圧電アクチュエータ駆動回路及び液体吐出装置
【課題】駆動回路の出力がグランド等に短絡しても、駆動回路を破損することなく保護することができる圧電アクチュエータ駆動回路及び液体吐出装置を提供する。
【解決手段】駆動回路100を起動する際に圧電アクチュエータ58に接続される電気配線と駆動回路100の電気接続を遮断し、該電気配線と電気接続される出力線112に検査用電源供給部122から検査用の電源が供給される。この状態で出力部112の電位を検出し、検出電位に基づいて該電気配線の短絡が検出される。電気配線が短絡している場合には駆動回路100と圧電アクチュエータ58との間の電気接続を遮断した状態を維持し、電気配線が短絡していない場合には検査用の電源供給を停止するとともに、駆動回路100と圧電アクチュエータ58との間の電気接続が行われる。
【解決手段】駆動回路100を起動する際に圧電アクチュエータ58に接続される電気配線と駆動回路100の電気接続を遮断し、該電気配線と電気接続される出力線112に検査用電源供給部122から検査用の電源が供給される。この状態で出力部112の電位を検出し、検出電位に基づいて該電気配線の短絡が検出される。電気配線が短絡している場合には駆動回路100と圧電アクチュエータ58との間の電気接続を遮断した状態を維持し、電気配線が短絡していない場合には検査用の電源供給を停止するとともに、駆動回路100と圧電アクチュエータ58との間の電気接続が行われる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧電アクチュエータ駆動回路及び液体吐出装置に係り、特に圧電アクチュエータに駆動電圧を印加する駆動回路の保護技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、カラー画像を形成する汎用の画像形成装置として、インクジェット記録装置が広く用いられている。インクジェット記録装置は、例えば、K(黒)、C(シアン)、M(マゼンダ)、Y(イエロー)の各色に対応するインクジェットヘッドを備え、色ごとに設けられた各ヘッドからカラーインクを吐出して、記録媒体に所望のカラー画像を形成するように構成されている。
【0003】
インクジェットヘッドには、多数のノズルに対応してそれぞれに圧電アクチュエータ(ピエゾアクチュエータ)などの吐出力発生素子が設けられ、それぞれに吐出力発生素子に対して所定の駆動電圧を与えると、各ノズルから所定のタイミングで所定量のインクが吐出される。
【0004】
ここで、図10を用いて、従来技術に係るピエゾアクチュエータに与える駆動電圧を生成する駆動回路について説明する。
【0005】
同図に示すように、インクジェットヘッド200には、多数のノズル(不図示)に対応してピエゾアクチュエータ202が設けられている。ピエゾアクチュエータ202には駆動電圧が印加される電極(不図示)が設けられ、該電極はフレキシブルフラットケーブル204に形成された駆動電圧線(及びリターン電圧線)を含む配線パターンを介して駆動回路220の出力部266に接続されている。
【0006】
駆動回路220を動作させて、所定の駆動波形を有する駆動電圧が出力されると、該駆動電圧はフレキシブルフラットケーブル204を介してピエゾアクチュエータ202に伝送される。
【0007】
図10に示す駆動回路220の動作を簡単に説明する。駆動波形を記憶した波形データ記憶部224からデジタルデータ列(波形データ列)226が順次読み出され、D/Aコンバータ228でアナログ信号に変換されるとともに、該アナログ信号はオペアンプ230によって電圧増幅される。
【0008】
オペアンプ230の出力には、所定の入力回路240を介してトランジスタ232,234がトーテムポール接続された構成を含むブースト回路240が接続され、ピエゾアクチュエータ202の駆動源である駆動用電源供給部(+V2)からピエゾアクチュエータ202を駆動するための大きな出力電流を流せるようにしている。これは、ピエゾアクチュエータ202は電気的にコンデンサと等価であり、ピエゾアクチュエータ202に対して電圧パルス信号(駆動電圧)を与えたときに、コンデンサを充放電するための大きな電流を瞬間的に流す必要があるためである。なお、ピエゾアクチュエータ202の駆動電圧+V2には、20V〜30Vの直流電圧が適用される。
【0009】
また、駆動回路220はオペアンプ230及びブースト回路240を含む増幅回路のフィードバック回路を構成する抵抗器236,238を含み、さらに、ブースト回路240の入力回路は、一方の端子が低電圧源+V1に接続されるとともに他方の端子がトランジスタ232ベースに接続される抵抗器242、一方の端子がマイナス電圧源−Vに接続されるとともに他方の端子がトランジスタ234のベースに接続される抵抗器244、一方の端子がトランジスタ232のベースに接続されるとともに他方の端子がオペアンプ230の出力に接続されるダイオード246、一方の端子がトランジスタ234のベースに接続されるとともに他方の端子がオペアンプ230の出力に接続されるダイオード248を含んで構成されている。
【0010】
図10に示すように、インクジェットヘッド200内部には、各ノズル(不図示)に対応したピエゾアクチュエータ202が形成され、個々にアナログスイッチ250が接続されている。アナログスイッチ250の片側はいずれも駆動回路220の出力に接続されている。
【0011】
さらに、インクジェットヘッド200とのインターフェース(不図示)には画像データを通信するためのポート(不図示)があり、駆動回路220が駆動電圧を生成するタイミングに同期して画像データ(アナログスイッチ250のオンオフを制御する制御信号)を通信し、画像データにしたがって各アナログスイッチ250をそれぞれオンオフしている。このような構成により、画像データに応じて各ピエゾアクチュエータ202を駆動又は非駆動を制御することで、インク吐出パターンを生成している。
【0012】
言い換えると、駆動回路220の出力部266からは、複数のピエゾアクチュエータ202に共通の駆動電圧が印加され、該駆動電圧とは別に各ピエゾアクチュエータ202に接続されるアナログスイッチ250のオンオフを制御する制御信号が印加される。駆動電圧の波形によってインク吐出量が決められ、制御信号によってインク吐出タイミングが決められている。
【0013】
装置の小型化と高機能化にともない、ノズル数の増加並びにヘッド自体の小型化が進んでいる。このため、駆動回路220(駆動回路基板222)とインクジェットヘッド200の接続には、狭ピッチ多ピンコネクタ260が好適に使われている。狭ピッチ多ピンコネクタ260は、1ピンあたりに流せる電流量が小さいために、ピエゾアクチュエータ202を駆動可能な大きな電流を流せるように駆動電圧線262とリターン線264を複数のピンに割り当てることが多く、さらに、伝送路のインピーダンスを小さくするため、駆動信号線262とリターン線264を交互(互いに隣り合わせ)に配置することが行われている。
【0014】
ところで、この狭ピッチ多ピンコネクタ260は、抜き差しに伴い誤ってオス・メス同士が互いに斜めに刺さったまま引っかかって固定されてしまうことがある。狭ピッチ多ピンコネクタ260が斜め差しされると、駆動回路の出力部266が駆動電圧線262及びリターン線264を介してグランド268に短絡されることになる。
【0015】
通常、駆動回路220の起動時には、初期動作として駆動回路の出力部266を数ボルト程度にすることが多いが、もし駆動回路の出力部266がグランド268に短絡されたまま駆動回路220を起動すると、本来数ボルトとなるべき出力が常時0Vとなり、オペアンプ230の入力にフィードバックがかかり、オペアンプ230の出力が最大値まで上昇する。このとき、トランジスタ232のベース電位もオペアンプ230の出力の上昇に応じて上昇する。
【0016】
これに対して、トランジスタ232のエミッタは出力部266を介して電位は0V(グランド)に短絡されているので、トランジスタ232のベース−エミッタ間に印加される電圧は最大で+V1(20V〜30V)となる。一般的にトランジスタ232のベース−エミッタ間電圧の最大定格は数V程度であり、トランジスタ232のベース−エミッタ間に印加される電圧が最大定格を超えてしまうことにより、トランジスタ232を破損してしまう。
【0017】
このような駆動回路220の出力部266とグランド268の間の短絡の対策としては、図11に示すように、トランジスタ232のベース入力回路に抵抗器280,282から構成される分圧回路を追加して、トランジスタ232のベース−エミッタ間に最大定格を超える電圧が印加されないように保護する方法が知られている。
【0018】
また、圧電アクチュエータの駆動回路の保護として、特許文献1には、駆動回路から圧電素子へ流れる電流を検出し、検出結果に基づき、正常、開放、短絡の判定を行うヘッドユニット検査装置が記載されている。
【0019】
さらに、特許文献2には、複数の圧電素子を取り囲むようにインク漏れ検出用の電極対を設け、両電極間の電位差が所定のしきい値を超えたことが検出された場合には、所定の警告表示等を行うインクジェット式記録装置が記載されている。
【特許文献1】特開平9−48117号公報
【特許文献2】特開2004−58633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、図11に示す構成では、トランジスタ232,234のベース・エミッタ間容量とベース抵抗が高周波信号を遮断するフィルタ(低域通過フィルタ)を形成してしまうので、駆動回路220の応答性が低下してしまうという問題がある。
【0021】
また、特許文献1に記載されたヘッドユニット検査装置は、駆動回路を起動した後に負荷(ピエゾアクチュエータ)の短絡状態を検査するものであって、特許文献1に記載された構成では、駆動回路の起動時において、出力電圧線とリターン線の短絡から駆動回路を保護することは困難である。
【0022】
一方、特許文献2に記載されたインクジェット式記録装置は、起動前の短絡状態を検査することが可能であるものの、検出用の端子を独立に備える構成であって、コネクタの接続不良(誤差し)に対しては必ずしも有効といえない。
【0023】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、駆動回路の出力がグランド等に短絡しても、駆動回路を破損することなく保護することができる圧電アクチュエータ駆動回路及び液体吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記目的を達成するために、本発明に係る圧電アクチュエータ駆動回路は、駆動電圧を表すデジタルデータ列に基づいて所定の駆動電圧を発生させる駆動電圧発生部と、前記駆動電圧発生部と前記駆動電圧発生部から供給される駆動電圧により駆動される圧電アクチュエータを電気接続する出力線と、前記出力線に検査用の直流電圧を印加する検査用電源供給部と、前記駆動電圧発生部と前記出力線の間に設けられ、前記駆動電圧発生部と前記出力線の間の電気接続の開閉を切り換える第1のスイッチと、前記検査用電源供給部と前記出力線との間に設けられ、前記検査用電源供給部と前記出力線の間の電気接続の開閉を切り換える第2のスイッチと、前記出力線の電位を検出する出力電位検出部と、前記出力電位検出部によって検出された検出電位に基づいて、前記出力線及び前記出力線と前記圧電アクチュエータとの間の電気配線の短絡の有無を判断する判断部と、前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチの開閉を制御するスイッチ制御部と、を備え、前記スイッチ制御部は、起動時において前記第1のスイッチを開くとともに前記第2のスイッチを閉じるように前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチを制御し、起動時の検査において、前記判断部によって前記電気配線に短絡があると判断されると前記第1のスイッチを開いた状態及び前記第2のスイッチを閉じた状態を維持し、一方、前記電気配線に短絡がないと判断されると前記第1のスイッチを閉じるとともに前記第2のスイッチを開くように前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチを制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、圧電アクチュエータに供給する駆動電圧を生成する駆動回路を起動する際に、該回路駆動電圧発生部と出力線の間の電気接続を開放(遮断)するとともに、検査用電源供給部から出力線に検査用の電圧を供給して、出力線及び出力線と圧電アクチュエータとの間の電気配線の短絡の有無を判断するので、該電気配線が短絡していたとしても駆動回路(駆動電圧発生部)を破損させることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0027】
〔インクジェット記録装置の全体構成〕
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置10の全体構成を示す概略図である。同図に示すように、インクジェット記録装置10は、黒(K),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)の各インクに対応して設けられた複数のインクジェットヘッド(以下、ヘッドという。)12K,12C,12M,12Yを有する印字部12と、各ヘッド12K,12C,12M,12Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、記録媒体たる記録紙16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20と、各ヘッド12K,12C,12M,12Yのノズル面に対向して配置され、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を搬送する吸着ベルト搬送部22と、印字部12の印字結果を読み取る印字検出部24と、記録済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部26と、を備えている。
【0028】
図1には図示しないが、印字部12に含まれる各ヘッド12K,12C,12M,12Yのそれぞれの上面(記録紙16と対向する面と反対側の面)には、各ヘッド12K,12C,12M,12Yの駆動回路基板(図8に符号101で図示)が立てた状態で配置される。
【0029】
インク貯蔵/装填部14は、各ヘッド12K,12C,12M,12Yに対応する色のインクを貯蔵するインク供給タンク(図1中不図示、図6に符号60で図示)を有し、各色のインクは所要のインク流路を介してヘッド12K,12C,12M,12Yと連通されている。
【0030】
また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。詳細な図示は省略するが、本例のインクジェット記録装置10は、各ヘッド12K,12C,12M,12Yの上面にインク供給部を備え、インク貯蔵/装填部14からインク供給部を介して各ヘッド12K,12C,12M,12Yにインクが供給されるように構成されている。
【0031】
図1では、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
【0032】
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される記録媒体の種類(メディア種)を自動的に判別し、メディア種に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
【0033】
給紙部18から送り出される記録紙16はマガジンに装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部20においてマガジンの巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム30で記録紙16に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
【0034】
ロール紙を使用する装置構成の場合、図1のように、裁断用のカッター(第1のカッター)28が設けられており、該カッター28によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター28は、記録紙16の搬送路幅以上の長さを有する固定刃28Aと、該固定刃28Aに沿って移動する丸刃28Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃28Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃28Bが配置される。なお、カット紙を使用する場合には、カッター28は不要である。
【0035】
デカール処理後、カットされた記録紙16は、吸着ベルト搬送部22へと送られる。吸着ベルト搬送部22は、ローラ31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、少なくともヘッド12K,12C,12M,12Yのノズル面(ノズル開口が形成されるインク吐出面)に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
【0036】
ベルト33は、記録紙16の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引穴(不図示)が形成されている。図1に示したとおり、ローラ31、32間に掛け渡されたベルト33の内側においてヘッド12K,12C,12M,12Yのノズル面に対向する位置には吸着チャンバ34が設けられており、この吸着チャンバ34をファン35で吸引して負圧にすることによって記録紙16がベルト33上に吸着保持される。
【0037】
ベルト33が巻かれているローラ31、32の少なくとも一方にモータ(図1中不図示、図7に符号88で図示)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図1上の時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録紙16は図1の左から右へと搬送される。
【0038】
縁無しプリント等を印字するとベルト33上にもインクが付着するので、ベルト33の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部36の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアを吹き掛けるエアーブロー方式、或いはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
【0039】
なお、吸着ベルト搬送部22に代えて、ローラ・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラ・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面をローラが接触するので画像が染み易いという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面を接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
【0040】
吸着ベルト搬送部22により形成される用紙搬送路上において印字部12の上流側には、加熱ファン40が設けられている。加熱ファン40は、印字前の記録紙16に加熱空気を吹き付け、記録紙16を加熱する。印字直前に記録紙16を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
【0041】
印字部12のヘッド12K,12C,12M,12Yは、当該インクジェット記録装置10が対象とする記録紙16の最大紙幅に対応する長さを有し、そのノズル面には最大サイズの記録媒体の少なくとも一辺を超える長さ(描画可能範囲の全幅)にわたりインク吐出用のノズルが複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている(図2参照)。
【0042】
ヘッド12K,12C,12M,12Yは、記録紙16の送り方向に沿って上流側から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色順に配置され、それぞれのヘッド12K,12C,12M,12Yが記録紙16の搬送方向(紙送り方向)延在するように固定設置される。
【0043】
吸着ベルト搬送部22により記録紙16を搬送しつつ各ヘッド12K,12C,12M,12Yからそれぞれ異色のインクを吐出することにより記録紙16上にカラー画像を形成し得る。
【0044】
このように、紙幅の全域をカバーするノズル列を有するフルライン型のヘッド12K,12C,12M,12Yを色別に設ける構成によれば、紙送り方向について記録紙16と印字部12を相対的に移動させる動作を1回行うだけで(即ち、1回の副走査で)、記録紙16の全面に画像を記録することができる。このようなシングルパス印字が可能な構成により、ヘッドが紙搬送方向と直交する方向に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
【0045】
本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能である。また、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。更に、記録紙16に処理液とインクとを付着させた後に、記録紙16上でインク色材を凝集又は不溶化させて、記録紙16上でインク溶媒とインク色材とを分離させる2液系のインクジェット記録装置では、処理液を記録紙16に付着させる手段としてインクジェットヘッドを備えてもよい。
【0046】
なお、ヘッド12K,12C,12M,12Yは、それぞれ複数のヘッドモジュールを記録紙16の幅方向につなぎ合わせた構造を有していてもよいし、各ヘッドは一体に形成された構造を有していてもよい。
【0047】
印字部12の後段に設けられる印字検出部24は、印字部12の打滴結果を撮像するためのイメージセンサを含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他吐出異常をチェックする手段として機能する。
【0048】
本例の印字検出部24は、少なくとも各ヘッド12K,12C,12M,12Yによるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサで構成される。このラインセンサは、赤(R)の色フィルタが設けられた光電変換素子(画素)がライン状に配列されたR受光素子列と、緑(G)の色フィルタが設けられたG受光素子列と、青(B)の色フィルタが設けられたB受光素子列と、から成る色分解ラインCCDセンサで構成されている。なお、ラインセンサに代えて、受光素子が2次元配列されて成るエリアセンサを用いることも可能である。
【0049】
印字検出部24は、各色のヘッド12K,12C,12M,12Yにより印字されたテストパターンを読み取り、各ヘッド12K,12C,12M,12Yの吐出検出を行う。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドットの着弾位置の測定などで構成される。
【0050】
印字検出部24の後段には後乾燥部42が設けられている。後乾燥部42は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹き付ける方式が好ましい。
【0051】
後乾燥部42の後段には、加熱・加圧部44が設けられている。加熱・加圧部44は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ45で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
【0052】
加熱・加圧部44によって記録紙16を押圧すると、多孔質のペーパーに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパーの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
【0053】
こうして生成されたプリント物は排紙部26から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置10では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部26A、26Bへと送るために排紙経路を切り換える不図示の選別手段が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)48によってテスト印字の部分を切り離す。カッター48は、排紙部26の直前に設けられており、画像余白部にテスト印字を行った場合に本画像とテスト印字部を切断するためのものである。カッター48の構造は前述した第1のカッター28と同様であり、固定刃48Aと丸刃48Bとから構成される。
【0054】
また、図1には示さないが、本画像の排出部26Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられる。
【0055】
〔ヘッドの構造〕
次に、ヘッドの構造について説明する。色別のヘッド12K,12C,12M,12Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によってヘッドを示すものとする。
【0056】
図3(a)はヘッド50の構造例を示す平面透視図であり、図3(b)はその一部の拡大図である。また、図3(c)はヘッド50の他の構造例を示す平面透視図、図4はヘッド50の立体的構成を示す断面図(図3(a),(b)中の4−4線に沿う断面図)である。
【0057】
記録紙16上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド50におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド50は、図3(a),(b)に示すように、インク滴の吐出孔であるノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等からなる複数のインク室ユニット53を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド50の長手方向(紙送り方向と直交する主走査方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
【0058】
記録紙16の送り方向と略直交する主走査方向に記録紙16の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図3(a)の構成に代えて、図3(c)に示すように、複数のノズル51が2次元的に配列された短尺のヘッドユニット50’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録紙16の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。また、図示は省略するが、短尺のヘッドユニットを一列に並べてラインヘッドを構成してもよい。
【0059】
各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル51と供給口54が設けられている。各圧力室52は供給口54を介して共通流路55と連通されている。共通流路55はインク供給源たるインク供給タンク(図3(a)〜(c)中不図示、図6に符号60で図示)と連通しており、該インク供給タンクから供給されるインクは図4の共通流路55を介して各圧力室52に分配供給される。
【0060】
圧力室52の天面を構成し共通電極と兼用される振動板56には個別電極57を備えた圧電素子58が接合されており、個別電極57に駆動電圧を印加することによって圧電素子58が変形してノズル51からインクが吐出される。インクが吐出されると、共通流路55から供給口54を通って新しいインクが圧力室52に供給される。
【0061】
かかる構造を有するインク室ユニット53を図5に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
【0062】
即ち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット53を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd×cosθとなり、主走査方向については、各ノズル51が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
【0063】
なお、印字可能幅の全幅に対応した長さのノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、記録紙16の幅方向(記録紙16の搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるラインまたは複数列のドットから成るライン)を印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
【0064】
特に、図3(a),(b)に示すようなマトリクス状に配置されたノズル51を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。即ち、ノズル51-11、51-12、51-13、51-14、51-15、51-16を1つのブロックとし(他にはノズル51-21、…、51-26を1つのブロック、ノズル51-31、…、51-36を1つのブロック、…として)、記録紙16の搬送速度に応じてノズル51-11、51-12、…、51-16を順次駆動することで記録紙16の幅方向に1ラインを印字する。
【0065】
一方、上述したフルラインヘッドと記録紙16とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるラインまたは複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
【0066】
そして、上述の主走査によって記録される1ライン(或いは帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向といい、上述の副走査を行う方向を副走査方向という。即ち、本実施形態では、記録紙16の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する記録紙16の幅方向が主走査方向ということになる。なお、本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されず、副走査方向に1列のノズル列を有する配置構造など、様々なノズル配置構造を適用できる。
【0067】
〔インク供給系の構成〕
図6は、インクジェット記録装置10におけるインク供給系の構成を示した概要図である。インク供給タンク60はヘッド50にインクを供給する基タンクであり、図1で説明したインク貯蔵/装填部14に含まれる。インク供給タンク60の形態には、インク残量が少なくなった場合に不図示の補充口からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を変える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じた吐出制御を行うことが好ましい。
【0068】
図6に示すように、インク供給タンク60とヘッド50の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ62が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは、ノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
【0069】
なお、図6には示さないが、ヘッド50の近傍又はヘッド50と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
【0070】
また、インクジェット記録装置10には、ノズル51の乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ64が設けられている。キャップ64は、不図示の移動機構によってヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置からヘッド50下方のメンテナンス位置に移動される。
【0071】
キャップ64は、図示せぬ昇降機構によってヘッド50に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や印刷待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、ヘッド50に密着させることにより、ノズル面をキャップ64で覆う。
【0072】
印字中又は待機中において、特定のノズル51の使用頻度が低くなり、ある時間以上インクが吐出されない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してインク粘度が高くなってしまう。このような状態になると、圧電素子58が動作してもノズル51からインクを吐出できなくなってしまう。
【0073】
このような状態になる前に(圧電素子58の動作により吐出が可能な粘度の範囲内で)圧電素子58を動作させ、その劣化インク(粘度が上昇したノズル近傍のインク)を排出すべくキャップ64(インク受け)に向かって予備吐出(パージ、空吐出、つば吐き、ダミー吐出)が行われる。
【0074】
また、ヘッド50内のインク(圧力室52内)に気泡が混入した場合、圧電素子58が動作してもノズルからインクを吐出させることができなくなる。このような場合にはヘッド50にキャップ64を当て、吸引ポンプ67で圧力室52内のインク(気泡が混入したインク)を吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク68へ送液する。
【0075】
この吸引動作は、初期のインクのヘッドへの装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも粘度上昇(固化)した劣化インクの吸い出しが行われる。なお、吸引動作は圧力室52内のインク全体に対して行われるので、インク消費量が大きくなる。したがって、インクの粘度上昇が小さい場合には予備吐出を行う態様が好ましい。
【0076】
〔制御系の説明〕
図7は、インクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
【0077】
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦メモリ74に記憶される。
【0078】
メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0079】
システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。即ち、システムコントローラ72は、通信インターフェース70、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、等の各部を制御し、ホストコンピュータ86との間の通信制御、メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒータ89を制御する制御信号を生成する。
【0080】
メモリ74には、システムコントローラ72のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。なお、メモリ74は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。メモリ74は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
【0081】
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示にしたがってモータ88を駆動するドライバである。図7では、装置内の各部に配置されるモータ(アクチュエータ)を代表して符号88で図示している。例えば、図7に示すモータ88には、図1のベルト33の駆動ローラ31(32)を駆動するモータや、図6のキャップ64を移動させる移動機構のモータなどが含まれている。
【0082】
ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示にしたがって、図1に示す加熱ファン40の熱源たるヒータや、後乾燥部42のヒータなどを含むヒータ89を駆動するドライバである。
【0083】
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字データ(ドットデータ)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいて、ヘッドドライバ84を介してヘッド50のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
【0084】
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0085】
ヘッドドライバ84は、プリント制御部80から与えられる画像データに基づいてヘッド50の圧電素子58に印加される駆動電圧を生成するとともに、該駆動電圧を圧電素子58に印加して圧電素子58駆動する駆動回路を含んで構成される。なお、図6に示すヘッドドライバ84には、ヘッド50の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0086】
本例に示すインクジェット記録装置10は、各圧電素子58に共通の駆動波形信号を印加し、各圧電素子58の吐出タイミングに応じて各圧電素子58の個別電極に接続されたスイッチ素子のオンオフを切り換えることで、各圧電素子58に対応するノズルからインクを吐出させる圧電素子58の駆動方式が適用される。
【0087】
詳細は後述するが、本例に示すヘッドドライバ84には、装置の起動時における圧電素子の駆動回路(図7中不図示、図8符号100で図示)の出力部と圧電素子58までの配線に短絡(ショート)が発生しているか否かを検出するとともに、短絡が発生している場合には駆動回路を起動せず、かつ、駆動回路に含まれる出力トランジスタ(図9に符号170,172で図示)のベース−エミッタ間に最大定格を超える電圧が印加されないように保護する保護回路(図9に符号150で図示)が設けられている。
【0088】
印字検出部24は、図1で説明したようにラインセンサを含むブロックであり、記録紙16に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつきなど)を検出し、その検出結果をプリント制御部80に提供する。
【0089】
プリント制御部80は、必要に応じて印字検出部24から得られた情報に基づいてヘッド50に対する各種補正やヘッド50のメンテナンスを行うように各部を制御する。
【0090】
印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース70を介して外部から入力され、メモリ74に蓄えられる。この段階では、RGBの画像データがメモリ74に記憶される。
【0091】
メモリ74に蓄えられた画像データは、システムコントローラ72を介してプリント制御部80に送られ、該プリント制御部80においてインク色ごとのドットデータに変換される。即ち、プリント制御部80は、入力されたRGB画像データをKCMYの4色のドットデータに変換する処理を行う。プリント制御部80で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ82に蓄えられる。
【0092】
プログラム格納部90には各種制御プログラムが格納されており、システムコントローラ72の指令に応じて、制御プログラムが読み出され、実行される。プログラム格納部90はROMやEEPROMなどの半導体メモリを用いてもよいし、磁気ディスクなどを用いてもよい。外部インターフェースを備え、メモリカードやPCカードを用いてもよい。もちろん、これらの記録媒体のうち、複数の記録媒体を備えてもよい。なお、プログラム格納部90は動作パラメータ等の記録手段(不図示)と兼用してもよい。
【0093】
〔圧電素子の駆動回路の詳細な説明〕
次に、図7に示すヘッドドライバ84に含まれる圧電素子(圧電アクチュエータ)の駆動回路の構成及び機能について詳細に説明する。図8は、駆動回路100の構成を示すブロック図である。
【0094】
同図に示すように、駆動回路100は、駆動回路基板101に実装され、圧電素子58を動作させるための電気的エネルギー(電圧及び電流)を有する駆動電圧を生成するものである。
【0095】
駆動回路100は、圧電素子58に印加される駆動電圧の波形データが記憶されている波形データ記憶部102と、波形データ記憶部102から出力された波形データ列(デジタルデータ列)103をアナログ信号に変換するD/A変換部104と、D/A変換部104によってアナログ信号に変換された波形データを電圧増幅する電圧増幅部106と、駆動用電源供給部108から電気エネルギーの供給を受けて、電圧増幅部106によって電圧増幅された波形データの信号を電流増幅するとともに、圧電素子58の駆動に適した電圧に変換する電流増幅部(駆動電圧変換部)110と、所定の電気的エネルギーを有する高電圧かつ大電流の駆動電圧が出力される出力線112と、電流増幅部110の出力部110Aの電圧を電圧増幅部106の入力にフィードバックする帰還回路(フィードバックループ)114が形成されている。
【0096】
また、出力線112は、コネクタ116及びフレキシブルフラットケーブル(図8中不図示、図9に符号140で図示)を介して、圧電素子58の個別電極(図4参照)と電気的に接続されている。
【0097】
さらに、図8に示す駆動回路100は、起動時に電流増幅部110と出力線112の間の電気接続を遮断した状態で、出力線112及び出力線112と圧電素子58との間の電気配線に短絡が発生しているか否かを判断し、短絡が発生している場合には電流増幅部110と出力線112の間の電気接続を遮断した状態を維持し、かつ、電圧増幅部106の入力部106Aにオフセット電圧を印加して、電圧増幅部106の出力電圧が最小となり、電流増幅部110の入力に過電圧が印加されないように保護する保護回路(図9に符号150で図示)を含んでいる。
【0098】
すなわち、駆動回路100の保護回路は、電流増幅部110と出力線112との間に設けられるスイッチ120(スイッチ1)と、出力線112に対して検査用の直流電圧を印加するための検査用電源供給部122と、検査用電源供給部122と出力線112との間に設けられるスイッチ124(スイッチ2)と、出力線112の電圧を検出する出力部電位検出部126と、出力線電位検出部126の検出電圧と基準電圧とを比較する比較部128と、比較部128の比較結果を記憶する比較結果記憶部130と、比較結果記憶部130に記憶されている比較結果に基づいてスイッチ切換信号を生成するスイッチ切換信号生成部132と、電圧増幅部106の入力部106Aに入力されるオフセット電圧を生成するオフセット信号生成部134と、オフセット信号生成部134と電圧増幅部106の入力部106Aとの間に設けられるスイッチ136(スイッチ3)と、スイッチ120がオフとスイッチ122のオンとの間に所定の時間遅れを発生させ、スイッチ120が完全にオフになった後にスイッチ122をオンに切り換えるための遅延時間を生成する遅延回路138と、を含んで構成されている。
【0099】
図8に示す駆動回路100を起動させる際に、まず、スイッチ120をオフ(開)にセットし、スイッチ124をオン(閉)にセットする。この状態では、出力線112には検査用電源供給部122から検査用の直流電圧が印加され、出力線電位検出部126は出力線112の電位を検出する。
【0100】
出力線112及び出力線112から圧電素子58までの電気配線にショート等の異常がなく正常な状態では、出力線112の電位は検査用電源供給部122の電圧となる。一方、当該電気配線にショート等の異常があると、出力線112の電位は0ボルト(グランドとショートした場合)又は、正常時の電位よりも十分に小さな電位となる。
【0101】
比較部128では、予め決められた基準信号129(正常及び異常を判断するための電位しきい値)と検出電位が比較され、その比較結果(例えば、正常はハイ(H)レベル、異常はロー(L)レベルの2値)は比較結果記憶部130に送られ、記憶される。
【0102】
スイッチ切換信号生成部132では、比較結果記憶部130に記憶された比較結果が所定の周期で参照され、比較結果に基づいてスイッチ120,124,136のオンオフを制御するスイッチ切換信号137が生成されるとともに、スイッチ切換信号137はスイッチ120,124,136に送出される。
【0103】
正常時には、スイッチ124,136をオフ(開)、スイッチ120のオフに対して所定の時間遅れの後にスイッチ124をオン(閉)とするスイッチ切換信号137が生成され、駆動回路100の出力部110Aと出力線112の電気配線が電気接続される。一方、異常時にはスイッチ120のオフ(開)を維持し、スイッチ124,136のオン(閉)を維持するスイッチ切換信号137が生成されるとともに、電圧増幅部106にオフセット電圧が入力されて電圧増幅部106の出力が最小となるように電圧増幅部106が動作し、電流増幅部110の入力が保護される。
【0104】
このようにして、駆動回路100の起動時において、駆動回路100の出力部110Aと圧電素子58への電気配線との電気接続を遮断し、該電気配線に電気接続される出力線112に検査用の直流電圧を供給して検査を行うので、出力線112と圧電素子58の間の電気配線に短絡等の異常が発生していても、駆動回路100を破損させることなく異常を検出することが可能である。また、異常時には駆動回路100の出力部110Aと圧電素子58への電気配線を遮断した状態が維持されるので、駆動回路100の破損が確実に防止される。
【0105】
次に、図9に示す具体的な回路構成例を用いて、本例に示す圧電素子駆動回路の保護回路の動作について、さらに詳述する。なお、図9では、図8に図示した構成の一部の図示は省略されている。
【0106】
図9は、図8に示す駆動回路100の各部の構成を具体的な素子及び回路によって図示したものである。なお、図9中、図8と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0107】
図9に示す駆動回路100の出力部110Aは、出力線112、狭ピッチ多ピンコネクタ116及びフレキシブルフラットケーブル140に設けられる駆動電圧線142を介してアナログスイッチ144に接続され、アナログスイッチ144の他方の端子は圧電素子58の個別電極(図4参照)に接続される。
【0108】
また、圧電素子58の共通電極(図4参照)は、フレキシブルフラットケーブル140に設けられるリターン線146及び狭ピッチ多ピンコネクタ116を介して駆動回路100のグランド電位111に接続される。
【0109】
フレキシブルフラットケーブル140は、駆動電圧線142とリターン線146が交互に配設される配線パターンを有し、狭ピッチ多ピンコネクタ116のピン配置はフレキシブルフラットケーブル140の配線パターンに対応して、駆動電圧線142とリターン線146が交互に配置されている。
【0110】
圧電素子58の個別電極には、駆動電圧線142を介してインク吐出量を規定する波形を有する駆動電圧が印加され、かつ、圧電素子58の個別電極に接続されるアナログスイッチ144には、インクの吐出タイミングを規定する制御信号が印加される。この駆動方式は図10に示す駆動回路220と共通している。
【0111】
図9において破線で囲まれた部分が駆動回路100の保護回路150である。保護回路150において、抵抗器152,154,156及び増幅器158は、出力部電位検出部(図8の符号126)を構成している。
【0112】
出力線112には、抵抗器152を介して電圧+V2が供給されるとともに、出力線112の電位(電圧)を抵抗器154,156によって分圧した電位が増幅器158の入力部に印加される。
【0113】
なお、図9では、図8の検査用電源供給部122と駆動用電源供給部108とを兼用して+V2(圧電素子駆動用の電圧)を用いる態様を例示したが、図8に示すようにこれらを別々に構成してもよい。また、図9の増幅器158には、オペアンプを用いた増幅回路を適用する態様が好ましい。
【0114】
図9の比較部128は、同じ符号128で図8に図示した比較部128に対応している。比較部128には、コンパレータを用いてもよいし、オペアンプを用いた比較回路を適用してもよい。また、基準信号129は抵抗器152,154,156の抵抗値と、異常の場合に出力線112に接続されるインピーダンスに応じて決められた直流電圧である。
【0115】
図9のDフリップフロップ160は、図8の比較結果記憶部130及びスイッチ切換信号生成部132として機能している。すなわち、Dフリップフロップ160は、入力CLKがLからHに変化したタイミングで、出力Qには入力Dの状態(H又はL)が出力されるとともに、出力Qバーには入力Dの状態の反転状態が出力される機能を有している。
【0116】
Dフリップフロップ160の入力Dに比較部128の出力(比較結果)を入力することで、比較部128の比較結果(出力線112の検出電圧が所定の基準信号129よりも大きいか又は小さいか)が記憶されるとともに、出力Qの出力信号によりスイッチ120のオンオフを制御し、かつ、出力Qバーの出力信号によりスイッチ124,136のオンオフを制御することで、Dフリップフロップ160の記憶状態に応じてスイッチ120,124,136のオンオフが制御される。
【0117】
スイッチ120,124,136は、制御信号によりオンオフの切り換えが可能なアナログスイッチが好ましい。もちろん、フォとカプラと定電流回路を組み合わせたスイッチング回路やトランジスタ等のスイッチング素子を用いてスイッチ120,124,136を構成することも可能である。
【0118】
図9のDフリップフロップ160は、ラッチ回路と論理回路(論理和回路や論理積回路、反転回路等)を適宜組み合わせて構成してもよいし、RSフリップフロップ回路などの構成を適用してもよい。
【0119】
図8の電圧増幅部106は、オペアンプ166及び帰還回路を構成する抵抗器162,164から構成され、電流増幅部110は、トランジスタ170,172及びトランジスタ170,172の入力回路を構成する抵抗器174,176及びダイオード178,180から構成されている。なお、トランジスタ170,172は、MOSFETなどのスイッチング素子(入力信号に対して電流増幅及び電圧変換を行う素子)を適用してもよい。
【0120】
また、トランジスタ170,172の入力回路は、適用される素子に応じて適宜変更される。さらに、周波数特性を改善するための回路構成や、高周波ノイズを除去するための素子又は回路構成を適宜付加してもよい。
【0121】
図9には、NPNトランジスタ170とPNPトランジスタ172がトーテムポール接続されたプッシュプル型回路(電流増幅回路及び電圧変換回路)を例示したが、NPNトランジスタを用いたオープンコレクタ回路(又は、PNPトランジスタを用いたオープンエミッタ回路)など、他の回路構成を適用してもよい。
【0122】
スイッチ136とオペアンプ166の反転入力端子との間には抵抗器182が設けられ、オフセット信号生成部134から送出されるオフセット信号は、抵抗器182を介してオペアンプ166の反転入力端子に入力される。
【0123】
次に、図9に図示した駆動回路100(保護回路150)の動作について詳細に説明する。
【0124】
(初期状態)
駆動回路100の起動時における初期状態では、D/Aコンバータ104から波形データ列は出力されない出力ゼロの状態であり、イネーブル信号105はLである。
【0125】
駆動回路100の起動直後はDフリップフロップ160の出力Qは不定であり、H又はLのいずれにもなり得る。仮に、出力QをHとすると出力QバーはLであり、CLRの入力(出力Qバーとイネーブルとの論理和)はLとなり、出力Qは直ちにLになる。
【0126】
Dフリップフロップ160の出力QがLのときには出力QバーはHであり、入力CLRにはHが入力される。そして、入力CLK(イネーブル信号105)はLが維持され、出力QはLが維持される。したがって、初期状態では出力QはLであり、その結果、スイッチ120はオフ(開)、スイッチ124,136はオン(閉)となる。
【0127】
上述したようにスイッチ120,124,136の初期状態のオンオフが設定されると、駆動回路100と圧電素子58との間の電気配線の検査モードとなり、トランジスタ170のエミッタ端子と出力線112との接続が遮断されるとともに、出力線112には直流電圧+V2が抵抗器152を介して供給される。また、オペアンプ166の反転入力(−)端子には、スイッチ124のオンのタイミングでオフセット信号が入力される。
【0128】
(出力が短絡していないとき(正常時)の動作)
初期状態においてスイッチ120がオフにセットされるので、出力線112と圧電素子58との間の電気配線が短絡していない正常時には、出力線112には抵抗器152を介して直流電圧+V2が印加され、出力線112の電位はオペアンプ166の出力によらない。
【0129】
また、初期状態においてスイッチ136はオンにセットされるので、オペアンプ166の反転入力端子にはオフセット信号が印加される。オフセット信号は、駆動回路100の出力部110Aがマイナス電位になるように決められたアナログ電圧である。図9に示すD/Aコンバータ104の出力を増幅する増幅回路には、反転増幅回路が適用されるので、該増幅回路のゲインはマイナスであり、かつD/Aコンバータ104の出力がゼロなので、該増幅回路は駆動回路100の出力部110Aをマイナス電位にするように動作する。
【0130】
しかし、駆動回路100の出力部110Aは、抵抗器162を介してオペアンプ166の入力端子に接続され、かつ、スイッチ120がオフとなって出力線112と電気接続が遮断されているので、駆動回路100の出力部110Aの出力電圧が、D/A変換部104の出力値とオフセット信号生成部134の出力値を加算した値を反転増幅した値にするようにオペアンプ166が動作する。この場合は、オペアンプ166は出力113がマイナスになるように動作するので、駆動回路100の出力部110Aはグランド電位で飽和する。
【0131】
この状態でスイッチ124をオンにすると、出力線112には直流電圧+V2を抵抗器152,154,156で抵抗分割した電位が現れる。インクジェットヘッド50(圧電素子58)の入力は通常ハイインピーダンスであり、インクジェットヘッド50には電流がほとんど流れない。したがって、出力線112の電位は+V2×{(抵抗器154の抵抗値)+(抵抗器156の抵抗値)/(抵抗器152の抵抗値)+(抵抗器154の抵抗値)+(抵抗器156の抵抗値)}となる。
【0132】
出力線112の電位は正常動作時には30V程度になることがあるので、増幅器158の入力電圧を超えないように、出力線112の電位を抵抗器154,156で抵抗分割した電位が増幅器158に入力される。また、増幅器158の入力容量が影響して、駆動回路100が正常に動作している場合の駆動回路100の応答性を落としてしまうことを防止するために、抵抗器154,156には、数百kΩ程度の高抵抗が適用される。
【0133】
一方、出力線112の検出信号は、電圧が数mV、電流が数mA程度の微小信号となってしまうので、このような微小信号を比較部128の入力電圧に適した電圧に変換するとともに、比較部128の入力に十分な電流を流すことができるように増幅器158のゲインが決められている。
【0134】
比較部128は、増幅器158の出力電位と基準信号129との比較が行われる。(増幅器158の出力)>基準信号129であれば、比較部はH(正常)を出力し、Dフリップフロップ160の入力DにはHが入力される。また、初期状態において出力QバーはHであり、Dフリップフロップ160の入力CLRにはHが入力される。
【0135】
この状態でイネーブル信号105がLからHに遷移すると、Dフリップフロップ160の入力Dの状態が出力Qに出力されるので、出力QはLからHに変化する。なお、出力QバーはHからLに変化するがイネーブル信号105がHのままなので、入力CLRはHのまま変化せず、出力QはHの状態を維持する。
【0136】
このようにして、出力QがH、出力QバーがLになると、スイッチ120はオン、スイッチ124,136はオフになる。スイッチ124がオフになると、検査用の回路は出力線112から切り離される。
【0137】
一方、スイッチ120がオンになることで、駆動回路100の出力はオペアンプ166の出力に追従するモードになる。ここで、スイッチ120がオフからオンになるタイミングは、スイッチ124がオンからオフになるタイミングに対して所定の時間だけ遅れるように遅延回路138が動作する。
【0138】
そのため、スイッチ124がオンからオフになるときに、スイッチ124が完全にオフになった結果、出力線112の電位が0Vに下がった後、スイッチ120がオンになる。
【0139】
したがって、スイッチ120がオンになった瞬間に、出力線112の電位が瞬間的に過大になるようなことがなく、インクジェットヘッド50(圧電素子58)を壊す心配がない。
【0140】
(出力が短絡しているときの動作)
次に、コネクタ116の斜め差し、誤差し、逆差しなどにより、駆動電圧線142とリターン線146が短絡している場合の動作について説明する。
【0141】
初期状態においてスイッチ120がオフにセットされるので、出力線112(圧電素子58に電気接続される電気配線)が短絡していないとき(正常時)には、出力線112には抵抗器152を介して直流電圧+V2が印加され、出力線112の電位はオペアンプ166の出力によらない。
【0142】
また、初期状態においてスイッチ136はオンにセットされるので、オペアンプ166の反転入力端子にはオフセット信号が印加される。オフセット信号は、駆動回路100の出力部110Aが基準電位(0ボルト)以下になるように決められたアナログ電圧である。
【0143】
図9に示すD/Aコンバータ104の出力を増幅する増幅回路には、反転増幅回路が適用されるので、該増幅回路のゲインはマイナスであり、かつD/Aコンバータ104の出力がゼロなので、該増幅回路は駆動回路100の出力部110Aをマイナス電位にするように動作する。なお、ここでいう「D/Aコンバータ104の出力を増幅する増幅回路」とは、オペアンプ166及びトランジスタ170,172、これらの周辺回路を含む回路ブロックであり、図8の電圧増幅部106と電流増幅部110を含む概念である。
【0144】
しかし、駆動回路100の出力部110Aはグランド電位で飽和してしまうため、オペアンプ166の出力113は最小値となる。ここまでは、出力が短絡していないときの動作と同じである。
【0145】
この状態でスイッチ124が閉じると、直流電圧+V2が抵抗器152を介して出力線112に接続される。しかし、出力線112はグランド電位111と短絡しているので、出力線112の電位はグランド電位(ゼロボルト)のままである。増幅器158の出力にゼロボルトが入力されると、増幅器158の出力からはゼロボルトが出力されるので、比較部128の入力は基準信号129よりも小さくなり、出力はLとなる。
【0146】
この状態でイネーブル信号105がLからHに遷移すると、Dフリップフロップ160の入力DはLであるから出力QはL、出力QバーはHのままで変化しない。したがって、スイッチ120,124,136の状態は変わらず、駆動回路100は起動せず、増幅回路は保護される。
【0147】
すなわち、コネクタ116の斜め差し等により、駆動電圧線142とリターン線146が短絡しても、トランジスタ170,172のベース−エミッタ間に最大定格を超える電圧が入力されることがないので、トランジスタ170,172の入力部の破損を防止することができる。
【0148】
なお、本例に示す保護回路150は、駆動電圧線142とリターン線146との短絡だけでなく、インクジェットヘッド50内のインク漏れによる電気回路や圧電素子58の絶縁性能の劣化に起因する駆動回路100の破損を防止することも可能である。
【0149】
インクジェットヘッド50の内部でインクが漏れて電気回路部分にインクが浸透し、正常時には数MΩ〜数十MΩとなる見かけ上端子間(駆動電圧線142とリターン線146との間)の電気抵抗が数Ω程度に小さくなることがある。この場合、インクジェットヘッド50は抵抗負荷となるので、駆動回路100は、インクジェットヘッド50の電気抵抗と出力電圧(+V2)で決まる電流を常時出力する必要がある。したがって、駆動回路100の発熱量が正常時よりも大きくなって、最悪の場合には、駆動回路100を焼損するおそれがある。
【0150】
このような異常に対して、以下のような方法で駆動回路100を保護することが可能である。
【0151】
インクジェットヘッド50の電気抵抗(駆動電圧線142とリターン線146との間の抵抗)がある程度小さくなると、コネクタ116の斜め差し等による短絡が起きていなくても、検査用回路から供給される+V2の印加に伴って出力線112に現れる電位が正常時よりも十分に小さくなり、増幅器158の出力もまた正常時よりも十分に小さくなる。
【0152】
インクジェットヘッド50の電気抵抗の正常時の下限値に対応する基準信号129を予め設定しておくことで、インクジェットヘッド50の電気抵抗が正常時の下限値よりも小さくなると、比較部128の出力がLとなる。このとき、イネーブル信号105がLからHに遷移しても、Dフリップフロップ160入力DはLのままであり、出力QはL、出力QバーはHのまま変わらない。したがって、スイッチ120,124,136のオンオフは初期状態と変わらず、駆動回路100は起動しない。
【0153】
これにより、インクジェットヘッド50の電気抵抗が、予め決められた下限値よりも小さくなった場合にも、駆動回路100を焼損などの破損から保護することが可能となる。
【0154】
例えば、正常時における比較部128の最大入力電位を1.0Vとすると、デッドショート(抵抗値がほとんど0Ωでショートしている場合)には、比較部128の入力電位はほとんど0Vとなるので、基準信号は1.0Vよりも十分に小さい値(例えば0.2V程度)に設定される。一方、この基準信号を0.5V程度(正常状態とデッドショート状態の中間)に設定しておくと、数Ω〜数百Ω程度の抵抗値を持ってショートしている場合にも異常と判断することが可能となる。
【0155】
上記の如く構成された駆動回路100(保護回路150)によれば、駆動回路100の起動時において、インクジェットヘッド50を接続した状態で(駆動回路の出力ポートを用いて、検査専用の信号線を設けることなく)、インクジェットヘッド50の駆動時に用いる駆動回路とは別に、検査用の直流電圧を供給して、出力線112及び出力線112から圧電素子58の間の電気配線の異常を検査するので、出力線112から先の電気配線及び素子に短絡等の異常が発生していても、駆動回路100を破損することなく異常検出を行うことが可能である。
【0156】
また、検査専用の信号線を設けた場合には、検査専用の信号線がオープンとなっている場合には異常が検出されないが、本例に示す駆動回路100は検査専用の信号線を設けた場合に比べて検出結果の信頼性が高いといえる。
【0157】
さらに、異常検出の基準電位を適宜設定することで、インク漏れ等による電気回路部分の絶縁異常(電気抵抗の低下)を検出することも可能である。
【0158】
〔応用例〕
圧電素子58に電気接続される電気配線の異常が検出された場合に、その旨を報知する構成を付加する態様が好ましい。例えば、図8の比較部結果記憶部130の比較結果に応じて点灯及び消灯するLEDを備える態様や、アラーム音を鳴らす態様、モニタ等の表示装置にその旨を表示する態様が挙げられる。
【0159】
本実施形態では、複数の圧電素子58が設けられたインクジェットヘッドの駆動回路を例示したが、本発明の適用範囲はインクジェットヘッドの駆動回路に限定されず、複数の圧電素子(圧電アクチュエータ)を制御信号によって切り換えながら駆動する圧電アクチュエータの駆動回路に適用することができる。
【0160】
とくに、圧電アクチュエータと駆動回路基板101をフレキシブルフラットケーブルなどの高密度に配線パターンが形成された電気配線により伝送し、かつ、インターフェースとして狭ピッチ多ピンコネクタを用いる構成において、本発明に係る駆動回路及び保護回路は特に効果を発揮する。
【0161】
また、本実施形態では、本発明が適用される装置例として記録媒体上にカラー画像を形成するインクジェット記録装置を示したが、本発明は吐出ヘッドから媒体上に液体を吐出する液体吐出装置(ディスペンサーなど)など、圧電アクチュエータを吐出力発生素子に適用した構成に広く適用可能である。
【0162】
本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【0163】
<付記>
上記に詳述した発明の実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書は少なくとも以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
【0164】
(発明1):駆動電圧を表すデジタルデータ列に基づいて所定の駆動電圧を発生させる駆動電圧発生部と、前記駆動電圧発生部と前記駆動電圧発生部から供給される駆動電圧により駆動される圧電アクチュエータを電気接続する出力線と、前記出力線に検査用の直流電圧を印加する検査用電源供給部と、前記駆動電圧発生部と前記出力線の間に設けられ、前記駆動電圧発生部と前記出力線の間の電気接続の開閉を切り換える第1のスイッチと、前記検査用電源供給部と前記出力線との間に設けられ、前記検査用電源供給部と前記出力線の間の電気接続の開閉を切り換える第2のスイッチと、前記出力線の電位を検出する出力電位検出部と、前記出力電位検出部によって検出された検出電位に基づいて、前記出力線及び前記出力線と前記圧電アクチュエータとの間の電気配線の短絡の有無を判断する判断部と、前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチの開閉を制御するスイッチ制御部と、を備え、前記スイッチ制御部は、起動時において前記第1のスイッチを開くとともに前記第2のスイッチを閉じるように前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチを制御し、起動時の検査において、前記判断部によって前記電気配線に短絡があると判断されると前記第1のスイッチを開いた状態及び前記第2のスイッチを閉じた状態を維持し、一方、前記電気配線に短絡がないと判断されると前記第1のスイッチを閉じるとともに前記第2のスイッチを開くように前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチを制御することを特徴とする圧電アクチュエータ駆動回路。
【0165】
本発明によれば、圧電アクチュエータに供給する駆動電圧を生成する駆動回路を起動する際に、該回路駆動電圧発生部と出力線の間の電気接続を開放(遮断)するとともに、検査用電源供給部から出力線に検査用の電圧を供給して、出力線及び出力線と圧電アクチュエータとの間の電気配線の短絡の有無を判断するので、該電気配線が短絡していたとしても駆動回路(駆動電圧発生部)を破損させることがない。
【0166】
駆動電圧発生部は、波形データを所定のアナログ信号に変換する低電圧回路(小信号を取り扱う回路)と、アナログ信号を圧電アクチュエータの駆動に必要な電流及び電圧に変換するパワー回路(高電圧、大電流を取り扱う回路)と、を含む概念である。
【0167】
電気配線には、駆動信号が伝送される駆動電圧線とリターン(グランド電位の信号)が伝送されるリターン線を含む態様がある。
【0168】
電気配線の短絡とは、駆動電圧が伝送される駆動電圧線とリターン線(基準電位)との間の抵抗値がほぼ0Ωとなって接続される状態や、ある抵抗値(数Ω〜数百Ω程度の抵抗値)を持って接続される状態のいずれも含んでいる。
【0169】
圧電アクチュエータとは、電極となる金属膜の間に圧電材料がはさみ込まれた構造を有する圧電素子を含んでいる。また、圧電素子の変形に応じて動作する部材を含んでいてもよい。
【0170】
(発明2):発明1に記載の圧電アクチュエータ駆動回路において、前記出力線には複数の圧電アクチュエータが並列に接続されるとともに、前記複数の圧電アクチュエータのそれぞれは前記出力線との間の電気配線の開閉を切り換えるスイッチ素子を備え、各圧電アクチュエータの動作タイミングに応じて前記スイッチ素子の開閉を制御するタイミング制御部を備えたことを特徴とする。
【0171】
かかる態様では、複数の圧電アクチュエータには共通の駆動電圧が印加され、各圧電アクチュエータの動作タイミングに応じて各圧電アクチュエータに備えられたスイッチ素子の開閉を制御することで、各圧電アクチュエータは所定のタイミングで動作する。
【0172】
(発明3):発明1又は2に記載の圧電アクチュエータ駆動回路において、当該圧電アクチュエータ駆動回路は回路基板に形成されるとともに、前記出力線と前記複数の圧電アクチュエータとの間の電気配線は、前記回路基板に設けられる複数の端子を有するコネクタ、及び前記複数の圧電アクチュエータに印加される駆動電圧が伝送される配線パターンが形成された配線部材を含むことを特徴とする。
【0173】
かかる態様によれば、コネクタのななめ差しや逆差しにより駆動電圧発生部と圧電アクチュエータとの間の電気配線に短絡が生じた場合にも、駆動電圧発生部を破損させることなく保護できる。
【0174】
かかる態様は、狭ピッチ多ピンコネクタを用いる場合や、駆動電圧線とリターン線を交互にピン割り付けする場合において、特に効果を発揮する。
【0175】
(発明4):発明1乃至3のいずれかに記載の圧電アクチュエータ駆動回路において、前記駆動電圧発生部は、前記デジタルデータ列をアナログ信号に変換するD/A変換部と、前記D/A変換部によって変換されたアナログ信号を所定の電圧に増幅する増幅部と、前記増幅部によって所定の電圧に増幅された増幅信号を、圧電アクチュエータを駆動するために必要な電圧及び電流に変換する駆動電圧変換部と、駆動電圧を出力する駆動電圧出力部と、を含むことを特徴とする。
【0176】
かかる態様において、波形データを記憶する波形データ記憶部を備える態様が好ましい。
【0177】
(発明5):発明4に記載の圧電アクチュエータ駆動回路において、前記駆動電圧変換部は、前記増幅部から出力された前記増幅信号が所定の入力回路を介して入力される制御入力端子、及び前記駆動電圧発生部に対して所定の電源供給を行う駆動用電源供給部から電源供給を受ける電源供給端子、前記駆動電圧出力部と電気接続される出力端子を有するトランジスタを含むことを特徴とする。
【0178】
トランジスタには、バイポーラトランジスタや電界効果トランジスタ(FET)などの電流増幅機能及び電圧変換機能を有する受動素子が含まれる
(発明6):発明5に記載の圧電アクチュエータ駆動回路において、前記駆動電圧変換部は、トーテムポール接続された第1のトランジスタ及び第2のトランジスタを含み、前記第1のトランジスタの第1の端子及び第2のトランジスタの第1の端子はともに前記駆動電圧出力部に接続されるとともに、前記第1のトランジスタの第2の端子及び第2のトランジスタの第2の端子は所定の入力回路を介して前記増幅部の出力に接続され、前記第1のトランジスタの第3の端子は前記第1のスイッチ素子を介して前記駆動用電源供給部と接続され、前記第2のトランジスタの第3の端子はグランド電位に接続されることを特徴とする。
【0179】
かかる態様によれば、2つのトランジスタがトーテムポール接続されたプッシュプル回路は、高速スイッチングが可能であって高電圧及び大電流の駆動電圧により圧電アクチュエータを駆動する回路に好適である。
【0180】
かかる態様において、第1のトランジスタにNPNトランジスタを適用し、第2のトランジスタにPNPトランジスタを適用すると、第1の端子はエミッタ端子、第2の端子はベース端子、第3の端子はコレクタ端子となる。
【0181】
(発明7):発明5又は6記載の圧電アクチュエータ駆動回路において、前記駆動電圧出力部から前記増幅部へ帰還をかける帰還部と、前記増幅部の出力がマイナス電位になるように前記増幅部に入力されるオフセット信号を生成するオフセット信号生成部と、前記増幅部と前記オフセット信号生成部との間に設けられ、前記増幅部と前記オフセット信号生成部との電気接続の開閉を切り換える第3のスイッチ素子と、を備え、前記スイッチ制御部は、前記第3のスイッチ素子の開閉を制御するとともに、起動時において前記第3のスイッチ素子を閉じるように制御し、起動時の検査において前記電気配線に短絡があると判断されると、前記第3のスイッチを閉じた状態を維持し、一方、前記電気配線に短絡がないと判断されると、前記第3のスイッチを開くように前記第3のスイッチの開閉を制御することを特徴とする。
【0182】
かかる態様によれば、起動時及び短絡発生時には、増幅部の出力がマイナス電位となるように増幅部にオフセット信号が印加されるので、増幅部の出力は帰還を繰り返すうちに最小電位になり、増幅部の出力に応じて動作する駆動電圧発生部の動作を確実に停止させることができる。
【0183】
(発明8):発明1乃至7のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ駆動回路において、前記第1のスイッチが開いた状態から閉じた状態になるときに所定の時間遅れを発生させる遅延時間発生部を備えたことを特徴とする。
【0184】
かかる態様によれば、出力部の検査終了後に駆動電圧発生部を起動させる際に、時間遅れ分が経過した後に増幅部を動作させることで、起動直後から時間遅れの期間は駆動電圧発生部には増幅部の最小電位が印加され、起動直後の駆動電圧発生部の破損が防止される。
【0185】
(発明9):発明1乃至8のいずれかに記載の圧電アクチュエータ駆動回路において、前記判断部は、前記出力電位検出部によって検出された検出電位を増幅する検出電位増幅部と、前記検出電位増幅部によって増幅された前記検出電位と所定の基準信号とを比較する比較部と、前記比較部による比較結果を記憶する比較結果記憶部と、を備えたことを特徴とする。
【0186】
かかる態様において、出力部の電位を検査電位増幅部の入力に適した電位に変換する態様が好ましい。
【0187】
(発明10):発明1乃至9のいずれかに記載の圧電アクチュエータ駆動回路において、前記スイッチ制御部は、前記比較結果記憶部に記憶された比較結果に基づいて前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチに与えられるスイッチ切換信号を生成するスイッチ切換信号生成部を含むことを特徴とする。
【0188】
かかる態様において、第1及び第2のスイッチには、スイッチ切換信号によりオンオフを制御可能なアナログスイッチを適用するとよい。
【0189】
(発明11):発明10に記載の圧電アクチュエータ駆動回路において、前記切換信号生成部は、前記比較結果記憶部に記憶された比較結果に基づいて前記第3のスイッチに与えられるスイッチ切換信号を生成することを特徴とする。
【0190】
かかる態様において、第3のスイッチには、スイッチ切換信号によりオンオフを制御可能なアナログスイッチを適用するとよい。
【0191】
(発明12):発明10又は11に記載の圧電アクチュエータ駆動回路において、前記比較結果記憶部及び前記スイッチ切換信号生成部は、Dフリップフロップ回路により構成されることを特徴とする。
【0192】
かかる態様によれば、簡単な構成で比較結果記憶部及び切換信号生成部の機能を実現することができる。
【0193】
(発明13):液体を吐出させるノズルを具備するとともに、前記ノズルから吐出される液体に吐出力を付与する圧電アクチュエータを備えた液体吐出ヘッドと、前記圧電アクチュエータに所定の駆動電圧を与える駆動回路と、を備え、前記駆動回路は、請求項1乃至12のいずれかに記載の圧電アクチュエータ駆動回路を含むことを特徴とする液体吐出装置。
【0194】
液体吐出ヘッドには、圧電アクチュエータから付与された吐出圧力を利用してノズルから液体を吐出するインクジェット方式の吐出ヘッドが含まれる。
【0195】
液体吐出装置では、駆動回路が形成された駆動回路基板に設けられたコネクタ及びコネクタと接合される配線部材を介して、駆動回路と液体吐出ヘッドの電気接続を行う形態がよく用いられる。
【0196】
また、本明細書は、起動時に駆動回路と出力線の電気接続を遮断し、該出力線に検査用の電源を供給して該出力線に接続される電気配線の短絡を検査し、検査結果に基づき該出力線に接続される電気配線が短絡している場合には駆動回路を動作させず、一方、該出力線に接続される電気配線が短絡していない場合には、駆動回路を動作させることを特徴とする圧電アクチュエータ駆動回路の保護方法を開示するものである。
【図面の簡単な説明】
【0197】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図
【図2】図1に示すインクジェット記録装置の印字部周辺の要部平面図
【図3】ヘッドの構造例を示す平面透視図
【図4】図3中4−4線に沿う断面図
【図5】図3に示すヘッドのノズル配置を示す拡大図
【図6】図1に示すインクジェット記録装置のインク供給系の構成を示す概要図
【図7】図1に示すインクジェット記録装置の制御系の構成を示す概要図
【図8】図7に示すヘッドドライバに含まれる駆動回路の構成を示すブロック図
【図9】図8のブロック図の各機能の具体的な構成を示す構成図
【図10】従来技術に係る圧電素子の駆動回路を説明する図
【図11】従来技術に係る圧電素子の駆動回路の変形例を説明する図
【符号の説明】
【0198】
12K,12C,12M,12Y,50…ヘッド、58…圧電素子、84…ヘッドドライバ、100…駆動回路、101…駆動回路基板、106…電圧増幅部、108…駆動用電源供給部、110…電流増幅部、110A…出力部、112…出力線、116…狭ピッチ多ピンコネクタ、120,124,136…スイッチ、122…検査用電源供給部、126…出力電圧検出部、128…比較部、130…比較結果記憶部、132…スイッチ切換信号生成部、134…オフセット信号生成部、138…遅延回路、140フレキシブルフラットケーブル、142…駆動電圧線、146…リターン線、150…保護回路、152,154,156,162,164…抵抗器、160…Dフリップフロップ、170,172…トランジスタ
【技術分野】
【0001】
本発明は圧電アクチュエータ駆動回路及び液体吐出装置に係り、特に圧電アクチュエータに駆動電圧を印加する駆動回路の保護技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、カラー画像を形成する汎用の画像形成装置として、インクジェット記録装置が広く用いられている。インクジェット記録装置は、例えば、K(黒)、C(シアン)、M(マゼンダ)、Y(イエロー)の各色に対応するインクジェットヘッドを備え、色ごとに設けられた各ヘッドからカラーインクを吐出して、記録媒体に所望のカラー画像を形成するように構成されている。
【0003】
インクジェットヘッドには、多数のノズルに対応してそれぞれに圧電アクチュエータ(ピエゾアクチュエータ)などの吐出力発生素子が設けられ、それぞれに吐出力発生素子に対して所定の駆動電圧を与えると、各ノズルから所定のタイミングで所定量のインクが吐出される。
【0004】
ここで、図10を用いて、従来技術に係るピエゾアクチュエータに与える駆動電圧を生成する駆動回路について説明する。
【0005】
同図に示すように、インクジェットヘッド200には、多数のノズル(不図示)に対応してピエゾアクチュエータ202が設けられている。ピエゾアクチュエータ202には駆動電圧が印加される電極(不図示)が設けられ、該電極はフレキシブルフラットケーブル204に形成された駆動電圧線(及びリターン電圧線)を含む配線パターンを介して駆動回路220の出力部266に接続されている。
【0006】
駆動回路220を動作させて、所定の駆動波形を有する駆動電圧が出力されると、該駆動電圧はフレキシブルフラットケーブル204を介してピエゾアクチュエータ202に伝送される。
【0007】
図10に示す駆動回路220の動作を簡単に説明する。駆動波形を記憶した波形データ記憶部224からデジタルデータ列(波形データ列)226が順次読み出され、D/Aコンバータ228でアナログ信号に変換されるとともに、該アナログ信号はオペアンプ230によって電圧増幅される。
【0008】
オペアンプ230の出力には、所定の入力回路240を介してトランジスタ232,234がトーテムポール接続された構成を含むブースト回路240が接続され、ピエゾアクチュエータ202の駆動源である駆動用電源供給部(+V2)からピエゾアクチュエータ202を駆動するための大きな出力電流を流せるようにしている。これは、ピエゾアクチュエータ202は電気的にコンデンサと等価であり、ピエゾアクチュエータ202に対して電圧パルス信号(駆動電圧)を与えたときに、コンデンサを充放電するための大きな電流を瞬間的に流す必要があるためである。なお、ピエゾアクチュエータ202の駆動電圧+V2には、20V〜30Vの直流電圧が適用される。
【0009】
また、駆動回路220はオペアンプ230及びブースト回路240を含む増幅回路のフィードバック回路を構成する抵抗器236,238を含み、さらに、ブースト回路240の入力回路は、一方の端子が低電圧源+V1に接続されるとともに他方の端子がトランジスタ232ベースに接続される抵抗器242、一方の端子がマイナス電圧源−Vに接続されるとともに他方の端子がトランジスタ234のベースに接続される抵抗器244、一方の端子がトランジスタ232のベースに接続されるとともに他方の端子がオペアンプ230の出力に接続されるダイオード246、一方の端子がトランジスタ234のベースに接続されるとともに他方の端子がオペアンプ230の出力に接続されるダイオード248を含んで構成されている。
【0010】
図10に示すように、インクジェットヘッド200内部には、各ノズル(不図示)に対応したピエゾアクチュエータ202が形成され、個々にアナログスイッチ250が接続されている。アナログスイッチ250の片側はいずれも駆動回路220の出力に接続されている。
【0011】
さらに、インクジェットヘッド200とのインターフェース(不図示)には画像データを通信するためのポート(不図示)があり、駆動回路220が駆動電圧を生成するタイミングに同期して画像データ(アナログスイッチ250のオンオフを制御する制御信号)を通信し、画像データにしたがって各アナログスイッチ250をそれぞれオンオフしている。このような構成により、画像データに応じて各ピエゾアクチュエータ202を駆動又は非駆動を制御することで、インク吐出パターンを生成している。
【0012】
言い換えると、駆動回路220の出力部266からは、複数のピエゾアクチュエータ202に共通の駆動電圧が印加され、該駆動電圧とは別に各ピエゾアクチュエータ202に接続されるアナログスイッチ250のオンオフを制御する制御信号が印加される。駆動電圧の波形によってインク吐出量が決められ、制御信号によってインク吐出タイミングが決められている。
【0013】
装置の小型化と高機能化にともない、ノズル数の増加並びにヘッド自体の小型化が進んでいる。このため、駆動回路220(駆動回路基板222)とインクジェットヘッド200の接続には、狭ピッチ多ピンコネクタ260が好適に使われている。狭ピッチ多ピンコネクタ260は、1ピンあたりに流せる電流量が小さいために、ピエゾアクチュエータ202を駆動可能な大きな電流を流せるように駆動電圧線262とリターン線264を複数のピンに割り当てることが多く、さらに、伝送路のインピーダンスを小さくするため、駆動信号線262とリターン線264を交互(互いに隣り合わせ)に配置することが行われている。
【0014】
ところで、この狭ピッチ多ピンコネクタ260は、抜き差しに伴い誤ってオス・メス同士が互いに斜めに刺さったまま引っかかって固定されてしまうことがある。狭ピッチ多ピンコネクタ260が斜め差しされると、駆動回路の出力部266が駆動電圧線262及びリターン線264を介してグランド268に短絡されることになる。
【0015】
通常、駆動回路220の起動時には、初期動作として駆動回路の出力部266を数ボルト程度にすることが多いが、もし駆動回路の出力部266がグランド268に短絡されたまま駆動回路220を起動すると、本来数ボルトとなるべき出力が常時0Vとなり、オペアンプ230の入力にフィードバックがかかり、オペアンプ230の出力が最大値まで上昇する。このとき、トランジスタ232のベース電位もオペアンプ230の出力の上昇に応じて上昇する。
【0016】
これに対して、トランジスタ232のエミッタは出力部266を介して電位は0V(グランド)に短絡されているので、トランジスタ232のベース−エミッタ間に印加される電圧は最大で+V1(20V〜30V)となる。一般的にトランジスタ232のベース−エミッタ間電圧の最大定格は数V程度であり、トランジスタ232のベース−エミッタ間に印加される電圧が最大定格を超えてしまうことにより、トランジスタ232を破損してしまう。
【0017】
このような駆動回路220の出力部266とグランド268の間の短絡の対策としては、図11に示すように、トランジスタ232のベース入力回路に抵抗器280,282から構成される分圧回路を追加して、トランジスタ232のベース−エミッタ間に最大定格を超える電圧が印加されないように保護する方法が知られている。
【0018】
また、圧電アクチュエータの駆動回路の保護として、特許文献1には、駆動回路から圧電素子へ流れる電流を検出し、検出結果に基づき、正常、開放、短絡の判定を行うヘッドユニット検査装置が記載されている。
【0019】
さらに、特許文献2には、複数の圧電素子を取り囲むようにインク漏れ検出用の電極対を設け、両電極間の電位差が所定のしきい値を超えたことが検出された場合には、所定の警告表示等を行うインクジェット式記録装置が記載されている。
【特許文献1】特開平9−48117号公報
【特許文献2】特開2004−58633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、図11に示す構成では、トランジスタ232,234のベース・エミッタ間容量とベース抵抗が高周波信号を遮断するフィルタ(低域通過フィルタ)を形成してしまうので、駆動回路220の応答性が低下してしまうという問題がある。
【0021】
また、特許文献1に記載されたヘッドユニット検査装置は、駆動回路を起動した後に負荷(ピエゾアクチュエータ)の短絡状態を検査するものであって、特許文献1に記載された構成では、駆動回路の起動時において、出力電圧線とリターン線の短絡から駆動回路を保護することは困難である。
【0022】
一方、特許文献2に記載されたインクジェット式記録装置は、起動前の短絡状態を検査することが可能であるものの、検出用の端子を独立に備える構成であって、コネクタの接続不良(誤差し)に対しては必ずしも有効といえない。
【0023】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、駆動回路の出力がグランド等に短絡しても、駆動回路を破損することなく保護することができる圧電アクチュエータ駆動回路及び液体吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記目的を達成するために、本発明に係る圧電アクチュエータ駆動回路は、駆動電圧を表すデジタルデータ列に基づいて所定の駆動電圧を発生させる駆動電圧発生部と、前記駆動電圧発生部と前記駆動電圧発生部から供給される駆動電圧により駆動される圧電アクチュエータを電気接続する出力線と、前記出力線に検査用の直流電圧を印加する検査用電源供給部と、前記駆動電圧発生部と前記出力線の間に設けられ、前記駆動電圧発生部と前記出力線の間の電気接続の開閉を切り換える第1のスイッチと、前記検査用電源供給部と前記出力線との間に設けられ、前記検査用電源供給部と前記出力線の間の電気接続の開閉を切り換える第2のスイッチと、前記出力線の電位を検出する出力電位検出部と、前記出力電位検出部によって検出された検出電位に基づいて、前記出力線及び前記出力線と前記圧電アクチュエータとの間の電気配線の短絡の有無を判断する判断部と、前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチの開閉を制御するスイッチ制御部と、を備え、前記スイッチ制御部は、起動時において前記第1のスイッチを開くとともに前記第2のスイッチを閉じるように前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチを制御し、起動時の検査において、前記判断部によって前記電気配線に短絡があると判断されると前記第1のスイッチを開いた状態及び前記第2のスイッチを閉じた状態を維持し、一方、前記電気配線に短絡がないと判断されると前記第1のスイッチを閉じるとともに前記第2のスイッチを開くように前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチを制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、圧電アクチュエータに供給する駆動電圧を生成する駆動回路を起動する際に、該回路駆動電圧発生部と出力線の間の電気接続を開放(遮断)するとともに、検査用電源供給部から出力線に検査用の電圧を供給して、出力線及び出力線と圧電アクチュエータとの間の電気配線の短絡の有無を判断するので、該電気配線が短絡していたとしても駆動回路(駆動電圧発生部)を破損させることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0027】
〔インクジェット記録装置の全体構成〕
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置10の全体構成を示す概略図である。同図に示すように、インクジェット記録装置10は、黒(K),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)の各インクに対応して設けられた複数のインクジェットヘッド(以下、ヘッドという。)12K,12C,12M,12Yを有する印字部12と、各ヘッド12K,12C,12M,12Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、記録媒体たる記録紙16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20と、各ヘッド12K,12C,12M,12Yのノズル面に対向して配置され、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を搬送する吸着ベルト搬送部22と、印字部12の印字結果を読み取る印字検出部24と、記録済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部26と、を備えている。
【0028】
図1には図示しないが、印字部12に含まれる各ヘッド12K,12C,12M,12Yのそれぞれの上面(記録紙16と対向する面と反対側の面)には、各ヘッド12K,12C,12M,12Yの駆動回路基板(図8に符号101で図示)が立てた状態で配置される。
【0029】
インク貯蔵/装填部14は、各ヘッド12K,12C,12M,12Yに対応する色のインクを貯蔵するインク供給タンク(図1中不図示、図6に符号60で図示)を有し、各色のインクは所要のインク流路を介してヘッド12K,12C,12M,12Yと連通されている。
【0030】
また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。詳細な図示は省略するが、本例のインクジェット記録装置10は、各ヘッド12K,12C,12M,12Yの上面にインク供給部を備え、インク貯蔵/装填部14からインク供給部を介して各ヘッド12K,12C,12M,12Yにインクが供給されるように構成されている。
【0031】
図1では、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
【0032】
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される記録媒体の種類(メディア種)を自動的に判別し、メディア種に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
【0033】
給紙部18から送り出される記録紙16はマガジンに装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部20においてマガジンの巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム30で記録紙16に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
【0034】
ロール紙を使用する装置構成の場合、図1のように、裁断用のカッター(第1のカッター)28が設けられており、該カッター28によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター28は、記録紙16の搬送路幅以上の長さを有する固定刃28Aと、該固定刃28Aに沿って移動する丸刃28Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃28Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃28Bが配置される。なお、カット紙を使用する場合には、カッター28は不要である。
【0035】
デカール処理後、カットされた記録紙16は、吸着ベルト搬送部22へと送られる。吸着ベルト搬送部22は、ローラ31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、少なくともヘッド12K,12C,12M,12Yのノズル面(ノズル開口が形成されるインク吐出面)に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
【0036】
ベルト33は、記録紙16の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引穴(不図示)が形成されている。図1に示したとおり、ローラ31、32間に掛け渡されたベルト33の内側においてヘッド12K,12C,12M,12Yのノズル面に対向する位置には吸着チャンバ34が設けられており、この吸着チャンバ34をファン35で吸引して負圧にすることによって記録紙16がベルト33上に吸着保持される。
【0037】
ベルト33が巻かれているローラ31、32の少なくとも一方にモータ(図1中不図示、図7に符号88で図示)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図1上の時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録紙16は図1の左から右へと搬送される。
【0038】
縁無しプリント等を印字するとベルト33上にもインクが付着するので、ベルト33の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部36の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアを吹き掛けるエアーブロー方式、或いはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
【0039】
なお、吸着ベルト搬送部22に代えて、ローラ・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラ・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面をローラが接触するので画像が染み易いという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面を接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
【0040】
吸着ベルト搬送部22により形成される用紙搬送路上において印字部12の上流側には、加熱ファン40が設けられている。加熱ファン40は、印字前の記録紙16に加熱空気を吹き付け、記録紙16を加熱する。印字直前に記録紙16を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
【0041】
印字部12のヘッド12K,12C,12M,12Yは、当該インクジェット記録装置10が対象とする記録紙16の最大紙幅に対応する長さを有し、そのノズル面には最大サイズの記録媒体の少なくとも一辺を超える長さ(描画可能範囲の全幅)にわたりインク吐出用のノズルが複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている(図2参照)。
【0042】
ヘッド12K,12C,12M,12Yは、記録紙16の送り方向に沿って上流側から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色順に配置され、それぞれのヘッド12K,12C,12M,12Yが記録紙16の搬送方向(紙送り方向)延在するように固定設置される。
【0043】
吸着ベルト搬送部22により記録紙16を搬送しつつ各ヘッド12K,12C,12M,12Yからそれぞれ異色のインクを吐出することにより記録紙16上にカラー画像を形成し得る。
【0044】
このように、紙幅の全域をカバーするノズル列を有するフルライン型のヘッド12K,12C,12M,12Yを色別に設ける構成によれば、紙送り方向について記録紙16と印字部12を相対的に移動させる動作を1回行うだけで(即ち、1回の副走査で)、記録紙16の全面に画像を記録することができる。このようなシングルパス印字が可能な構成により、ヘッドが紙搬送方向と直交する方向に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
【0045】
本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能である。また、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。更に、記録紙16に処理液とインクとを付着させた後に、記録紙16上でインク色材を凝集又は不溶化させて、記録紙16上でインク溶媒とインク色材とを分離させる2液系のインクジェット記録装置では、処理液を記録紙16に付着させる手段としてインクジェットヘッドを備えてもよい。
【0046】
なお、ヘッド12K,12C,12M,12Yは、それぞれ複数のヘッドモジュールを記録紙16の幅方向につなぎ合わせた構造を有していてもよいし、各ヘッドは一体に形成された構造を有していてもよい。
【0047】
印字部12の後段に設けられる印字検出部24は、印字部12の打滴結果を撮像するためのイメージセンサを含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他吐出異常をチェックする手段として機能する。
【0048】
本例の印字検出部24は、少なくとも各ヘッド12K,12C,12M,12Yによるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサで構成される。このラインセンサは、赤(R)の色フィルタが設けられた光電変換素子(画素)がライン状に配列されたR受光素子列と、緑(G)の色フィルタが設けられたG受光素子列と、青(B)の色フィルタが設けられたB受光素子列と、から成る色分解ラインCCDセンサで構成されている。なお、ラインセンサに代えて、受光素子が2次元配列されて成るエリアセンサを用いることも可能である。
【0049】
印字検出部24は、各色のヘッド12K,12C,12M,12Yにより印字されたテストパターンを読み取り、各ヘッド12K,12C,12M,12Yの吐出検出を行う。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドットの着弾位置の測定などで構成される。
【0050】
印字検出部24の後段には後乾燥部42が設けられている。後乾燥部42は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹き付ける方式が好ましい。
【0051】
後乾燥部42の後段には、加熱・加圧部44が設けられている。加熱・加圧部44は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ45で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
【0052】
加熱・加圧部44によって記録紙16を押圧すると、多孔質のペーパーに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパーの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
【0053】
こうして生成されたプリント物は排紙部26から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置10では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部26A、26Bへと送るために排紙経路を切り換える不図示の選別手段が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)48によってテスト印字の部分を切り離す。カッター48は、排紙部26の直前に設けられており、画像余白部にテスト印字を行った場合に本画像とテスト印字部を切断するためのものである。カッター48の構造は前述した第1のカッター28と同様であり、固定刃48Aと丸刃48Bとから構成される。
【0054】
また、図1には示さないが、本画像の排出部26Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられる。
【0055】
〔ヘッドの構造〕
次に、ヘッドの構造について説明する。色別のヘッド12K,12C,12M,12Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によってヘッドを示すものとする。
【0056】
図3(a)はヘッド50の構造例を示す平面透視図であり、図3(b)はその一部の拡大図である。また、図3(c)はヘッド50の他の構造例を示す平面透視図、図4はヘッド50の立体的構成を示す断面図(図3(a),(b)中の4−4線に沿う断面図)である。
【0057】
記録紙16上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド50におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド50は、図3(a),(b)に示すように、インク滴の吐出孔であるノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等からなる複数のインク室ユニット53を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド50の長手方向(紙送り方向と直交する主走査方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
【0058】
記録紙16の送り方向と略直交する主走査方向に記録紙16の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図3(a)の構成に代えて、図3(c)に示すように、複数のノズル51が2次元的に配列された短尺のヘッドユニット50’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録紙16の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。また、図示は省略するが、短尺のヘッドユニットを一列に並べてラインヘッドを構成してもよい。
【0059】
各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル51と供給口54が設けられている。各圧力室52は供給口54を介して共通流路55と連通されている。共通流路55はインク供給源たるインク供給タンク(図3(a)〜(c)中不図示、図6に符号60で図示)と連通しており、該インク供給タンクから供給されるインクは図4の共通流路55を介して各圧力室52に分配供給される。
【0060】
圧力室52の天面を構成し共通電極と兼用される振動板56には個別電極57を備えた圧電素子58が接合されており、個別電極57に駆動電圧を印加することによって圧電素子58が変形してノズル51からインクが吐出される。インクが吐出されると、共通流路55から供給口54を通って新しいインクが圧力室52に供給される。
【0061】
かかる構造を有するインク室ユニット53を図5に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
【0062】
即ち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット53を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd×cosθとなり、主走査方向については、各ノズル51が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
【0063】
なお、印字可能幅の全幅に対応した長さのノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、記録紙16の幅方向(記録紙16の搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるラインまたは複数列のドットから成るライン)を印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
【0064】
特に、図3(a),(b)に示すようなマトリクス状に配置されたノズル51を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。即ち、ノズル51-11、51-12、51-13、51-14、51-15、51-16を1つのブロックとし(他にはノズル51-21、…、51-26を1つのブロック、ノズル51-31、…、51-36を1つのブロック、…として)、記録紙16の搬送速度に応じてノズル51-11、51-12、…、51-16を順次駆動することで記録紙16の幅方向に1ラインを印字する。
【0065】
一方、上述したフルラインヘッドと記録紙16とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるラインまたは複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
【0066】
そして、上述の主走査によって記録される1ライン(或いは帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向といい、上述の副走査を行う方向を副走査方向という。即ち、本実施形態では、記録紙16の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する記録紙16の幅方向が主走査方向ということになる。なお、本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されず、副走査方向に1列のノズル列を有する配置構造など、様々なノズル配置構造を適用できる。
【0067】
〔インク供給系の構成〕
図6は、インクジェット記録装置10におけるインク供給系の構成を示した概要図である。インク供給タンク60はヘッド50にインクを供給する基タンクであり、図1で説明したインク貯蔵/装填部14に含まれる。インク供給タンク60の形態には、インク残量が少なくなった場合に不図示の補充口からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を変える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じた吐出制御を行うことが好ましい。
【0068】
図6に示すように、インク供給タンク60とヘッド50の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ62が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは、ノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
【0069】
なお、図6には示さないが、ヘッド50の近傍又はヘッド50と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
【0070】
また、インクジェット記録装置10には、ノズル51の乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ64が設けられている。キャップ64は、不図示の移動機構によってヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置からヘッド50下方のメンテナンス位置に移動される。
【0071】
キャップ64は、図示せぬ昇降機構によってヘッド50に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や印刷待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、ヘッド50に密着させることにより、ノズル面をキャップ64で覆う。
【0072】
印字中又は待機中において、特定のノズル51の使用頻度が低くなり、ある時間以上インクが吐出されない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してインク粘度が高くなってしまう。このような状態になると、圧電素子58が動作してもノズル51からインクを吐出できなくなってしまう。
【0073】
このような状態になる前に(圧電素子58の動作により吐出が可能な粘度の範囲内で)圧電素子58を動作させ、その劣化インク(粘度が上昇したノズル近傍のインク)を排出すべくキャップ64(インク受け)に向かって予備吐出(パージ、空吐出、つば吐き、ダミー吐出)が行われる。
【0074】
また、ヘッド50内のインク(圧力室52内)に気泡が混入した場合、圧電素子58が動作してもノズルからインクを吐出させることができなくなる。このような場合にはヘッド50にキャップ64を当て、吸引ポンプ67で圧力室52内のインク(気泡が混入したインク)を吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク68へ送液する。
【0075】
この吸引動作は、初期のインクのヘッドへの装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも粘度上昇(固化)した劣化インクの吸い出しが行われる。なお、吸引動作は圧力室52内のインク全体に対して行われるので、インク消費量が大きくなる。したがって、インクの粘度上昇が小さい場合には予備吐出を行う態様が好ましい。
【0076】
〔制御系の説明〕
図7は、インクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
【0077】
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦メモリ74に記憶される。
【0078】
メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0079】
システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。即ち、システムコントローラ72は、通信インターフェース70、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、等の各部を制御し、ホストコンピュータ86との間の通信制御、メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒータ89を制御する制御信号を生成する。
【0080】
メモリ74には、システムコントローラ72のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。なお、メモリ74は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。メモリ74は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
【0081】
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示にしたがってモータ88を駆動するドライバである。図7では、装置内の各部に配置されるモータ(アクチュエータ)を代表して符号88で図示している。例えば、図7に示すモータ88には、図1のベルト33の駆動ローラ31(32)を駆動するモータや、図6のキャップ64を移動させる移動機構のモータなどが含まれている。
【0082】
ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示にしたがって、図1に示す加熱ファン40の熱源たるヒータや、後乾燥部42のヒータなどを含むヒータ89を駆動するドライバである。
【0083】
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字データ(ドットデータ)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいて、ヘッドドライバ84を介してヘッド50のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
【0084】
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0085】
ヘッドドライバ84は、プリント制御部80から与えられる画像データに基づいてヘッド50の圧電素子58に印加される駆動電圧を生成するとともに、該駆動電圧を圧電素子58に印加して圧電素子58駆動する駆動回路を含んで構成される。なお、図6に示すヘッドドライバ84には、ヘッド50の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0086】
本例に示すインクジェット記録装置10は、各圧電素子58に共通の駆動波形信号を印加し、各圧電素子58の吐出タイミングに応じて各圧電素子58の個別電極に接続されたスイッチ素子のオンオフを切り換えることで、各圧電素子58に対応するノズルからインクを吐出させる圧電素子58の駆動方式が適用される。
【0087】
詳細は後述するが、本例に示すヘッドドライバ84には、装置の起動時における圧電素子の駆動回路(図7中不図示、図8符号100で図示)の出力部と圧電素子58までの配線に短絡(ショート)が発生しているか否かを検出するとともに、短絡が発生している場合には駆動回路を起動せず、かつ、駆動回路に含まれる出力トランジスタ(図9に符号170,172で図示)のベース−エミッタ間に最大定格を超える電圧が印加されないように保護する保護回路(図9に符号150で図示)が設けられている。
【0088】
印字検出部24は、図1で説明したようにラインセンサを含むブロックであり、記録紙16に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつきなど)を検出し、その検出結果をプリント制御部80に提供する。
【0089】
プリント制御部80は、必要に応じて印字検出部24から得られた情報に基づいてヘッド50に対する各種補正やヘッド50のメンテナンスを行うように各部を制御する。
【0090】
印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース70を介して外部から入力され、メモリ74に蓄えられる。この段階では、RGBの画像データがメモリ74に記憶される。
【0091】
メモリ74に蓄えられた画像データは、システムコントローラ72を介してプリント制御部80に送られ、該プリント制御部80においてインク色ごとのドットデータに変換される。即ち、プリント制御部80は、入力されたRGB画像データをKCMYの4色のドットデータに変換する処理を行う。プリント制御部80で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ82に蓄えられる。
【0092】
プログラム格納部90には各種制御プログラムが格納されており、システムコントローラ72の指令に応じて、制御プログラムが読み出され、実行される。プログラム格納部90はROMやEEPROMなどの半導体メモリを用いてもよいし、磁気ディスクなどを用いてもよい。外部インターフェースを備え、メモリカードやPCカードを用いてもよい。もちろん、これらの記録媒体のうち、複数の記録媒体を備えてもよい。なお、プログラム格納部90は動作パラメータ等の記録手段(不図示)と兼用してもよい。
【0093】
〔圧電素子の駆動回路の詳細な説明〕
次に、図7に示すヘッドドライバ84に含まれる圧電素子(圧電アクチュエータ)の駆動回路の構成及び機能について詳細に説明する。図8は、駆動回路100の構成を示すブロック図である。
【0094】
同図に示すように、駆動回路100は、駆動回路基板101に実装され、圧電素子58を動作させるための電気的エネルギー(電圧及び電流)を有する駆動電圧を生成するものである。
【0095】
駆動回路100は、圧電素子58に印加される駆動電圧の波形データが記憶されている波形データ記憶部102と、波形データ記憶部102から出力された波形データ列(デジタルデータ列)103をアナログ信号に変換するD/A変換部104と、D/A変換部104によってアナログ信号に変換された波形データを電圧増幅する電圧増幅部106と、駆動用電源供給部108から電気エネルギーの供給を受けて、電圧増幅部106によって電圧増幅された波形データの信号を電流増幅するとともに、圧電素子58の駆動に適した電圧に変換する電流増幅部(駆動電圧変換部)110と、所定の電気的エネルギーを有する高電圧かつ大電流の駆動電圧が出力される出力線112と、電流増幅部110の出力部110Aの電圧を電圧増幅部106の入力にフィードバックする帰還回路(フィードバックループ)114が形成されている。
【0096】
また、出力線112は、コネクタ116及びフレキシブルフラットケーブル(図8中不図示、図9に符号140で図示)を介して、圧電素子58の個別電極(図4参照)と電気的に接続されている。
【0097】
さらに、図8に示す駆動回路100は、起動時に電流増幅部110と出力線112の間の電気接続を遮断した状態で、出力線112及び出力線112と圧電素子58との間の電気配線に短絡が発生しているか否かを判断し、短絡が発生している場合には電流増幅部110と出力線112の間の電気接続を遮断した状態を維持し、かつ、電圧増幅部106の入力部106Aにオフセット電圧を印加して、電圧増幅部106の出力電圧が最小となり、電流増幅部110の入力に過電圧が印加されないように保護する保護回路(図9に符号150で図示)を含んでいる。
【0098】
すなわち、駆動回路100の保護回路は、電流増幅部110と出力線112との間に設けられるスイッチ120(スイッチ1)と、出力線112に対して検査用の直流電圧を印加するための検査用電源供給部122と、検査用電源供給部122と出力線112との間に設けられるスイッチ124(スイッチ2)と、出力線112の電圧を検出する出力部電位検出部126と、出力線電位検出部126の検出電圧と基準電圧とを比較する比較部128と、比較部128の比較結果を記憶する比較結果記憶部130と、比較結果記憶部130に記憶されている比較結果に基づいてスイッチ切換信号を生成するスイッチ切換信号生成部132と、電圧増幅部106の入力部106Aに入力されるオフセット電圧を生成するオフセット信号生成部134と、オフセット信号生成部134と電圧増幅部106の入力部106Aとの間に設けられるスイッチ136(スイッチ3)と、スイッチ120がオフとスイッチ122のオンとの間に所定の時間遅れを発生させ、スイッチ120が完全にオフになった後にスイッチ122をオンに切り換えるための遅延時間を生成する遅延回路138と、を含んで構成されている。
【0099】
図8に示す駆動回路100を起動させる際に、まず、スイッチ120をオフ(開)にセットし、スイッチ124をオン(閉)にセットする。この状態では、出力線112には検査用電源供給部122から検査用の直流電圧が印加され、出力線電位検出部126は出力線112の電位を検出する。
【0100】
出力線112及び出力線112から圧電素子58までの電気配線にショート等の異常がなく正常な状態では、出力線112の電位は検査用電源供給部122の電圧となる。一方、当該電気配線にショート等の異常があると、出力線112の電位は0ボルト(グランドとショートした場合)又は、正常時の電位よりも十分に小さな電位となる。
【0101】
比較部128では、予め決められた基準信号129(正常及び異常を判断するための電位しきい値)と検出電位が比較され、その比較結果(例えば、正常はハイ(H)レベル、異常はロー(L)レベルの2値)は比較結果記憶部130に送られ、記憶される。
【0102】
スイッチ切換信号生成部132では、比較結果記憶部130に記憶された比較結果が所定の周期で参照され、比較結果に基づいてスイッチ120,124,136のオンオフを制御するスイッチ切換信号137が生成されるとともに、スイッチ切換信号137はスイッチ120,124,136に送出される。
【0103】
正常時には、スイッチ124,136をオフ(開)、スイッチ120のオフに対して所定の時間遅れの後にスイッチ124をオン(閉)とするスイッチ切換信号137が生成され、駆動回路100の出力部110Aと出力線112の電気配線が電気接続される。一方、異常時にはスイッチ120のオフ(開)を維持し、スイッチ124,136のオン(閉)を維持するスイッチ切換信号137が生成されるとともに、電圧増幅部106にオフセット電圧が入力されて電圧増幅部106の出力が最小となるように電圧増幅部106が動作し、電流増幅部110の入力が保護される。
【0104】
このようにして、駆動回路100の起動時において、駆動回路100の出力部110Aと圧電素子58への電気配線との電気接続を遮断し、該電気配線に電気接続される出力線112に検査用の直流電圧を供給して検査を行うので、出力線112と圧電素子58の間の電気配線に短絡等の異常が発生していても、駆動回路100を破損させることなく異常を検出することが可能である。また、異常時には駆動回路100の出力部110Aと圧電素子58への電気配線を遮断した状態が維持されるので、駆動回路100の破損が確実に防止される。
【0105】
次に、図9に示す具体的な回路構成例を用いて、本例に示す圧電素子駆動回路の保護回路の動作について、さらに詳述する。なお、図9では、図8に図示した構成の一部の図示は省略されている。
【0106】
図9は、図8に示す駆動回路100の各部の構成を具体的な素子及び回路によって図示したものである。なお、図9中、図8と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0107】
図9に示す駆動回路100の出力部110Aは、出力線112、狭ピッチ多ピンコネクタ116及びフレキシブルフラットケーブル140に設けられる駆動電圧線142を介してアナログスイッチ144に接続され、アナログスイッチ144の他方の端子は圧電素子58の個別電極(図4参照)に接続される。
【0108】
また、圧電素子58の共通電極(図4参照)は、フレキシブルフラットケーブル140に設けられるリターン線146及び狭ピッチ多ピンコネクタ116を介して駆動回路100のグランド電位111に接続される。
【0109】
フレキシブルフラットケーブル140は、駆動電圧線142とリターン線146が交互に配設される配線パターンを有し、狭ピッチ多ピンコネクタ116のピン配置はフレキシブルフラットケーブル140の配線パターンに対応して、駆動電圧線142とリターン線146が交互に配置されている。
【0110】
圧電素子58の個別電極には、駆動電圧線142を介してインク吐出量を規定する波形を有する駆動電圧が印加され、かつ、圧電素子58の個別電極に接続されるアナログスイッチ144には、インクの吐出タイミングを規定する制御信号が印加される。この駆動方式は図10に示す駆動回路220と共通している。
【0111】
図9において破線で囲まれた部分が駆動回路100の保護回路150である。保護回路150において、抵抗器152,154,156及び増幅器158は、出力部電位検出部(図8の符号126)を構成している。
【0112】
出力線112には、抵抗器152を介して電圧+V2が供給されるとともに、出力線112の電位(電圧)を抵抗器154,156によって分圧した電位が増幅器158の入力部に印加される。
【0113】
なお、図9では、図8の検査用電源供給部122と駆動用電源供給部108とを兼用して+V2(圧電素子駆動用の電圧)を用いる態様を例示したが、図8に示すようにこれらを別々に構成してもよい。また、図9の増幅器158には、オペアンプを用いた増幅回路を適用する態様が好ましい。
【0114】
図9の比較部128は、同じ符号128で図8に図示した比較部128に対応している。比較部128には、コンパレータを用いてもよいし、オペアンプを用いた比較回路を適用してもよい。また、基準信号129は抵抗器152,154,156の抵抗値と、異常の場合に出力線112に接続されるインピーダンスに応じて決められた直流電圧である。
【0115】
図9のDフリップフロップ160は、図8の比較結果記憶部130及びスイッチ切換信号生成部132として機能している。すなわち、Dフリップフロップ160は、入力CLKがLからHに変化したタイミングで、出力Qには入力Dの状態(H又はL)が出力されるとともに、出力Qバーには入力Dの状態の反転状態が出力される機能を有している。
【0116】
Dフリップフロップ160の入力Dに比較部128の出力(比較結果)を入力することで、比較部128の比較結果(出力線112の検出電圧が所定の基準信号129よりも大きいか又は小さいか)が記憶されるとともに、出力Qの出力信号によりスイッチ120のオンオフを制御し、かつ、出力Qバーの出力信号によりスイッチ124,136のオンオフを制御することで、Dフリップフロップ160の記憶状態に応じてスイッチ120,124,136のオンオフが制御される。
【0117】
スイッチ120,124,136は、制御信号によりオンオフの切り換えが可能なアナログスイッチが好ましい。もちろん、フォとカプラと定電流回路を組み合わせたスイッチング回路やトランジスタ等のスイッチング素子を用いてスイッチ120,124,136を構成することも可能である。
【0118】
図9のDフリップフロップ160は、ラッチ回路と論理回路(論理和回路や論理積回路、反転回路等)を適宜組み合わせて構成してもよいし、RSフリップフロップ回路などの構成を適用してもよい。
【0119】
図8の電圧増幅部106は、オペアンプ166及び帰還回路を構成する抵抗器162,164から構成され、電流増幅部110は、トランジスタ170,172及びトランジスタ170,172の入力回路を構成する抵抗器174,176及びダイオード178,180から構成されている。なお、トランジスタ170,172は、MOSFETなどのスイッチング素子(入力信号に対して電流増幅及び電圧変換を行う素子)を適用してもよい。
【0120】
また、トランジスタ170,172の入力回路は、適用される素子に応じて適宜変更される。さらに、周波数特性を改善するための回路構成や、高周波ノイズを除去するための素子又は回路構成を適宜付加してもよい。
【0121】
図9には、NPNトランジスタ170とPNPトランジスタ172がトーテムポール接続されたプッシュプル型回路(電流増幅回路及び電圧変換回路)を例示したが、NPNトランジスタを用いたオープンコレクタ回路(又は、PNPトランジスタを用いたオープンエミッタ回路)など、他の回路構成を適用してもよい。
【0122】
スイッチ136とオペアンプ166の反転入力端子との間には抵抗器182が設けられ、オフセット信号生成部134から送出されるオフセット信号は、抵抗器182を介してオペアンプ166の反転入力端子に入力される。
【0123】
次に、図9に図示した駆動回路100(保護回路150)の動作について詳細に説明する。
【0124】
(初期状態)
駆動回路100の起動時における初期状態では、D/Aコンバータ104から波形データ列は出力されない出力ゼロの状態であり、イネーブル信号105はLである。
【0125】
駆動回路100の起動直後はDフリップフロップ160の出力Qは不定であり、H又はLのいずれにもなり得る。仮に、出力QをHとすると出力QバーはLであり、CLRの入力(出力Qバーとイネーブルとの論理和)はLとなり、出力Qは直ちにLになる。
【0126】
Dフリップフロップ160の出力QがLのときには出力QバーはHであり、入力CLRにはHが入力される。そして、入力CLK(イネーブル信号105)はLが維持され、出力QはLが維持される。したがって、初期状態では出力QはLであり、その結果、スイッチ120はオフ(開)、スイッチ124,136はオン(閉)となる。
【0127】
上述したようにスイッチ120,124,136の初期状態のオンオフが設定されると、駆動回路100と圧電素子58との間の電気配線の検査モードとなり、トランジスタ170のエミッタ端子と出力線112との接続が遮断されるとともに、出力線112には直流電圧+V2が抵抗器152を介して供給される。また、オペアンプ166の反転入力(−)端子には、スイッチ124のオンのタイミングでオフセット信号が入力される。
【0128】
(出力が短絡していないとき(正常時)の動作)
初期状態においてスイッチ120がオフにセットされるので、出力線112と圧電素子58との間の電気配線が短絡していない正常時には、出力線112には抵抗器152を介して直流電圧+V2が印加され、出力線112の電位はオペアンプ166の出力によらない。
【0129】
また、初期状態においてスイッチ136はオンにセットされるので、オペアンプ166の反転入力端子にはオフセット信号が印加される。オフセット信号は、駆動回路100の出力部110Aがマイナス電位になるように決められたアナログ電圧である。図9に示すD/Aコンバータ104の出力を増幅する増幅回路には、反転増幅回路が適用されるので、該増幅回路のゲインはマイナスであり、かつD/Aコンバータ104の出力がゼロなので、該増幅回路は駆動回路100の出力部110Aをマイナス電位にするように動作する。
【0130】
しかし、駆動回路100の出力部110Aは、抵抗器162を介してオペアンプ166の入力端子に接続され、かつ、スイッチ120がオフとなって出力線112と電気接続が遮断されているので、駆動回路100の出力部110Aの出力電圧が、D/A変換部104の出力値とオフセット信号生成部134の出力値を加算した値を反転増幅した値にするようにオペアンプ166が動作する。この場合は、オペアンプ166は出力113がマイナスになるように動作するので、駆動回路100の出力部110Aはグランド電位で飽和する。
【0131】
この状態でスイッチ124をオンにすると、出力線112には直流電圧+V2を抵抗器152,154,156で抵抗分割した電位が現れる。インクジェットヘッド50(圧電素子58)の入力は通常ハイインピーダンスであり、インクジェットヘッド50には電流がほとんど流れない。したがって、出力線112の電位は+V2×{(抵抗器154の抵抗値)+(抵抗器156の抵抗値)/(抵抗器152の抵抗値)+(抵抗器154の抵抗値)+(抵抗器156の抵抗値)}となる。
【0132】
出力線112の電位は正常動作時には30V程度になることがあるので、増幅器158の入力電圧を超えないように、出力線112の電位を抵抗器154,156で抵抗分割した電位が増幅器158に入力される。また、増幅器158の入力容量が影響して、駆動回路100が正常に動作している場合の駆動回路100の応答性を落としてしまうことを防止するために、抵抗器154,156には、数百kΩ程度の高抵抗が適用される。
【0133】
一方、出力線112の検出信号は、電圧が数mV、電流が数mA程度の微小信号となってしまうので、このような微小信号を比較部128の入力電圧に適した電圧に変換するとともに、比較部128の入力に十分な電流を流すことができるように増幅器158のゲインが決められている。
【0134】
比較部128は、増幅器158の出力電位と基準信号129との比較が行われる。(増幅器158の出力)>基準信号129であれば、比較部はH(正常)を出力し、Dフリップフロップ160の入力DにはHが入力される。また、初期状態において出力QバーはHであり、Dフリップフロップ160の入力CLRにはHが入力される。
【0135】
この状態でイネーブル信号105がLからHに遷移すると、Dフリップフロップ160の入力Dの状態が出力Qに出力されるので、出力QはLからHに変化する。なお、出力QバーはHからLに変化するがイネーブル信号105がHのままなので、入力CLRはHのまま変化せず、出力QはHの状態を維持する。
【0136】
このようにして、出力QがH、出力QバーがLになると、スイッチ120はオン、スイッチ124,136はオフになる。スイッチ124がオフになると、検査用の回路は出力線112から切り離される。
【0137】
一方、スイッチ120がオンになることで、駆動回路100の出力はオペアンプ166の出力に追従するモードになる。ここで、スイッチ120がオフからオンになるタイミングは、スイッチ124がオンからオフになるタイミングに対して所定の時間だけ遅れるように遅延回路138が動作する。
【0138】
そのため、スイッチ124がオンからオフになるときに、スイッチ124が完全にオフになった結果、出力線112の電位が0Vに下がった後、スイッチ120がオンになる。
【0139】
したがって、スイッチ120がオンになった瞬間に、出力線112の電位が瞬間的に過大になるようなことがなく、インクジェットヘッド50(圧電素子58)を壊す心配がない。
【0140】
(出力が短絡しているときの動作)
次に、コネクタ116の斜め差し、誤差し、逆差しなどにより、駆動電圧線142とリターン線146が短絡している場合の動作について説明する。
【0141】
初期状態においてスイッチ120がオフにセットされるので、出力線112(圧電素子58に電気接続される電気配線)が短絡していないとき(正常時)には、出力線112には抵抗器152を介して直流電圧+V2が印加され、出力線112の電位はオペアンプ166の出力によらない。
【0142】
また、初期状態においてスイッチ136はオンにセットされるので、オペアンプ166の反転入力端子にはオフセット信号が印加される。オフセット信号は、駆動回路100の出力部110Aが基準電位(0ボルト)以下になるように決められたアナログ電圧である。
【0143】
図9に示すD/Aコンバータ104の出力を増幅する増幅回路には、反転増幅回路が適用されるので、該増幅回路のゲインはマイナスであり、かつD/Aコンバータ104の出力がゼロなので、該増幅回路は駆動回路100の出力部110Aをマイナス電位にするように動作する。なお、ここでいう「D/Aコンバータ104の出力を増幅する増幅回路」とは、オペアンプ166及びトランジスタ170,172、これらの周辺回路を含む回路ブロックであり、図8の電圧増幅部106と電流増幅部110を含む概念である。
【0144】
しかし、駆動回路100の出力部110Aはグランド電位で飽和してしまうため、オペアンプ166の出力113は最小値となる。ここまでは、出力が短絡していないときの動作と同じである。
【0145】
この状態でスイッチ124が閉じると、直流電圧+V2が抵抗器152を介して出力線112に接続される。しかし、出力線112はグランド電位111と短絡しているので、出力線112の電位はグランド電位(ゼロボルト)のままである。増幅器158の出力にゼロボルトが入力されると、増幅器158の出力からはゼロボルトが出力されるので、比較部128の入力は基準信号129よりも小さくなり、出力はLとなる。
【0146】
この状態でイネーブル信号105がLからHに遷移すると、Dフリップフロップ160の入力DはLであるから出力QはL、出力QバーはHのままで変化しない。したがって、スイッチ120,124,136の状態は変わらず、駆動回路100は起動せず、増幅回路は保護される。
【0147】
すなわち、コネクタ116の斜め差し等により、駆動電圧線142とリターン線146が短絡しても、トランジスタ170,172のベース−エミッタ間に最大定格を超える電圧が入力されることがないので、トランジスタ170,172の入力部の破損を防止することができる。
【0148】
なお、本例に示す保護回路150は、駆動電圧線142とリターン線146との短絡だけでなく、インクジェットヘッド50内のインク漏れによる電気回路や圧電素子58の絶縁性能の劣化に起因する駆動回路100の破損を防止することも可能である。
【0149】
インクジェットヘッド50の内部でインクが漏れて電気回路部分にインクが浸透し、正常時には数MΩ〜数十MΩとなる見かけ上端子間(駆動電圧線142とリターン線146との間)の電気抵抗が数Ω程度に小さくなることがある。この場合、インクジェットヘッド50は抵抗負荷となるので、駆動回路100は、インクジェットヘッド50の電気抵抗と出力電圧(+V2)で決まる電流を常時出力する必要がある。したがって、駆動回路100の発熱量が正常時よりも大きくなって、最悪の場合には、駆動回路100を焼損するおそれがある。
【0150】
このような異常に対して、以下のような方法で駆動回路100を保護することが可能である。
【0151】
インクジェットヘッド50の電気抵抗(駆動電圧線142とリターン線146との間の抵抗)がある程度小さくなると、コネクタ116の斜め差し等による短絡が起きていなくても、検査用回路から供給される+V2の印加に伴って出力線112に現れる電位が正常時よりも十分に小さくなり、増幅器158の出力もまた正常時よりも十分に小さくなる。
【0152】
インクジェットヘッド50の電気抵抗の正常時の下限値に対応する基準信号129を予め設定しておくことで、インクジェットヘッド50の電気抵抗が正常時の下限値よりも小さくなると、比較部128の出力がLとなる。このとき、イネーブル信号105がLからHに遷移しても、Dフリップフロップ160入力DはLのままであり、出力QはL、出力QバーはHのまま変わらない。したがって、スイッチ120,124,136のオンオフは初期状態と変わらず、駆動回路100は起動しない。
【0153】
これにより、インクジェットヘッド50の電気抵抗が、予め決められた下限値よりも小さくなった場合にも、駆動回路100を焼損などの破損から保護することが可能となる。
【0154】
例えば、正常時における比較部128の最大入力電位を1.0Vとすると、デッドショート(抵抗値がほとんど0Ωでショートしている場合)には、比較部128の入力電位はほとんど0Vとなるので、基準信号は1.0Vよりも十分に小さい値(例えば0.2V程度)に設定される。一方、この基準信号を0.5V程度(正常状態とデッドショート状態の中間)に設定しておくと、数Ω〜数百Ω程度の抵抗値を持ってショートしている場合にも異常と判断することが可能となる。
【0155】
上記の如く構成された駆動回路100(保護回路150)によれば、駆動回路100の起動時において、インクジェットヘッド50を接続した状態で(駆動回路の出力ポートを用いて、検査専用の信号線を設けることなく)、インクジェットヘッド50の駆動時に用いる駆動回路とは別に、検査用の直流電圧を供給して、出力線112及び出力線112から圧電素子58の間の電気配線の異常を検査するので、出力線112から先の電気配線及び素子に短絡等の異常が発生していても、駆動回路100を破損することなく異常検出を行うことが可能である。
【0156】
また、検査専用の信号線を設けた場合には、検査専用の信号線がオープンとなっている場合には異常が検出されないが、本例に示す駆動回路100は検査専用の信号線を設けた場合に比べて検出結果の信頼性が高いといえる。
【0157】
さらに、異常検出の基準電位を適宜設定することで、インク漏れ等による電気回路部分の絶縁異常(電気抵抗の低下)を検出することも可能である。
【0158】
〔応用例〕
圧電素子58に電気接続される電気配線の異常が検出された場合に、その旨を報知する構成を付加する態様が好ましい。例えば、図8の比較部結果記憶部130の比較結果に応じて点灯及び消灯するLEDを備える態様や、アラーム音を鳴らす態様、モニタ等の表示装置にその旨を表示する態様が挙げられる。
【0159】
本実施形態では、複数の圧電素子58が設けられたインクジェットヘッドの駆動回路を例示したが、本発明の適用範囲はインクジェットヘッドの駆動回路に限定されず、複数の圧電素子(圧電アクチュエータ)を制御信号によって切り換えながら駆動する圧電アクチュエータの駆動回路に適用することができる。
【0160】
とくに、圧電アクチュエータと駆動回路基板101をフレキシブルフラットケーブルなどの高密度に配線パターンが形成された電気配線により伝送し、かつ、インターフェースとして狭ピッチ多ピンコネクタを用いる構成において、本発明に係る駆動回路及び保護回路は特に効果を発揮する。
【0161】
また、本実施形態では、本発明が適用される装置例として記録媒体上にカラー画像を形成するインクジェット記録装置を示したが、本発明は吐出ヘッドから媒体上に液体を吐出する液体吐出装置(ディスペンサーなど)など、圧電アクチュエータを吐出力発生素子に適用した構成に広く適用可能である。
【0162】
本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【0163】
<付記>
上記に詳述した発明の実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書は少なくとも以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
【0164】
(発明1):駆動電圧を表すデジタルデータ列に基づいて所定の駆動電圧を発生させる駆動電圧発生部と、前記駆動電圧発生部と前記駆動電圧発生部から供給される駆動電圧により駆動される圧電アクチュエータを電気接続する出力線と、前記出力線に検査用の直流電圧を印加する検査用電源供給部と、前記駆動電圧発生部と前記出力線の間に設けられ、前記駆動電圧発生部と前記出力線の間の電気接続の開閉を切り換える第1のスイッチと、前記検査用電源供給部と前記出力線との間に設けられ、前記検査用電源供給部と前記出力線の間の電気接続の開閉を切り換える第2のスイッチと、前記出力線の電位を検出する出力電位検出部と、前記出力電位検出部によって検出された検出電位に基づいて、前記出力線及び前記出力線と前記圧電アクチュエータとの間の電気配線の短絡の有無を判断する判断部と、前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチの開閉を制御するスイッチ制御部と、を備え、前記スイッチ制御部は、起動時において前記第1のスイッチを開くとともに前記第2のスイッチを閉じるように前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチを制御し、起動時の検査において、前記判断部によって前記電気配線に短絡があると判断されると前記第1のスイッチを開いた状態及び前記第2のスイッチを閉じた状態を維持し、一方、前記電気配線に短絡がないと判断されると前記第1のスイッチを閉じるとともに前記第2のスイッチを開くように前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチを制御することを特徴とする圧電アクチュエータ駆動回路。
【0165】
本発明によれば、圧電アクチュエータに供給する駆動電圧を生成する駆動回路を起動する際に、該回路駆動電圧発生部と出力線の間の電気接続を開放(遮断)するとともに、検査用電源供給部から出力線に検査用の電圧を供給して、出力線及び出力線と圧電アクチュエータとの間の電気配線の短絡の有無を判断するので、該電気配線が短絡していたとしても駆動回路(駆動電圧発生部)を破損させることがない。
【0166】
駆動電圧発生部は、波形データを所定のアナログ信号に変換する低電圧回路(小信号を取り扱う回路)と、アナログ信号を圧電アクチュエータの駆動に必要な電流及び電圧に変換するパワー回路(高電圧、大電流を取り扱う回路)と、を含む概念である。
【0167】
電気配線には、駆動信号が伝送される駆動電圧線とリターン(グランド電位の信号)が伝送されるリターン線を含む態様がある。
【0168】
電気配線の短絡とは、駆動電圧が伝送される駆動電圧線とリターン線(基準電位)との間の抵抗値がほぼ0Ωとなって接続される状態や、ある抵抗値(数Ω〜数百Ω程度の抵抗値)を持って接続される状態のいずれも含んでいる。
【0169】
圧電アクチュエータとは、電極となる金属膜の間に圧電材料がはさみ込まれた構造を有する圧電素子を含んでいる。また、圧電素子の変形に応じて動作する部材を含んでいてもよい。
【0170】
(発明2):発明1に記載の圧電アクチュエータ駆動回路において、前記出力線には複数の圧電アクチュエータが並列に接続されるとともに、前記複数の圧電アクチュエータのそれぞれは前記出力線との間の電気配線の開閉を切り換えるスイッチ素子を備え、各圧電アクチュエータの動作タイミングに応じて前記スイッチ素子の開閉を制御するタイミング制御部を備えたことを特徴とする。
【0171】
かかる態様では、複数の圧電アクチュエータには共通の駆動電圧が印加され、各圧電アクチュエータの動作タイミングに応じて各圧電アクチュエータに備えられたスイッチ素子の開閉を制御することで、各圧電アクチュエータは所定のタイミングで動作する。
【0172】
(発明3):発明1又は2に記載の圧電アクチュエータ駆動回路において、当該圧電アクチュエータ駆動回路は回路基板に形成されるとともに、前記出力線と前記複数の圧電アクチュエータとの間の電気配線は、前記回路基板に設けられる複数の端子を有するコネクタ、及び前記複数の圧電アクチュエータに印加される駆動電圧が伝送される配線パターンが形成された配線部材を含むことを特徴とする。
【0173】
かかる態様によれば、コネクタのななめ差しや逆差しにより駆動電圧発生部と圧電アクチュエータとの間の電気配線に短絡が生じた場合にも、駆動電圧発生部を破損させることなく保護できる。
【0174】
かかる態様は、狭ピッチ多ピンコネクタを用いる場合や、駆動電圧線とリターン線を交互にピン割り付けする場合において、特に効果を発揮する。
【0175】
(発明4):発明1乃至3のいずれかに記載の圧電アクチュエータ駆動回路において、前記駆動電圧発生部は、前記デジタルデータ列をアナログ信号に変換するD/A変換部と、前記D/A変換部によって変換されたアナログ信号を所定の電圧に増幅する増幅部と、前記増幅部によって所定の電圧に増幅された増幅信号を、圧電アクチュエータを駆動するために必要な電圧及び電流に変換する駆動電圧変換部と、駆動電圧を出力する駆動電圧出力部と、を含むことを特徴とする。
【0176】
かかる態様において、波形データを記憶する波形データ記憶部を備える態様が好ましい。
【0177】
(発明5):発明4に記載の圧電アクチュエータ駆動回路において、前記駆動電圧変換部は、前記増幅部から出力された前記増幅信号が所定の入力回路を介して入力される制御入力端子、及び前記駆動電圧発生部に対して所定の電源供給を行う駆動用電源供給部から電源供給を受ける電源供給端子、前記駆動電圧出力部と電気接続される出力端子を有するトランジスタを含むことを特徴とする。
【0178】
トランジスタには、バイポーラトランジスタや電界効果トランジスタ(FET)などの電流増幅機能及び電圧変換機能を有する受動素子が含まれる
(発明6):発明5に記載の圧電アクチュエータ駆動回路において、前記駆動電圧変換部は、トーテムポール接続された第1のトランジスタ及び第2のトランジスタを含み、前記第1のトランジスタの第1の端子及び第2のトランジスタの第1の端子はともに前記駆動電圧出力部に接続されるとともに、前記第1のトランジスタの第2の端子及び第2のトランジスタの第2の端子は所定の入力回路を介して前記増幅部の出力に接続され、前記第1のトランジスタの第3の端子は前記第1のスイッチ素子を介して前記駆動用電源供給部と接続され、前記第2のトランジスタの第3の端子はグランド電位に接続されることを特徴とする。
【0179】
かかる態様によれば、2つのトランジスタがトーテムポール接続されたプッシュプル回路は、高速スイッチングが可能であって高電圧及び大電流の駆動電圧により圧電アクチュエータを駆動する回路に好適である。
【0180】
かかる態様において、第1のトランジスタにNPNトランジスタを適用し、第2のトランジスタにPNPトランジスタを適用すると、第1の端子はエミッタ端子、第2の端子はベース端子、第3の端子はコレクタ端子となる。
【0181】
(発明7):発明5又は6記載の圧電アクチュエータ駆動回路において、前記駆動電圧出力部から前記増幅部へ帰還をかける帰還部と、前記増幅部の出力がマイナス電位になるように前記増幅部に入力されるオフセット信号を生成するオフセット信号生成部と、前記増幅部と前記オフセット信号生成部との間に設けられ、前記増幅部と前記オフセット信号生成部との電気接続の開閉を切り換える第3のスイッチ素子と、を備え、前記スイッチ制御部は、前記第3のスイッチ素子の開閉を制御するとともに、起動時において前記第3のスイッチ素子を閉じるように制御し、起動時の検査において前記電気配線に短絡があると判断されると、前記第3のスイッチを閉じた状態を維持し、一方、前記電気配線に短絡がないと判断されると、前記第3のスイッチを開くように前記第3のスイッチの開閉を制御することを特徴とする。
【0182】
かかる態様によれば、起動時及び短絡発生時には、増幅部の出力がマイナス電位となるように増幅部にオフセット信号が印加されるので、増幅部の出力は帰還を繰り返すうちに最小電位になり、増幅部の出力に応じて動作する駆動電圧発生部の動作を確実に停止させることができる。
【0183】
(発明8):発明1乃至7のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ駆動回路において、前記第1のスイッチが開いた状態から閉じた状態になるときに所定の時間遅れを発生させる遅延時間発生部を備えたことを特徴とする。
【0184】
かかる態様によれば、出力部の検査終了後に駆動電圧発生部を起動させる際に、時間遅れ分が経過した後に増幅部を動作させることで、起動直後から時間遅れの期間は駆動電圧発生部には増幅部の最小電位が印加され、起動直後の駆動電圧発生部の破損が防止される。
【0185】
(発明9):発明1乃至8のいずれかに記載の圧電アクチュエータ駆動回路において、前記判断部は、前記出力電位検出部によって検出された検出電位を増幅する検出電位増幅部と、前記検出電位増幅部によって増幅された前記検出電位と所定の基準信号とを比較する比較部と、前記比較部による比較結果を記憶する比較結果記憶部と、を備えたことを特徴とする。
【0186】
かかる態様において、出力部の電位を検査電位増幅部の入力に適した電位に変換する態様が好ましい。
【0187】
(発明10):発明1乃至9のいずれかに記載の圧電アクチュエータ駆動回路において、前記スイッチ制御部は、前記比較結果記憶部に記憶された比較結果に基づいて前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチに与えられるスイッチ切換信号を生成するスイッチ切換信号生成部を含むことを特徴とする。
【0188】
かかる態様において、第1及び第2のスイッチには、スイッチ切換信号によりオンオフを制御可能なアナログスイッチを適用するとよい。
【0189】
(発明11):発明10に記載の圧電アクチュエータ駆動回路において、前記切換信号生成部は、前記比較結果記憶部に記憶された比較結果に基づいて前記第3のスイッチに与えられるスイッチ切換信号を生成することを特徴とする。
【0190】
かかる態様において、第3のスイッチには、スイッチ切換信号によりオンオフを制御可能なアナログスイッチを適用するとよい。
【0191】
(発明12):発明10又は11に記載の圧電アクチュエータ駆動回路において、前記比較結果記憶部及び前記スイッチ切換信号生成部は、Dフリップフロップ回路により構成されることを特徴とする。
【0192】
かかる態様によれば、簡単な構成で比較結果記憶部及び切換信号生成部の機能を実現することができる。
【0193】
(発明13):液体を吐出させるノズルを具備するとともに、前記ノズルから吐出される液体に吐出力を付与する圧電アクチュエータを備えた液体吐出ヘッドと、前記圧電アクチュエータに所定の駆動電圧を与える駆動回路と、を備え、前記駆動回路は、請求項1乃至12のいずれかに記載の圧電アクチュエータ駆動回路を含むことを特徴とする液体吐出装置。
【0194】
液体吐出ヘッドには、圧電アクチュエータから付与された吐出圧力を利用してノズルから液体を吐出するインクジェット方式の吐出ヘッドが含まれる。
【0195】
液体吐出装置では、駆動回路が形成された駆動回路基板に設けられたコネクタ及びコネクタと接合される配線部材を介して、駆動回路と液体吐出ヘッドの電気接続を行う形態がよく用いられる。
【0196】
また、本明細書は、起動時に駆動回路と出力線の電気接続を遮断し、該出力線に検査用の電源を供給して該出力線に接続される電気配線の短絡を検査し、検査結果に基づき該出力線に接続される電気配線が短絡している場合には駆動回路を動作させず、一方、該出力線に接続される電気配線が短絡していない場合には、駆動回路を動作させることを特徴とする圧電アクチュエータ駆動回路の保護方法を開示するものである。
【図面の簡単な説明】
【0197】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図
【図2】図1に示すインクジェット記録装置の印字部周辺の要部平面図
【図3】ヘッドの構造例を示す平面透視図
【図4】図3中4−4線に沿う断面図
【図5】図3に示すヘッドのノズル配置を示す拡大図
【図6】図1に示すインクジェット記録装置のインク供給系の構成を示す概要図
【図7】図1に示すインクジェット記録装置の制御系の構成を示す概要図
【図8】図7に示すヘッドドライバに含まれる駆動回路の構成を示すブロック図
【図9】図8のブロック図の各機能の具体的な構成を示す構成図
【図10】従来技術に係る圧電素子の駆動回路を説明する図
【図11】従来技術に係る圧電素子の駆動回路の変形例を説明する図
【符号の説明】
【0198】
12K,12C,12M,12Y,50…ヘッド、58…圧電素子、84…ヘッドドライバ、100…駆動回路、101…駆動回路基板、106…電圧増幅部、108…駆動用電源供給部、110…電流増幅部、110A…出力部、112…出力線、116…狭ピッチ多ピンコネクタ、120,124,136…スイッチ、122…検査用電源供給部、126…出力電圧検出部、128…比較部、130…比較結果記憶部、132…スイッチ切換信号生成部、134…オフセット信号生成部、138…遅延回路、140フレキシブルフラットケーブル、142…駆動電圧線、146…リターン線、150…保護回路、152,154,156,162,164…抵抗器、160…Dフリップフロップ、170,172…トランジスタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動電圧を表すデジタルデータ列に基づいて所定の駆動電圧を発生させる駆動電圧発生部と、
前記駆動電圧発生部と前記駆動電圧発生部から供給される駆動電圧により駆動される圧電アクチュエータを電気接続する出力線と、
前記出力線に検査用の直流電圧を印加する検査用電源供給部と、
前記駆動電圧発生部と前記出力線の間に設けられ、前記駆動電圧発生部と前記出力線の間の電気接続の開閉を切り換える第1のスイッチと、
前記検査用電源供給部と前記出力線との間に設けられ、前記検査用電源供給部と前記出力線の間の電気接続の開閉を切り換える第2のスイッチと、
前記出力線の電位を検出する出力電位検出部と、
前記出力電位検出部によって検出された検出電位に基づいて、前記出力線及び前記出力線と前記圧電アクチュエータとの間の電気配線の短絡の有無を判断する判断部と、
前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチの開閉を制御するスイッチ制御部と、
を備え、
前記スイッチ制御部は、起動時において前記第1のスイッチを開くとともに前記第2のスイッチを閉じるように前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチを制御し、起動時の検査において、前記判断部によって前記電気配線に短絡があると判断されると前記第1のスイッチを開いた状態及び前記第2のスイッチを閉じた状態を維持し、一方、前記電気配線に短絡がないと判断されると前記第1のスイッチを閉じるとともに前記第2のスイッチを開くように前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチを制御することを特徴とする圧電アクチュエータ駆動回路。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電アクチュエータ駆動回路において、
前記出力線には複数の圧電アクチュエータが並列に接続されるとともに、前記複数の圧電アクチュエータのそれぞれは前記出力線との間の電気配線の開閉を切り換えるスイッチ素子を備え、
各圧電アクチュエータの動作タイミングに応じて前記スイッチ素子の開閉を制御するタイミング制御部を備えたことを特徴とする圧電アクチュエータ駆動回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の圧電アクチュエータ駆動回路において、
当該圧電アクチュエータ駆動回路は回路基板に形成されるとともに、
前記出力線と前記複数の圧電アクチュエータとの間の電気配線は、前記回路基板に設けられる複数の端子を有するコネクタ、及び前記複数の圧電アクチュエータに印加される駆動電圧が伝送される配線パターンが形成された配線部材を含むことを特徴とする圧電アクチュエータ駆動回路。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ駆動回路において、
前記駆動電圧発生部は、前記デジタルデータ列をアナログ信号に変換するD/A変換部と、
前記D/A変換部によって変換されたアナログ信号を所定の電圧に増幅する増幅部と、
前記増幅部によって所定の電圧に増幅された増幅信号を、圧電アクチュエータを駆動するために必要な電圧及び電流に変換する駆動電圧変換部と、
駆動電圧を出力する駆動電圧出力部と、
を含むことを特徴とする圧電アクチュエータ駆動回路。
【請求項5】
請求項4に記載の圧電アクチュエータ駆動回路において、
前記駆動電圧変換部は、前記増幅部から出力された前記増幅信号が所定の入力回路を介して入力される制御入力端子、及び前記駆動電圧発生部に対して所定の電源供給を行う駆動用電源供給部から電源供給を受ける電源供給端子、前記駆動電圧出力部と電気接続される出力端子を有するトランジスタを含むことを特徴とする圧電アクチュエータ駆動回路。
【請求項6】
請求項5に記載の圧電アクチュエータ駆動回路において、
前記駆動電圧変換部は、トーテムポール接続された第1のトランジスタ及び第2のトランジスタを含み、
前記第1のトランジスタの第1の端子及び第2のトランジスタの第1の端子はともに前記駆動電圧出力部に接続されるとともに、前記第1のトランジスタの第2の端子及び第2のトランジスタの第2の端子は所定の入力回路を介して前記増幅部の出力に接続され、前記第1のトランジスタの第3の端子は前記第1のスイッチ素子を介して前記駆動用電源供給部と接続され、前記第2のトランジスタの第3の端子はグランド電位に接続されることを特徴とする圧電アクチュエータ駆動回路。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の圧電アクチュエータ駆動回路において、
前記駆動電圧出力部から前記増幅部へ帰還をかける帰還部と、
前記増幅部の出力がマイナス電位になるように前記増幅部に入力されるオフセット信号を生成するオフセット信号生成部と、
前記増幅部と前記オフセット信号生成部との間に設けられ、前記増幅部と前記オフセット信号生成部との電気接続の開閉を切り換える第3のスイッチ素子と、
を備え、
前記スイッチ制御部は、前記第3のスイッチ素子の開閉を制御するとともに、起動時において前記第3のスイッチ素子を閉じるように制御し、起動時の検査において前記電気配線に短絡があると判断されると、前記第3のスイッチを閉じた状態を維持し、一方、前記電気配線に短絡がないと判断されると、前記第3のスイッチを開くように前記第3のスイッチの開閉を制御することを特徴とする圧電アクチュエータ駆動回路。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ駆動回路において、
前記第1のスイッチが開いた状態から閉じた状態になるときに所定の時間遅れを発生させる遅延時間発生部を備えたことを特徴とする圧電アクチュエータ駆動回路。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ駆動回路において、
前記判断部は、前記出力電位検出部によって検出された検出電位を増幅する検出電位増幅部と、
前記検出電位増幅部によって増幅された前記検出電位と所定の基準信号とを比較する比較部と、
前記比較部による比較結果を記憶する比較結果記憶部と、
を備えたことを特徴とする圧電アクチュエータ駆動回路。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ駆動回路において、
前記スイッチ制御部は、前記比較結果記憶部に記憶された比較結果に基づいて前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチに与えられるスイッチ切換信号を生成するスイッチ切換信号生成部を含むことを特徴とする圧電アクチュエータ駆動回路。
【請求項11】
請求項10に記載の圧電アクチュエータ駆動回路において、
前記切換信号生成部は、前記比較結果記憶部に記憶された比較結果に基づいて前記第3のスイッチに与えられるスイッチ切換信号を生成することを特徴とする圧電アクチュエータ駆動回路。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の圧電アクチュエータ駆動回路において、
前記比較結果記憶部及び前記スイッチ切換信号生成部は、Dフリップフロップ回路により構成されることを特徴とする圧電アクチュエータ駆動回路。
【請求項13】
液体を吐出させるノズルを具備するとともに、前記ノズルから吐出される液体に吐出力を付与する圧電アクチュエータを備えた液体吐出ヘッドと、
前記圧電アクチュエータに所定の駆動電圧を与える駆動回路と、
を備え、
前記駆動回路は、請求項1乃至12のいずれかに記載の圧電アクチュエータ駆動回路を含むことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項1】
駆動電圧を表すデジタルデータ列に基づいて所定の駆動電圧を発生させる駆動電圧発生部と、
前記駆動電圧発生部と前記駆動電圧発生部から供給される駆動電圧により駆動される圧電アクチュエータを電気接続する出力線と、
前記出力線に検査用の直流電圧を印加する検査用電源供給部と、
前記駆動電圧発生部と前記出力線の間に設けられ、前記駆動電圧発生部と前記出力線の間の電気接続の開閉を切り換える第1のスイッチと、
前記検査用電源供給部と前記出力線との間に設けられ、前記検査用電源供給部と前記出力線の間の電気接続の開閉を切り換える第2のスイッチと、
前記出力線の電位を検出する出力電位検出部と、
前記出力電位検出部によって検出された検出電位に基づいて、前記出力線及び前記出力線と前記圧電アクチュエータとの間の電気配線の短絡の有無を判断する判断部と、
前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチの開閉を制御するスイッチ制御部と、
を備え、
前記スイッチ制御部は、起動時において前記第1のスイッチを開くとともに前記第2のスイッチを閉じるように前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチを制御し、起動時の検査において、前記判断部によって前記電気配線に短絡があると判断されると前記第1のスイッチを開いた状態及び前記第2のスイッチを閉じた状態を維持し、一方、前記電気配線に短絡がないと判断されると前記第1のスイッチを閉じるとともに前記第2のスイッチを開くように前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチを制御することを特徴とする圧電アクチュエータ駆動回路。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電アクチュエータ駆動回路において、
前記出力線には複数の圧電アクチュエータが並列に接続されるとともに、前記複数の圧電アクチュエータのそれぞれは前記出力線との間の電気配線の開閉を切り換えるスイッチ素子を備え、
各圧電アクチュエータの動作タイミングに応じて前記スイッチ素子の開閉を制御するタイミング制御部を備えたことを特徴とする圧電アクチュエータ駆動回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の圧電アクチュエータ駆動回路において、
当該圧電アクチュエータ駆動回路は回路基板に形成されるとともに、
前記出力線と前記複数の圧電アクチュエータとの間の電気配線は、前記回路基板に設けられる複数の端子を有するコネクタ、及び前記複数の圧電アクチュエータに印加される駆動電圧が伝送される配線パターンが形成された配線部材を含むことを特徴とする圧電アクチュエータ駆動回路。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ駆動回路において、
前記駆動電圧発生部は、前記デジタルデータ列をアナログ信号に変換するD/A変換部と、
前記D/A変換部によって変換されたアナログ信号を所定の電圧に増幅する増幅部と、
前記増幅部によって所定の電圧に増幅された増幅信号を、圧電アクチュエータを駆動するために必要な電圧及び電流に変換する駆動電圧変換部と、
駆動電圧を出力する駆動電圧出力部と、
を含むことを特徴とする圧電アクチュエータ駆動回路。
【請求項5】
請求項4に記載の圧電アクチュエータ駆動回路において、
前記駆動電圧変換部は、前記増幅部から出力された前記増幅信号が所定の入力回路を介して入力される制御入力端子、及び前記駆動電圧発生部に対して所定の電源供給を行う駆動用電源供給部から電源供給を受ける電源供給端子、前記駆動電圧出力部と電気接続される出力端子を有するトランジスタを含むことを特徴とする圧電アクチュエータ駆動回路。
【請求項6】
請求項5に記載の圧電アクチュエータ駆動回路において、
前記駆動電圧変換部は、トーテムポール接続された第1のトランジスタ及び第2のトランジスタを含み、
前記第1のトランジスタの第1の端子及び第2のトランジスタの第1の端子はともに前記駆動電圧出力部に接続されるとともに、前記第1のトランジスタの第2の端子及び第2のトランジスタの第2の端子は所定の入力回路を介して前記増幅部の出力に接続され、前記第1のトランジスタの第3の端子は前記第1のスイッチ素子を介して前記駆動用電源供給部と接続され、前記第2のトランジスタの第3の端子はグランド電位に接続されることを特徴とする圧電アクチュエータ駆動回路。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の圧電アクチュエータ駆動回路において、
前記駆動電圧出力部から前記増幅部へ帰還をかける帰還部と、
前記増幅部の出力がマイナス電位になるように前記増幅部に入力されるオフセット信号を生成するオフセット信号生成部と、
前記増幅部と前記オフセット信号生成部との間に設けられ、前記増幅部と前記オフセット信号生成部との電気接続の開閉を切り換える第3のスイッチ素子と、
を備え、
前記スイッチ制御部は、前記第3のスイッチ素子の開閉を制御するとともに、起動時において前記第3のスイッチ素子を閉じるように制御し、起動時の検査において前記電気配線に短絡があると判断されると、前記第3のスイッチを閉じた状態を維持し、一方、前記電気配線に短絡がないと判断されると、前記第3のスイッチを開くように前記第3のスイッチの開閉を制御することを特徴とする圧電アクチュエータ駆動回路。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ駆動回路において、
前記第1のスイッチが開いた状態から閉じた状態になるときに所定の時間遅れを発生させる遅延時間発生部を備えたことを特徴とする圧電アクチュエータ駆動回路。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ駆動回路において、
前記判断部は、前記出力電位検出部によって検出された検出電位を増幅する検出電位増幅部と、
前記検出電位増幅部によって増幅された前記検出電位と所定の基準信号とを比較する比較部と、
前記比較部による比較結果を記憶する比較結果記憶部と、
を備えたことを特徴とする圧電アクチュエータ駆動回路。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ駆動回路において、
前記スイッチ制御部は、前記比較結果記憶部に記憶された比較結果に基づいて前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチに与えられるスイッチ切換信号を生成するスイッチ切換信号生成部を含むことを特徴とする圧電アクチュエータ駆動回路。
【請求項11】
請求項10に記載の圧電アクチュエータ駆動回路において、
前記切換信号生成部は、前記比較結果記憶部に記憶された比較結果に基づいて前記第3のスイッチに与えられるスイッチ切換信号を生成することを特徴とする圧電アクチュエータ駆動回路。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の圧電アクチュエータ駆動回路において、
前記比較結果記憶部及び前記スイッチ切換信号生成部は、Dフリップフロップ回路により構成されることを特徴とする圧電アクチュエータ駆動回路。
【請求項13】
液体を吐出させるノズルを具備するとともに、前記ノズルから吐出される液体に吐出力を付与する圧電アクチュエータを備えた液体吐出ヘッドと、
前記圧電アクチュエータに所定の駆動電圧を与える駆動回路と、
を備え、
前記駆動回路は、請求項1乃至12のいずれかに記載の圧電アクチュエータ駆動回路を含むことを特徴とする液体吐出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−69787(P2010−69787A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−241380(P2008−241380)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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