圧電トランスデューサおよび液滴噴射装置
【課題】 少ない電極数でも効率よく所定の変形量を得ることができる圧電トランスデューサおよびそれを用いた液滴噴射装置を提供する。
【解決手段】 圧電トランスデューサ100は、積層された複数の圧電セラミックス層により形成された圧電材料板1からなり、液室5の中央に対して対称でかつ該圧電材料板の面に沿う方向および板厚方向に対して傾斜した方向に分極されている。圧電材料板の両面上には駆動用電極2,3が形成され、該圧電材料板に前記各分極方向に対してそれぞれ実質的に直交する電界をかけることで、圧電材料板がシェアモード変形し、液室5内のインクに噴射圧力を与える。
【解決手段】 圧電トランスデューサ100は、積層された複数の圧電セラミックス層により形成された圧電材料板1からなり、液室5の中央に対して対称でかつ該圧電材料板の面に沿う方向および板厚方向に対して傾斜した方向に分極されている。圧電材料板の両面上には駆動用電極2,3が形成され、該圧電材料板に前記各分極方向に対してそれぞれ実質的に直交する電界をかけることで、圧電材料板がシェアモード変形し、液室5内のインクに噴射圧力を与える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電トランスデューサおよびそれを用いた液滴噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
用紙に文字や画像をドットマトリックス形式で印刷するためのプリントヘッドに圧電式の液滴噴射装置を利用したものが従来から提案されている。これは、圧電トランスデューサの寸法変位によってインクを収容した液室の容積を変化させることにより、その容積減少時にインクをノズルから噴射し、容積増大時にインク供給源から液室内にインクを導入するようにしたもので、ドロップオンデマンド方式と呼ばれている。そして、このような噴射機構を多数互いに近接して配設し、所定の位置の噴射機構からインクを噴射することにより、所望する文字や画像を形成するのである。
【0003】
このような液滴噴射装置として、複数の液室に跨って設けられた圧電材料板の所定の液室に対応する部位のみを局部的に変形させる圧電式の液滴噴射装置が提案されている。圧電材料を変形させるモードとして、例えば米国特許第5,402,159号明細書などに記載されたダイレクトモード、および米国特許第5,266,964号明細書に記載されたシェアモードがある。
【0004】
前者の米国特許第5,402,159号明細書に記載されたものは、複数の積層された圧電セラミックス層の間に正電極と負電極を積層方向に交互にはさみ、正電極と負電極との間のセラミックス層をその正電極と負電極との対向方向に分極した構造で、正電極と負電極に分極方向と同じ方向の電圧を印加することで、セラミックス層が伸長し、液室の容積を変化させ、インクに噴射圧力を加える。
【0005】
また、後者の米国特許第5,266,964号明細書に記載されたものは、複数の積層された圧電セラミックス層の間に複数の正電極をはさみ、またその正電極と積層方向と直交する方向に間隔をおいた位置で複数の負電極をはさみ、正電極群と負電極群との間のセラミックス層をその正電極群と負電極群との対向方向と直交する方向に分極した構造で、正電極群と負電極群に分極方向と直交する方向の電圧を印加することで、セラミックス層が厚みすべり効果により平行四辺形状に変形、すなわちシェアモードで変形し、液室の容積を変化させ、インクに噴射圧力を加える。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の前者のダイレクトモードでは、所定の変形量を得るためには、多数のセラミックス層と電極との積層数と必要とする。また、後者のシェアモードでは、各正電極と負電極がその対向方向とは直交する方向に面を有しているので、両電極の対向面積を擬似的に大きくするために、積層方向に多数の電極を並べなければならない。
【0007】
このため、いずれも多くのセラミックスのグリーンシート上に電極材料をスクリーン印刷あるいは蒸着等して各液室に対応した多数の電極を形成し、そのグリーンシートを電極が積層方向に正確に対応するように積層する必要があり、製作工数が多くなる問題があった。
【0008】
本発明は、少ない電極数でも効率よく所定の変形量を得ることができる圧電トランスデューサおよびそれを用いた液滴噴射装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の圧電トランスデューサは、圧電材料板と、その厚み方向に対向する両側にそれぞれ位置し、前記対向方向とは直交する方向に間隔をおいた複数の電極とを備え、分極時と駆動時とで、前記圧電材料板に電界を印加するために使用する前記電極の組み合わせを変え、分極方向と駆動電界方向とが交差するようにして、駆動時には、前記圧電材料板をシェアモード変形させる。
【0010】
この場合、前記分極時と駆動時とのいずれかは、前記複数の電極のうち隣接する電極を越えた電極どうしを組み合わせて、前記隣接する電極どうしが対向する方向と交差する方向の電界を印加する。
【0011】
また、好ましくは、前記分極方向は前記圧電材料板の面に沿う方向に一致し、前記駆動電界方向は前記圧電材料板の厚み方向に一致する。分極時には、前記圧電材料板の厚み方向に対向しない電極を使用して電界を印加し、その電極間に位置する少なくとも他の電極を使用して前記駆動電界を印加することができる。駆動時には、前記分極時に使用した電極と、その電極間に位置する他の電極とを使用して前記駆動電界を印加することもできる。
【0012】
他の好ましい例では、前記分極方向は前記圧電材料板の厚み方向に一致し、前記駆動電界方向は前記圧電材料板の面に沿う方向に一致する。この場合、分極時には、前記圧電材料板の厚み方向に対向する電極を使用して電界を印加し、前記圧電材料板の厚み方向に対向しない電極を使用して前記駆動電界を印加する。
【0013】
この圧電トランスデューサを液滴噴射装置に用いる場合、圧電トランスデューサを、液体を収容した複数の液室に跨って配置し、前記分極時に使用する電極が、前記液室の中央に対して対称に分極用電界を印加するように位置し、その電界によって生成した各分極方向に対してそれぞれ交差する駆動電界を印加するように、前記駆動時に使用する複数組の電極が前記液室の中央に対して対称に位置する。そして、選択的に各液室の容積を変化させることにより該液室内の液体を液滴として噴射する。
【0014】
この場合好ましくは、前記分極用電界を印加する対の電極のうち一方の電極が、前記複数の液室を相互に隔てる隔壁に対応して位置する。また、前記圧電トランスデューサの前記液室側の面に、前記電極を覆って前記圧電材料板に積層した絶縁層を備えることもできる。
【0015】
上記のように、分極時に、圧電材料板の厚み方向に対向しない電極を使用して電界を印加し、その電極間に位置する少なくとも他の電極を使用して前記駆動電界を印加する圧電トランスデューサを液滴噴射装置に用いる場合、圧電トランスデューサを複数の液室に跨って配置し、前記分極時に使用する電極が、前記各液室の中央と、前記複数の液室を相互に隔てる隔壁とに対応して位置し、前記駆動時に使用する複数組の電極が前記液室の中央に対して対称に位置する。そして、選択的に各液室の容積を変化させることにより該液室内の液体を液滴として噴射する。
【0016】
上記のように、分極時には、前記圧電材料板の厚み方向に対向する電極を使用して電界を印加し、前記圧電材料板の厚み方向に対向しない電極を使用して前記駆動電界を印加する圧電トランスデューサを液滴噴射装置に用いる場合、圧電トランスデューサを複数の液室に跨って配置し、前記駆動時に使用する電極が、前記各液室の中央と前記複数の液室を相互に隔てる隔壁とに対応して位置し、前記分極時に使用する複数組の電極が前記液室の中央に対して対称に位置する。そして、選択的に各液室の容積を変化させることにより該液室内の液体を液滴として噴射する。
【発明の効果】
【0017】
上述したように、本発明の圧電トランスデューサおよび液滴噴射装置によれば、少ない電極数で効率よく変形させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の圧電トランスデューサおよび液滴噴射装置をインク噴射装置に具体化した第1の実施の形態について図1〜図9を参照して説明する。
【0019】
図1に示すように、インク噴射装置200は、圧電トランスデューサ100と液室形成ユニット120とで構成され、液室形成ユニット120は、液室プレート6と、スペーサプレート7と、ノズル8を有するノズルプレート9とで構成されている。
【0020】
インクを収容する液室5は、液室プレート6に穿設した開口の上下を圧電トランスデューサ100とスペーサプレート7とで覆って作られ、図4に示すように、複数行、複数列をなして平面状に配列され、隣接する液室5とは隔壁51で隔てられている。液室5の長さ方向の一端は、スペーサプレート7に穿設した連通孔71を介してノズルプレート9のノズル8に連通し、他端は、図示しないインク供給源に連通している。液室5は、例えば幅(図において左右方向)0.375mm、長さ(図において紙面と直交する方向)2.000mmの大きさで、図において左右方向に0.508mmのピッチ(50DPI)で形成されている。
【0021】
圧電トランスデューサ100は、チタン酸ジルコン酸鉛系(PZT)のセラミックス材料からなる圧電材料板1からなる。さらに、圧電材料板1は、複数のシート状の圧電セラミックス層1a〜1dを積層して構成され、その圧電材料板1の液室側の表面(図1において下面)上に第1の駆動電極2と、液室5と反対側の表面(図1において上面)上に第2の駆動電極3とが形成されている。第1の駆動電極2は、圧電材料板1下面全体に沿って延び各液室5に共通に設けられる。第2の駆動電極3は各液室5に対応して設けられ、各液室5の形状にほぼ対応した形状に形成される。圧電セラミックス層1a〜1dの1層の厚みは0.015mmである。第1および第2の駆動電極2,3はAg−Pd系の金属材料からなり、厚みは約0.002mmである。
【0022】
図1において圧電材料板1の内部に描かれた矢印Aは、圧電材料板1の分極方向を示す。圧電材料板1は各液室5の中央部分から両側の隔壁51に向かう方向につまり中央部分に対して対称に分極されている。それぞれの分極方向は、圧電材料板1の上面および下面に沿う方向でかつ厚み方向に対して傾いているが、圧電材料板1の面方向の成分を有する。第1の駆動電極2と第2の駆動電極3は、液室5に対応する2つの分極部分を上下から挟むように対向している。つまり、圧電材料板1の各液室5に対応する部分が、後述するように変形する部分すなわち動作部分を構成する。
【0023】
第1の駆動電極2と第2の駆動電極3は、この各分極部分のみに対応して分割して設けられててもよいが、上記のように第1の駆動電極2はすべて連続して、第2の駆動電極3は同時に電圧を印加する単位つまり液室ごとに形成することが製造上好ましい。
【0024】
次に、図1〜図3を参照して、液滴を噴射する動作について説明する。図1に示すように、最初に液室5の内部にインクを充填する。このとき、第1の駆動電極2および第2の駆動電極3はいずれもグランドGND(0V)に接続されている。次に、図2に示すように、第1の駆動電極2をグランドGNDに接続したまま、液滴を噴射しようとする液室5の第2の駆動電極3に正の駆動電圧(例えば20V〜30V)を印加する。このとき、第1の駆動電極2および第2の駆動電極3の間に発生する電界Eの向きと、圧電材料板1の分極方向Aとがほぼ直交しているため、液室5に対応する2つの分極部分はそれぞれシェアモードで変形する。つまり、両分極部分は、それぞれ隔壁51の上方部分をほぼ支点とし、かつ液室5の中央を挟んで対称にそれぞれ平行四辺形状に変形して、第2の駆動電極3が形成された圧電材料板1の領域が圧電材料板1の面方向に対して直交する方向、すなわち図2において上方に膨らむように移動し、液室5の容積が増加する。この状態を、このとき生じた圧力波の液室5内での片道伝播時間Tだけ維持する。この容積の増加によって、図示しないインク供給源から液室5にインクが供給される。なお、上記片道伝播時間Tは液室5内の圧力波が、液室5の長手方向(図中、紙面に垂直な方向)に伝播するのに必要な時間であり、液室5の長さLとこの液室5内部のインク中での音速aによりT=L/aと決まる。
【0025】
圧力波の伝播理論によると、上記の電圧の印加からほぼT時間がたつと液室5内の圧力が逆転し、正の圧力に転じるが、このタイミングに合わせてに第1の駆動電極2をグランドGNDに接続したまま第2の駆動電極3の電位をグランドGND(0V)に戻すと、圧電材料板1の形状が図1と同様の変形前の状態に戻り、液室5内のインクに圧力が加えられる。そのとき、前記正に転じた圧力と、圧電材料板1が変形前の状態に戻ることにより発生した圧力とが加え合わされ、比較的高い圧力が液室5に連通するノズル8付近の部分に生じて、図3に示すように、液室5内のインクがノズル8からインク滴10として噴射される。
【0026】
次に、図5〜図9を参照して、上記インク噴射装置の製造方法について説明する。
【0027】
図5に示すように、上記の圧電材料板1を構成する4枚のセラミックス材料のグリーンシート1a〜1dの上下面にさらに1枚ずつのグリーンシート1e,1fが積層され、上記の圧電材料板1を構成する部分と追加したグリーンシート1e,1fの間には、分極に用いる共通正電極11および共通グランド電極12がそれぞれ形成される。
【0028】
具体的には、図6に示すように、上から2番目のグリーンシート1aに、共通正電極11として、各液室5の中央部分に対応する張出し部11aと、各張出し部11aを互いに接続するとともに、共通正電極11をグリーンシート1aの端部まで引き出す引出部11bとを、導電性ペースト材料を使用してスクリーン印刷または導電材料の蒸着により形成する。最下層のグリーンシート1fに、共通グランド電極12を、隔壁51と対応する位置に、各液室5に対応した部分を開口12aとして除いて、グリーンシート1aの端部に引き出す引出部12bとともに上記のようにスクリーン印刷または蒸着により形成する。共通正電極11および共通グランド電極12はいずれもAg−Pd系の金属材料からなり、厚みは約0.002mmである。
【0029】
これらの共通正電極11および共通グランド電極12を形成したグリーンシート1a,1fを、電極のない他のグリーンシート1e、1b,1c,1dとともに積層して焼成し、一体化する。なお、図6には、共通グランド電極12の開口12aと、共通正電極11との位置関係を示す。
【0030】
次に、上記の圧電トランスデューサを、130℃程度のシリコンオイルなどの絶縁オイルが満たされた図示しないオイルバス中に浸し、引出部12bを介して共通グランド電極12をグランドGND(0V)に接続し、引出部11bを介して共通正電極11に正の分極用電圧を印加して、張出し部11aと共通グランド電極12との間には、圧電材料板の面方向および厚み方向に対して斜め方向に2.5kV/mm程度の電界を発生させる。図5に示すように、圧電材料板1はこの電界方向にしたがった方向(矢印A)に分極される。
【0031】
その後、図8に示すように、圧電材料板1を両面から研磨し、共通正電極11および共通グランド電極12を含むシート1e,1f部分を取り除く。圧電材料板1には研磨面1Aおよび研磨面1Bが形成される。次に、図9に示すように、圧電材料板1の研磨面1B全体にわたって第1の駆動電極2を、圧電材料板の研磨面1Aの液室5に対応した分極位置に第2の駆動電極3を、それぞれ上記のようにスクリーン印刷または蒸着により形成する。
【0032】
そして、上記のように形成された圧電材料板1と、あらかじめ積層した液室プレート6、スペーサプレート7およびノズルプレート9からなる液室ユニット120とを、第2の駆動電極3および分極部分が液室5に対応するように、接合することにより、インク噴射装置200が作製される。
【0033】
上記のように、第1の実施の形態のインク噴射装置200では、共通正電極11および共通グランド電極12を各液室5に対して共通のパターンとして形成しておき、共通正電極11および共通グランド電極12を利用して、圧電材料板1の分極を行っている。このため、複雑な操作を要することなく、各液室について同時に分極を行うことができる。また、圧電材料板1の分極後に、圧電材料板1に対し研磨加工を施すことにより、共通正電極11および共通グランド電極12を除去している。このため、圧電トランスデューサ100の駆動に際して、内部に残っている分極用の電極を介して駆動電界が漏れるなどして所定の液室5の駆動が他の液室に与える影響(クロストーク)を排除することができる。
【0034】
また、上記のように圧電材料板1の面方向および厚み方向に対して傾斜して分極しているので、圧電材料板1の両表面近くに分極用電極11,12を、圧電材料板1の厚さ方向に互いに重ならないようにして傾斜方向に対向配置して分極を行うことができる。そして、駆動用電極2,3を圧電材料板の両面に対向配置することで、傾斜した分極方向に対して実質的に直交する電界をかけ、少ない電極数で効率よく変形させることができる。
【0035】
なお、圧電材料板1を分極するための共通正電極11および共通グランド電極12を、上記実施の形態のように、セラミックス材料の積層体の内部に形成することで、分極時の放電を少なくして効率よく分極することができるが、外部に形成あるいは外表面に接触させることで分極を行うこともできる。また、共通正電極11と共通グランド電極12に印加する分極用の直流電圧の向きを逆にして分極方向を逆にし、あるいは駆動電極2,3の位置を上下逆に入れ替えて駆動電圧の向きを逆にすることで、圧電材料板1を液室5の容積を減少させるように変形してインクを噴射することも可能である。
【0036】
[第2の実施形態]
以下、図10〜図11を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、前記第1の実施の形態と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0037】
図10に示すように、第2の実施の形態の圧電トランスデューサ102は、圧電材料板21の内部に、分極に用いた共通グランド電極12を残して完成品としている。このように、共通グランド電極12を除去していないが、電極12は各液室5の周囲に位置付けられているため、クロストークに関して大きな影響を与えることなく、前記第1の実施の形態と同様に動作することができる。
【0038】
第2の実施の形態のインク噴射装置の動作は、第1の実施の形態と同様に、第1の駆動電極2をグランドに接続しておき、インクを噴射しようとする液室に対応する第2の駆動電極3に正の駆動電圧を印加する。これにより、第1の駆動電極2および第2の駆動電極3の間に発生する電界の向きと、圧電材料板21の両分極方向とが略直交しているため、圧電材料板21はシェアモードで変形、すなわち両分極部分は液室5のほぼ中央を挟んで対称にそれぞれ平行四辺形状に変形する。この状態は図示しないが、図2と同様である。そして、第2の駆動電極23の電位をグランドGND(0V)に戻すと、圧電材料板21の形状が図10と同様の状態に戻り、液室25から所定量のインク10が噴射される。
【0039】
第2の実施の形態のインク噴射装置の製造方法は、第1の実施の形態とほぼ同じであり、共通正電極11および共通グランド電極12を形成したグリーンシート1a,1fを、電極のない他のグリーンシート1e、1b,1c,1dとともに積層して焼成し、図5の積層体と同じものを製作する。そして、共通グランド電極12および共通正電極11間に上記のように直流電圧を印加し、圧電材料板21の各動作部分を傾斜方向に分極する。第2の実施の形態では、図11に示すように圧電材料板21を上面から研磨し、共通正電極11を含むシート1e部分を取り除き、共通グランド電極12を含むシート1f部分を残す。そして、図9と同様に、圧電材料板21の上面および下面に、第1の駆動電極2、第2の駆動電極3をそれぞれ形成する。
【0040】
[第3の実施形態]
以下、図12〜図18を参照して、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、前記第1の実施の形態と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。図12に示すように、第3の実施の形態の圧電トランスデューサ103は、圧電材料板31の内部に、分極に用いた共通正電極11および共通グランド電極12を残して完成品としている。
【0041】
この圧電材料板31において、図13に示すように、最下層のグリーンシート1fの上の電極12はスルーホール構造12bを介してその下面に引き出される。このスルーホール構造12bは、グリーンシート1fに電極12を形成する際にそのグリーンシート1fにあらかじめ形成した貫通孔に導電性ペースト材料を充填して形成される。
【0042】
また、図14に示すように、2番目のグリーンシート1aの上の各電極11はスルーホール構造11aを介して最上層のグリーンシート1eの上面に引き出される。このスルーホール構造11aは、最上層のグリーンシート1eに、2番目のグリーンシート1a上の各電極11に対応して複数の貫通孔を形成し、これに導電性ペースト材料を充填して形成される。
【0043】
上記のようにスルーホール構造11aを形成したグリーンシート1e、分極用電極11を形成したグリーンシート1a、分極用電極12とスルーホール構造12bを形成したグリーンシート1f、および電極のないグリーンシート1b,1c,1dを第1の実施の形態と同様に積層して焼成し、図15に示す圧電材料板31を製作する。そして図16に示すように、その圧電材料板31の上面に、複数のスルーホール構造11aを相互に接続する引出電極11bを形成し、また、圧電材料板31の下面に、スルーホール構造12bに接続した引出電極(図示せず)を形成する。
【0044】
そして、圧電材料板31の下面に形成した引出電極、スルーホール構造12bを介して電極12をグランドGND(0V)に接続し、上面に形成した引出電極11b、全スルーホール構造11aを介して全電極11に分極用の正電圧を印加し、図5に示すように、電極11と12を結ぶ方向すなわち圧電材料板31の面に沿う方向および板厚方向に対して傾斜して分極する。
【0045】
次に、図17に示すように、圧電材料板31の上面および下面全体に、電極層3Aおよび電極層2Aを、上記引出電極に重ねてスクリーン印刷または蒸着などによってそれぞれ形成する。そして、図18に示すように、電極層3Aを引出電極11bとともにレーザー等で分割し、第2の電極3を形成する。つまり、液室5間の隔壁51に対応する位置の電極層3Aを除去することによって、電極3は各液室5ごとに分離される。電極層2Aも各液室5ごとに分割してもよいが、分割することなく電極層2Aをそのまま第1の電極2とし第1の電極2を全液室5にわたって連続した状態にしておくことが好ましい。
【0046】
このとき、電極2、電極3は、それぞれ内部電極12、内部電極11とスルーホール構造11aを介して接続したままであってもよいが、電極層2A,3Aをスルーホール構造11a,12bの周囲において除去することによって、電気的に分離してもよい。前者の場合、内部電極11は第2の電極3と、内部電極12は第1の電極2とそれぞれ同電位となる。
【0047】
また、上記の電極層3A,2Aを形成する前に、圧電材料板31の上下両面の引出電極を研磨等によって除去するようにしてもよい。また、個別の電極3を各液室5に対応する位置にのみに形成するようにしてもよい。しかし、上記のように電極層3Aを圧電材料板31の上面全体にわたって形成し、各液室5ごとに分離する方法をとることにより、引出電極11bの切断作業も同時に行うことができる。
【0048】
第3の実施の形態のインク噴射装置の動作は、第1の実施の形態と同様に、第1の駆動電極2をグランドに接続しておき、インクを噴射しようとする液室に対応する第2の駆動電極3に正の駆動電圧を印加する。これにより、第1の駆動電極2および第2の駆動電極3の間に発生する電界の向きと、圧電材料板31の両分極方向とが略直交しているため、圧電材料板31はシェアモードで変形、すなわち両分極部分は液室5のほぼ中央を挟んで対称にそれぞれ平行四辺形状に変形する。この状態は図示しないが、図2と同様である。そして、第2の駆動電極23の電位をグランドGND(0V)に戻すと、圧電材料板21の形状が図12と同様の状態に戻り、液室25から所定量のインク10が噴射される。このとき、電極2Aおよび電極3Aを分割することにより、スルーホール構造を介した異なる液室の内部電極間の接続を切断している。このため、液滴噴射装置100の駆動に際して、所定の液室5の駆動が他の液室に与える影響(クロストーク)を排除することができる。
【0049】
第3の実施形態では、引出電極の形成と、電極層2Aあるいは電極層3Aの形成とを別工程としてるが、電極層2Aあるいは電極層3Aを引出電極として利用してもよい。この場合には、引出電極の形成とは別に、再度、上記第1の電極2あるいは第2の電極3の電極層を形成する必要がないため、工程数を削減できる。ただし、分極に際して必要な電界が得られ、かつ分割によって適切な第1の電極2および第2の電極3を形成できるような電極層2Aあるいは電極層3Aの形状を選択する必要がある。
【0050】
[第4の実施の形態]
以下、図19〜図20を参照して、本発明の第4の実施の形態について説明する。なお、前記第1の実施の形態と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。この実施の形態の圧電トランスデューサ104においては、図20に示すように、分極時にグランドGNDに接続される電極112は、各液室5を囲むようにリング状に形成される。したがってグリーンシート1fには、各電極112ごとにスルーホール構造112bが設けられ、そのグリーンシート1fの下面に形成された引出電極(図示せず)により、全電極112がスルーホール構造112bを介して相互に接続される。分極方法を含む製造方法は、前記第3の実施の形態とほぼ同じであり、また、変形動作も同様である。
【0051】
[第5の実施の形態]
以下、図21〜図26を参照して、本発明の第5の実施の形態について説明する。なお、前記第1の実施の形態と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0052】
圧電トランスデューサ105は、上記各実施の形態と同様にシート状の圧電セラミックス層1a〜1fを積層した圧電材料板511からなる。さらに、圧電材料板511は、複数のシート状の圧電セラミックス層1a〜1dを積層して構成され、最上層の圧電セラミックス層1eと2番目の圧電セラミックス層1aとの間に複数に分割された第1の内部電極520a〜520f(個々に区別する必要のないときは520で総称する)、最下層の圧電セラミックス層1fとその上の圧電セラミックス層1dとの間に複数に分割された第2の内部電極530a〜530g(個々に区別する必要のないときは530で総称する)がそれぞれ介挿されている。
【0053】
前記液室5の幅(図において左右方向)方向の中央部には、第1の内部電極のうち2個を間に挟んだ電極520bと520eが配置されていて、かつ隣接する液室5を隔てる隔壁51に対応して、第2の内部電極のうち2個を間に挟んだ電極530a、530d、530gが配置されている。すべての第1の内部正電極520と第2の内部負電極530とは、圧電材料板511の面に沿う方向に互い違いにかつ厚み方向においてほぼ対向するように、配置されている。
【0054】
圧電材料板511は、上記電極520bと電極530a、530dを結ぶ方向、および電極520eと電極530d、530gを結ぶ方向、すなわち圧電材料板511の面に沿う方向および板厚方向に対して傾斜した方向(矢印90で示す)に分極されている。
【0055】
圧電トランスデューサ105は、以下の製造方法によって製造される。
【0056】
図22に示すように、先ず、圧電セラミックス層を形成するための最下層のグリーンシート1fの上面に、分割された第2の内部電極530をスクリーン印刷または蒸着により形成する。各内部電極530は該グリーンシート1fを貫通するスルーホール構造12bにより下面に引き出される。このとき、隔壁51に対応する電極530a、530d、530gとその他の電極530b、530c、530e、530fとは、電極530の長手方向において反対側の端部でそれぞれスルーホール構造12bにより下面に引き出される。
【0057】
その最下層のグリーンシート1fの上に、電極のないグリーンシート1b、1c、1dが積層され、さらに分割された第1の内部電極520がスクリーン印刷蒸着等により形成されたグリーンシート1aが積層される。そして最上層のグリーンシート1eには、各第1の内部電極520に対応する位置にその第1の内部電極520に接続して上面に引き出すスルーホール構造11aが設けられている。
【0058】
各グリーンシート1e、1a、1b、1c、1d、1fを積層して全体を加熱プレスし、公知のように脱脂、焼結を施すことにより、一体の圧電トランスデューサ105を得る。
【0059】
かくして得られた圧電トランスデューサ105に、図23に示すように上面には複数のスルーホール構造11aを介して各第1の内部電極520と電気的に接続する複数の第1の外部電極140を、下面には複数のスルーホール構造12bと電気的に接続する第2の外部電極(図示せず)を、それぞれ銀ペーストの印刷および焼き付け法やスパッタ法などの方法で各スルーホール構造毎に個別に形成する。
【0060】
上記の圧電トランスデューサ105を、各実施の形態と同様に、インク室50の中央部に配置する第1の内部電極520b、520eにスルーホール構造11aを介して接続された第1の外部電極140に図示しない分極電源の正電圧に接続し、隣接する液室5間の隔壁51に配置する第2の内部電極530a、530d、530gにスルーホール構造12bを介して接続された第2の外部電極(図示せず)はグランドGNDに接続することで、分極処理を施す。このとき、上記以外の内部電極520a、520c、520d、520f、530b、530c、530e、530fは電気的にはどこにも接続せずに浮いた状態となっている。これにより、図24に示すように、第1の内部電極層20bと第2の内部電極層530a、530d間、および第1の内部電極520eと第2の内部電極530d、530g間に、矢印590で示すように、ほぼ圧電材料板511の面にほぼ沿う方向(同時に板厚方向に対してもわずか傾斜しているが)に分極される。つまり、この分極は隣接する電極を越えて行われ(電極520bと電極530aとの間の分極についてみれば、電極520aと電極530bを越えて行われる)、隣接する電極どうしが対向する方向(電極520aと電極530aとの対向方向、電極520aと電極530bとの対向方向、電極520bと電極530bとの対向方向)をそれぞれ直交または所定角度で横切っている。
【0061】
このようにして得られた圧電トランスデューサ105を液室形成ユニット120に一体的に組み付けることで、図21に示すようなインク噴射装置200が構成される。
【0062】
以上のように構成されたインク噴射装置200の動作について説明する。図21に示すように、初期状態においては、第1の内部電極520および、第2の内部電極530は全てグランドGNDに接続され、圧電トランスデューサ105はほぼ平坦になっている。また、各液室5内は、インクにて満たされている。
【0063】
所定の印字データにしたがって、1つの液室5に連通するノズル8からインク滴を噴射する場合には、図25に示すようにその室5に対応する第1の内部電極520a、520b、520cに駆動電圧(例えば20V)が印加される。このとき、液室5に対応する第1の内部電極520a、520b、520cと、第2の内部電極530a、530b、530c、530d間に、駆動電界が生じる。
【0064】
上記駆動電界は、圧電材料板511のほぼ厚み方向に生じるのに対し、分極方向は前述のようにほぼ面に沿う方向であるから、実質的に分極方向590とほぼ直角な駆動電界591が印加されて、圧電材料板511の内部電極520bと530aとの間の部分、および内部電極520bと530dとの間の部分は、それぞれ隔壁51の上方部分を支点として、液室5の中央を挟んで対称に平行四辺形状に変形すなわちシェアモードで変形し、液室5内の容積を増大させ、インク供給源からインクを供給する。その後、第1の内部電極520a、520b、520c印加されている電圧を0(V)に戻すと図26に示すように、圧電材料板511が変形前の状態に戻り、液室5内のインクに圧力を加え、ノズル8からインク滴を噴射する。
【0065】
このように、本実施の形態のインク噴射装置200においては、圧電トランスデューサ105内部に内部電極を複数に分割して形成しており、分極時と駆動時とで、電界を印加する内層電極の組み合わせを変えるだけで容易に、分極方向と駆動電界方向とが、ほぼ直交あるいは交差する。したがって、分極電極を除去する工程や駆動電極を新たに形成する工程が必要がない。また、最下層の圧電セラミックス層1fが電極とインクとの接触を避ける絶縁層として機能するので、電極の腐食を防止するための保護膜等を形成しなくてもよく、製造コストが低減される。
【0066】
さらに、電極が内装されているために正電極側とグランド電極側間での放電による圧電トランスデューサ105の破壊も起こらず信頼性が高くなる。また、圧電トランスデューサをインク噴射装置に組み込む前ならば、圧電トランスデューサを再分極することが可能であり、図25のように第2の内部電極530a,530d,530gと530b,530c,530e,530fとを前述のように電極530の長手方向に分離して引き出して別グループにしておけば、組立後に圧電トランスデューサを再分極することも可能である。なお、インクを噴射しようとする液室に対応する電極520a,520b,520cの全てに電圧を印加したが、電極520aと530bとの間、および電極520cと530cの間に任意の方向に電圧を印加するようにしてもよい。
【0067】
[第6の実施の形態]
以下、図27〜図30を参照して、本発明の第6の実施の形態について説明する。なお、前記第5の実施の形態と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0068】
本実施の形態は前記第5の実施の形態とは、分極方向および駆動電界の方向を異にし、圧電シートの積層構造および電極の配置は同じである。すなわち、図28に示すように、すべての第1の内部電極520に接続された第1のスルーホールは図示しない分極電源の正電圧に接続し、すべての第2の内部電極530に接続された第2のスルーホールはグランドGNDに接続して、分極処理を施す。それにより、第1の内部電極520と第2の内部電極530間は、矢印590で示すように、ほぼ圧電材料板61の厚み方向に分極される。
【0069】
インク噴射装置の動作について説明する。図27に示すように、初期状態においては、液室5の幅(図において左右方向)方向の中央部に配置された第1の内部電極520b、520e、および隣接する液室5の隔壁51に対応して配置された第2の内部電極530a、530d、530gは全てグランドGNDに接続され、圧電トランスデューサはほぼ平坦な状態にある。このとき、上記以外の内部電極520a、520c、520d、520f、530b、530c、530e、530fは電気的にはどこにも接続せずに浮いた状態となっている。また、液室5内は、インクにて満たされている。
【0070】
所定の印字データにしたがって、1つの液室5に連通するノズル8からインク滴を噴射する場合には、図29に示すようにその液室5の幅(図において左右方向)方向の中央部に配置された第1の内部電極520bに駆動電圧(例えば20V)が印加される。このとき、第1の内部電極520bと、隣接する液室5の隔壁51に対応して配置された第2の内部電極530a、530dとの間に、それに隣接する電極520a、530bと520c、530cを越えて駆動電界が生じる。図中、圧電材料板61に示されている破線矢印591は駆動電界方向を示している。
【0071】
上記駆動電界は、圧電材料板61のほぼ沿面方向に生じるのに対し、分極方向は前述のようにほぼ厚み方向であるから、圧電材料板61には、実質的に分極方向590とほぼ直交あるいは交差する駆動電界591が印加され、前述の実施の形態と同様に圧電材料板61の液室5に対応する部分のみが、該液室5の外側方向へと変形をする。この後、圧電材料板61が復帰したとき、インク滴560をノズル8から噴射するのは、前記実施の形態と同様である。
【0072】
なお、上記した圧電トランスデューサについて、組立工程などでのハンドリング時に破壊しないように圧電セラミックス層の積層枚数を増やして、圧電トランスデューサの厚みを増やしたり、あるいは図31に示すように、実際には変形しない部分、すなわち隣接する液室5の隔壁51に対応する部分の圧電セラミックス層の積層枚数を増やした補強部位500を設けて、圧電トランスデューサの破壊強度を増加するなどしてもよい。また、インク滴の噴射だけでなく他の液滴の噴射にも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1の実施の形態の液滴噴射装置を示す断面図で、図4のX−X線位置の断面に相当する。
【図2】上記第1の実施の形態の液滴噴射装置の動作状態を説明する断面図である。
【図3】上記第1の実施の形態の液滴噴射装置の動作状態を説明する断面図である。
【図4】上記第1の実施の形態の液滴噴射装置の液室の配置状態を説明する平面図である。
【図5】上記第1の実施の形態の液滴噴射装置に係る圧電トランスデューサの製造工程を示す断面図である。
【図6】上記第1の実施の形態の液滴噴射装置に係る圧電トランスデューサの製造工程を示す図で、グリーンシートの1つの平面図である。
【図7】上記第1の実施の形態の液滴噴射装置に係る圧電トランスデューサの製造工程を示す図で、グリーンシートの他の1つの平面図である。
【図8】上記第1の実施の形態の液滴噴射装置に係る圧電トランスデューサの製造工程を示す断面図である。
【図9】上記第1の実施の形態の液滴噴射装置に係る圧電トランスデューサの製造工程を示す断面図である。
【図10】上記第2の実施の形態の液滴噴射装置を示す断面図である。
【図11】上記第2の実施の形態の液滴噴射装置に係る圧電トランスデューサの製造工程を示す図で、グリーンシートの1つの平面図である。
【図12】上記第3の実施の形態の液滴噴射装置を示す断面図である。
【図13】上記第3の実施の形態の液滴噴射装置に係る圧電トランスデューサの製造工程を示す図で、グリーンシートの1つの平面図である。
【図14】上記第3の実施の形態の液滴噴射装置に係る圧電トランスデューサの製造工程を示す図で、グリーンシートの他の1つの平面図である。
【図15】上記第3の実施の形態の液滴噴射装置に係る圧電トランスデューサの製造工程を示す断面図である。
【図16】上記第3の実施の形態の液滴噴射装置に係る圧電トランスデューサの製造工程を示す図で、圧電トランスデューサの平面図である。
【図17】上記第3の実施の形態の液滴噴射装置に係る圧電トランスデューサの製造工程を示す断面図である。
【図18】上記第3の実施の形態の液滴噴射装置に係る圧電トランスデューサの製造工程を示す断面図である。
【図19】上記第4の実施の形態の液滴噴射装置を示す断面図である。
【図20】上記第4の実施の形態の液滴噴射装置に係る圧電トランスデューサの製造工程を示す図で、グリーンシートの1つの平面図である。
【図21】上記第5の実施の形態の液滴噴射装置を示す断面図である。
【図22】上記第5の実施の形態の液滴噴射装置に係る圧電トランスデューサの製造工程を示す分解斜視図である。
【図23】上記第5の実施の形態の液滴噴射装置に係る圧電トランスデューサの製造工程を示す斜視図である。
【図24】上記第5の実施の形態の液滴噴射装置に係る圧電トランスデューサの製造工程を示す図で、分極工程を示す断面図である。
【図25】上記第5の実施の形態の液滴噴射装置の動作を説明する図である。
【図26】上記第5の実施の形態の液滴噴射装置の動作を説明する図である。
【図27】本発明の第6の実施の形態の液滴噴射装置を示す断面図である。
【図28】上記第6の実施の形態の液滴噴射装置に係る圧電トランスデューサの製造工程を示す図で、分極工程を示す断面図である。
【図29】上記第6の実施の形態の液滴噴射装置の動作を説明する図である。
【図30】上記第6の実施の形態の液滴噴射装置の動作を説明する図である。
【図31】本発明のさらに別の変形例の液滴噴射装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0074】
100 圧電トランスデューサ
5 液室
51 隔壁
8 ノズル
1a〜1f 圧電セラミックス層
2 駆動電極
3 駆動電極
A 分極方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電トランスデューサおよびそれを用いた液滴噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
用紙に文字や画像をドットマトリックス形式で印刷するためのプリントヘッドに圧電式の液滴噴射装置を利用したものが従来から提案されている。これは、圧電トランスデューサの寸法変位によってインクを収容した液室の容積を変化させることにより、その容積減少時にインクをノズルから噴射し、容積増大時にインク供給源から液室内にインクを導入するようにしたもので、ドロップオンデマンド方式と呼ばれている。そして、このような噴射機構を多数互いに近接して配設し、所定の位置の噴射機構からインクを噴射することにより、所望する文字や画像を形成するのである。
【0003】
このような液滴噴射装置として、複数の液室に跨って設けられた圧電材料板の所定の液室に対応する部位のみを局部的に変形させる圧電式の液滴噴射装置が提案されている。圧電材料を変形させるモードとして、例えば米国特許第5,402,159号明細書などに記載されたダイレクトモード、および米国特許第5,266,964号明細書に記載されたシェアモードがある。
【0004】
前者の米国特許第5,402,159号明細書に記載されたものは、複数の積層された圧電セラミックス層の間に正電極と負電極を積層方向に交互にはさみ、正電極と負電極との間のセラミックス層をその正電極と負電極との対向方向に分極した構造で、正電極と負電極に分極方向と同じ方向の電圧を印加することで、セラミックス層が伸長し、液室の容積を変化させ、インクに噴射圧力を加える。
【0005】
また、後者の米国特許第5,266,964号明細書に記載されたものは、複数の積層された圧電セラミックス層の間に複数の正電極をはさみ、またその正電極と積層方向と直交する方向に間隔をおいた位置で複数の負電極をはさみ、正電極群と負電極群との間のセラミックス層をその正電極群と負電極群との対向方向と直交する方向に分極した構造で、正電極群と負電極群に分極方向と直交する方向の電圧を印加することで、セラミックス層が厚みすべり効果により平行四辺形状に変形、すなわちシェアモードで変形し、液室の容積を変化させ、インクに噴射圧力を加える。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の前者のダイレクトモードでは、所定の変形量を得るためには、多数のセラミックス層と電極との積層数と必要とする。また、後者のシェアモードでは、各正電極と負電極がその対向方向とは直交する方向に面を有しているので、両電極の対向面積を擬似的に大きくするために、積層方向に多数の電極を並べなければならない。
【0007】
このため、いずれも多くのセラミックスのグリーンシート上に電極材料をスクリーン印刷あるいは蒸着等して各液室に対応した多数の電極を形成し、そのグリーンシートを電極が積層方向に正確に対応するように積層する必要があり、製作工数が多くなる問題があった。
【0008】
本発明は、少ない電極数でも効率よく所定の変形量を得ることができる圧電トランスデューサおよびそれを用いた液滴噴射装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の圧電トランスデューサは、圧電材料板と、その厚み方向に対向する両側にそれぞれ位置し、前記対向方向とは直交する方向に間隔をおいた複数の電極とを備え、分極時と駆動時とで、前記圧電材料板に電界を印加するために使用する前記電極の組み合わせを変え、分極方向と駆動電界方向とが交差するようにして、駆動時には、前記圧電材料板をシェアモード変形させる。
【0010】
この場合、前記分極時と駆動時とのいずれかは、前記複数の電極のうち隣接する電極を越えた電極どうしを組み合わせて、前記隣接する電極どうしが対向する方向と交差する方向の電界を印加する。
【0011】
また、好ましくは、前記分極方向は前記圧電材料板の面に沿う方向に一致し、前記駆動電界方向は前記圧電材料板の厚み方向に一致する。分極時には、前記圧電材料板の厚み方向に対向しない電極を使用して電界を印加し、その電極間に位置する少なくとも他の電極を使用して前記駆動電界を印加することができる。駆動時には、前記分極時に使用した電極と、その電極間に位置する他の電極とを使用して前記駆動電界を印加することもできる。
【0012】
他の好ましい例では、前記分極方向は前記圧電材料板の厚み方向に一致し、前記駆動電界方向は前記圧電材料板の面に沿う方向に一致する。この場合、分極時には、前記圧電材料板の厚み方向に対向する電極を使用して電界を印加し、前記圧電材料板の厚み方向に対向しない電極を使用して前記駆動電界を印加する。
【0013】
この圧電トランスデューサを液滴噴射装置に用いる場合、圧電トランスデューサを、液体を収容した複数の液室に跨って配置し、前記分極時に使用する電極が、前記液室の中央に対して対称に分極用電界を印加するように位置し、その電界によって生成した各分極方向に対してそれぞれ交差する駆動電界を印加するように、前記駆動時に使用する複数組の電極が前記液室の中央に対して対称に位置する。そして、選択的に各液室の容積を変化させることにより該液室内の液体を液滴として噴射する。
【0014】
この場合好ましくは、前記分極用電界を印加する対の電極のうち一方の電極が、前記複数の液室を相互に隔てる隔壁に対応して位置する。また、前記圧電トランスデューサの前記液室側の面に、前記電極を覆って前記圧電材料板に積層した絶縁層を備えることもできる。
【0015】
上記のように、分極時に、圧電材料板の厚み方向に対向しない電極を使用して電界を印加し、その電極間に位置する少なくとも他の電極を使用して前記駆動電界を印加する圧電トランスデューサを液滴噴射装置に用いる場合、圧電トランスデューサを複数の液室に跨って配置し、前記分極時に使用する電極が、前記各液室の中央と、前記複数の液室を相互に隔てる隔壁とに対応して位置し、前記駆動時に使用する複数組の電極が前記液室の中央に対して対称に位置する。そして、選択的に各液室の容積を変化させることにより該液室内の液体を液滴として噴射する。
【0016】
上記のように、分極時には、前記圧電材料板の厚み方向に対向する電極を使用して電界を印加し、前記圧電材料板の厚み方向に対向しない電極を使用して前記駆動電界を印加する圧電トランスデューサを液滴噴射装置に用いる場合、圧電トランスデューサを複数の液室に跨って配置し、前記駆動時に使用する電極が、前記各液室の中央と前記複数の液室を相互に隔てる隔壁とに対応して位置し、前記分極時に使用する複数組の電極が前記液室の中央に対して対称に位置する。そして、選択的に各液室の容積を変化させることにより該液室内の液体を液滴として噴射する。
【発明の効果】
【0017】
上述したように、本発明の圧電トランスデューサおよび液滴噴射装置によれば、少ない電極数で効率よく変形させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の圧電トランスデューサおよび液滴噴射装置をインク噴射装置に具体化した第1の実施の形態について図1〜図9を参照して説明する。
【0019】
図1に示すように、インク噴射装置200は、圧電トランスデューサ100と液室形成ユニット120とで構成され、液室形成ユニット120は、液室プレート6と、スペーサプレート7と、ノズル8を有するノズルプレート9とで構成されている。
【0020】
インクを収容する液室5は、液室プレート6に穿設した開口の上下を圧電トランスデューサ100とスペーサプレート7とで覆って作られ、図4に示すように、複数行、複数列をなして平面状に配列され、隣接する液室5とは隔壁51で隔てられている。液室5の長さ方向の一端は、スペーサプレート7に穿設した連通孔71を介してノズルプレート9のノズル8に連通し、他端は、図示しないインク供給源に連通している。液室5は、例えば幅(図において左右方向)0.375mm、長さ(図において紙面と直交する方向)2.000mmの大きさで、図において左右方向に0.508mmのピッチ(50DPI)で形成されている。
【0021】
圧電トランスデューサ100は、チタン酸ジルコン酸鉛系(PZT)のセラミックス材料からなる圧電材料板1からなる。さらに、圧電材料板1は、複数のシート状の圧電セラミックス層1a〜1dを積層して構成され、その圧電材料板1の液室側の表面(図1において下面)上に第1の駆動電極2と、液室5と反対側の表面(図1において上面)上に第2の駆動電極3とが形成されている。第1の駆動電極2は、圧電材料板1下面全体に沿って延び各液室5に共通に設けられる。第2の駆動電極3は各液室5に対応して設けられ、各液室5の形状にほぼ対応した形状に形成される。圧電セラミックス層1a〜1dの1層の厚みは0.015mmである。第1および第2の駆動電極2,3はAg−Pd系の金属材料からなり、厚みは約0.002mmである。
【0022】
図1において圧電材料板1の内部に描かれた矢印Aは、圧電材料板1の分極方向を示す。圧電材料板1は各液室5の中央部分から両側の隔壁51に向かう方向につまり中央部分に対して対称に分極されている。それぞれの分極方向は、圧電材料板1の上面および下面に沿う方向でかつ厚み方向に対して傾いているが、圧電材料板1の面方向の成分を有する。第1の駆動電極2と第2の駆動電極3は、液室5に対応する2つの分極部分を上下から挟むように対向している。つまり、圧電材料板1の各液室5に対応する部分が、後述するように変形する部分すなわち動作部分を構成する。
【0023】
第1の駆動電極2と第2の駆動電極3は、この各分極部分のみに対応して分割して設けられててもよいが、上記のように第1の駆動電極2はすべて連続して、第2の駆動電極3は同時に電圧を印加する単位つまり液室ごとに形成することが製造上好ましい。
【0024】
次に、図1〜図3を参照して、液滴を噴射する動作について説明する。図1に示すように、最初に液室5の内部にインクを充填する。このとき、第1の駆動電極2および第2の駆動電極3はいずれもグランドGND(0V)に接続されている。次に、図2に示すように、第1の駆動電極2をグランドGNDに接続したまま、液滴を噴射しようとする液室5の第2の駆動電極3に正の駆動電圧(例えば20V〜30V)を印加する。このとき、第1の駆動電極2および第2の駆動電極3の間に発生する電界Eの向きと、圧電材料板1の分極方向Aとがほぼ直交しているため、液室5に対応する2つの分極部分はそれぞれシェアモードで変形する。つまり、両分極部分は、それぞれ隔壁51の上方部分をほぼ支点とし、かつ液室5の中央を挟んで対称にそれぞれ平行四辺形状に変形して、第2の駆動電極3が形成された圧電材料板1の領域が圧電材料板1の面方向に対して直交する方向、すなわち図2において上方に膨らむように移動し、液室5の容積が増加する。この状態を、このとき生じた圧力波の液室5内での片道伝播時間Tだけ維持する。この容積の増加によって、図示しないインク供給源から液室5にインクが供給される。なお、上記片道伝播時間Tは液室5内の圧力波が、液室5の長手方向(図中、紙面に垂直な方向)に伝播するのに必要な時間であり、液室5の長さLとこの液室5内部のインク中での音速aによりT=L/aと決まる。
【0025】
圧力波の伝播理論によると、上記の電圧の印加からほぼT時間がたつと液室5内の圧力が逆転し、正の圧力に転じるが、このタイミングに合わせてに第1の駆動電極2をグランドGNDに接続したまま第2の駆動電極3の電位をグランドGND(0V)に戻すと、圧電材料板1の形状が図1と同様の変形前の状態に戻り、液室5内のインクに圧力が加えられる。そのとき、前記正に転じた圧力と、圧電材料板1が変形前の状態に戻ることにより発生した圧力とが加え合わされ、比較的高い圧力が液室5に連通するノズル8付近の部分に生じて、図3に示すように、液室5内のインクがノズル8からインク滴10として噴射される。
【0026】
次に、図5〜図9を参照して、上記インク噴射装置の製造方法について説明する。
【0027】
図5に示すように、上記の圧電材料板1を構成する4枚のセラミックス材料のグリーンシート1a〜1dの上下面にさらに1枚ずつのグリーンシート1e,1fが積層され、上記の圧電材料板1を構成する部分と追加したグリーンシート1e,1fの間には、分極に用いる共通正電極11および共通グランド電極12がそれぞれ形成される。
【0028】
具体的には、図6に示すように、上から2番目のグリーンシート1aに、共通正電極11として、各液室5の中央部分に対応する張出し部11aと、各張出し部11aを互いに接続するとともに、共通正電極11をグリーンシート1aの端部まで引き出す引出部11bとを、導電性ペースト材料を使用してスクリーン印刷または導電材料の蒸着により形成する。最下層のグリーンシート1fに、共通グランド電極12を、隔壁51と対応する位置に、各液室5に対応した部分を開口12aとして除いて、グリーンシート1aの端部に引き出す引出部12bとともに上記のようにスクリーン印刷または蒸着により形成する。共通正電極11および共通グランド電極12はいずれもAg−Pd系の金属材料からなり、厚みは約0.002mmである。
【0029】
これらの共通正電極11および共通グランド電極12を形成したグリーンシート1a,1fを、電極のない他のグリーンシート1e、1b,1c,1dとともに積層して焼成し、一体化する。なお、図6には、共通グランド電極12の開口12aと、共通正電極11との位置関係を示す。
【0030】
次に、上記の圧電トランスデューサを、130℃程度のシリコンオイルなどの絶縁オイルが満たされた図示しないオイルバス中に浸し、引出部12bを介して共通グランド電極12をグランドGND(0V)に接続し、引出部11bを介して共通正電極11に正の分極用電圧を印加して、張出し部11aと共通グランド電極12との間には、圧電材料板の面方向および厚み方向に対して斜め方向に2.5kV/mm程度の電界を発生させる。図5に示すように、圧電材料板1はこの電界方向にしたがった方向(矢印A)に分極される。
【0031】
その後、図8に示すように、圧電材料板1を両面から研磨し、共通正電極11および共通グランド電極12を含むシート1e,1f部分を取り除く。圧電材料板1には研磨面1Aおよび研磨面1Bが形成される。次に、図9に示すように、圧電材料板1の研磨面1B全体にわたって第1の駆動電極2を、圧電材料板の研磨面1Aの液室5に対応した分極位置に第2の駆動電極3を、それぞれ上記のようにスクリーン印刷または蒸着により形成する。
【0032】
そして、上記のように形成された圧電材料板1と、あらかじめ積層した液室プレート6、スペーサプレート7およびノズルプレート9からなる液室ユニット120とを、第2の駆動電極3および分極部分が液室5に対応するように、接合することにより、インク噴射装置200が作製される。
【0033】
上記のように、第1の実施の形態のインク噴射装置200では、共通正電極11および共通グランド電極12を各液室5に対して共通のパターンとして形成しておき、共通正電極11および共通グランド電極12を利用して、圧電材料板1の分極を行っている。このため、複雑な操作を要することなく、各液室について同時に分極を行うことができる。また、圧電材料板1の分極後に、圧電材料板1に対し研磨加工を施すことにより、共通正電極11および共通グランド電極12を除去している。このため、圧電トランスデューサ100の駆動に際して、内部に残っている分極用の電極を介して駆動電界が漏れるなどして所定の液室5の駆動が他の液室に与える影響(クロストーク)を排除することができる。
【0034】
また、上記のように圧電材料板1の面方向および厚み方向に対して傾斜して分極しているので、圧電材料板1の両表面近くに分極用電極11,12を、圧電材料板1の厚さ方向に互いに重ならないようにして傾斜方向に対向配置して分極を行うことができる。そして、駆動用電極2,3を圧電材料板の両面に対向配置することで、傾斜した分極方向に対して実質的に直交する電界をかけ、少ない電極数で効率よく変形させることができる。
【0035】
なお、圧電材料板1を分極するための共通正電極11および共通グランド電極12を、上記実施の形態のように、セラミックス材料の積層体の内部に形成することで、分極時の放電を少なくして効率よく分極することができるが、外部に形成あるいは外表面に接触させることで分極を行うこともできる。また、共通正電極11と共通グランド電極12に印加する分極用の直流電圧の向きを逆にして分極方向を逆にし、あるいは駆動電極2,3の位置を上下逆に入れ替えて駆動電圧の向きを逆にすることで、圧電材料板1を液室5の容積を減少させるように変形してインクを噴射することも可能である。
【0036】
[第2の実施形態]
以下、図10〜図11を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、前記第1の実施の形態と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0037】
図10に示すように、第2の実施の形態の圧電トランスデューサ102は、圧電材料板21の内部に、分極に用いた共通グランド電極12を残して完成品としている。このように、共通グランド電極12を除去していないが、電極12は各液室5の周囲に位置付けられているため、クロストークに関して大きな影響を与えることなく、前記第1の実施の形態と同様に動作することができる。
【0038】
第2の実施の形態のインク噴射装置の動作は、第1の実施の形態と同様に、第1の駆動電極2をグランドに接続しておき、インクを噴射しようとする液室に対応する第2の駆動電極3に正の駆動電圧を印加する。これにより、第1の駆動電極2および第2の駆動電極3の間に発生する電界の向きと、圧電材料板21の両分極方向とが略直交しているため、圧電材料板21はシェアモードで変形、すなわち両分極部分は液室5のほぼ中央を挟んで対称にそれぞれ平行四辺形状に変形する。この状態は図示しないが、図2と同様である。そして、第2の駆動電極23の電位をグランドGND(0V)に戻すと、圧電材料板21の形状が図10と同様の状態に戻り、液室25から所定量のインク10が噴射される。
【0039】
第2の実施の形態のインク噴射装置の製造方法は、第1の実施の形態とほぼ同じであり、共通正電極11および共通グランド電極12を形成したグリーンシート1a,1fを、電極のない他のグリーンシート1e、1b,1c,1dとともに積層して焼成し、図5の積層体と同じものを製作する。そして、共通グランド電極12および共通正電極11間に上記のように直流電圧を印加し、圧電材料板21の各動作部分を傾斜方向に分極する。第2の実施の形態では、図11に示すように圧電材料板21を上面から研磨し、共通正電極11を含むシート1e部分を取り除き、共通グランド電極12を含むシート1f部分を残す。そして、図9と同様に、圧電材料板21の上面および下面に、第1の駆動電極2、第2の駆動電極3をそれぞれ形成する。
【0040】
[第3の実施形態]
以下、図12〜図18を参照して、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、前記第1の実施の形態と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。図12に示すように、第3の実施の形態の圧電トランスデューサ103は、圧電材料板31の内部に、分極に用いた共通正電極11および共通グランド電極12を残して完成品としている。
【0041】
この圧電材料板31において、図13に示すように、最下層のグリーンシート1fの上の電極12はスルーホール構造12bを介してその下面に引き出される。このスルーホール構造12bは、グリーンシート1fに電極12を形成する際にそのグリーンシート1fにあらかじめ形成した貫通孔に導電性ペースト材料を充填して形成される。
【0042】
また、図14に示すように、2番目のグリーンシート1aの上の各電極11はスルーホール構造11aを介して最上層のグリーンシート1eの上面に引き出される。このスルーホール構造11aは、最上層のグリーンシート1eに、2番目のグリーンシート1a上の各電極11に対応して複数の貫通孔を形成し、これに導電性ペースト材料を充填して形成される。
【0043】
上記のようにスルーホール構造11aを形成したグリーンシート1e、分極用電極11を形成したグリーンシート1a、分極用電極12とスルーホール構造12bを形成したグリーンシート1f、および電極のないグリーンシート1b,1c,1dを第1の実施の形態と同様に積層して焼成し、図15に示す圧電材料板31を製作する。そして図16に示すように、その圧電材料板31の上面に、複数のスルーホール構造11aを相互に接続する引出電極11bを形成し、また、圧電材料板31の下面に、スルーホール構造12bに接続した引出電極(図示せず)を形成する。
【0044】
そして、圧電材料板31の下面に形成した引出電極、スルーホール構造12bを介して電極12をグランドGND(0V)に接続し、上面に形成した引出電極11b、全スルーホール構造11aを介して全電極11に分極用の正電圧を印加し、図5に示すように、電極11と12を結ぶ方向すなわち圧電材料板31の面に沿う方向および板厚方向に対して傾斜して分極する。
【0045】
次に、図17に示すように、圧電材料板31の上面および下面全体に、電極層3Aおよび電極層2Aを、上記引出電極に重ねてスクリーン印刷または蒸着などによってそれぞれ形成する。そして、図18に示すように、電極層3Aを引出電極11bとともにレーザー等で分割し、第2の電極3を形成する。つまり、液室5間の隔壁51に対応する位置の電極層3Aを除去することによって、電極3は各液室5ごとに分離される。電極層2Aも各液室5ごとに分割してもよいが、分割することなく電極層2Aをそのまま第1の電極2とし第1の電極2を全液室5にわたって連続した状態にしておくことが好ましい。
【0046】
このとき、電極2、電極3は、それぞれ内部電極12、内部電極11とスルーホール構造11aを介して接続したままであってもよいが、電極層2A,3Aをスルーホール構造11a,12bの周囲において除去することによって、電気的に分離してもよい。前者の場合、内部電極11は第2の電極3と、内部電極12は第1の電極2とそれぞれ同電位となる。
【0047】
また、上記の電極層3A,2Aを形成する前に、圧電材料板31の上下両面の引出電極を研磨等によって除去するようにしてもよい。また、個別の電極3を各液室5に対応する位置にのみに形成するようにしてもよい。しかし、上記のように電極層3Aを圧電材料板31の上面全体にわたって形成し、各液室5ごとに分離する方法をとることにより、引出電極11bの切断作業も同時に行うことができる。
【0048】
第3の実施の形態のインク噴射装置の動作は、第1の実施の形態と同様に、第1の駆動電極2をグランドに接続しておき、インクを噴射しようとする液室に対応する第2の駆動電極3に正の駆動電圧を印加する。これにより、第1の駆動電極2および第2の駆動電極3の間に発生する電界の向きと、圧電材料板31の両分極方向とが略直交しているため、圧電材料板31はシェアモードで変形、すなわち両分極部分は液室5のほぼ中央を挟んで対称にそれぞれ平行四辺形状に変形する。この状態は図示しないが、図2と同様である。そして、第2の駆動電極23の電位をグランドGND(0V)に戻すと、圧電材料板21の形状が図12と同様の状態に戻り、液室25から所定量のインク10が噴射される。このとき、電極2Aおよび電極3Aを分割することにより、スルーホール構造を介した異なる液室の内部電極間の接続を切断している。このため、液滴噴射装置100の駆動に際して、所定の液室5の駆動が他の液室に与える影響(クロストーク)を排除することができる。
【0049】
第3の実施形態では、引出電極の形成と、電極層2Aあるいは電極層3Aの形成とを別工程としてるが、電極層2Aあるいは電極層3Aを引出電極として利用してもよい。この場合には、引出電極の形成とは別に、再度、上記第1の電極2あるいは第2の電極3の電極層を形成する必要がないため、工程数を削減できる。ただし、分極に際して必要な電界が得られ、かつ分割によって適切な第1の電極2および第2の電極3を形成できるような電極層2Aあるいは電極層3Aの形状を選択する必要がある。
【0050】
[第4の実施の形態]
以下、図19〜図20を参照して、本発明の第4の実施の形態について説明する。なお、前記第1の実施の形態と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。この実施の形態の圧電トランスデューサ104においては、図20に示すように、分極時にグランドGNDに接続される電極112は、各液室5を囲むようにリング状に形成される。したがってグリーンシート1fには、各電極112ごとにスルーホール構造112bが設けられ、そのグリーンシート1fの下面に形成された引出電極(図示せず)により、全電極112がスルーホール構造112bを介して相互に接続される。分極方法を含む製造方法は、前記第3の実施の形態とほぼ同じであり、また、変形動作も同様である。
【0051】
[第5の実施の形態]
以下、図21〜図26を参照して、本発明の第5の実施の形態について説明する。なお、前記第1の実施の形態と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0052】
圧電トランスデューサ105は、上記各実施の形態と同様にシート状の圧電セラミックス層1a〜1fを積層した圧電材料板511からなる。さらに、圧電材料板511は、複数のシート状の圧電セラミックス層1a〜1dを積層して構成され、最上層の圧電セラミックス層1eと2番目の圧電セラミックス層1aとの間に複数に分割された第1の内部電極520a〜520f(個々に区別する必要のないときは520で総称する)、最下層の圧電セラミックス層1fとその上の圧電セラミックス層1dとの間に複数に分割された第2の内部電極530a〜530g(個々に区別する必要のないときは530で総称する)がそれぞれ介挿されている。
【0053】
前記液室5の幅(図において左右方向)方向の中央部には、第1の内部電極のうち2個を間に挟んだ電極520bと520eが配置されていて、かつ隣接する液室5を隔てる隔壁51に対応して、第2の内部電極のうち2個を間に挟んだ電極530a、530d、530gが配置されている。すべての第1の内部正電極520と第2の内部負電極530とは、圧電材料板511の面に沿う方向に互い違いにかつ厚み方向においてほぼ対向するように、配置されている。
【0054】
圧電材料板511は、上記電極520bと電極530a、530dを結ぶ方向、および電極520eと電極530d、530gを結ぶ方向、すなわち圧電材料板511の面に沿う方向および板厚方向に対して傾斜した方向(矢印90で示す)に分極されている。
【0055】
圧電トランスデューサ105は、以下の製造方法によって製造される。
【0056】
図22に示すように、先ず、圧電セラミックス層を形成するための最下層のグリーンシート1fの上面に、分割された第2の内部電極530をスクリーン印刷または蒸着により形成する。各内部電極530は該グリーンシート1fを貫通するスルーホール構造12bにより下面に引き出される。このとき、隔壁51に対応する電極530a、530d、530gとその他の電極530b、530c、530e、530fとは、電極530の長手方向において反対側の端部でそれぞれスルーホール構造12bにより下面に引き出される。
【0057】
その最下層のグリーンシート1fの上に、電極のないグリーンシート1b、1c、1dが積層され、さらに分割された第1の内部電極520がスクリーン印刷蒸着等により形成されたグリーンシート1aが積層される。そして最上層のグリーンシート1eには、各第1の内部電極520に対応する位置にその第1の内部電極520に接続して上面に引き出すスルーホール構造11aが設けられている。
【0058】
各グリーンシート1e、1a、1b、1c、1d、1fを積層して全体を加熱プレスし、公知のように脱脂、焼結を施すことにより、一体の圧電トランスデューサ105を得る。
【0059】
かくして得られた圧電トランスデューサ105に、図23に示すように上面には複数のスルーホール構造11aを介して各第1の内部電極520と電気的に接続する複数の第1の外部電極140を、下面には複数のスルーホール構造12bと電気的に接続する第2の外部電極(図示せず)を、それぞれ銀ペーストの印刷および焼き付け法やスパッタ法などの方法で各スルーホール構造毎に個別に形成する。
【0060】
上記の圧電トランスデューサ105を、各実施の形態と同様に、インク室50の中央部に配置する第1の内部電極520b、520eにスルーホール構造11aを介して接続された第1の外部電極140に図示しない分極電源の正電圧に接続し、隣接する液室5間の隔壁51に配置する第2の内部電極530a、530d、530gにスルーホール構造12bを介して接続された第2の外部電極(図示せず)はグランドGNDに接続することで、分極処理を施す。このとき、上記以外の内部電極520a、520c、520d、520f、530b、530c、530e、530fは電気的にはどこにも接続せずに浮いた状態となっている。これにより、図24に示すように、第1の内部電極層20bと第2の内部電極層530a、530d間、および第1の内部電極520eと第2の内部電極530d、530g間に、矢印590で示すように、ほぼ圧電材料板511の面にほぼ沿う方向(同時に板厚方向に対してもわずか傾斜しているが)に分極される。つまり、この分極は隣接する電極を越えて行われ(電極520bと電極530aとの間の分極についてみれば、電極520aと電極530bを越えて行われる)、隣接する電極どうしが対向する方向(電極520aと電極530aとの対向方向、電極520aと電極530bとの対向方向、電極520bと電極530bとの対向方向)をそれぞれ直交または所定角度で横切っている。
【0061】
このようにして得られた圧電トランスデューサ105を液室形成ユニット120に一体的に組み付けることで、図21に示すようなインク噴射装置200が構成される。
【0062】
以上のように構成されたインク噴射装置200の動作について説明する。図21に示すように、初期状態においては、第1の内部電極520および、第2の内部電極530は全てグランドGNDに接続され、圧電トランスデューサ105はほぼ平坦になっている。また、各液室5内は、インクにて満たされている。
【0063】
所定の印字データにしたがって、1つの液室5に連通するノズル8からインク滴を噴射する場合には、図25に示すようにその室5に対応する第1の内部電極520a、520b、520cに駆動電圧(例えば20V)が印加される。このとき、液室5に対応する第1の内部電極520a、520b、520cと、第2の内部電極530a、530b、530c、530d間に、駆動電界が生じる。
【0064】
上記駆動電界は、圧電材料板511のほぼ厚み方向に生じるのに対し、分極方向は前述のようにほぼ面に沿う方向であるから、実質的に分極方向590とほぼ直角な駆動電界591が印加されて、圧電材料板511の内部電極520bと530aとの間の部分、および内部電極520bと530dとの間の部分は、それぞれ隔壁51の上方部分を支点として、液室5の中央を挟んで対称に平行四辺形状に変形すなわちシェアモードで変形し、液室5内の容積を増大させ、インク供給源からインクを供給する。その後、第1の内部電極520a、520b、520c印加されている電圧を0(V)に戻すと図26に示すように、圧電材料板511が変形前の状態に戻り、液室5内のインクに圧力を加え、ノズル8からインク滴を噴射する。
【0065】
このように、本実施の形態のインク噴射装置200においては、圧電トランスデューサ105内部に内部電極を複数に分割して形成しており、分極時と駆動時とで、電界を印加する内層電極の組み合わせを変えるだけで容易に、分極方向と駆動電界方向とが、ほぼ直交あるいは交差する。したがって、分極電極を除去する工程や駆動電極を新たに形成する工程が必要がない。また、最下層の圧電セラミックス層1fが電極とインクとの接触を避ける絶縁層として機能するので、電極の腐食を防止するための保護膜等を形成しなくてもよく、製造コストが低減される。
【0066】
さらに、電極が内装されているために正電極側とグランド電極側間での放電による圧電トランスデューサ105の破壊も起こらず信頼性が高くなる。また、圧電トランスデューサをインク噴射装置に組み込む前ならば、圧電トランスデューサを再分極することが可能であり、図25のように第2の内部電極530a,530d,530gと530b,530c,530e,530fとを前述のように電極530の長手方向に分離して引き出して別グループにしておけば、組立後に圧電トランスデューサを再分極することも可能である。なお、インクを噴射しようとする液室に対応する電極520a,520b,520cの全てに電圧を印加したが、電極520aと530bとの間、および電極520cと530cの間に任意の方向に電圧を印加するようにしてもよい。
【0067】
[第6の実施の形態]
以下、図27〜図30を参照して、本発明の第6の実施の形態について説明する。なお、前記第5の実施の形態と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0068】
本実施の形態は前記第5の実施の形態とは、分極方向および駆動電界の方向を異にし、圧電シートの積層構造および電極の配置は同じである。すなわち、図28に示すように、すべての第1の内部電極520に接続された第1のスルーホールは図示しない分極電源の正電圧に接続し、すべての第2の内部電極530に接続された第2のスルーホールはグランドGNDに接続して、分極処理を施す。それにより、第1の内部電極520と第2の内部電極530間は、矢印590で示すように、ほぼ圧電材料板61の厚み方向に分極される。
【0069】
インク噴射装置の動作について説明する。図27に示すように、初期状態においては、液室5の幅(図において左右方向)方向の中央部に配置された第1の内部電極520b、520e、および隣接する液室5の隔壁51に対応して配置された第2の内部電極530a、530d、530gは全てグランドGNDに接続され、圧電トランスデューサはほぼ平坦な状態にある。このとき、上記以外の内部電極520a、520c、520d、520f、530b、530c、530e、530fは電気的にはどこにも接続せずに浮いた状態となっている。また、液室5内は、インクにて満たされている。
【0070】
所定の印字データにしたがって、1つの液室5に連通するノズル8からインク滴を噴射する場合には、図29に示すようにその液室5の幅(図において左右方向)方向の中央部に配置された第1の内部電極520bに駆動電圧(例えば20V)が印加される。このとき、第1の内部電極520bと、隣接する液室5の隔壁51に対応して配置された第2の内部電極530a、530dとの間に、それに隣接する電極520a、530bと520c、530cを越えて駆動電界が生じる。図中、圧電材料板61に示されている破線矢印591は駆動電界方向を示している。
【0071】
上記駆動電界は、圧電材料板61のほぼ沿面方向に生じるのに対し、分極方向は前述のようにほぼ厚み方向であるから、圧電材料板61には、実質的に分極方向590とほぼ直交あるいは交差する駆動電界591が印加され、前述の実施の形態と同様に圧電材料板61の液室5に対応する部分のみが、該液室5の外側方向へと変形をする。この後、圧電材料板61が復帰したとき、インク滴560をノズル8から噴射するのは、前記実施の形態と同様である。
【0072】
なお、上記した圧電トランスデューサについて、組立工程などでのハンドリング時に破壊しないように圧電セラミックス層の積層枚数を増やして、圧電トランスデューサの厚みを増やしたり、あるいは図31に示すように、実際には変形しない部分、すなわち隣接する液室5の隔壁51に対応する部分の圧電セラミックス層の積層枚数を増やした補強部位500を設けて、圧電トランスデューサの破壊強度を増加するなどしてもよい。また、インク滴の噴射だけでなく他の液滴の噴射にも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1の実施の形態の液滴噴射装置を示す断面図で、図4のX−X線位置の断面に相当する。
【図2】上記第1の実施の形態の液滴噴射装置の動作状態を説明する断面図である。
【図3】上記第1の実施の形態の液滴噴射装置の動作状態を説明する断面図である。
【図4】上記第1の実施の形態の液滴噴射装置の液室の配置状態を説明する平面図である。
【図5】上記第1の実施の形態の液滴噴射装置に係る圧電トランスデューサの製造工程を示す断面図である。
【図6】上記第1の実施の形態の液滴噴射装置に係る圧電トランスデューサの製造工程を示す図で、グリーンシートの1つの平面図である。
【図7】上記第1の実施の形態の液滴噴射装置に係る圧電トランスデューサの製造工程を示す図で、グリーンシートの他の1つの平面図である。
【図8】上記第1の実施の形態の液滴噴射装置に係る圧電トランスデューサの製造工程を示す断面図である。
【図9】上記第1の実施の形態の液滴噴射装置に係る圧電トランスデューサの製造工程を示す断面図である。
【図10】上記第2の実施の形態の液滴噴射装置を示す断面図である。
【図11】上記第2の実施の形態の液滴噴射装置に係る圧電トランスデューサの製造工程を示す図で、グリーンシートの1つの平面図である。
【図12】上記第3の実施の形態の液滴噴射装置を示す断面図である。
【図13】上記第3の実施の形態の液滴噴射装置に係る圧電トランスデューサの製造工程を示す図で、グリーンシートの1つの平面図である。
【図14】上記第3の実施の形態の液滴噴射装置に係る圧電トランスデューサの製造工程を示す図で、グリーンシートの他の1つの平面図である。
【図15】上記第3の実施の形態の液滴噴射装置に係る圧電トランスデューサの製造工程を示す断面図である。
【図16】上記第3の実施の形態の液滴噴射装置に係る圧電トランスデューサの製造工程を示す図で、圧電トランスデューサの平面図である。
【図17】上記第3の実施の形態の液滴噴射装置に係る圧電トランスデューサの製造工程を示す断面図である。
【図18】上記第3の実施の形態の液滴噴射装置に係る圧電トランスデューサの製造工程を示す断面図である。
【図19】上記第4の実施の形態の液滴噴射装置を示す断面図である。
【図20】上記第4の実施の形態の液滴噴射装置に係る圧電トランスデューサの製造工程を示す図で、グリーンシートの1つの平面図である。
【図21】上記第5の実施の形態の液滴噴射装置を示す断面図である。
【図22】上記第5の実施の形態の液滴噴射装置に係る圧電トランスデューサの製造工程を示す分解斜視図である。
【図23】上記第5の実施の形態の液滴噴射装置に係る圧電トランスデューサの製造工程を示す斜視図である。
【図24】上記第5の実施の形態の液滴噴射装置に係る圧電トランスデューサの製造工程を示す図で、分極工程を示す断面図である。
【図25】上記第5の実施の形態の液滴噴射装置の動作を説明する図である。
【図26】上記第5の実施の形態の液滴噴射装置の動作を説明する図である。
【図27】本発明の第6の実施の形態の液滴噴射装置を示す断面図である。
【図28】上記第6の実施の形態の液滴噴射装置に係る圧電トランスデューサの製造工程を示す図で、分極工程を示す断面図である。
【図29】上記第6の実施の形態の液滴噴射装置の動作を説明する図である。
【図30】上記第6の実施の形態の液滴噴射装置の動作を説明する図である。
【図31】本発明のさらに別の変形例の液滴噴射装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0074】
100 圧電トランスデューサ
5 液室
51 隔壁
8 ノズル
1a〜1f 圧電セラミックス層
2 駆動電極
3 駆動電極
A 分極方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電材料板と、その厚み方向に対向する両側にそれぞれ位置し、前記対向方向とは直交する方向に間隔をおいた複数の電極とを備え、
分極時と駆動時とで、前記圧電材料板に電界を印加するために使用する前記電極の組み合わせを変え、分極方向と駆動電界方向とが交差するようにして、駆動時には、前記圧電材料板をシェアモード変形させるようにしたことを特徴とする圧電トランスデューサ。
【請求項2】
前記分極時と駆動時とのいずれかは、前記複数の電極のうち隣接する電極を越えた電極どうしを組み合わせて、前記隣接する電極どうしが対向する方向と交差する方向の電界を印加することを特徴とする請求項1に記載の圧電トランスデューサ。
【請求項3】
前記分極方向は前記圧電材料板の面に沿う方向に一致し、前記駆動電界方向は前記圧電材料板の厚み方向に一致することを特徴とする請求項1または2に記載の圧電トランスデューサ。
【請求項4】
前記分極時には、前記圧電材料板の厚み方向に対向しない電極を使用して電界を印加し、その電極間に位置する少なくとも他の電極を使用して前記駆動電界を印加することを特徴とする請求項3に記載の圧電トランスデューサ。
【請求項5】
前記駆動時には、前記分極時に使用した電極と、その電極間に位置する他の電極とを使用して前記駆動電界を印加することを特徴とする請求項3に記載の圧電トランスデューサ。
【請求項6】
前記分極方向は前記圧電材料板の厚み方向に一致し、前記駆動電界方向は前記圧電材料板の面に沿う方向に一致することを特徴とする請求項1または2に記載の圧電トランスデューサ。
【請求項7】
前記分極時には、前記圧電材料板の厚み方向に対向する電極を使用して電界を印加し、前記圧電材料板の厚み方向に対向しない電極を使用して前記駆動電界を印加することを特徴とする請求項6に記載の圧電トランスデューサ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかの圧電トランスデューサを、液体を収容した複数の液室に跨って配置し、選択的に各液室の容積を変化させることにより該液室内の液体を液滴として噴射する液滴噴射装置において、
前記分極時に使用する電極が、前記液室の中央に対して対称に分極用電界を印加するように位置し、その電界によって生成した各分極方向に対してそれぞれ交差する駆動電界を印加するように、前記駆動時に使用する複数組の電極が前記液室の中央に対して対称に位置することを特徴とする液滴噴射装置。
【請求項9】
前記分極用電界を印加する対の電極のうち一方の電極が、前記複数の液室を相互に隔てる隔壁に対応して位置することを特徴とする請求項8に記載の液滴噴射装置。
【請求項10】
前記圧電トランスデューサの前記液室側の面に、前記電極を覆って前記圧電材料板に積層した絶縁層を備えることを特徴とする請求項8または9に記載の液滴噴射装置。
【請求項11】
請求項4の圧電トランスデューサを複数の液室に跨って配置し、選択的に各液室の容積を変化させることにより該液室内の液体を液滴として噴射する液滴噴射装置において、
前記分極時に使用する電極が、前記各液室の中央と、前記複数の液室を相互に隔てる隔壁とに対応して位置し、前記駆動時に使用する複数組の電極が前記液室の中央に対して対称に位置することを特徴とする液滴噴射装置。
【請求項12】
請求項7の圧電トランスデューサを複数の液室に跨って配置し、選択的に各液室の容積を変化させることにより該液室内の液体を液滴として噴射する液滴噴射装置において、
前記駆動時に使用する電極が、前記各液室の中央と前記複数の液室を相互に隔てる隔壁とに対応して位置し、前記分極時に使用する複数組の電極が前記液室の中央に対して対称に位置することを特徴とする液滴噴射装置。
【請求項1】
圧電材料板と、その厚み方向に対向する両側にそれぞれ位置し、前記対向方向とは直交する方向に間隔をおいた複数の電極とを備え、
分極時と駆動時とで、前記圧電材料板に電界を印加するために使用する前記電極の組み合わせを変え、分極方向と駆動電界方向とが交差するようにして、駆動時には、前記圧電材料板をシェアモード変形させるようにしたことを特徴とする圧電トランスデューサ。
【請求項2】
前記分極時と駆動時とのいずれかは、前記複数の電極のうち隣接する電極を越えた電極どうしを組み合わせて、前記隣接する電極どうしが対向する方向と交差する方向の電界を印加することを特徴とする請求項1に記載の圧電トランスデューサ。
【請求項3】
前記分極方向は前記圧電材料板の面に沿う方向に一致し、前記駆動電界方向は前記圧電材料板の厚み方向に一致することを特徴とする請求項1または2に記載の圧電トランスデューサ。
【請求項4】
前記分極時には、前記圧電材料板の厚み方向に対向しない電極を使用して電界を印加し、その電極間に位置する少なくとも他の電極を使用して前記駆動電界を印加することを特徴とする請求項3に記載の圧電トランスデューサ。
【請求項5】
前記駆動時には、前記分極時に使用した電極と、その電極間に位置する他の電極とを使用して前記駆動電界を印加することを特徴とする請求項3に記載の圧電トランスデューサ。
【請求項6】
前記分極方向は前記圧電材料板の厚み方向に一致し、前記駆動電界方向は前記圧電材料板の面に沿う方向に一致することを特徴とする請求項1または2に記載の圧電トランスデューサ。
【請求項7】
前記分極時には、前記圧電材料板の厚み方向に対向する電極を使用して電界を印加し、前記圧電材料板の厚み方向に対向しない電極を使用して前記駆動電界を印加することを特徴とする請求項6に記載の圧電トランスデューサ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかの圧電トランスデューサを、液体を収容した複数の液室に跨って配置し、選択的に各液室の容積を変化させることにより該液室内の液体を液滴として噴射する液滴噴射装置において、
前記分極時に使用する電極が、前記液室の中央に対して対称に分極用電界を印加するように位置し、その電界によって生成した各分極方向に対してそれぞれ交差する駆動電界を印加するように、前記駆動時に使用する複数組の電極が前記液室の中央に対して対称に位置することを特徴とする液滴噴射装置。
【請求項9】
前記分極用電界を印加する対の電極のうち一方の電極が、前記複数の液室を相互に隔てる隔壁に対応して位置することを特徴とする請求項8に記載の液滴噴射装置。
【請求項10】
前記圧電トランスデューサの前記液室側の面に、前記電極を覆って前記圧電材料板に積層した絶縁層を備えることを特徴とする請求項8または9に記載の液滴噴射装置。
【請求項11】
請求項4の圧電トランスデューサを複数の液室に跨って配置し、選択的に各液室の容積を変化させることにより該液室内の液体を液滴として噴射する液滴噴射装置において、
前記分極時に使用する電極が、前記各液室の中央と、前記複数の液室を相互に隔てる隔壁とに対応して位置し、前記駆動時に使用する複数組の電極が前記液室の中央に対して対称に位置することを特徴とする液滴噴射装置。
【請求項12】
請求項7の圧電トランスデューサを複数の液室に跨って配置し、選択的に各液室の容積を変化させることにより該液室内の液体を液滴として噴射する液滴噴射装置において、
前記駆動時に使用する電極が、前記各液室の中央と前記複数の液室を相互に隔てる隔壁とに対応して位置し、前記分極時に使用する複数組の電極が前記液室の中央に対して対称に位置することを特徴とする液滴噴射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公開番号】特開2008−5700(P2008−5700A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−246970(P2007−246970)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【分割の表示】特願2002−80286(P2002−80286)の分割
【原出願日】平成14年3月22日(2002.3.22)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【分割の表示】特願2002−80286(P2002−80286)の分割
【原出願日】平成14年3月22日(2002.3.22)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
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