説明

圧電デバイス

【課題】パッケージ内に温度センサーまたは温度センサーを内蔵する電子部品と圧電振動素子を収納した圧電デバイスにおいて、実装基板からのセンサー部品への熱の影響を抑制し、温度センサーの測定値に基づく温度補償において、温度センサーの温度情報が圧電素子の温度と乖離せず正確な温度を得ることができる圧電デバイスを提供する。
【解決手段】ケース体2と蓋体4からなるキャビティS1を有するパッケージ1があり、前記キャビティ内には凹部S2が形成されており、前記凹部内に温度センサー20または温度センサーを内蔵した電子部品を搭載し、前記凹部の上部となる同一キャビティ内に圧電素子10を搭載する圧電デバイスであって、前記温度センサーまたは前記温度センサーを内蔵した電子部品を搭載するケース体の凹部の裏面に熱遮断部100を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度センサーまたは温度センサーを含むセンサー部品をパッケージ内に含む圧電振動子、または圧電発振器等の圧電デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧電デバイスに用いられる圧電振動子は周囲環境温度により周波数が変化する温度特性を持っている。しかしながら、例えば移動体通信機器などで用いられる圧電デバイスにおいては発振周波数の変動幅が非常に小さく、また高い精度が求められる。このことにより従来から、圧電素子とその近傍に独自の出力を持つ温度センサーや温度センサーを内蔵する電子部品を置き、当該温度センサーの情報に基づき外部もしくは電子部品内の回路にて温度補償を行うような構成の圧電デバイスが考えられている。例えば、特開2005−286892(特許文献1)、特開2008−205938(特許文献2)はその一例を示す先行技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−286892号公報
【特許文献2】特開2008−205938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧電デバイスは他の電子部品と同様プリント配線基板(実装基板)に搭載される。しかしながら、各電子部品は動作時に発熱し、その熱が他の電子部品に基板を通して伝播し、当該電子部品の特性を変動させてしまうことがあった。上記特許文献2の圧電デバイスにおいても、実装基板からの熱の影響を受けることがある。上述した従来の圧電デバイスの場合、パッケージの底部に温度センサーまたは温度センサーを含む電子部品を実装し、その上部に圧電振動素子を実装している。このため、圧電デバイスに対する実装基板の発熱による熱の伝導は温度センサーを含む電子部品側に早く到達し、圧電振動素子側への熱の伝導と時間差が生じる。よって、温度センサーの測定値と実際の圧電振動素子の温度変化が異なり、温度補償が不正確になるという問題があった。
【0005】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、従ってその目的は、パッケージ内に温度センサーまたは温度センサーを内蔵する電子部品(以下、この二つをセンサー部品と称する。)と圧電振動素子を収納した圧電デバイスにおいて、実装基板からのセンサー部品への熱の影響を抑制し、温度センサーの測定値に基づく温度補償に関して、温度センサーの温度情報が圧電素子の温度と乖離せず正確な温度情報を得ることができる圧電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はケース体と蓋体からなるキャビティを有するパッケージがあり、前記キャビティ内には凹部が形成されており、前記凹部内に温度センサーまたは温度センサーを内蔵した電子部品(センサー部品)を搭載し、前記キャビティ内の前記凹部に圧電素子を搭載する圧電デバイスであって、前記温度センサーまたは前記温度センサーを内蔵した電子部品(センサー部品)を搭載するケース体の凹部の裏面に熱遮断部を設ける事を特徴とする圧電デバイスである。
【0007】
上記センサー部品としては、温度センサー、発振回路と温度センサーとなる部分を含むIC(集積回路)、発振回路と補償回路と温度センサーとなる部分を含むIC(集積回路)を例示できる。
【0008】
上記構成により、ケース体の空間を蓋体と接合部材によって気密封止し、キャビティを有するパッケージが構成される。この圧電デバイスを他の電子部品と共に基板に実装した際、圧電素子とセンサー部品が同一キャビティ内にあることにより、両者の環境温度変化が乖離しにくくなる。また、センサー部品を搭載するケース体の凹部の裏面に熱遮断部があることにより、実装基板からセンサー部品への熱の伝導を抑制し、センサー部品の上部に圧電素子を配置した構成であっても圧電素子とセンサー部品への熱の伝導を略同一とすることができる。このため、センサー部品に内蔵された温度センサーの感知する温度と圧電素子の実際の温度とが略同一となり、温度補償の精度を高めたり、圧電素子の正確な温度情報を外部の温度補償回路等に提供することができる。
【0009】
また、前述した熱遮断部は、空間部であってもよい。この熱遮断部はパッケージのセンサー部品を搭載する凹部の裏面に有り、反対面に配置されたセンサー部品と同等かそれより大きい面積を有することが好ましい。
【0010】
また、裏面に設けられる熱遮断部となる空間部は、センサー部品の搭載位置である凹部よりも小さい面積であっても大きい面積であってもよい。
【0011】
上記構成をとることにより、圧電デバイスを実装する基板からの熱は空間の存在する部分においては直接パッケージを暖めることができない。このため、パッケージ内のセンサー部品への熱の伝導を抑制することが可能であり、圧電素子とセンサー部品の温度を略同一とすることができる。
【0012】
また、熱遮断部を設けた圧電デバイスのパッケージにおいて、センサー部品の直下に空隙部を設けてもよい。この空隙部はパッケージのキャビティ内の一部を構成し、センサー部品を搭載するための凹部内にあっても、凹部の底面より下部にあってもよい。
【0013】
上記構成をとることにより、圧電デバイスを実装する基板からのセンサー部品への熱の伝導をケース体裏面に設けられた熱遮断部だけでなく、空隙部においても抑制することが可能であり、圧電素子とセンサー部品への熱の伝わりを略同一とすることができる。
【0014】
また、熱遮断部を設けた圧電デバイスにおいて、ケース体と蓋体などから形成されるパッケージのキャビティ内を真空雰囲気に気密封止してもよい。
【0015】
圧電デバイスのキャビティ内部に不活性ガス等の気体が存在すると、ガス分子を介する熱伝導が生じるが、圧電デバイスのパッケージ内を真空雰囲気とすると、キャビティ内の圧電素子とセンサー部品への熱の伝わりはケース体への搭載部分によるものが大部分を占め、内部にガスが存在する場合のガスからの熱伝導を防ぐことが可能である。このため、圧電素子とセンサー部品への熱の影響を抑制しやすくなる。
【0016】
また、熱遮断部を設けた圧電デバイスパッケージにおいて、パッケージのキャビティ内に収納される圧電素子を両側保持する構成としてもよい。
【0017】
圧電素子を両側保持することにより、パッケージに大きな衝撃が加わった際にも、圧電素子が大きく揺れることがなく、またパッケージが変形した場合においても圧電素子と接触することがなく、耐衝撃性にすぐれた圧電デバイスを提供することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明の圧電デバイスによれば、パッケージ内の同一キャビティに収納された圧電素子とセンサー部品への熱伝導が等しくなり、圧電素子の温度情報がセンサー部品の温度センサーから正確に取得できる圧電デバイスを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す圧電デバイスの模式的な断面図。
【図2】本発明の第1の実施形態の模式的な平面図(a)ケース体 (b)圧電素子 (c)ケース体裏面図
【図3】第1の実施形態の第1の変形例を示す圧電デバイスの模式的な断面図。
【図4】(a)第1の実施形態の第2の変形例を示す圧電デバイスの模式的な断面図。 (b)第1の実施形態の第2の変形例における圧電デバイスの裏面を模式的に示す平面図。
【図5】第1の実施形態の第3の変形例を示す圧電デバイスの模式的な断面図
【図6】(a)本発明の第2の実施形態を示す圧電デバイスの模式的な断面図。 (b)本発明の第2の実施形態おける圧電デバイスのケース体を模式的に示す平面図。 (c)本発明の第2の実施形態おける圧電デバイスの裏面を模式的に示す平面図。
【図7】第2の実施形態の第2の変形例を示す圧電デバイスの模式的な断面図。
【図8】本発明の第3の実施形態を示す圧電デバイスの模式的な断面図。
【図9】本発明の第3の実施形態の模式的な平面図。 (a)センサー部品を搭載したケース体 (b)圧電素子部 (c)ケース体裏面図
【図10】従来の圧電デバイスの模式的な断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明による好ましい実施の形態について図面に基づいて説明する。
本発明による第1の実施の形態を表面実装型の水晶振動デバイスを例にとり、図1および図2、図3、図4と共に説明する。
【0021】
圧電振動デバイスは平面視矩形状の圧電素子10とセンサー部品20と、これら圧電素子10とセンサー部品20を搭載するパッケージ1で構成される。そしてパッケージ1とは上部が開口したキャビティS1を有するケース体2とケース体2を封止する蓋体4とその接合部材3で構成される。
【0022】
パッケージ1は、少なくとも圧電素子10および温度センサーもしくは温度センサーを含むセンサー部品20を収容可能な筐体である。パッケージ1の内部にはキャビティS1が形成される。キャビティS1はセンサー部品20を収容するための凹部S2を有し、その上部に圧電素子10が設置される。 パッケージの形状は限定されず、例えば直方体状などとすることができる。パッケージ1の機能としては、一つは圧電素子10およびセンサー部品20が外部と機械的に接触しないようにすることと、キャビティS1内に密閉することが挙げられる。また、パッケージ1は複数の部材から構成されてもよい。本発明の第1乃至3の実施形態の圧電デバイスにおいては、パッケージ1はケース体2および接合部材3、蓋体4から構成されている。
【0023】
ケース体2は、圧電素子10及びセンサー部品20を収容することができる前述のキャビティS1と凹部S2を有し、上方が開口した容器状の構成であり、長辺と短辺を持つ矩形である。容器内のセンサー部品20の収納位置、すなわち前記凹部S2の裏面側に熱遮断部100を有する。本発明の第1の実施形態において熱遮断部100はケース体2の厚さ方向に窪んだ空間部である。また、ケース体2はキャビティS1の外周に堤部2-Aを有し、堤部2-Aの上面に堤部上面2-Bを有し、当該堤部上面の一部と蓋体4が接合される。本実施の形態においては平面で見て、前期凹部S2が熱遮断部100より大きな構成となっている。
【0024】
ケース体2の構成は、アルミナセラミックの絶縁素材を複数積層することによって形成されている。また、ケース体2は内部底面に段差を有しており、ケース体2内部には外部への電気的接続となる配線が形成されている。本発明の実施例1においては圧電素子用電極パット31,32は図2(a)に示すように、ケース体2のキャビティS1内の底面の長手方向の一辺に偏り、短辺方向に並んで2個一対で形成される。また、センサー部品用電極パット41,42は図2(a)に示すように、キャビティS1内の凹部S2の底面に長手方向に伸びた形にて、2個一対で形成されている。上記、圧電素子用電極パット31,32、センサー部品用電極パット41,42はW(タングステン)によるメタライズ膜の上に、Ni,Auのメッキ膜が積層して構成されている。センサー部品用電極パット41,42はセンサー部品20の搭載部であるが、センサー部品用電極パット41,42は平行に配置されるとともに、その中央部分には相互に近接する凸部411,421が形成されている。センサー部品が小型サイズとなった場合、凸部間で導電接合することができ、搭載するセンサー部品20のサイズを幅広く設定することが可能となる。また、本実施例においてはケース体2の基材にアルミナセラミックを用いているが、その他の例としてガラスセラミック、ガラス等の絶縁素材を用いてもよい。
【0025】
また、ケース体2はビアホールと内部配線を有しており(図示せず)、これらにより、ケース体2の電気配線を行っている。ケース体2の表面の圧電素子用電極パット31,32およびセンサー部品用電極パット41,42から内部配線に向けて伸びるスルーホールを設け、そのスルーホール内部を導電材で埋めることにより、電気的接続をするためのビアホールを構成している。このビアホールに使用される導電材としては、例えば、W(タングステン)、Mo(モリブデン)などの金属が上げられる。内部配線はケース体2外周の角部に設けられたキャスタレーションに有る金属膜からなる端子電極K1,K2,K3,K4に繋がっており、それぞれの裏面の外部端子51,52,53,54に電気的接続がされている。なお、端子電極及び外部接続端子もW(タングステン)によるメタライズ膜の上に、Ni,Auのメッキ膜が積層して構成されている。圧電素子用電極パット31は端子電極K3に内部配線で繋がっており、圧電素子用電極パット32は端子電極K2に繋がっている。また、センサー部品用電極パット41は端子電極K1に内部配線で繋がっており、センサー部品用電極パット42は端子電極K4に繋がっている。以上の構成により圧電素子用電極パット31,32はそれぞれ外部端子53,52に電気的接続され、センサー部品用電極パット41,42はそれぞれ外部端子51,54に電気的接続されている。
【0026】
次に前記ケース体2のアルミナセラミックの作製方法の例を上げる。
アルミナセラミックから成る場合、所定のセラミック材料粉末に適当な有機溶剤等を添加し、混合してセラミックグリーンシートを得る。セラミックグリーンシートの表面などに圧電素子用電極パット30やセンサー部品用電極パット40、外部接続端子5等となる導電ペーストを所定のパターンにて塗布するとともに、セラミックグリーンシートに予め穿設しておいたスルーホール内にビア導通材となる導電ペースト(メタライズ用ペースト)を塗布し、これを複数枚積層してプレス成型した後、高温で焼成することによって製作される。
この積層の際、キャビティS1、凹部S2および空間部に対応する数層分のセラミックグリーンシートの中央に穴を開けたものを使用することによって、キャビティS1、凹部S2および熱遮断部となる空間部を形成することができる。
【0027】
蓋体4は、ケース体2の上部開口を封止するものであり、平面で見た際に長方形のセラミックからなる。長方形の外縁部には四角の枠状にAuSnからなる金属ろうが配置された構成となっている。蓋体4は、ケース体2のキャビティS1を覆うサイズであり、堤部上面2-Bと接着することによってパッケージ1を構成し、圧電素子10やセンサー部品20が動作する空間であるキャビティS1を不活性ガス雰囲気や真空雰囲気に気密封止するものである。また、本実施例においては蓋体4はセラミックを用いているが、その他の例としてガラス、水晶や、42アロイ(Fe−Ni合金)、コバール(Fe−Ni−Co合金)、リン青銅などの金属を用いてもよく、その形状はケース体2を封止して密閉空間とすることができる形状であればよく特に限定されない。またその素材によって接合材は異ならせてもよい。
【0028】
次に蓋体4とケース体2の接着方法について説明する。ケース体2の堤部上面2-Bに予めW(タングステン)などから構成されるメタライズ膜(図示せず)を設け、その上にNi,Auなどからなるメッキ膜を配する。堤部上面2-B上に蓋体4のAuSnろうが接するように配した後、加熱することによってAuSnにより、ケース体2と蓋体4とが接合されパッケージ1が密閉される。本実施形態における封止方法は金属ろう封止であるが、ケース体2および蓋体4の材質によって接合部材3は異なり、接着方法も異なる。その他の例として、シーム溶接、電子ビーム溶接などの溶接方法や、低融点ガラス封止、樹脂封止などの接着剤を用いる方法をとることも可能である。
【0029】
圧電素子10はパッケージ1のキャビティS1内にセンサー部品より上部に配置される。圧電素子10は長辺と短辺を有する矩形状のATカット水晶板を用い、その表裏面に対向して電極が形成されている。当該電極は水晶板の上面にCr膜を形成し、その上面にAuまたはAgからなる膜を積層して構成される。また、本実施例における圧電振動子10はATカット水晶振動板であるが、その他の例としてタンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、圧電セラミック等の圧電材料で形成されてもよく、圧電素材が水晶であった場合、SCカット振動子、音叉型振動子、双音叉型振動子などを使用することができ、圧電素子10の形状は限定されない。
【0030】
圧電素子10の電極は図2の(b)に示すように、中央に表裏対向した長辺と短辺を有する長方形状の励振電極70を持ち、その励振電極70からの一方の短辺の角部への延長部と、短辺の一方に2個一対で設けられる引き出し電極71,72を有する。この引き出し電極71,72は、それぞれケース体2の圧電素子用電極パット31,32に接着する部分となる。また、ケース体2上に配される枕12は、帯状に伸びた突起部であり、外部からの衝撃を受けた際、圧電素子10のたわみを抑制し、耐衝撃性を向上させるためのものである。
【0031】
導電性接着剤11はキャビティS1内にあり、ケース体2の一方の短辺側にて圧電素子10をケース体2に固定し、導通させるためのものである。圧電素子10の引き出し電極71,72をそれぞれ、ケース体2の圧電素子用電極パット31,32上に接着する。これにより、圧電素子10上に形成された励振電極70と電気的接続をおこなう。導電性接着剤11はシリコーン樹脂等のバインダーの中に導電フィラーとして、導電性粉末が含有されている。この導電性粉末は、Pd,Agを組み合わせて用いる。本実施例における導電性粉末はPd,Agであるが、その他の例としてAl,Mo,W,Pt,Ti,Ni,NiFe,のうちのいずれかまたはこれらのどの組み合わせを含むものが用いられてもよく、また、導電性接着剤11の代わりに金属バンプ等を用いてもよい。
【0032】
センサー部品20はキャビティS1内にある凹部S2に配置されるサーミスタからなる温度センサーである。センサー部品20は外部入力端子と外部出力端子(図示せず)を有し、それぞれがケース体2に設けられたセンサー部品用電極パット41,42上に接合材21にて固定され、導通をとることにより、温度データ信号がパッケージ外部へと出力される。本実施例におけるセンサー部品はサーミスタからなる温度センサーとしたが、ダイオードやトランジスタを温度センサーとして用いてもよい。また、温度センサー単体以外に、温度センサーを含むIC(集積回路)であってもよい。例として、発振回路と温度センサーとなる部分を含むIC(集積回路)や、発振回路と温度補償回路と温度センサーとなる部分をふくむIC(集積回路)であってもよい。
【0033】
接合材21はセンサー部品20を凹部S2内に固定し、センサー部品20の外部端子とセンサー部品用電極パット41,42との導通をとるためのものであり、導電性接着剤からなる。また、その他の例として、固定としての機能だけでなく電気的な接続を兼ねられる金属バンプ接合、半田接合などがある。非導電性接着剤を用いる場合はセンサー部品20の外部端子からセンサー部品用電極パット41,42へワイヤーボンディング等で導通を取る必要がある。
【0034】
以上の構成物からなる本実施例1の圧電デバイスの製法を説明する。ケース体2の凹部S2内のセンサー部品用電極パット41,42にセンサー部品20を接合材21を用いて固定し、その上部となる圧電素子用電極パット31,32に圧電素子10を導電性接着剤11を用いて固定する。この際、圧電素子用電極パット31,32に圧電素子10の引き出し電極71,72がそれぞれ対応するように配置する。圧電素子10、電子部品20を固定したケース体2上にN雰囲気中で蓋体4を配し、ケース体2の堤部上面2-B上のメッキ膜のAuと蓋体4のろう材AuSnが加熱溶融接合される320〜360度まで加熱し、キャビティS1内をN雰囲気としたまま気密封止する。
【0035】
本発明の第1の実施例においては温度センサーのケース体2の裏面に熱遮断部となる空間を設けているため、実装基板からの熱がそのまま温度センサー部分へと伝わることを防ぐことが可能である。このため温度センサーによって圧電素子10の正確な温度データを得ることができる。
【0036】
次に本発明による第1の実施形態における変形例を表面実装方の水晶振動子デバイスを例にとり、図3〜図5と共に説明する。
【0037】
図3および図4における変形例は図1に対し、平面視において凹部S2の面積とケース体2の裏面に設けられた熱遮断部100の面積を変更したものである。
【0038】
図3と図4は凹部S2と熱遮断部100部分の変形例である。図3における熱遮断部101はセンサー部品20と平面で見て重畳する位置にあり、かつ同等の面積としたしたものである。図4における熱遮断部102はセンサー部品20より、より大きな面積としたものである。熱遮断部100は熱遮断部102の様にセンサー部品20より大きい面積を有する方が効果的である。しかし、熱遮断部100を大きくしすぎるとケース体2の強度低下をまねくので注意が必要である。また、ケース体2の凹部においては図3の凹部S2-Aでは熱遮断部101よりも大きい面積を有し、図4の凹部S2-Bでは熱遮断部102よりも小さい面積となっている。図3の凹部S2-Aではセンサー部品20の搭載性が良く、また、キャビティS1内が不活性ガス雰囲気である場合、ガスを介したセンサー部品20への熱伝導が遅くなり、図4の凹部S2-Bに比べると熱の抑制効果をえることができる。
【0039】
図5は第1の実施形態で示したケース体2の堤部2-Aに代えて、側壁を金属リング6で形成するとした変形例である。
【0040】
図5においてはパッケージ1はケース体2、接合部材3、蓋体4、金属リング6、からなる。蓋体4と金属リング6はコバール(Fe−Ni−Co合金)からなり、金属リング6は中心が打ち抜かれた枠状となっている。また蓋体4と金属リング6のその他の例として42アロイ(Fe−Ni合金)などの金属から形成されてもよい。金属リング6を用いてパッケージ1の側壁を構成する際は、ケース体2の上面の金属リングを配置する部分にWからなるメタライズ膜(図示せず)を設け、その上部に下面にAgCuろう板のついたコバールリングを置き、加熱溶融し接合する。更にその上にNi,Auによるメッキ膜を積層して構成されている。
【0041】
上記、金属リング6を側壁とする際の封止方法はシーム封止を用いる。蓋体4は表面をNiで覆われており、蓋体4は金属リング6のAuメッキ膜上に配される。シーム溶接機の通電ローラー電極によって蓋体4の稜線部分を押圧しながら電気をかけ走行することによって蓋体4の接点のNiと金属リング6のAu面の下部にあるNi面が溶融し、Niが接合部材となって気密封止が行われる。
【0042】
次に本発明による第2の実施形態を表面実装型の水晶振動発振器を例にとり、図6各図と共に説明する。
【0043】
本発明による第2の実施形態は第1の実施形態におけるセンサー部品20の直下に空隙部200を設ける形態である。
【0044】
図6における本発明の第2の実施形態は、ケース体2の凹部S2の底面よりも下にセンサー部品20よりも小さい凹部を設け、その上にセンサー部品20を配することにより、センサー部品20の直下に空隙部200を形成するものである。また、第2の実施形態におけるセンサー部品20は発振回路と温度センサーとなる部分を含むIC(集積回路)チップを用いている。
【0045】
センサー部品20を発振回路と温度センサーからなる部分を含むICチップとした場合、その裏面には外部端子が6つあり、電源端子とそれに対応するGND(Grand)端子がセンサー部品用電極パット44,49に繋がり、圧電素子用端子の2つがセンサー部品用電極パット45,48に繋がる。発振周波数の出力端子はセンサー部品用電極パット46に繋がり、IC内部からの温度データの出力端子がセンサー部品用電極パット47に繋がっている。センサー部品用電極パット45,48は内部配線によってそれぞれ圧電素子用電極パット31,32と振動子の周波数確認端子電極K5,K6に繋がっており、ICと圧電素子用10を電気的に接続すると共に、外部から圧電素子10の周波数単体を確認することができるようになっている。電源端子とGND(Grand)端子の繋がった電極パット44,49はそれぞれ端子電極K1,K4へ、発振周波数の出力端子の繋がった電極パット46はK3へ、温度データの出力端子が繋がった電極パット47はK2へと内部配線によって繋がっており、それぞれが外部端子51,52,53,54へ繋がっている。
【0046】
また、第2の実施形態におけるケース体2の変更点以外については、上記実施例で用いられるパッケージ1を構成するケース体2、接合部材3、蓋体4と、圧電素子10、導電性接着剤11、接合材21は本発明の第1の実施形態にて用いられる素材及び機能を持つものであり、その形状も順ずるものである。
【0047】
上記第2の実施形態をとることにより、圧電デバイスを実装する基板からの熱の伝導はセンサー部品20に伝わる際に、ケース体2の裏面に設けられた熱遮断部だけでなくセンサー部品20の直下に形成される空隙部200においても抑制される。これにより、圧電素子10とセンサー部品20への実装基板からの熱の伝わりを略同一とすることができる。
【0048】
次に本発明による第2の実施形態の変形例を表面実装方の水晶振動子デバイスを例にとり、図7と共に説明する。
【0049】
図7における第2の実施形態は、ケース体2の凹部S2内にセンサー部品20を搭載するための脚部22を設け、その上にセンサー部品20を配置することによりセンサー部品20の直下に空隙部201を形成するものである。また、このセンサー部品20を搭載するための脚部22はセンサー部品搭載用パット44,45,46と47,48,49上に設けられ、Wのメタライズ膜を多層に積層形成し、その表面にNi,Auをメッキ形成した構成である。また、ここで用いられるパッケージ1を構成する、接合部材3、蓋体4と、圧電素子10、接合材21は本発明の第2の実施形態にて用いられる素材及び機能を持つものであり、変形例におけるセンサー部品20と、ケース体2の電極及び内部配線は、上記第2の実施形態に順ずる。すなわち、センサー部品20の6つの外部端子は上記と同様に外部接続端子51〜54と周波数確認端子電極K5,K6に接続されている。
【0050】
上記第2の実施形態の変形例をとることにより、圧電デバイスを実装する基板からの熱の伝導はセンサー部品20に伝わる際に、ケース体2の裏面に設けられた熱遮断部だけでなくセンサー部品20の直下に形成される空隙部201においても抑制される。これにより、圧電素子10とセンサー部品20への実装基板からの熱の伝わりを略同一とすることができる。
【0051】
次に、本発明による第3の実施形態を表面実装型の水晶振動デバイスを例にとり、図8および図9と共に説明する。
【0052】
本実施例におけるパッケージ1を構成するケース体2、接合部材3、蓋体4と、センサー部品20、接合材21は本発明の第1乃至第2の実施形態にて用いられる素材及び機能を持つものであり、その形状は変更点以外に関しては順ずるものである。
【0053】
圧電振動子10は本発明の第1、第2の実施形態と同様の機能を持つ物であり、矩形のATカット水晶振動板である。電極の形状は図9(b)に示すように、中央に表裏対向した矩形の励振電極70を持ち、左右の対角線上に電極が延長された引き出し電極71,72を持つ。
【0054】
導電性接着剤11は本発明の第1、第2の実施形態と同様の素材、機能を持つものであり、キャビティS1内にてセンサー部品20の上部に圧電素子10をケース体2に固定し導通させるためのものである。本実施例において導電性接着剤11はケース体2の両側、対角線上に図9(a)の圧電素子用電極パット31,32の上に位置し、圧電素子10を両側から保持し、導通をとる。
【0055】
第3の実施形態では、圧電素子10を両側から対角線上に保持し、導通を図るものである。図9(a)はケース体2の平面図であり、キャビティS1を開口部上部より見たものである。圧電素子用電極パット30はケース体2の両側に対角線上に配置されている。この圧電素子用パット30は図2(a)における圧電素子用電極パット30と同様にビアホール(図示せず)が形成されている。本発明の第3の実施形態におけるビアホールは図9(a)において図示されているケース体2の底面の両端に対角線上形成された圧電素子用電極パット31,32よりパッケージ1の内部配線へと形成されており、外部接続端子52,53へ繋がっている。これにより圧電素子用電極パット31,32に圧電素子10を電気的に接続すると、外部接続端子52,53との電気的接続が可能となる。また、センサー部品用電極パット41,42についても同様にケース体2の内部のビアホール(図示せず)によって内部配線へと繋がっており、外部接続端子51,54と電気的に接続されている。
【0056】
本発明によるパッケージ1には実施例第1ないし第3においてケース体2の裏面に熱遮断部となる空間を設けている、このためパッケージ1の耐衝撃性が下がるという問題が生じる。実施例1乃至2における圧電素子10はパッケージ1の内部にてケース体2の片側に保持されている。このため外部から大きな衝撃が加わった際、圧電素子10がパッケージ1のキャビティS1内にて大きく揺れる、もしくはパッケージ1が変形するなどして圧電素子10がパッケージ1内にてケース体2、蓋体4、枕12などに接触する可能性がある。接触した場合、圧電デバイスのCI値の大きな増加による発振停止などにつながる可能性があり、特に車載用圧電デバイスなどでは大きな問題となる。
【0057】
本発明の第3の実施形態では圧電素子10を両側保持することにより、パッケージ1に大きな衝撃が加わった際にも、圧電素子が大きく揺れることがなく、またパッケージ1が変形した場合においても圧電素子と接触することがなく、耐衝撃性にすぐれた圧電デバイスといえる。このため衝撃の予想される車載用圧電デバイスなどにおいて有効である。なお、第3の実施形態において、圧電素子10の長辺の両端を保持しているが、対角ではなく、各短辺の中央部分を保持する構成としてもよい。
【0058】
以上、実施形態および変形例で複数の例示を行ったが、これらを互いに組み合わせ、実施形態の圧電デバイスに適用することができる。これにより組み合わせによる相乗的な効果をえることができる。
【0059】
なお、本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他の色々な形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点において単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであり、明細書本文にはなんら拘束されない。更に特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0060】
圧電デバイスあるいは他のセンサー部品の量産に適用できる。
【符号の説明】
【0061】
1 パッケージ
2 ケース体
3 接合部材
4 蓋体
6 金属リング
10 圧電素子
11 導電性接着剤
20 センサー部品
21 接合材
22 脚部
31,32 圧電素子用電極パット
41,42,44,45,46,47,48,49 センサー部品用電極パット
51,52,53,54 外部接続端子
70 励振電極
71,72 引き出し電極
100,101,102 熱遮断部
200,201 空隙部
411,412 電極パット凸部
S1 キャビティ
S2,S2-A,S2-B 凹部
2-A 堤部
2-B 堤部上面
K1,K2,K3,K4 端子電極
K5,K6 周波数確認端子電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース体と蓋体からなるキャビティを有するパッケージがあり、
前記キャビティ内には凹部が形成されており、
前記凹部内に温度センサーまたは温度センサーを内蔵した電子部品を搭載し、
前記キャビティ内の前記凹部の上部に圧電素子を搭載する圧電デバイスであって、
前記温度センサーまたは前記温度センサーを内蔵した電子部品を搭載するケース体の凹部の裏面に熱遮断部を設けたことを特徴とする圧電デバイス。
【請求項2】
前記熱遮断部が空間部であることを特徴とする請求項1記載の圧電デバイス。
【請求項3】
前記温度センサーまたは前記温度センサーを内蔵する電子部品の直下に空隙部を設けることを特徴とする請求項1または請求項2記載の圧電デバイス。
【請求項4】
前記キャビティ内を真空雰囲気に気密封止することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の圧電デバイス。
【請求項5】
前記圧電素子をキャビティ内に両側保持することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の圧電デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−58864(P2013−58864A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195334(P2011−195334)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】