圧電振動デバイス及び発振器
【課題】金属バンプで圧電振動片を保持してもベース基板から伝わる応力、歪を低減させた圧電振動デバイスを提供する。
【解決手段】本発明の圧電振動デバイスは、圧電振動片が表裏に形成された励振電極を有した、ATモードで発振する圧電振動片であり、且つ、励振電極の一方は、圧電振動片の短辺の中心線上で、且つ、圧電振動片の一方の短辺に近接する位置に金属バンプを介してベース基板と接続する構成であり、励振電極のもう一方は、前記短辺と同じ側で、且つ、圧電振動片の一方の前記短辺と圧電振動片の一方の長辺が交わる部分に近接する位置に金属バンプを介してベース基板と接続する構成である。
【解決手段】本発明の圧電振動デバイスは、圧電振動片が表裏に形成された励振電極を有した、ATモードで発振する圧電振動片であり、且つ、励振電極の一方は、圧電振動片の短辺の中心線上で、且つ、圧電振動片の一方の短辺に近接する位置に金属バンプを介してベース基板と接続する構成であり、励振電極のもう一方は、前記短辺と同じ側で、且つ、圧電振動片の一方の前記短辺と圧電振動片の一方の長辺が交わる部分に近接する位置に金属バンプを介してベース基板と接続する構成である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子素子を実装した圧電振動デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年普及している携帯電話等の携帯情報端末には表面実装型の小型パッケージを用いた電子デバイスが多く使用されている。例えば振動子やMEMS、ジャイロセンサ、加速度センサ等は中空のキャビティ構造のパッケージに電子素子が収納される構造を有している。中空のキャビティ構造のパッケージは、例えばベース基板と蓋基板とを接合して気密封止する構成するものが知られている。近年小型化に伴って、電子デバイスをベース基板に接合する方法としてフリップチップボンディング方法が用いられている(例えば特許文献1)。
【0003】
ここで、ベース基板上に圧電振動片が金属バンプで固定された圧電振動子について簡単に説明する。即ち、図7に示すように、圧電振動子200は、圧電振動片203と、凹型に形成されたベース基板201と、ベース基板201に接合部207で接合された蓋基板202から構成されている。
【0004】
圧電振動片203は、水晶等の圧電材料から形成されており、圧電振動片203を挟んで、該圧電振動片203を振動させるための励振電極205a、205bがパターニングされている。圧電振動片203は、ベース基板上に形成された引き回し電極207a、207b上に励振電極205a、205b、金属バンプ204を介して接合される。
【0005】
ベース基板201には凹部が形成され、蓋基板202で封止することでキャビティ209が構成される。該圧電振動片203は前記キャビティ209内に収納される。
【0006】
ベース基板201は、セラミック基板で構成され、ベース基板201の底面には、側面に亘って外部電極207a、207bが形成されている。このうち一方の外部電極207aが、引き回し電極206aを介して圧電振動片203の一方の励振電極205aに電気的に接続されており、他方の外部電極207bが、引き回し電極206bを介して圧電振動片203の他方の電極205bに電気的に接続されている。
【0007】
蓋基板はセラミック基板あるいは金属基板で構成され、ベース基板上の接合面207でシーム溶接あるいはAu−Sn溶接されて、キャビティ209を封止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−103868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図7に示すように、圧電振動片203はベース基板201に金属バンプ204でしっかりと固定されているため、ベース基板201の歪や応力が直接圧電振動片203に掛かってしまう。
【0010】
また一般的なATカット水晶振動子の圧電振動片では、圧電振動片を安定して保持するため、圧電振動片の一方の面の短辺両端部2箇所を保持する構造である。この場合、金属バンプ間の距離が圧電振動片の短辺長とほぼ同じとなり、金属バンプ間の距離が長くしている。ベース基板と圧電振動片の熱膨張係数の差による応力は、金属バンプ間の距離に起因する。そのため、この応力が圧電振動片に掛かり、圧電振動片の振動特性を大きく変化させてしまうという課題があった。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、金属バンプで圧電振動片を保持してもベース基板から伝わる応力、歪を低減させた圧電振動デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の圧電振動デバイスは、ベース基板と、前記ベース基板に対向させた状態で該ベース基板に接合された蓋基板と、前記ベース基板と前記蓋基板との間に形成されたキャビティ内に収納され、前記ベース基板の上面にバンプ接合された圧電振動片と、を備えている圧電デバイスにおいて、前記圧電振動片が表裏面にそれぞれ形成された励振電極と、それぞれの前記励振電極と電気的に接続するマウント電極とを有した、ATモードで発振する圧電振動片であり、前記マウント電極の一方は、前記圧電振動片の短辺の中心線上で、且つ、前記圧電振動片の一方の短辺に近接する位置で第一の金属バンプを介して前記ベース基板と電気的に接続し、前記マウント電極の他方は、前記圧電振動片の一方の前記短辺と前記圧電振動片の一方の長辺が交わる部分に近接する位置で第二の金属バンプを介して前記ベース基板と電気的に接続することを特徴とする。
【0013】
本発明により、ベース基板の応力、歪の影響が圧電振動片に伝わるのを最小限に抑えることができる。特にこれまでの圧電振動片の保持方法に比べて、金属バンプ間の距離が短くなるため、蓋基板又はベース基板から圧電振動子に印加される応力、歪変動が減少し圧電振動片の特性を安定させることができる。さらに、圧電振動片を安定して保持することができる。
【0014】
また、前記マウント電極の一方は、さらに第三の金属バンプを介して前記ベース基板と接続し、前記第三の金属バンプは、一方の前記短辺に近接し、前記圧電振動片の他方の長辺側に位置し、前記第一の金属バンプ、前記第二の金属バンプ、及び前記第三の金属バンプは、同一直線上に並んでいることを特徴とする。
【0015】
これにより、圧電振動片を安定して保持することができる。さらに、同一直線上に並んでいる第二の金属バンプと第三の金属バンプとの間に位置する第一の金属バンプにより、第二の金属バンプと第三の金属バンプとの間の距離に起因する応力の影響はほとんどない。そのため、金属バンプ間の距離は短くなるため、ベース基板と圧電振動片の熱膨張係数の差による応力が発生しない。このため、圧電振動片をさらに安定して保持しつつ、圧電振動片の振動特性の変化を防ぐことができる。
【0016】
また、前記第二の金属バンプと前記第三の金属バンプとは、前記第一の金属バンプを挟んで、前記第一の金属バンプから等距離に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、ベース基板の応力、歪の影響が圧電振動片に伝わるのを最小限に抑えることができる。特にこれまでの圧電振動片の保持方法に比べて、金属バンプ間の距離が短くなるため、蓋基板又はベース基板から圧電振動子に印加される応力、歪変動が減少し圧電振動片の特性を安定させることができる。さらに、圧電振動片を安定して保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第一実施形態に係る圧電振動デバイスの縦断面模式図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る圧電振動デバイスの上面模式図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係る圧電振動デバイスの分解斜視図である。
【図4】本発明の第二実施形態に係る圧電振動デバイスの縦断面模式図である。
【図5】本発明の第三実施形態に係る圧電振動デバイスの上面模式図である。
【図6】本発明の第四実施形態に係る発振器の上面模式図である。
【図7】従来公知の圧電振動デバイスの縦断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<圧電振動デバイス>
(第一実施形態)
図1は、第一実施形態に係る圧電振動デバイス1における貫通電極7aを通過する長辺方向の断面図において、圧電振動片4側を側面視する図である。また、図2は、圧電振動デバイス1の上面模式図であり、図3は分解斜視図である。なお、図2においては、蓋基板3を省略している。
【0020】
本実施形態の圧電振動デバイス1は、ベース基板2と、ベース基板2に対向させた状態でベース基板2に接合された蓋基板3と、で2層に積層された箱状に形成されている。また、圧電振動デバイス1は、ベース基板2と蓋基板3との間に形成されたキャビティ16内に圧電振動片4が収納された表面実装型の圧電振動デバイスである。また、圧電振動片4をベース基板2に保持する方法が、圧電振動片4の一方の短辺側を保持する片持ち状態である。
【0021】
圧電振動片4は、図3に示すように、水晶の圧電材料から形成されたATカット型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。
【0022】
この圧電振動片4は、平板水晶の裏表両面に、対向する位置で配置された一対の第二の励振電極5、第一の励振電極6と、第二の励振電極5、第一の励振電極6にそれぞれ電気的に接続されたマウント電極13a、13bとを有している。マウント電極13a、13bは、それぞれ第二の励振電極5、第一の励振電極6と、平板水晶の側面電極8a、8bを介して電気的に接続されている。
【0023】
第二の励振電極5、第一の励振電極6、マウント電極13a、13b、側面電極8a、8bは、例えば、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、金(Au)、アルミニウム(Al)やチタン(Ti)等の導電性膜の被膜、あるいはこれら導電性膜のいくつかを組み合わせた積層膜より形成される。
【0024】
このように構成された圧電振動片4は、金等で形成された第二の金属バンプ15a、第一の金属バンプ15bを介して、ベース基板2の上面にバンプ接合されている。より具体的には、ベース基板2の上面にパターニングされた後述する引き回し電極14a、14b上にそれぞれ第二の金属バンプ15a、第一の金属バンプ15bが形成されている。また、第二の金属バンプ15a、第一の金属バンプ15b上に、一対のマウント電極13a、13bがそれぞれ接触している。この状態で、圧電振動片4はベース基板2上に、バンプ接合されている。これにより、圧電振動片4は、ベース基板2の上面から第二の金属バンプ15a、第一の金属バンプ15bの厚さ分、浮いた状態で支持されると共に、マウント電極13a、13bと引き回し電極14a、14bとがそれぞれ電気的に接続された状態となっている。
【0025】
蓋基板3は、絶縁物、半導体、あるいは金属で構成される。また、蓋基板3は、ベース基板2が接合される接合面側には、圧電振動片4が収まる矩形状の凹部が形成されている。この凹部は、両基板2、3が重ね合わされたときに圧電振動片4を収容するキャビティ16となる、キャビティ16用の凹部である。そして蓋基板3は、この凹部16をベース基板2側に対向させた状態で接合膜9を介して該ベース基板2に対して接合されている。接合方法は、例えば陽極接合等を用いることができる。
【0026】
ベース基板2は、絶縁物、半導体、あるいは金属で構成される。また、蓋基板3に対して重ね合わせ可能な大きさで板状に形成されている。
【0027】
また、ベース基板2にはベース基板2を貫通する一対のスルーホール(貫通孔)18a、18bが形成されている。この際、一対のスルーホール18a、18bは、キャビティ16内に収まるように形成されている。より詳しく説明すると、マウントされた圧電振動片4のマウント電極13a、13b側に一方のスルーホール18aが位置し、圧電振動片4のマウント電極13a、13b側と反対の側に他方のスルーホール18bが位置するように形成されている。また、本実施形態では、ベース基板2を真っ直ぐに貫通したスルーホール18a、18bを例に挙げて説明するが、この場合に限られず、例えばベース基板2の下面に向かって漸次径が縮径するテーパー状に形成しても構わない。いずれにしても、ベース基板2を貫通していれば良い。
【0028】
そして、これら一対のスルーホール18a、18bには、該スルーホール18a、18bを埋めるようにそれぞれ形成された一対の貫通電極7a、7bが形成されている。この貫通電極7a、7bは、スルーホール18a、18bを完全に塞いでキャビティ16内の気密を維持していると共に、後述する外部電極10a、10dと引き回し電極14a、14bとを導通させる役割を担っている。スルーホール18a、18bと貫通電極7a、7bの隙間はベース基板2を溶融させることで完全に孔を塞いでいる。
【0029】
一対の引き回し電極14a、14bは、一対の貫通電極7a、7bのうち、一方の貫通電極7aと圧電振動片4の一方のマウント電極13aとを電気的に接続すると共に、他方の貫通電極7bと圧電振動片4の他方のマウント電極13bとを電気的に接続するようにパターニングされている。より詳しく説明すると、一方の引き回し電極14aは、圧電振動片4のマウント電極13a、13b側に位置するように一方の貫通電極7aの上に形成されている。また、他方の引き回し電極14bは、一方の引き回し電極14aに隣接した位置から、圧電振動片4に沿って、ベース基板2において貫通電極7aと対向する側まで引き回しされ、他方の貫通電極7bの上に位置するように形成されている。
【0030】
そして、これら一対の引き回し電極14a、14b上にそれぞれ第二の金属バンプ15a、第一の金属バンプ15bが形成されており、第二の金属バンプ15a、第一の金属15bを利用して圧電振動片4がマウントされている。これにより、圧電振動片4の一方のマウント電極13aが、一方の引き回し電極14aを介して一方の貫通電極7aに導通し、他方のマウント電極13bが、他方の引き回し電極14bを介して他方の貫通電極7bに導通する。
【0031】
また、ベース基板2の下面には、図1に示すように、一対の貫通電極7a、7bに対してそれぞれ電気的に接続される外部電極10a、10dが形成されている。つまり、一方の外部電極10aは、一方の貫通電極7a及び一方の引き回し電極14aを介して圧電振動片4の第二の励振電極5に電気的に接続されている。また、他方の外部電極10dは、他方の貫通電極7b及び他方の引き回し電極14bを介して、圧電振動片4の第一の励振電極6に電気的に接続されている。
【0032】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、ベース基板2に形成された外部電極10a、10dに対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片4の第二の励振電極5及び第一の励振電極6からなる励振電極に電流を流すことができ、所定の周波数で振動させることができる。そして、振動を利用して、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として利用することができる。
【0033】
ここで、ベース基板2と圧電振動片4を強固なバンプ接合で接合すると、ベース基板2と圧電振動片4の熱膨張の差により圧電振動片4のマウント電極13a、13b近辺に大きな応力が掛かってしまう。圧電振動片4は応力を受けると、周波数や温度特性などが大きく変化してしまう。特に本実施例で用いられるATカット振動片の場合、周波数の安定性や温度特性の安定性が重要となるため、大きな問題となる。
【0034】
従来の圧電振動子では、ベース基板2にセラミック基板が用いられてきている。セラミック基板の熱膨張係数は7×10-6/℃程度で、ATカット振動片の熱膨張係数より小さい。このため、仮に圧電振動片4とベース基板2をバンプ接合した場合、圧電振動片4に大きな応力が掛かり、周波数や温度特性に悪影響を及ぼす。
【0035】
また、セラミックのベース基板と圧電振動片の接合には導電性接着剤が用いられ、ベース基板と圧電振動片を柔らかく接合する方法が採られている場合がある。しかし、圧電振動デバイスの小型化が進んでいくと、圧電振動片4のマウント電極13a、13bが小さくなり、導電性接着剤の接着領域も小さくなってくる。ところが、導電性接着剤は流動性があり接着面積が広がるため、接着領域(=マウント電極13a、13bの大きさ)を小さくすることは困難を伴う。一方、接着領域を確保するためにマウント電極13a、13bのサイズを大きくする方法も考えられるが、励振電極5、6が小さくなってしまい、圧電振動片4の振動する部分の領域が小さくなって特性を劣化させるという課題があった。
【0036】
本実施形態では、圧電振動片4をベース基板2に接合する第二の金属バンプ15a、第一の金属バンプ15bの接合位置を従来例とは異なる位置にする。具体的には、第一の金属バンプ15bの位置は、圧電振動片4の短辺の中心線上で、且つ、圧電振動片4の一方の短辺に近接する位置である。第二の金属バンプ15aの位置は、第一の金属バンプ15bと同じ一方の短辺側で、且つ、圧電振動片4の一方の短辺と一方の長辺が交わる部分に近接する位置とする。すなわち、圧電振動片4のマウント電極13bは、圧電振動片4の短辺の中心線上で、且つ、圧電振動片4の一方の短辺に近接する位置で第一の金属バンプ15bを介してベース基板2と電気的に接続し、マウント電極13aは、圧電振動片4の一方の短辺と圧電振動片4の一方の長辺が交わる部分に近接する位置で第二の金属バンプ15aを介して前記ベース基板と電気的に接続する。
【0037】
このような位置で圧電振動片4とベース基板2を接合することにより、第二の金属バンプ15a、第一の金属バンプ15b間の距離が短くなり、ベース基板2と圧電振動子4の熱膨張差の影響が小さくなる。これにより、従来に比べ、周波数や温度特性などの特性は変化しない。また、第二の金属バンプ15bは圧電振動片4の短辺の中心線上にあるため、圧電振動片4の保持として十分に安定させることができる。なお、金属バンプ両方を、一方の長辺側に配置した場合、本実施形態に比べ、圧電振動片4を安定して保持することができない。
【0038】
更に、バンプ接合を用いることができたことにより、導電性接着剤を用いた場合の課題を解決することができる。すなわち、本実施形態により、接着領域を大きく確保する必要がなく、特性の変化を防ぐことができる。
【0039】
また、導電性接着剤は凝固するまでに時間がかかるので、組立製造中、圧電振動片4を保持している。あるいは、導電性接着剤が凝固する時、圧電振動片4の自重でベース基板2に平行になるようにあらかじめ圧電振動片4を斜めに傾けて接着する方法を取らなければならない。本実施形態において、バンプ接合をすることでこのような工程を省くことができる。
【0040】
また、圧電振動片4はバンプ接合によってベース基板2から浮いた状態で支持されているので、振動に必要に最低限の振動ギャップを自然と確保することができる。よって、蓋基板3とは異なり、ベース基板2側にキャビティ用の凹部16を形成する必要がなく、平板状の基板として構わない。従って、凹部(キャビティ)16を考慮しない分、ベース基板2の厚みをできるだけ薄くすることができる。この点において、本実施例は圧電振動子1の薄型化を図ることができる。
【0041】
(第二実施形態)
図4は本発明の第二実施形態に係る圧電振動デバイス1におけるを引き回し電極14aを通過する長辺方向の断面図において、圧電振動片4側を側面視する図である。第一実施形態と異なる点は、ベース基板2が凹型形状の基板、蓋基板3が板状の基板であり、その他の構成は第一実施形態とほぼ同様である。以下、主に異なる部分について説明する。同一の部分または同一の機能を有する部分については同一の符号を付している。
【0042】
蓋基板3は、絶縁物、半導体、あるいは金属で構成され、平板状に形成されている。また、圧電振動片4が収まる矩形状の凹部はベース基板2に形成されている。この凹部は、両基板2、3が重ね合わされたときに圧電振動片4を収容するキャビティ16となる、キャビティ16用の凹部である。そしてベース基板2は、この凹部を蓋基板3側に対向させた状態で接合膜9を介して該蓋基板3に対して接合されている。
【0043】
ベース基板2は、絶縁物、半導体、あるいは金属で構成され、蓋基板3に対して重ね合わせ可能な大きさで凹型板状に形成される。また、スルーホールや貫通電極を用いず、側面外部電極31、32を用いて、それぞれ引き回し電極14a、14bと外部端子10a、10dを接続している。具体的には、ベース基板2上に形成された引き回し電極14a、14bが圧電振動デバイス1の外周部まで伸び、側面外部電極31、32に接続される。ベース基板2の引き回し電極14a、14bが形成された面と対抗する面に形成された外部電極10a、10dは、それぞれ圧電振動子1の外周部にまで伸び、側面外部電極31、32と接続される。これにより、第一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0044】
(第三実施形態)
図5は、本発明の第三実施形態に係る圧電振動デバイス1の上面模式図である。なお、図5では、蓋基板3を省略している。第一実施形態と異なる点は、圧電振動片4を3点のバンプで保持する点であり、その他の構成は第一実施形態とほぼ同様である。以下、主に異なる部分について説明する。同一の部分または同一の機能を有する部分については同一の符号を付している。
【0045】
本実施例では図5に示すように、圧電振動片4をベース基板2に接合するバンプが3つある。具体的には、第一の金属バンプ20b及び第二の金属バンプ20aの位置は、第一実施形態と同様の構成である。また、本実施形態では、第一の金属バンプ20bが電気的に接続する一方のマウント電極13bは、さらに第三の金属バンプ20cを介してベース基板2に接続する。また、第三の金属バンプ20cは、圧電振動片4の一方の短辺に近接し、且つ、圧電振動片4の第二の金属バンプ20aが配置される一方の長辺と反対側の他方の長辺側に位置する。さらに、第一の金属バンプ20b、第二の金属バンプ20a、及び第三の金属バンプ20cは、同一直線上に並んでいる。
【0046】
これにより、第一実施形態よりも、圧電振動片4を安定して保持することができる。さらに、同一直線上に並んでいる第二の金属バンプ20aと第三の金属バンプ20cとの間に位置する第一の金属バンプ20bにより、第二の金属バンプ20aと第三の金属バンプ20cとの間の距離に起因する応力の影響はほとんどない。そのため、従来例よりも、金属バンプ間の距離は短くなるため、第一実施形態同様、ベース基板2と圧電振動片4の熱膨張係数の差による応力が発生しない。
【0047】
このため、圧電振動片4をさらに安定して保持しつつ、圧電振動片4の振動特性の変化を防ぐことができる。
このとき、第一の金属バンプ20bと第二の金属バンプ20a、第三の金属バンプ20cの距離はより短いほうが望ましいが、バンプの大きさや実装位置精度を考慮すると、80〜300μmが望ましい。
【0048】
3つの金属バンプそれぞれの位置が三角形を形成する位置で接合することも可能であるが、各点間で発生する熱膨張差の応力がすべて圧電振動片4に印加されてしまうため、より大きな特性の変化を生じてしまう。そのため、3点の位置関係は一直線上にあることが望ましい。
【0049】
また、第二の金属バンプ20aと第三の金属バンプ20cとは、第一の金属バンプ20bからの距離を等距離にしてもよい。これにより、圧電振動片4をより水平に保持することが可能になり、保持の安定性を向上することができる。
【0050】
なお、第二の金属バンプ20aと第一の金属バンプとの間の距離より、第三の金属バンプ20cと第一の金属バンプ20bとの間の距離を短くしてもよい。第三の金属バンプ20cと第一の金属バンプ20bとの距離は、ベース基板2、圧電振動片4の大きさ等により、適宜変更してもよい。
【0051】
このように金属バンプを3点にし、且つ、圧電振動片4に対する位置関係をより短辺の中心線上に持ってくることによって、保持の安定性と振動特性への影響極小を実現することができる。
【0052】
<発振器>
(第四実施形態)
図6は、本発明の第四実施形態に係る発振器40の上面模式図である。本発振器40は第一実施形態に示す圧電振動片4を用いた圧電振動デバイス1を組み込んでいる。図6に示すように、発振器40は、基板43、この基板上に設置した電子デバイス1、集積回路41及び電子部品42を備える。圧電振動デバイス1は、電極端子10a、10dに与えられる駆動信号に基づいて一定周波数の信号を生成し、集積回路41及び電子部品42は、電子デバイス1から供給される一定周波数の信号を処理して、クロック信号等の基準信号を生成する。本発明による電子デバイス1は、高信頼性でかつ小型に形成することができるので、発振器40の全体をコンパクトに構成することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 圧電振動デバイス
2 ベース基板
3 蓋基板
4 圧電振動片
5、6 励振電極
7a、7b 貫通電極
8 側面電極
9 接合膜
10a、10b、10c、10d 外部電極
13a、13b マウント電極
14a、14b 引き回し電極
15a、15b バンプ
16 キャビティ
18a、18b スルーホール
20a、20b、20c バンプ
31、32 側面外部電極
40 発振器
41 集積回路
42 電子部品
43 基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子素子を実装した圧電振動デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年普及している携帯電話等の携帯情報端末には表面実装型の小型パッケージを用いた電子デバイスが多く使用されている。例えば振動子やMEMS、ジャイロセンサ、加速度センサ等は中空のキャビティ構造のパッケージに電子素子が収納される構造を有している。中空のキャビティ構造のパッケージは、例えばベース基板と蓋基板とを接合して気密封止する構成するものが知られている。近年小型化に伴って、電子デバイスをベース基板に接合する方法としてフリップチップボンディング方法が用いられている(例えば特許文献1)。
【0003】
ここで、ベース基板上に圧電振動片が金属バンプで固定された圧電振動子について簡単に説明する。即ち、図7に示すように、圧電振動子200は、圧電振動片203と、凹型に形成されたベース基板201と、ベース基板201に接合部207で接合された蓋基板202から構成されている。
【0004】
圧電振動片203は、水晶等の圧電材料から形成されており、圧電振動片203を挟んで、該圧電振動片203を振動させるための励振電極205a、205bがパターニングされている。圧電振動片203は、ベース基板上に形成された引き回し電極207a、207b上に励振電極205a、205b、金属バンプ204を介して接合される。
【0005】
ベース基板201には凹部が形成され、蓋基板202で封止することでキャビティ209が構成される。該圧電振動片203は前記キャビティ209内に収納される。
【0006】
ベース基板201は、セラミック基板で構成され、ベース基板201の底面には、側面に亘って外部電極207a、207bが形成されている。このうち一方の外部電極207aが、引き回し電極206aを介して圧電振動片203の一方の励振電極205aに電気的に接続されており、他方の外部電極207bが、引き回し電極206bを介して圧電振動片203の他方の電極205bに電気的に接続されている。
【0007】
蓋基板はセラミック基板あるいは金属基板で構成され、ベース基板上の接合面207でシーム溶接あるいはAu−Sn溶接されて、キャビティ209を封止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−103868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図7に示すように、圧電振動片203はベース基板201に金属バンプ204でしっかりと固定されているため、ベース基板201の歪や応力が直接圧電振動片203に掛かってしまう。
【0010】
また一般的なATカット水晶振動子の圧電振動片では、圧電振動片を安定して保持するため、圧電振動片の一方の面の短辺両端部2箇所を保持する構造である。この場合、金属バンプ間の距離が圧電振動片の短辺長とほぼ同じとなり、金属バンプ間の距離が長くしている。ベース基板と圧電振動片の熱膨張係数の差による応力は、金属バンプ間の距離に起因する。そのため、この応力が圧電振動片に掛かり、圧電振動片の振動特性を大きく変化させてしまうという課題があった。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、金属バンプで圧電振動片を保持してもベース基板から伝わる応力、歪を低減させた圧電振動デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の圧電振動デバイスは、ベース基板と、前記ベース基板に対向させた状態で該ベース基板に接合された蓋基板と、前記ベース基板と前記蓋基板との間に形成されたキャビティ内に収納され、前記ベース基板の上面にバンプ接合された圧電振動片と、を備えている圧電デバイスにおいて、前記圧電振動片が表裏面にそれぞれ形成された励振電極と、それぞれの前記励振電極と電気的に接続するマウント電極とを有した、ATモードで発振する圧電振動片であり、前記マウント電極の一方は、前記圧電振動片の短辺の中心線上で、且つ、前記圧電振動片の一方の短辺に近接する位置で第一の金属バンプを介して前記ベース基板と電気的に接続し、前記マウント電極の他方は、前記圧電振動片の一方の前記短辺と前記圧電振動片の一方の長辺が交わる部分に近接する位置で第二の金属バンプを介して前記ベース基板と電気的に接続することを特徴とする。
【0013】
本発明により、ベース基板の応力、歪の影響が圧電振動片に伝わるのを最小限に抑えることができる。特にこれまでの圧電振動片の保持方法に比べて、金属バンプ間の距離が短くなるため、蓋基板又はベース基板から圧電振動子に印加される応力、歪変動が減少し圧電振動片の特性を安定させることができる。さらに、圧電振動片を安定して保持することができる。
【0014】
また、前記マウント電極の一方は、さらに第三の金属バンプを介して前記ベース基板と接続し、前記第三の金属バンプは、一方の前記短辺に近接し、前記圧電振動片の他方の長辺側に位置し、前記第一の金属バンプ、前記第二の金属バンプ、及び前記第三の金属バンプは、同一直線上に並んでいることを特徴とする。
【0015】
これにより、圧電振動片を安定して保持することができる。さらに、同一直線上に並んでいる第二の金属バンプと第三の金属バンプとの間に位置する第一の金属バンプにより、第二の金属バンプと第三の金属バンプとの間の距離に起因する応力の影響はほとんどない。そのため、金属バンプ間の距離は短くなるため、ベース基板と圧電振動片の熱膨張係数の差による応力が発生しない。このため、圧電振動片をさらに安定して保持しつつ、圧電振動片の振動特性の変化を防ぐことができる。
【0016】
また、前記第二の金属バンプと前記第三の金属バンプとは、前記第一の金属バンプを挟んで、前記第一の金属バンプから等距離に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、ベース基板の応力、歪の影響が圧電振動片に伝わるのを最小限に抑えることができる。特にこれまでの圧電振動片の保持方法に比べて、金属バンプ間の距離が短くなるため、蓋基板又はベース基板から圧電振動子に印加される応力、歪変動が減少し圧電振動片の特性を安定させることができる。さらに、圧電振動片を安定して保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第一実施形態に係る圧電振動デバイスの縦断面模式図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る圧電振動デバイスの上面模式図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係る圧電振動デバイスの分解斜視図である。
【図4】本発明の第二実施形態に係る圧電振動デバイスの縦断面模式図である。
【図5】本発明の第三実施形態に係る圧電振動デバイスの上面模式図である。
【図6】本発明の第四実施形態に係る発振器の上面模式図である。
【図7】従来公知の圧電振動デバイスの縦断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<圧電振動デバイス>
(第一実施形態)
図1は、第一実施形態に係る圧電振動デバイス1における貫通電極7aを通過する長辺方向の断面図において、圧電振動片4側を側面視する図である。また、図2は、圧電振動デバイス1の上面模式図であり、図3は分解斜視図である。なお、図2においては、蓋基板3を省略している。
【0020】
本実施形態の圧電振動デバイス1は、ベース基板2と、ベース基板2に対向させた状態でベース基板2に接合された蓋基板3と、で2層に積層された箱状に形成されている。また、圧電振動デバイス1は、ベース基板2と蓋基板3との間に形成されたキャビティ16内に圧電振動片4が収納された表面実装型の圧電振動デバイスである。また、圧電振動片4をベース基板2に保持する方法が、圧電振動片4の一方の短辺側を保持する片持ち状態である。
【0021】
圧電振動片4は、図3に示すように、水晶の圧電材料から形成されたATカット型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。
【0022】
この圧電振動片4は、平板水晶の裏表両面に、対向する位置で配置された一対の第二の励振電極5、第一の励振電極6と、第二の励振電極5、第一の励振電極6にそれぞれ電気的に接続されたマウント電極13a、13bとを有している。マウント電極13a、13bは、それぞれ第二の励振電極5、第一の励振電極6と、平板水晶の側面電極8a、8bを介して電気的に接続されている。
【0023】
第二の励振電極5、第一の励振電極6、マウント電極13a、13b、側面電極8a、8bは、例えば、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、金(Au)、アルミニウム(Al)やチタン(Ti)等の導電性膜の被膜、あるいはこれら導電性膜のいくつかを組み合わせた積層膜より形成される。
【0024】
このように構成された圧電振動片4は、金等で形成された第二の金属バンプ15a、第一の金属バンプ15bを介して、ベース基板2の上面にバンプ接合されている。より具体的には、ベース基板2の上面にパターニングされた後述する引き回し電極14a、14b上にそれぞれ第二の金属バンプ15a、第一の金属バンプ15bが形成されている。また、第二の金属バンプ15a、第一の金属バンプ15b上に、一対のマウント電極13a、13bがそれぞれ接触している。この状態で、圧電振動片4はベース基板2上に、バンプ接合されている。これにより、圧電振動片4は、ベース基板2の上面から第二の金属バンプ15a、第一の金属バンプ15bの厚さ分、浮いた状態で支持されると共に、マウント電極13a、13bと引き回し電極14a、14bとがそれぞれ電気的に接続された状態となっている。
【0025】
蓋基板3は、絶縁物、半導体、あるいは金属で構成される。また、蓋基板3は、ベース基板2が接合される接合面側には、圧電振動片4が収まる矩形状の凹部が形成されている。この凹部は、両基板2、3が重ね合わされたときに圧電振動片4を収容するキャビティ16となる、キャビティ16用の凹部である。そして蓋基板3は、この凹部16をベース基板2側に対向させた状態で接合膜9を介して該ベース基板2に対して接合されている。接合方法は、例えば陽極接合等を用いることができる。
【0026】
ベース基板2は、絶縁物、半導体、あるいは金属で構成される。また、蓋基板3に対して重ね合わせ可能な大きさで板状に形成されている。
【0027】
また、ベース基板2にはベース基板2を貫通する一対のスルーホール(貫通孔)18a、18bが形成されている。この際、一対のスルーホール18a、18bは、キャビティ16内に収まるように形成されている。より詳しく説明すると、マウントされた圧電振動片4のマウント電極13a、13b側に一方のスルーホール18aが位置し、圧電振動片4のマウント電極13a、13b側と反対の側に他方のスルーホール18bが位置するように形成されている。また、本実施形態では、ベース基板2を真っ直ぐに貫通したスルーホール18a、18bを例に挙げて説明するが、この場合に限られず、例えばベース基板2の下面に向かって漸次径が縮径するテーパー状に形成しても構わない。いずれにしても、ベース基板2を貫通していれば良い。
【0028】
そして、これら一対のスルーホール18a、18bには、該スルーホール18a、18bを埋めるようにそれぞれ形成された一対の貫通電極7a、7bが形成されている。この貫通電極7a、7bは、スルーホール18a、18bを完全に塞いでキャビティ16内の気密を維持していると共に、後述する外部電極10a、10dと引き回し電極14a、14bとを導通させる役割を担っている。スルーホール18a、18bと貫通電極7a、7bの隙間はベース基板2を溶融させることで完全に孔を塞いでいる。
【0029】
一対の引き回し電極14a、14bは、一対の貫通電極7a、7bのうち、一方の貫通電極7aと圧電振動片4の一方のマウント電極13aとを電気的に接続すると共に、他方の貫通電極7bと圧電振動片4の他方のマウント電極13bとを電気的に接続するようにパターニングされている。より詳しく説明すると、一方の引き回し電極14aは、圧電振動片4のマウント電極13a、13b側に位置するように一方の貫通電極7aの上に形成されている。また、他方の引き回し電極14bは、一方の引き回し電極14aに隣接した位置から、圧電振動片4に沿って、ベース基板2において貫通電極7aと対向する側まで引き回しされ、他方の貫通電極7bの上に位置するように形成されている。
【0030】
そして、これら一対の引き回し電極14a、14b上にそれぞれ第二の金属バンプ15a、第一の金属バンプ15bが形成されており、第二の金属バンプ15a、第一の金属15bを利用して圧電振動片4がマウントされている。これにより、圧電振動片4の一方のマウント電極13aが、一方の引き回し電極14aを介して一方の貫通電極7aに導通し、他方のマウント電極13bが、他方の引き回し電極14bを介して他方の貫通電極7bに導通する。
【0031】
また、ベース基板2の下面には、図1に示すように、一対の貫通電極7a、7bに対してそれぞれ電気的に接続される外部電極10a、10dが形成されている。つまり、一方の外部電極10aは、一方の貫通電極7a及び一方の引き回し電極14aを介して圧電振動片4の第二の励振電極5に電気的に接続されている。また、他方の外部電極10dは、他方の貫通電極7b及び他方の引き回し電極14bを介して、圧電振動片4の第一の励振電極6に電気的に接続されている。
【0032】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、ベース基板2に形成された外部電極10a、10dに対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片4の第二の励振電極5及び第一の励振電極6からなる励振電極に電流を流すことができ、所定の周波数で振動させることができる。そして、振動を利用して、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として利用することができる。
【0033】
ここで、ベース基板2と圧電振動片4を強固なバンプ接合で接合すると、ベース基板2と圧電振動片4の熱膨張の差により圧電振動片4のマウント電極13a、13b近辺に大きな応力が掛かってしまう。圧電振動片4は応力を受けると、周波数や温度特性などが大きく変化してしまう。特に本実施例で用いられるATカット振動片の場合、周波数の安定性や温度特性の安定性が重要となるため、大きな問題となる。
【0034】
従来の圧電振動子では、ベース基板2にセラミック基板が用いられてきている。セラミック基板の熱膨張係数は7×10-6/℃程度で、ATカット振動片の熱膨張係数より小さい。このため、仮に圧電振動片4とベース基板2をバンプ接合した場合、圧電振動片4に大きな応力が掛かり、周波数や温度特性に悪影響を及ぼす。
【0035】
また、セラミックのベース基板と圧電振動片の接合には導電性接着剤が用いられ、ベース基板と圧電振動片を柔らかく接合する方法が採られている場合がある。しかし、圧電振動デバイスの小型化が進んでいくと、圧電振動片4のマウント電極13a、13bが小さくなり、導電性接着剤の接着領域も小さくなってくる。ところが、導電性接着剤は流動性があり接着面積が広がるため、接着領域(=マウント電極13a、13bの大きさ)を小さくすることは困難を伴う。一方、接着領域を確保するためにマウント電極13a、13bのサイズを大きくする方法も考えられるが、励振電極5、6が小さくなってしまい、圧電振動片4の振動する部分の領域が小さくなって特性を劣化させるという課題があった。
【0036】
本実施形態では、圧電振動片4をベース基板2に接合する第二の金属バンプ15a、第一の金属バンプ15bの接合位置を従来例とは異なる位置にする。具体的には、第一の金属バンプ15bの位置は、圧電振動片4の短辺の中心線上で、且つ、圧電振動片4の一方の短辺に近接する位置である。第二の金属バンプ15aの位置は、第一の金属バンプ15bと同じ一方の短辺側で、且つ、圧電振動片4の一方の短辺と一方の長辺が交わる部分に近接する位置とする。すなわち、圧電振動片4のマウント電極13bは、圧電振動片4の短辺の中心線上で、且つ、圧電振動片4の一方の短辺に近接する位置で第一の金属バンプ15bを介してベース基板2と電気的に接続し、マウント電極13aは、圧電振動片4の一方の短辺と圧電振動片4の一方の長辺が交わる部分に近接する位置で第二の金属バンプ15aを介して前記ベース基板と電気的に接続する。
【0037】
このような位置で圧電振動片4とベース基板2を接合することにより、第二の金属バンプ15a、第一の金属バンプ15b間の距離が短くなり、ベース基板2と圧電振動子4の熱膨張差の影響が小さくなる。これにより、従来に比べ、周波数や温度特性などの特性は変化しない。また、第二の金属バンプ15bは圧電振動片4の短辺の中心線上にあるため、圧電振動片4の保持として十分に安定させることができる。なお、金属バンプ両方を、一方の長辺側に配置した場合、本実施形態に比べ、圧電振動片4を安定して保持することができない。
【0038】
更に、バンプ接合を用いることができたことにより、導電性接着剤を用いた場合の課題を解決することができる。すなわち、本実施形態により、接着領域を大きく確保する必要がなく、特性の変化を防ぐことができる。
【0039】
また、導電性接着剤は凝固するまでに時間がかかるので、組立製造中、圧電振動片4を保持している。あるいは、導電性接着剤が凝固する時、圧電振動片4の自重でベース基板2に平行になるようにあらかじめ圧電振動片4を斜めに傾けて接着する方法を取らなければならない。本実施形態において、バンプ接合をすることでこのような工程を省くことができる。
【0040】
また、圧電振動片4はバンプ接合によってベース基板2から浮いた状態で支持されているので、振動に必要に最低限の振動ギャップを自然と確保することができる。よって、蓋基板3とは異なり、ベース基板2側にキャビティ用の凹部16を形成する必要がなく、平板状の基板として構わない。従って、凹部(キャビティ)16を考慮しない分、ベース基板2の厚みをできるだけ薄くすることができる。この点において、本実施例は圧電振動子1の薄型化を図ることができる。
【0041】
(第二実施形態)
図4は本発明の第二実施形態に係る圧電振動デバイス1におけるを引き回し電極14aを通過する長辺方向の断面図において、圧電振動片4側を側面視する図である。第一実施形態と異なる点は、ベース基板2が凹型形状の基板、蓋基板3が板状の基板であり、その他の構成は第一実施形態とほぼ同様である。以下、主に異なる部分について説明する。同一の部分または同一の機能を有する部分については同一の符号を付している。
【0042】
蓋基板3は、絶縁物、半導体、あるいは金属で構成され、平板状に形成されている。また、圧電振動片4が収まる矩形状の凹部はベース基板2に形成されている。この凹部は、両基板2、3が重ね合わされたときに圧電振動片4を収容するキャビティ16となる、キャビティ16用の凹部である。そしてベース基板2は、この凹部を蓋基板3側に対向させた状態で接合膜9を介して該蓋基板3に対して接合されている。
【0043】
ベース基板2は、絶縁物、半導体、あるいは金属で構成され、蓋基板3に対して重ね合わせ可能な大きさで凹型板状に形成される。また、スルーホールや貫通電極を用いず、側面外部電極31、32を用いて、それぞれ引き回し電極14a、14bと外部端子10a、10dを接続している。具体的には、ベース基板2上に形成された引き回し電極14a、14bが圧電振動デバイス1の外周部まで伸び、側面外部電極31、32に接続される。ベース基板2の引き回し電極14a、14bが形成された面と対抗する面に形成された外部電極10a、10dは、それぞれ圧電振動子1の外周部にまで伸び、側面外部電極31、32と接続される。これにより、第一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0044】
(第三実施形態)
図5は、本発明の第三実施形態に係る圧電振動デバイス1の上面模式図である。なお、図5では、蓋基板3を省略している。第一実施形態と異なる点は、圧電振動片4を3点のバンプで保持する点であり、その他の構成は第一実施形態とほぼ同様である。以下、主に異なる部分について説明する。同一の部分または同一の機能を有する部分については同一の符号を付している。
【0045】
本実施例では図5に示すように、圧電振動片4をベース基板2に接合するバンプが3つある。具体的には、第一の金属バンプ20b及び第二の金属バンプ20aの位置は、第一実施形態と同様の構成である。また、本実施形態では、第一の金属バンプ20bが電気的に接続する一方のマウント電極13bは、さらに第三の金属バンプ20cを介してベース基板2に接続する。また、第三の金属バンプ20cは、圧電振動片4の一方の短辺に近接し、且つ、圧電振動片4の第二の金属バンプ20aが配置される一方の長辺と反対側の他方の長辺側に位置する。さらに、第一の金属バンプ20b、第二の金属バンプ20a、及び第三の金属バンプ20cは、同一直線上に並んでいる。
【0046】
これにより、第一実施形態よりも、圧電振動片4を安定して保持することができる。さらに、同一直線上に並んでいる第二の金属バンプ20aと第三の金属バンプ20cとの間に位置する第一の金属バンプ20bにより、第二の金属バンプ20aと第三の金属バンプ20cとの間の距離に起因する応力の影響はほとんどない。そのため、従来例よりも、金属バンプ間の距離は短くなるため、第一実施形態同様、ベース基板2と圧電振動片4の熱膨張係数の差による応力が発生しない。
【0047】
このため、圧電振動片4をさらに安定して保持しつつ、圧電振動片4の振動特性の変化を防ぐことができる。
このとき、第一の金属バンプ20bと第二の金属バンプ20a、第三の金属バンプ20cの距離はより短いほうが望ましいが、バンプの大きさや実装位置精度を考慮すると、80〜300μmが望ましい。
【0048】
3つの金属バンプそれぞれの位置が三角形を形成する位置で接合することも可能であるが、各点間で発生する熱膨張差の応力がすべて圧電振動片4に印加されてしまうため、より大きな特性の変化を生じてしまう。そのため、3点の位置関係は一直線上にあることが望ましい。
【0049】
また、第二の金属バンプ20aと第三の金属バンプ20cとは、第一の金属バンプ20bからの距離を等距離にしてもよい。これにより、圧電振動片4をより水平に保持することが可能になり、保持の安定性を向上することができる。
【0050】
なお、第二の金属バンプ20aと第一の金属バンプとの間の距離より、第三の金属バンプ20cと第一の金属バンプ20bとの間の距離を短くしてもよい。第三の金属バンプ20cと第一の金属バンプ20bとの距離は、ベース基板2、圧電振動片4の大きさ等により、適宜変更してもよい。
【0051】
このように金属バンプを3点にし、且つ、圧電振動片4に対する位置関係をより短辺の中心線上に持ってくることによって、保持の安定性と振動特性への影響極小を実現することができる。
【0052】
<発振器>
(第四実施形態)
図6は、本発明の第四実施形態に係る発振器40の上面模式図である。本発振器40は第一実施形態に示す圧電振動片4を用いた圧電振動デバイス1を組み込んでいる。図6に示すように、発振器40は、基板43、この基板上に設置した電子デバイス1、集積回路41及び電子部品42を備える。圧電振動デバイス1は、電極端子10a、10dに与えられる駆動信号に基づいて一定周波数の信号を生成し、集積回路41及び電子部品42は、電子デバイス1から供給される一定周波数の信号を処理して、クロック信号等の基準信号を生成する。本発明による電子デバイス1は、高信頼性でかつ小型に形成することができるので、発振器40の全体をコンパクトに構成することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 圧電振動デバイス
2 ベース基板
3 蓋基板
4 圧電振動片
5、6 励振電極
7a、7b 貫通電極
8 側面電極
9 接合膜
10a、10b、10c、10d 外部電極
13a、13b マウント電極
14a、14b 引き回し電極
15a、15b バンプ
16 キャビティ
18a、18b スルーホール
20a、20b、20c バンプ
31、32 側面外部電極
40 発振器
41 集積回路
42 電子部品
43 基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基板と、前記ベース基板に対向させた状態で前記ベース基板に接合された蓋基板と、前記ベース基板と前記蓋基板との間に形成されたキャビティ内に収納され、前記ベース基板の上面にバンプ接合された圧電振動片と、を備えている圧電デバイスにおいて、
前記圧電振動片が表裏面にそれぞれ形成された励振電極と、それぞれの前記励振電極と電気的に接続するマウント電極とを有した、ATモードで発振する圧電振動片であり、
前記マウント電極の一方は、前記圧電振動片の短辺の中心線上で、且つ、前記圧電振動片の一方の短辺に近接する位置で第一の金属バンプを介して前記ベース基板と電気的に接続し、
前記マウント電極の他方は、前記圧電振動片の一方の前記短辺と前記圧電振動片の一方の長辺が交わる部分に近接する位置で第二の金属バンプを介して前記ベース基板と電気的に接続することを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項2】
前記マウント電極の一方は、さらに第三の金属バンプを介して前記ベース基板と接続し、
前記第三の金属バンプは、前記圧電振動片の一方の前記短辺に近接し、前記圧電振動片の他方の長辺側に位置し、
前記第一の金属バンプ、前記第二の金属バンプ、及び前記第三の金属バンプは、同一直線上に並んでいることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動デバイス。
【請求項3】
前記第二の金属バンプと前記第三の金属バンプとは、前記第一の金属バンプを挟んで、前記第一の金属バンプから等距離に位置することを特徴とする請求項2に記載の圧電振動デバイス。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の圧電振動デバイスと、
前記圧電振動デバイスに駆動信号を供給する駆動回路と、を備える発振器。
【請求項1】
ベース基板と、前記ベース基板に対向させた状態で前記ベース基板に接合された蓋基板と、前記ベース基板と前記蓋基板との間に形成されたキャビティ内に収納され、前記ベース基板の上面にバンプ接合された圧電振動片と、を備えている圧電デバイスにおいて、
前記圧電振動片が表裏面にそれぞれ形成された励振電極と、それぞれの前記励振電極と電気的に接続するマウント電極とを有した、ATモードで発振する圧電振動片であり、
前記マウント電極の一方は、前記圧電振動片の短辺の中心線上で、且つ、前記圧電振動片の一方の短辺に近接する位置で第一の金属バンプを介して前記ベース基板と電気的に接続し、
前記マウント電極の他方は、前記圧電振動片の一方の前記短辺と前記圧電振動片の一方の長辺が交わる部分に近接する位置で第二の金属バンプを介して前記ベース基板と電気的に接続することを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項2】
前記マウント電極の一方は、さらに第三の金属バンプを介して前記ベース基板と接続し、
前記第三の金属バンプは、前記圧電振動片の一方の前記短辺に近接し、前記圧電振動片の他方の長辺側に位置し、
前記第一の金属バンプ、前記第二の金属バンプ、及び前記第三の金属バンプは、同一直線上に並んでいることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動デバイス。
【請求項3】
前記第二の金属バンプと前記第三の金属バンプとは、前記第一の金属バンプを挟んで、前記第一の金属バンプから等距離に位置することを特徴とする請求項2に記載の圧電振動デバイス。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の圧電振動デバイスと、
前記圧電振動デバイスに駆動信号を供給する駆動回路と、を備える発振器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2013−55400(P2013−55400A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190575(P2011−190575)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
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