説明

圧電アクチュエータ、液体噴射装置、圧電アクチュエータの製造方法及び液体噴射装置の製造方法

【課題】複数の引出電極の引き出し方向によらず、圧電層の駆動領域と対向する部分における圧電変形量のばらつきを低減する。
【解決手段】圧電アクチュエータ7は、圧力室10が形成された流路ユニット6に接合された圧電層41と、圧電層41と積層して配置された圧電層42と、圧電層42の表面に配置された個別電極44及び引出電極45とを有している。個別電極44は、圧力室10と対向して配置されている。引出電極45は、個別電極44から引き出され、圧力室10と対向しない部分まで延在している。そして、引出電極45を介して個別電極44に電圧が付与される。引出電極45は、個別電極44よりもガラス材料内に含有された金属粒子の径が大きな材料で形成され、個別電極44と導通している。そして、引出電極45と圧電層42との間には低誘電層が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電アクチュエータ、液体噴射装置、圧電アクチュエータの製造方法及び液体噴射装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電界をかけて圧電層を圧電変形させることによって対象を駆動する圧電アクチュエータが知られている。例えば、特許文献1に記載のインクジェットヘッド用の圧電アクチュエータは、複数のノズルにそれぞれ連通する複数の圧力室を備えた、インクジェットヘッドの流路ユニット(基材)に設けられており、流路ユニットの複数の圧力室を覆うように配置された振動板と、振動板に積層された圧電層と、この圧電層の表面に複数の圧力室と対向して設けられた複数の個別電極(駆動電極)とを有している。個別電極は、圧力室と対向しない部分まで引き出されて、その先端部に接点部が形成されている。
【0003】
複数の個別電極は、複数の圧力室に対応して2列に配列されており、一方の列に属する個別電極において接点部が引き出されている方向と他方の列に属する個別電極において接点部が引き出されている方向とは、それぞれ逆方向を向いている。そして、この接点部に電圧を付与することで、個別電極から引き出された引出電極を介して個別電極に電圧を付与している。
【0004】
【特許文献1】特開2008−74091号公報(図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
個別電極に電圧が付与されると、圧電層の個別電極と対向する部分に電界が発生し圧電変形する。このとき、引出電極も個別電極と同材料で形成されれば、当然、圧電層の引出電極と対向している部分(以下、引出部と称す)についても、電界が発生し圧電変形することになる。
【0006】
ところで、特許文献1に記載のインクジェットヘッド用の圧電アクチュエータにおいて、例えば、複数の個別電極を一度に形成した場合や、複数の個別電極を形成した圧電層が流路ユニットに対して位置ずれして配置された場合などにおいて、複数の個別電極が流路ユニットに対して圧電層の面方向の同じ向きに位置ずれして形成されることがある。
【0007】
このように、複数の個別電極が流路ユニットに対して圧電層の面方向の同じ向きに位置ずれして配置されたとしても、圧電層の個別電極と対向する部分(以下、活性部と称す)における、圧電層の圧力室と対向する領域(以下、駆動領域と称す)との対向面積は、複数の活性部のそれぞれで同じである。一方、複数の引出電極は、列毎に逆方向に引き出されており、複数の引出電極の引き出されている向きが異なっていると、圧電層の引出部における駆動領域との対向面積は、複数の引出部の列毎で異なることになる。
【0008】
すると、圧電層の複数の活性部については駆動領域との対向面積にばらつきはないが、圧電層の複数の引出部については駆動領域との対向面積がばらついてしまう。そして、上述したように、活性部を駆動すると、この活性部に対応する引出部も駆動するため、圧電層の複数の引出部における駆動領域との対向面積がばらつくと、圧電層の活性部と引出部とを含めた駆動する全部分における駆動領域との対向面積がばらつくことになり、圧電層の駆動領域と対向する部分における圧電変形量がばらついてしまう。
【0009】
そこで、本発明の目的は、複数の引出電極の引き出し方向によらず、圧電層の駆動領域と対向する部分における圧電変形量のばらつきを低減した圧電アクチュエータ、液体噴射装置、圧電アクチュエータの製造方法及び液体噴射装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の圧電アクチュエータは、基材の一表面に配置された圧電層と、前記圧電層の一方の面に配置された複数の駆動電極と、を備え、前記圧電層は、前記複数の駆動電極と対向する領域を含んだ駆動領域の周囲を前記基材に接合されており、前記圧電層の前記一方の面において、前記複数の駆動電極から引き出され、前記駆動領域の外側までそれぞれ延在し、前記複数の駆動電極に電圧を付与するための複数の引出電極を備え、前記複数の引出電極は、一部は所定の第1方向に引き出され、他の一部は前記第1方向と異なる第2方向に引き出されており、前記圧電層と前記引出電極との間には低誘電層が形成されている。
【0011】
本発明における圧電アクチュエータによると、引出電極と圧電層との間に低誘電層が形成されており、駆動電極に電圧を付与するために引出電極に電圧を付与したときには、低誘電層に電圧が集中するため、圧電層の引出電極と対向した部分(以下、引出部と称す)には電圧がほとんどかからなくなる。その結果、圧電層の引出部の圧電変形が小さくなる。
【0012】
したがって、複数の駆動電極が基材に対して圧電層の面方向の同じ向きに位置ずれして配置されて、圧電層の引出部における駆動領域との対向面積が、複数の引出部のそれぞれでばらついたとしても、そのばらつきが圧電層の駆動領域と対向する部分における圧電変形に対してさほど影響しない。また、圧電層の駆動電極と対向する部分(以下、駆動部と称す)における駆動領域との対向面積は、複数の駆動部のそれぞれで同じである。以上のことから、圧電層の振動領域と対向する部分における圧電変形量のばらつきを低減することができる。
【0013】
そして、前記駆動電極と前記引出電極とは、絶縁材料に金属粒子を含有した導電性材料により形成されており、前記引出電極は、前記駆動電極よりも前記金属粒子の径が大きい導電性材料で形成されていてもよい。
【0014】
1つの金属粒子が圧電層と接触する面積は径によらずほぼ同じである。したがって、圧電層と接触する金属粒子の数が多いほど、圧電層と接触する全面積における金属粒子が圧電層に接触した接触面積の比率は大きいことになる。これによると、引出電極を駆動電極よりも金属粒子の径が大きい材料で形成することで、圧電層の一方の面と接触する金属粒子の数が少なく、絶縁材料や空気が圧電層の一方の面に多く接触することになり、引出電極と圧電層との間に低誘電層を形成することができる。
【0015】
また、前記駆動電極と前記引出電極とは、絶縁材料に金属粒子を含有した導電性材料により形成されており、前記引出電極は、前記駆動電極よりも前記金属粒子の配合比率が小さい導電性材料で形成されていてもよい。
【0016】
これによると、引出電極を駆動電極よりも金属粒子の配合比率が小さい材料で形成することで、圧電層の一方の面と接触する金属粒子の数が少なく、絶縁材料や空気が圧電層の一方の面に多く接触することになり、引出電極と圧電層との間に低誘電層を形成することができる。
【0017】
また、前記引出電極は、前記圧電層の前記一方の面において、導通する前記駆動電極を取り囲んで配置されていることが好ましい。
【0018】
これによると、圧電層の面方向にクラックが生じたときに、このクラックが圧電層の駆動部に到達して、圧電層の駆動部の圧電特性が変動するのを抑制することができる。
【0019】
さらに、前記引出電極は、前記圧電層の前記一方の面において、導通する駆動電極の表面に乗り上げて形成されていることが好ましい。
【0020】
これによると、駆動電極と引出電極との接触面積が大きくなり、導通の信頼性を向上させることができる。
【0021】
本発明の液体噴射装置は、複数のノズルと、前記複数のノズルと連通し、平面的に配置された複数の圧力室を含む液体流路が形成された流路ユニットと、前記流路ユニットに設けられて、前記複数の圧力室内の液体にそれぞれ圧力を付与する圧電アクチュエータと、を備え、前記圧電アクチュエータは、前記複数の圧力室と対向するように配置された圧電層と、前記圧電層の一方の面において、前記複数の圧力室とそれぞれ対向して配置された複数の駆動電極と、前記圧電層の前記一方の面において、前記複数の駆動電極から引き出され、前記複数の圧力室と対向しない領域までそれぞれ延在し、前記複数の駆動電極に電圧を付与するための複数の引出電極と、を有し、前記複数の引出電極は、一部は所定の第1方向に引き出され、他の一部は前記第1方向と異なる第2方向に引き出されており、前記圧電層と前記引出電極との間には低誘電層が形成されている。
【0022】
本発明における液体噴射装置によると、引出電極と圧電層との間に低誘電層が形成されており、駆動電極に電圧を付与するために引出電極に電圧を付与したときには、低誘電層に電圧が集中するため、圧電層の引出電極と対向した部分(以下、引出部と称す)には電圧がほとんどかからなくなる。その結果、圧電層の引出部の圧電変形が小さくなる。
【0023】
したがって、複数の駆動電極が流路ユニットに対して圧電層の面方向の同じ向きに位置ずれして配置されて、圧電層の引出部における圧力室との対向面積が、複数の引出部のそれぞれでばらついたとしても、そのばらつきが圧電層の圧力室と対向する部分における圧電変形量に対してさほど影響しない。また、圧電層の駆動電極と対向する部分(以下、駆動部と称す)における、圧力室と対向する部分との対向面積は、複数の駆動部のそれぞれで同じである。以上のことから、圧電層の圧力室と対向する部分における圧電変形量のばらつきを低減することができ、液体の噴射量を均一にすることができる。
【0024】
このとき、前記流路ユニットには、前記複数の圧力室に共通に連通し、所定の一方向に延在する共通液室が形成されており、前記複数のノズルは、前記一方向に沿ってノズル列を形成し、このノズル列が平行に複数列並んで配置されており、一部の同じノズル列に属する前記ノズルに対応する前記引出電極は、前記第1方向に引き出されており、他の一部の同じノズル列に属する前記ノズルに対応する前記引出電極は、前記第2方向に引き出されていることが好ましい。
【0025】
これによると、列間における圧電層の圧力室と対向する部分の圧電変形量のばらつきを低減することができ、列間における被噴射媒体へのノズルからの液体の噴射ムラを低減することができる。
【0026】
本発明の圧電アクチュエータの製造方法は、上述した圧電アクチュエータの製造方法であって、前記圧電層の前記一方の面における前記駆動電極を形成する部分にマスク材のマスク穴を重ねて、前記マスク穴に導電性材料を堆積させた後、前記マスク材を前記圧電層から取り除くことで、前記複数の駆動電極を一度に形成する駆動電極形成工程と、前記圧電層の前記一方の面における前記引出電極を形成する部分にマスク材のマスク穴を重ねて、前記マスク穴に導電性材料を堆積させた後、前記マスク材を前記圧電層から取り除くことで、前記複数の引出電極を一度に形成する引出電極形成工程と、を備えている。
【0027】
本発明の圧電アクチュエータの製造方法によると、駆動電極形成工程において、複数の駆動電極を一度に形成したときに位置ずれして形成されると、複数の駆動電極が基材に対して圧電層の面方向の同じ向きに位置ずれして形成される。このような場合において、上述したように、引出電極が、駆動電極に比べて、圧電層に接触する面の導電密度が小さいが小さいことで、圧電層の引出電極と対向した部分の圧電変形は小さい。したがって、振動板の振動領域と対向する圧電層部分における圧電変形量のばらつきを低減することができ、噴射ムラを抑制できるため、歩留まりを向上させることができる。
【0028】
このとき、前記圧電アクチュエータは、前記圧電層の前記一方の面に配線基板が接続されるものであって、前記圧電層の前記一方の面と反対側の他方の面には、前記圧電層の前記複数の駆動電極と対向する部分にまたがって形成された共通電極と、前記圧電層の前記一方の面において、前記圧電層の前記厚み方向に貫通し、且つ、導電性材料が充填されたスルーホールを介して前記共通電極と導通し、前記配線基板と接続される表面電極と、をさらに備え、前記引出電極及び前記表面電極に前記配線基板と接続される接続端子が設けられており、前記引出電極形成工程と同じ工程において、前記圧電層の前記一方の面に前記表面電極を形成する表面電極形成工程と、を備えていることが好ましい。
【0029】
これによると、配線基板と接続される接続端子が設けられる、引出電極と表面電極との高さを均一にすることができ、圧電アクチュエータに対する配線基板の接続不良を抑制することができる。
【0030】
本発明の液体噴射装置の製造方法は、上述した液体噴射装置の製造方法であって、前記圧電アクチュエータを製造する工程として、前記圧電層の前記一方の面に前記複数の駆動電極を形成する駆動電極形成工程と、前記圧電層の前記一方の面に前記複数の引出電極を形成する引出電極形成工程と、を備え、前記流路ユニットと前記圧電アクチュエータとを接合する接合工程を備えている。
【0031】
本発明の液体噴射装置の製造方法によると、接合工程において、複数の駆動電極を形成した圧電層が流路ユニットに対して位置ずれして接合されると、複数の駆動電極が流路ユニットに対して圧電層の面方向の同じ向きに位置ずれして配置される。このような場合において、上述したように、引出電極が、駆動電極に比べて、圧電層に接触する面の導電密度が小さいことで、圧電層の引出電極と対向した部分の圧電変形は小さい。したがって、圧電層の圧力室と対向する部分における圧電変形量のばらつきを低減することができ、液体の噴射量を均一にすることができ、歩留まりを向上させることができる。
【発明の効果】
【0032】
複数の駆動電極が基材に対して圧電層の面方向の同じ向きに位置ずれして配置されて、圧電層の引出部における、振動板の駆動領域との対向面積が、複数の引出部のそれぞれでばらついたとしても、そのばらつきが圧電層の駆動領域と対向する部分における圧電変形に対してさほど影響しない。また、圧電層の駆動電極と対向する部分(以下、駆動部と称す)における駆動領域との対向面積は、複数の駆動部のそれぞれで同じである。以上のことから、圧電層の振動領域と対向する部分における圧電変形量のばらつきを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本実施形態に係るインクジェットプリンタの概略構成図である。
【図2】インクジェットヘッドの平面図である。
【図3】図2の部分拡大図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】圧電層の引出電極と対向する部分の圧電変形について説明する図である。
【図6】個別電極がずれて配置された場合におけるインクジェットヘッドの平面図である。
【図7】圧電アクチュエータを製造しFPCと接続するまでの工程図である。
【図8】変形例におけるインクジェットヘッドの部分拡大平面図である。
【図9】変形例におけるインクジェットヘッドの製造工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について説明する。本実施形態は、記録用紙に対してインクを噴射するインクジェットヘッドを備えたインクジェットプリンタに本発明を適用した一例である。
【0035】
まず、本実施形態のインクジェットプリンタの概略構成について説明する。図1は、本実施形態のインクジェットプリンタの概略構成図である。図1に示すように、インクジェットプリンタ1は、キャリッジ2、インクジェットヘッド3(液体噴射装置)、搬送ローラ4などを有している。
【0036】
キャリッジ2は、走査方向(図1の左右方向)に往復移動する。インクジェットヘッド3は、キャリッジ2に搭載されており、その下面に形成されたノズル15(図3、4参照)からインクを噴射する。搬送ローラ4は、記録用紙Pを紙送り方向(図1の手前方向)に搬送する。そして、インクジェットプリンタ1においては、搬送ローラ4により搬送される記録用紙Pに、キャリッジ2とともに走査方向に往復移動するインクジェットヘッド3からインクが噴射されることにより、記録用紙Pに画像や文字などが記録される。
【0037】
次に、インクジェットヘッド3について説明する。図2は、インクジェットヘッドの平面図である。図3は、図2の部分拡大図である。図4は、図3のIV−IV線断面図である。なお、図2、図3においては、図面をわかりやすくするために、インクジェットヘッド3の上面を覆うように配置されるフレキシブル配線基板(FPC)48を仮想線で示している。図2〜図4に示すように、インクジェットヘッド3は、ノズル15や圧力室10を含むインク流路が形成された流路ユニット6(基材)と、圧力室10内のインクに圧力を付与する圧電アクチュエータ7と、を有している。また、圧電アクチュエータ7の上面には、FPC48が接合される。
【0038】
そして、図4に示すように、流路ユニット6は、複数枚(ここでは、4枚)のプレートが互いに積層されることによって形成されており、これらのプレートのうち、ノズル15が形成された最下層のプレートを除くプレートは、ステンレス鋼などの金属材料により形成されている。また、ノズル15が形成されたプレートはポリイミドなどの合成樹脂材料から形成されている。あるいは、ノズル15が形成されたプレートも、他のプレートと同様の材料によって構成されていてもよい。
【0039】
そして、流路ユニット6内において、インク供給口9に連なるマニホールド11が圧力室10に連通し、さらに、圧力室10はノズル15に連通している。つまり、流路ユニット6には、マニホールド11から圧力室10を経てノズル15に至る個別インク流路12が複数形成されている。
【0040】
インク供給口9は、紙送り方向の下流側端部に配置されており、マニホールド11がインク供給口9に連通し、二手に分岐して紙送り方向に沿って2列延在している。複数の圧力室10は、2列のマニホールド11に対応して、紙送り方向に千鳥状に2列に配列されている。そして、走査方向の一方(図2の左方)の列に属する圧力室10は、その一方側半分がマニホールド11と重なっており、走査方向の他方(図2の右方)の列に属する圧力室10は、他方側半分がマニホールド11と重なっている。また、複数のノズル15は、複数の圧力室10に対応して配置されており、紙送り方向に沿って2列に配列された圧力室10のマニホールド11と反対側の端部とそれぞれ重なるように配置されている。
【0041】
次に、圧電アクチュエータ7について説明する。圧電アクチュエータ7は、複数の圧力室10を覆うように流路ユニット6の上面に積層された2枚の圧電層41、42と、上側の圧電層41の上面に配置された複数の個別電極44(駆動電極)及び複数の引出電極45と、2枚の圧電層41、42の間に配置された共通電極43とを有している。
【0042】
2枚の圧電層41、42は、共に、チタン酸鉛とジルコン酸鉛との固溶体であり強誘電体であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を主成分とする圧電材料からなり、矩形の同一平面形状をそれぞれ有する。積層された2枚の圧電層41、42は、複数の圧力室10を覆った状態で流路ユニット6の上面に接合されている。なお、上側の圧電層42は、個別電極44と共通電極43との間に所定の分極電圧が印加されることによって、2種類の電極44、43に挟まれた圧電層部分が厚み方向に分極されて活性部70を形成している。なお、本実施形態における圧電層42の圧力室10と対向した領域が、本発明における駆動領域に相当する。
【0043】
なお、圧電層41は、後述するように圧電アクチュエータ7を駆動させたときに、圧電層42をユニモルフ変形させるための振動板として動作する。
【0044】
複数の個別電極44は、ガラス材料に数10〜数100nmのAg−Pdからなる金属粒子を含有した材料からなり、圧電層42の上面に複数の圧力室10に対応して配置されている。図2、図3に示すように、個別電極44は、圧力室10よりも一回り小さい略楕円の平面形状を有しており、圧力室10の略中央部と対向している。
【0045】
複数の引出電極45は、個別電極44を形成する材料と比較してガラス材料と金属粒子との配合比率は同じであり、ガラス材料に個別電極44よりも大径の数ミクロンの金属粒子を含有した導電性材料からなり、圧電層42の上面に、複数の個別電極44に対応して2列に並び、圧力室10と対向しない領域まで楕円状の個別電極44の長手方向にそれぞれ引き出されている。そして、その引き出された先端部には、複数の接続端子45aが形成されている。複数の引出電極45は、圧力室10のノズル15と反対側のマニホールド11側に引き出されており、その引き出されている向きは列毎に異なっている。具体的には、走査方向の一方(図2の左方)の列に属する引出電極45は一方側に引き出され、他方(図2の右方)の列に属する引出電極45は他方側に引き出されている。
【0046】
また、複数の引出電極45は、複数の個別電極44を取り囲んで配置されている。また、引出電極45の厚みは、個別電極44よりも厚く形成されている。そして、引出電極45は、複数の個別電極44の全周においてその表面に乗り上げて接触して導通している。これにより、個別電極44と引出電極45との接触面積が大きくなり、導通の信頼性を向上させることができる。
【0047】
共通電極43は、個別電極44と同様の導電性材料からなり、圧電層41と圧電層42との間にそのほぼ全域にわたって形成されており、複数の個別電極44及び複数の引出電極45と圧電層42を挟んで対向している。そして、圧電層42の個別電極44と共通電極43とに挟まれた部分は、厚み方向に分極されて活性部70を形成している。
【0048】
図4に示すように、複数の接続端子45aには、導電性接着剤からなるバンプ52がそれぞれ配置され、各接続端子45aは、バンプ52を介して、圧電アクチュエータ7の上面を覆うように配置されるFPC48の第1接続電極部57と接続される。なお、導電性接着剤は、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂に多数の金属粒子(例えば、銀(Ag)粒子)を含有したものであり、加圧加熱によって硬化しつつ導電性を発現し、2つの接続対象を機械的に接合するとともに、両者を電気的に導通させるものである。そして、複数の個別電極44のそれぞれには、FPC48に実装されたドライバIC50(図2参照)から複数の引出電極45のそれぞれを介して、駆動電位(例えば20V程度)及びグランド電位が選択的に付与される。
【0049】
図2に示すように、圧電層42の上面(圧電アクチュエータ7の上面)の、走査方向における両端部(縁部)には、縁に沿って紙送り方向に延びる2つの表面電極46がそれぞれ形成されている。図4に示すように、表面電極46が形成された領域において、圧電層42にはスルーホール42aが形成されており、このスルーホール42a内に導電性材料が充填されて、表面電極46と2枚の圧電層41、42の間に配置された共通電極43とが導通している。さらに、各表面電極46には、その長手方向に沿って適当に間隔を空けて、バンプ52と同様の導電性接着剤からなる複数のバンプ53が配置され、表面電極46は、バンプ53を介して、FPC48の第2接続電極部59と接続される。また、共通電極43は、FPC48に実装されたドライバIC50に接続され、常にグランド電位に保持されている。
【0050】
FPC48は、一部が圧電アクチュエータ7の上面と対向するように配置された状態で圧電アクチュエータ7に接合されるとともに、この圧電アクチュエータ7からノズル15の配列方向の一方(図2の上方)から水平に引き出され、さらに、曲げられて上方へ引き出されている。
【0051】
次に、圧電アクチュエータ7の駆動方法について説明する。圧電アクチュエータ7は、駆動前には、共通電極43がドライバIC50と接続されてグランド電位に保持され、個別電極44がドライバIC50と接続された引出電極45を介して予めグランド電位に保持されている。
【0052】
そして、圧電アクチュエータ7を駆動させる際には、個別電極44の電位を所定の駆動電位(例えば、20V程度)に切り替える。すると、個別電極44と共通電極43との間に電位差が生じ、この電位差によって活性部70にはその厚み方向の電界が発生する。この電界の方向は活性部70の分極方向と一致するため、活性部70は分極方向と直交するその面方向に収縮し、圧電層41、圧電層42の圧力室10と対向する部分が全体として圧力室10に向かって凸となるように圧電変形(いわゆるユニモルフ変形)する。これにより、圧力室10の容積が低下して圧力室10内のインクの圧力が上昇し(圧力室10内のインクに圧力が付与され)、圧力室10に連通するノズル15からインクが噴射される。
【0053】
ここで、個別電極44には、ドライバIC50から接続端子45a、引出電極45を介してグランド電位や駆動電位を付与している。そのため、圧電層42の個別電極44と対向する部分(活性部70)に電界が発生し圧電変形するのに加えて、圧電層42の引出電極45と対向する部分(以下、引出部71と称す)についても電界が発生することになる。
【0054】
そこで、上述したように、引出電極45は、個別電極44(共通電極43)よりも金属粒子の径が大きい材料からなる。図5は、圧電層の引出電極と対向する部分の圧電変形について説明する図であり、(a)は圧電層の個別電極と共通電極とに挟まれた部分及び引出電極と共通電極とに挟まれた部分の断面図であり、(b)は(a)の等価回路図である。すると、図5(a)に示すように、1つの金属粒子62が圧電層42と接触する面積は径によらずほぼ同じである。したがって、圧電層42と接触する金属粒子62の数が多いほど、圧電層42と接触する面において金属粒子62が圧電層42と接触している接触面積は大きいことになる。すなわち、引出電極45を個別電極44(共通電極43)よりも金属粒子62の径が大きい材料で形成することで、圧電層42と接触する金属粒子62の数が少なく、絶縁材料や空気が圧電層42の一方の面に多く接触することになり、金属粒子62の接触面積が小さくなる。そして、引出電極45の圧電層42と接触する部分には、絶縁材料や空気からなる低誘電層47(図5参照)が存在することになる。なお、本発明における低誘電層47の比誘電率は、圧電層42の比誘電率よりも低ければよい。
【0055】
そして、図5(b)に示すように、圧電層42の個別電極44と共通電極43とに挟まれた部分、及び、圧電層42の引出電極45と共通電極43とに挟まれた部分を等価回路図として記載すると、引出電極45と共通電極43とに挟まれた部分については、圧電層42の引出部71からなるコンデンサC1と上述した低誘電層47からなるコンデンサC2とが直列に接続された回路図となる。また、個別電極44と共通電極43とに挟まれた部分については、圧電層42の活性部70からなるコンデンサC3のみの回路図となる。
【0056】
そして、本実施形態においては、圧電層42の厚みが約20μmであり、低誘電層47の厚みが約1μmとなっている。また、圧電層42の誘電率は約2000であり、低誘電層47の誘電率は約1〜10となっている。したがって、コンデンサC1とコンデンサC2との合成容量は、コンデンサC3と比較して非常に小さくなる。したがって、数kHzの駆動周波数の駆動信号では、コンデンサC2に電圧が集中するため、コンデンサC1には電圧がほとんど印加されず、圧電層42の引出部71には微小な電界が短時間しかかからない。以上のことから、圧電アクチュエータ7を駆動させるために駆動信号を入力したときに、圧電層42の活性部70は圧電変形するが、引出部71は圧電変形しない。なお、個別電極44の圧電層42と接触する部分についても、絶縁材料や空気からなり、圧電層42よりも誘電率の低い層(以下、この層を第2低誘電層と称す。)が存在する場合も考えられる。しかしながら、上述した第2低誘電層は、低誘電層47にくらべて厚みが薄い。そのため、第2低誘電層は、低誘電層47に比べて静電容量が大きい。したがって、周波数の高い駆動信号を流した場合、第2低誘電層に加わる電圧は、低誘電層47に加わる電圧に比べて低くなる。このため、圧電層42の個別電極44の下に位置する部分(以下、第1圧電部と称す)に加わる電圧は、圧電層42の引出電極45の下に位置する部分に加わる電圧よりも十分大きくなる。よって、駆動信号を流した場合に、所望量のインクを噴射させる十分な圧電変形を起こすための電界が、第1圧電部には印加される。このように、個別電極44と圧電層42との間に第2低誘電層が存在したとしても、第1圧電部には十分な電界が印加される。
【0057】
本実施形態によると、引出電極45と圧電層42との間に低誘電層47が形成されており、個別電極44に電圧を付与するために引出電極45に電圧を付与したときには、低誘電層47に電圧が集中するため、圧電層42の引出部71には電圧がほとんどかからなくなる。その結果、圧電層42の引出部71の圧電変形が小さくなる。したがって、図6に示すように、複数の個別電極44が流路ユニット6(圧力室10)に対して圧電層42の面方向の同じ向きに位置ずれして配置されて、圧電層42の引出部71における圧力室10との対向面積が、複数の引出部71のそれぞれでばらついたとしても、そのばらつきが圧電層42の圧力室10と対向する部分における圧電変形に対してさほど影響しない。また、圧電層42の活性部70における圧力室10との対向面積は、複数の活性部70のそれぞれで同じである。以上のことから、圧電層の圧力室10と対向する部分における圧電変形量のばらつきを低減することができ、インクの噴射量を均一にすることができる。そして、列間における記録用紙Pへのノズル15からのインクの噴射ムラを低減することができる。
【0058】
また、圧電層42の引出電極45は、個別電極44を取り囲むように配置されているため、圧電層42の面方向にクラックが生じたときに、このクラックが圧電層42の活性部70に到達して、圧電特性が変動するのを抑制することができる。さらに、接続端子45aの配置自由度が上がる。
【0059】
また、個別電極44に電圧を印加するためのバンプ52と、共通電極43に電圧を印加するためのバンプ53とは、同じ材料により形成された引出電極45と表面電極46とに形成されているため、同一工程で形成すれば、引出電極45の高さと表面電極46の高さを均一にすることができ、FPC48の接続不良を抑制することができる。
【0060】
また、引出電極45は、個別電極44と金属粒子の径は異なるが、樹脂との配合比率は同じであるため、低誘電層47を形成しつつ、抵抗値を小さく維持することができる。
【0061】
次に、圧電アクチュエータ7を製造し、FPC48と接続するまでの工程について説明する。図7は、圧電アクチュエータを製造しFPCと接続するまでの工程図である。なお、図7(b)、(c)においては、図面のわかりやすさのため、マスク材65、66を厚み方向に拡大して図示している。実際には、マスク材65、66は、形成したい電極の厚みとほぼ同等である。
【0062】
まず、図7(a)に示すように、圧電層41の一方の面にスクリーン印刷や蒸着などの方法で共通電極43を形成し、共通電極43を挟んで圧電層41とスルーホール42aを形成した圧電層42とを積層する。そして、スルーホール42aに導電材料を充填する。その後、図7(b)に示すように、圧電層42の表面に、個別電極44に対応したマスク穴65aが形成されたマスク材65を重ねて、マスク穴65aに導電性材料を堆積させた後、マスク材65を圧電層42から取り除くことで、個別電極44を形成する(個別(駆動)電極形成工程)。
【0063】
続いて、図7(c)に示すように、圧電層42の表面に、引出電極45及び表面電極46に対応したマスク穴66aが形成されたマスク材66を重ねて、マスク穴66aに導電性材料を堆積させた後、マスク材66を圧電層42から取り除くことで、引出電極45及び表面電極46を形成する(引出電極形成工程)。なお、引出電極45に対応したマスク穴66aは、隣接する個別電極44と対向する領域まで開口しており、引出電極形成工程において形成された引出電極45は、個別電極44の表面に乗り上げるように形成される。
【0064】
その後、図7(d)に示すように、引出電極45の接続端子45a上にバンプ52を形成するとともに、表面電極46上にバンプ53を形成する(バンプ形成工程)。そして、図7(e)に示すように、圧電層42の表面を覆うようにFPC48を配置して、第1接続電極部57とバンプ52とを接合するとともに、第2接続電極部59とバンプ53とを接合する。そして、上述したように完成した圧電アクチュエータ7と流路ユニット6とを接合してインクジェットヘッド3が完成する。
【0065】
この圧電アクチュエータ7の製造方法によると、個別電極形成工程において、複数の個別電極44を一度に形成したときに位置ずれして形成されると、複数の個別電極44が流路ユニット6(圧力室10)に対して圧電層42の面方向の同じ向きに位置ずれして形成される。このような場合において、上述したように、引出電極45は、圧電層42と接触した低誘電層47を含んでいるため、圧電層42の引出電極45と対向した部分の圧電変形は小さい。したがって、圧電層42の流路ユニット6の圧力室10と対向する部分における圧電変形量のばらつきを低減することができ、噴射ムラを抑制できるため、歩留まりを向上させることができる。
【0066】
また、同一工程で、引出電極45と表面電極46を形成しているため、引出電極45の高さと表面電極46の高さを均一にすることができ、圧電アクチュエータ7に対するFPC48の接続不良を抑制することができる。
【0067】
次に、本実施形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、本実施形態と同様の構成を有するものについては同じ符号を付し、適宜その説明を省略する。
【0068】
本実施形態においては、引出電極45は個別電極44を取り囲んで配置され、且つ、所定の方向に引き出されていたが、図8に示すように、引出電極145は個別電極44を取り囲まずに、所定の方向に引き出されているだけでもよい。そして、引出電極145の引き出された先端部に接続端子145aが形成されて、接続端子145a上にバンプ52が配置される。
【0069】
また、本実施形態においては、複数の個別電極44が流路ユニット6(圧力室10)に対して圧電層42の面方向の同じ向きに位置ずれして形成される要因として、個別電極形成工程において、複数の個別電極44を一度に形成したときに位置ずれが生じた場合を例に挙げて説明したが、複数の個別電極44が圧電層42の面方向の同じ向きに位置ずれする要因はこれに限らない。以下、例を挙げて説明する。図9は、変形例におけるインクジェットヘッドの製造工程図である。なお、ここでは、流路ユニット6の製造方法については説明を省略し、圧電アクチュエータ7の製造方法及び圧電アクチュエータ7と流路ユニット6の接合方法について説明する。
【0070】
まず、圧電アクチュエータ7を製造する工程として、図9(a)に示すように、圧電層41の一方の面にスクリーン印刷や蒸着などの方法で共通電極43を形成し、共通電極43を挟んで圧電層41とスルーホール42aが形成された圧電層42とを積層する。そして、スルーホール42aに導電材料を充填する。そして、図9(b)に示すように、圧電層42の表面に共通電極43と同様の方法で個別電極44を形成する(個別(駆動)電極形成工程)。その後、図9(c)に示すように、圧電層42の表面に共通電極43と同様の方法で引出電極45及び表面電極46を形成して(引出電極形成工程)、圧電アクチュエータ7を完成する。
【0071】
そして、図9(d)に示すように、流路ユニット6の圧力室10が形成されたプレートと圧電アクチュエータ7の圧電層41とを熱硬化性の接着剤により加熱接合して(接合工程)、インクジェットヘッド3を完成する。
【0072】
このインクジェットヘッド3の製造方法によると、接合工程において、複数の個別電極44を形成した圧電層42が流路ユニット6に対して位置ずれして接合されると、複数の個別電極44が流路ユニット6に対して圧電層42の面方向の同じ向きに位置ずれして形成される。このような場合において、上述したように、引出電極45は、圧電層42と接触した低誘電層47を含んでいるため、圧電層42の引出電極45と対向した部分の圧電変形は小さい。したがって、圧電層42の流路ユニット6の圧力室10と対向する部分における圧電変形量のばらつきを低減することができ、噴射ムラを抑制できるため、歩留まりを向上させることができる。
【0073】
また、本実施形態においては、引出電極45は、個別電極44を形成する材料と比較してガラス材料と金属粒子との配合比率は同じであり、ガラス材料に個別電極44よりも大径の数ミクロンの金属粒子を含有した材料からなり、圧電層42と接触する低誘電層47を有していたが、引出電極45は、個別電極44よりも金属粒子の配合比率が小さい材料で形成されてもよい。この場合においても、引出電極45は、材料内における金属粒子の配合比率が小さいため、圧電層42と接触する金属粒子の数が少なく、圧電層42の引出電極45との接触界面には、ガラス材料や空気が多く接触することになり、金属粒子の接触面積が小さくなり、圧電層42に接触した低誘電層47を形成することができる。
【0074】
また、引出電極45の圧電層42との接触面の表面粗さを粗くすることでも、金属粒子と圧電層42との接触面積が小さくなり、圧電層42に接触した低誘電層47を形成することができる。
【0075】
さらに、上述した実施形態では、マスク材を用いたスクリーン印刷で複数の個別電極44を一度に形成していたが、複数の個別電極44を一度に形成する方法としては、スクリーン印刷に限らず、蒸着などあらゆる方法であってもよい。
【0076】
また、アクチュエータの変形形式は、ユニモルフ型に限定されず、モノモルフ型、バイモルフ型、マルチモルフ型などの変形形式であってよい。
【0077】
また、以上では、ノズルからインクを噴射するインクジェットヘッドの圧電アクチュエータに本発明を適用した例について説明したが、これには限られず、インクジェットヘッド以外の種々の装置に用いられる、駆動するための電極を有する圧電アクチュエータ、及び、このような圧電アクチュエータを有する液体噴射装置に本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 インクジェットプリンタ
3 インクジェットヘッド
6 流路ユニット
7 圧電アクチュエータ
41、42 圧電層
44 個別電極
45 引出電極
47 低誘電層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一表面に配置された圧電層と、
前記圧電層の一方の面に配置された複数の駆動電極と、を備え、
前記圧電層は、前記複数の駆動電極と対向する領域を含んだ駆動領域の周囲を前記基材に接合されており、
前記圧電層の前記一方の面において、前記複数の駆動電極から引き出され、前記駆動領域の外側までそれぞれ延在し、前記複数の駆動電極に電圧を付与するための複数の引出電極を備え、
前記複数の引出電極は、一部は所定の第1方向に引き出され、他の一部は前記第1方向と異なる第2方向に引き出されており、
前記圧電層と前記引出電極との間には、低誘電層が形成されていることを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項2】
前記駆動電極と前記引出電極とは、絶縁材料に金属粒子を含有した導電性材料により形成されており、
前記引出電極は、前記駆動電極よりも前記金属粒子の径が大きい導電性材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項3】
前記駆動電極と前記引出電極とは、絶縁材料に金属粒子を含有した導電性材料により形成されており、
前記引出電極は、前記駆動電極よりも前記金属粒子の配合比率が小さい導電性材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項4】
前記引出電極は、前記圧電層の前記一方の面において、導通する前記駆動電極を取り囲んで配置されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項5】
前記引出電極は、前記圧電層の前記一方の面において、導通する駆動電極の表面に乗り上げて形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項6】
複数のノズルと、前記複数のノズルと連通し、平面的に配置された複数の圧力室を含む液体流路が形成された流路ユニットと、
前記流路ユニットに設けられて、前記複数の圧力室内の液体にそれぞれ圧力を付与する圧電アクチュエータと、を備え、
前記圧電アクチュエータは、
前記複数の圧力室と対向するように配置された圧電層と、
前記圧電層の一方の面において、前記複数の圧力室とそれぞれ対向して配置された複数の駆動電極と、
前記圧電層の前記一方の面において、前記複数の駆動電極から引き出され、前記複数の圧力室と対向しない領域までそれぞれ延在し、前記複数の駆動電極に電圧を付与するための複数の引出電極と、を有し、
前記複数の引出電極は、一部は所定の第1方向に引き出され、他の一部は前記第1方向と異なる第2方向に引き出されており、
前記圧電層と前記引出電極との間には、低誘電層が形成されていることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項7】
前記流路ユニットには、前記複数の圧力室に共通に連通し、所定の一方向に延在する共通液室が形成されており、
前記複数のノズルは、前記一方向に沿ってノズル列を形成し、このノズル列が平行に複数列並んで配置されており、
一部の同じノズル列に属する前記ノズルに対応する前記引出電極は、前記第1方向に引き出されており、
他の一部の同じノズル列に属する前記ノズルに対応する前記引出電極は、前記第2方向に引き出されていることを特徴とする請求項6に記載の液体噴射装置。
【請求項8】
請求項1に記載の圧電アクチュエータの製造方法であって、
前記圧電層の前記一方の面における前記駆動電極を形成する部分にマスク材のマスク穴を重ねて、前記マスク穴に導電性材料を堆積させた後、前記マスク材を前記圧電層から取り除くことで、前記複数の駆動電極を一度に形成する駆動電極形成工程と、
前記圧電層の前記一方の面における前記引出電極を形成する部分にマスク材のマスク穴を重ねて、前記マスク穴に導電性材料を堆積させた後、前記マスク材を前記圧電層から取り除くことで、前記複数の引出電極を一度に形成する引出電極形成工程と、を備えていることを特徴とする圧電アクチュエータの製造方法。
【請求項9】
前記圧電アクチュエータは、前記圧電層の前記一方の面に配線基板が接続されるものであって、前記圧電層の前記一方の面と反対側の他方の面には、前記圧電層の前記複数の駆動電極と対向する部分にまたがって形成された共通電極と、前記圧電層の前記一方の面において、前記圧電層の前記厚み方向に貫通し、且つ、導電性材料が充填されたスルーホールを介して前記共通電極と導通し、前記配線基板と接続される表面電極と、をさらに備え、前記引出電極及び前記表面電極に前記配線基板と接続される接続端子が設けられており、
前記引出電極形成工程と同じ工程において、前記圧電層の前記一方の面に前記表面電極を形成する表面電極形成工程と、を備えていることを特徴とする請求項8に記載の圧電アクチュエータの製造方法。
【請求項10】
請求項6に記載の液体噴射装置の製造方法であって、
前記圧電アクチュエータを製造する工程として、
前記圧電層の前記一方の面に前記複数の駆動電極を形成する駆動電極形成工程と、
前記圧電層の前記一方の面に前記複数の引出電極を形成する引出電極形成工程と、を備え、
前記流路ユニットと前記圧電アクチュエータとを接合する接合工程を備えていることを特徴とする液体噴射装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−77755(P2013−77755A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217729(P2011−217729)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】