説明

圧電振動デバイスおよび圧電振動デバイスの製造方法

【課題】 金属バンプを介した容器と圧電振動素子や電子部品素子との接合信頼性を向上させた圧電振動デバイスと当該圧電振動デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 水晶発振器1は、水晶振動素子3と集積回路素子4を容器2に収容し、容器2に蓋5を接合することにより、水晶振動素子3および集積回路素子4を気密に封止した構成となっている。容器2の内底面22には凹部を有する電極パッド10が形成され、集積回路素子4の接続端子上には断面視凸状の金属バンプBが配され、金属バンプBの一部が前記凹部の壁面に対応するように埋入した状態で集積回路素子4と容器2とが接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動デバイスと当該圧電振動デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶発振器等の圧電振動デバイスは、これらが実装される各種電子機器の超小型化または薄型化の進行により、超小型(例えば平面視矩形の圧電振動デバイスの外形寸法が2.0mm×1.6mm以下)のものが求められるようになってきている。
例えば一般的な水晶発振器の場合、水晶振動片を励振させるための電極が形成された水晶振動素子や集積回路素子等の電子部品素子と、これらの電子部品素子を収容する凹部を備えた箱状の容器と、前記凹部を封止する薄板状の蓋が主要構成部材となっている。
【0003】
例えば前記集積回路素子(以下、ICと表記)を容器の前記凹部の内底面に接合する方法として、金属バンプ(以下、バンプと略記)を用いた接合方法が知られている。以下その一例を挙げる。まずICの一主面側の複数の接続端子にバンプを配しておく。前記バンプは周知のスタッドバンプであり、曲面を有する台座部分とその上部の突起部分とからなっている。
【0004】
一方、容器凹部の内底面に、ICの複数の接続端子に対応した複数の電極パッドを形成する。電極パッドは例えばタングステン層をスクリーン印刷技術を用いて形成し、その表面にメッキ処理が施される。そしてICの複数の接続端子上にワイヤボンダを用いて複数のバンプを一対一で形成しておき、前記電極パッド上に当該バンプが対向するようにしてICを容器凹部の内底面上に位置決め載置する。そして加圧加熱しながら超音波を印加することにより、バンプと電極パッド間に金属拡散を生じさせてICと容器凹部の内底面とが接合される。このような接合方法はいわゆるFCB法(Flip Chip Bonding)と呼ばれる工法である。このようにバンプを介してICを容器の内底面に接合する形態の圧電振動デバイスは例えば特許文献1乃至2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−112268号
【特許文献2】特許第3678148号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら前述のようにICと電極パッドとを接合する場合、電極パッドの上面は巨視的には略平坦な状態であるが微視的には中央部分が僅かに盛り上がった形状となっているため、接合後のバンプと電極パッドの境界面のうち、バンプの周縁部分が接合されにくくなる。これを図示したものが図8である。図8に示すようにバンプの周縁部分と電極パッドとの間には接合されていない領域(隙間d)が発生してしまう。これはICと容器に形成された電極パッドとの接合に限られるものではなく、サーミスタやダイオード等の電子部品素子の各種接続端子にバンプを配し、容器に形成された電極パッドと接合する場合や、水晶振動素子の接続端子にバンプを配し、容器に形成された電極パッドと接合する場合においても同様に前記隙間が発生してしまう。このようにバンプの周縁部分と電極パッドとの間に前記隙間が発生すると、外部要因等によりバンプの剥がれ等の問題が生じるおそれがある。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、金属バンプを介した容器と圧電振動素子や電子部品素子との接合信頼性を向上させた圧電振動デバイスと当該圧電振動デバイスの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、圧電振動素子と電子部品素子とを容器に収容し、当該容器に蓋を接合することにより、少なくとも圧電振動素子を気密に封止した圧電振動デバイスであって、前記容器には、圧電振動素子と電子部品素子の各々に設けられた複数の接続端子に対応した複数の電極パッドが形成されてなり、当該複数の電極パッドのうち、圧電振動素子と対応した電極パッドと、電子部品素子と対応した電極パッドの、いずれか一方または両方の電極パッドに凹部がそれぞれ形成され、前記複数の接続端子のうち、前記凹部が形成された電極パッドと対応した接続端子上に断面視凸状の金属バンプが配され、前記金属バンプの一部が前記凹部の壁面に対応するように埋入した状態で、圧電振動素子と電子部品素子のいずれか一方または両方が容器と接合された圧電振動デバイスとなっている。
【0009】
前記圧電振動デバイスは、圧電振動素子と電子部品素子とを収容する容器に、圧電振動素子と電子部品素子の各々に設けられた複数の接続端子に対応した複数の電極パッドが形成され、当該複数の電極パッドのうち、圧電振動素子と対応した電極パッドと、電子部品素子と対応した電極パッドの、いずれか一方または両方の電極パッドに凹部がそれぞれ形成され、前記複数の接続端子のうち、前記凹部が形成された電極パッドと対応した接続端子上には断面視凸状の金属バンプが配され、前記凹部が形成された電極パッドに前記金属バンプが対向するように圧電振動素子と電子部品素子のいずれか一方または両方を前記凹部が形成された電極パッドに位置決め載置した後、前記金属バンプの一部が前記凹部の壁面形状に対応し、かつ凹部内に埋入した状態で圧電振動素子と電子部品素子のいずれか一方または両方を容器に接合し、水晶振動素子と電子部品素子を容器内に接合した後、容器に蓋を接合することによって少なくとも水晶振動素子を気密に封止した圧電振動デバイスである。
【0010】
また上記目的を達成するために本発明は、圧電振動素子を容器に収容し、当該容器に蓋を接合することにより、圧電振動素子を気密に封止した圧電振動デバイスであって、
前記容器には圧電振動素子に設けられた複数の接続端子に対応した複数の電極パッドが形成され、当該複数の電極パッドに凹部が形成されてなり、前記電極パッドと対応した接続端子上に断面視凸状の金属バンプが配され、当該金属バンプの一部が前記凹部の壁面に対応するように埋入した状態で圧電振動素子と容器が接合された圧電振動デバイスとなっている。
【0011】
上記した圧電振動デバイスによれば、前記凹部を有する電極パッドと断面視凸状の金属バンプとの接合前の状態において、当該金属バンプが電極パッドの凹部の壁面形状に対応していない状態であっても、接合後には金属バンプの一部が前記凹部の壁面に対応するように埋入した状態となっている。これにより、前記凹部を有しない電極パッドよりも金属バンプとの接触領域を拡大することができる。なお圧電振動素子以外に電子部品素子も容器に収容される圧電振動デバイスの場合、電子部品素子としては集積回路素子やサーミスタ、ダイオード、コンデンサ、抵抗等のチップ部品が該当し、これらの電子部品素子に設けられる複数の接続端子上に断面視凸状の金属バンプを配することができる。
【0012】
また、上記圧電振動デバイスによれば、電極パッドと金属バンプとが嵌め合うようにして接合される。そして前記金属バンプの一部が前記凹部の壁面に対応するように埋入した状態で電極パッドと金属バンプとが接合されるため、金属バンプの周縁部分が接合されやすくなり、当該周縁部分と電極パッドとの間の接合されていない領域(隙間)の発生を防止することができる。これにより、外部要因等による金属バンプの剥がれ等を防止することができる。電極パッドと金属バンプとが接合されることによって容器と圧電振動素子とが、あるいは容器と圧電振動素子と電子部品素子のいずれか一方または両方とが接合される。
【0013】
また、圧電振動素子と電子部品素子のいずれか一方または両方に配される金属バンプは、電極パッドの凹部の壁面に対応した断面視凸状となっているため、当該凹部の底面だけでなく側面も金属バンプとの接合に寄与することになる。例えば前記接合をFCB法を用いて行う場合は、前記凹部の側面が存在することによって、超音波のエネルギーの拡散が抑制される。これによって、より確実に圧電振動素子と容器とが、あるいは圧電振動素子と電子部品素子のいずれか一方または両方と容器とが接合される。
【0014】
さらに前述の構成によれば、前記金属バンプの一部が前記凹部の壁面に対応するように埋入することによって、圧電振動素子と電子部品素子のいずれか一方または両方に水平方向の応力が働いた際に当該埋入部分が楔のように機能する,いわゆるアンカー効果が働く。
【0015】
また上記目的を達成するために、前記凹部が形成された電極パッドが台座部と土手部とで構成され、前記土手部は前記台座部の上面中央の周囲に積層されるとともに、台座部の高さよりも高く形成され、前記台座部と前記土手部によって前記凹部が形成されていてもよい。
【0016】
上記構成によれば、前記電極パッドの凹部を容易に形成することができる。例えば前記電極パッドの形状をセラミック基材の表面にメタライズ加工を施すことによって成形する場合、前記台座部を最初にスクリーン印刷技術を用いて容器基材(圧電振動素子と電子部品素子のいずれか一方または両方が搭載される領域)に形成し、その後に台座部の高さ(厚み)よりも高くなる(厚くなる)土手部を台座部の上面中央の周囲にスクリーン印刷によって積層することで凹部を形成することができる。なお前記土手部の一部が台座部からはみ出して形成されていてもよい。つまり断面視において台座部の上面のうち、当該上面中央以外の領域から台座部の周縁に隣接する容器基材に跨って形成されていてもよい。本構成の場合、前記台座部の上面中央の領域が凹部の底面に相当し、台座部の上面中央の領域との境界面となる土手部が凹部の側面に相当することになる。
【0017】
また前述の構成によれば、圧電振動素子と電子部品素子のいずれか一方または両方の素子の接続端子上に配される断面視凸状の金属バンプは、凹部が形成された電極パッドの凹部壁面に対応しているため、当該凹部の底面だけでなく側面である前記土手部も金属バンプとの接合に寄与することになる。例えば前記接合をFCB法を用いて行う場合、前記凹部の側面となる土手部が存在することによって、超音波のエネルギーの拡散が抑制される。これによって、より確実に圧電振動素子と容器とが、あるいは圧電振動素子と電子部品素子のいずれか一方または両方と容器とが接合される。
【0018】
また上記目的を達成するために、前記金属バンプが、前記凹部が形成された電極パッドよりも軟質の材料で構成され、前記凹部の側面の形状に対応するように金属バンプの一部が凹部に埋入した状態で圧電振動素子と容器とが、あるいは圧電振動素子と電子部品素子のいずれか一方または両方と容器とが接合されていてもよい。
【0019】
上記構成によれば、金属バンプが電極パッドよりも軟質の材料(例えば金のように延性・展性に富んだ金属)で構成されているため、例えばFCB法による接合の場合、金属バンプの一部が電極パッドの凹部の形状にならうようにして凹部に埋入されやすくなる。つまり凹部の底面だけでなく側面へも金属バンプの一部が埋入しやすくなる。これにより金属バンプの周縁部分が接合されやすくなり、当該周縁部分と電極パッドとの間の接合されていない領域(隙間)の発生を防止することができる。なお前記金属バンプの材料は金に限られるものではなく、電極パッドよりも軟質の,金以外の材料であってもよい。
【0020】
上記目的を達成するために本発明は、圧電振動素子と電子部品素子とを容器に収容し、当該容器に蓋を接合することにより、少なくとも圧電振動素子を気密に封止した圧電振動デバイスの製造方法であって、前記容器には、圧電振動素子と電子部品素子の各々に設けられた複数の接続端子に対応した複数の電極パッドが形成されてなり、当該複数の電極パッドのうち、圧電振動素子と対応した電極パッドと、電子部品素子と対応した電極パッドの、いずれか一方または両方の電極パッドに、台座部と土手部で構成される凹部をそれぞれ形成する電極パッド形成工程と、前記複数の接続端子のうち、前記凹部が形成された電極パッドと対応した接続端子上に断面視凸状の金属バンプが配するバンプ形成工程と、前記金属バンプの一部が前記凹部の壁面に対応して埋入するように圧電振動素子と電子部品素子のいずれか一方または両方を、FCB法によって容器と接合する接合工程とを含み、前記電極パッド形成工程はさらに、台座部を形成する第1形成工程と、台座部の周囲に、台座部の高さよりも高い土手部を積層することによって前記凹部を形成する第2形成工程と、からなる圧電振動デバイスの製造方法となっている。
【0021】
上記製造方法によれば、金属バンプと電極パッドとが嵌め合うようにして接合される。そして金属バンプの一部が前記凹部の壁面に対応して埋入するように金属バンプと電極パッドとが接合されるため、金属バンプの周縁部分が接合されやすくなり、当該周縁部分と電極パッドとの間の接合されていない領域(隙間)の発生を防止することができる。これにより、外部要因等による金属バンプの剥がれ等を防止することができる。
【0022】
また、圧電振動素子と電子部品素子のいずれか一方または両方に配される金属バンプは、電極パッドの凹部の壁面に対応した断面視凸状となっているため、当該凹部の底面だけでなく側面である前記土手部も金属バンプとの接合に寄与することになる。例えば前記接合をFCB法を用いて行う場合は、前記凹部の側面となる土手部が存在することによって、超音波のエネルギーの拡散が抑制される。これによって、より確実に圧電振動素子と電子部品素子のいずれか一方または両方と容器とが接合される。
【0023】
さらに上記製造方法によれば、前記金属バンプの一部が前記凹部の壁面に対応するように埋入することによって、圧電振動素子と電子部品素子のいずれか一方または両方に水平方向の応力が働いた際に当該埋入部分が前述のアンカー効果を有することになる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように本発明によれば、金属バンプを介した容器と圧電振動素子や電子部品素子との接合信頼性を向上させた圧電振動デバイスと当該圧電振動デバイスの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る水晶発振器の断面模式図
【図2】本発明の実施形態に係る水晶発振器の容器の上面模式図
【図3】本発明の実施形態に係る電極パッドの断面模式図
【図4】本発明の実施形態に係る水晶発振器の製造方法を表す部分断面図
【図5】本発明の実施形態に係る水晶発振器の製造方法を表す部分断面図
【図6】本発明の実施形態の変形例を示す電極パッドの断面模式図
【図7】本発明のその他の適用例を示す水晶発振器の断面模式図
【図8】従来の実施形態に係る水晶発振器の部分断面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明に係る圧電振動デバイスとして水晶発振器を例に挙げて説明する。まず水晶発振器の完成品について説明した後、本発明に係る水晶発振器の製造方法について説明する。
【0027】
本発明の実施形態に係る水晶発振器の完成品について図1乃至2を用いて説明する。図1は本発明の実施形態に係る水晶発振器の断面模式図であり、図2は本発明の実施形態に係る水晶発振器の容器の上面模式図であり、図2では集積回路素子と水晶振動素子が搭載された状態を示すために点線と一点鎖線で各々を表示している。なお図1において水晶振動素子の表裏主面に形成される各種電極および、容器の内部配線導体、集積回路素子の各種接続端子と金属バンプを介して接合される容器の電極パターンの記載は省略している。
【0028】
図1に示す水晶発振器1は表面実装型の水晶発振器であり、平面視では略矩形となっている。本実施形態において水晶発振器1の平面視の外形寸法は2.0mm×1.6mmとなっている。水晶発振器1は、水晶振動素子3の収容空間9を有する箱状の容器2と、接合材Sを介して容器2の内部に接合される水晶振動素子3と、金属バンプBを介して容器内底面22に接合される集積回路素子4(IC)と、収容空間9を気密に封止する平板状の蓋5が主な構成部材となっている。
【0029】
図1において容器2はアルミナからなる3層のセラミックグリーンシート(以下、単にシートと記載)の積層体であり、焼成によって一体成形されている。容器2は水晶振動素子3および集積回路素子4を収容するための収容空間9を有しており、収容空間9の周囲は環状の堤部20が形成されている。そして収容空間9の上方に水晶振動素子3が収容され、水晶振動素子3の下方の空間に集積回路素子4が収容される。なお容器2のシートの積層数は3層以外であってもよい。また容器2の基材はセラミックに限定されるものではなく、セラミック以外の材料を使用してもよい。例えばガラスや水晶を用いることも可能である。
【0030】
図2に示すように収容空間9には段部21が平面視方形に形成されており、段部21の一短辺側には一対の搭載パッド8,8が並列して形成されている。搭載パッド8はタングステンを印刷焼成した後、表面に金メッキ処理が施されている。また搭載パッド8は容器底面(裏面)に形成された外部接続端子7と、容器内部の内部配線導体(図示省略)を介して電気的に接続されている。なお、搭載パッド8と外部接続端子7との電気的接続は容器2の外周上下部の4角にキャスタレーションを形成することによって行ってもよい。
【0031】
容器2の内底面22には集積回路素子4の複数の各種接続端子(図示省略)と金属バンプBを介して接合される各電極パッド10が形成されている(図1参照)。電極パッド10は図示しない電極パターンの端部となっている。集積回路素子4の各種接続端子のうち、2つの端子は前記電極パターンおよび前述の内部配線導体を経由して搭載パッド8と電気的に接続されており、接合材Sによって最終的に水晶振動素子3に形成された励振電極と導電接続される。また集積回路素子4の水晶振動素子との接続端子以外の端子は前記電極パターンおよび内部配線導体を経由して外部接続端子7と電気的に接続されている。
【0032】
図1は集積回路素子4に形成された金からなる金属バンプBが電極パッド10上に接合された後の状態を示している。これは容器2に凹部を有する電極パッド10が形成されており、集積回路素子4の接続端子上には前記凹部の壁面に対応した断面視凸状の金属バンプBが配されており、これら電極パッド10と金属バンプBとがFCB法によって接合されている。そして図1に示すように前記凹部に金属バンプBの一部が埋入した状態で集積回路素子4と容器2とが接合されている。
【0033】
上記構成によれば、容器2に凹部を有する電極パッド10が形成され、集積回路素子4の接続端子上には断面視凸状の金属バンプBが配されるので、電極パッド10と金属バンプBとが嵌め合うようにして接合される。そして凹部に金属バンプBの一部が前記凹部の壁面に対応するように埋入した状態で電極パッド10と金属バンプBとが接合されるため、金属バンプBの周縁部分が接合されやすくなり、当該周縁部分と電極パッド10との間の接合されていない領域(隙間)の発生を防止することができる。これにより、外部要因等による金属バンプの剥がれ等を防止することができる。
【0034】
また、集積回路素子4に配される金属バンプBは、電極パッド10の凹部の壁面に対応した断面視凸状となっているため、凹部の底面だけでなく側面も金属バンプBとの接合に寄与することになる。例えば前記接合をFCB法を用いて行う場合は、前記凹部の側面が存在することによって、超音波のエネルギーの拡散が抑制される。これによって、より確実に集積回路素子4と容器2とが接合される。
【0035】
さらに前述の構成によれば、金属バンプBの一部が凹部の壁面に対応するように埋入することによって、集積回路素子4に水平方向の応力が働いた際に当該埋入部分がアンカー効果を有することになる。
【0036】
図2に示す容器2の堤部20の上面200は平坦面となっており、金属膜(図示省略)が周状に形成されている。そして後述する蓋の一主面側に形成されたロウ材と前記金属膜とが加熱溶融によって一体化される。図1はロウ材と金属膜とが一体化された状態を表しており、これをロウ材6として表記している。なお前記金属膜は3層で構成されており、下からタングステン、ニッケル、金の順で積層されている。タングステンはメタライズ技術により、セラミック焼成時に一体的に形成され、ニッケル、金の各層はメッキ技術により形成される。なお、前記タングステンの層にモリブデンを使用してもよい。
【0037】
水晶振動素子3は平面視略矩形状のATカット水晶振動板であり、その表裏面には水晶振動板3を駆動させるための励振電極(図示省略)と、当該励振電極から引き出される引き出し電極(図示省略)と、当該引き出し電極と接続し,水晶振動板の一端部両側に形成される一対の接続電極(図示省略)とが形成されている。これらの電極は水晶振動板上に下から順に、クロム,金,クロムの膜構成でスパッタ蒸着法によって成膜される。なお、前記電極の膜構成は上記構成に限定されるものではなく、その他の膜構成であってもよい。また前記各種電極の成膜方法はスパッタリングに限定されるものではなく、スパッタ蒸着法以外の成膜方法によって成膜してもよい。
【0038】
図1において蓋5は略平板状の薄板であり、コバールを基材として上層にニッケルメッキ層(図示省略)、さらに上層に金フラッシュメッキ層(図示省略)が蓋の一主面と他主面の各々に形成されている。そして容器2との接合面となる主面の金フラッシュメッキ層の上部周縁にはロウ材(図示省略)が周状に形成されている。本実施形態では前記ロウ材に金錫合金が使用されている。
以上が水晶発振器1の完成品に関する説明である。
【0039】
次に、本発明に係る水晶発振器1の製造方法のうち主要工程について図3乃至5を参照しながら説明する。
−電極パッド形成工程−
図3に示す電極パッド10は、台座部11と土手部12の2つの部位とその表面を覆う2層からなるメッキ層13、14とで構成されている。電極パッド10は図示しない電極パターンの端部に形成されている。以下、電極パッド10の形成工程について台座部11を形成する第1形成工程と、土手部12を形成する第2形成工程とに分けて説明する。
【0040】
(第1形成工程)
容器2の底板となる最下層(第1層目)のシートの上面に、図3の土手部12の形状に対応したシルクスクリーンを用いて、スクリーン印刷技術によってタングステンからなるパターンを形成する(第1回目のスクリーン印刷)。この第1回目のスクリーン印刷時に台座部11が形成される。なお前記タングステンからなるパターンの一部は容器の内部配線導体となる。また、前記パターンの材料としてタングステン以外にモリブデンを使用してもよい。
【0041】
(第2形成工程)
次に台座部11の周囲(上面中央を除いた領域)にタングステンが積層されるように第2回目のスクリーン印刷を行って土手部12を形成する。土手部12は台座部11の上面中央の周囲に形成され、平面視では略方形となっており、台座部11の高さよりも高く形成されている。
【0042】
第1層目のシートに前述の2回のスクリーン印刷を行った後、第1層目のシート上に、段部21に相当する厚みの第2層目のシートを積層する。そして段部21の上面に搭載パッド8をスクリーン印刷によって形成する。そして第2層目の上に堤部20に相当する厚みの第3層目のシートを積層する。これら3つのシートが積層された状態で高温焼成を行う。その後、容器2の内底面22に露出したタングステンのパターン等の表面に電解メッキ法によってニッケルメッキ層13を形成し、さらにその上に金メッキ層14を形成する。このとき同時に前述の台座部11と土手部12の上面にもニッケルメッキ層13と金メッキ層14が積層される。これにより電極パッド10と電極パターンが同時に形成される。なお上記説明において容器の高さ方向の電気的接続手段については説明を省略している。
【0043】
電極パッド10は図3に示すような厚み(高さ)関係となっている。すなわち、台座部11の厚み(高さ)t1よりも、土手部12の厚み(高さ)t2が大きくなっており、土手部12は台座部の上面中央を除く領域から台座部の周縁に隣接する容器凹部の底面に跨って形成されている。本構成の場合、電極パッドの最上層の金メッキ層のうち、台座部11の上面中央の領域に対応する領域が凹部15の底面(15B)となり、土手部12と台座部11の上面中央の領域との境界面となる土手部が凹部の側面(15S)となる。
【0044】
−バンプ形成工程−
集積回路素子4の一主面側に形成された複数のアルミニウムからなる接続端子(図示省略)上に、ワイヤボンダを用いて金属バンプBを形成する(図4)。金属バンプBは突起を有する断面視凸状の金からなるバンプ(スタッドバンプ)であり、金ワイヤの先端を放電溶融させてボールを形成し、これを前記接続端子に超音波を用いて接合させ、ワイヤを切断することによって成形される。
【0045】
−接合工程−
集積回路素子4の能動面が容器2の内底面22上に対向するようにして集積回路素子4を内底面22上に位置決め載置する。具体的には接続端子に形成された複数の金属バンプBが、内底面22上の複数の電極パターン10に一対一で対応するように集積回路素子4が容器2の内底面22上に位置決め載置される。
【0046】
そしてフリップチップボンダを用いて加圧加熱しながら超音波を印加することにより、金からなる金属バンプBと最上層に金メッキ層が形成された電極パッド10との間に金属拡散を生じさせて金属バンプBと電極パッド10とが接合される(いわゆるFCB法)。これにより集積回路素子4が容器2の内底面22に接合される。前記FCB法による接合によって、図5に示すように電極パッド10の凹部15に金属バンプBの一部が埋入した状態で金属バンプBと電極パッド10とが接合される。
【0047】
本実施形態では、電極パッド10の母材にタングステンが用いられ、金属バンプBはタングステンよりも軟質の材料で,かつ延性・展性に富んだ金が用いられている。このように凹部を有する電極パッドよりも軟質の材料が金属バンプに使用されていることによって、例えばFCB法による接合の場合、金属バンプの一部が電極パッドの凹部の形状にならうよう(対応するように)に変形して凹部に埋入されやすくなる。つまり凹部15の底面15Bだけでなく側面15Sへも金属バンプの一部が埋入しやすくなる。これにより金属バンプBの周縁部分が接合されやすくなり、当該周縁部分と電極パッド10との間の接合されていない領域(隙間)の発生を防止することができる。なお本実施形態では金属バンプBにスタッドバンプが用いられているが、スタッドバンプ以外にメッキバンプを用いてもよい。メッキバンプの場合においても電極パッドよりも軟質の金属材料でメッキバンプを形成することによって、金属バンプの一部が電極パッドの凹部の形状にならうように変形して凹部に埋入されやすくなる。
【0048】
−水晶振動素子搭載工程−
接合工程の後、水晶振動素子3の一端側両側に形成された一対の接続電極が、接合材Sが塗布された搭載パッド8に対向するよう、水晶振動素子3を接合材S上に位置決め載置する。本実施形態では接合材Sにシリコーン系の導電性樹脂接合材が使用されている。そして所定温度プロファイルに制御された雰囲気下で接合材Sを硬化させて水晶振動素子3を搭載パッド8上に接合する。なお接合材Sはシリコーン系の導電性樹脂接合材に限定されるものではなく、エポキシ系などの導電性樹脂接合材を使用してもよい。また、水晶振動素子と搭載パッドとの接合においても本発明を適用することが可能である。この場合、接合材Sとして金属バンプを使用する。つまり、水晶振動素子の一端部両側に形成される一対の接続電極(接続端子)上に金属バンプを配し、当該金属バンプと対応した凹部を有する一対の搭載パッド(電極パッド)を形成しておく。そして前記金属バンプと搭載パッドとを位置決めした後、FCB法等によって接合する。
【0049】
−封止工程−
容器2の堤部上面200に形成された金属膜に、蓋5の容器との接合面側の周縁に形成されたロウ材が対応するように蓋と容器とを位置決めする。そして位置決めがされた状態で加熱雰囲気下でロウ材と金属膜とを溶融一体化させる。なお本発明の実施形態における蓋と容器との封止方法は金錫合金からなるロウ材と金の溶融によって行っているが、ガラスからなるロウ材を用いてもよい。あるいはシーム溶接やレーザー溶接等の封止手段を用いてもよい。前述した工程以外にも所定の工程が存在するがここでは説明を割愛する。以上により水晶発振器1が完成となる。
【0050】
上記した本発明の製造方法によれば、容器2に凹部15を有する電極パッド10が形成され、集積回路素子4の接続端子上には断面視凸状の金属バンプBが配されるので、電極パッド10と金属バンプBとが嵌め合うようにして接合される。そして金属バンプBの一部が凹部15の壁面に対応するように埋入した状態で電極パッド10と金属バンプBとが接合されるため、金属バンプBの周縁部分が接合されやすくなり、当該周縁部分と電極パッド10との間の接合されていない領域の発生を防止することができる。これにより、外部要因等による金属バンプの剥がれ等を防止することができる。
【0051】
また、集積回路素子4に配される金属バンプBは、電極パッド10の凹部15の壁面に対応した断面視凸状となっているため、凹部15の底面15Bだけでなく側面15Sも金属バンプBとの接合に寄与することになる。例えば前記接合をFCB法を用いて行う場合は、凹部15の側面15Sが存在することによって、超音波のエネルギーの拡散が抑制される。これによって、より確実に集積回路素子4と容器2とが接合される。
【0052】
さらに上記製造方法によれば、金属バンプBの一部が凹部15の壁面に対応するように埋入することによって、集積回路素子4に水平方向の応力が働いた際に当該埋入部分が前述のアンカー効果を有することになる。
【0053】
本発明の実施形態の変形例として容器の内底面に形成される電極パッドは図6に示す形状であってもよい(図6では前述の2層からなるメッキ層の記載は省略している)。すなわち、図6において台座部11の周縁から上方へ延出した仮想線Eよりも内側に土手部16が形成されていてもよい。このように土手部16の全てが台座部11上に重なった構成の場合、電極パッドの形成領域を微小領域とすることができるため電極パターンが多く形成される構成の水晶発振器の場合に効果的である。なお図6に示す形状は台座部と土手部のような積層構造に限定されるものではない。例えば図6における台座部11よりも厚肉のタングステン層を単層で形成した後、これを仮硬化させ、凹部17の開口径相当の金型を用いて前記タングステン層の上から部分的なプレス加工を行うことによって中央が窪んだ電極パッドを成形することも可能である。
【0054】
また本発明のその他の適用例として、図7に示すような断面形状の容器にも本発明は適用可能である。図7において容器2’は中央部分の絶縁基材を挟んで上下に2つの凹部(上凹部23と下凹部24)を有している。上凹部23には内底面230に形成された搭載パッド8上に接合材Sを介して水晶振動素子3(励振電極等の記載は省略)が接合されている。一方、下凹部24には内底面240に形成された複数の電極パッド10上に金属バンプBを介して集積回路素子4が接合されている。複数の電極パッド10のうち、一部は内部接続導体Mを経由して搭載パッド8に接続され、他の一部は内部接続導体Mを経由して容器2’の底面に形成された外部接続端子7に接続されている。図7における電極パッド10は前述した電極パッドと同一の構成となっており、台座部と土手部とが形成されている(図示省略)。そして電極パッド10の凹部に金属バンプBの一部が埋入した状態で金属バンプBと電極パッド10とが接合されている。本構成においても前述した本発明の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0055】
本実施形態では圧電振動デバイスとして水晶発振器を例に挙げ、電子部品素子として集積回路素子が用いられた実施例となっているが、本発明の適用はこのような水晶発振器に限定されるものではなく、例えば電子部品素子として温度センサ等を内蔵した水晶振動子や温度補償型の水晶発振器(TCXO)においても適用可能である。
【0056】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0057】
圧電振動デバイスの量産に適用できる。
【符号の説明】
【0058】
1、1’ 水晶発振器
2、2’ 容器
3 水晶振動素子
4 集積回路素子
5 蓋
8 搭載パッド
10 電極パッド
11 台座部
12、16 土手部
13、14 メッキ層
15、17 電極パッド凹部
B 金属バンプ
S 接合材
22 容器内底面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動素子と電子部品素子とを容器に収容し、当該容器に蓋を接合することにより、少なくとも圧電振動素子を気密に封止した圧電振動デバイスであって、
前記容器には、圧電振動素子と電子部品素子の各々に設けられた複数の接続端子に対応した複数の電極パッドが形成されてなり、
当該複数の電極パッドのうち、
圧電振動素子と対応した電極パッドと、電子部品素子と対応した電極パッドの、いずれか一方または両方の電極パッドに凹部がそれぞれ形成され、
前記複数の接続端子のうち、前記凹部が形成された電極パッドと対応した接続端子上に断面視凸状の金属バンプが配され、
前記金属バンプの一部が前記凹部の壁面に対応するように埋入した状態で、
圧電振動素子と電子部品素子のいずれか一方または両方が容器と接合されていることを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項2】
圧電振動素子を容器に収容し、当該容器に蓋を接合することにより、圧電振動素子を気密に封止した圧電振動デバイスであって、
前記容器には圧電振動素子に設けられた複数の接続端子に対応した複数の電極パッドが形成され、当該複数の電極パッドに凹部が形成されてなり、
前記電極パッドと対応した接続端子上に断面視凸状の金属バンプが配され、
当該金属バンプの一部が前記凹部の壁面に対応するように埋入した状態で圧電振動素子と容器が接合されていることを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項3】
前記凹部が形成された電極パッドが台座部と土手部とで構成され、
前記土手部は前記台座部の上面中央の周囲に積層されるとともに、台座部の高さよりも高く形成され、前記台座部と前記土手部によって前記凹部が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の圧電振動デバイス。
【請求項4】
前記金属バンプが、前記凹部が形成された電極パッドよりも軟質の材料で構成され、前記凹部の側面の形状に対応するように金属バンプの一部が凹部に埋入していることを特徴とする請求項1乃至2または請求項3に記載の圧電振動デバイス。
【請求項5】
圧電振動素子と電子部品素子とを容器に収容し、当該容器に蓋を接合することにより、少なくとも圧電振動素子を気密に封止した圧電振動デバイスの製造方法であって、
前記容器には、圧電振動素子と電子部品素子の各々に設けられた複数の接続端子に対応した複数の電極パッドが形成されてなり、
当該複数の電極パッドのうち、圧電振動素子と対応した電極パッドと、電子部品素子と対応した電極パッドの、いずれか一方または両方の電極パッドに、台座部と土手部で構成される凹部をそれぞれ形成する電極パッド形成工程と、
前記複数の接続端子のうち、前記凹部が形成された電極パッドと対応した接続端子上に断面視凸状の金属バンプが配するバンプ形成工程と、
前記金属バンプの一部が前記凹部の壁面に対応して埋入するように圧電振動素子と電子部品素子のいずれか一方または両方を、FCB法によって容器と接合する接合工程とを含み、
前記電極パッド形成工程はさらに、台座部を形成する第1形成工程と、
台座部の周囲に、台座部の高さよりも高い土手部を積層することによって前記凹部を形成する第2形成工程と、
からなることを特徴とする圧電振動デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−98701(P2013−98701A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238821(P2011−238821)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】