説明

圧電セラミックス、圧電セラミックスの製造方法、圧電素子、液体吐出ヘッド、液体吐出装置、超音波モータ、光学機器、振動装置、塵埃除去装置、撮像装置、および電子機器

【課題】高い圧電性能と高いキュリー温度を両立した圧電セラミックスを提供する。また、それを用いた圧電素子、液体吐出ヘッド、超音波モータおよび塵埃除去装置を提供する。
【解決手段】本発明の圧電セラミックスは、一般式(1):xBaTiO−yBiFeO−zBi(M0.5Ti0.5)O(式中、MはMgおよびNiから選択される少なくとも1種の元素であり、xは0.40≦x≦0.80、yは0≦y≦0.30、zは0.05≦z≦0.60の範囲の数値を表わす。但し、x+y+z=1である。)で表わされるペロブスカイト型金属酸化物からなり、擬立方晶の表記で(111)面に配向していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧電セラミックスおよびその製造方法に関するものであり、特に鉛を含有しない圧電セラミックスに関する。また、前記圧電セラミックスを用いた圧電素子、液体吐出ヘッド、液体吐出装置、超音波モータ、光学機器、振動装置、塵埃除去装置、撮像装置、および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電セラミックスは、チタン酸ジルコン酸鉛(以下「PZT」という)のようなABO型ペロブスカイト型金属酸化物が一般的である。しかしながら、PZTはAサイト元素として鉛を含有するために、環境に対する影響が問題視されている。このため、鉛を含有しないペロブスカイト型金属酸化物を用いた圧電セラミックスが求められている。
【0003】
鉛を含有しないペロブスカイト型金属酸化物の圧電セラミックスとして、チタン酸バリウムが知られている。特許文献1には、抵抗加熱2段焼結法を用いて作製したチタン酸バリウムが開示されている。ナノサイズのチタン酸バリウム粉末を前記2段焼結法によって焼結すると、圧電特性に優れたセラミックスが得られることが記載されている。しかしながら、チタン酸バリウムはキュリー温度が125℃と低いため、高温(例えば80℃以上)での連続駆動により脱分極が発生するという課題があった。またチタン酸バリウムは、斜方晶と正方晶の構造相転移温度が室温付近にあるために、実用温度における性能が不安定となるという課題があった。
【0004】
また非特許文献1には、チタン酸バリウムのキュリー温度を上げる試みとして、チタン酸バリウムと鉄酸ビスマスの固溶体が開示されている。しかしながら、鉄酸ビスマスの固溶量が増えるにつれてキュリー温度が高くなる一方で、圧電定数が著しく低下してしまっていた。
すなわち、鉛を含有しないペロブスカイト型金属酸化物の圧電セラミックスにおいて、高い圧電性能と高いキュリー温度の両立は困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−150247号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】“Journal of Applied Physics” 2000年、第87巻、第2号、p.855〜862
【非特許文献2】岩波理化学辞典 第5版(岩波書店、1998年2月20日発行)
【非特許文献3】“Japanese Journal of Applied Physics”1999年、第38巻、p.5505〜5511
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような課題に対処するためになされたもので、高い圧電性能と高いキュリー温度を両立した圧電セラミックスおよびその製造方法を提供するものである。
また、本発明は、前記圧電セラミックスを用いた圧電素子、液体吐出ヘッド、液体吐出装置、超音波モータ、光学機器、振動装置、塵埃除去装置、撮像装置、および電子機器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る圧電セラミックスは、下記一般式(1):
一般式(1) xBaTiO−yBiFeO−zBi(M0.5Ti0.5)O(式中、MはMgおよびNiから選択される少なくとも1種の元素であり、xは0.40≦x≦0.80、yは0≦y≦0.30、zは0.05≦z≦0.60の範囲の数値を表わす。但し、x+y+z=1である。)
で表わされるペロブスカイト型金属酸化物からなり、擬立方晶の表記で(111)面に配向していることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る圧電セラミックスの製造方法は、少なくとも六方晶のチタン酸バリウムを含むスラリーを得る工程と前記スラリーを基材上に設置する工程と、前記スラリーに対して磁場を印加するとともに成形体を得る工程と、前記成形体を酸化処理する工程とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る圧電素子は、第一の電極、圧電セラミックスおよび第二の電極を有し圧電素子であって、前記圧電セラミックスが上記の圧電セラミックスであることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る液体吐出ヘッドは、上記の圧電素子を用いることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る液体吐出装置は、記録媒体の搬送部と上記の液体吐出ヘッドを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る超音波モータは、上記の圧電素子を用いることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る光学機器は、駆動部に上記の超音波モータを備えることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る振動装置は、上記の圧電素子を配した振動体を有することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る塵埃除去装置は、上記の振動装置を振動部に備えることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る撮像装置は、上記の塵埃除去装置と撮像素子ユニットとを少なくとも有する撮像装置であって、上記の塵埃除去装置の振動部材を前記撮像素子ユニットの受光面側に設けたことを特徴とする。
【0018】
本発明に係る電子機器は、上記の圧電素子を備えた圧電音響部品を配したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高い圧電性能と高いキュリー温度を両立した圧電セラミックスおよび圧電セラミックスの製造方法を提供することができる。
【0020】
本発明の圧電セラミックスを用いることで、鉛を含む圧電セラミックスを用いた場合と同等以上のノズル密度、および吐出力を有する液体吐出ヘッドを提供できる。
【0021】
本発明の液体吐出ヘッドを用いることで、鉛を含む圧電素子を用いた場合と同等以上の
吐出力および吐出精度を有する液体吐出装置を提供できる。
【0022】
本発明の圧電セラミックスを用いることで、鉛を含む圧電セラミックスを用いた場合と同等以上の駆動力、および耐久性を有する超音波モータを提供できる。
【0023】
本発明の超音波モータを用いることで、鉛を含む圧電素子を用いた場合と同等以上の耐
久性および動作精度を有する光学機器を提供できる。
【0024】
本発明の圧電セラミックスを用いることで、鉛を含む圧電セラミックスを用いた場合と同等以上の振動効率を有する振動装置を提供できる。
【0025】
本発明の振動装置を用いることで、鉛を含む圧電セラミックスを用いた場合と同等以上の塵埃除去効率を有する塵埃除去装置を提供できる。
【0026】
本発明の塵埃除去装置を用いることで、鉛を含む圧電セラミックスを用いた場合と同等以上の塵埃除去機能を有する撮像装置を提供できる。
【0027】
本発明の圧電セラミックスを備えた圧電音響部品を用いることで、鉛を含む圧電セラミックスを用いた場合と同等以上の発音性を有する電子機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の圧電セラミックスの組成範囲を示す三角相図である。
【図2】本発明の圧電素子の構成の一実施様態を示す概略図である。
【図3】本発明の液体吐出ヘッドの構成の一実施態様を示す概略図である。
【図4】本発明の液体吐出装置の一実施態様を示す概略図である。
【図5】本発明の液体吐出装置の一実施態様を示す概略図である。
【図6】本発明の超音波モータの構成の一実施態様を示す概略図である。
【図7】本発明の光学機器の一実施態様を示す概略図である。
【図8】本発明の光学機器の一実施態様を示す概略図である。
【図9】本発明の振動装置を塵埃除去装置とした場合の一実施態様を示す概略図である。
【図10】本発明の塵埃除去装置における圧電素子の構成を示す概略図である。
【図11】本発明の塵埃除去装置の振動原理を示す模式図である。
【図12】本発明の撮像装置の一実施態様を示す概略図である。
【図13】本発明の撮像装置の一実施態様を示す概略図である。
【図14】本発明の電子機器の一実施態様を示す概略図である。
【図15】本発明の実施例1〜16、24〜39および比較例1〜10の金属酸化物の組成の関係を示す三角相図である。
【図16】実施例11および比較例4のX線回折図形である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
本発明に係る圧電セラミックスは、下記一般式(1):
一般式(1) xBaTiO−yBiFeO−zBi(M0.5Ti0.5)O(式中、MはMgおよびNiから選択される少なくとも1種の元素であり、xは0.40≦x≦0.80、yは0≦y≦0.30、zは0.05≦z≦0.60の範囲の数値を表わす。但し、x+y+z=1である。)で表わされるペロブスカイト型金属酸化物からなり、擬立方晶の表記で(111)面に配向していることを特徴とする。
【0030】
本明細書において、「セラミックス」とは、基本成分が金属酸化物であり、熱処理によって焼き固められた結晶粒子の凝集体(バルク体とも言う)、いわゆる多結晶を表す。焼結後に加工されたものも含まれる。ただし、粉末や粉末を分散させたスラリーは、この用語に含まない。
【0031】
本発明において、「ペロブスカイト型金属酸化物」とは、非特許文献2に記載されているような、理想的には立方晶構造であるペロブスカイト型構造(ペロフスカイト型構造とも言う)を持つ金属酸化物を指す。ペロブスカイト型構造を持つ金属酸化物は一般にABOの化学式で表現される。ペロブスカイト型金属酸化物において、元素A、Bは各々イオンの形でAサイト、Bサイトと呼ばれる単位格子の特定の位置を占める。例えば、立方晶系の単位格子であれば、A元素は立方体の頂点、B元素は体心に位置する。O元素は酸素の陰イオンとして面心位置を占める。
【0032】
前記一般式(1)で表される金属酸化物は、BaTiO、BiFeO、Bi(M0.5Ti0.5)Oで表わされる3種類のペロブスカイト型金属酸化物の固溶体を意味している。前記一般式(1)において、Aサイトに位置する金属元素は主にBaおよびBiであり、Bサイトに位置する金属元素はTi、FeおよびMg、Niから選択される少なくとも1種の元素である。
【0033】
前記一般式(1)において、AサイトとBサイトの元素量の比は1対1となるように表記しているが、元素量の比が若干ずれていても、前記一般式(1)で表される金属酸化物がペロブスカイト型構造のみで構成される単相状態であれば、本発明の効果を奏する。一般のペロブスカイト型金属酸化物よりなる圧電セラミックスにおいて、Aサイト元素を最大50%程度過剰にすることや、複合ペロブスカイト型構造で実測のBサイト元素比が化学量論比からずれることが良く知られている。
【0034】
前記圧電セラミックスがペロブスカイト型構造であることは、例えば、X線回折や電子線回折による構造解析から判断することができる。
【0035】
本発明の圧電セラミックスは擬立方晶の表記で(111)面に配向している。本発明の圧電セラミックスを構成するペロブスカイト型金属酸化物は、正方晶、斜方晶、単斜晶、菱面体晶、立方晶のいずれか一つ、もしくは、これらの中の複数の晶系を同時にとる。しかし、簡便に表記するため、本明細書中では、特に断りのない限りは擬立方晶として扱う。すなわち(111)面とは、結晶の単位格子を立方晶に見立てた時の表記による。
【0036】
本明細書中における「配向」とは、対象とする結晶面の全部もしくは一部分が、特定の方向に揃っている状態のことを指す。また、本明細書中における「配向度」とは、前記配向の程度を表しており、対象とする結晶面が特定の方向に揃っている部分が多いほど、配向度が高い状態といえる。すなわち、(111)面に配向している状態とは、(111)で示される結晶面が特定の方向に揃っている状態である。(111)配向という表現も同義である。本発明の効果を得るためには、配向した(111)面の垂直軸方向と圧電セラミックスの厚み方向を同一にすることが好ましい。
【0037】
非特許文献3にも記載されているように、ペロブスカイト型金属酸化物よりなる圧電セラミックスは、<111>方向に電圧を印加することで、エンジニアードドメイン構造が形成され、良好な圧電性が得られる。すなわち(111)面に配向した圧電セラミックスは、無配向の圧電セラミックスおよび他の面に配向した圧電セラミックスより圧電定数が大きくなることが知られている。さらに、本発明のように正方晶チタン酸バリウムを構成メンバーとする組成の場合、チタン酸バリウム特有の大きな圧電定数d15の寄与により、(111)配向した圧電セラミックスの圧電定数d33やd31は、無配向のセラミックスの圧電定数と比較して増加する。
【0038】
さらに本発明の圧電セラミックスはX線回折法(X線回折測定)において、前記圧電セラミックスの(111)面配向の度合いを示すロットゲーリングファクタFが0.10以上1.00以下であることが好ましい。より望ましいロットゲーリングファクタFの下限値は0.15である。配向度を示す指標はいくつかあるが、本明細書中ではロットゲーリングファクタFを用いる。ロットゲーリングファクタFは、0より大きければ対象とする結晶面が配向していることを意味する。
【0039】
ロットゲーリングファクタFが0.10より小さいと、圧電に寄与できる有効なドメインが少なくなり、無配向状態に対する圧電定数の増加が十分ではない。また、ロットゲーリングファクタFが1.00に近付くほど、圧電に寄与できる有効なドメインが多くなるので、圧電セラミックスの圧電定数は増大する。ロットゲーリングファクタFが1.00であるとき、検出されるピークは対象とする結晶面からの回折ピークのみである。つまり、X線回折法で検出できるレベルの結晶の全てが、対象とする方位に揃って配向していることを示す。ロットゲーリングファクタFは、X線回折の2θ−θ測定により算出される。2θが10°〜85°の範囲で、対象とする結晶面から回折されるX線の積分ピーク強度を用いて、式1により計算する。
F=(ρ−ρ)/(1−ρ) (式1)
【0040】
ここで、ρは無配向サンプルのX線の回折強度(I)を用いて計算され、(111)配向の場合、全回折強度の和に対する(111)面と(222)面の回折強度の合計の割合として、式2により求める。
ρ=ΣI(111)/ΣI(hkl) (式2)
【0041】
ρは配向サンプルのX線の回折強度(I)を用いて計算され、(111)配向の場合は全回折強度の和に対する(111)面と(222)面の回折強度の合計の割合として、上式2と同様に式3により求める。
ρ=ΣI(111)/ΣI(hkl) (式3)
【0042】
前記一般式(1)において、BaTiOの存在量を示すxは、0.40≦x≦0.80の範囲であることが好ましい。より好ましくは0.50≦x≦0.75の範囲である。xが0.40より小さいと配向による圧電定数増加の効果が小さくなる。また、前記ペロブスカイト型構造以外の結晶相(以下、この結晶相を「不純物相」という)が生じてしまう恐れがある。一方、xが0.80より大きいと、キュリー温度が160℃未満となり、高温領域における脱分極により圧電性を消失する恐れがある。また、xを上記の範囲にすることで、構成メンバーであるチタン酸バリウムに特有の室温相転移が無くなり、実用温度域における圧電性能が安定する。
【0043】
本明細書において、キュリー温度とは、強誘電性が消失する温度をいう。その特定方法は、測定温度を変えながら強誘電性が消失する温度を直接測定する方法に加えて、ある周波数の微小交流電界を用いて測定温度を変えながら誘電率を測定し、誘電率が最大を示す温度から求める方法がある。
【0044】
本発明の圧電セラミックスにおいて望ましいキュリー温度は、160℃以上500℃以下、より好ましくは200℃以上450℃以下である。キュリー温度が160℃以上である事により、デバイス化した場合に、温度による特性変動の少ない圧電セラミックスを提供できる。また、キュリー温度が500℃以下である事により、素子化の際の分極処理が容易である圧電セラミックスを提供することができる。
【0045】
前記一般式(1)において、BiFeOの存在量を示すyは、0≦y≦0.30の範囲であることが好ましい。より好ましくは0.05≦y≦0.30の範囲である。yが0.30より大きいと(111)配向だけでなく(110)配向も混在するようになり、圧電定数増加の効果が小さくなる。
【0046】
前記一般式(1)において、Bi(M0.5Ti0.5)Oの存在量を示すzは、0.05≦z≦0.60の範囲であることが好ましい。より好ましくは0.05≦z≦0.55の範囲である。zが0.05より小さいときは、以下の理由でxの値に関わらず問題がある。すなわちzが0.05より小さくかつ、xが0.5以上の範囲ではキュリー温度が低くなる恐れがあり、またxが0.5より小さい範囲では絶縁性が低下する恐れがある。一方、zが0.60より大きいと不純物相が生じて圧電性能が低下する恐れがある。
【0047】
前記一般式(1)において、xは0.40≦x≦0.80、yは0≦y≦0.30、zは0.05≦z≦0.60の範囲であるということは、x、y、zが下記座標点A、B、C、D、Eで囲まれる範囲内にあると言いかえることができる。
【0048】
各座標点のx、y、zの値は以下の通りである。
A:(x,y,z)=(0.80,0.00,0.20)
B:(x,y,z)=(0.80,0.15,0.05)
C:(x,y,z)=(0.65,0.30,0.05)
D:(x,y,z)=(0.40,0.30,0.30)
E:(x,y,z)=(0.40,0.00,0.60)
【0049】
図1は本発明の圧電セラミックスの組成範囲を示す三角相図である。黒塗りの丸印および太い実線は、本発明の組成範囲に含まれることを意味する。座標点A、B、C、D、E、Aに囲まれた着色部が本発明の圧電セラミックスの組成範囲であり、優れた圧電性能と高いキュリー温度を示す。例えば、圧電定数d33は105[pm/V]以上を有し、キュリー温度は160℃以上を有する。本明細書において、圧電定数d33とは、電界歪曲線の電界と歪の傾きから求めた定数である。ここで*印は、通常用いられる圧電定数d33が33方向のみの圧電特性を示すのに対し、この算出方法においては、僅かではあるが、33以外の方向も寄与する可能性があるために付記した。
【0050】
前記一般式(1)において、Bi(M0.5Ti0.5)OのMはMgおよびNiから選択される少なくとも1種の元素であることが好ましい。前記MはMgのみでも、Niのみでも、もしくはMgとNiの両方を含んでいても構わない。MgおよびNiは2価が安定な元素であり、4価のTiと疑似3価イオンを形成することができる。この疑似3価イオンがBサイトを占めることで、Aサイトを占める3価のBiとチャージバランスを取ることが可能となる。よって、MとTiの比は理想的には1対1が好ましい。前記一般式(1)において、Bi(M0.5Ti0.5)O中のMとTiの元素量は、ともに0.5と記載しているが、この量から0.4から0.6までずれた場合でも、ペロブスカイト型構造のみで構成される単相状態であれば、本発明の効果は得られる。
【0051】
また、本発明の圧電セラミックスには、特性調整成分や原料や製造プロセス由来の不純成分が1質量%以内の範囲で含まれていても良い。
【0052】
本発明に係る圧電セラミックスは、前記圧電セラミックスに0.05質量%以上3.0質量%以下のMn(マンガン)およびCu(銅)から選択される少なくとも一種の元素を含有することが好ましい。
【0053】
本発明の圧電セラミックスは、MnおよびCuから選択される少なくとも一種を含有することにより圧電セラミックスの絶縁性および密度が向上する。圧電セラミックスの絶縁性が向上すると、高電界を印加する分極処理に耐え得ることができ、電気エネルギーと機械エネルギーの変換効率が向上する。また、圧電セラミックスの密度が向上すると、圧電特性と機械的強度が向上する。
【0054】
MnおよびCuから選択される少なくとも一種の元素の量が3.0質量%より多くなると不純物相が発生する恐れがある。
【0055】
また、本発明の圧電セラミックスに含有されるMnおよびCuの存在位置は特に限定されない。MnおよびCuは、ペロブスカイト型構造のBサイトに含まれても良いし、結晶粒界に酸化物の形で含まれていても同様の効果を期待できる。
【0056】
本発明に係る圧電セラミックスは、前記セラミックスを構成する結晶粒の平均円相当径が500nm以上5μm以下であり、前記結晶粒の最大円相当径が5μm以上10μm以下であることが好ましい。
【0057】
本明細書における「円相当径」とは、顕微鏡観察法において一般に言われる「投影面積円相当径」を表し、結晶粒の投影面積と同面積を有する真円の直径を表す。本発明において、この円相当径の測定方法は特に制限されない。例えば圧電セラミックスの表面を偏光顕微鏡や走査型電子顕微鏡で撮影して得られる写真画像を画像処理して求めることができる。結晶粒の円相当径を求める際の拡大倍率の例は、5〜5000倍程度である。倍率によって光学顕微鏡と電子顕微鏡を使い分けても構わない。焼きあがりのセラミックスの表面ではなく、研磨面や断面の画像から円相当径を求めても良い。
【0058】
本明細書における「平均円相当径」とは、前記圧電セラミックスを撮影して得られた写真画像を画像処理して求めた前記円相当径の平均値である。前記平均値は体積平均でも個数平均でも良いが、好ましくは個数平均である。
【0059】
本明細書における「最大円相当径」とは、前記圧電セラミックスを撮影して得られた写真画像を画像処理して求めた前記円相当径の最大値である。
【0060】
前記結晶粒の平均円相当径が、500nm以上5μm以下であると圧電セラミックスの圧電性能と機械的強度が良好になる。一方、500nm未満である場合は、密度が低くなり圧電性能が十分にならない恐れがある。また、5μmより大きくなると、機械的強度が実用における駆動に対して不足する恐れがある。
【0061】
また、前記結晶粒の最大円相当径が5μm以上10μm以下であると、圧電セラミックスの圧電性能と機械的強度が良好になる。一方、5μm未満である場合は、密度が低くなり圧電性能が十分にならない恐れがある。また、10μmより大きくなると、機械的強度が実用における駆動に対して不足する恐れがある。
【0062】
次に、本発明の圧電セラミックスの製造方法について説明する。
本発明に係る圧電セラミックスの製造方法は、少なくとも六方晶のチタン酸バリウムを含むスラリーを得る工程と前記スラリーを基材上に設置する工程と、前記スラリーに対して磁場を印加するとともに成形体を得る工程と、前記成形体を酸化処理する工程を有することを特徴とする。
【0063】
六方晶チタン酸バリウム(6H型)の磁化容易軸はc軸である。そのため、垂直磁場中に置かれた石膏型の中へ六方晶チタン酸バリウム結晶を含むスラリーを流し込めば(鋳込み成形)、c軸配向した六方晶チタン酸バリウムを含む成形体が得られる。六方晶チタン酸バリウム結晶のc軸方向への原子の積層様式は、一般にABOで表わされるペロブスカイト構造結晶の<111>方向への原子の積層様式と類似している。そのため、c軸配向した六方晶チタン酸バリウムを含む成形体を酸化処理すると、(111)配向したペロブスカイト構造を有する結晶構造に変化させることが可能である。この酸化処理と同時、もしくは酸化処理の前後にチタン酸バリウム以外の成分との固溶体を形成する事で、金属酸化物全体として(111)配向したペロブスカイト型金属酸化物を有する圧電セラミックスを得ることができる。(111)面に配向した圧電セラミックスには、エンジニアードドメイン構造による良好な圧電性が期待できる。
【0064】
六方晶のチタン酸バリウムは、正方晶のチタン酸バリウムを水素雰囲気中で1400
〜1500℃に保持することで得られる。還元処理後に、六方晶系が変化しない条件下で熱処理を加えても良い。あるいは、室温で正方晶のチタン酸バリウムを空気雰囲気中で約1500℃以上に保持して六方晶のチタン酸バリウムへの相転移を発生させ、相転移の後に急冷することで、室温で六方晶のチタン酸バリウムを得ることもできる。
【0065】
また、六方晶のチタン酸バリウムはMn(マンガン)およびCu(銅)から選択される少なくとも一種の元素を結晶構造中に含有していても良い。例えば、六方晶のBaTi0.9Mn0.053+α、BaTi0.9Cu0.052.85等の結晶が挙げられる。これらの結晶は、炭酸バリウム、酸化チタン、酸化マンガン、酸化銅等の固相反応により作成される。チタン酸バリウムは通常、固相反応でも作成されるが、大量生産、粒径制御に優れた水熱合成法やシュウ酸法など別の手法で作成してもかまわない。
【0066】
六方晶のチタン酸バリウムを含むスラリーを作成するためには、六方晶のチタン酸バリウムを必要に応じて粉砕し、粒子状にする。六方晶のチタン酸バリウム以外の無機成分についても同様である。粒子が大きすぎると、粒子はスラリー中で沈降してしまうので配向に寄与しない。逆に粒子が小さすぎるとスラリー中で凝集してしまい、やはり配向に寄与しない。スラリー中で良好な分散状態を得るために、粒子の平均径は10nm以上10μm以下、より好ましくは50nm以上1μm以下である。スラリー中の平均粒子径、粒度分布は、例えば動的光散乱で測定できる。
【0067】
本発明の圧電セラミックスを得る場合、スラリーには六方晶のチタン酸バリウム以外にBi、Fe、Mg、Ni、Tiといった金属元素の原料を加える。Ba、Cu、Mnといった金属元素の原料を必要に応じて加えても良い。金属元素の原料は、Ba(バリウム)化合物、Ti(チタン)化合物、Bi(ビスマス)化合物、Fe(鉄)化合物、Mg(マグネシウム)化合物、Ni(ニッケル)化合物、Mn化合物およびCu化合物といった金属化合物から構成される。その他、鉄酸ビスマスやチタン酸ビスマスのような複合金属酸化物を原料として用いても良い。複合金属酸化物を製造する場合は、酸化物、炭酸塩、硝酸塩、蓚酸塩などの固体粉末を常圧下で焼結する一般的な手法を採用することができる。使用可能なBa化合物としては、酸化バリウム、炭酸バリウム、蓚酸バリウム、酢酸バリウム、硝酸バリウム、チタン酸バリウム等が挙げられる。使用可能なTi化合物の例としては、酸化チタンなどが挙げられる。使用可能なBi化合物の例としては、酸化ビスマス、硝酸ビスマスなどが挙げられる。使用可能なFe化合物の例としては、酸化鉄、塩化鉄、硝酸鉄などが挙げられる。使用可能なMg化合物の例としては、酸化マグネシウム、蓚酸マグネシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。使用可能なNi化合物の例としては、酸化ニッケル、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、蓚酸ニッケルなどが挙げられる。使用可能なMn化合物の例としては、炭酸マンガン、酸化マンガン、二酸化マンガン、酢酸マンガンなどが挙げられる。使用可能なCu化合物の例としては、酸化銅、硝酸銅、硫酸銅などが挙げられる。
【0068】
スラリーは主成分である六方晶のチタン酸バリウムおよびその他の金属化合物の粒子成分の他に、溶媒を有しており、更に必要に応じて分散剤、消泡剤、帯電剤などを有していても良い。たとえば、六方晶のチタン酸バリウムを含む成形体を鋳込み成形で作成する場合、安全性とコスト、及び表面張力の観点から好ましい溶媒は水である。スラリーの重量中、六方晶のチタン酸バリウムおよびその他の金属化合物の占める比率は40〜80重量%であることが好ましい。溶媒に対する粒子の割合が大きすぎるとスラリーの粘度が過度に高くなり、磁場中での粒子の円滑な配向を妨げる。また、溶媒に対する粒子の割合が小さすぎると、所望の厚みの成形体を得るために必要なスラリーの量が多くなってしまい実用的ではない。
【0069】
スラリーに分散する粒子は凝集していないことが好ましい。粒子が凝集してしまうと、各粒子のもつ磁気的異方性を打ち消しあい、磁場中での結晶粒子の配向を妨げるからである。また、スラリーの粘度は低い方が好ましい。スラリーの粘度が低ければ、分散した粒子が磁場によって与えられるトルクで容易に回転することができるからである。粒子の分散性を向上させたり、スラリーの粘度を低下させたりする目的で、スラリーに分散剤や界面活性剤などの有機物成分を添加してもかまわない。また、圧電セラミックスの密度を上げるために、有機バインダーを加えてもかまわない。さらに、成形体の作成手法として電気泳動を用いるために、スラリーに帯電剤を加えてもかまわない。
【0070】
次に、成形体を作成するために、基材上にスラリーを設置し、粒子を堆積させる。基材は平板状であっても容器状であっても良いが、設置・堆積したスラリーの凝固物を所望の形状で得るためには、窪みを設けた基材を用いることが好ましい。また、乾燥を促進するためには、溶媒を吸収する素材からなる基材が好ましい。特に、本発明の基材には、石膏が好ましい。前記基材の設置方法は、基材に設けられた窪み等にスラリーを静かに流し込むと良い。
【0071】
成形体を得るためには、基材上で凝固したスラリーを室温下で自然乾燥させることが好ましい。乾燥温度は40℃未満が好ましい。乾燥器による60℃以上の加熱乾燥では、成形体にクラックが入りやすく好ましくない。本発明におけるクラックとは、肉眼で確認できる大きな亀裂である。機能性材料のセラミックスにクラックが存在すると、その機能自身の低下は勿論、機械的強度も低くなるという問題がある。
【0072】
スラリーの設置と、スラリーに対する磁場の印加は順に行っても同時に行っても良い。より短時間で成形体を作成するためには、磁場中での鋳込み成形もしくは電気泳動を用いることができる。鋳込み成形では、任意の形状の密度の高い成形体が得られる。電気泳動では、スラリーに浸した電極上に成形体シートを得ることができる。前記成形体シートと電極を交互に積層して積層型圧電素子を作製する事も可能である。
【0073】
本発明の中では、磁場中での成形体の成長方向と磁場が平行となる場合について主に記載する。しかし、磁場と堆積方向の間の角度は、作成したい結晶の配向に応じて任意に変えることができる。
【0074】
印加する磁場の強度は大きいほど配向の効果を得られる。しかし磁場強度が大きすぎると磁場の発生・遮蔽のための設備規模が大きくなる。反対に磁場強度が小さすぎると配向の効果が小さくなる。そのため磁場強度は1T(テスラ)以上15T以下が好ましい。磁場の発生および印加手段としては超電導マグネット装置を用いる事が好ましい。
【0075】
次に、前記成形体を酸化処理して、粒子の固溶と結晶構造の変換を行う。酸化処理とは、例えば、大気中など酸素含有雰囲気で成形体に熱を加える処理である。酸素含有雰囲気は酸素濃度18vol%以上の雰囲気であることが好ましい。熱処理の温度は、400〜1450℃で10分以上保持する事が好ましい。より好ましい熱処理温度は800℃以上1150℃以下、好ましくは900℃以上1030℃以下である。好ましい熱処理の時間は、上記範囲内で一定にして、1時間以上24時間以下である。前記温度範囲および時間範囲で熱処理された圧電セラミックスは、良好な圧電特性を示す。本酸化処理は、セラミックス作成工程で通常行われる焼成工程を兼ねる場合がある。
【0076】
酸化処理の前後で成形体には以下の変化が複数もしくは単独で起こることがある。(I)結晶系が変化する、(II)重量が増加する、(III)波長400〜500nmの光を照射した場合の反射率が増加する、(IV)電気抵抗率が増加する。
また、熱処理の方法は特に限定されない。熱処理方法の例としては電気炉による焼結、通電加熱法、マイクロ波焼結法、ミリ波焼結法、HIP(熱間等方圧プレス)などが挙げられる。
【0077】
焼結された圧電セラミックスの相対密度は90%以上が好ましく、95%以上であることがより好ましい。相対密度が90%よりも小さいと、圧電セラミックスの比誘電率が著しく低下し、機械的強度も低下するためである。相対密度を上げる手段としては、マンガンや銅を添加することが挙げられる。
【0078】
以下に本発明の圧電セラミックスを用いた圧電素子について説明する。図2は本発明の圧電素子の構成の一実施形態を示す概略図である。本発明に係る圧電素子は、第一の電極1、圧電セラミックス2および第二の電極3を少なくとも有し、含まれる圧電セラミックス2が本発明の圧電セラミックスであることを特徴とする。電極を3層以上有する積層型の圧電素子としても良い。
【0079】
第一の電極1および第二の電極3は、厚み5〜2000nm程度の導電層よりなる。その材料は特に限定されず、圧電素子に通常用いられているものであればよい。例えば、Ti、Pt、Ta、Ir、Sr、In、Sn、Au、Al、Fe、Cr、Ni、Pd、Ag、Cuなどの金属およびこれらの化合物を挙げることができる。第一の電極1および第二の電極3は、これらのうちの1種からなるものであっても、あるいはこれらの2種以上を積層してなるものであってもよい。第一の電極1と第二の電極3が、それぞれ異なる材料であっても良い。
【0080】
第一の電極1と第二の電極3の製造方法は限定されず、金属ペーストの焼き付けにより形成しても良いし、スパッタ、蒸着法などにより形成してもよい。また第一の電極1と第二の電極3とも所望の形状にパターニングして用いても良い。
【0081】
前記圧電素子は一定方向に分極軸が揃っているものであると、より好ましい。分極軸が一定方向に揃っていることで前記圧電素子の圧電定数は大きくなる。前記圧電素子の分極方法は特に限定されない。分極処理は大気中で行ってもよいし、シリコーンオイル中で行ってもよい。分極をする際の温度は60℃から150℃の温度が好ましいが、素子を構成する圧電セラミックスの組成によって最適な条件は多少異なる。分極処理をするために印加する電界は800V/mmから3.0kV/mmが好ましい。
【0082】
前記圧電素子の圧電性能は、電界印加時の歪み量で評価する事ができる。また、前記圧電素子の圧電定数および機械的品質係数は、市販のインピーダンスアナライザーを用いて得られる共振周波数及び反共振周波数の測定結果から、電子情報技術産業協会規格(JEITA EM−4501)に基づいて、計算により求めることができる。
【0083】
本発明に係る液体吐出ヘッドは、前記圧電素子を配した振動部を備えた液室と連通する吐出口を少なくとも有することを特徴とする。
【0084】
図3は、本発明の液体吐出ヘッドの構成の一実施態様を示す概略図である。図3(a)、(b)に示すように、本発明の液体吐出ヘッドは、本発明の圧電素子101を有する液体吐出ヘッドである。圧電素子101は、第一の電極1011、圧電セラミックス1012、第二の電極1013を少なくとも有する圧電素子である。圧電セラミックス1012は、図3(b)の如く、必要に応じてパターニングされている。
【0085】
図3(b)は液体吐出ヘッドの模式図である。液体吐出ヘッドは、吐出口105、個別液室102、個別液室102と吐出口105をつなぐ連通孔106、液室隔壁104、共通液室107、振動板103、圧電素子101を有する。図において圧電素子101は矩形状だが、その形状は、楕円形、円形、平行四辺形等の矩形以外でも良い。一般に、圧電セラミックス1012は個別液室102の形状に沿った形状となる。
【0086】
本発明の液体吐出ヘッドに含まれる圧電素子101の近傍を図3(a)で詳細に説明する。図3(a)は、図3(b)に示された液体吐出ヘッドの幅方向での圧電素子の断面図である。圧電素子101の断面形状は矩形で表示されているが、台形や逆台形でもよい。図中では、第一の電極1011が下部電極、第二の電極1013が上部電極として使用されている。しかし、第一の電極1011と、第二の電極1013の配置はこの限りではない。例えば、第一の電極1011を下部電極として使用しても良いし、上部電極として使用しても良い。同じく、第二の電極1013を上部電極として使用しても良いし、下部電極として使用しても良い。また、振動板103と下部電極の間にバッファ層108が存在しても良い。
【0087】
なお、これらの名称の違いはデバイスの製造方法によるものであり、いずれの場合でも本発明の効果は得られる。
【0088】
前記液体吐出ヘッドにおいては、振動板103が圧電セラミックス1012の伸縮によって上下に変動し、個別液室102の液体に圧力を加える。その結果、吐出口105より液体が吐出される。本発明の液体吐出ヘッドは、プリンタ用途や電子デバイスの製造に用いる事ができる。
【0089】
振動板103の厚みは、1.0μm以上15μm以下であり、好ましくは1.5μm以上8μm以下である。振動板の材料は限定されないが、好ましくはSiである。振動板のSiにBやPがドープされていても良い。また、振動板上のバッファ層、電極層が振動板の一部となっても良い。
【0090】
バッファ層108の厚みは、5nm以上300nm以下であり、好ましくは10nm以上200nm以下である。
【0091】
吐出口105の大きさは、円相当径で5μm以上40μm以下である。吐出口105の形状は、円形であっても良いし、星型や角型状、三角形状でも良い。
【0092】
(液体吐出装置)
次に、本発明の液体吐出装置について説明する。本発明の液体吐出装置は、前記液体吐出ヘッドを有するものである。
【0093】
本発明の液体吐出装置の一例として、図4および図5に示すインクジェット記録装置を挙げることができる。図4に示す液体吐出装置(インクジェット記録装置)881の外装882〜885及び887を外した状態を図5に示す。インクジェット記録装置881は、記録媒体としての記録紙を装置本体896内へ自動給送する自動給送部897を有する。
【0094】
更に、自動給送部897から送られる記録紙を所定の記録位置へ導き、記録位置から排出口898へ導く搬送部899と、記録位置に搬送された記録紙に記録を行う記録部891と、記録部891に対する回復処理を行う回復部890とを有する。記録部891には、本発明の液体吐出ヘッドを収納し、レール上を往復移送されるキャリッジ892が備えられる。
【0095】
このようなインクジェット記録装置において、コンピューターから送出される電気信号によりキャリッジ892がレール上を移送され、圧電材料を挟持する電極に駆動電圧が印加されると圧電材料が変位する。この圧電材料の変位により、図3(b)に示す振動板103を介して個別液室102を加圧し、インクを吐出口105から吐出させて、印字を行う。
【0096】
本発明の液体吐出装置においては、均一に高速度で液体を吐出させることができ、装置の小型化を図ることができる。
【0097】
上記例は、プリンタとして例示したが、本発明の液体吐出装置は、ファクシミリや複合機、複写機などのインクジェット記録装置等のプリンティング装置の他、産業用液体吐出装置、対象物に対する描画装置として使用することができる。
【0098】
次に、本発明の圧電素子を用いた超音波モータについて説明する。
本発明に係る超音波モータは、前記圧電素子を配した振動体と接触する移動体とを少なくとも有することを特徴とする。
【0099】
図6は、本発明の超音波モータの構成の一実施態様を示す概略図である。
本発明の圧電素子が単板からなる超音波モータを、図6(a)に示す。超音波モータは、振動子201、振動子201の摺動面に不図示の加圧バネによる加圧力で接触しているロータ202、ロータ202と一体的に設けられた出力軸203を有する。前記振動子201は、金属の弾性体リング2011、本発明の圧電素子2012、圧電素子2012を弾性体リング2011に接着する有機系接着剤2013(エポキシ系、シアノアクリレート系など)で構成される。本発明の圧電素子2012は、不図示の第一の電極と第二の電極によって挟まれた圧電セラミックスで構成される。
【0100】
本発明の圧電素子に位相がπ/2異なる二相の交流電圧を印加すると、振動子201に屈曲進行波が発生し、振動子201の摺動面上の各点は楕円運動をする。この振動子201の摺動面にロータ202が圧接されていると、ロータ202は振動子201から摩擦力を受け、屈曲進行波とは逆の方向へ回転する。不図示の被駆動体は、出力軸203と接合されており、ロータ202の回転力で駆動される。
【0101】
圧電セラミックスに電圧を印加すると、圧電横効果によって圧電セラミックスは伸縮する。金属などの弾性体が圧電素子に接合している場合、弾性体は圧電セラミックスの伸縮によって曲げられる。ここで説明された種類の超音波モータは、この原理を利用したものである。
【0102】
次に、積層構造を有した圧電素子を含む超音波モータを図6(b)に例示する。振動子204は、筒状の金属弾性体2041に挟まれた積層圧電素子2042よりなる。積層圧電素子2042は、不図示の複数の積層された圧電セラミックスにより構成される素子であり、積層外面に第一の電極と第二の電極、積層内面に内部電極を有する。金属弾性体2041はボルトによって締結され、圧電素子2042を挟持固定し、振動子204となる。
【0103】
圧電素子2042に位相の異なる交流電圧を印加することにより、振動子204は互いに直交する2つの振動を励起する。この二つの振動は合成され、振動子204の先端部を駆動するための円振動を形成する。なお、振動子204の上部にはくびれた周溝が形成され、駆動のための振動の変位を大きくしている。
【0104】
ロータ205は、加圧用のバネ206により振動子204と加圧接触し、駆動のための摩擦力を得る。ロータ205はベアリングによって回転可能に支持されている。
次に、本発明の光学機器について説明する。本発明の光学機器は、駆動部に前記超音波モータを備えたことを特徴とする。
【0105】
図7は、本発明の撮像装置の好適な実施形態の一例である一眼レフカメラの交換レンズ鏡筒の主要断面図である。また、図8は本発明の撮像装置の好適な実施形態の一例である一眼レフカメラの交換レンズ鏡筒の分解斜視図である。カメラとの着脱マウント711には、固定筒712と、直進案内筒713、前群鏡筒714が固定されている。これらは交換レンズ鏡筒の固定部材である。
【0106】
直進案内筒713には、フォーカスレンズ702用の光軸方向の直進案内溝713aが形成されている。フォーカスレンズ702を保持した後群鏡筒716には、径方向外方に突出するカムローラ717a、717bが軸ビス718により固定されており、このカムローラ717aがこの直進案内溝713aに嵌まっている。
【0107】
直進案内筒713の内周には、カム環715が回動自在に嵌まっている。直進案内筒713とカム環715とは、カム環715に固定されたローラ719が、直進案内筒713の周溝713bに嵌まることで、光軸方向への相対移動が規制されている。このカム環715には、フォーカスレンズ702用のカム溝715aが形成されていて、カム溝715aには、前述のカムローラ717bが同時に嵌まっている。
【0108】
固定筒712の外周側にはボールレース727により固定筒712に対して定位置回転可能に保持された回転伝達環720が配置されている。回転伝達環720には、回転伝達環720から放射状に延びた軸720fにコロ722が回転自由に保持されており、このコロ722の径大部722aがマニュアルフォーカス環724のマウント側端面724bと接触している。またコロ722の径小部722bは接合部材729と接触している。コロ722は回転伝達環720の外周に等間隔に6つ配置されており、それぞれのコロが上記の関係で構成されている。
【0109】
マニュアルフォーカス環724の内径部には低摩擦シート(ワッシャ部材)733が配置され、この低摩擦シートが固定筒712のマウント側端面712aとマニュアルフォーカス環724の前側端面724aとの間に挟持されている。また、低摩擦シート733の外径面はリング状とされマニュアルフォーカス環724の内径724cと径嵌合しており、更にマニュアルフォーカス環724の内径724cは固定筒712の外径部712bと径嵌合している。低摩擦シート733は、マニュアルフォーカス環724が固定筒712に対して光軸周りに相対回転する構成の回転環機構における摩擦を軽減する役割を果たす。
【0110】
なお、コロ722の径大部722aとマニュアルフォーカス環のマウント側端面724aとは、波ワッシャ726が超音波モータ725をレンズ前方に押圧する力により、加圧力が付与された状態で接触している。また同じく、波ワッシャ726が超音波モータ725をレンズ前方に押圧する力により、コロ722の径小部722bと接合部材729の間も適度な加圧力が付与された状態で接触している。波ワッシャ726は、固定筒712に対してバヨネット結合したワッシャ732によりマウント方向への移動を規制されており、波ワッシャ726が発生するバネ力(付勢力)は、超音波モータ725、更にはコロ722に伝わり、マニュアルフォーカス環724が固定筒712のマウント側端面712aを押し付け力ともなる。つまり、マニュアルフォーカス環724は、低摩擦シート733を介して固定筒712のマウント側端面712aに押し付けられた状態で組み込まれている。
【0111】
従って、不図示の制御部により超音波モータ725が固定筒712に対して回転駆動されると、接合部材729がコロ722の径小部722bと摩擦接触しているため、コロ722が軸720f中心周りに回転する。コロ722が軸720f回りに回転すると、結果として回転伝達環720が光軸周りに回転する(オートフォーカス動作)。
【0112】
また、不図示のマニュアル操作入力部からマニュアルフォーカス環724に光軸周りの回転力が与えられると、マニュアルフォーカス環724のマウント側端面724bがコロ722の径大部722aと加圧接触しているため、摩擦力によりコロ722が軸720f周りに回転する。コロ722の径大部722aが軸720f周りに回転すると、回転伝達環720が光軸周りに回転する。このとき超音波モータ725は、ロータ725cとステータ725bの摩擦保持力により回転しないようになっている(マニュアルフォーカス動作)。
【0113】
回転伝達環720には、フォーカスキー728が2つ互いに対向する位置に取り付けられており、フォーカスキー728がカム環715の先端に設けられた切り欠き部715bと嵌合している。従って、オートフォーカス動作或いはマニュアルフォーカス動作が行われて、回転伝達環720が光軸周りに回転させられると、その回転力がフォーカスキー728を介してカム環715に伝達される。カム環が光軸周りに回転させられると、カムローラ717aと直進案内溝713aにより回転規制された後群鏡筒716が、カムローラ717bによってカム環715のカム溝715aに沿って進退する。これにより、フォーカスレンズ702が駆動され、フォーカス動作が行われる。
【0114】
ここで本発明の光学機器として、一眼レフカメラの交換レンズ鏡筒について説明したが、コンパクトカメラ、電子スチルカメラ等、カメラの種類を問わず、また、カメラ付き携帯情報端末なども本願発明の光学機器に含まれる。駆動部に超音波モータを有する光学機器に適用することができる。
【0115】
次に、本発明の圧電素子を用いた振動装置および塵埃除去装置について説明する。
粒子、粉体、液滴の搬送、除去等で利用される振動装置は、電子機器等で広く使用されている。以下、本発明の振動装置の一つの例として、本発明の圧電素子を用いた塵埃除去装置について説明する。本発明に係る塵埃除去装置は、前記圧電素子または前記積層圧電素子を配した振動体を有することを特徴とする。
【0116】
図9(a)および図9(b)は本発明の塵埃除去装置の一実施態様を示す概略図である。塵埃除去装置310は板状の圧電素子330と振動板320より構成される。振動板320の材質は限定されないが、塵埃除去装置310を光学デバイスに用いる場合には透光性材料や光反射性材料を振動板320として用いることができる。
【0117】
図10は図9における圧電素子330の構成を示す概略図である。図10(a)と(c)は圧電素子330の表裏面の構成、図10(b)は側面の構成を示している。圧電素子330は図5に示すように圧電セラミックス331と第1の電極332と第2の電極333より構成され、第1の電極332と第2の電極333は圧電セラミックス331の板面に対向して配置されている。図10(c)において圧電素子330の手前に出ている第1の電極332が設置された面を第1の電極面336、図10(a)において圧電素子330の手前に出ている第2の電極332が設置された面を第2の電極面337とする。
【0118】
ここで、本発明における電極面とは電極が設置されている圧電素子の面を指しており、例えば図10に示すように第1の電極332が第2の電極面337に回りこんでいても良い。
【0119】
圧電素子330と振動板320は、図9(a)、(b)に示すように圧電素子330の第1の電極面336で振動板320の板面に固着される。そして圧電素子330の駆動により圧電素子330と振動板320との間に応力が発生し、振動板に面外振動を発生させる。本発明の塵埃除去装置310は、この振動板320の面外振動により振動板320の表面に付着した塵埃等の異物を除去する装置である。面外振動とは、振動板を光軸方向つまり振動板の厚さ方向に変位させる弾性振動を意味する。
【0120】
図11は本発明の塵埃除去装置310の振動原理を示す模式図である。(a)は左右一対の圧電素子330に同位相の交番電界を印加して、振動板320に面外振動を発生させた状態を表している。左右一対の圧電素子330を構成する圧電セラミックスの分極方向は圧電素子330の厚さ方向と同一であり、塵埃除去装置310は7次の振動モードで駆動している。(b)は左右一対の圧電素子330に位相が180°反対である逆位相の交番電圧を印加して、振動板320に面外振動を発生させた状態を表している。塵埃除去装置310は6次の振動モードで駆動している。本発明の塵埃除去装置310は少なくとも2つの振動モードを使い分けることで振動板の表面に付着した塵埃を効果的に除去できる装置である。
【0121】
次に、本発明の撮像装置について説明する。本発明の撮像装置は、前記塵埃除去装置と撮像素子ユニットとを少なくとも有する撮像装置であって、前記塵埃除去装置の振動部材を前記撮像素子ユニットの受光面側に設けたことを特徴とする。
【0122】
図12および図13は本発明の撮像装置の好適な実施形態の一例であるデジタル一眼レフカメラを示す図である。図12は、カメラ本体601を被写体側より見た正面側斜視図であって、撮影レンズユニットを外した状態を示す。図13は、本発明の塵埃除去装置と撮像ユニット400の周辺構造について説明するためのカメラ内部の概略構成を示す分解斜視図である。
【0123】
カメラ本体601内には、撮影レンズを通過した撮影光束が導かれるミラーボックス605が設けられており、ミラーボックス605内にメインミラー(クイックリターンミラー)606が配設されている。メインミラー606は、撮影光束をペンタダハミラー(不図示)の方向へ導くために撮影光軸に対して45°の角度に保持される状態と、撮像素子(不図示)の方向へ導くために撮影光束から退避した位置に保持される状態とを取り得る。
【0124】
カメラ本体の骨格となる本体シャーシ300の被写体側には、被写体側から順にミラーボックス605、シャッタユニット200が配設される。また、本体シャーシ300の撮影者側には、撮像ユニット400が配設される。撮像ユニット400は、撮影レンズユニットが取り付けられる基準となるマウント部602の取り付け面に撮像素子の撮像面が所定の距離を空けて、且つ平行になるように調整されて設置される。
【0125】
ここで、本発明の撮像装置として、デジタル一眼レフカメラについて説明したが、例えばミラーボックス605を備えていないミラーレス型のデジタル一眼カメラのような撮影レンズユニット交換式カメラであってもよい。また、撮影レンズユニット交換式のビデオカメラや、複写機、ファクシミリ、スキャナ等の各種の撮像装置もしくは撮像装置を備える電子電気機器のうち、特に光学部品の表面に付着する塵埃の除去が必要な機器にも適用することができる。
【0126】
次に、本発明の電子機器について説明する。本発明の電子機器は、前記圧電素子または前記積層圧電素子を備えた圧電音響部品を配したことを特徴とする。圧電音響部品にはスピーカ、ブザー、マイク、表面弾性波(SAW)素子が含まれる。
【0127】
図14は本発明の電子機器の好適な実施形態の一例であるデジタルカメラの本体931の前方から見た全体斜視図である。本体931の前面には光学装置901、マイク914、ストロボ発光部909、補助光部916が配置されている。マイク914は本体内部に組み込まれているため、破線で示している。マイク914の前方には外部からの音を拾うための穴形状が設けられている。
【0128】
本体931上面には電源ボタン933、スピーカ912、ズームレバー932、合焦動作を実行するためのレリーズボタン908が配置される。スピーカ912は本体931内部に組み込まれており、破線で示してある。スピーカ912の前方には音声を外部へ伝えるための穴形状が設けられている。
【0129】
本発明の圧電音響部品は、マイク914、スピーカ912、また表面弾性波素子、の少なくとも一つに用いられる。
【0130】
ここで、本発明の電子機器としてデジタルカメラについて説明したが、本発明の電子機器は、音声再生機器、音声録音機器、携帯電話、情報端末等各種の圧電音響部品を有する電子機器にも適用することができる。
【0131】
前述したように本発明の圧電素子は、液体吐出ヘッド、液体吐出装置、超音波モータ光学機器、振動装置、塵埃除去装置、撮像装置および電子機器に好適に用いられる。
【0132】
本発明は、高い圧電性能と高いキュリー温度を両立した圧電セラミックスを提供するものである。なお、本発明の圧電セラミックスは、誘電材料としての特性を利用してコンデンサ材料、メモリ材料、センサ材料として用いる等、さまざまな用途に利用できる。
【0133】
本発明の圧電セラミックスを用いることで、鉛を含む圧電セラミックスを用いた場合と同等以上のノズル密度、および吐出力を有する液体吐出ヘッドを提供できる。
【0134】
本発明の液体吐出ヘッドを用いることで、鉛を含む圧電セラミックスを用いた場合と同等以上の吐出速度および吐出精度を有する液体吐出装置を提供できる。
【0135】
本発明の圧電セラミックスを用いることで、鉛を含む圧電セラミックスを用いた場合と同等以上の駆動力、および耐久性を有する超音波モータを提供できる。
【0136】
本発明の超音波モータを用いることで、鉛を含む圧電セラミックスを用いた場合と同等以上の耐久性および動作精度を有する光学機器を提供できる。
【0137】
本発明の圧電セラミックスを用いることで、鉛を含む圧電セラミックスを用いた場合と同等以上の振動能力、および耐久性を有する振動装置を提供できる。
【0138】
本発明の振動装置を用いることで、鉛を含む圧電セラミックスを用いた場合と同等以上の塵埃除去効率および耐久性を有する塵埃除去装置を提供できる。
【0139】
本発明の塵埃除去装置を用いることで、鉛を含む圧電セラミックスを用いた場合と同等以上の塵埃除去機能を有する撮像装置を提供できる。
【0140】
本発明の圧電素子または積層圧電素子を備えた圧電音響部品を用いることで、鉛を含む圧電素子を用いた場合と同等以上の発音性を有する電子機器を提供できる。
【0141】
本発明の圧電セラミックスは、液体吐出ヘッド、モータに加え、超音波振動子、圧電アクチュエータ、圧電センサ、強誘電メモリ等のデバイスに用いることができる。
【実施例】
【0142】
以下に実施例を挙げて本発明の圧電セラミックスをより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
【0143】
(製造例1:六方晶のチタン酸バリウムの合成)
水熱合成法で作成された正方晶チタン酸バリウム粉末(堺化学工業社製:粒径100nm)を還元処理して六方晶チタン酸バリウムの粉末を得た。還元処理は、大気圧で水素の体積濃度が99%以上であり、温度が1400〜1500℃の雰囲気で30〜120分間行われた。還元処理した粉末をX線回折で評価したところ、構成相は六方晶チタン酸バリウムであった。本還元処理によってチタン酸バリウム粉末の重量が0.2重量%減少した。また粉末の色は白から青に変わった。次に還元処理した六方晶チタン酸バリウム粉末を、空気中1000℃で1〜6時間熱処理した。粉末の色は薄い青色となったが、粉末の構成相は熱処理の前後で変化はなかった。この六方晶チタン酸バリウム粉末を以後、「HB粉」と称する。
【0144】
(製造例2:Mn含有の六方晶チタン酸バリウムの合成)
原料には、炭酸バリウム、酸化チタン(石原産業社製:純度99.9%)、酸化マンガンを用いて、モル比がBa:Ti:Mn=1.00:0.90:0.05で表される組成の粉末を作成した。各原料粉末を目的の組成になるように秤量して混合した粉末を、900〜1250℃の大気雰囲気で、2〜20時間かけて仮焼した。次に得られた仮焼粉をボールミルで粉砕し、メッシュが50〜250μmの篩で分級した。仮焼から分級までの工程を1〜2回行った。分級後の仮焼粉に、MnとNbが等モルとなるように酸化ニオブ粉末を混合した。得られた混合粉の色は茶色であった。X線回折測定によると、試料は六方晶のみで構成されていた。このMn含有六方晶チタン酸バリウムを以後、「MB粉」と称する。
【0145】
(製造例3:比較用の正方晶チタン酸バリウムの調製)
水熱合成法で作成された正方晶チタン酸バリウム粉末(堺化学工業社製:粒径100nm)を空気中1000℃で1〜6時間熱処理した。粉末の色は白色であった。X線回折測定によると、試料は正方晶のみで構成されていた。この正方晶チタン酸バリウムを以後、「TB粉」と称する。
【0146】
(実施例1〜16、および比較例1〜3:BaTiO−BiFeO−Bi(Ni0.5Ti0.5)O
【0147】
(製造方法)
原料として六方晶のチタン酸バリウム(HB粉)、酸化ビスマス(レアメタリック社製:純度99.999%)、酸化鉄(レアメタリック社製:純度99.9%)、酸化ニッケル(レアメタリック社製:純度99.9%)および酸化チタン(石原産業社製:純度99.9%)を用いた。表1の組成になるように秤量し、ボールミルで乾式混合を24時間行った。混合した粉末はアルミナ製の坩堝に入れ、大気中800〜900℃で6時間かけて仮焼した。
次に仮焼粉を粉砕した後に、カルボン酸系分散剤の水溶液(3質量%)を加えて混合し、ポットミルを用いて分散処理を行なうことによりスラリーを得た。続いて、前記スラリーに対して磁場を印加して磁場処理を行なった。磁場処理には、超電導マグネット(JMTD−10T180:ジャパンスーパーコンダクタテクノロジー社製)を用いた。超電導マグネットにより10Tの磁場を発生させ、磁界中で回転駆動が可能な非磁性型超音波モータを用いてテーブルを磁界方向に対し、垂直方向に30rpmで回転させた。このテーブル上に基材としての石膏容器を静置し、回転駆動中に、テーブル上の容器中へスラリーを流し込むことで鋳込み成形法による成形を行なった。その後石膏の容器から成形体を取り出した。取り出した成形体を24時間空気中で乾燥させた。
得られた成形体を700℃大気雰囲気中で10時間、更に900〜1000℃大気雰囲気中で6時間酸化処理することにより、本発明のペロブスカイト型金属酸化物よりなる圧電セラミックスまたは比較用の金属酸化物の焼結体を得た。圧電セラミックスおよび焼結体は厚みが0.5mmになるように両面を研磨した。
【0148】
(構造評価)
研磨した圧電セラミックスおよび金属酸化物の組成は、ICP質量分析により検量線を作製したX線蛍光分析(XRF)により評価した。圧電セラミックスおよび金属酸化物の結晶構造は、X線回折(XRD)の2θ−θ測定により評価した。このXRDの結果を用いて(111)配向の度合いを示すロットゲーリングファクタF(LGF)を算出した。圧電セラミックスおよび金属酸化物の相対密度は、アルキメデス法で実測した値とXRDの結晶構造解析から求められる理論密度を用いて求めた。圧電セラミックスおよび金属酸化物の結晶粒の平均円相当径と最大円相当径はSEMによって観察し、平均円相当径は個数平均として求めた。
【0149】
(圧電特性評価)
圧電セラミックスおよび金属酸化物の圧電特性を評価するために、それらを厚さ0.5mm、長さ15mm、幅4mmの短冊形状に加工し、その表裏両面に銀電極を塗布することで本発明の圧電素子および比較用の素子を作製した。
前記素子の圧電特性は、電界歪曲線の電界と歪の傾きから圧電定数d33を求めることにより評価した。歪の値は、電界を60kV/cm印加した時の値を採用し、圧電定数を計算した。また、キュリー温度は比誘電率の温度特性のピーク位置から求めた。比誘電率の温度特性は、−100〜600℃の範囲を3℃/分で昇温させながら10℃ごとに1MHzの誘電率を計測することで求めた。
【0150】
(比較例4:BaTiO−BiFeO−Bi(Ni0.5Ti0.5)O)(製造方法)
発生磁場を0Tとして試料に磁場を印加しなかった他は実施例11と同様にして、比較用の金属酸化物および素子を得た。
【0151】
(構造評価および圧電特性評価)
実施例1〜16と同様にして評価を行った。
【0152】
(比較例5:BaTiO−BiFeO−Bi(Ni0.5Ti0.5)O)(製造方法)
チタン酸バリウム原料をTB粉とした他は実施例11と同様にして、比較用の金属酸化物および素子を得た。
【0153】
(構造評価および圧電特性評価)
実施例1〜16と同様にして評価を行った。
実施例1〜16および比較例1〜5の組成の関係を示す三角相図を図15に示した。図中の太い実線は、本発明の請求項1に相当する範囲を示している。
実施例1〜16および比較例1〜5の組成、製造条件、評価結果を表1にまとめた。表中、組成の項目のx、y、zはそれぞれBaTiO、BiFeO、Bi(Ni0.5Ti0.5)Oのモル比を表わす。結晶構造の項目において○はペロブスカイト型構造の単相であったことを表わす。
【0154】
【表1】

【0155】
蛍光X線分析の結果から、本発明の圧電セラミックスおよび比較用の金属酸化物は秤量通りの組成を有することが分かった。
【0156】
X線回折による構造解析から、全ての試料の結晶相はペロブスカイト型構造の単相であることが分かった。実施例1〜16および比較例1の圧電セラミックスはいずれも(111)面に配向しており、その配向度を示すLGFの値は0.12以上であった。一方、比較例2の試料は六方晶チタン酸バリウムの原料に占める割合が小さいため、ランダム配向となった。比較例3の試料は鉄酸ビスマス成分が固溶体に占める割合が大きいため、(110)配向となった。比較例4の試料は磁場を印加していないためランダム配向となった。比較例5の試料は正方晶のチタン酸バリウムを原料に用いたため、(100)配向成分を僅かに有するランダム配向となった。代表例として実施例11および比較例4のX線回折図形を図16に示す。また、相対密度はすべて90%以上であった。
【0157】
実施例1〜16の圧電素子の圧電定数d33は全て105[pm/V]以上であり、キュリー温度は160℃以上であった。特にy値が0.05以上の試料では圧電定数d33が全て120[pm/V]以上であった。
【0158】
実施例1〜16の試料は、−100℃以上キュリー温度以下において、構造相転移に起因する比誘電率のピークを示さなかった。
【0159】
実施例11と比較例4および5の評価結果により、同じ組成であっても(111)配向させることで圧電定数が向上している事が分かる。また、実施例11では印加電界を80kV/cm以上にしても同様の圧電歪みを観測できたが、比較例4および5の場合は印加電界を80kV/cm以上にすると、漏れ電流の影響でかえって歪みが小さくなる傾向があった。他の組成の実施例についてもランダム配向の試料より、50pm/V以上の圧電定数d33の向上が見られた。
【0160】
(実施例17〜23:MnやCuを含んだ材料系)
(製造方法)
原料として六方晶のチタン酸バリウム(HB粉またはMB粉)、酸化ビスマス(レアメタリック社製:純度99.999%)、酸化鉄(レアメタリック社製:純度99.9%)、酸化ニッケル(レアメタリック社製:純度99.9%)、酸化チタン(石原産業社製:純度99.9%)、炭酸マンガンおよび酸化銅を用いた。表2の組成になるように秤量し、実施例1〜16と同様の方法で本発明の圧電セラミックスを作製した。
【0161】
(構造評価および圧電特性評価)
実施例1〜16と同様にして評価を行った。
【0162】
実施例17〜23の組成、製造条件、評価結果を表2にまとめた。表中、組成の項目のx、y、zはそれぞれBaTiO、BiFeO、Bi(Ni0.5Ti0.5)Oのモル比を表わす。また、Mn量、Cu量はそれぞれxBaTiO−yBiFeO−zBi(Ni0.5Ti0.5)Oの100質量部に対する質量を表わす。チタン酸バリウム原料には全て六方晶のものを用いており、Mnを含むMB粉を用いた時は炭酸マンガンを加えて所望のMn含有量となるように調節している。結晶構造の項目において○は、ペロブスカイト型構造のみであったことを表わす。
【0163】
【表2】

【0164】
蛍光X線分析の結果から、本発明の圧電セラミックスおよび比較用の金属酸化物は秤量通りの組成を有することが分かった。
【0165】
X線回折による構造解析から、全ての試料の結晶相はペロブスカイト型構造の単相であることが分かった。実施例17〜23の圧電セラミックスはいずれも(111)面に配向しており、その配向度を示すLGFの値は0.28以上であった。また、密度は全てのサンプルで96%以上の相対密度であり、マンガンや銅を含まない実施例1〜16に比べて高くなる傾向があった。
【0166】
実施例17〜23の圧電素子の圧電定数d33は全て120[pm/V]以上であり、キュリー温度は170℃以上であった。特にy値が0.05以上の試料では圧電定数d33が全て130[pm/V]以上であった。
【0167】
実施例17〜23の試料は、−100℃以上キュリー温度以下において、構造相転移に起因する比誘電率のピークを示さなかった。
【0168】
(実施例24〜39、および比較例6〜8:BaTiO−BiFeO−Bi(Mg0.5Ti0.5)O
【0169】
(製造方法)
酸化ニッケルの代わりに酸化マグネシウム(レアメタリック社製:純度99.9%)を用いた他は実施例1〜16および比較例1〜3と同様にして、本発明の圧電セラミックスおよび圧電素子ならびに比較用の金属酸化物および素子を得た。
【0170】
(構造評価および圧電特性評価)
実施例1〜16および比較例1〜5と同様にして評価を行った。
【0171】
(比較例9:BaTiO−BiFeO−Bi(Mg0.5Ti0.5)O)(製造方法)
発生磁場を0Tとして試料に磁場を印加しなかった他は実施例34と同様にして、比較用の金属酸化物および素子を得た。
【0172】
(構造評価および圧電特性評価)
実施例1〜16と同様にして評価を行った。
【0173】
(比較例10:BaTiO−BiFeO−Bi(Mg0.5Ti0.5)O)(製造方法)
チタン酸バリウム原料をTB粉とした他は実施例34と同様にして、比較用の金属酸化物および素子を得た。
【0174】
(構造評価および圧電特性評価)
実施例1〜16と同様にして評価を行った。
ニッケルをマグネシウムに置き換えた他は実施例1〜16および比較例1〜5と同じ組成であるので、組成の関係は図15の通りとなる。
【0175】
実施例1〜16および比較例1〜5の組成、製造条件、評価結果を表3にまとめた。表中、組成の項目のx、y、zはそれぞれBaTiO、BiFeO、Bi(Mg0.5Ti0.5)Oのモル比を表わす。結晶構造の項目において○、×はそれぞれ、ペロブスカイト型構造の単相であったこと、異相が存在していたことを表わす。
【0176】
【表3】

【0177】
蛍光X線分析の結果から、本発明の圧電セラミックスおよび比較用の金属酸化物は秤量通りの組成を有することが分かった。
【0178】
X線回折による構造解析から、全ての試料の結晶相はペロブスカイト型構造の単相であることが分かった。実施例24〜39および比較例6の圧電セラミックスはいずれも(111)面に配向しており、その配向度を示すLGFの値は0.10以上であった。一方、比較例7の試料は六方晶チタン酸バリウムの原料に占める割合が小さいため、ランダム配向となった。比較例8の試料は鉄酸ビスマス成分が固溶体に占める割合が大きいため、(110)配向となった。比較例9の試料は磁場を印加していないためランダム配向となった。比較例10の試料は正方晶のチタン酸バリウムを原料に用いたため、(100)配向成分を僅かに有するランダム配向となった。また、相対密度はすべて90%以上であった。
【0179】
実施例24〜39の圧電素子の圧電定数d33は全て120[pm/V]以上であり、キュリー温度は160℃以上であった。
【0180】
実施例24〜39の試料は、−100℃以上キュリー温度以下において、構造相転移に起因する比誘電率のピークを示さなかった。
【0181】
実施例34と比較例9および10の評価結果により、同じ組成であっても(111)配向させることで圧電定数が向上している事が分かる。また、実施例34では印加電界を80kV/cm以上にしても同様の圧電歪みを観測できたが、比較例9および10の場合は印加電界を80kV/cm以上にすると、漏れ電流の影響でかえって歪みが小さくなる傾向があった。他の組成の実施例についてもランダム配向の試料より、50pm/V以上の圧電定数d33の向上が見られた。
【0182】
(実施例40〜46:MnやCuを含んだ材料系)
(製造方法)
酸化ニッケルの代わりに酸化マグネシウム(レアメタリック社製:純度99.9%)を用いた他は実施例17〜23と同様にして、本発明の圧電セラミックスおよび圧電素子を得た。
【0183】
(構造評価および圧電特性評価)
実施例17〜23と同様にして評価を行った。
【0184】
実施例40〜46の組成、製造条件、評価結果を表4にまとめた。表中、組成の項目のx、y、zはそれぞれBaTiO、BiFeO、Bi(Mg0.5Ti0.5)Oのモル比を表わす。また、Mn量、Cu量はそれぞれxBaTiO−yBiFeO−zBi(Mg0.5Ti0.5)Oの100質量部に対する質量を表わす。チタン酸バリウム原料には全て六方晶のものを用いており、Mnを含むMB粉を用いた時は炭酸マンガンを加えて所望のMn含有量となるように調節している。結晶構造の項目において○は、ペロブスカイト型構造のみであったことを表わす。
【0185】
【表4】

【0186】
蛍光X線分析の結果から、本発明の圧電セラミックスおよび比較用の金属酸化物は秤量通りの組成を有することが分かった。
X線回折による構造解析から、全ての試料の結晶相はペロブスカイト型構造の単相であることが分かった。実施例40〜46の圧電セラミックスはいずれも(111)面に配向しており、その配向度を示すLGFの値は0.21以上であった。また、密度は全てのサンプルで96%以上の相対密度であり、マンガンや銅を含まない実施例24〜39に比べて高くなる傾向があった。
【0187】
実施例40〜46の結晶粒の平均円相当径は0.5μm以上5.0μm以下であり、結晶粒の最大円相当径は5.0μm以上10.0μm以下であった。
【0188】
実施例40〜46の圧電素子の圧電定数d33は全て130[pm/V]以上であり、キュリー温度は170℃以上であった。特にy値が0.05以上の試料では圧電定数d33が全て170[pm/V]以上であった。
【0189】
実施例17〜23の試料は、−100℃以上キュリー温度以下において、構造相転移に起因する比誘電率のピークを示さなかった。
【0190】
(実施例11および実施例34の圧電素子を用いた液体吐出ヘッド)
実施例11および実施例34と同じ圧電素子を用いて、図3に示される液体吐出ヘッドを作製した。入力した電気信号に追随したインクの吐出が確認された。
【0191】
(実施例11および実施例34による液体吐出ヘッドを用いた液体吐出装置)
実施例11および実施例34と同じ圧電素子を用いた図3に示される液体吐出ヘッドを用いて、図4に示される液体吐出装置を作製した。入力した電気信号に追随したインクの吐出が記録媒体上に確認された。
【0192】
(実施例11および実施例34の圧電素子を用いた超音波モータ)
実施例11および実施例34と同じ圧電素子を用いて、図6に示される超音波モータ作製した。交番電圧の印加に応じたモータの回転挙動が確認された。
【0193】
(実施例11および実施例34による超音波モータを用いたレンズ鏡筒)
実施例11および実施例34と同じ圧電素子を用いた超音波モータを用いて、図7に示される光学機器を作製した。交番電圧の印加に応じたオートフォーカス動作が確認された。
【0194】
(実施例11および実施例34の圧電セラミックスを用いた塵埃除去装置)
実施例11および実施例34と同じ圧電セラミックスを用いて、図9に示される塵埃除去装置を作製した。プラスチック製ビーズを散布し、交番電圧を印加したところ、良好な塵埃除去率が確認された。
【0195】
(実施例11および実施例34による塵埃除去装置を用いた撮像装置)
実施例11および実施例34と同じ圧電素子を用いた塵埃除去装置を用いて、図12に示される撮像装置を作製した。撮像装置に内蔵された塵埃除去装置を動作させたところ、撮像ユニットの表面の塵を良好に除去し、塵欠陥の無い画像が得られた。
【0196】
(実施例11および実施例34による圧電音響部品を用いた電子機器)
実施例11および実施例34と同じ圧電素子を用いた圧電音響部品を用いて、図14に示される電子機器を作製した。交番電圧の印加に応じたスピーカ動作が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0197】
本発明によれば、環境に有害な成分を含まずに高い圧電性能を有する圧電セラミックスを提供することができる。また、本発明は、前記圧電セラミックスを用いた圧電素子、液体吐出ヘッド、液体吐出装置、超音波モータ、光学機器、振動装置、塵埃除去装置、撮像装置および電子機器を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
xBaTiO−yBiFeO−zBi(M0.5Ti0.5)O (1)(式中、MはMgおよびNiから選択される少なくとも1種の元素であり、xは0.40≦x≦0.80、yは0≦y≦0.30、zは0.05≦z≦0.60の範囲の数値を表わす。但し、x+y+z=1である。)
で表されるペロブスカイト型金属酸化物からなり、擬立方晶の表記で(111)面に配向していることを特徴とする圧電セラミックス
【請求項2】
前記一般式(1)において、xは0.40≦x≦0.80、yは0.05≦y≦0.30、zは0.05≦z≦0.55の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の圧電セラミックス。
【請求項3】
X線回折法において、前記圧電セラミックスの(111)面配向の度合いを示すロットゲーリングファクタFが0.10以上1.00以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧電セラミックス。
【請求項4】
前記ペロブスカイト型金属酸化物に0.05質量%以上3.0質量%以下のマンガン、銅のうち少なくとも一方を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の圧電セラミックス。
【請求項5】
前記圧電セラミックスを構成する結晶粒の平均円相当径が500nm以上5μm以下であり、前記結晶粒の最大円相当径が5μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の圧電セラミックス。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の圧電セラミックスを製造する方法であって、
六方晶のチタン酸バリウムを含むスラリーを得る工程、
前記スラリーを基材上に設置する工程、
前記スラリーに対して磁場を印加するとともに成形体を得る工程、及び
前記成形体を酸化処理する工程、を有することを特徴とする方法。
【請求項7】
第一の電極、圧電セラミックスおよび第二の電極を有し、前記圧電セラミックスが請求項1乃至5のいずれか1項に記載の圧電セラミックスであることを特徴とする圧電素子。
【請求項8】
請求項7に記載の圧電素子を配した振動部を備えた液室と、前記液室と連通する吐出口と、を有する液体吐出ヘッド
【請求項9】
記録媒体の搬送部と請求項8に記載の液体吐出ヘッドを備えた液体吐出装置。
【請求項10】
請求項7に記載の圧電素子を配した振動体と、前記振動体と接触する移動体と、を有する超音波モータ
【請求項11】
駆動部に請求項10に記載の超音波モータを備えた光学機器。
【請求項12】
請求項7に記載の圧電素子を配した振動体を有する振動装置。
【請求項13】
請求項12に記載の振動装置を振動部に備えた塵埃除去装置。
【請求項14】
請求項13に記載の塵埃除去装置と撮像素子ユニットとを少なくとも有する撮像装置であって、前記塵埃除去装置の振動部材を前記撮像素子ユニットの受光面側に設けたことを特徴とする撮像装置。
【請求項15】
請求項7に記載の圧電素子を備えた圧電音響部品を配した電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−67553(P2013−67553A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−189004(P2012−189004)
【出願日】平成24年8月29日(2012.8.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度文部科学省元素戦略プロジェクトの委託研究の成果で、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【出願人】(304023994)国立大学法人山梨大学 (223)
【Fターム(参考)】