説明

圧電振動デバイス

【課題】 導電性バンプによる圧電振動片の接合強度を向上させ、電気的特性のバラツキをなくしたより信頼性の高い圧電振動デバイスを提供する。
【解決手段】 励振電極が形成された振動部と接続電極が形成された保持部とを有する直方体形状の圧電振動片2と、ベース3と、蓋とが設けられ、前記ベースの収納部に前記圧電振動片の保持部が導電性バンプにより接合された圧電振動デバイスにおいて、前記ベース収納部の底面には1つ以上の稜部と当該稜部に近接する面方向の異なる少なくとも2面以上の部分に形成された電極パッド38,39を有しており、前記圧電振動片の接続電極272,282は圧電振動片の稜部に近接する面方向の異なる少なくとも2面部分に形成され、前記ベース収納部の電極パッドに対して前記圧電振動片の接続電極が近接した状態で導電性バンプを介して電気的機械的に接合した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、圧電振動デバイスとして、例えば、水晶振動子や水晶フィルタ、水晶発振器などが挙げられる。この種の圧電振動デバイスでは、その筐体が直方体のパッケージでベースと蓋とから構成される。そして、ベースと蓋とが接合されることで、パッケージの内部の圧電振動片が気密封止されている。近年、圧電振動デバイスの小型化に伴って、特許文献1に示すように、FCB法などの手法により導電性バンプを介して圧電振動片がベースの搭載部に電気的機械的に接合して保持されているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−85966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したように、導電性バンプによりベース上に圧電振動片を保持したものでは、従来からある導電性樹脂接合材に比べて接合領域を縮小化させることができるので、圧電振動子の小型化に対応できるだけでなく、接合時のガスの発生が少ないため圧電振動片に対してガスの悪影響を与えないため、近年注目されている接合形態である。
【0005】
しかしながら、導電性バンプによる接合形態では、接合強度にバラツキが発生することがある。このようなバラツキは各種接合条件(バンプの高さや電極の厚み、押圧強度、接合温度等)を変更することで平均的な接合強度を改善することはできても、バラツキ幅を縮小するのにはあまり効果がなく、結果として圧電振動デバイスの電気的特性にも悪影響を及ぼしているのが現状である。接合強度が不足による圧電振動デバイスの不発振を招いたりする危険性もあった。
【0006】
そこで、上記課題を解決するために、本発明は導電性バンプによる圧電振動片の接合強度を向上させ、電気的特性のバラツキをなくしたことにより信頼性の高い圧電振動デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、一対の励振電極が形成された振動部と前記励振電極が引き出されて接続電極が形成された保持部とを有する直方体形状の圧電振動片と、前記圧電振動片を保持するベースとが設けられ、前記ベースの収納部に前記圧電振動片の保持部が導電性バンプにより接合された圧電振動デバイスにおいて、前記ベース収納部の内底面には1つ以上の稜部と当該稜部に近接する面方向の異なる少なくとも2面以上の部分に形成された電極パッドを有しており、前記圧電振動片の接続電極は圧電振動片の稜部に近接する面方向の異なる少なくとも2面部分に形成され、前記ベース収納部の2面以上の部分に形成された電極パッドに対して前記圧電振動片の接続電極が近接した状態で導電性バンプを介して電気的機械的に接合されてなることを特徴とする。
【0008】
より具体的には、ベース収納部を直方体形状とし、ベース収納部の内底面の少なくとも2つの稜部と各稜部を挟んで収納部内底面と収納部内側面の少なくとも2面部分に電極パッドを形成するとともに、圧電振動片の少なくとも2つの稜部と各稜部を挟んで圧電振動片底面と圧電振動片側面の少なくとも2面部分に接続電極が形成され、前記ベースに形成された少なくとも2つの電極パッドに対して前記圧電振動片に形成された少なくとも2つの接続電極を近接した状態で配置し、お互いを導電性バンプにより電気的機械的に接合することで、ベース収納部に圧電振動片の端部が保持された構成である。
【0009】
本発明の構成によれば、ベース収納部の内底面には1つ以上の稜部と当該稜部に近接する面方向の異なる少なくとも2面部分に形成された電極パッドを有しており、圧電振動片の接続電極は圧電振動片の稜部に近接する面方向の異なる少なくとも2面部分に形成され、前記ベース収納部の2面以上の部分に形成された電極パッドに対して前記圧電振動片の接続電極が近接した状態で導電性バンプを介して電気的機械的に接合されてなるので、導電性バンプにより接合される領域を拡大することなくベースの収納部の少なくとも2面部分と圧電振動片の少なくとも2面部分で強固にベースと圧電振動片を電気的機械的に接合することができる。またベースの収納部の稜部に対して圧電振動片の稜部を位置合わせすることが容易となり、お互いに位置ずれが生じにくい。結果として導電性バンプによる圧電振動片の電気的機械的な保持強度にもバラツキが生じにくく、圧電振動デバイスの電気的特性も安定したより信頼性の高いものとすることができる。
【0010】
また、上記電極パッドをベース収納部の角部とこの角部近接する3面部分に形成し、上記接続電極を圧電振動板の角部とこの角部近接する3面部分に形成するとともに、お互いの角部とこの角部近接する3面部分を導電性バンプにより電気的機械的に接合する構成としてもよい。このような構成では主面部分同士での接合領域が増えることでより強固に接合することができる。導電性バンプによる圧電振動片の電気的機械的な保持強度にもバラツキがより一層生じにくくなり、圧電振動デバイスの電気的特性もさらに安定したより一層信頼性の高いものとすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、導電性バンプによる圧電振動片の接合強度を向上させ、電気的特性のバラツキをなくしたより信頼性の高い圧電振動デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態にかかる水晶振動子の概略構成を示した分解斜視図。
【図2】本発明の実施例1にかかる水晶振動子の概略構成を示した平面図。
【図3】図2のA−A線に沿った断面図。
【図4】本発明の実施例1の変形例にかかる水晶振動子の概略構成を示した平面図。
【図5】本発明の実施例2にかかる水晶振動子の概略構成を示した平面図。
【図6】図5のC−C線に沿った断面図。
【図7】図5のD−D線に沿った断面図。
【図8】本発明の実施例3にかかる水晶振動子の概略構成を示した平面図。
【図9】図8のE−E線に沿った断面図。
【図10】本発明の実施例3の変形例にかかる断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について圧電振動デバイスとして水晶振動子を例にしながら図面を参照して説明する。図1は本発明の実施形態にかかる水晶振動子の概略構成を示した分解斜視図である。図2は本発明の実施例1にかかる水晶振動子の概略構成を示した平面図であり、図3は図2のA−A線に沿った断面図である。図4は本発明の実施例1の変形例にかかる水晶振動子の概略構成を示した平面図である。図5は本発明の実施例2にかかる水晶振動子の概略構成を示した平面図であり、図6は図5のC−C線に沿った断面図であり、図7は図5のD−D線に沿った断面図である。図8は本発明の実施例3にかかる水晶振動子の概略構成を示した平面図であり、図9は図8のE−E線に沿った断面図である。図10は本発明の実施例3の変形例にかかる断面図である。なお同様の部分については同番号を付すとともに説明の一部を省略している。
【0014】
本実施形態にかかる水晶振動子1では、水晶振動片2(本発明でいう圧電振動片)と収納部33が形成されたベース3とを具備している。またベース3と図示しない蓋とからパッケージが構成され、ベースの収納部33の内底面に水晶振動片2が保持されるとともに、ベース3の開口部に蓋を接合することでパッケージの内部空間であるベースの収納部33が気密封止される。この際、ベース3と水晶振動片2とはそれぞれ金属材料からなる導電性バンプBを用いて電気的機械的に接合されている。
【0015】
水晶振動片2は、ATカット水晶基板からなり、例えば一枚板の直方体形状からなる。つまり図1に示すように、水晶振動片2の外形形状としては底面21と上面22を有しており、底面21には4つの角部211,212,213,214と、角部211と角部212の間の稜部215、角部212と角部213の間の稜部216、角部213と角部214の間の稜部217、角部214と角部211の間の稜部218(図示せず)とが形成されている。また上面22には4つの角部221,222,223,224と、角部221と角部222の間の稜部225、角部222と角部223の間の稜部226、角部223と角部224の間の稜部227、角部224と角部221の間の稜部228とが形成されている。また前記角部211と角部221を結ぶ稜部231(図示せず)、前記角部212と角部222を結ぶ稜部232、前記角部213と角部223を結ぶ稜部233、前記角部214と角部224を結ぶ稜部234が形成され、稜部231と稜部232を端部とする側面23、稜部232と稜部233を端部とする側面24、稜部233と稜部234を端部とする側面25、稜部234と稜部231を端部とする側面26とを有している。
【0016】
この水晶振動片2の底面21と上面22には、水晶振動片2の高周波化に対応するため板面の中央に凹部27,28(27については図示せず)が形成され、これら凹部27,28の内部中央付近にはそれぞれ励振電極271,281(271については図示せず)が形成され、これらの励振電極271,281を外部電極(本実施例では、後述するベース3の電極パッド38,39)と電気機械的に接合するために当該各励振電極から引き出された引き出し電極272,282(接続電極)が水晶振動片2の一端部の両端部である保持部の角部付近に向かって形成され、対向する他主面に回り込んで形成されている。この際引き出し電極272は水晶振動片の稜部234と角部214,224に近接する面方向の異なる4面部分(底面21、上面22、側面25、側面26)に形成され、引き出し電極282は水晶振動片の稜部231と角部211,221に近接する面方向の異なる4面部分(底面21、上面22、側面23、側面26)に形成されている。また、水晶振動片2は凹部27,28と励振電極271,281により構成された板面中央の薄肉の振動部291と、引き出し電極272,282が形成され板面周囲の厚肉部(保持部)292とを有している。なお、これらの励振電極271,281と引き出し電極272,282は、フォトリソグラフィ法により形成され、例えば、基板側からクロム(Cr)、金(Au)の順に、あるいはニッケル(Ni)、金(Au)の順に積層して形成されている。
【0017】
ベース3は、図1に示すように、底部31と、この底部31から上方に延出した壁部32と、この壁部32に囲まれた空間からなる直方体形状の収納部33とを有し、この収納部の内底面331には4つの角部34,35,36,37と、角部34と角部35の間の稜部345、角部35と角部36の間の稜部356、角部36と角部37の間の稜部367、角部37と角部34の間の稜部374とが形成されている。また収納部の内側面には角部34から上方に延出した稜部341、角部35から上方に延出した稜部351、角部36から上方に延出した稜部361、角部37から上方に延出した稜部371が形成され、稜部341と稜部351を端部とする内側面332、稜部351と稜部361を端部とする内側面333、稜部361と稜部371を端部とする内側面334、稜部371と稜部341を端部とする内側面335とを有している。このようなベース3は、例えばセラミック材料からなる平面視矩形状の板(底部31に相当)上に中央に矩形状の貫通穴を有する複数枚の板(壁部32と収納部33に相当)を積層して一体的に焼成することで構成されている。
【0018】
壁部32は、底部31の表面外周に沿って成形されている。壁部32の上面は、蓋との接合領域(封止部321)であり、この接合領域には、蓋と接合するための図示しない封止部材(例えば、メタライズ層や金属リング材等)が設けられている。
【0019】
ベース3の内底面331には、後述する水晶振動片2の励振電極271,281それぞれと電気機械的に接合するための電極パッド38,39が形成されている。この際電極パッド38はベース収納部の角部34と稜部341,345,374に近接する面方向の異なる3面部分(内底面331、内側面332、内側面335)に形成され、電極パッド39はベース収納部の角部37と稜部371,367,374に近接する面方向の異なる3面部分(内底面331、内側面334、内側面335)に形成されている。これら電極パッド38,39はベース3の外周裏面に形成される端子電極(図示省略)にそれぞれ電気的に接続され、これら端子電極から外部部品や外部機器と接続される。これらの端子電極および電極パッドは、タングステン、モリブデンなどのメタライズ材料を印刷した後にベース3と一体的に焼成して形成される。そして、これらの端子電極および電極パッドのうち一部のものについては、メタライズ上部にニッケルメッキが形成され、その上部に金メッキが形成されて構成される。
【0020】
蓋は、例えば金属材料やセラミック材料などからなり一枚板に成形されている。この蓋は、下面に封止材(ろう材、メッキ材、ガラス材等)が形成されており、シームやビームなどの溶接手法、ガラス封止材や金属ろう材などによる雰囲気加熱手法によりベース3に接合されて気密封止され、蓋とベース3とによる水晶振動子1のパッケージが構成される。
【0021】
導電性バンプBについて、FCB手法を用いて接合する導電性バンプの場合には、金属バンプや金属メッキバンプを用いており、具体的な材料としてAuやAuを主成分とするものを用いている。また加熱溶融による手法を用いて接合する導電性バンプの場合には、AuGe、AuSn、Auなどの金系合金ろう材バンプやはんだバンプを用いている。
【0022】
本発明では、上記ベース収納部の2面以上の部分に形成された電極パッド38,39と、上記水晶振動片2の接続電極272,282との導電性バンプBを介した電気的機械的な接合構成(保持構造)に特徴があるので、以下の実施例として詳細を説明する。
【実施例1】
【0023】
図2、図3に示すように、実施例1では、前記ベース3の内底面331には、ベース収納部の稜部345に近接する面方向の異なる少なくとも2面部分(内底面331と内側面332)に対して電極パッド38が形成され、ベース収納部の稜部367に近接する面方向の異なる少なくとも2面部分(内底面331と内側面334)に対して電極パッド39が形成されている。また、水晶振動片2の稜部215に近接する面方向の異なる少なくとも2面部分(底面21と側面23)に対して引き出し電極282が形成され、水晶振動片2の稜部217に近接する面方向の異なる少なくとも2面部分(底面21と側面25)に対して引き出し電極272が形成されている。
【0024】
そして、ベースの電極パッド38の2面部分に対して水晶電振動片の接続電極282の2面部分が近接し、電極パッド38の稜部345と接続電極282の稜部215の間に導電性バンプBが介在した状態で、ベースの電極パッド38の2面部分と水晶振動片の接続電極282の2面部分とが電気的機械的に接合されている。ベースの電極パッド39の2面部分に対して水晶電振動片の接続電極272の2面部分が近接し、電極パッド39の稜部367と接続電極272の稜部217の間に導電性バンプBが介在した状態で、ベースの電極パッド39の2面部分と水晶振動片の接続電極272の2面部分とが電気的機械的に接合されている。
【0025】
なお、前記導電性バンプBが接合されるベースの電極パッドと水晶電振動片の接続電極は、図2に示すように異極の電極間で対向する位置に配置された稜部に限らず、図4に示すようにベースの同じ稜部374と水晶電振動片の同じ稜部218に対して並列に配置されたものでもよい。すなわち、図4に示す実施例1の変形例では、前記ベース3の内底面331には、ベース収納部の稜部374に近接する面方向の異なる少なくとも2面部分(内底面331と内側面335)に対して電極パッド38と電極パッド39が形成され、水晶振動片2の稜部218に近接する面方向の異なる少なくとも2面部分(底面21と側面26)に対して引き出し電極282と引き出し電極272が形成されている。
【0026】
上述の実施例により、導電性バンプBにより接合される領域を拡大することなくベースの収納部の少なくとも2面部分と水晶振動片2の少なくとも2面部分で強固に接合することができる。またベースの収納部の稜部345,367に対して水晶振動片2の稜部215,217を位置合わせすることが容易となり、お互いに位置ずれが生じにくい。結果として導電性バンプBによる水晶振動片の電気的機械的な保持強度にもバラツキが生じにくく、圧電振動デバイスの電気的特性も安定したより信頼性の高いものとすることができる。
【実施例2】
【0027】
また、上記した実施例1では、ベース収納部の底面の稜部を挟んだ2面部分の電極パッドと、水晶振動片の底面の稜部を挟んだ2面部分の接続電極とを導電性バンプにより電気的機械的に接合したものを説明しているが、図5〜図7に示す実施例2のように、上記電極パッドをベース収納部の角部とこの角部近接する3面部分に形成し、上記接続電極を水晶振動板の角部とこの角部近接する3面部分に形成するとともに、お互いの角部とこの角部近接する3面部分を導電性バンプにより電気的機械的に接合する構成としてもよい。
【0028】
具体的には、図5、図6、図7に示すように、実施例2では、前記ベース3の内底面331には、ベース収納部の角部34に近接する面方向の異なる3面部分(内底面331と内側面332,335)に対して電極パッド38が形成され、ベース収納部の角部37に近接する面方向の異なる3面部分(内底面331と内側面334,335)に対して電極パッド39が形成されている。また、水晶振動片2の角部211に近接する面方向の異なる3面部分(底面21と側面23,26)に対して引き出し電極282が形成され、水晶振動片2の角部214に近接する面方向の異なる3面部分(底面21と側面25,26)に対して引き出し電極272が形成されている。
【0029】
そして、ベースの電極パッド38の3面部分に対して水晶電振動片の接続電極282の3面部分が近接し、電極パッド38の角部34と接続電極282の角部211の間に導電性バンプBが介在した状態で、ベースの電極パッド38の3面部分と水晶振動片の接続電極282の3面部分とが電気的機械的に接合されている。ベースの電極パッド39の3面部分に対して水晶電振動片の接続電極272の3面部分が近接し、電極パッド39の角部37と接続電極272の角部214の間に導電性バンプBが介在した状態で、ベースの電極パッド39の3面部分と水晶振動片の接続電極272の3面部分とが電気的機械的に接合されている。
【0030】
上述の実施例により、導電性バンプBにより接合される領域を拡大することなくベースの収納部の3面部分と水晶振動片2の3面部分でより強固に接合することができる。またベースの収納部の角部34,37に対して水晶振動片2の角部211,214を位置合わせすることが容易となり、お互いに位置ずれがより一層生じにくい。結果として導電性バンプBによる水晶振動片の電気的機械的な保持強度にもバラツキがより一層生じにくく、圧電振動デバイスの電気的特性も安定したより信頼性の高いものとすることができる。
【実施例3】
【0031】
また、上記した実施例1、2では、ベース収納部の電極パッドに対して水晶振動片の接続電極を直接導電性バンプBにより電気的機械的に接合している構成について説明しているが、図8、図9に示すように、ベース収納部の電極パッドと水晶振動片2の接続電極の間に水晶振動片と同様の絶縁性材料からなる直方体形状のサポート部材4を介在させてお互いを電気的機械的に接合する構成としてもよい。
【0032】
サポート部材4は、脆性材料を用いており、例えばZカット水晶基板で、一枚板の直方体形状からなる。サポート部材4の外形形状としては底面41と上面42を有しており、底面41には4つの角部411,412,413,414と、角部411と角部412の間の稜部415、角部412と角部413の間の稜部416、角部413と角部414の間の稜部417、角部414と角部411の間の稜部418とが形成されている。また上面42には4つの角部421,422,423,424と、角部421と角部422の間の稜部425、角部422と角部423の間の稜部426、角部423と角部424の間の稜部427、角部424と角部421の間の稜部428とが形成されている。また前記角部411と角部421を結ぶ稜部431(図示せず)、前記角部412と角部422を結ぶ稜部432(図示せず)、前記角部413と角部423を結ぶ稜部433(図示せず)、前記角部414と角部424を結ぶ稜部434(図示せず)が形成され、稜部431と稜部432を端部とする側面43、稜部432と稜部433を端部とする側面44、稜部433と稜部434を端部とする側面45、稜部434と稜部431を端部とする側面46とを有している。
【0033】
このサポート部材4の角部411と421に近接する面方向の異なる4面部分(底面41と上面42、側面43,46)に対して引き出し電極482(接続電極)が形成され、サポート部材4の角部414と424に近接する面方向の異なる4面部分(底面41と上面42、側面45,46)に対して引き出し電極472(接続電極)が形成されている。つまり引き出し電極482,472はサポート部材の一対の稜部431(図示せず)と稜部434(図示せず)、当該一対の稜部に近接する面方向の異なる4面部分(表裏主面と2つの側面)に形成されている。引き出し電極472の底面側ではベース3の電極パッド39と電気機械的に接合され、引き出し電極472のうちの上面側では水晶振動片2の底面側の引き出し電極272(接続電極)と接続されている。引き出し電極482の底面側ではベース3の電極パッド38と電気機械的に接合され、引き出し電極482のうちの上面側では水晶振動片2の底面側の引き出し電極282(接続電極)と接続されている。なお、これらの引き出し電極472,482は、水晶振動片の電極と同様にフォトリソグラフィ法により形成され、例えば、基板側からクロム(Cr)、金(Au)の順に、あるいはニッケル(Ni)、金(Au)の順に積層して形成されている。
【0034】
実施例3では、上記した実施例2と同様に、前記ベース3の内底面331には、ベース収納部の角部34に近接する面方向の異なる3面部分(内底面331と内側面332,335)に対して電極パッド38が形成され、ベース収納部の角部37に近接する面方向の異なる3面部分(内底面331と内側面334,335)に対して電極パッド39が形成されている。また水晶振動片2の角部211に近接する面方向の異なる3面部分(底面21と側面23,26)に対して引き出し電極282が形成され、水晶振動片2の角部214に近接する面方向の異なる3面部分(底面21と側面25,26)に対して引き出し電極272が形成されている。
【0035】
そして、ベースの電極パッド38の3面部分に対してサポート部材の引き出し電極482の3面部分が近接し、電極パッド38の角部34と引き出し電極482の角部411の間に導電性バンプBが介在した状態で、ベースの電極パッド38の3面部分とサポート部材の引き出し電極482の3面部分とが電気的機械的に接合されている。ベースの電極パッド39の3面部分に対してサポート部材の引き出し電極472の3面部分が近接し、電極パッド39の角部37と引き出し電極472の角部414の間に導電性バンプBが介在した状態で、ベースの電極パッド39の3面部分とサポート部材の引き出し電極472の3面部分とが電気的機械的に接合されている。
【0036】
サポート部材の引き出し電極482の上面部分に対して水晶振動片の接続電極282の底面部分が近接し、お互いの主面間に導電性バンプBが介在した状態で、サポート部材の引き出し電極482と水晶振動片の接続電極282とが電気的機械的に接合されている。サポート部材の引き出し電極472の上面部分に対して水晶振動片の接続電極272の底面部分が近接し、お互いの主面間に導電性バンプBが介在した状態で、サポート部材の引き出し電極472と水晶振動片の接続電極272とが電気的機械的に接合されている。以上により、ベースの電極パッド38と水晶振動片の接続電極282、およびベースの電極パッド39と水晶振動片の接続電極272とは、サポート部材の引き出し電極482,472を介してサポート部材の上面と底面で最も近接した位置で配置され接合されている。
【0037】
上述の実施例により、サポート部材4を介して水晶振動片2をベース3に接合しているので、ベース3から受ける熱的機械的な応力の影響をサポート部材4が吸収し圧電振動デバイスの電気的特性を向上させることができる。加えて、導電性バンプBにより接合される領域を拡大することなく、ベースの収納部の3面部分とサポート部材の3面部分でより強固に接合することができる。またベース収納部の角部34,37に対してサポート部材の角部411,414を位置合わせすることが容易となり、お互いに位置ずれがより一層生じにくい。結果として導電性バンプBによる水晶振動片の電気的機械的な保持強度にもバラツキがより一層生じにくく、圧電振動デバイスの電気的特性も安定したより信頼性の高いものとすることができる。
【0038】
なお、図10に示す実施例3の変形例では、サポート部材の上面42に水晶振動片2を収納できる凹部49が形成されており、この凹部49に沿って前記引き出し電極472と482を形成されている。この凹部49のうちサポート部材の引き出し電極472,482が形成された底面稜線(2面部分)、あるいは底面角部(3面部分)に対して水晶振動片の引き出し電極272,282が形成された底面稜線(2面部分)、あるいは底面角部(3面部分)が近接し、前記お互いの引き出し電極の間に導電性バンプBが介在した状態で電気的機械的に接合されている。この変形例では実施例3の作用効果に加え、導電性バンプBにより接合される領域を拡大することなく、サポート部材の凹部49の2面部分あるいは3面部分と、水晶振動片2の2面部分あるいは3面部分でより強固に接合することができる。またサポート部材の凹部49の底面稜線あるいは底面角に対して、水晶振動片2の底面稜線あるいは底面角を位置合わせすることが容易となり、お互いに位置ずれがより一層生じにくい。結果として導電性バンプBによる水晶振動片の電気的機械的な保持強度にもバラツキがさらにより一層生じにくく、圧電振動デバイスの電気的特性も安定したより信頼性の高いものとすることができる。
【0039】
上記実施形態ではベース3としてセラミック材料を開示しているが、絶縁材料で収納部の内底面331に一つ以上の稜部、あるいは角部が存在しており、これらの稜部あるいは角部とに近接する面方向の異なる複数面に対して電極パッドを容易に構成することができるものであれば、水晶やガラスなどの他の絶縁材料であってもよい。また、導電性バンプBの接合箇所は2つだけに限らず、3つ4つとしてもよく、水晶振動板の保持構成としても水晶振動板の片端保持したものに限らず両端保持したものでもよい。
【0040】
なお、本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均など範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、水晶振動子などの圧電振動デバイスに適用できる。
【符号の説明】
【0042】
1 水晶振動子
2 水晶振動片
3 ベース
4 サポート部材
B 導電性バンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の励振電極が形成された振動部と前記励振電極が引き出されて接続電極が形成された保持部とを有する直方体形状の圧電振動片と、前記圧電振動片を保持するベースとが設けられ、前記ベースの収納部に前記圧電振動片の保持部が導電性バンプにより接合された圧電振動デバイスにおいて、前記ベース収納部の内底面には1つ以上の稜部と当該稜部に近接する面方向の異なる少なくとも2面以上の部分に形成された電極パッドを有しており、前記圧電振動片の接続電極は圧電振動片の稜部に近接する面方向の異なる少なくとも2面部分に形成され、前記ベース収納部の2面以上の部分に形成された電極パッドに対して前記圧電振動片の接続電極が近接した状態で導電性バンプを介して電気的機械的に接合されてなることを特徴とする圧電振動デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−206270(P2010−206270A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46744(P2009−46744)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】