説明

圧電振動デバイス

【課題】 圧電振動素子の保持並びに気密封止を確実に行うことのできる新規なチップ型の圧電振動デバイスを提供する。
【解決手段】 圧電振動デバイスは平面視矩形状の枠体付き圧電振動板1と平面視矩形状の金属端子2,3とで構成されている。 枠体付き圧電振動板1は中央に音叉型水晶振動板11を有し、その周囲に帯状の枠部が周状に形成された枠体12が形成された構成である。枠体12の表裏面には金属膜が形成されている。金属端子2と3とは被覆部21,31と一方の短辺にはほぼ直角に折り曲げた屈曲部22,32が形成されている。枠体付き圧電振動板1に対して金属端子2と3にて挟持するような状態で接合を行い、これにより音叉型水晶振動板の一方の端子は金属端子2側に、音叉型水晶振動板の他方の端子は金属端子3側に各々引き出された状態で枠体内部が気密封止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に用いられる水晶振動子等の圧電振動デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在汎用されている表面実装型水晶振動子等の圧電振動デバイスは、水晶振動素子を収納する領域を有するセラミックパッケージを用い、当該セラミックパッケージに水晶振動素子を搭載後、リッドにて気密封止する構成が多く採用されている。例えば、特開2000−236035号(特許文献1)はその一例を示す先行技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特開2000−236035号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなセラミックパッケージを用いた構成は、圧電振動デバイスのさらなる小型化が進んだ場合、セラミックパッケージが小型化に対応できない可能性が出てきた。例えば、焼成によるセラミック積層技術を用いて構成するセラミック体はどうしてもその寸法精度にバラツキが生じ、超小型化した場合はこのバラツキにより所望の寸法精度を確保することが困難になる。また低背化が要求される場合はセラミック積層による十分なパッケージ強度が確保できない場合があり、このような場合、電子部品として要求される気密性等の耐環境性能を満たさないことがあった。
【0005】
さらには水晶振動素子をパッケージに搭載するにあたり、搭載用の装置および治工具が必要になるが、当該治工具がパッケージに干渉する等により、水晶振動子の搭載自体が困難になるという問題もあった。
【0006】
このように圧電振動デバイスの超小型化がより進んだ場合、現在普及しているセラミックパッケージを用いた構成では対応できない可能性があり、超小型化に適した圧電振動デバイス構成が求められていた。
【0007】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、超小型化した場合でも、圧電振動素子の保持並びに気密封止を確実に行うことのできる新規なチップ型の圧電振動デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するためになされたもので、請求項1に示す圧電振動デバイスは、励振電極が形成された圧電振動板と当該圧電振動板とつながり、かつ外周を包囲する枠体とからなる枠体付き圧電振動板と、前記枠体の各両面と気密接合される金属端子と、からなる構成を特徴としている。
【0009】
枠体上面には接合材が形成され、接合材により枠体と金属端子とが接合されているともに、接合材の厚みにより前記圧電振動板の振動空間を確保している。また金属端子は平面で見て枠体付き圧電振動板の同等サイズか大きいサイズの構成であり、その端部が外部接続端子として機能する。このような構成により、金属端子は枠体を気密封止する領域と外部接続端子して機能する領域を有する。
【0010】
請求項1によれば、従来必要としていたセラミックパッケージを用いず、枠体を金属端子で気密封止する構成であるので、超小型で実用的な信頼性を確保した安価な圧電振動デバイスを得ることができる。
【0011】
また請求項2に示すように、上記構成において前記金属端子の端部が前記圧電振動板の側面に回り込んだ屈曲部を有していることを特徴とする構成としてもよい。
【0012】
圧電振動デバイスは一方の金属端子が実装基板と当接するように搭載されるが、前記屈曲部は少なくとも他方の金属端子すなわち対向しない側の金属端子に形成されている。実装時において、屈曲部は実装基板の搭載電極パッドに近接または当接した寸法に設定すると好ましい。また前記一方の金属端子は屈曲部を形成してもよいし、屈曲部を形成しなくてもよい。
【0013】
両金属端子に屈曲部を形成した場合は、端子構成において表裏区別のない構成とすることができる。なお、屈曲部はプレス加工によって形成してもよいし、屈曲部を他の領域より厚肉構成とし、実質的にこの厚肉部が枠体付き圧電振動板の側面に回り込む構成としてもよい。
【0014】
請求項2によれば、屈曲部により金属端子の位置決めが容易となり、気密信頼性および生産性を向上させることができる。
【0015】
なお、屈曲部は直角に屈曲した構成でもよいが、直角より鈍角にして、枠体付き圧電振動板の側面に対して斜めに伸長する構成であってもよい。この場合、実装時の導電接合材により生じる接合時の応力を緩和することができ、実装の信頼性を向上させることができる。
【0016】
また請求項3に示すように、枠体の表面に枠内の空間と枠体の表面をつなぐ溝部を形成し、前記金属端子と前記溝部に封止材を付着することにより気密封止を行ったことを特徴とする構成であってもよい。
【0017】
枠体内部の空間は前記金属端子を気密接合することにより気密封止されるが、枠体内部空間に不要な残留ガスが滞留することがある。このような場合、圧電振動デバイスの特性を低下させることがあるが、請求項3の構成により、前記溝部を介して残留ガスを排出し、金属端子が溝部を被覆している領域に封止材を付着させ、気密封止を行ってもよい。ここで用いる封止材は金属ロウ材であってもよいし、低融点ガラス等の絶縁材料であってもよい。
【0018】
請求項3によれば、排気後に前記金属端子と前記溝部に封止材を付着することにより、残留ガスを除去した枠体内部空間をつくり出すことができ、圧電振動デバイスの特性を向上させることができる。
【0019】
さらに請求項4に示すように、少なくとも前記金属端子の外部接続部には低融点金属ろう材が形成されていることを特徴とする構成としてもよい。
【0020】
前述のとおり、圧電振動デバイスは一方の金属端子が実装基板と対向するように搭載されるが、金属端子に鉛フリー半田等の低融点金属ロウ材を形成してもよい。このロウ材形成はメッキ技術や厚膜印刷技術等が用いられる。
【0021】
請求項4によれば、形成された低融点金属ロウ材を接合材としたり、また他の接合材を用いて実装する際でも接合材のなじみを促進することができ、実装基板への搭載を容易にすることができる。
【0022】
また請求項5に示すように、金属端子の前記枠体との気密接合領域と前記外部接続部との間には緩衝部が形成されていることを特徴とする構成としてもよい。
金属端子の前記気密接合領域と前記外部接続部間に形成された緩衝部は、例えば切り欠き部や屈曲部を有する構成や、あるいは薄肉構成であってもよい。
【0023】
請求項5によれば、気密接合領域と外部接続部間に緩衝部が形成されていることにより、気密接合時に生じた応力あるいは外部接続時(実装基板への接続時)に生じた応力が相互に影響を与えることを抑制し、気密信頼性および外部接合の信頼性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、超小型で実用的な信頼性を確保した、安価な圧電振動デバイスを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による第1の実施形態を示す圧電振動デバイスの分解側面図
【図2】図1を組み立てた状態を示す側面図
【図3】本発明による第1の実施形態を示す枠体付き圧電振動板の平面図
【図4】本発明による第2の実施形態を示す圧電振動デバイスの側面図
【図5】本発明による第2の実施形態を示す枠体付き圧電振動板の平面図
【図6】本発明による第3の実施形態を示す圧電振動デバイスの分解斜視図
【図7】本発明による第3の実施形態を示す圧電振動デバイスの斜視図
【図8】本発明による他の実施形態を示す圧電振動デバイスを示す斜視図
【図9】本発明による他の実施形態を示す圧電振動デバイスを示す平面図
【図10】本発明による他の実施形態を示す圧電振動デバイスを示す斜視図
【図11】本発明による他の実施形態を示す圧電振動デバイスを示す斜視図
【図12】本発明による他の実施形態を示す圧電振動デバイスを示す斜視図
【図13】本発明による他の実施形態を示す圧電振動デバイス実装例を示す分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明による好ましい実施の形態について図面に基づいて説明する。
本発明による第1の実施の形態を表面実装型の音叉型水晶振動デバイスを例にとり、図1乃至図3とともに説明する。
【0027】
圧電振動デバイスは平面視矩形状の枠体付き圧電振動板1と平面視矩形状の金属端子2,3とで構成されている。
【0028】
枠体付き圧電振動板1は図3に示すように平面で見て中央に音叉型水晶振動板11を有し、その周囲に帯状の枠部が周状に形成された枠体12が形成された構成である。音叉型水晶振動板11はX−Yカット水晶板からなり、平行に延びる一対の振動腕11a,11aとこれら振動腕の一端を結合する基部11bとからなる。図示していないが、各振動腕には表裏面と両側面に各々励振電極が形成されている。具体的には、一方の振動腕の表裏面と他方の振動腕の両側面の励振電極が各々共通接続され、一方の振動腕の両側面と他方の振動腕の表裏面の励振電極が各々共通接続され、各共通電極が前記基部の表面と裏面に各々引き出されている。これら励振電極は水晶に接してクロムが形成され、その上に金または銀等の金属材料からなる。音叉型水晶振動板の基部11bと枠体12はつながっており一体化されている。
【0029】
枠体12の表裏面には金属膜が形成されている。この金属膜は水晶に接してクロムが形成されその上に金または銀等の金属材料からなるとともに、その表面にさらに、錫(Sn)からなる接合層12a,13aが形成されている。これら金属膜は真空蒸着法やスパッタリング法により、クロムと、銀または金層を形成し、接合層は金属膜の上部にメッキ技術を用いて錫層が形成される。なお、枠体12は一方の短辺近傍においては金属膜が形成されていない。これは後述する金属端子との短絡防止のためである。
【0030】
金属端子2と3はほぼ同形状であり、コバール等の金属材料からなる。金属端子2と3とは被覆部21,31と一方の短辺にはほぼ直角に折り曲げた屈曲部22,32が形成されている。屈曲部22は図2に示すように実装基板5に搭載した際、実装基板5の搭載電極パッド52にちょうど当接するよう、伸長部23を有している。この伸長部の寸法は搭載電極パッドに近接するような設定であってもよい。なお、図2において屈曲部32は短く設定されているが、屈曲部22と同様の長さに設定し、前記伸長部を形成してもよい。この場合、表裏いずれでも実装基板に搭載することができ、実装時の取り扱いが容易となる。
【0031】
また屈曲部は直角に折り曲げず、鈍角に設定してもよい。この場合、屈曲部が鈍角で伸長した構成となるので、実装基板に鉛フリー半田等の低融点金属で接合した場合に、屈曲部が緩衝部として機能し、基板への実装時の応力を緩和することができる。
【0032】
金属端子2,3の枠体付き圧電振動板との対向面には接合層2a,3aとしてニッケルが形成されている。この接合層2a,3aは前記枠体に形成された金属膜12a,13aに対応した枠形状にパターニングしてもよいし、板面全面に接合層を形成してもよい。
【0033】
以上、枠体付き圧電振動板1に対して金属端子2と3にて挟持するような状態で接合を行い、これにより図2に示すように音叉型水晶振動板の一方の端子は金属端子2側に、音叉型水晶振動板の他方の端子は金属端子3側に各々引き出された状態で枠体内部が気密封止される。接合層2aと12a、接合層2aと12aそれぞれ加熱により合金あるいは金属間化合物化し、気密接合層4が形成される。なお、この気密合金層は厚みを有しているので、各金属端子が音叉型水晶振動板と接触することを回避することができる。
【0034】
そして、各金属端子は実装基板の搭載電極パッドに接合材Sにより接合される。なお、接合材Sは鉛フリー半田等が用いられるが、金属端子の搭載電極パッドとの接合領域には接合材Sのなじみを良好にする、金属材料あるいは低融点金属ロウ材を形成してもよい。具体例として金、錫等の膜をあげることができる。
【0035】
次に本発明による圧電振動デバイスの製造方法について説明する。枠体付き圧電振動板は矩形水晶振動板からフォトリソグラフィ技術を用いて外形加工および電極形成を行う。まず、外形加工を行うために矩形水晶振動板に対してクロム、金の順で真空蒸着法等により金属膜を全面に形成する。その後レジスト膜を形成し、枠体と音叉型水晶振動板を得るための露光パターニングを行い、パターニングされたレジスト膜をマスクとしエッチング技術を用いて素板状態の枠体と音叉型水晶振動板を得る。
【0036】
その後、音叉型水晶振動板にクロム、金の順で金属膜を形成し、その上にレジスト膜を形成し所定の露光パターニングを行い、パターニングされたレジスト膜をマスクとしエッチング技術を用いて電極形成を行う。これにより前述の各共通電極ならびに枠体表裏の金属膜がパターニング形成される。
【0037】
さらに枠体の金属膜のみを露出させた状態でメッキを行い、枠体の金属膜上に接合層を形成する。矩形状の金属端子は枠体付き圧電振動板側に接合層であるニッケル膜をメッキ技術により形成する。本実施の形態では屈曲部以外の全面にニッケル膜を形成している。そしてプレス加工にて一短辺を直角に折り曲げ、屈曲部を形成する。なお、ニッケル膜は圧延技術により形成してもよい。
【0038】
その後真空雰囲気中または不活性ガス雰囲気中で枠体付き圧電振動板の表裏面を金属端子で挟み込み、枠体内の空間が金属端子で覆われた状態とし、この挟持を維持した状態で気密封止が行われる。なお、実装基板への実装時の接合性向上をはかるため、必要に応じて金属端子に実装時に用いる金属ロウ材と馴染みのよい金属膜を形成してもよい。以上の製造により、枠体内の空間が真空または不活性ガス雰囲気に保たれた、圧電振動デバイスを得ることができる。
【0039】
本発明による第2の実施の形態を表面実装型のATカット水晶振動デバイスを例にとり、図4,図5とともに説明する。
【0040】
圧電振動デバイスは平面視矩形状の枠体付き圧電振動板6と平面視矩形状の金属端子2,3とで構成されている。
【0041】
枠体付き圧電振動板6は図5に示すように平面で見て中央に長方形状のATカット水晶振動板61を有し、その周囲に帯状の枠部が周状に形成された枠体62が形成された構成である。ATカット水晶振動板61と枠体62とはテーパを有する連結部63を介して一体化されている。ATカット水晶振動板61の表裏面には長方形状の励振電極61a,61b(61bは図示せず)が対向して形成され、これら各励振電極61a,61bは枠体の各表裏面に引き出されている。これら励振電極は水晶に接してクロムが形成され、その上に金または銀等の金属材料からなる。
【0042】
枠体62の表裏面には金属膜62a,62b(62bは図示せず)が形成されており、前述の励振電極61a,62aと各々電気的につながっている。この金属膜は水晶に接してクロムが形成されその上に金の金属材料からなる。当該金属膜は真空蒸着法やスパッタリング法により、クロム、金層が形成される。
【0043】
また枠体62の一短辺近傍には短辺に沿って、帯状の流出防止部62b、62bが形成されている。当該流出防止部は、例えば実装基板に接合する際の鉛フリー半田が濡れないような金属やガラス材あるいは樹脂材料からなる。流出防止部62bは図5に示すように、一短辺全体に形成してもよいし、鉛フリー半田の塗布予定の領域のみに形成してもよい。
【0044】
金属端子2と3はほぼ同形状であり、コバールや洋白、42アロイ合金等の金属材料からなる。金属端子2と3とは一方の短辺にはほぼ直角に折り曲げた屈曲部22,32が形成されている。屈曲部22、32の長さは図4に示すように同じ寸法であり、前述の伸長部を有しない構成である。
【0045】
金属端子2,3の枠体付き圧電振動板との対向面には金属膜としてニッケルが形成され、その上面に接合層2a,3aが形成されている。当該接合層は、前記金属膜の表面に、金錫(AuSn)ロウ材からなる。当該接合層はメッキ技術を用いて金錫膜が形成される。なお、接合層は金と錫を多層に形成した構成であってもよい。接合層2a,3aとして金層が形成されている。この接合層2a,3aは前記枠体に形成された金属膜12a,13aに対応した枠形状にパターニングしてもよいし、板面全面に接合層を形成してもよい。
【0046】
以上、枠体付き圧電振動板1に対して金属端子2と3にて挟持するような状態で接合を行い、これにより図4に示すような音叉型水晶振動板の一方の端子は金属端子2側に、音叉型水晶振動板の他方の端子は金属端子3側に各々引き出された状態で枠体12の内部が気密封止される。接合層2aと12a、接合層2aと12aそれぞれ加熱により合金あるいは金属間化合物化し、気密接合層4が形成される。そして、各金属端子は実装基板の搭載電極パッドに接合材Sにより接合される。なお、接合材Sは鉛フリー半田等が用いられるが、金属端子の搭載電極パッドとの接合領域には接合材Sのなじみを良好にする、例えば金、錫等の金属膜を形成してもよい。
【0047】
本発明による第3の実施の形態を表面実装型の音叉型水晶振動デバイスを例にとり、図6、図7とともに説明する。
【0048】
圧電振動デバイスは平面視矩形状の枠体付き圧電振動板1と平面視矩形状の金属端子2,3とで構成されている。
【0049】
枠体付き圧電振動板1は図6に示すように平面で見て中央に音叉型水晶振動板11を有し、その周囲に帯状の枠部が周状に形成された枠体12が形成された構成である。音叉型水晶振動板11はX−Yカット水晶板からなり、平行に延びる一対の振動腕11a,11aとこれら振動腕の一端を結合する基部11bとからなる。図示していないが、各振動腕には表裏面と両側面に各々励振電極が形成されている。具体的には、一方の振動腕の表裏面と他方の振動腕の両側面の励振電極が各々共通接続され、一方の振動腕の両側面と他方の振動腕の表裏面の励振電極が各々共通接続され、各共通電極が前記基部の表面と裏面に各々引き出されている。これら励振電極は水晶に接してクロムが形成され、その上に金または銀等の金属材料からなる。音叉型水晶振動板の基部11bと枠体12は基部より幅の狭い連結部15を介してつながっており一体化されている。
【0050】
枠体12の表裏面には金属膜12a,13a(13aは図示せず)が形成されている。この金属膜は水晶に接してクロムが形成されその上に金または銀等の金属材料からなるとともに、その表面にさらに、錫(Sn)からなる接合層が形成されている。これら金属膜は真空蒸着法やスパッタリング法により、クロムと、銀または金層を形成し、その上部に接合層としてメッキ技術を用いて錫層が形成される。なお、枠体12は一方の短辺近傍においては金属膜が形成されていない。これは後述する金属端子との短絡防止のためである。
【0051】
また枠体の音叉型水晶振動板の基部側には、溝部13,14が形成されている。当該溝部13、14は枠体表面において枠の周縁から長辺方向に平行に形成されており、枠部内に溝部の端部を有する構成である。各溝部の内部には図示していないが金属膜が形成されている。当該金属膜は後述する最終封止に用いる金属ロウ材の接合性確保のためである。
【0052】
前記溝部13,14は後述するように、気密封止時のガス抜きおよび最終気密封止のためのものであり、本実施の形態においては2つの溝部を例示しているが、少なくとも1つあればよい。また溝部は直線的な溝でなくてもよく、例えば屈曲領域を形成したり、溝内部に突起部を設けてもよい。このような屈曲領域や突起部の形成領域に前記金属ロウ材を付着させることにより、ロウ材の接合性が向上し、気密封止性を向上させることができる。
【0053】
当該溝部の形成は、フォトリソグラフィ技術を用いてハーフエッチングをすることにより、水晶板の一部を薄肉加工する構成でもよいし、切削等の機械加工によって形成してもよい。
【0054】
金属端子2と3は、コバールや洋白、42アロイ等の金属材料からなる。金属端子2と3とは被覆部21,31と一方の短辺にほぼ直角に折り曲げた屈曲部22,32が形成されている。なお、本実施の形態においては、金属端子2,3の長辺方向の長さすなわち被覆部21,31の長さを変えている。これは図6に示すように、枠体付き圧電振動板1は枠体の枠部分が長辺方向において音叉振動腕11a側に偏って配置され、前記溝部形成のための領域を確保した構成となっている。このような場合、金属端子2の被覆部21の長さより金属端子3の被覆部31の長さを長くすることにより、圧電振動デバイス全体の長さを長くすることなく、十分な被覆部を得ることができ、従って実用的な気密信頼性も確保することができる。
【0055】
金属端子2,3の枠体付き圧電振動板との対向面には接合層2a,3aとして銀が形成されている。この接合層2a,3aは前記枠体に形成された金属膜12a,13aに対応した枠形状にパターニングしてもよいし、板面全面に接合層を形成してもよい。本実施の形態においては、当該接合層2a,3aは前記金属膜12a,13aに対応した枠形状にパターニングされており、気密封止時に接合層が水晶振動板に対向することにより、接合層からのガスの影響を抑制することができる。
【0056】
以上、枠体付き圧電振動板1に対して金属端子2と3にて挟持するような状態で接合を行い、これにより図2に示すように音叉型水晶振動板の一方の端子は金属端子2側に、音叉型水晶振動板の他方の端子は金属端子3側に各々引き出された状態で枠体内部が気密封止される。接合層2aと12a、接合層2aと12aそれぞれ加熱により銀錫合金化し、気密接合層が形成される。なお、この気密合金層は厚みを有しているので、各金属端子が音叉型水晶振動板に接触することを回避することができる。
【0057】
そして、各金属端子は実装基板の搭載電極パッドに接合材Sにより接合される。なお、接合材Sは鉛フリー半田等が用いられるが、金属端子の搭載電極パッドとの接合領域には接合材Sのなじみを良好にする、例えば金、錫等の金属膜を形成してもよい。
【0058】
次に本発明による圧電振動デバイスの製造方法について説明する。枠体付き圧電振動板は矩形水晶振動板からフォトリソグラフィ技術を用いて外形加工および電極形成を行う。まず、外形加工を行うために矩形水晶振動板に対してクロム、金の順で真空蒸着法等により金属膜を全面に形成する。その後レジスト膜を形成し、枠体と音叉型水晶振動板を得るための露光パターニングを行い、パターニングされたレジスト膜をマスクとしエッチング技術を用いて素板状態の枠体と音叉型水晶振動板を得る。
【0059】
次に、溝部を形成するために、溝部形成予定領域以外をレジスト膜で被覆し、当該レジスト膜をマスクとして、溝部をハーフエッチングにより形成する。
【0060】
その後、音叉型水晶振動板にクロム、金の順で金属膜を形成し、その上にレジスト膜を形成し所定の露光パターニングを行い、パターニングされたレジスト膜をマスクとしエッチング技術を用いて電極形成を行う。これにより前述の各共通電極ならびに枠体表裏の金属膜がパターニング形成される。
【0061】
さらに枠体の金属膜のみを露出させた状態でメッキを行い、枠体の金属膜上に接合層を形成する。矩形状の金属端子は枠体付き圧電振動板側に接合層である銀膜をメッキ技術により形成する。本実施の形態では枠に対応する部分に銀幕が形成されないようにパターニングした構成である。そしてプレス加工にて一短辺を直角に折り曲げ、屈曲部を形成する。なお、銀膜は圧延技術により形成してもよい。
【0062】
その後不活性ガス雰囲気中で枠体付き圧電振動板の表裏面を金属端子で挟み込み、枠体内の空間および溝部の一部が金属端子で覆われた状態とし、この挟持を維持した状態で加熱を行うことにより、接合層の金属合金化が促進される。
【0063】
その後、必要に応じて特性調整を行った後、水晶振動デバイスを真空あるいは不活性ガス雰囲気中におくことにより、前記溝部13,14を介して枠体内部を真空あるいは不活性ガス雰囲気にし、この状態で金属端子と溝部を金属ロウ材にて溶着し、最終的な気密封止を行う。なお、金属ロウ材はボール状にして溝部に配置し、これを溶融することによって気密封止を行ってもよい。
【0064】
なお、実装基板への実装時の接合性向上をはかるため、必要に応じて金属端子に実装時に用いる金属ロウ材と馴染みのよい金属膜を形成してもよい。以上の製造により、枠体内の空間が真空または不活性ガス雰囲気に保たれた、圧電振動デバイスを得ることができる。
【0065】
また上記実施の形態において、枠体に接合層として錫、金属端子に接合層として銀を形成していたが、枠体の接合層として銀、金属端子の接合層として錫を形成し、接合時にこれらの合金層が形成される構成としてもよい。
【0066】
他の実施の形態について図8乃至図13とともに説明する。
図8に示した実施形態は、第3の実施の形態に対して金属端子に緩衝部を形成するともに溝部を1つにした構成である。緩衝部23、33(33は図示せず)は各金属端子の一部を切り欠くことによって形成した細幅構成であり、気密封止の接合に用いられる被覆部21,31と実装基板との接合に用いられる屈曲部22,32間に生じる可能性のある応力を緩和するためのものである。また溝部13を一つにするとともに、図8の例では、溝部13の形成された面が下を向く構成、すなわち実装時において実装基板に近接対向する構成としている。このような緩衝部は金属端子の枠体の気密接合領域と外部接続部(屈曲部)の間に設けられているが、上述の構成以外に薄肉構成等により緩衝部を形成してもよい。
【0067】
また図9は圧電振動デバイスの平面図である。図9においては、枠体付き水晶振動板(枠体付き圧電振動板)1の外形より小さな金属端子71,72を用いている。金属端子71は枠体付き水晶振動板の上面を被覆する構成であり、一短辺において屈曲部712を有している。また金属端子72は枠体付き水晶振動板の上面を被覆する構成であり、他短辺において屈曲部722を有している。また枠体付き水晶振動板に形成された溝部16,17を長辺側に配置した構成である。例えば長辺中央に溝部を形成することにより最終排気の効率を高めることができるという効果を奏する。
【0068】
図10乃至図12は圧電振動デバイスの金属端子の屈曲部の変形例を示している。
図10に示すように、金属端子81は枠付き圧電振動板の上面に被覆接合され、屈曲部が下方に延びて伸長部811を形成している。また金属端子82は枠体付き圧電振動板の下面に被覆接合され、屈曲部が下方に延びて伸長部821を形成している。上記伸長部811,821は実装基板に対して同じ長さで形成されており、外部接続端子として機能する。このような構成により実装基板への接合時に緩衝機能を向上させることができる。
【0069】
図11に示すように、金属端子83は枠付き圧電振動板の上面に被覆接合され、屈曲部が下方に延び、枠体付き圧電振動板にほぼ並行に延びるカギ形の伸長部831を形成している。また金属端子84は枠体付き圧電振動板の下面に被覆接合され、屈曲部が下方に延び、枠体付き圧電振動板にほぼ並行に延びるカギ形の伸長部841を形成している。従って、伸長部831と841は相互に接近する方向に延びた構成となっている。このような構成により、上述と同様の緩衝機能を有するとともに、搭載時の安定性が向上する。
【0070】
さらに図12に示すように、金属端子85は枠付き圧電振動板の上面に被覆接合され、屈曲部が下方に延び、枠体付き圧電振動板にほぼ並行に延びるカギ形の伸長部851を形成している。また金属端子86は枠体付き圧電振動板の下面に被覆接合され、屈曲部が下方に延び、枠体付き圧電振動板にほぼ並行に延びるカギ形の伸長部861を形成している。従って、伸長部851と861は相互に離間する方向に延びた構成となっている。このような構成により、上述と同様の緩衝機能を有するとともに、搭載時の安定性が向上し、半田付け性が向上する。
【0071】
さらに図13は金属端子板に形成された屈曲部の変形例を示している。枠体付き圧電振動板1、金属端子板91,92は被覆部911と921と、長辺の一端部に形成された屈曲部912,922とを有している。各屈曲部912,922は枠体付き圧電振動板1から離れる方向に屈曲している。このような構成の金属端子板を枠体付き圧電振動板1に接合することにより、圧電振動デバイスを実装基板に立設搭載することができ、投影面積の小さな圧電振動デバイスを得ることができる。
【0072】
なお、図10,図11に示す枠体付き圧電振動板は金属端子より縦横に大きい構成であるが、図12に示す構成は横(幅)方向において、枠体付き圧電振動板と金属端子は同じ寸法としている。これにより投影面積の小さな圧電振動デバイスを得ることができる。また図10乃至図12に示す実施例において、伸長部に切り欠き部や薄肉領域を設けることにより、実装基板との接合時に生じる応力の影響を低減することができる。
【0073】
なお、枠体付き圧電振動板と金属端子の接合を金属材で行ったが、低融点ガラスで行ってもよい。
【0074】
なお、本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0075】
水晶振動子等の圧電振動デバイスあるいは他の電子部品の量産に適用できる。
【符号の説明】
【0076】
1、6 枠体付き水晶振動板(枠体付き圧電振動板)
2、3 金属端子
22,32,72,82 屈曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励振電極が形成された圧電振動板と当該圧電振動板とつながり、かつ外周を包囲する枠体とからなる枠体付き圧電振動板と、
前記枠体の各両面と気密接合される金属端子と、からなる圧電振動デバイス。
【請求項2】
前記金属端子の端部が前記圧電振動板の側面に回り込んだ屈曲部を有していることを特徴とする請求項1記載の圧電振動デバイス。
【請求項3】
枠体の表面に枠内の空間と枠体の表面をつなぐ溝部を形成し、前記金属端子と前記溝部に封止材を付着することにより気密封止を行ったことを特徴とする請求項1または2記載の圧電振動デバイス。
【請求項4】
少なくとも前記金属端子の外部接続部には低融点金属ろう材が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の圧電振動デバイス。
【請求項5】
金属端子の前記枠体との気密接合領域と前記外部接続部との間には緩衝部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の圧電振動デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−213134(P2010−213134A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58878(P2009−58878)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】