説明

圧電デバイス

【課題】 パッケージ内に温度センサーと圧電振動素子を収納した圧電デバイスにおいて、温度センサーのサイズに関わらず同一のセンサー部品用電極パッドを使用することができる圧電デバイスを提供することを目的とする。
【解決手段】 励振電極の形成された圧電素子10と、温度センサー80をパッケージに収納した圧電デバイスであって、前記パッケージには基板と基板上に温度センサーと導電接続される一対のセンサー部品用電極パッド41,42を有し、当該センサー部品用電極パッドの少なくとも一方には近接する近接部と、当該近接部より離れた離間部を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度センサーとなるセンサー部品をパッケージ内に含む圧電デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧電デバイスに用いられる圧電振動子は周囲環境温度により周波数が変化する温度特性を持っている。しかしながら、例えば移動体通信機器などで用いられる圧電デバイスにおいては発振周波数の変動幅が非常に小さく、また高い精度が求められる。このことにより従来から、圧電素子とその近傍に独自の出力を持つ温度センサーを置き、当該温度センサーの情報に基づき外部の回路にて温度補償を行うような構成の圧電デバイスが考えられている。例えば、特開2005−286892(特許文献1)、特開2008−205938(特許文献2)はその一例を示す先行技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−286892号公報
【特許文献2】特開2008−205938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧電デバイスに内蔵される温度センサーにはサーミスタ、ダイオードなどがある。温度センサーは圧電デバイスの要求仕様やパッケージ構成等によって適宜選択されるが、外形サイズの異なる温度センサーを用いることがある。このような場合、温度センサー搭載用の電極パッドを近接させる構成が考えられるが、半田で接続した際に、半田が狭い電極間に流れ込み短絡(ショート)するという問題が生じる。
【0005】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、パッケージ内にサイズの異なる温度センサーとなるセンサー部品を搭載可能とし、また短絡(ショート)の問題の生じ難い圧電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は励振電極の形成された圧電素子と、温度センサーをパッケージに収納した圧電デバイスであって、前記パッケージには基板と基板上に温度センサーと接続される一対のセンサー用電極パッドを有し、当該センサー用電極の少なくとも一部には近接する近接部が形成されていることを特徴とする圧電デバイスである。
【0007】
上記、温度センサーとなるセンサー部品としては、チップタイプのサーミスタ、ダイオードを例示できる。またトランジスタのベース・エミッタ間のジャンクションを使用して温度センサーとしてもよい。以下、これらをセンサー部品と呼ぶ。
【0008】
上記構成により、センサー用電極パッドの離間部に搭載するセンサー部品と、近接部に搭載するセンサー部品では異なるサイズのセンサー部品を選択的に搭載することが可能であり、また、センサー部品用電極パッド全体を近づけず、近接部によって一部のみを近づけたことにより、センサー部品搭載時の接合材による短絡(ショート)の危険性を減少させた。
【0009】
また、前述した近接部の厚みが離間部よりも大きくてもよい。
【0010】
上記構成をとることにより、小型の半導体センサー部品を、近接部間の限定された領域で導電接合することができる。なお前記近接部間による接合をFCB(フリップチップボンディング)により接合する場合は近接部の厚肉構成により、効率的に接合を行うことができる。また、離間部にセンサー部品を半田または導電性接着剤等の接合材で実装した際に、接合材が近接部を越えて流れ込む危険性が減り、短絡(ショート)の防止となる。
【0011】
また、センサー部品用電極パッドにおいて前記近接部の一部が、他方よりも大きな面積を持っていてもよい。
【0012】
上記構成をとることにより、搭載面積の小さなセンサー部品をFCBなどで接合する場合であっても近接部の面積が小さい側に接合点を一点設け、近接部の面積の大きい側に接合点を複数点設けることが可能となり、センサー部品の小型化に対応するとともに、接合の安定性を高めることができる。また同時に、一方の近接部をより小さくすることにより、近接部の対向する領域が減少し、短絡(ショート)の危険性を減らすことができる。
【0013】
また、前記センサー部品用電極パッドの近接部の少なくとも一方が、対向するセンサー部品用電極パッドに向けて漸次幅が減少する構成であってもよい。
【0014】
上記構成をとることにより、近接部の対向する領域が減少し、短絡(ショート)の危険性を減らすことができる。また、同時に前記センサー部品を電気的に接合した後に、センサー部品とセンサー部品下部に位置する基板とを補助的にアンダーフィル等の樹脂材で接合を補強する場合において、温度センサーの下部に樹脂材を流れ込みやすくすることができ、接合強度を強化することができる。
【0015】
また、前記センサー部品用電極パッドの近接部の少なくとも一方が三角形状または半円形状であってもよい。
【0016】
上記構成を取ることによって、温度センサーをセンサー部品用電極パッドに搭載する際の画像認識による精度を向上することができる。また同時にセンサー部品と前記基板とを樹脂材で接合した場合において、近接部にテーパ等が形成されるので温度センサー下部に樹脂材を流れ込みやすくすることができる。
【0017】
また、前記圧電素子を収納する第1のキャビティと、前記センサー部品を収納する第2のキャビティが別空間であり、更に、第1のキャビティと第2のキャビティが、基板を挟んで相反する方向に形成された構成であり、前記第1のキャビティの基板の中央部が凸状に、第2のキャビティの基板の中央部が凹状に湾曲していてもよい。
【0018】
上記構成を取ることによって、センサー部品と圧電素子が各々別空間に収納される為、一方のキャビティへの接合の影響を(例えば接合材のガス等)を他方に支えることがなく、圧電デバイスの特性上に寄与する。また、第2のキャビティの基板の中央部が凹状とすることにより、センサー部品と基板とを樹脂材で接合した際にセンサー部品の下部に樹脂材を流れ込みやすくすることができる。
【0019】
また、前記センサー部品と前記圧電素子とが、同一空間に収納されてもよい。
【0020】
上記構成を取ることによって、センサー部品が圧電素子の実際の温度をより正確に検出することができる。
【0021】
また、前記センサー部品と前記基板とを補助的に樹脂材で接合してもよい。
【0022】
上記構成を取ることによって、パッケージからセンサー部品への熱の伝導効率を上げることができる。また、センサー部品と基板との接合強度を強化させる役割も担う。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明の圧電デバイスによれば、サイズの異なるセンサー部品を選択的に搭載することが可能であり、また、短絡(ショート)の危険性も少ない圧電デバイスを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す圧電デバイスの模式的な断面図。
【図2】本発明の第1の実施形態を示す圧電デバイスの模式的な平面図。(a)ケース体 (b)圧電素子 (c)ケース体裏面図
【図3】センサー部品用電極パッドの変形例(a)〜(f)を示すセンサー部品用電極パッド部の模式的な断面図。
【図4】本発明の第2の実施形態を示す模式図。 (a)第2の実施形態における圧電デバイスの模式的な断面図。 (b)第2の実施形態における圧電デバイスのケース体を模式に示す平面図。 (c)第2の実施形態における圧電デバイスの裏面を模式的に示す平面図。
【図5】本発明の第3の実施形態の示す圧電デバイスの模式的な断面図。
【図6】本発明の第4の実施形態を示す圧電デバイスの模式的な断面図。
【図7】本発明の第4の実施形態を示す圧電デバイスの模式的な平面図。(a)ケース体 (b)圧電素子 (c)ケース体裏面図
【図8】本発明の第4の実施例で使用されるサーミスタの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明による好ましい実施の形態について図面に基づいて説明する。
本発明による第1の実施の形態を表面実装型の水晶振動デバイスを例にとり、図1および図2と共に説明する。
【0026】
圧電振動デバイスは平面視矩形状の圧電素子10と小型センサー部品80と、これら圧電素子10と小型センサー部品80を搭載するパッケージ1で構成される。そしてパッケージ1は基板2-Xを挟んで上部が開口した第1のキャビティS1、下部が開口した第2のキャビティS2を有するケース体2とケース体2の上部を封止する蓋体4とその接合部となる金属リング6、接合部材3で構成される。
【0027】
パッケージ1は、少なくとも圧電素子10および温度センサーとなる小型センサー部品80を収容可能な筐体である。本実施の形態では圧電素子を第1のキャビティにセンサー部品を第2のキャビティに収納されている。キャビティS1は圧電素子10を搭載後、蓋体4によって密閉され、それにより外部との機械的接触を防ぐ。また、パッケージ1は複数の部材から構成されてもよい。
【0028】
パッケージ1の蓋体4と金属リング6はコバール材(Fe−Ni−Co合金)からなり、金属リング6は中心が打ち抜かれた枠状となっている。また蓋体4と金属リング6のその他の例として42アロイ材(Fe−Ni合金)などの金属から形成されてもよい。金属リング6を用いてパッケージ1の側壁を構成する際は、ケース体2の上面の金属リング6を配置する部分にW(タングステン)からなるメタライズ膜(図示せず)を設け、その上部にAgろう材でコバール材からなる金属リング6をAgろう材接合する。当該金属リング6の表面にはNi,Auによるメッキ膜を積層して構成されている。なお前記メタライズ膜はMoからなってもよい。
【0029】
ケース体2は圧電素子10及び小型センサー部品80を収納することができる前記第1のキャビティS1と第2のキャビティS2を有し、長辺と短辺を持つ矩形である。圧電素子10を収納する第1のキャビティS1には圧電素子用電極パッド31,32を持ち、小型センサー部品80を収納する第2のキャビティS2にはセンサー部品用電極パッド41,42を持つ。また、ケース体2は第1のキャビティS1の外周に堤部2-A、堤部2-Aの上面に堤部上面2-Bを有し、当該堤部上面2-Bの一部と金属リング6が接合される。また、第1のキャビティの内底面に配される枕12は、帯状に伸びた突起部であり、外部からの衝撃を受けた際、圧電素子10のたわみを抑制し、耐衝撃性を向上させるためのものである。
【0030】
ケース体2の構成は、アルミナセラミックの絶縁素材を複数積層することによって形成されている。また、ケース体2内部には外部への電気的接続となる配線が形成されている。本発明の実施例1においては圧電素子用電極パッド31,32は図2(a)に示すように、ケース体2のキャビティS1内の底面の長手方向の一辺に偏り、短辺方向に並んで2個一対で形成される。また、センサー部品用電極パッド41,42は図2(a)に示すように、キャビティS2内の底面に長手方向に伸びた形にて、2個一対で形成されている。上記、圧電素子用電極パッド31,32、センサー部品用電極パッド41,42はW(タングステン)によるメタライズ膜の上に、Ni,Auのメッキ膜が積層して構成されている。センサー部品用電極パッド41,42は小型センサー部品80の搭載部であるが、センサー部品用電極パッド41,42は平行に配置されるとともに、その中央部分には相互に凸状に近接する近接部43,44とより離れた離間部45,46が形成されている。センサー部品が小型サイズとなった場合、近接部間で導電接合することができ、またセンサー部品が大型サイズとなった場合、離間部45,46へ搭載することが可能であり、搭載するセンサー部品のサイズを幅広く設定することが可能となる。また、その近接部43,44の間の幅は短絡(ショート)事故を防止するため0.010mm以上が望ましい。本実施例においてはメタライズ膜はW(タングステン)からなるがMo(モリブデン)によって形成されてもよく、ケース体2の基材にアルミナセラミックを用いているが、その他の例としてガラスセラミック、ガラス等の絶縁素材を用いてもよい。
【0031】
また、ケース体2はスルーホールビアと内部配線を有しており(図示せず)、これらにより、ケース体2の電気配線を行っている。前記圧電素子用電極パッド31,32およびセンサー部品用電極パッド41,42は内部配線およびスルーホールビアによって外部に引き出されている。スルーホールビアはスルーホール内部を導電材で埋めることにより、配線間の電気的接続を行う。このスルーホールビアに使用される導電材としては、例えば、W(タングステン)、Mo(モリブデン)などの金属が上げられる。内部配線はケース体2外周の角部に設けられたキャスタレーションに有る金属膜からなる端子電極K1,K2,K3,K4に繋がっており、それぞれの裏面の外部端子51,52,53,54に電気的接続がされている。なお、端子電極及び外部接続端子もW(タングステン)もしくはMo(モリブデン)によるメタライズ膜の上に、Ni,Auのメッキ膜が積層して構成されている。圧電素子用電極パット31は端子電極K3に内部配線で繋がっており、圧電素子用電極パッド32は端子電極K2に繋がっている。また、センサー部品用電極パッド41は端子電極K1に内部配線で繋がっており、センサー部品用電極パッド42は端子電極K4に繋がっている。以上の構成により圧電素子用電極パッド31,32はそれぞれ外部端子53,52に電気的接続され、センサー部品用電極パッド41,42はそれぞれ外部端子51,54に電気的接続されている。
【0032】
次に前記ケース体2の作製方法の例を上げる。アルミナセラミックから成る場合、所定のセラミック材料粉末に適当な有機溶剤等を添加し、混合してセラミックグリーンシートを得る。セラミックグリーンシートの表面などに圧電素子用電極パッド30やセンサー部品用電極パッド40、外部接続端子5等となる導電ペーストを所定のパターンにて塗布するとともに、セラミックグリーンシートに予め穿設しておいたスルーホール内にビア導通材となる導電ペースト(メタライズ用ペースト)を塗布し、これを複数枚積層してプレス成型した後、高温で焼成することによって製作される。この積層の際、キャビティS1、キャビティSに対応する数層分のセラミックグリーンシートの中央に穴を開けたものを使用することによって、キャビティS1、キャビティS2を形成することができる。
【0033】
蓋体4は、第1のキャビティS1の上部開口を封止するものであり、平面で見た際に長方形のコバール(Fe−Ni−Co合金)からなる。このコバールは前面をNiで覆われた構成となっている。蓋体4は、ケース体2のキャビティS1を覆うサイズであり、金属リング上面6-Aと接着することによってパッケージ1を構成し、圧電素子10が動作する空間であるキャビティS1を不活性ガス雰囲気や真空雰囲気に気密封止するものである。また、本実施例においては蓋体4はコバール(Fe−Ni−Co合金)を用いているが、その他の例としてガラス、水晶や、42アロイ(Fe−Ni合金)、セラミック、リン青銅などの金属を用いてもよく、その形状はケース体2を封止して密閉空間とすることができる形状であればよく特に限定されない。またその素材によって接合材は異ならせてもよい。
【0034】
次に蓋体4とケース体2に溶融接着された金属リング6の接着方法について説明する。蓋体4は表面がNiで覆われており、蓋体4は金属リング6のAuメッキ膜上に配される。パラレルシーム溶接機のローラー電極によって蓋体4の稜線部分を押圧しながら通電し、走行することによって蓋体4の接点のNiと金属リング6のAu面の下部にあるNi面が溶融し、Niが接合部材となって気密封止が行われる。本実施形態において蓋体4は表面をNiで覆われているとしたがこれに限らない。また、本実施形態における封止方法はシーム封止であるが、ケース体2および蓋体4の材料によって接合部材3は異なり、接着方法も異なる。その他の例として、電子ビーム溶接などの溶接方法や、金属ろう封止、低融点ガラス封止、樹脂封止などの接合材を用いる方法をとることも可能である。
【0035】
圧電素子10はパッケージ1のキャビティS1内に配置される。圧電素子10は長辺と短辺を有する矩形状のATカット水晶板を用い、その表裏面に対向して電極が形成されている。当該電極は水晶板の上面にCr膜を形成し、その上面にAuまたはAgからなる膜を積層して構成される。また、本実施例における圧電振動子10はATカット水晶振動板であるが、その他の例としてタンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、圧電セラミック等の圧電材料で形成されてもよく、圧電素材が水晶であった場合、SCカット振動子、音叉型振動子、双音叉型振動子などを使用することができ、圧電素子10の形状は限定されない。
【0036】
圧電素子10の電極は図2の(b)に示すように、中央に表裏対向した長辺と短辺を有する長方形状の励振電極70を持ち、その励振電極70からの一方の短辺の角部への延長部と、短辺の一方に2個一対で設けられる引き出し電極71,72を有する。この引き出し電極71,72は、それぞれケース体2の圧電素子用電極パッド31,32に接着する部分となる。
【0037】
導電性接着剤11はキャビティS1内にあり、ケース体2の一方の短辺側にて圧電素子10をケース体2に固定し、導通させるためのものである。圧電素子10の引き出し電極71,72をそれぞれ、ケース体2の圧電素子用電極パッド31,32上に接着する。これにより、圧電素子10上に形成された励振電極70と電気的接続をおこなう。導電性接着剤11はシリコーン樹脂等のバインダーの中に導電フィラーとして、導電性粉末が含有されている。この導電性粉末は、Pd,Agを組み合わせて用いる。本実施例における導電性粉末はPd,Agであるが、その他の例としてAl,Mo(モリブデン),W(タングステン),Pt,Ti,Ni,NiFe,のうちのいずれかまたはこれらのどの組み合わせを含むものが用いられてもよく、また、導電性接着剤11の代わりに金属バンプ等を用いてもよい。
【0038】
小型センサー部品80は第2のキャビティS2内に配置される温度センサーであり、ダイオードの代用としてトランジスタのベース・エミッタ間のジャンクションを利用するものである。トランジスタはシリコンウェハによる作製が可能な為小型化が容易であるという利点がある。トランジスタにはベース、エミッタ、コレクタの3端子が有る。通常は、ベース・エミッタ間に順方向の電圧、コレクタ・ベース間に逆方向の電圧を加えることによって、エミッタ電流に生じる増幅作用を利用する。本発明におけるトランジスタはベース・エミッタ間の2端子のみを接続し、定電流を流し、温度変化によって生じる電圧の変化を用いて温度センサーとして利用する。小型センサー部品80の外部入力端子と外部出力端子(図示せず)をケース体2に設けられたセンサー部品用電極パッド41,42の近接部43,44上に接合材21にて固定され導通をとることにより、温度データ信号がパッケージ外部へと出力される。また、小型センサー部品80と基板2-Xの間を樹脂材にて補助接合することによって接合強度を上げている。本実施例における小型センサー部品80はトランジスタからなる温度センサーとしたが、サーミスタやダイオードを温度センサーとして用いてもよい。
【0039】
接合材21は小型センサー部品80を第2のキャビティS2内に固定し、小型センサー部品80の外部端子とセンサー部品用電極パッド41,42との導通をとるためのものであり、搭載するセンサー部品によって異なる。シリコンウェハからなる小型化されたトランジスタを近接部に搭載する場合にはFCB(フリップチップボンディング)技術を用いた金属バンプを用いる。またその他の例として、半田、導電性接着剤による電気的機械的接合などがある。
【0040】
以上の構成物からなる本実施例1の圧電デバイスの製法を説明する。第1のキャビティS1にある圧電素子用電極パッド31,32に導電性接着剤11を塗布し、その上に圧電素子10を圧電素子用電極パッド31,32と引き出し電極71,72がそれぞれ対応するように搭載した上で、製品を加熱炉に投入し導電性接着剤11を硬化する。次に製品の電極の膜厚を増加または減少させることによって周波数を調整し、その後アニール炉にいれて再度加熱し、アニール処理を行う。真空雰囲気中で第1のキャビティS1上に蓋体4を配し、シーム溶接により接合する。具体的にはシーム溶接機のローラー電極によって蓋体4の稜線部分を押圧しながら通電し走行することによって蓋体4の接点のNiと金属リング6のAu面の下部にあるNi面が溶融し、Niが接合部材となって真空にて気密封止が行われる。密閉後、エージング等の熱処理工程、検査工程を経て、第2のキャビティS2内の近接部43,44に小型センサー80を接合材21を用いて固定する。その後、小型センサー80と基板2-Xとの間に樹脂材22を注入し、樹脂材の乾燥工程を経て最終製品検査を行う。
【0041】
本発明の第1の実施例においてはセンサー部品用電極パッド41,42に近接部43,44を設けているため、小型化したトランジスタなどからなる小型センサー部品80を搭載することが可能であり、また、近接部43,44は対向する領域が離間部全体を近づけた際よりも少ないため短絡(ショート)を防ぐことができる。
【0042】
次に本発明によるセンサー部品用電極パッドの変形例を表面実装型の水晶振動子デバイスを例にとり、図3と共に説明する。
【0043】
図3における変形例(a)〜(f)は図2に対し、平面視において第2のキャビティS2内の近接部43,44の形状や厚みを変更したものである。
【0044】
図3は近接部43,44の変形例である。図3(a)は近接部43,44の厚みが離間部45,46よりも大きいものである。これにより、離間部45,46に半田付けでセンサー部品20を搭載した際に、半田が離間部45,46から近接部43,44を越えて流れ込み短絡(ショート)する危険性を減少させる効果がある。
【0045】
図3(b)は近接部43,44の一方が他方よりも大きな面積を持つ変形例である。一方の近接部43を近接部44よりも小さくすることにより、近接部43,44が互いに向き合う距離を減少させ、短絡(ショート)の危険性を減らすことができる。また、両方を小さくすると、トランジスタ等の小型のセンサー部品80を搭載する際に2点保持となるが、片方を大きくすることで1つの極に1点、他の極に複数点の保持を可能とし、接合の安定性を高めることができる。図3(c)は近接部43,44の両方を小さくし、互いに向き合わない位置に配した変形例である。これにより向き合うセンサー部品用電極パッドの最接近距離を離し、短絡(ショート)の危険性を減少させる効果がある。
【0046】
図3(d)は近接部43,44の一方を三角形状とした変形例である。図3(e)は近接部43,44の一方を三角形状とし、他方を半円形状とした変形例である。一方の近接部を三角形状とすることでセンサー部品20を搭載する際の画像認識の精度を向上させ、接着剤の塗布ずれを防ぎ、短絡(ショート)の危険性を減らすことができる。また、樹脂材を補助支持として用いる場合、近接部の一方または両方の漸次幅が対向するセンサー部品用電極パッドに向けて減少する構成とすることにより、センサー部品20や小型センサー部品80と基板の間に絶縁性の樹脂材を流し込みやすくすることができる。さらに図3(f)は近接部となる凸状部分を一方にのみ設けたものである。これにより図3(d),(e)と同様に画像認識の精度を向上させることができる。なお図3(f)の近接部43の先端は複数の突部を有する構成であり、このような構成により、接合材の流れ出しを抑制し、電極間の短絡(ショート)を無くすことができる。
【0047】
次に本発明による第2の実施形態を表面実装型の水晶振動子を例にとり、図4と共に説明する。
【0048】
本実施の形態は、センサー部品としてサーミスタを用いている点、蓋体の気密封止に金属リングを用いずAgろう材を用いている点、そしてパッケージの配線構成が一部異なっている点において第1の実施形態と異なっている。パッケージ1はケース体2、接合部材4、蓋体4で構成される。センサー部品用電極パッド41,42は第2のキャビティS2の底面においてスルーホールビア47,48にてパッケージの内部配線を行っている。
【0049】
パッケージ1は、少なくとも圧電素子10および温度センサーとなるセンサー部品20を収容可能な筐体である。圧電素子10の収納場所とセンサー部品20の収納場所は基板2-Xを挟んで相反する方向に形成されており、それぞれ上部収納場所第1のキャビティS1、下部収納場所第2のキャビティS2からなる。第1のキャビティS1は圧電素子10を搭載後、蓋体4によって密閉され、それにより外部との機械的接触を防いでいる。また、パッケージ1は複数の部材から構成されてもよい。
【0050】
ケース体2は圧電素子10及びセンサー部品20を収納することができる第1のキャビティS1と第2のキャビティS2を有し、上方、下方が共に開口した形状であり、平面で見て長辺と短辺を持つ矩形である。圧電素子10の搭載位置である第1のキャビティS1には圧電素子用電極パッド31,32を持ち、センサー部品20の搭載位置である第2のキャビティS2にはセンサー部品用電極パッド41,42を持つ。また、ケース体2は第1のキャビティS1の外周に堤部2-A、堤部2-Aの上面に堤部上面2-Bを有し、当該堤部上面2-Bの1部と蓋体4が接合される。
【0051】
ケース体2は本発明の第1の実施形態と同様にアルミナセラミックを積層することによって形成されており、同様の機能を持つが、センサー部品用電極パッド41,42はパッケージ1の短辺側のセラミック積層部内部には引き込まれておらず、近接部43,44が形成されている反対側にそれぞれスルーホールビア47,48を設け、内部配線へと接続されている。内部配線による接続先は本発明の第1の実施形態と同様である。
【0052】
蓋体4はコバールを基材とし、上面をNiで覆われている。また接合面である下面は緩衝材となるCuで覆い、その下に板状のAgろうを配した4層構造となっている。
【0053】
次に蓋体4とケース体2の接着方法について説明する。ケース体2の堤部上面2-Bに予めW(タングステン)などから構成されるメタライズ膜を厚めに設け、その上にNi,Auなどからなるメッキ膜が形成されている。堤部上面2-Bに蓋体4のAgろうが接した状態でシーム溶接機の通電ローラー電極によって蓋体4の稜線部分を押圧しながら電気をかけ走行することによって蓋体4の接点のAgろうとケース体2のAuが溶融し、気密封止が行われる。
【0054】
圧電デバイスを小型化すると、上記第1の実施の形態に示す構成の場合、センサー部品20側の第2のキャビティS2の内壁上端外枠が外部接続端子のそれぞれ51,52,53,54にかかる形となる。このため第2のキャビティS2内でセンサー部品20を半田付けした際に半田が第2のキャビティS2内のセンサー部品用電極パッド41,42より外壁を伝い流れだし、ケース体2の底面に達した場合、半田が外部接続端子51〜54に接し、短絡(ショート)する可能性がある。本実施の形態においては、センサー部品用電極パッド41,42がスルーホールビア47,48により内部配線と接続されている。よってセンサー部品用電極パッド41,42がキャビティS2の内壁に接していないため、半田の外部接続端子への流れ込みを防ぐことができる。
【0055】
次に本発明による第3の実施形態を表面実装型の水晶振動発振器を例にとり、図5と共に説明する。
【0056】
本発明による第3の実施形態は第1の実施形態におけるキャビティS1の基板2-Xの中央部が凸状に湾曲し、キャビティS2の基板2-Xの中央部が凹状に湾曲している形態である。
【0057】
本実施の形態においてはキャビティS1の基板2-X の中央部が凸状となり、キャビティS2の基板2-X の中央部が凹状となっている点、センサー部品としてサーミスタを用いている点において第1の実施形態と異なっている。
【0058】
上記第3の実施形態をとることにより、第2のキャビティS2にセンサー部品20を搭載し、接続の強化及び、電極パッド部の保護のためにセンサー部品20の下部に樹脂材を流し込んだ際に、基板の中央部に向けて流れ込みやすくすることができる。
【0059】
次に本発明による第4の実施形態を表面実装型の水晶振動発振器を例にとり、図6,図7と共に説明する。
【0060】
本発明による第4の実施形態はパッケージ1のキャビティをキャビティS1のみとした一体型パッケージであり、キャビティS1内に圧電素子10とセンサー部品20を搭載し、また、圧電素子10の保持方法を両側保持とした形態である。
【0061】
ケース体2は、圧電素子10及びセンサー部品20を収容することができるキャビティS1と凹部S3を有し、上方が開口した容器状の構成であり、平面で見て長辺と短辺を持つ矩形である。また、ケース体2はキャビティS1の外周に堤部2-Aを有し、堤部2-Aの上面に堤部上面2-Bを有し、当該堤部上面の一部と蓋体4が接合される。
【0062】
ケース体2の構成は、アルミナセラミックの絶縁素材を複数積層することによって形成されている。また、ケース体2は内部底面に段差を有しており、ケース体2内部には外部への電気的接続となる配線が形成されている。圧電素子用電極パッド31,32は図7(a)に示すように、ケース体2のキャビティS1内の底面の両側に対角線上に2個一対で形成される。また、センサー部品用電極パッド41,42は図7(a)に示すように、キャビティS1内の凹部S3の底面に長手方向に伸びた形にて、2個一対で形成されている。上記、圧電素子用電極パッド31,32、センサー部品用電極パッド41,42はW(タングステン)によるメタライズ膜の上に、Ni,Auのメッキ膜が積層して構成されている。センサー部品用電極パッド41,42はセンサー部品20の搭載部であるが、センサー部品用電極パッド41,42は平行に配置されるとともに、その中央部分には相互に近接する凸部43,44が形成されている。センサー部品が小型サイズとなった場合、凸部間で導電接合することができ、搭載するセンサー部品20のサイズを幅広く設定することが可能となる。また、本実施例においてはケース体2の基材にアルミナセラミックを用いているが、その他の例としてガラスセラミック、ガラス等の絶縁素材を用いてもよい。
【0063】
圧電振動子10は矩形のATカット水晶振動板である。電極の形状は図7(b)に示すように、中央に表裏対向した矩形の励振電極70を持ち、左右の対角線上に電極が延長された引き出し電極71,72を有している。
【0064】
導電性接着剤11はキャビティS1内にてセンサー部品20の上部に圧電素子10をケース体2に固定し導通させるためのものである。本実施例において導電性接着剤11はケース体2の両側、対角線上に図7(a)の圧電素子用電極パッド31,32の上に位置し、圧電素子10を両側から保持し、導通をとる。
【0065】
また、圧電素子10とセンサー部品20を同一の空間に搭載しているため、圧電素子10とセンサー部品20の温度差が少なくなり、圧電素子10のより正確な温度データを出力可能な圧電デバイスを得ることができる。また、圧電素子10を両側保持することにより、パッケージ1に大きな衝撃が加わった際にも、圧電素子が大きく揺れることがなく、またパッケージ1が変形した場合においても圧電素子と接触することがなく、耐衝撃性にすぐれた圧電デバイスといえる。このため衝撃の予想される車載用圧電デバイスなどにおいて有効である。なお、本実施形態において、圧電素子10の長辺の両端を保持しているが、対角ではなく、各短辺の中央部分を保持する構成としてもよい。
【0066】
次にサーミスタの構成例について図8と共に説明する。サーミスタ100は全体として直方体形状であり、コア材の一主面に一対の電極81,82を有し、他主面に金属膜91が形成された構成である。通常、サーミスタは温度が上がると抵抗が変化する特性を持ち、その特性を利用して温度センサーなどに利用されている。本発明に搭載されるサーミスタ100は通常のサーミスタと比べ低背化されたものであり圧電デバイス全体を低背化するためには大きな意味を持つ。また、Auからなる電極81,82を片面に持つためFCBにて接合が可能である。このサーミスタの電極の裏面にはAgからなる金属膜91を持つが、この金属膜は全体の抵抗値を調整するためのものであり、要求される抵抗値によっては形成されない。また、抵抗値の値によってサーミスタのサイズが異なる。本発明の第4の実施例におけるサーミスタは図8に限定されるものではなく、端面や側面に電極が形成されているサーミスタであってもよい。
【0067】
以上、実施形態および変形例で複数の例示を行ったが、これらを互いに組み合わせ、実施形態の圧電デバイスに適用することができる。これにより組み合わせによる相乗的な効果をえることができる。
【0068】
なお、本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他の色々な形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点において単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであり、明細書本文にはなんら拘束されない。更に特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0069】
圧電デバイスあるいは他のセンサー部品の量産に適用できる。
【符号の説明】
【0070】
1 パッケージ
2 ケース体
3 接合部材
4 蓋体
6 金属リング
6-A 金属リング上面
10 圧電素子
11 導電性接着剤
20 センサー部品
21 接合材
22 樹脂材
31,32 圧電素子用電極パッド
41,42 センサー部品用電極パッド
43,44 電極パッド凸部
51,52,53,54 外部接続端子
70 励振電極
71,72 引き出し電極
80 小型センサー部品
81,82 電極
91 金属膜
100 サーミスタ
S1,S2 キャビティ
S3 凹部
2-A 堤部
2-B 堤部上面
2-X 基板
K1,K2,K3,K4 端子電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励振電極の形成された圧電素子と、
温度センサーをパッケージに収納した圧電デバイスであって、
前記パッケージには基板と基板上に温度センサーと導電接続される一対のセンサー部品用電極パッドを有し、
当該センサー部品用電極パッドの少なくとも一方には近接する近接部と、当該近接部より離れた離間部が形成されていることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項2】
センサー部品用電極パッドにおいて前記近接部の厚みが他の部分よりも大であることを特徴とする請求項1記載の圧電デバイス。
【請求項3】
センサー部品用電極パッドの近接部の一方が、他方よりも大きな面積を持つことを特徴とする請求項1または2記載の圧電デバイス。
【請求項4】
前記センサー部品用電極パッドの近接部は少なくとも一方が対向するセンサー部品用電極パッドに向かって漸次幅が減少する構成であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の圧電デバイス。
【請求項5】
前記センサー部品用電極パッドの近接部は三角形状または半円形状であることを特徴とする請求項4に記載の圧電デバイス。
【請求項6】
前記パッケージは各々別空間となる第1のキャビティと第2のキャビティを有し、前記圧電素子を第1のキャビティ、前記温度センサーを第2のキャビティに収納することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の圧電デバイス。
【請求項7】
前記圧電素子を収納する第1のキャビティと前記温度センサーを収納する第2のキャビティが基板を挟んで相反する方向に開口が形成された構成であり、かつ前記第1のキャビティの基板の中央部が凸状に湾曲しており、第2のキャビティの基板の中央部が凹状に湾曲していることを特徴とする請求項6記載の圧電デバイス。
【請求項8】
前記温度センサーと前記圧電素子とが同一空間に収納されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の圧電デバイス。
【請求項9】
前記温度センサーと前記基板とを樹脂材で接合したことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の圧電デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−106054(P2013−106054A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246210(P2011−246210)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】