説明

圧電振動デバイス

【課題】 気密封止する際の封止ガスや異物による悪影響をなくし、導電性バンプの応力の影響を軽減した圧電振動デバイスを提供する。
【解決手段】 振動部23と保持部24とを有する圧電振動片2と、前記圧電振動片を保持するベース3と、前記ベースに保持した前記圧電振動片を気密封止するためにベースの封止部で接合する蓋4とが設けられ、前記ベースの搭載部に前記圧電振動片の保持部が導電性バンプBにより超音波接合された圧電振動デバイスにおいて、前記圧電振動片の振動部23と前記ベースの封止部321の間を隔壁した遮蔽板5が介在されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、圧電振動デバイスとして、例えば、水晶振動子や水晶フィルタ、水晶発振器等が挙げられる。この種の圧電振動デバイスでは、その筐体が直方体のパッケージでベースと蓋とから構成される。そして、ベースと蓋とが接合されることで、パッケージの内部の圧電振動片が気密封止されている。近年、圧電振動デバイスの小型化に伴って、特許文献1に示すように、圧電振動片がFCB法により導電性バンプを介してベースの搭載部に電気的機械的に接合して保持されている。
【特許文献1】特開2001−85966号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
圧電振動デバイスにおける問題点として、気密封止時のスプラッシュ等により発生する封止ガスや異物等が圧電振動片の振動部に付着することによって圧電振動デバイスの特性にも悪影響を及ぼすことがあった。特に、近年の高周波化に伴っていわゆる逆メサ型の圧電振動片が採用されているが、このような逆メサ型の圧電振動片では保持部分に対して振動部の厚みが非常に薄くなるため付着物の悪影響が顕在化しやすい。
【0004】
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、気密封止する際の封止ガスや異物による悪影響をなくした圧電振動デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる圧電振動デバイスは、振動部と保持部とを有する圧電振動片と、前記圧電振動片を保持するベースと、前記ベースに保持した前記圧電振動片を気密封止するためにベースの封止部で接合する蓋とが設けられ、前記ベースの搭載部に前記圧電振動片の保持部が導電性接合材により接合された圧電振動デバイスにおいて、前記圧電振動片の振動部と前記ベースの封止部の間を隔壁した遮蔽板が介在されてなることを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、遮蔽板が圧電振動片の振動部とベースの封止部の間を隔壁しているので、封止部で発生する封止ガスやアニール工程で発生するアウトガス、コンタミ等が振動部に付着するのを抑制することで圧電振動デバイスの特性の低下をなくす。
【0007】
また、上述の構成に加えて、前記遮蔽板は当該遮蔽板の一部が前記圧電振動片の振動部を覆った状態で圧電振動片に重畳配置され圧電振動片の保持部に導電性接合材で接合されてもよい。この構成により、上述の作用効果に加えて、圧電振動片全体に対して遮蔽板を完全に覆い隠すことなく、封止部で発生する封止ガスが振動部に付着するのをより効果的に抑制することができる。また遮蔽板を大型化する必要がなくなり、かつベースの収納スペースを拡大させることなく遮蔽板を取り付けることができるため、圧電振動デバイスの小型化に対応できる。
【0008】
また、本発明によれば、振動部と保持部とを有する圧電振動片と、前記圧電振動片を保持するサポートと、前記サポートを介して圧電振動片を保持するベースと、前記ベースに保持した前記圧電振動片を気密封止するためにベースの封止部で接合する蓋とが設けられ、前記ベースの搭載部に前記サポートが導電性接合材により接合されるとともに前記サポートの搭載部に前記圧電振動片の保持部が導電性接合材により接合された圧電振動デバイスにおいて、前記サポートの一部が遮蔽板となって前記圧電振動片の振動部と前記ベースの封止部の間を隔壁した状態で介在されてなり、前記サポートは当該サポートの一部が前記圧電振動片の振動部を覆った状態で圧電振動片に重畳配置され圧電振動片の保持部に導電性接合材で接合されてなることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、サポートが圧電振動片の振動部とベースの封止部の間を隔壁しているので、封止部で発生する封止ガスやアニール工程で発生するアウトガス、コンタミ等が振動部に付着するのを抑制することで圧電振動デバイスの特性の低下をなくす。また前記サポートは当該サポートの一部が前記圧電振動片の振動部を覆った状態で圧電振動片に重畳配置され圧電振動片の保持部に導電性接合材で接合されているので、圧電振動片が各種の導電性接合材による接合時の拘束力の悪影響やベースの応力歪みの影響をサポートが吸収して圧電振動片に悪影響を与えることがない。圧電振動片全体に対してサポートを完全に覆い隠すことなく、封止部で発生する封止ガスが振動部に付着するのをより効果的に抑制することができる。サポートを大型化する必要がなくなり、かつベースの収納スペースを拡大させることなくサポートを取り付けることができるため、圧電振動デバイスの小型化に対応できる。
【0010】
なお、圧電振動片が水晶の場合、遮蔽板とサポートは水晶やガラス、セラミック等の絶縁性の脆性材料であってもよい。これは圧電振動片の励振電極に対して遮蔽板やサポートが近接配置されても浮遊容量の悪影響が生じにくく、必要な配線やパッド部等の形成も圧電振動片の電極形成と同様の手法により容易に行える。遮蔽板やサポートの熱膨張係数を圧電振動片の熱膨張係数と近接したガラスや水晶等を選択することで、圧電振動片が受ける外部からの熱的機械的応力の悪影響をサポートが吸収するだけでなく、遮蔽板やサポートから圧電振動片に対する熱的機械的応力の悪影響もなくなり、結果として圧電振動デバイスの電気的特性の経年変化が生じにくくなり、電気的特性の向上に好適であるからである。
【0011】
また、上述の構成に加えて、前記サポートは当該サポートの一部が前記圧電振動片の振動部を覆った状態で2枚のサポートが圧電振動片の両主面に重畳配置され圧電振動片の保持部に導電性接合材で接合されてなり、底面側のサポートにより前記ベースの搭載部に導電性接合材で接合されてもよい。この構成により、上述の作用効果に加えて、封止部で発生する封止ガスやアニール工程で発生するアウトガス、コンタミ等が振動部に付着するのをより効果的に抑制することができる。
【0012】
以上の構成は、特に、薄肉の振動部と厚肉の保持部(厚肉部)とを有し、振動部の厚みが非常に薄く形成された逆メサ型の圧電振動片に有効であり、高周波化にも対応できる。また逆メサ型の圧電振動片の場合、前記遮蔽板やサポートの一部が前記圧電振動片の薄肉の振動部を覆った状態で圧電振動片に重畳配置され、圧電振動片の厚肉の保持部に導電性接合材で接合することで、厚肉の保持部には側壁部分が存在するので、薄肉の振動部に対して封止部で発生する封止ガスやアニール工程で発生するアウトガス、コンタミ等が振動部に付着するのをさらにより効果的に抑制することができる。
【0013】
また、上述の構成は導電性接合材が導電性バンプであり、当該導電性バンプにより超音波接合されてもよい。この構成により、上述の作用効果に加えて前記ベースの搭載部に前記圧電振動片の保持部が導電性バンプにより超音波接合されているので、接合時のガスの発生の影響が少なくなり、圧電振動片の振動部に対して接合ガスが付着して特性の低下をなくすことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、気密封止する際の封止ガスや異物による悪影響をなくした圧電振動デバイスを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に示す各実施例では、圧電振動デバイスとして水晶振動子に本発明を適用した場合を示す。図1は本発明の第1の実施形態にかかる水晶振動子の概略構成を示した断面図である。図2、図3は第1の実施形態の他の実施例にかかる概略断面図である。
【0016】
本実施例にかかる水晶振動子1では、図1に示すように、水晶振動片2(本発明でいう圧電振動片)と、この水晶振動片2を片保持するベース3と、ベース3に保持した水晶振動片2を気密封止するための蓋4と、遮蔽板5が設けられている。
【0017】
この水晶振動子1では、ベース3と蓋4とからパッケージが構成され、ベース3と蓋4とが接合されてパッケージの内部空間が形成され、このパッケージの内部空間内のベース3の上に水晶振動片2が保持されるとともに、パッケージの内部空間が気密封止される。この際、図1に示すように、ベース3と水晶振動片2とは、それぞれ金属材料からなる導電性バンプBを用いてFCB法により電気機械的に超音波接合(拡散接合)されている。
【0018】
ベース3は、図1に示すように、底部31と、この底部31から上方に延出した壁部32とから構成される箱状体に形成されている。このベース3は、セラミック材料からなる平面視矩形状の一枚板上に、セラミック材料の直方体が積層して凹状に一体的に焼成されている。
【0019】
また、壁部32は、底部31の表面外周に沿って成形されている。壁部32の上面は、蓋4との接合領域(封止部321)であり、この接合領域には、蓋4と接合するための図示しない封止部材(例えば、メタライズ層や金属リング材等)が設けられている。
【0020】
また、このベース3の底部31には、水晶振動片2の図示しない励振電極と電気機械的に接合するための複数の電極パッド33,33(ベースの搭載部)が形成されている。これら電極パッドは、ベース3の外周裏面に形成される端子電極(図示省略)にそれぞれ電気的に接続されている。これら端子電極から外部部品や外部機器と接続される。これらの端子電極および電極パッドは、タングステン、モリブデン等のメタライズ材料を印刷した後にベース3と一体的に焼成して形成される。そして、これらの端子電極および電極パッドのうち一部のものについては、メタライズ上部にニッケルメッキが形成され、その上部に金メッキが形成されて構成される。
【0021】
蓋4は、例えば金属材料やセラミック材料等からなり一枚板に成形されている。この蓋4は、下面に図示しない封止材(ろう材、メッキ材、ガラス材等)が形成されており、シームやビーム等の溶接手法、ガラス封止材や金属ろう材等による雰囲気加熱手法によりベース3に接合されて気密封止され、蓋4とベース3とによる水晶振動子1のパッケージが構成される。
【0022】
水晶振動片2は、図1に示すように、ATカット水晶基板からなり、例えば一枚板の直方体に成形され、基板の外周形は直方体形状からなる。この水晶振動片2の基板の両主面には、水晶振動片2の高周波化に対応するため凹部21,22が形成され、凹部21,22内部の中央付近にはそれぞれ図示しない励振電極が形成されている。これらの励振電極を外部電極(本実施例では、ベース3の電極パッド33,33)と電気機械的に接合するために励振電極から引き出された図示しない引き出し電極、および後述する遮蔽板と接合するための遮蔽板接合用のパッド部が水晶振動片2の一端部の両端部である保持部の角付近に形成されている。つまり、水晶振動片2は前記凹部21,22と励振電極により構成された薄肉の振動部23と、引き出し電極と遮蔽板接合用のパッド部が形成され厚肉部(保持部)24とを有している。
【0023】
なお、これらの励振電極と引き出し電極、遮蔽板接合用のパッド部は、フォトリソグラフィ法により形成され、例えば、基板側からクロム、金(Cr−Au)の順に、あるいはニッケル、金(Ni−Au)の順に積層して形成されている。
【0024】
前記ベース3の搭載部である電極パッド33,33に前記水晶振動片2の厚肉部24の一端部のみがベース接合用の導電性バンプBにより超音波接合されている。導電性バンプBは金等からなる金属バンプや金属メッキバンプにより構成されている。なおベース接合用の導電性バンプBは金属バンプが望ましく、水晶振動片接合用の導電性バンプBは金属メッキバンプが望ましいが、これらに限定されるものではない。
【0025】
本発明の第1の実施形態では、前記水晶振動片2の振動部23と前記ベース3の封止部321の間を隔壁した遮蔽板5が介在されてなることに特徴があるので、以下詳細を説明する。
【0026】
遮蔽板5は、例えばZカット水晶基板を用い、一枚板の直方体に成形され、基板の外周形は直方体形状からなり、前記水晶振動片2とほぼ同一形状同一平面積で構成されている。本形態ではZカット水晶基板を用いているがATカット等他のカットアングルのものを用いてもよく、ガラス等水晶基板以外の絶縁性の脆性材料でもよい。この遮蔽板5の基板底面側の一端部の両端部には、前記水晶振動片2を接合するための図示しない水晶振動片接合用のパッド部が形成されている。なお、この水晶振動片接合用のパッド部は、上述の電極等と同様にフォトリソグラフィ法により形成され、例えば、基板側からクロム、金(Cr−Au)の順に、あるいはニッケル、金(Ni−Au)の順に積層して形成されている。
【0027】
そして、ベース3に搭載された水晶振動片2の上部に遮蔽板5を重畳配置し、前記水晶振動片2の厚肉部24の一端部に形成された遮蔽板接合用のパッド部と、前記遮蔽板5の一端部に形成された水晶振動片接合用のパッド部との間に水晶振動片接合用の導電性バンプBを介在した状態で超音波接合されている。これにより遮蔽板5の一部が水晶振動片2の振動部23を覆った状態でベース3の封止部321から完全に隔壁することができる。また本形態ではベース3と水晶振動片3と遮蔽板5とが一端部のみで保持(片持ち保持)されており、接合後の導電性バンプBの拘束力による悪影響が水晶振動片3に対して加わりにくい保持構成となっている。なお、本形態に限らず、水晶振動片2と遮蔽板5とが予め水晶振動片接合用の導電性バンプBにより接合された一体物をベース3に搭載し、同じくベース接合用の導電性バンプBで接合してもよい。
【0028】
なお、本発明の第1の実施形態として、図1に示すような遮蔽板5に限るものではなく、これらの形状や個数、接合構成等について特定されるものではない。例えば図2に示すように、逆凹形状の遮蔽板51を用いて水晶振動片2と独立した状態でベースに搭載するとともに、水晶振動片2の上部を完全に被覆した状態でベース接合用の導電性バンプBによりベース3にそれぞれ接合した構成としてもよい。また図3に示すように、ベース3に中段部35を設け、この中段部35の下の収納部で水晶振動片2をベース接合用の導電性バンプBによりベース3に電気的機械的に接合するとともに、中段部35で遮蔽板52をベース接合用の導電性バンプBにより接合した構成としてもよい。これらの構成により前記水晶振動片2の振動部23と前記ベース3の封止部321の間を隔壁させることができる。
【0029】
上記したように、本発明の第1の実施形態によれば、遮蔽板5、遮蔽板51、および遮蔽板52が水晶振動片2の振動部23とベース3の封止部321の間を隔壁しているので、封止部321で発生する封止ガスが振動部23に付着するのを抑制することで水晶振動子1の特性の低下をなくす。またベースの電極パッド33,33(ベースの搭載部)に水晶振動片の一端部の保持部24がベース接合用の導電性バンプBにより超音波接合されるとともに水晶振動片の一端部の保持部24に遮蔽板の一端部が水晶振動片接合用の導電性バンプBにより超音波接合されているので、接合時のガスの発生の影響が少なくなり、水晶振動片の振動部23に対して接合ガスが付着して特性の低下をなくすことができる。
【0030】
また、上述の作用効果に加えて遮蔽板5では、水晶振動板2と同一形状同一平面積に構成され、遮蔽板5の一部が前記水晶振動片2の振動部23を覆った状態で水晶振動片2に重畳配置され、水晶振動片2の保持部24にして水晶振動片接合用の導電性バンプBにより超音波接合された一体物を構成しているので、遮蔽板5を大型化することなく、封止部321で発生する封止ガスが振動部23に付着するのをより効果的に抑制することができるとともに、ベース3収納スペースを拡大させることなく遮蔽板5を取り付けることができるため、水晶振動子1の小型化に対応できる。
【0031】
なお、遮蔽板5は水晶振動片2と同じ水晶で構成されているので、水晶振動片接合用の導電性バンプBの超音波接合時の応力の悪影響を吸収して当該導電性バンプBの接合性の向上に好適であり、前記遮蔽板から水晶振動片2に対する熱的機械的応力の悪影響もなくなる。結果として水晶振動子1の電気的特性の経年変化が生じにくくなり、電気的特性の向上に好適な構成とできる。また、絶縁材料の水晶からなる遮蔽板5を水晶振動片2の励振電極に対して近接配置したとしても浮遊容量の悪影響が生じにくい。前記水晶振動片接合用のパッド部の形成も水晶振動片の各電極形成と同様にフォトリソグラフィ法により容易に行える。加えてZカット水晶基板を用いることで、異方性の影響を受けにくい材料であるので、前記遮蔽板を成形する際のエッチング時、異方性の影響を受けにくく形状精度がよいため、前記遮蔽板の形状を任意の形状に容易に成形することが可能となる。これは、異方性の影響を受けやすい材料の場合、前記遮蔽板を成形する際のエッチングの時、予め設定した軸方向に対して斜め方向にエッチングするため、前記遮蔽板の形状を任意の形状や寸法、面積に成形することが難しくなるためである。また、前記遮蔽板が異方性の影響を受けにくい材料であるので、前記水晶振動片の振動の影響を受けることがなく、組み立て精度や保持位置の精度も向上する。結果として前記遮蔽板の設置により前記水晶振動片の特性を悪化させることを防止することが可能となる。
【0032】
以上の構成は、特に、薄肉の振動部23と厚肉の保持部(厚肉部)24とを有し、振動部23の厚みが非常に薄く形成された逆メサ型の水晶振動片2に有効であり、高周波化にも対応できる。水晶振動片の厚肉の保持部24に対してベース3や遮蔽板5を各種の導電性バンプBにより接合することができるので、導電性バンプ接合時の水晶振動片2の厚み方向の強度を確保することができ、振動部23の厚みが薄く強度の比較的弱い逆メサ型の水晶振動片2の割れをなくすのに好適である。加えて遮蔽板5の一部が水晶振動片2の薄肉の振動部23を覆った状態で水晶振動片2に重畳配置され、水晶振動片2の厚肉の保持部24に接合することで、厚肉の保持部24には側壁部分241が存在するので、薄肉の振動部23に対して封止部321で発生する封止ガスが振動部23に付着するのをさらにより効果的に抑制することができる。
【0033】
次に、本発明の第2の実施形態について図面を参照して説明する。図4は本発明の第2の実施形態にかかる水晶振動子の概略構成を示した断面図である。図5、図6は第2の実施形態の他の実施例にかかる概略断面図である。なお上記第1の実施形態と同様の部分については同番号を付すとともに、相違点を中心に説明する。
【0034】
本発明の第2の実施形態では、図4に示すように、水晶振動片2(本発明でいう圧電振動片)と、この水晶振動片2を両主面で片持するサポート6、およびサポート60と、このサポート6を接合するベース3と、ベース3に保持した水晶振動片2を気密封止するための蓋4とが設けられている。このうち、前記サポート60は当該サポートの一部が遮蔽板となって前記水晶振動片2の振動部23と前記ベース3の封止部321の間を隔壁した状態で介在されてなり、サポート60は当該サポートの一部が水晶振動片2の振動部23を覆った状態で水晶振動片2に重畳配置され水晶振動片2の保持部24に接合されてなることに特徴があるので、以下詳細を説明する。
【0035】
サポート6,60は、例えばZカット水晶基板を用い、一枚板の直方体に成形され、基板の外周形は直方体形状からなり、前記水晶振動片2とほぼ同一形状同一平面積で構成されている。本形態ではZカット水晶基板を用いているがATカット等他のカットアングルのものを用いてもよく、ガラス等水晶基板以外の絶縁性の脆性材料でもよい。このサポート6の上面側の一端部の両端部、およびサポート60の底面側の一端部の両端部には、前記水晶振動片2の前記引き出し電極と接合するための図示しない水晶振動片接合用のパッド部が形成され、サポート6の底面側の一端部の両端部には、前記水晶振動片接合用のパッド部と図示しないビヤや引き回しパターンにより接続された前記ベース3を接合するための図示しないベース接合用のパッド部が形成されている。なお、これらの水晶振動片接合用のパッド部やベース接合用のパッド部、引き回しパターン等は、上述の電極等と同様にフォトリソグラフィ法により形成され、例えば、基板側からクロム、金(Cr−Au)の順に、あるいはニッケル、金(Ni−Au)の順に積層して形成されている。
【0036】
そして、前記ベース3の搭載部である電極パッド33,33に前記サポート6の一端部のみがベース接合用のパッド部がベース接合用の導電性バンプBにより超音波接合されている。ベース3に搭載されたサポート6の上部に水晶振動片2を重畳配置し、かつこの水晶振動片2の上部にサポート60を重畳配置し、前記水晶振動片2の厚肉部24の一端部の両主面に形成されたサポート接合用のパッド部と、前記各サポート6,60の一端部に形成された水晶振動片接合用のパッド部との間に水晶振動片接合用の導電性バンプBをそれぞれ介在した状態で超音波接合されている。すなわち2枚のサポート6,60が水晶振動片2の両主面に重畳配置され水晶振動片2の保持部24の一端部のみに導電性バンプBにより接合されてなり、底面側のサポート6により前記ベースの搭載部である電極パッド33,33にベース接合用の導電性バンプBにより超音波接合されている。このような構成により、サポート60の一部が水晶振動片2の振動部23を覆った状態でベース3の封止部321から完全に隔壁することができる。また本形態ではベース3とサポート6、水晶振動片3、サポート60とが一端部のみで保持(片持ち保持)されており、接合後の導電性バンプBの拘束力による悪影響が水晶振動片3に対して加わりにくい保持構成となっている。なお、本形態に限らず、水晶振動片2とサポート6とサポート60とが予め水晶振動片接合用の導電性バンプBにより接合された一体物をベース3に搭載し、同じくベース接合用の導電性バンプBで接合してもよい。またサポート6ではなくサポート60にベース接合用のパッド部を設け、当該パッド部にてベース接合用の導電性バンプBを介してベース3と電気的機械的に接合し、ベース3に搭載してもよい。
【0037】
なお、本発明の第2の実施形態として、図4に示すようなサポート6とサポート60の組み合わせにより構成されるものに限るものではなく、これらの形状や個数、接合構成等について特定されるものではない。例えば図5に示すように、逆凹形状のサポート61を用いるとともに当該サポートの収納部611に水晶振動片2を水晶振動片接合用の導電性バンプBにより電気的機械的に接合し、サポートの側壁の開口端部612でベース接合用の導電性バンプBによりベース3に電気的機械的に接合した構成としてもよい。また図6に示すように、ベース3に中段部35を設けて板状のサポート62を用いるとともに、当該サポート62の底面に水晶振動片2を水晶振動片接合用の導電性バンプBにより電気的機械的に接合し、サポート62の端部でベース接合用の導電性バンプBによりベースの中段部35に電気的機械的に接合した構成としてもよい。これらの構成により前記水晶振動片2の振動部23と前記ベース3の封止部321の間を隔壁させることができるだけでなく、サポートを介してベース3に水晶振動片2を電気的機械的に接合することができる。
【0038】
上記したように、本発明の第2の実施形態によれば、サポート60、サポート61、およびサポート62が水晶振動片2の振動部23とベース3の封止部321の間を隔壁しているので、封止部321で発生する封止ガスが振動部23に付着するのを抑制することで水晶振動子1の特性の低下をなくす。またベースの電極パッド33,33(ベースの搭載部)にサポート6、サポート61、およびサポート62がベース接合用の導電性バンプBにより超音波接合され、かつサポート6とサポート60、サポート61、およびサポート62の搭載部に水晶振動片の保持部24が水晶振動片接合用の導電性バンプBにより超音波接合されているので、接合時のガスの発生の影響が少なくなり、水晶振動片の振動部23に対して接合ガスが付着して特性の低下をなくす。水晶振動片2が各導電性バンプBによる接合時の拘束力の悪影響やベース3の応力歪みの影響をサポート6、サポート61、およびサポート62が吸収して水晶振動片2に悪影響を与えることがない。また、サポート6とサポート60では、水晶振動板2と同一形状同一平面積に構成され、水晶振動片2に対して重畳配置され、水晶振動片2の保持部24に水晶振動片接合用の導電性バンプBにより超音波接合された一体物を構成しているので、サポート6とサポート60を大型化することなく、水晶振動片2に対してサポート6とサポート60で全体を包み込むことが可能となる。この結果封止部321で発生する封止ガスが振動部23に付着するのをより効果的に抑制することができるだけでなく、ベース3収納スペースを拡大させることなくサポートを取り付けることができるため、水晶振動子1の小型化に対応できる。
【0039】
なお、サポート6とサポート60、サポート61、およびサポート62は水晶振動片2と同じ水晶で構成されているので、水晶振動片接合用の導電性バンプBの超音波接合時の応力の悪影響を吸収して当該導電性バンプBの接合性の向上に好適であり、前記サポートから水晶振動片2に対する熱的機械的応力の悪影響もなくなる。結果として水晶振動子1の電気的特性の経年変化が生じにくくなり、電気的特性の向上に好適な構成とできる。また、絶縁材料の水晶からなるサポート6とサポート60、サポート61、サポート62を水晶振動片2の励振電極に対して近接配置したとしても浮遊容量の悪影響が生じにくい。前記水晶振動片接合用のパッド部の形成も水晶振動片の各電極形成と同様にフォトリソグラフィ法により容易に行える。加えてZカットの水晶基板を用いることで、異方性の影響を受けにくい材料であるので、前記サポートを成形する際のエッチング時、異方性の影響を受けにくく形状精度がよいため、前記サポートの形状を任意の形状に容易に成形することが可能となる。これは、異方性の影響を受けやすい材料の場合、前記サポートを成形する際のエッチングの時、予め設定した軸方向に対して斜め方向にエッチングするため、前記サポート材の形状を任意の形状や寸法、面積に成形することが難しくなるためである。また、前記サポート材が異方性の影響を受けにくい材料であるので、前記水晶振動片の振動の影響を受けることがなく、組み立て精度や保持位置の精度も向上する。結果として前記サポート材の設置により前記水晶振動片の特性を悪化させることを防止することが可能となる。
【0040】
以上の構成は、特に、薄肉の振動部23と厚肉の保持部(厚肉部)24とを有し、振動部23の厚みが非常に薄く形成された逆メサ型の水晶振動片2に有効であり、高周波化にも対応できる。水晶振動片の厚肉の保持部24に対してベース3やサポート6とサポート60、サポート61、およびサポート62を水晶振動片接合用の導電性バンプBにより接合することができるので、導電性バンプ接合時の水晶振動片2の厚み方向の強度を確保することができ、振動部23の厚みが薄く強度の比較的弱い逆メサ型の水晶振動片2の割れをなくすのに好適である。加えてサポートの一部が水晶振動片2の振動部23を覆った状態で水晶振動片2に重畳配置され、水晶振動片の厚肉の保持部24に対してサポート6とサポート60、サポート61、およびサポート62を接合することで、厚肉の保持部24には側壁部分241が存在するので、薄肉の振動部23に対して封止部321で発生する封止ガスが振動部23に付着するのをさらにより効果的に抑制することができる。
【0041】
なお、上記実施形態では、逆メサ型の水晶振動板のみを用いた例について説明しているが、平板状の水晶振動板等の振動部と保持部を具備する他の水晶振動板にも適用できる。また、図7に示すように、水晶振動板2として周囲に貫通溝24を介して外枠26を形成したものを用いるとともに、水晶振動板の外枠26に対して導電性バンプBにより遮蔽板5、またはサポート6、60、61、62を接合する構成でもよい。この実施例では導電性接合材として導電性バンプBを用いた構成に特に有効であり、導電性バンプBの接合時の拘束力の悪影響やベースの応力歪みの影響をなくすことができ、しかも封止部321で発生する封止ガスが振動部23に付着するのをより効果的に抑制することができる上で好ましい。
【0042】
上記実施形態では、導電性接合材として導電性バンプを例にして説明しているが、シリコーン樹脂系やエポキシ樹脂系の導電性樹脂接着剤を用いてもよいし、はんだや鉛フリーはんだ、金錫、金ゲル材等の金属ろう材を用いてもよい。また、上述の遮蔽板5、51、52や、サポート6と60、61,62の外表面のうち少なくともベース3の封止部321に近接した領域には、スプラッシュによる不要物(ガスや異物)が付着しやすくなる構成を施すとより好ましい。このような構成例として、粗面部を形成したり、SiやTi、Cr、Al、NiCr等の酸化膜からなる薄膜を形成したり、あるいはTi、Mg、Ba,Zr等のゲッター材を構成するとよい。
【0043】
なお、本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、水晶振動子や水晶フィルタ、水晶発振器等の圧電振動デバイスに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる水晶振動子の概略構成を示した断面図。
【図2】第1の実施形態の他の実施例にかかる概略断面図。
【図3】第1の実施形態の他の実施例にかかる概略断面図。
【図4】本発明の第2の実施形態にかかる水晶振動子の概略構成を示した断面図。
【図5】第2の実施形態の他の実施例にかかる概略断面図。
【図6】第2の実施形態の他の実施例にかかる概略断面図。
【図7】他の実施例にかかる概略断面図。
【符号の説明】
【0046】
1 水晶振動子
2 水晶振動片
3 ベース
4 蓋
5,51,52 遮蔽板
6,60,61,62 サポート
B 導電性バンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動部と保持部とを有する圧電振動片と、前記圧電振動片を保持するベースと、前記ベースに保持した前記圧電振動片を気密封止するためにベースの封止部で接合する蓋とが設けられ、前記ベースの搭載部に前記圧電振動片の保持部が導電性接合材により接合された圧電振動デバイスにおいて、
前記圧電振動片の振動部と前記ベースの封止部の間を隔壁した遮蔽板が介在されてなることを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項2】
振動部と保持部とを有する圧電振動片と、前記圧電振動片を保持するサポートと、前記サポートを介して圧電振動片を保持するベースと、前記ベースに保持した前記圧電振動片を気密封止するためにベースの封止部で接合する蓋とが設けられ、前記ベースの搭載部に前記サポートが導電性接合材により接合されるとともに前記サポートの搭載部に前記圧電振動片の保持部が導電性接合材により接合された圧電振動デバイスにおいて、
前記サポートの一部が遮蔽板となって前記圧電振動片の振動部と前記ベースの封止部の間を隔壁した状態で介在されてなり、前記サポートは当該サポートの一部が前記圧電振動片の振動部を覆った状態で圧電振動片に重畳配置され圧電振動片の保持部に導電性接合材で接合されてなることを特徴とする圧電振動デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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