説明

圧電アクチュエータおよびその製造方法、液体吐出ヘッド及び画像形成装置

【課題】圧電素子と配線パターンとのはんだによる接合不良が生じた場合に修復が困難である。
【解決手段】FPC15は、基材41上に各個別外部電極23に対応して配線パターン42が形成され、圧電部材12と配線パターン42とが重なる接合領域43にははんだ51が設けられ、接合領域43の以外の領域である配線パターン部44には、圧電部材12の個別外部電極23と配線パターン42との接合に用いられる量以上の量のはんだが貯留されるはんだ溜まり部45を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧電アクチュエータおよびその製造方法、液体吐出ヘッド及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)からなる記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置などが知られている。
【0003】
液体吐出ヘッドとしては、例えば液室内の液体であるインクを加圧し圧力を発生するための圧力発生手段(アクチュエータ手段)として圧電素子を使用し、圧電素子の変位で液室に壁面を形成する弾性変形可能な振動板部材を変形させ、液室内容積、圧力を変化させて液滴を吐出させるいわゆる圧電型ヘッドが知られている。
【0004】
この圧電素子を使用した液体吐出ヘッドにおいては、所定のピッチで配列された圧電素子の個別電極にFPCなどの配線部材の配線パターンをはんだによって接合している。
【0005】
従来、複数の個別電極とそれぞれ電気的に接合された導電性の複数のバンプを突出状に形成し、FPCの導体部を覆う未硬化の合成樹脂層を塗布してから、未硬化の合成樹脂層に複数のバンプを押し当てて合成樹脂層を貫通させ、複数のバンプと導体部の端子部とを接触させた後合成樹脂層を硬化させ記録ヘッドの製造方法が知られている(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−34309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、液体吐出ヘッドにあっては、高画質化を図るために、多数のノズルを高密度に配置する必要があり、一つのヘッド内で配線部材の配線パターンと接合する圧電素子の数も増大し、接合不良が発生するおそれが高まっている。
【0008】
また、高密度化されたヘッドでは配線部材の配線パターン同士の間隔が狭くなるので、短絡を避けるためにはんだを薄くしておく必要が生じている。そのため、圧電素子と配線部材の配線パターンとの接合不良が生じやすくなっている。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、圧電素子と配線パターンとの接合不良を容易に修復できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明に係る圧電アクチュエータは、
複数の圧電素子と、各々の前記圧電素子に接合される複数の配線パターンを有する配線部材と、を備え、
前記圧電素子と前記配線パターンとははんだにより接合され、
前記配線部材の前記配線パターン上には、前記圧電素子と前記配線パターンとが重なる領域以外の部分に、前記圧電素子と前記配線パターンとの接合に用いられる量以上の量のはんだが貯留されるはんだ溜まり部を有している
構成とした。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、圧電素子と配線パターンとの接合不良を容易に修復できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る液体吐出ヘッドの一例の外観斜視説明図である。
【図2】同ヘッドのノズル配列方向と直交する方向(液室長手方向:図1のA−A線)に沿う断面説明図である。
【図3】同ヘッドのノズル配列方向(液室短手方向:図1のB−B線)に沿う断面説明図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る圧電アクチュエータにおける配線部材と圧電部材との接合部分の接合前の状態の側面説明図である。
【図5】同配線部材を配線パターン側から見た正面説明図である。
【図6】本発明に係る液体吐出ヘッドの製造方法の説明供する配線部材と圧電部材との接合部分の接合後の状態の側面説明図である。
【図7】同じく接合不良が生じた状態の側面説明図である。
【図8】同じく接合不良箇所の修復の説明に供する側面説明図である。
【図9】同じく接合不良箇所の修復の他の例の説明に供する側面説明図である。
【図10】同じく接合不良箇所をスポット的に修復した配線部材の状態を説明する斜視説明図である。
【図11】比較例の配線部材と圧電部材との接合部分の接合前の状態の側面説明図である。
【図12】同じく接合後の状態の側面説明図である。
【図13】本発明の第2実施形態に係る圧電アクチュエータにおける配線部材を配線パターン側から見た正面説明図である。
【図14】本発明の第3実施形態に係る圧電アクチュエータにおける配線部材を配線パターン側から見た正面説明図である。
【図15】本発明の第4実施形態に係る圧電アクチュエータにおける配線部材を配線パターン側から見た正面説明図である。
【図16】本発明の第5実施形態に係る圧電アクチュエータにおける配線部材を配線パターン側から見た正面説明図である。
【図17】本発明の第6実施形態に係る圧電アクチュエータにおける配線部材を配線パターン側から見た正面説明図である。
【図18】本発明の第7実施形態に係る圧電アクチュエータにおける配線部材を配線パターン側から見た正面説明図である。
【図19】本発明の第8実施形態に係る圧電アクチュエータにおける配線部材を配線パターン側から見た正面説明図である。
【図20】本発明の第9実施形態に係る圧電アクチュエータにおける配線部材を配線パターン側から見た正面説明図である。
【図21】本発明に係る画像形成装置の一例の機構部の側面説明図である。
【図22】同機構部の要部平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。本発明に係る液体吐出ヘッドの一例について図1ないし図3を参照して説明する。図1は同ヘッドの外観斜視説明図、図2は同ヘッドのノズル配列方向と直交する方向(液室長手方向:図1のA−A線)に沿う断面説明図、図3は同ヘッドのノズル配列方向(液室短手方向:図1のB−B線)に沿う断面説明図である。
【0014】
この液体吐出ヘッドは、SUS基板などで形成した流路板(流路部材、流路基板、液室基板)1と、この流路板1の下面に接合した振動板を形成する振動板部材2と、流路板1の上面に接合したノズル板3とを有している。これらの部材によって、液滴を吐出する複数のノズル4がそれぞれ通じる個別流路としての複数の個別液室(加圧液室、圧力室、加圧室、流路などとも称される。)6、個別液室6にインクを供給する供給路を兼ねた流体抵抗部7、この流体抵抗部7を介して個別液室6に通じる液体導入部8を形成し、液体導入部8に振動板部材2に形成した供給口9を介して後述するフレーム部材17に形成した共通液室10からインクを供給する。
【0015】
流路板1は、SUS基板を、酸性エッチング液を用いてエッチング、あるいは打ち抜き(プレス)などの機械加工することで、個別液室6、流体抵抗部7などの開口をそれぞれ形成している。なお、流路板1は、例えば単結晶シリコン基板をエッチングして形成することなどもできる。
【0016】
振動板部材2は、第1層2Aと第2層2Bとで形成されて、第1層2Aで薄肉部を形成し、第1層2A及び第2層2Bで厚肉部を形成している。そして、この振動板部材2は、各液室6に対応してその壁面を形成する第1層2Aで形成された各振動領域(ダイアフラム部)2aを有し、この振動領域2aの中に、面外側(液室6と反対面側)に第1層2A及び第2層2Bの厚肉部で形成された島状凸部2bが設けられ、また、液室間隔壁30に対応する部分に同様に厚肉部2cが設けられている。
【0017】
そして、この振動板部材2の液室6と反対側に振動領域2aを変形させる駆動手段(アクチュエータ手段、圧力発生手段)としての電気機械変換素子を含む圧電アクチュエータ11を配置している。
【0018】
この圧電アクチュエータ11は、ベース部材13上に接着剤接合した複数(ここでは2つとする)の本発明に係る積層型圧電素子である積層型圧電部材12を有し、圧電部材12にはハーフカットダイシングによって溝加工して1つの圧電部材12に対して所要数の柱状の圧電素子である圧電柱12A、12Bを所定の間隔で櫛歯状に形成している。
【0019】
なお、圧電部材12の圧電柱12A、12Bは、同じものであるが、駆動波形を与えて駆動させる圧電柱を駆動柱12A、駆動波形を与えないで単なる支持柱として使用する圧電柱を非駆動柱12Bとして区別している。つまり、所謂バイピッチ構成としている。
【0020】
そして、駆動柱12Aの上端面(接合面)を振動板部材2の島状凸部2bに接合して接合している。また、非駆動柱12Bの上端面は液室間隔壁30に対応する位置で振動板部材2の厚肉部2cに接合している。
【0021】
ここで、圧電部材12は、圧電材料層(圧電層)21と内部電極22A、22Bとを交互に積層したものであり、内部電極22A、22Bをそれぞれ端面、即ち圧電部材12の振動板部材2に略垂直な側面(積層方向に沿う面)に引き出して、この側面に形成された端面電極である個別外部電極23、共通外部電極24に接続し、外部電極23、24間に電圧を印加することで積層方向の変位を生じる。なお、共通外部電極24は図示しない内部電極を通じて個別外部電極23側の端面であって、圧電部材12のノズル配列方向の端部に引出されている。
【0022】
また、ベース部材13のノズル配列方向と直交する方向の両側面には配線部材としてのフレキシブル配線基板である例えばFPC15が設けられている。そして、圧電部材12の駆動柱12Aの個別外部電極23及び共通外部電極24と導通しFPC15側に引き出された取出し用共通外部電極(不図示)とFPC15の配線電極(以下「配線パターン」という。)とははんだ接合で接続され、FPC15には駆動柱12Aに駆動信号を与える駆動回路(ドライバIC)が実装されている。
【0023】
ノズル板3は、ニッケル(Ni)の金属プレートから形成したもので、エレクトロフォーミング法(電鋳)で製造している。このノズル板3には各液室6に対応して直径10〜35μmのノズル4を形成し、流路板1に接着剤接合している。そして、このノズル板3の液滴吐出側面(吐出方向の表面:吐出面、又は液室6側と反対の面)には撥水層を設けている。
【0024】
さらに、これらの圧電部材12、ベース部材13及びFPC15などで構成される圧電アクチュエータ11の外周側には、エポキシ系樹脂或いはポリフェニレンサルファイトで射出成形により形成したフレーム部材17を接合している。そして、このフレーム部材17には前述した共通液室10を形成し、更に共通液室10に外部からインクを供給するための供給口を形成し、この供給口19は更に図示しないサブタンクやインクカートリッジなどのインク供給源に接続される。
【0025】
このヘッドでは、圧電柱12A、12Bは300dpiの間隔でダイシングされており.それが対向して2列配置され、個別液室6及びノズル4は、1列150dpiの間隔で2列がそれぞれ千鳥配置に整列しており,300dpiの解像度を1スキャンで得ることができる構成としている。
【0026】
このように構成した液体吐出ヘッドにおいては、例えば駆動柱12Aに印加する電圧を基準電位から下げることによって駆動柱12Aが収縮し、振動板部材2の液室壁面を形成する振動領域2aが下降して個別液室6の容積が膨張することで、個別液室6内にインクが流入し、その後駆動柱12Aに印加する電圧を上げて駆動柱12Aを積層方向に伸長させ、振動板部材2の振動領域2aをノズル4方向に変形させて液室6の容積を収縮させることにより、液室6内のインクが加圧され、ノズル4からインク滴が吐出(噴射)される。
【0027】
そして、駆動柱12Aに印加する電圧を基準電位に戻すことによって振動板部材2の振動領域2aが初期位置に復元し、液室6が膨張して負圧が発生するので、このとき、共通液室10から液室6内にインクが充填される。そこで、ノズル4のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の液滴吐出のための動作に移行する。
【0028】
なお、このヘッドの駆動方法については上記の例(引き−押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行なうこともできる。
【0029】
次に、本発明の第1実施形態に係る圧電アクチュエータについて図4及び図5を参照して説明する。図4は同実施形態における配線部材について図4及び図5を参照して説明する。同配線部材と圧電部材との接合部分の接合前の状態の側面説明図、図5は同配線部材を配線パターン側から見た正面説明図である。
【0030】
配線部材としてのFPC15は、基材41上に各個別外部電極23に対応して配線パターン42が形成されている。そして、圧電素子(圧電部材12)と配線パターン42とが重なる領域(これを、以下「接合領域」という。)43にははんだ51が設けられている。
【0031】
また、FPC15には、配線パターン上の接合領域43以外の領域である部分44には、圧電部材12の個別外部電極23と配線パターン42との接合に用いられる量以上の量のはんだが貯留されるはんだ溜まり部45を有している。このはんだ溜まり部45は、FPC15を配線パターン側から見た形状を正面形状とするとき、正面形状で、配線パターン42と同じ幅の矩形状に形成されている。
【0032】
次に、この配線部材であるFPC15を圧電部材12に接合してヘッドを製造する本発明に係る液体吐出ヘッドの製造方法について図6ないし図9を参照して説明する。
【0033】
まず、FPC15の配線パターン42上の接合領域43及びはんだ溜まり部45にはんだ51を配置する(図4参照)。そして、FPC15と圧電部材12を密着させ、FPC15の基材41側から接合領域43にレーザーを照射してはんだ51を溶融させ、配線パターン42と圧電部材12の個別外部電極23に接合する(第1ステップ)。
【0034】
このとき、配線パターン42と圧電部材12の個別外部電極23とをはんだ51で良好に接合できれば、図6に示すように、配線パターン42と個別外部電極23の全面がはんだ51で接合される。
【0035】
これに対し、FPC15と圧電部材12の密着が不十分であったり、接合領域43のはんだの量が配線パターンごとにばらついて不足気味であったりすると、図7に示すように、配線パターン42と個別外部電極23との間で、溶融されたはんだ51が個別外部電極23に接合されずに、配線パターン42と個別外部電極23との接合不良が生じることがある。
【0036】
そこで、この場合には、配線パターン部44のはんだ溜まり部45に溜まったはんだ51を溶融させ、接合領域43側へ移動させることで、配線パターン42と個別外部電極23とを接合する(第2ステップ)。
【0037】
この場合、はんだ溜まり部45から溶融されたはんだ51を接合領域43に向けて移動させるには、次の方法による。
【0038】
例えば、図8に示すように、配線パターン部44側から空気圧を与えて溶融したはんだ51を移動させる。あるいは、図9に示すように、圧電部材12とFPC15とからなるワークの上下逆にして、配線パターン部44側から重力によって溶融したはんだ51を移動させる。
【0039】
このように、はんだ溜まり部を有することで、接合不良が生じた場合には、はんだ溜まり部のはんだを再溶融させて接合領域に移動させることができ、接合不良を容易に修復して、信頼性の高い接合を行うことができる。
【0040】
ここで、前記第2ステップは接合不良の配線パターンのみではなく、全ての配線パターンに対して行ってもよい。この場合、はんだ溜まり部のはんだは接合領域とは異なる位置に配置されているので加圧等がされることなく、FPCの配線パターンと圧電部材の隙間を埋める分だけが供給されるため、良好に接合ができている領域に第2ステップを施したとしても接合性に不具合を与えることはない。
【0041】
また、第1ステップ完了後に接合不良箇所を検出し、接合不良箇所に対応するはんだ溜まり部のみをスポット的に溶融させて接合不良箇所を修復してもよい。この場合、はんだ溜まり部のはんだは、スポット的に溶融させた部分のみが流れだすため、このように製造された圧電アクチュエータでは、スポット的に溶融させたはんだ溜まり部のはんだ量がそれ以外のはんだ溜まり部のはんだ量に比べて少なく形成される。
【0042】
このように、接合不良箇所に対応するはんだ溜まり部のみをスポット的に溶融させて接合不良箇所を修復した場合、図10に示すように、修復した配線パターン42に対応するはんだ溜まり部45Aに貯留されるはんだ51の量は、圧電部材12と配線パターン42との接合に用いられるはんだ51の量よりも少なくなる。
【0043】
ここで、比較例について図11及び図12を参照して説明する。
【0044】
この比較例は、図11に示すように、配線パターン42上に同じ厚みではんだ51を配置したものである。このような構成にあっては、接合時に、前述したように、溶融されたはんだ51が個別外部電極23に接合されずに、配線パターン42と個別外部電極23との接合不良が生じることがある。
【0045】
このような状態でたとえ再溶融を行ったとしても、前述のような接合不良の原因となる不具合(FPC15と圧電部材12の密着が不十分であったり、接合領域43のはんだの量が配線パターンごとにばらついて不足気味であったりすること)は改善されていないため、同様の接合不良が再現する可能性が高く、接合不良を改善することはできない。
【0046】
次に、本発明の第2実施形態に係る圧電アクチュエータについて図13を参照して説明する。図13は同実施形態における配線部材を配線パターン側から見た正面説明図である。
【0047】
本実施形態では、FPC15には、配線パターン部44に配線パターン42よりも幅広のはんだ溜まり部45を有している。このはんだ溜まり部45は、FPC15を配線パターン側から見た形状を正面形状とするとき、正面形状でほぼ矩形状に形成されている。
【0048】
はんだ溜まり部45の面積を広くすることで、より多くのはんだ51を溜めることができ、接合不良部の再接合を容易に行うことができる。
【0049】
次に、本発明の第3実施形態に係る圧電アクチュエータについて図14を参照して説明する。図14は同実施形態における配線部材を配線パターン側から見た正面説明図である。
【0050】
本実施形態では、FPC15のはんだ溜まり部45は、正面形状で、接合領域43側に向かって細くなる三角形状としている。
【0051】
これにより、はんだ溜まり部45で溶融されたはんだ51は接合領域43に向かって移動し易くなる。
【0052】
次に、本発明の第4実施形態に係る圧電アクチュエータについて図15を参照して説明する。図15は同実施形態における配線部材を配線パターン側から見た正面説明図である。
【0053】
本実施形態では、FPC15のはんだ溜まり部45は、正面形状で、配線パターン42の並び方向(形成方向と直交する方向)に長い長方形状としている。そして、各配線パターン42のはんだ溜まり部45は、配線パターン42の並び方向で千鳥状に(配線パターン42の形成方向の位置が互い違いになるように)配置している。
【0054】
すなわち、はんだ溜まり部45は、できるかぎり広い面積であることが好ましいが、隣接する配線パターン42との間で短絡しないようにしなければならない。はんだ溜まり部45を千鳥状に配置することで、はんだ溜まり部45の面積を確保しながら、隣接する配線パターン42との短絡を防止できる。
【0055】
次に、本発明の第5実施形態に係る圧電アクチュエータについて図16を参照して説明する。図16は同実施形態における配線部材を配線パターン側から見た正面説明図である。
【0056】
本実施形態では、FPC15のはんだ溜まり部45は、正面形状で、平行四辺形状としている。これにより、千鳥配置としないでも、はんだ溜まり部45の面積を確保しながら、隣接する配線パターン42との短絡を防止できる。
【0057】
次に、本発明の第6実施形態に係る圧電アクチュエータについて図17を参照して説明する。図17は同実施形態における配線部材を配線パターン側から見た正面説明図である。
【0058】
本実施形態では、前記第2実施形態のFPC15において、配線パターン42の圧電部材12との接合領域43を先端部側(下流側)とし、配線パターン部44側を後端部側(上流側)とするとき、はんだ溜まり部45よりも後端側(上流側)には、配線パターン42を覆うレジストパターン47が全面に形成されている。
【0059】
つまり、配線部材であるFPC15は、配線パターン42の圧電部材12と重なる領域とはんだ溜まり部45を挟んで反対側の領域がレジストパターン47で覆われている。
【0060】
これによって、はんだ溜まり部45のはんだを溶融する際に溶融したはんだ51が圧電部材12との接合領域43と反対側に流れ出すことを防止できる。つまり、このレジストパターン47ははんだ51の流れ出しを規制する規制手段を構成している。
【0061】
次に、本発明の第7実施形態に係る圧電アクチュエータについて図18を参照して説明する。図18は同実施形態における配線部材を配線パターン側から見た正面説明図である。
【0062】
本実施形態では、前記第4実施形態のFPC15において、前記第6実施形態と同様に、前記配線パターン42のはんだ51が配置されない領域、すなわち、はんだ溜まり部45よりも後端側(上流側)には、配線パターン42を覆うレジストパターン47が全面に形成されている。これにより、前記第6実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0063】
次に、本発明の第8実施形態に係る圧電アクチュエータについて図19を参照して説明する。図19は同実施形態における配線部材を配線パターン側から見た正面説明図である。
【0064】
本実施形態では、前記第6実施形態のFPC15において、配線パターン42を覆うレジストパターン47を配線パターン42上に形成したものである。このように構成しても、溶融はんだ51の流れ出しを防止できる。
【0065】
次に、本発明の第9実施形態に係る圧電アクチュエータについて図20を参照して説明する。図20は同実施形態における配線部材を配線パターン側から見た正面説明図である。
【0066】
本実施形態では、前記第7実施形態のFPC15において、配線パターン42を覆うレジストパターン47を配線パターン42上に形成したものである。このように構成しても、溶融はんだ51の流れ出しを防止できる。
【0067】
なお、以上の圧電アクチュエータの実施形態において、はんだ溜まり部45の配置はFPC15の全ての配線パターン上に設けてもよいし、特定の配線パターン上にのみ設けてもよい。例えば、長尺の圧電アクチュエータを形成してFPC15と圧電部材12を接合する場合などは、アクチュエータの端部は比較的容易に加圧できてFPC15と圧電部材12の密着が確保できるが、中央部付近を均一に加圧することは難しく、接合不良が発生しやすい。そのため、FPC15の中央付近の配線パターンにのみはんだ溜まり部45を設ける構成とすることで、FPC15にめっき等で付着させるはんだの量を低減し、製造コストを低減することができる。
【0068】
本発明に係る液体吐出ヘッドは上記各実施形態に係る圧電アクチュエータを備えることができる。これにより、信頼性の高いヘッドを得ることができる。上記各実施形態の圧電アクチュエータを備える実施形態の液体吐出ヘッドにインクを供給するタンクを一体にしてインクタンク一体型ヘッドを構成することもできる。
【0069】
次に、本発明に係る液体吐出ヘッドを備える本発明に係る画像形成装置の一例について図21及び図22を参照して説明する。なお、図21は同装置の機構部の側面説明図、図22は同機構部の要部平面説明図である。
【0070】
この画像形成装置はシリアル型画像形成装置であり、左右の側板221A、221Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド231、232でキャリッジ233を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
【0071】
このキャリッジ233には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための本発明に係る液体吐出ヘッドと同ヘッドに供給するインクを収容するタンクを一体化した記録ヘッド234を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0072】
記録ヘッド234は、それぞれ2つのノズル列を有し、一方の記録ヘッド234aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、他方の記録ヘッド234bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。なお、ここでは2ヘッド構成で4色の液滴を吐出する構成としているが、1ヘッド当たり4ノズル列配置とし、1個のヘッドで4色の各色を吐出させることもできる。
【0073】
また、記録ヘッド234のタンク235には各色の供給チューブ236を介して、供給ユニット224によって各色のインクカートリッジ210から各色のインクが補充供給される。
【0074】
一方、給紙トレイ202の用紙積載部(圧板)241上に積載した用紙242を給紙するための給紙部として、用紙積載部241から用紙242を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)243及び給紙コロ243に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド244を備え、この分離パッド244は給紙コロ243側に付勢されている。
【0075】
そして、この給紙部から給紙された用紙242を記録ヘッド234の下方側に送り込むために、用紙242を案内するガイド245と、カウンタローラ246と、搬送ガイド部材247と、先端加圧コロ249を有する押さえ部材248とを備えるとともに、給送された用紙242を静電吸着して記録ヘッド234に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト251を備えている。
【0076】
この搬送ベルト251は、無端状ベルトであり、搬送ローラ252とテンションローラ253との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト251の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ256を備えている。この帯電ローラ256は、搬送ベルト251の表層に接触し、搬送ベルト251の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト251は、図示しない副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ252が回転駆動されることによってベルト搬送方向に周回移動する。
【0077】
さらに、記録ヘッド234で記録された用紙242を排紙するための排紙部として、搬送ベルト251から用紙242を分離するための分離爪261と、排紙ローラ262及び排紙コロ263とを備え、排紙ローラ262の下方に排紙トレイ203を備えている。
【0078】
また、装置本体の背面部には両面ユニット271が着脱自在に装着されている。この両面ユニット271は搬送ベルト251の逆方向回転で戻される用紙242を取り込んで反転させて再度カウンタローラ246と搬送ベルト251との間に給紙する。また、この両面ユニット271の上面は手差しトレイ272としている。
【0079】
さらに、キャリッジ233の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド234のノズルの状態を維持し、回復するための回復手段を含む本発明に係るヘッドの維持回復装置である維持回復機構281を配置している。この維持回復機構281には、記録ヘッド234の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)282a、282b(区別しないときは「キャップ282」という。)と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード283と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け284などを備えている。
【0080】
また、キャリッジ233の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け288を配置し、この空吐出受け288には記録ヘッド234のノズル列方向に沿った開口部289などを備えている。
【0081】
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ202から用紙242が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙242はガイド245で案内され、搬送ベルト251とカウンタローラ246との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド237で案内されて先端加圧コロ249で搬送ベルト251に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0082】
このとき、帯電ローラ256に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト251が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト251上に用紙242が給送されると、用紙242が搬送ベルト251に吸着され、搬送ベルト251の周回移動によって用紙242が副走査方向に搬送される。
【0083】
そこで、キャリッジ233を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド234を駆動することにより、停止している用紙242にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙242を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙242の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙242を排紙トレイ203に排紙する。
【0084】
このように、この画像形成装置では、本発明に係る液体吐出ヘッドを記録ヘッドとして備えるので、高画質画像を安定して形成することができる。
【0085】
なお、本願において、「用紙」とは材質を紙に限定するものではなく、OHP、布、ガラス、基板などを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含む。また、画像形成、記録、印字、印写、印刷はいずれも同義語とする。
【0086】
また、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。
【0087】
また、「インク」とは、特に限定しない限り、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。
【0088】
また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0089】
また、画像形成装置には、特に限定しない限り、シリアル型画像形成装置及びライン型画像形成装置のいずれも含まれる。
【符号の説明】
【0090】
1 流路板
2 振動板部材
3 ノズル板
4 ノズル
5 ノズル連通路
6 加圧液室(個別液室、個別液室)
10 共通液室
12 圧電部材
12A、12B 圧電柱
15 FPC(配線部材)
23 個別外部電極
41 基材
42 配線パターン
43 圧電素子と配線パターンが重なる領域(接合領域)
44 圧電素子と配線パターンが重なる領域以外の領域
45 はんだ溜まり部
47 レジストパターン
51 はんだ
233 キャリッジ
234a、234b 記録ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の圧電素子と、各々の前記圧電素子に接合される複数の配線パターンを有する配線部材と、を備え、
前記圧電素子と前記配線パターンとははんだにより接合され、
前記配線部材の前記配線パターン上には、前記圧電素子と前記配線パターンとが重なる領域以外の部分に、前記圧電素子と前記配線パターンとの接合に用いられる量以上の量のはんだが貯留されるはんだ溜まり部を有している
ことを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項2】
前記配線部材に設けられた複数の前記配線パターンのうち、一部の配線パターンに対応する前記はんだ溜まり部に貯留されるはんだの量が、他の配線パターンに対応する前記はんだ溜り部に貯留されるはんだの量よりも少ないことを特徴とする請求項1に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項3】
前記一部の配線パターンに対応する前記はんだ溜まり部に貯留されるはんだの量は、前記圧電素子と前記配線パターンとの接合に用いられるはんだの量よりも少ないことを特徴とする請求項2に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項4】
前記圧電素子と前記配線パターンが重なる領域以外の前記配線パターン部に、前記配線パターンよりも幅の広いはんだ溜まり部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか2に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項5】
複数の前記配線パターン部に各々設けられた前記はんだ溜まり部は、前記配線パターンの並び方向で千鳥状に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項6】
前記配線部材は、前記配線パターンの前記圧電素子と重なる領域と前記はんだ溜まり部を挟んで反対側の領域がレジストパターンで覆われていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の圧電アクチュエータ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の圧電アクチュエータを備えていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項8】
請求項7に記載の液体吐出ヘッドを備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
複数の圧電素子と、各々の前記圧電素子に接合される複数の配線パターンを有する配線部材と備え、
前記圧電素子と前記配線パターンとの接合をはんだにより行う圧電アクチュエータの製造方法において、
前記圧電素子と前記配線パターンが重なる領域に配置されたはんだを溶融し、前記圧電素子と前記配線パターンとの接合を行う第1のステップと、
前記圧電素子と前記配線パターンとがはんだ接合されていない接合不良箇所に対して、前記圧電素子と前記配線パターンが重なる領域以外の配線パターン部に設けられたはんだを溶融し、前記圧電素子と前記配線パターンが重なる領域へ移動させて接合を行う第2のステップとを有する
ことを特徴とする圧電アクチュエータの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate


【公開番号】特開2013−59932(P2013−59932A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200281(P2011−200281)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】