説明

圧電振動デバイス用パッケージ部材の集合基板切断方法

【課題】 チッピング等の発生を抑制することができる圧電振動デバイスのパッケージ部材の集合基板の切断方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 圧電振動素子に形成された励振電極を封止してなる圧電振動デバイス用のパッケージ部材が複数形成された集合基板100を、複数の前記パッケージ部材に分割するための切断方法であって、集合基板100の一主面101には、複数の前記パッケージ部材に分割するための分割溝5が複数形成されている。分割溝5は一主面101から集合基板100の厚み方向に漸次縮幅する傾斜部50を有しており、傾斜部50の一部の領域から集合基板100がダイシングブレードBによって切断される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動デバイスのパッケージ部材の集合基板の切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子に代表される圧電振動デバイスは、携帯電話や移動体通信機等に広く用いられている。前記水晶振動子の主要部材は、圧電振動素子と、圧電振動素子を収容する容器体(パッケージ部材)と、当該容器体との接合により圧電振動素子を封止する蓋体となっている。ところで近年、携帯電話や移動体通信機等の小型化および多機能化による高密度実装が進み、これらの機器等に実装される圧電振動デバイスも超小型(例えば平面視矩形の圧電振動デバイスの外形寸法が2.0mm×1.6mm以下)のものが求められている。このように圧電振動デバイスの超小型化が進むと、前記各主要部材を個体で取り扱うよりも、各主要部材が多数個整列した集合基板の状態で取り扱い、組み立て後にダイシング法等によって集合基板を分割して多数個の圧電振動デバイスを一括で得る工法の方が生産性に優れる。このような生産方法は例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−88699号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の圧電振動デバイスの前記容器体の材料にはセラミックが使用されるのが一般的であるが、前記容器体が超小型になってくるとセラミックでは焼成精度等の点から限界に来つつある。そこでセラミックに代えて水晶やガラス等を容器体の材料に用いることができる。水晶やガラス等の硬質材料からなる容器体を集合基板の母材料とし、砥石状のブレードを高速回転させて前記集合基板を切断(いわゆるダイシング法)する場合、切断後の各容器体の端部にチッピングやチッピングに起因するクラックが多数発生することがある。このようなチッピングやクラックは外観不良だけでなく、耐衝撃性能の劣化や気密不良といった不具合の原因となる。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、チッピング等の発生を抑制することができる圧電振動デバイスのパッケージ部材の集合基板の切断方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、圧電振動素子に形成された励振電極を封止してなる圧電振動デバイス用のパッケージ部材が複数形成された集合基板を、複数の前記パッケージ部材に分割するための切断方法であって、前記集合基板の少なくとも一主面には、複数の前記パッケージ部材に分割するための複数の分割溝が形成され、前記分割溝は前記一主面から前記集合基板の厚み方向に漸次縮幅する傾斜部を有し、前記傾斜部の一部の領域から前記集合基板が切断されるようになっている。
【0007】
上記切断方法によれば、前記集合基板切断時の前記分割溝の端部のチッピングやチッピングに起因するクラック(以下チッピング等と略)の発生を抑制することができる。これは前記分割溝が前記一主面から前記集合基板の厚み方向に漸次縮幅(溝の幅が集合基板の厚み方向に漸次小さくなる)する傾斜部を有し、前記傾斜部の一部の領域から前記集合基板が切断されることによる。つまり表面が平坦な集合基板をダイシング法等の物理的手段によって切断する場合、切断手段(例えばダイシングブレード)と被加工物(集合基板)との接触角は大きくなるため、切断面の端部に多数のチッピング等が発生することがあるが、本発明の切断方法であれば切断手段と被加工物との接触角を小さくすることができるため、切断時に被加工物に加わる応力を低減することができる。これにより切断面の端部のチッピング等の発生を抑制することができる。
【0008】
また、前記分割溝は集合基板の一主面から集合基板の厚み方向に漸次縮幅する傾斜部を有しているため、前記傾斜部の前記一主面近傍の領域(分割溝端部)を除いた領域で集合基板を切断することにより、分割溝の前記一主面近傍の領域は切断に寄与しない領域となる。これにより、前記分割溝端部のチッピング等の発生を防止することができる。また前記傾斜部の前記一主面近傍の領域(分割溝端部)を除いた領域で集合基板を切断することにより、集合基板の一主面への切断の影響を緩和することがきる。
【0009】
なお、前記分割溝の形成は前記集合基板の一主面に限らず、集合基板の両主面のそれぞれに形成してもよい。この場合、集合基板の表裏両主面におけるチッピング等の発生を防止できるためより効果的である。また、集合基板の表裏両主面に前記分割溝を形成する場合、集合基板の一主面側からだけの切断ではなく、集合基板の他主面側からも切断を行ってもよい。
【0010】
また、本発明は圧電振動素子に形成された励振電極を封止してなる圧電振動デバイス用のパッケージ部材が複数形成された集合基板の切断方法となっている。したがって本発明は、前記圧電振動デバイスを構成するパッケージ部材、例えば蓋体や容器体等であって圧電振動素子全体を内包するパッケージ部材のいずれかが複数形成された集合基板の切断に適用可能である。また圧電振動素子全体を内包せず、例えば圧電振動素子の中央領域に形成された励振電極(これに接続される配線パターン等を含む)を気密に封止し、圧電振動素子の表裏外周領域と接合される構成のパッケージ部材が複数形成された集合基板への適用も可能である。本発明の集合基板の切断方法であれば、前記傾斜部の一部の領域から前記集合基板が切断されることにより、前記分割溝端部のチッピング等の発生を防止するとともに、集合基板の一主面への切断の影響を緩和することがきるため、パッケージ部材の封止領域の平坦度を維持することができる。つまり、前記集合基板の一主面(各パッケージ部材の一主面)には、圧電振動素子に形成された励振電極の封止に寄与する領域(封止領域)が存在するが、前述のように封止領域の平坦度を維持できることにより、圧電振動デバイスの気密性を向上させることができる。さらに本発明の集合基板の切断方法によれば、集合基板の各パッケージ部材の封止領域に形成された金属ロウ材は集合基板の切断によって損傷を受けないため、良好な気密性を確保することができる。
【0011】
上記目的を達成するために、前記パッケージ部材が結晶性材料からなり、前記傾斜部が湿式エッチングによって成形されていてもよい。この場合、前記傾斜部を容易に成形することができる。具体的に前記パッケージ部材の母材料に結晶性材料、例えば水晶等の異方性結晶材料や、ガラス等の等方性材料を用い、湿式エッチング法(いわゆるウエットエッチング法)によってこれらの結晶性材料を化学的に溶解させることにより、前記傾斜部を成形することができる。つまり前記結晶性材料は固有の角度で前記溶解が進行するため、前記パッケージ部材の母材料の表面に傾斜面を有する溝を容易に成形することができる。
【0012】
また、前記傾斜部は化学的溶解処理によって成形されるため、機械的加工によって前記傾斜部を成形する場合よりも、傾斜部の表面を平滑な状態にすることができる。そして前記傾斜部の集合基板の一主面近傍の領域を除いた領域で集合基板を切断することにより、分割溝の前記一主面近傍の領域は切断に寄与しない領域となるため平滑な面状態を維持することができる。このように前記傾斜部の集合基板の一主面近傍の領域(分割溝端部)は平滑面であるため、被加工物(集合基板)の表面(主面)へのチッピングの伝播を防止することができる。また、傾斜部の表面が湿式エッチングによって平滑な状態で成形されることにより、傾斜部形成後の切断面のチッピングの抑制にも効果的である。
【0013】
また、上記目的を達成するために、前記集合基板の切断が、ダイシング法またはブラスト法あるいはレーザービームを用いた切断方法によって行われてもよい。前記集合基板の切断手段としてこれらの方法を用いることにより、前記集合基板切断時の前記分割溝端部のチッピング等の発生を抑制することができる。これは前記集合基板を構成するパッケージ部材の母材料の種類や集合基板の厚みに応じて、前述の切断方法から適切な切断手段を選択するとともに、前記傾斜部の集合基板の一主面近傍の領域(分割溝端部)を除いた領域で集合基板を切断することにより、実現できるためである。
【0014】
上記目的を達成するために、前記集合基板の切断がダイシング法によって行われ、前記傾斜部はダイシングブレードの幅よりも幅広の領域を有し、当該幅広の領域から前記集合基板が切断されてもよい。
【0015】
前記構成であれば、前記分割溝は前記集合基板の一主面に、前記一主面から前記集合基板の厚み方向に漸次縮幅する傾斜部を有しており、当該傾斜部はダイシングブレードの幅よりも幅広の領域を有し、当該幅広の領域から前記集合基板が切断される。このように傾斜部の幅とダイシングブレードの幅の寸法関係によって、ダイシング法による前記集合基板切断時の前記分割溝端部のチッピング等の発生を抑制することができる。具体的に前記ダイシングブレードは切断開始時には分割溝の傾斜部(傾斜面)と最初に接触するが、この際の分割溝との接触角は、被加工物に対してダイシングブレードが垂直に当接する場合よりも小さくすることができる。また、ダイシングブレードと前記傾斜部との最初の接触以後も、前記傾斜面が漸次縮幅する形状であるため、ダイシングブレードとの小さな接触角を維持しつつ、切断を行うことができる。これより切断時に被加工物に加わる応力を低減することができるため、集合基板を切断する際の前記分割溝の端部だけでなく、分割溝内部におけるチッピング等の発生も抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、チッピング等の発生を抑制することができる圧電振動デバイスのパッケージ部材の集合基板の切断方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態を示す集合基板の上面図。
【図2】図1のA−A線における拡大断面図。
【図3】図2のB部の拡大図。
【図4】本発明の実施形態における切断前の状態を表す集合基板の部分断面図。
【図5】本発明の実施形態における切断時の状態を表す集合基板の部分断面図。
【図6】本発明の実施形態における切断後の状態を表すパッケージ部材の部分断面図。
【図7】本発明のその他の実施形態を示す集合基板の部分断面図。
【図8】従来の切断形態を示す集合基板の部分断面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、圧電振動デバイスのパッケージを構成するパッケージ部材として、水晶振動素子を内部に収容する容器体が多数個形成された水晶振動子用の集合基板を例に挙げて説明する。まず本実施形態におけるパッケージ部材を用いた水晶振動子について説明した後、前記パッケージ基板の集合基板の切断方法について説明する。
【0019】
本発明におけるパッケージ部材は表面実装型の水晶振動子の構成部材である。前記表面実装型の水晶振動子は、水晶振動素子を収容するための凹部を備えた容器体(パッケージ部材)と、前記凹部の内底面に電性接合材等を介して接合されるATカット水晶振動素子と、前記凹部を気密に封止する平板状の蓋体(パッケージ部材)が主な構成部材となっている。
【0020】
図1は本発明の実施形態を示すパッケージ部材(容器体)の集合基板の平面図である。図1において集合基板100は結晶性材料である水晶を母材料とし、略直方体状の容器体1(点線で囲んだ領域が一区画。図1乃至2参照)が多数個、格子状に整列して一体形成されたシート状の基板である。集合基板100の一主面101の各容器体には、水晶振動素子を収容するための凹部3が各々形成されている。集合基板100の他主面102の各容器体の底面には外部機器等と接続するための導体からなる外部接続端子(図示省略)がそれぞれ形成されている。前記外部接続端子は各容器体の内部に形成された図示しない配線導体を経由して凹部3の内底面4に形成された電極パッド(図示省略)と電気的に接続されている。前記電極パッドは、圧電振動素子の励振電極から圧電振動素子の一端側に引き出された引出電極が導電性接合材を介して電気機械的に接続されることになる。なお、凹部3を環状に包囲する直立体(堤部2)の上面には金属ロウ材(図示省略)が周状に形成されている。
【0021】
そして図示しない平板状の蓋体の一主面には前記堤部2の上面の金属ロウ材と対応する位置に金属膜が周状に形成されている。前記蓋体と容器体1とは、容器体1の前述の電極パッド上に水晶振動素子を接合し、周波数調整等の所定の工程を経た後、蓋体の前記金属膜と、容器体1の前記金属ロウ材とが当接するようにして、蓋体と容器体とが位置決め載置される。その後、加熱雰囲気下でこれらの金属(前記金属膜と前記金属ロウ材)を溶融一体化させることで蓋体と容器体とが気密に接合される。以上が本実施形態におけるパッケージ部材を用いた水晶振動子についての説明である。
以下、前記パッケージ基板の集合基板をダイシング法によって複数のパッケージ基板(容器体)に分割する切断方法について主要工程毎に説明する。
【0022】
(分割溝形成工程)
本実施形態において集合基板100の、隣接する容器体の間には複数の容器体に分割するための分割溝5が縦横に形成されている。分割溝5は集合基板100を切断する際の基準線となっており、分割溝5に沿って集合基板が縦横に切断されることによって複数の容器体1,1,・・・,1が得られる。つまり、集合基板100を分割溝5に沿って切断して得られた切断面がそのまま各容器体の外側面となる。このように一枚の基板に余分な切断代を設けず多数個の容器体を高密度で形成することにより、生産効率をより向上させている。
【0023】
分割溝5について図3乃至4を用いて具体的に説明する。図3は図2のB部の拡大図である。分割溝5は集合基板100の一主面101から集合基板100の厚み方向に漸次縮幅(溝の幅が集合基板の厚み方向に漸次小さくなる)する傾斜部50を有している。そして傾斜部50は一端は集合基板100の一主面101であり、他端は溝底部51となっている。前記傾斜部50はフォトリソグラフィー技術を用いた湿式エッチングによって成形されている。湿式エッチングを用いることによって傾斜部50を容易に成形することができる。具体的に本実施形態では集合基板100の母材料に異方性の結晶材料である水晶を用い、湿式エッチング法によって水晶を化学的に溶解させることにより、傾斜部50を成形している。つまり異方性結晶である水晶は固有の角度で化学的溶解が進行するため、集合基板100の一主面101に傾斜面50を有する分割溝5を容易に成形することができる。なお傾斜部50の成形はフォトリソグラフィー技術を用いた湿式エッチング以外に、フォトリソグラフィー技術を用いたドライエッチング法等の乾式エッチングによって行ってもよい。また、傾斜部は断面視で直線状に傾斜したものだけに限定されるものではなく、円弧状に傾斜した状態であってもよい。
【0024】
傾斜部50は化学的溶解処理によって成形されるため、機械的加工によって前記傾斜部を成形する場合よりも、傾斜部の表面を平滑な状態にすることができる。そして傾斜部50の一主面101の近傍の領域を除いた領域(後述する図5に示すダイシングブレードBが当接する傾斜部の領域)で集合基板100を切断することで分割溝5の一主面101の近傍の領域は切断に寄与しない領域となるため平滑な面状態を維持することができる。このように傾斜部50の集合基板100の一主面近傍の領域(分割溝端部)は平滑面であるため、被加工物(集合基板)の表面(主面)へのチッピングの伝播を防止することができる。また、傾斜部50の表面が湿式エッチングによって平滑な状態で成形されることにより、傾斜部形成後の切断面のチッピングの抑制にも効果的である。
【0025】
本実施形態において分割溝5は、集合基板100の分割に用いられるダイシングブレードBの幅D1(本実施形態では約0.05mm)よりも幅広の領域D2(本実施形態では約0.09mm)を有している(図4参照)。なお図4においてダイシングブレードBの外縁から分割溝5の開口端部までの距離Wは、ダイシングブレードBの左右でそれぞれ約0.02mmとなっており、これは分割溝5の開口部分に対してダイシングブレードBが略中央に位置するように近接した場合の状態を表している。本実施形態ではダイシングブレードによって切断する仮想ラインに対して、ダイシングブレードBの幅よりも約0.04mm広い開口寸法となるよう湿式エッチングによって前記仮想ラインが拡幅されている(傾斜部50が成形されている)。なお本発明の傾斜部は、ダイシングブレードの幅よりも幅広の領域を有しているが、幅広の領域(前述のD2)の寸法は前記寸法に限定されるものではない。例えば前記幅広の領域は次の方法によって決定するのが好ましい。平坦面な集合基板を切断する場合に発生する通常のチッピングの大きさは、集合基板の母材料および切断手段等に依存するため、これらの条件に応じて発生する通常のチッピングの最大径以上の寸法を設定する。つまり使用する切断手段の両外側(左右)に前記通常のチッピングの最大径以上の幅を各々加えた寸法をD2として設定するのが好ましい。
【0026】
(切断工程)
本発明の集合基板の切断方法の切断工程について図4乃至6を参照して説明する。ダイシングブレードによる集合基板100の切断は、高速回転するダイシングブレードBを分割溝5に沿うように当接させて行う。本発明の実施形態では、前述したようにダイシングブレードBの幅よりも幅広の領域D2が傾斜部50に形成されているため(図4)、ダイシングブレードBの分割溝5に対する僅かな位置ずれが発生した場合であっても必ず傾斜部50にダイシングブレードBが当接することになる。
【0027】
図5に示すようにダイシングブレードBは切断開始時には分割溝5の傾斜部50と最初に接触するが、この際の分割溝との接触角(図5に示すθ)は、被加工物に対してダイシングブレードが垂直に当接する場合(図8参照)よりも小さくすることができる。また、ダイシングブレードBと傾斜部50との最初の接触以後も、傾斜面50は集合基板100の厚み方向に漸次縮幅する形状であるため、ダイシングブレードとの小さな接触角(θ)を維持しつつ、切断を行うことができる。このようにして切断を行い、集合基板100を分割し終わった状態が図6である。本発明の切断方法であれば切断手段と被加工物との接触角を小さくすることができ、切断時に被加工物に加わる応力を低減することができる。これより切断時に被加工物に加わる応力を低減することができるため、集合基板100を切断する際の分割溝5の端部だけでなく、分割溝5の内部におけるチッピング等の発生も抑制することができる。
【0028】
また、分割溝5は一主面101から集合基板100の厚み方向に漸次縮幅する傾斜部50を有しているため、傾斜部50の一主面101の近傍の領域(分割溝端部)を除いた領域で集合基板100を切断することにより分割溝5の一主面101の近傍の領域は切断に寄与しない領域となる。これにより、前記分割溝端部におけるチッピング等の発生を防止することができる。また傾斜部50の一主面101の近傍の領域(分割溝端部)を除いた領域で集合基板100を切断することにより、集合基板100の一主面101への切断の影響を緩和することがきる。
【0029】
なお、本発明のその他の実施形態として図7に示すように、分割溝5を集合基板100の一主面101に限らず、集合基板100の両主面(101、102)のそれぞれに形成してもよい。この場合、集合基板100の表裏両主面(101、102)におけるチッピング等の発生を防止できるためより効果的である。また、図7に示すように集合基板100の表裏両主面(101、102)に分割溝5を形成する場合、集合基板100の一主面側(101)からだけでなく、集合基板100の他主面側(102)からも切断を行ってもよい。
【0030】
本発明における集合基板の切断方法はダイシング法に限らず、ブラスト法やレーザービームを用いた切断方法によって行ってもよい。集合基板の切断手段としてこれらの方法を用いることにより、集合基板切断時の前記分割溝端部のチッピング等の発生を抑制することができる。これは集合基板を構成するパッケージ部材の母材料の種類や集合基板の厚みに応じて、ブラスト法やレーザービームを用いた切断方法から適切な切断手段を選択するとともに、前記傾斜部の集合基板の一主面近傍の領域(分割溝端部)を除いた領域で集合基板を切断することにより、実現できるためである。また、分割溝5の内壁面および前記分割溝端部に樹脂からなる保護膜(例えば感光性樹脂)を形成してもよい。このように保護膜を形成することにより、前記傾斜部の効果をより高めることができる。
【0031】
本発明の実施形態では表面実装型の水晶振動子のパッケージ部材の集合基板を例に挙げているが、水晶振動子以外に水晶フィルタ、水晶発振器などの電子機器等に用いられる他の圧電振動デバイスのパッケージ部材の集合基板の切断にも適用可能である。
【0032】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
圧電振動デバイスの量産に適用できる。
【符号の説明】
【0034】
1 容器体
100 集合基板
2 堤部
3 凹部
4 凹部内底面
5 分割溝
50 傾斜部
51 底溝部
101 一主面
102 他主面
B ダイシングブレード
D1 ブレード幅
D2 分割溝開口幅
W 幅広領域
θ 接触角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動素子に形成された励振電極を封止してなる圧電振動デバイス用のパッケージ部材が複数形成された集合基板を、複数の前記パッケージ部材に分割するための切断方法であって、
前記集合基板の少なくとも一主面には、複数の前記パッケージ部材に分割するための複数の分割溝が形成され、
前記分割溝は前記一主面から前記集合基板の厚み方向に漸次縮幅する傾斜部を有し、前記傾斜部の一部の領域から前記集合基板が切断されることを特徴とする集合基板の切断方法。
【請求項2】
前記パッケージ部材が結晶性材料からなり、前記傾斜部が湿式エッチングによって成形されていることを特徴とする請求項1に記載の集合基板の切断方法。
【請求項3】
前記集合基板の切断が、ダイシング法またはブラスト法あるいはレーザービームを用いた切断方法によって行われることを特徴とする請求項1乃至2に記載の集合基板の切断方法。
【請求項4】
前記集合基板の切断がダイシング法によって行われ、前記傾斜部はダイシングブレードの幅よりも幅広の領域を有し、当該幅広の領域から前記集合基板が切断されることを特徴とする請求項1乃至2に記載の集合基板の切断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−42398(P2013−42398A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178576(P2011−178576)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】