溜槽内の排水を圧送により排出する排出ポンプ、該貯溜槽内に流入する排水中の汚物を粉砕するカッター、該貯溜槽内の排水の水位を検知する水位検知手段などを備え、地上又は地下に設置されるものであり、カッターの排水流入口は水洗便器の排水出口に適宜な排水路を介して連結される。水洗便器から排出されたトイレ排水中の汚物は、カッターで粉砕され、排水ポンプで排水と一緒に外方へ圧送される。このような圧送排水装置は、例えば特許文献1、2などに開示されている。
【0003】
この種の圧送排水装置においては、水洗便器を経て貯溜槽へ水を供給するための給水系のトラブルや、貯溜槽内の排水を外方へ圧送する排水系のトラブルによって発生する貯溜槽からの排水のオーバーフローを防止することが重要である。このため、特に特許文献1に開示された技術では、水位検知手段として、高価な感圧センサや電極式センサが用いられ、これらセンサにより貯溜槽内の排水の水位が検知され、この検知に基づいて排水ポンプの運転が制御されるようになっている。
【0004】
また特許文献2に開示された技術では、水位検知手段として、3つのフロートスイッチが用いられており、これらフロートスイッチの作動に関連して排水ポンプの運転が制御されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−28918号公報
【特許文献2】特許第3462892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、貯溜槽の給水系や排水系のトラブルによる、貯溜槽からの排水のオーバーフローを、新たな水位検知手段を設けないで防止することを可能とした圧送排水装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る圧送排水装置は、排水を貯溜するための貯溜槽と、該貯溜槽内にトイレ排水が流入していることを検知する流量スイッチと、該流量スイッチにより前記貯溜槽内にトイレ排水が流入している期間を検知し該期間中に運転状態となって該トイレ排水中の汚物を粉砕するカッターと、該貯溜槽内の排水の水位を検知するフロートスイッチと、該フロートスイッチの検知信号に基づき運転状態となって前記貯溜槽内に流入した排水を外方へ圧送する排水ポンプと、各部を制御する制御部とを備えた圧送排水装置であって、前記フロートスイッチが水位を検出できない状態の下で、前記制御部が前記カッターを前記流量スイッチの検知信号に基づいて、予め設定された複数回、正常に作動させたとき、これに関連して前記制御部が前記排水ポンプを強制運転させ該強制運転を監視するように制御し、また前記貯溜槽内にトイレ排水が流入しているにも拘わらず前記流量スイッチがこの流入を検知せず前記カッターが運転状態とならない状態の下で、前記フロートスイッチが前記排水ポンプの起動水位を正常に検知することにより、前記制御部が前記排水ポンプを作動させ該作動状況を監視するように制御することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フロートスイッチが貯溜槽内の水位上昇を検出できない状態となっても、この状態下でカッターが複数回、作動して貯溜槽内にトイレ排水が許容限界を超えない程度に貯まった時点で、排水ポンプが、該カッターの複数回の作動に基づいて強制運転され、貯溜槽内の排水が外方へ圧送されるのであり、したがって排水系のフロートスイッチのトラブルによる貯溜槽からの排水のオーバーフローが新たな他の水位検知手段を設けることなく防止できるのである。
【0009】
また貯溜槽へのトイレ排水の流入を検知するための給水系の検知手段である流量スイッチが必要な検知をすることができない状態下において、カッターが作動しないままトイレ排水が貯溜槽内に流入した場合に、フロートスイッチが排水ポンプの起動水位を正常に検知することにより、排水ポンプが運転され貯溜槽内の排水が外方へ圧送されて、貯溜槽からの排水のオーバーフローが防止されるのであり、また給水系の流量スイッチにトラブルが生じた状態の下での排水ポンプの作動の回数の計数に基づいて、新たな他の水位検知手段を設けることなく流量スイッチのトラブルを認識することが可能となって該トラブルに早期に対処することができるのであり、したがってカッターで粉砕されないまま貯溜槽内に流入したトイレ排水が排水ポンプの圧送管路内を閉塞する事態が回避され、該事態に起因した貯溜槽からの排水のオーバーフローが防止されるのである。
【0010】
以上のように、給水系の流量スイッチと、排水系のフロートスイッチとが相補的に互いのトラブルを監視し合うものとなって、新たな水位検知手段を設けることなく、貯溜槽からの排水のオーバーフローが防止されるのである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例に係る圧送排水装置を含むトイレ装置の施工図である。
【図2】上記圧送排水装置の本体部を示し、Aは平面図でBは正面図である。
【図3】上記本体部のカッター周辺を示し一部を断面とされた側面図である。
【図4】上記本体部の排水ポンプ周辺を示し一部を断面とされた側面図である。
【図5】上記トイレ装置の通常運転の場合の動作フロー図である。
【図6】上記通常運転時の各部の作動を示すタイムチャートである。
【図7】上記本体部のフロートスイッチが故障した場合におけるトイレ装置の動作フロー図である。
【図8】上記フロートスイッチが故障した場合におけるトイレ装置の作動を示すタイムチャートである。
【図9】上記本体部の流量スイッチが故障した場合におけるトイレ装置の動作フロー図である。
【図10】上記流量スイッチが故障した場合におけるトイレ装置の作動を示すタイムチャートである。
【図11】上記流量スイッチが故障した場合におけるトイレ装置の作動を示すタイムチャートである。
【図12】上記トイレ装置が排水不能状態となった場合における動作フローを示している。
【図13】上記トイレ装置の制御部による異常表示がされた後の動作フローを示している。
【図14】トイレ装置の他の施工例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態を次の実施例により詳細に説明する。
【実施例】
【0013】
図1は本発明の一実施例に係る圧送排水装置を含むトイレ装置の施工図である。
図1中、1はトイレ室であり、2は上水配管室である。これらトイレ室1及び上水配管室2はトイレ室1と同フロアに形成されている。トイレ室1よりも下層フロアに形成された3は機械室であり、トイレ室1よりも下層フロアに形成される。トイレ室1、上水配管室2及び機械室3には、本発明の一実施例である圧送排水装置4を含むトイレ装置が形成されている。トイレ室1の床面1a上には、洋式の水洗便器40が設置されると共に、この便器40の後部にロータンク5が配設されている。
【0014】
圧送排水装置4は、機械室3内の床面3a上に設置された本体部4Aと、上水配管室2内に設けられ市水ライン6に接続された電磁弁セット7と、トイレ室1内に設置された制御部8とからなっている。
【0015】
図2は本体部4Aを示し、Aは平面図でBは正面図である。図2にも示すように、本体部4Aは、内容積が例えば12リットル程度とされ内部が密閉状とされる箱形の貯溜槽9を備え、この貯溜槽9の上面壁9aにカッター10、排水ポンプ11、及び、フロートスイッチ12が水密状に装着されるほか排水ポンプ11の排水出口を接続される排水送出口13(図1参照)及び、通気口14が形成された構成となっている。
【0016】
図3はカッター10周辺を示し一部を断面とされた側面図である。カッター10は上面壁9aの上側に配設された駆動モータ10aと、貯溜槽9の内方に形成された粉砕部10bとからなる。粉砕部10bは駆動モータ10aの縦向き出力軸15の下端に固定された刃部16と、この刃部16の外周囲を取り巻いた状態の包囲体17とを備えている。
【0017】
刃部16は縦向き出力軸15を下方へ延長し縦向き出力軸15と同体にネジ固定された回転軸部16aと、この回転軸部16aの下面にネジ固定され該下面の縦向き出力軸15回りの3等分位置のそれぞれから斜め下方へ向け且つ回転軸部16aの回転半径外方へ向け延伸された切刃16bとからなる。
【0018】
包囲体17は貯溜槽9内に位置され平面視5角形以上の多角形とされた有底筒体であって、切刃16の真横や下方となる部位17aを下方へ向かうほどすぼまるような漏斗状とされ且つ、切刃16bよりも高い回転軸部16aの横方を包囲した縦向き多角筒形の側周部17bを備え、この側周部17bにトイレ排水の流入口17cとトイレ排水の流出孔17dとを形成されている。
【0019】
このさい、流出孔17dは貯溜槽9内に貯溜されるトイレ排水の水位と関連した高さとされるのであり、具体的には、流出孔17dの最下部は駆動モータ11aが自動的に起動されるときのトイレ排水の水位(起動水位)a1と同一あるいはこれよりも高く設定されている。そして、流入口17cの最下部は流出孔17dのそれよりも低く設定されている。また包囲体17の内方で流入口17cと刃部16との間には流入口17cからのトイレ排水の真っ直ぐな流入を妨げるための邪魔板18がほぼ起立状に固設されている。したがって、流入口17cから包囲体17内へ流入したトイレ排水は邪魔板18の案内作用により先ず下向きへ流動して切刃16b周辺に到達し、その後、上向きへ流動して流出口17dから包囲体17の外方へ流出するようになる。
【0020】
図2などに示す貯溜槽9の側面壁9bには排水ホース接続口19が外方への張出し状に形成されている。この排水ホース接続口19は貯溜槽9内において包囲体17の流入口17cに図3に示す通水管20を介して連通されている。
【0021】
図4は排水ポンプ11周辺を示し一部を断面とされた側面図である。排水ポンプ11は、前記カッター10に隣接して上面壁9aの上側に位置された駆動モータ11aと、貯溜槽9の内方に形成されたポンプ本体部11bとからなる。駆動モータ11aは上面壁9aの開口b1を覆う中間板21及び水封部材22を介して上面壁9aに位置保持されている。ポンプ本体部11bはトイレ排水に送液エネルギを付与するポンプ室23と、このポンプ室23の真下に形成された給水口23aと、ポンプ室23から吐出されるトイレ排水の通過する吐出内管23bとを備えており、吐出内管23bの末端は中間板21に設けられた接続口部材24に接続されている。ポンプ本体部11bの下部には複数の脚部25が形成されており、これら脚部25が貯溜槽9の底面壁9c上面に当接されてポンプ本体部11bは安定的に固定された状態となっている。
【0022】
図2に示すフロートスイッチ12は貯溜槽9内に貯溜したトイレ排水の水位が図3中の起動水位a1に達したことを検知するためのものであり、水面に浮いた図示しないフロート部が水面の上下移動に連動して変位することにより自身のスイッチ部が入り切り作動する構造となっている。
【0023】
接続口部材24の上側で貯溜槽9の上方には吐出管26が接続されており、この吐出管26は長さ途中にチャッキ弁27やボールバルブ28が設けられている。また吐出管26にはチャッキ弁27をバイパスするためのドレン管29が形成されており、このドレン管29の長さ途中にはドレン弁30が設けられており、このドレン弁30を開放することにより、チャッキ弁27の下流側の吐出管26内のトイレ排水が貯溜槽9内に流下する構成となっている。また通気口14には管接続部材14aが連通状に固定されている。また、トイレの手洗い水を直接、貯溜槽9に受ける流入口19aが、オプショナルとして設けられることがある。以上が本体部4Aの構成である。
【0024】
図1に示すように、便器40の排水出口40aは排水管31及び排水ホース32を介して本体部4Aのホース接続口19と連通されている。また本体部4Aの吐出管26の端末には排水圧送管33が接続されており、この排水圧送管33の端末が図示しない汚水槽まで導かれている。また管接続部材14Aには通気立ち上がり管34が連通されており、その端末は通風性の良好な場所に導かれている。
【0025】
電磁弁セット7は水入口側から順に給水電磁弁35及び流量スイッチ36が設けられており、電磁弁セット7の水出口がロータンク5に設けられたボールタップ37の水入口に給水管38を介して接続されている。ロータンク5には洗浄レバー39が設けられており、この洗浄レバー39を揺動操作して開放することによりロータンク5内に貯溜された水が便器40内に供給される。
【0026】
制御部8は、電源41から電力を供給されると共に、カッター10、排水ポンプ11、フロートスイッチ12、給水電磁弁35及び流量スイッチ36のそれぞれと信号線で接続され必要な制御を行う構成とされている。
【0027】
上記したトイレ装置の作動について図を参照しながら下記A:、B:、C:、D:、E:、F:、G:の各場合に分けて説明する。以下の説明で各部を動作させる主体が特に明記されてないとき、各部は基本的に制御部8により制御され動作する。
A:各部が正常に作動する通常運転の場合
図5は通常運転の場合のトイレ装置の動作フロー図である。
【0028】
トイレ装置の管理者により制御部8の電源スイッチが入り状態とされることにより、ステップs101にて制御部8は各部が故障発生中であるか否かを判断し、否(No)であれば、ステップs102にて給水電磁弁35を開放する。これにより、ボールタップ37はロータンク5内の給水停止水位まで市水を流入させる。このとき流量スイッチ36は入り(オン)状態となるが、この使用準備段階での流量スイッチ36の入り作動に関連した作動は生じないように設計されている。こうして使用準備が完了した状態の下で、トイレ装置の使用者が洗浄レバー37を開放操作することにより、ロータンク5内の水が便器40内に流入し、トイレ排水(汚物などを含む排水)が排水管31及び排水ホース32を通じて貯溜槽9内に流動し、貯溜槽9内では通水管20及び流入口17cを経てカッター10の粉砕部10b内に到達する。
【0029】
一方では、ロータンク5内の水の流出に関連して、ボールタップ37が給水電磁弁35や流量スイッチ36を通じロータンク5内の給水停止水位まで市水を流入させる。ステップs103において、ロータンク5内への市水の流入を流量スイッチ36が検知して入り作動し、ステップs104にて制御部8に組み込まれたカッター連続作動回数カウンタの計数値(カッター連続カウント)が「1」だけ増加され、続いてステップs105にて制御部8に組み込まれた排水ポンプ連続作動回数カウンタの計数値(排水ポンプ連続カウント)が「0」にリセットされ、続いてステップs106にてカッター10が起動(オン)される。
【0030】
次にステップs107にて、カッター連続カウントが「4」に達しているか否かが判断され、否であれば、ステップs108にてカッター10が起動されてから180秒が経過したか否かが判断され、否(No)であればステップs109にて流量スイッチ36が切り(オフ)状態であるか否かが判断され、是(Yes)であればステップs110にてカッター10が停止(オフ)される。これにより、今回の洗浄レバー39の開放操作によるカッター10の作動は終了する。ステップs109にて流量スイッチ36が入り状態である限り、及び、カッター連続カウントが「4」に到達しない限り、及び、カッター10が180秒間の運転を終了するまで、ステップs106からステップs107までの作動が繰り返される。
【0031】
以後、トイレ装置の使用者が洗浄レバー39を開放操作するごとに、ステップs103からステップs110までの作動が繰り返されるのである。
【0032】
次にカッター10の運転によるトイレ排水の粉砕処理について、図3を参照して説明する。
流入口17cから包囲体17内に流入したトイレ排水は水平方向の流動を邪魔板18で遮られ下方へ案内され、切刃16b周辺に到達する。そして、縦向き出力軸15回りへ回転される切刃16bがその周辺に達したトイレットペーパや汚物を粉砕する。このように粉砕された汚物などは後続して流入口17cから流入するトイレ排水に押されて上昇され、流出口17dに達した後、切刃の遠心力が加わり、ここから包囲体17の外方へ流出される。このようなU字形経路を経たトイレ排水の流動過程における汚物などの、切刃16bによる粉砕はトイレ排水の直線的な流動過程における粉砕よりも効果的に行われ、汚物などの微細化が促進される。
【0033】
トイレ装置が使用されるたびに、貯溜槽9内には粉砕された汚物を含むトイレ排水が流入して貯溜槽9内のトイレ排水の水位が上昇する。そしてステップs111にて、この水位が予め定めた高さ(起動水位a1)に達したか否かが判断されるのであり、起動水位a1に達したときはフロートスイッチ12が入り(オン)状態となる。
【0034】
ステップs112にて、フロートスイッチ12が入り状態となったことに関連して、排水ポンプ連続カウントが「1」増加し、続いてステップs113にて、カッター連続カウントが「0」にリセットされ、続いてステップs114にて、制御部8に組み込まれた排水ポンプ強制連続カウンタの計数値(排水ポンプ強制連続カウント)が「0」にリセットされる。
【0035】
ステップs115において、排水ポンプ連続カウントが「2」に達したか否かが判断され、否であれば、ステップs116にて排水ポンプ11が起動(オン)される。
【0036】
ステップs117では、排水ポンプ11が起動してから15秒が経過したか否かが判断され、是であれば、ステップs118にて排水ポンプ11が停止(オフ)される。これにより、フロートスイッチ12の1回の入り状態による排水ポンプ11の作動が終了し、貯溜槽9内に残留する排水は殆ど無くなり、フロートスイッチ12は切り状態となる。
【0037】
次に通常運転時の各部の作動を図6に基づいてさらに具体的且つ時系列的に説明する。
図6は通常運転時の各部の作動を示すタイムチャートである。
図6中、縦軸方向の最上段から最下段までの8つの各段には、上から順に、カッター連続カウントのチャートCH1、排水ポンプ連続カウントのチャートCH2、排水ポンプ強制連続カウントの欄(チャートは存在しない)、流量スイッチ36の作動状態を示すチャートCH3、フロートスイッチ12の作動状態を示すチャートCH4、カッター10の作動状態を示すチャートCH5、排水ポンプ11の作動状態を示すチャートCH6、給水電磁弁35の作動状態を示すチャートCH7を示している。横軸は経過時間を示し、この経過時間を表す符号taに添えられている数字はこの経過時間taの大きさの順を示すもので経過時間taの大きいものほど大きなものとなっている。
【0038】
チャートCH7は、制御部8の電源スイッチを時間ta0に入り状態にされたことにより給水電磁弁35が開放され、その後は、継続して開放状態となっていることを示している。チャートCH3及びチャートCH5は洗浄レバー39が時間ta1、ta3、ta5、ta9、ta11のそれぞれの時点で開放操作されたことを示しており、また時間ta1から時間ta2までの期間、時間ta3から時間ta4までの期間、時間ta5から時間ta7までの期間、時間ta9から時間ta10までの期間、及び、時間ta11から時間ta12までの期間のそれぞれは、流量スイッチ36が入り状態に、そしてカッター10が運転状態になっていることを示している。チャートCH1は時間ta1から時間ta6までの期間内にフロートスイッチ12が入り状態となることなく、流量スイッチ36が3回の洗浄レバー39の開放操作(トイレ装置の使用)により3回入り状態となったことを示しており、また時間ta9から時間ta12までの期間内にフロートスイッチ12が入り状態となることなく、流量スイッチ36が2回の洗浄レバー39の開放操作(トイレ装置の使用)により2回入り状態となったことを示している。ここでチャートCH1内の数はカッター連続カウントの数であり、チャートCH1の計数値「1」が時間ta9から時間ta11までの長い期間となっているのは、流量スイッチ36の入り状態の時間間隔(トイレ使用間隔)が大きいからである。チャートCH4はフロートスイッチ12が時間ta6と時間ta13で一定時間だけ検知状態となったことを示している。チャートCH6は排水ポンプ11がフロートスイッチ12の各入り時点ta6,ta13から15秒間運転されたことを示している。チャートCH2内の数は排水ポンプ連続カウントの数がフロートスイッチ12の入り時点ta6からその後の流量スイッチ36の入り時点ta9まで、及びフロートスイッチ12の入り時点ta13以降、1であることを示している。以上の各チャートは各部が正常に作動していることを意味している。
【0039】
B:排水ポンプ11が強制運転される場合(フロートスイッチ12が故障した場合)
例えば、フロートスイッチ12の可動部の固着や、スイッチ部の損傷などにより、フロートスイッチ12が貯溜槽9の水位上昇を検出できない切り状態に固定された場合には、排水ポンプ11が運転状態とならないため、トイレ排水が便器40から溢れ出る恐れがある。このような事態に対処するべく、本実施例では各部が制御部8により次のように制御される。
【0040】
図7はフロートスイッチ12が故障した場合におけるトイレ装置の動作フロー図である。図8はフロートスイッチ12が故障した場合における各部の作動を示すタイムチャートである。図中、一部図5のフローを記述している(破線、左側)。
流量スイッチ36が入り状態となるたびに、カッター10が起動されると同時に、カッター連続カウントが「1」だけ増加される。ここでは、フロートスイッチ12が入り状態とならない故障が一時的に生じているため、トイレ装置が使用されて流量スイッチ36が入り状態となるごとにカッター連続カウントの数はゼロにリセットされることなく増加していく。
【0041】
また貯溜槽9の有効貯溜水量が12リットルであり、一回の洗浄レバー39の開放操作により6リットルのトイレ排水が便器40の排水出口40aから流出されるものとする。そして、貯溜槽9内のトイレ排水の量が12リットルに到達したとき、排水ポンプ11が1回運転されるように設定されているものとする。
【0042】
このような条件の下で、洗浄レバー39が4回、開放操作されると、図8中のチャートCH3及びチャートCH5で示すように、時間tb1から時間tb2まで、時間tb3から時間tb4まで、時間tb5から時間tb6まで、時間tb7から時間tb10までの各期間中、流量スイッチ36が入り状態に、そしてカッター10が運転状態となる。そしてチャートCH1が示すように時間tb7でカッター連続カウントが「4」になる。そして、ステップs107にてカッター連続カウントの数が4であることが判別され、ステップs201にてチャートCH8で示すように排水ポンプ強制連続カウントが、ゼロに「1」を加算した数である「1」となる。
【0043】
次にステップs202にて、カッター連続カウントが「0」にリセットされる。そしてステップs203にて排水ポンプ強制連続カウントが「3」であるか否かが判断され、否であれば、ステップ116に移行し、チャートCH5で示すように排水ポンプ11が時間tb8からtb9までの15秒間、運転されるのであり、以後、通常運転時と同様に図5中のステップs117及びステップs118の作動が実行される。
【0044】
この後、トイレ装置が使用されて洗浄レバー39が2回、開放操作されると、図8中のチャートCH3及びチャートCH5で示すように、時間tb11から時間tb12まで、時間tb13から時間tb14までの各期間中、流量スイッチ36が入り状態に、そしてカッター10が運転状態となる。そしてチャートCH1で示すように時間tb13からカッター連続カウントが「2」になる。この時点で、フロートスイッチ12の故障が修復されていると、以後は図5に示す通常運転時のステップs111からステップs118までの場合と同様に作動するのであり、即ち、チャートCH4で示すように、フロートスイッチ12が起動水位a1を検知して時間tb15から暫くの期間、入り状態となり、これに関連して、排水ポンプ連続カウントの数がチャートCH2で示すように時間tb15から「1」となり、またチャートCH6で示すように排水ポンプ11が時間tb15からtb16までの15秒間、運転される。以後は図5に示す通常運転時の作動フローに従って各部が作動する。
【0045】
一方、フロートスイッチ12が故障状態にある下で、トイレ装置が使用されて洗浄レバー39が12回、開放操作されると、排水ポンプ強制連続カウントの数が「3」となるのであり、ステップs203にてこのことが判別される。そして、ステップs204にてフロートスイッチ異常を意味する異常表示がされ、また警報出力が発せられる。
【0046】
C:流量スイッチ36が常時入り状態となる場合(流量スイッチ36が故障した場合)
この場合には、カッター10が連続運転され、駆動モータ10aとしての電動機が温度上昇し或いは焼損する恐れがある。このような事態に対処するべく、本実施例では各部が制御部8により次のように制御される。
【0047】
図9は流量スイッチが故障した場合におけるトイレ装置の動作フロー図である。図10は流量スイッチが故障した場合における各部の作動を示すタイムチャートである。図中、一部図5のフローを記述している(破線、下側)。
先と同様に、貯溜槽9の有効貯溜水量が12リットルであり、一回の洗浄レバー39の開放操作により6リットルのトイレ排水が便器40の排水出口40aから流出されるものとする。そして、貯溜槽9内のトイレ排水の量が12リットルに到達したとき、排水ポンプ11が1回運転されるように設定されているものとする。
【0048】
このような条件の下で、通常運転時に、トイレ装置が使用されて洗浄レバー39が一回目の開放操作を実行されると、図10中のチャートCH3で示すように、流量スイッチ36が時間tc1から時間tc2まで入り状態となり、その後、トイレ装置が使用されて洗浄レバー39が二回目の開放操作を実行され、ここで流量スイッチ36が常時入り状態となる故障が発生したとき、流量スイッチ36は時間tc3の後に入り状態を継続される。一方では通常運転時の場合と同様に、チャートCH5で示すように、カッター10が時間tc1から時間tc2までの期間、及び、時間tc3以降に運転状態となる。これに関連してカッター連続カウントは時間tc1から時間tc3まで「1」となり、時間tc3以降では「2」となる。
【0049】
上記のような作動では、ステップs108にて、流量スイッチ36が時間tc3で入り状態となってから180秒が経過したか否かが判断され、是であれば、ステップs301にて時間tc4以降、流量スイッチ異常を意味する異常表示がされる。
【0050】
D:流量スイッチ36が常時切り状態となる場合(流量スイッチ36が故障した場合)
この場合には、カッター10が起動できないため、トイレ排水に含まれる汚物などが破砕されず、通水管20や粉砕部10b内に汚物などが詰まり、トイレ装置が使用不能となる恐れがある。このような事態に対処する必要があり、本実施例ではこのような故障の場合、制御部8により各部は次のように作動される。
【0051】
図11は流量スイッチ36が故障した場合における各部の作動を示すタイムチャートである。
この場合は貯溜槽9の有効貯溜水量が比較的大きく、カッター10が例えば3回以上連続して運転されたときに排水ポンプ11が1回運転される程度に、トイレ排水が貯溜槽9内に溜まるものとする。
【0052】
このような条件の下で、通常運転時に、トイレ装置が使用されて洗浄レバー39が一回目の開放操作を実行されると、図11中のチャートCH3及びチャートCH5で示すように、時間td1から時間td2まで、時間td3から時間td4までの各期間に、流量スイッチ36が入り状態に、そしてカッター10が運転状態となる。これに関連して、チャートCH1で示すように、カッター連続カウントが時間td3以降「2」となる。
【0053】
この後、流量スイッチ36が常時切り状態となる故障が発生し、この故障状態の下でトイレ装置が使用されて、洗浄レバー39が3回目の開放操作を実行されても、流量スイッチ36は常時切り状態を維持される。したがって、この後はカッター10は起動されることが不可能となり、トイレ排水は粉砕されることなく貯溜槽9内に流入し、トイレ排水の水位が上昇することになる。そして、チャートCH4で示すように、トイレ排水が起動水位a1に達した時点である時間td5で、フロートスイッチ12が暫くの期間入り状態となり、チャートCH2で示すように排水ポンプ連続カウントが時間td5から「1」となり、またチャートCH6で示すように排水ポンプ11が時間td5から時間td6までの15秒間、運転状態となる。
【0054】
この後、トイレ装置が使用されて洗浄レバー39が開放操作されると、流量スイッチ36が切り状態を維持されたまま貯溜槽9内のトイレ排水の水位が上昇する。そして、トイレ排水が時間td7で再び起動水位a1に達すると、チャートCH4で示すようにフロートスイッチ12が入り状態となる。これに関連して、チャートCH2で示すように、排水ポンプ連続カウントが時間td7以降「2」に増加する。
【0055】
上記のような作動中、図9中のステップs115に到達したとき、ここで排水ポンプ連続カウントの数が「2」になっていることが判別され、ステップs301にて時間td8以降、流量スイッチ異常を意味する異常表示がされる。
【0056】
E:排水不能状態となった場合
例えば、排水ポンプ11の駆動モータ11aのオートカット発生や、排水性能の低下、及び、排水圧送管33の詰まりによる排水不能に陥った場合は、貯溜槽9内の水位が上昇して、便器40内の水位が上昇し、汚物などが便器40から溢れ出る恐れがある。このような事態に対処するべく、本実施例では各部が制御部により次のように制御される。
【0057】
図12は排水不能状態となった場合におけるトイレ装置の作動フローを示している。
ステップs111にてフロートスイッチ12が入り(オン)状態であるか否かが判断され、是であれば、ステップs401にてフロートスイッチ12が切り状態であるか否かが判断される。このステップs401での判断が否であれば、フロートスイッチ12が入り状態となってから10秒間が経過したか否かが判断され、否であれば、ステップs401に戻る。こうして、フロートスイッチ12が切り状態とならない限り、10秒間に亘って、フロートスイッチ12が切り状態となったか否かが判断される。そして、ステップs402にて10秒間が経過してもフロートスイッチ12が切り状態とならないときは、制御部8は排水不能状態であると判断し、ステップs403にて貯溜槽9内が満水となっていることを意味する異常表示がされる。
【0058】
F:図7中のステップs204、図9中のステップs301、又は、図12中のステップs403に至った場合
図13は各ステップs204、s301、s403に至った後のトイレ装置の作動フローを示している。
ステップs501にて、図10や図11中のチャートCH7で示すように給水電磁弁35が時間tc4、時間td8で切り状態となってロータンク5への給水が停止され、また警報出力が発せられると共に、トイレ装置の自動運転が停止される。ステップs502にて排水ポンプ連続カウントが「0」にリセットされ、ステップs503にてカッター連続カウントが「0」にリセットされ、ステップs504にて排水ポンプ強制連続カウントが「0」にリセットされる。
【0059】
G:その他
(1)排水ポンプ11やカッター10が過負荷となった場合には、制御部8はこれに組み込まれた排水ポンプ11用のサーマルリレーやカッター10用のサーマルリレーによりこれらの過負荷を検出して、警報出力を発すると共に、自動運転を停止させる。
【0060】
(2)排水ポンプ11やカッター10の電気回路の漏電の場合には、制御部8はこれに設けられた漏電ブレーカにより排水ポンプ11やカッター10の漏電を検出して、警報出力を発すると共に、自動運転を停止させる。
【0061】
(3)制御部8に組み込まれたプログラマブルコントローラ(シーケンサ)が故障した場合には制御部8はこの故障を従来同様に検出して、警報出力を発すると共に自動運転を停止させる。
【0062】
図14はトイレ装置の他の施工例を示す図である。
図1の施工例においては、トイレ室1及び上水配管室2は同フロアに形成され、機械室3は下層フロアに形成されていたのに対し、この例においては機械室3も同フロアに形成されている。トイレ室1の便器40は床上排水便器であり、圧送排水装置4は便器40と同フロアに設置されている。尚、図中、図1と同じものは同一符号を付してある。
【符号の説明】
【0063】
4 圧送排水装置
8 制御部
9 貯溜槽
10 カッター
11 排水ポンプ
12 フロートスイッチ
15 縦向き回転軸(縦軸)
16 刃部
16b 切刃
17 包囲体
17c 流入口
17d 流出孔
36 流量スイッチ
a1 排水ポンプ11の起動水位
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水を貯溜するための貯溜槽と、該貯溜槽内にトイレ排水が流入していることを検知する流量スイッチと、該流量スイッチにより前記貯溜槽内にトイレ排水が流入している期間を検知し該期間中に運転状態となって該トイレ排水中の汚物を粉砕するカッターと、該貯溜槽内の排水の水位を検知するフロートスイッチと、該フロートスイッチの検知信号に基づき運転状態となって前記貯溜槽内に流入した排水を外方へ圧送する排水ポンプと、各部を制御する制御部とを備えた圧送排水装置であって、前記フロートスイッチが水位を検出できない状態の下で、前記制御部が前記カッターを前記流量スイッチの検知信号に基づいて、予め設定された複数回、正常に作動させたとき、これに関連して前記制御部が前記排水ポンプを強制運転させ該強制運転を監視するように制御し、また前記貯溜槽内にトイレ排水が流入しているにも拘わらず前記流量スイッチがこの流入を検知せず前記カッターが運転状態とならない状態の下で、前記フロートスイッチが前記排水ポンプの起動水位を正常に検知することにより、前記制御部が前記排水ポンプを作動させ該作動を監視するように制御することを特徴とする圧送排水装置。
【請求項2】
請求項1記載の圧送排水装置において、前記貯溜槽内にトイレ排水が流入しているにも拘わらず前記制御部が前記カッターを作動させない状態の下で、前記フロートスイッチが前記起動水位を正常に検知することに基づいて前記制御部が前記排水ポンプを任意に設定された複数回、起動させたとき、前記制御部が、前記貯溜槽内へのトイレ排水の流入に関する異常状態と判断して警報出力を発し各部の自動運転を停止させることを特徴とする圧送排水装置。
【請求項3】
請求項1記載の圧送排水装置において、前記カッターの一回の連続運転時間が、正常作動状態のそれよりも長い予め設定された設定時間となったとき、前記制御部が、前記貯溜槽内へのトイレ排水の流入に関する異常状態と判断して警報出力を発し各部の自動運転を停止させることを特徴とする圧送排水装置。
【請求項4】
請求項1記載の圧送排水装置において、前記フロートスイッチが前記排水ポンプの起動水位を正常状態時の連続検出期間よりも長い予め設定された設定期間に亘って連続検出したとき、前記制御部が、前記フロートスイッチや排水機能の異常状態と判断して警報出力を発することを特徴とする圧送排水装置。
【請求項5】
請求項1記載の圧送排水装置において、前記フロートスイッチが1つ設けられていることを特徴とする圧送排水装置。
【請求項6】
請求項1記載の圧送排水装置において、前記カッターが、縦軸回りに回転される刃部と、該刃部の下方及び側方を包囲する包囲体とを備え、該包囲体は前記貯溜槽内に位置され平面視5角形以上の多角形とされた有底筒体であって、前記刃部の下部に形成された切刃の真横や下方となる部位を下側へ向かうほどすぼまるような漏斗状とされ且つ、前記切刃よりも高い側周部にトイレ排水の流入口とトイレ排水の流出孔とを形成されると共に、該流出孔を前記起動水位よりも高く位置されていることを特徴とする圧送排水装置。
【請求項1】
排水を貯溜するための貯溜槽と、該貯溜槽内にトイレ排水が流入していることを検知する流量スイッチと、該流量スイッチにより前記貯溜槽内にトイレ排水が流入している期間を検知し該期間中に運転状態となって該トイレ排水中の汚物を粉砕するカッターと、該貯溜槽内の排水の水位を検知するフロートスイッチと、該フロートスイッチの検知信号に基づき運転状態となって前記貯溜槽内に流入した排水を外方へ圧送する排水ポンプと、各部を制御する制御部とを備えた圧送排水装置であって、前記フロートスイッチが水位を検出できない状態の下で、前記制御部が前記カッターを前記流量スイッチの検知信号に基づいて、予め設定された複数回、正常に作動させたとき、これに関連して前記制御部が前記排水ポンプを強制運転させ該強制運転を監視するように制御し、また前記貯溜槽内にトイレ排水が流入しているにも拘わらず前記流量スイッチがこの流入を検知せず前記カッターが運転状態とならない状態の下で、前記フロートスイッチが前記排水ポンプの起動水位を正常に検知することにより、前記制御部が前記排水ポンプを作動させ該作動を監視するように制御することを特徴とする圧送排水装置。
【請求項2】
請求項1記載の圧送排水装置において、前記貯溜槽内にトイレ排水が流入しているにも拘わらず前記制御部が前記カッターを作動させない状態の下で、前記フロートスイッチが前記起動水位を正常に検知することに基づいて前記制御部が前記排水ポンプを任意に設定された複数回、起動させたとき、前記制御部が、前記貯溜槽内へのトイレ排水の流入に関する異常状態と判断して警報出力を発し各部の自動運転を停止させることを特徴とする圧送排水装置。
【請求項3】
請求項1記載の圧送排水装置において、前記カッターの一回の連続運転時間が、正常作動状態のそれよりも長い予め設定された設定時間となったとき、前記制御部が、前記貯溜槽内へのトイレ排水の流入に関する異常状態と判断して警報出力を発し各部の自動運転を停止させることを特徴とする圧送排水装置。
【請求項4】
請求項1記載の圧送排水装置において、前記フロートスイッチが前記排水ポンプの起動水位を正常状態時の連続検出期間よりも長い予め設定された設定期間に亘って連続検出したとき、前記制御部が、前記フロートスイッチや排水機能の異常状態と判断して警報出力を発することを特徴とする圧送排水装置。
【請求項5】
請求項1記載の圧送排水装置において、前記フロートスイッチが1つ設けられていることを特徴とする圧送排水装置。
【請求項6】
請求項1記載の圧送排水装置において、前記カッターが、縦軸回りに回転される刃部と、該刃部の下方及び側方を包囲する包囲体とを備え、該包囲体は前記貯溜槽内に位置され平面視5角形以上の多角形とされた有底筒体であって、前記刃部の下部に形成された切刃の真横や下方となる部位を下側へ向かうほどすぼまるような漏斗状とされ且つ、前記切刃よりも高い側周部にトイレ排水の流入口とトイレ排水の流出孔とを形成されると共に、該流出孔を前記起動水位よりも高く位置されていることを特徴とする圧送排水装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−255236(P2010−255236A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104854(P2009−104854)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000133939)テラル株式会社 (48)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000133939)テラル株式会社 (48)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]