説明

圧電振動デバイス

【課題】 超小型化した場合でも、圧電振動素子の保持並びに気密封止を確実に行うことのできる新規なチップ型の圧電振動デバイスを提供することを目的とする。
【解決手段】 水晶振動板1の表裏主面の中央領域には各々励振電極111,112が形成されている。各励振電極は長方形状であり、水晶振動板を介して対向して形成され、また各励振電極とつながる引出電極111a,121aが形成されている。水晶振動板11の表裏主面には端子体12,13が接続されている。端子体12,13は直方体ブロック状であり、水晶あるいはセラミックス等の絶縁体で構成されている。前記端子体の接合面121,131にはキャビティCが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に用いられる水晶振動子等の圧電振動デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在汎用されている表面実装型水晶振動子等の圧電振動デバイスは、水晶振動素子を収納する領域を有するセラミックパッケージを用い、当該セラミックパッケージに水晶振動素子を搭載後、リッドにて気密封止する構成が多く採用されている。例えば、特開2000−236035号(特許文献1)はその一例を示す先行技術である。
【0003】
このようなセラミックパッケージを用いた構成は、圧電振動デバイスのさらなる小型化が進んだ場合、セラミックパッケージが小型化に対応できない可能性が出てきた。例えば、焼成によるセラミック積層技術を用いて構成するセラミック体はどうしてもその寸法精度にバラツキが生じ、超小型化した場合はこのバラツキにより所望の寸法精度を確保することが困難になる。また低背化が要求される場合はセラミック積層による十分なパッケージ強度が確保できない場合があり、このような場合、電子部品として要求される気密性等の耐環境性能を満たさないことがあった。
【0004】
さらには水晶振動素子をパッケージに搭載するにあたり、搭載用の装置および治工具が必要になるが、当該治工具がパッケージに干渉する等により、水晶振動子の搭載自体が困難になるという問題もあった。
【0005】
このように圧電振動デバイスの超小型化がより進んだ場合、現在普及しているセラミックパッケージを用いた構成では対応できない可能性があり、超小型化に適した圧電振動デバイス構成が求められていた。
【0006】
【特許文献1】特開2000−236035号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、超小型化した場合でも、圧電振動素子の保持並びに気密封止を確実に行うことのできる新規なチップ型の圧電振動デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明者は、圧電振動デバイスの超小型化が進んだ場合でも、圧電振動板の保持やパッケージのチップ化が容易な構成を目指して、圧電振動板の両主面にブロック状の端子体を設け、当該両端子体が実装基板に直接接触するように搭載することにより、圧電振動板が立設した状態で実装する構成を発案したものであり、次のような構成により実現したものである。
【0009】
すなわち、圧電振動板と、当該圧電振動板に対して励振エネルギーを供給する励振電極と、当該圧電振動板の表裏外周近傍と接続される各端子体とからなり、当該各端子体は前記励振電極を外部に導出するとともに、各端子体が各々実装基板と直接接触し、導電接合材により電気的機械的に接続されることを特徴とする圧電振動デバイスである。
【0010】
より具体的な構成として、請求項1に示すように、表裏主面に一対の励振電極が形成され、かつ当該励振電極と接続される引出電極を外周近傍に引き出した矩形圧電振動板と、当該圧電振動板の表裏外周近傍と接続され、前記表裏主面と同じか大きい接合面を有する直方体ブロック状の一対の端子体とを有する圧電振動デバイスであって、前記各端子体は前記引出電極の一方または他方のみとつながる配線パターンを有し、前記圧電振動板と接続される接合面の反対面に電極を導出し、当該反対面に接続電極が形成された構成の絶縁体からなり、各端子体が各々実装基板と直接接触し、導電接合材により電気的機械的に接続されることを特徴としている。
【0011】
また請求項2に示すように、上記構成において、前記矩形圧電振動板の両主面の外周近傍には前記引出電極とつながる周状の金属膜が形成され、前記各端子体の配線パターンは、各端子体の前記接合面の外周部分に形成された第2の周状の金属膜と、前記反対面に形成された接続電極と、前記各端子体の側面に形成され、前記第2の周状の金属膜と前記接続電極を接続する導出電極からなることを特徴とする構成であってもよい。
【0012】
圧電振動板は例えばATカット水晶振動板の場合、その厚さで周波数が決定されるが、高周波数の場合その厚さは10数μm程度となる。圧電振動板の表裏主面には励振電極並びに引出電極が形成されている。このような圧電振動板の表裏主面に端子体を接続することにより圧電振動デバイスをチップ状に構成することができ、このような端子体を実装基板に直接接触するように実装基板に搭載することにより、圧電振動板が実装基板上に立設状態に設置される。端子体は例えば直方体ブロック状の絶縁体からなり、絶縁体の表面あるいは内部に必要な配線パターンが形成されている。配線パターンは例えば圧電振動板との対向面においては圧電振動板の励振電極とつながる引出電極と接続される電極が形成され、当該電極が端子体に形成された配線パターンの一部を介して前記接合面の反対面あるいは反対面近傍に電極が引き出されている。このような構成によりチップ部品の両端部分に接続電極が形成された構成とすることができる。
【0013】
上記各構成によれば、圧電振動板の表裏に形成された各励振電極が圧電振動板の表裏主面に接続される端子体に直接導通接合することができるので、複雑な配線を必要とせずに電極を端子体に引き出すとともに、各端子体が直接実装基板に接合される構成により、極めて簡便な構成でチップ状の圧電振動デバイスを得ることができる。特に端子体に直方体ブロック状の構成を採用することにより、実装基板に対し安定した実装を行うことができる。従って、従来生じていたパッケージの小型化対応の問題やパッケージへの圧電振動板搭載の問題も発生することがなくなる。
【0014】
また請求項3に示すように、矩形状の圧電振動板と、当該圧電振動板の表裏外周近傍と接続され、前記表裏主面と同じか大きい接合面を有する直方体ブロック状の一対の端子体とを有する圧電振動デバイスであって、前記各端子体は前記圧電振動板と対向する接合面に各々励振電極を有するとともに、当該各励振電極を各端子体の外周近傍に引き出す引出電極と、前記接合面の反対面に形成した接続電極と、前記引出電極と前記接続電極を接続する導出電極とを有した構成の絶縁体からなり、各端子体が各々実装基板と直接接触し、導電接合材により電気的機械的に接続されることを特徴とする構成であってもよい。
【0015】
上記各構成によれば、当該端子体は前記圧電振動板と対向する面に励振電極を有する構成であり、いわゆるエアギャップ方式により圧電振動板に対して励振電圧を印加する構成となる。このような当該励振電極を各端子体の外周近傍に引き出す引出電極を有した構成であるので、複雑な配線を必要とせずに端子体から電極を引き出すとともに、各端子体が直接実装基板に接合される構成により、極めて簡便な構成でチップ状の圧電振動デバイスを得ることができる。特に端子体に直方体ブロック状の構成を採用することにより、実装基板に対し安定した実装を行うことができる。従って、従来生じていたパッケージの小型化対応の問題やパッケージへの圧電振動板搭載の問題も発生することがなくなる。
【0016】
また請求項4に示すように、前記端子体は圧電振動板の表裏外周近傍と接続されるとともに、圧電振動板の中央部分に対向する位置にはキャビティが形成されている構成としてもよい。
【0017】
キャビティは圧電振動板の振動領域(振動空間)を確保するためのものであり、圧電振動板あるいは端子体に凹部を設けることによって形成したり、あるいは圧電振動板と端子体とを接合する接合材を厚肉化することにより得ることができる。キャビティの構成は、圧電振動板に形成される励振電極を少なくとも振動領域とするよう振動空間を設けたものであるが、励振電極の形状によって振動領域がほぼ決まるので、励振電極構成に応じてキャビティ構成も検討すればよい。本構成によれば、振動空間が確実に確保できるので、圧電振動デバイスとしての特性を向上させることができる。
【0018】
さらに請求項5に示すように、前記圧電振動板は端子体と接続される外周近傍が厚肉部を有し、中央部分が厚肉部より薄い薄肉部を有する構成であり、当該薄肉部に励振電極が形成されるか、あるいは端子体や補強部の前記薄肉部に対応する領域に励振電極が形成されている、いわゆる逆メサ構成であってもよい。
【0019】
上記構成において、圧電振動板外周近傍を厚肉部とし、当該厚肉部を端子体との接続用とし、中央部分の薄肉部は振動領域と分離することにより、圧電振動デバイスの超高周波数化に対応することができるとともに圧電振動板の機械強度を向上させることができる。
【0020】
なお、本構成によれば、前述の端子板側にキャビティを設ける構成を採用しなくても薄肉部により振動空間が形成されるが、薄肉部の厚さや励振電極の厚さ等により必要に応じて、薄肉部を有する構成においても端子板側にキャビティを設けてもよい。
【0021】
また、上記薄肉部を有する構成において、請求項6に示すように、前記薄肉部は厚肉部の一方の主面または主面近傍から厚肉部の他方の主面または主面近傍に延びる斜め配置構成であってもよい。このような斜め配置構成は例えばフォトリソグラフィ技術を用い、断続的にレジスト膜の厚さを異ならせるような方法や、エッチングレートを異ならせる等の方法により得ることができる。
【0022】
斜め配置構成は必ずしも厚肉部表面の上面から厚肉部裏面の上面に及んでいる必要はなく、表面近傍から裏面近傍に至るような緩やかな斜め配置構成であってもよい。
【0023】
本構成によれば、斜め配置構成により、薄肉部の領域を広げることになり、実質的な振動領域拡大により圧電振動デバイスの特性を向上させることができる。
【0024】
さらに請求項7に示すように、上記各構成において、圧電振動板の高さ寸法より各端子体の高さ寸法が大きく、実装基板搭載時に圧電振動板と実装基板間に間隙が形成されている構成であってもよい。
【0025】
このような構成により、圧電振動板部分が実装基板と密着しない構成とすることができる。従って、実装基板側の応力が直接圧電振動板に伝わることはなく、圧電振動デバイスの特性を安定させることができる。また、端子体間の短絡も防止することができる。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明により、超小型化した場合でも、圧電振動素子の保持並びに気密封止を確実に行うことのできるチップ型の圧電振動デバイスを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明による第1の実施形態について図面に基づいて説明する。本実施の形態では、圧電振動板として厚みすべり振動にて動作するATカットの水晶振動板を例にとり説明する。
【0028】
図1は第1の実施形態による圧電振動デバイスの分解斜視図であり、図2は図1を組み立てた状態のA−A断面図である。
【0029】
水晶振動板11は平板状のATカット水晶振動素子からなり、その主面においてX軸が長辺、Z軸が短辺となる平面視長方形形状となっている。また水晶振動板1の表裏主面の中央領域には各々励振電極111,112が形成されている。各励振電極は長方形状であり、水晶振動板を介して対向して形成されている。また各励振電極とつながる引出電極111a,121aが形成されている。引出電極111a、112aは細幅構成であり、それぞれ水晶振動板1の主面外周近傍まで延びている。なお、励振電極形状は長方形に特性調整用の切り欠きを設けた構成や、円形状や長円形状であってもよい。
【0030】
また水晶振動板の両主面の外周近傍には周状の金属膜111b,112bが形成されている。当該周状の金属膜は後述する端子体との接合時に用いられる。また当該周状の金属膜は前記引出電極と電気的につながっている。
【0031】
励振電極、引出電極および周状の金属膜は、多層薄膜電極構成であり、例えば水晶振動板に接してクロム層、金層あるいは銀層の順で形成されている。これら電極形成は電極形成用の開口部を有する蒸着マスクを用いて行ってもよいし、あるいはフォトリソグラフィ技術を用いて形成してもよい。
【0032】
水晶振動板11の表裏主面には端子体12,13が接続されている。端子体12,13は直方体ブロック状であり、水晶あるいはセラミックス等の絶縁体で構成されている。また端子体12,13は水晶振動板11との接合面121,131を有し、当該接合面の反対面に接続電極12b、13bの形成面を有している。前記端子体の接合面121,131にはキャビティCが設けられている。キャビティCは端子体の接合面の中央部分であって、水晶振動板の前記励振電極形成部分に対応してかつ励振電極より大きいサイズに形成された凹部である。なお、キャビティCは形成しなくてもよい場合があり、例えば、水晶振動板と端子体を接合する接合材(金属ろう材等)の厚さを調整することにより、水晶振動板と端子体間の振動空間を形成してもよい。
【0033】
また接合面121,131のキャビティ以外の外周部分には第2の周状の金属膜121a,131aが形成されている。また各端子体12,13の側面には溝が形成され当該溝の中に導出電極12a,13aが形成されている。当該導出電極12a,13aにより、前記第2の周状の電極121a,131aと前記接続電極12b,13bが電気的に接続されている。
【0034】
なお、前記第2の周状の金属膜、導出電極および接続電極は多層薄膜電極構成であり、例えば端子体に接してクロム層、金層あるいは銀層の順で形成されている。また第2の周状の金属膜上には金属ろう材S1が形成されている。当該金属ろう材は例えば金錫ろう材であり、厚膜印刷技術等を用いて第2の周状の金属膜上に形成されている。
【0035】
水晶振動板11と端子体12,13とは上記金属ろう材を用いて接合している。具体的には、水晶振動板の周状の金属膜に前記端子体の金属ろう材部分を不活性ガス等の所定の雰囲気中で重ね合わせ、所定の温度条件で加熱を行うことによりろう接を行う。このような接合により、励振領域が気密封止された水晶振動板と端子体とからなるチップ型の圧電振動デバイスを得ることができる。
【0036】
なお、上記気密封止は真空雰囲気中で行ってもよい。また、水晶振動板の一方の主面を端子体にて真空封止を行い、他方の主面を他の端子体により窒素ガス等の不活性ガス雰囲気にて封止を行ってもよい。より具体的には、一方の主面を真空気密封止し、その後他方の主面の電極に対して周波数調整を行い、その後他方の主面を不活性ガス気密封止することにより、周波数バラツキの抑制された圧電振動デバイスを得ることができる。
【0037】
このような圧電振動デバイスは各接続電極12bと13bが実装基板Pに形成された電極パッドP1,P2にそれぞれ直接接触するように搭載し、無鉛半田等の低融点金属ろう材等により接合される。このような搭載構成により、水晶振動板の各励振電極は各電極パッドと電気的に接続される。
【0038】
なお、上記実施の形態においては、水晶振動板(圧電振動板)と端子体との接合を金属ろう材を用い、全体的な加熱によりろう接を行ったが、レーザービーム等のエネルギービームにより接合部分を局所的に加熱してもよい。
【0039】
また金属ろう材に代えて導電性樹脂接合材(導電体を含有した樹脂接合材)を用いてもよい。樹脂接合材は水晶やセラミック素地のほうが接合性が良好となる傾向があるので、樹脂接合材を用いる場合は、水晶振動板に形成した周状の金属膜や端子体に形成した第2の周状の金属膜は形成しなくてもよい。なお、樹脂材料としては例えばシリコーン系樹脂やエポキシ系樹脂を例示することができる。
【0040】
また水晶振動板としてATカット水晶振動板を用いたが、例えば、X軸が短辺、Z軸が長辺となる水晶振動板を用いてもよいし、また枠体付きの音叉型水晶振動板でもよい。音叉型水晶振動板は周知のとおり振動腕部に屈曲振動を行わしめるように電極形成する必要があるが、最終的に表裏面にそれぞれの極の電極を引き出すとよい。そして枠体により端子体と接合を行う。また、水晶振動板に代えて他の圧電振動板を用いてもよいし、あるいはSAW(弾性表面波)等の圧電振動デバイスに適用してもよい。
【0041】
さらに水晶振動板の表裏主面の外周近傍に形成した周状の金属膜111b、112bおよび端子体に形成した第2の周状の金属膜は主面端部(側面との稜部分)より内側に形成してもよい。このような構成により、接合時において金属ろう材が側面にはみ出ることを抑制し、接合材による短絡事故を抑制する。
【0042】
上記構成により、従来のようにセラミックパッケージを用いることなく、シンプルな構成とすることができ、また水晶振動板を実装した際は実装基板に対しほぼ垂直に搭載された構成となり、端子体との一体構成により極めて小さなチップ型の圧電振動デバイスを得ることができる。また、当該圧電振動デバイスを実装基板に搭載することにより、水晶振動板を実装基板に対して垂直に設置する構成となる。このような構成により、落下衝撃等に対し圧電振動デバイスの周波数変動量を抑制する効果を奏する。
【0043】
本発明による第2の実施形態について、図3,図4とともに説明する。第2の実施形態においても圧電振動板としてATカットの水晶振動板を用いている。図3は圧電振動デバイスの斜視図であり、図4は図3のB−B断面図である。
【0044】
第2の実施形態においては、端子体12が補強部14と端子部16からなり、端子体13は補強部15と端子部17とからなる構成である点が主に異なっている。
【0045】
水晶振動板11は平板状のATカット水晶振動素子からなり、X軸が短辺、Z軸が長辺となる平面視長方形形状となっている。また水晶振動板1の表裏面の中央領域には各々励振電極111,112が形成されている。各励振電極は長方形状または円形状であり、水晶振動板を介して対向して形成されている。また各励振電極とつながる引出電極111a,121aが形成されている。引出電極111a、112aは細幅構成であり、それぞれ水晶振動板1の主面外周近傍まで延びている。
【0046】
なお、水晶振動板表裏面に形成された励振電極の外周部分には周状の溝11a,11bが形成されている。この溝により後述する端子体との接合時の応力や実装基板からの応力を緩和し、圧電振動デバイスの特性を安定化させることができる。
【0047】
また水晶振動板の外周近傍には周状の金属膜111b,112bが形成されている。当該周状の金属膜は後述する補強部との接合時に用いられる。また当該周状の金属膜は前記引出電極と電気的につながっている。
【0048】
励振電極、引出電極および周状の金属膜は、多層薄膜電極構成であり、例えば水晶振動板に接してクロム層、金層あるいは銀層の順で形成されている。またクロム、銀、金の順で各層を形成してもよい。これら電極形成は電極形成用の開口部を有する蒸着マスクを用いて行ってもよいし、あるいはフォトリソグラフィ技術を用いて形成してもよい。
【0049】
水晶振動板11の表裏主面には端子体12,13が接続されている。本実施に形態においては端子体は各々補強部14,15と端子部16,17とからなっており、全体として端子体12,13は直方体ブロック状である。
【0050】
補強部14,15は水晶あるいはセラミックス等の絶縁体で構成されている。また補強部14,15は水晶振動板11との接合面141,151と当該接合面の反対面に連結電極14b、15bの形成面を有している。前記補強部の接合面141,151にはキャビティCが設けられている。キャビティCは端子体の接合面の中央部分であって、水晶振動板の前記励振電極形成部分に対応してかつ励振電極より大きいサイズに形成された凹部である。
【0051】
また接合面141,151のキャビティ以外の外周部分には第2の周状の金属膜141a,151aが形成されている。また各補強部14,15の側面には溝が形成され当該溝の中に導出電極14a,15aが形成されている。当該導出電極14a,15aにより、前記第2の周状の金属膜141a,151aと前記連結電極14b、15bが電気的に接続されている。
【0052】
前記第2の周状の金属膜、導出電極および連結電極は多層薄膜電極構成であり、例えば端子体に接してクロム層、金層あるいは銀層の順で形成されている。あるいはクロム、銀、金の順で各層を形成してもよい。また第2の周状の金属膜上には金属ろう材S1が形成されている。当該金属ろう材は例えば金錫ろう材であり、厚膜印刷技術等を用いて第2の周状の金属膜上に形成されている。
【0053】
補強部14,15のそれぞれの外側には端子部16,17が金属ろう材S2により接合されている。端子部は例えば銅や洋泊等の金属体からなり、接続性向上のために表面に金属メッキ層や金属ろう材が形成された構成であってもよい。また端子部は補強部の高さ寸法と同様か若干大きい外形寸法となっている。また端子部は金属体からなる構成により、接続電極の役割も担っている。
【0054】
圧電振動デバイスをアッセンブリする際は、まず水晶振動板11と補強部14,15を接合する。すなわち、水晶振動板の周状の金属膜に前記補強部の金属ろう材S1を重ね合わせて所定の温度条件で加熱を行うことによりろう接を行う。ろう接時には水晶振動板の励振時の雰囲気を得るために、真空雰囲気にする際は真空雰囲気内でろう接による気密封止を行い、不活性ガス雰囲気にする際は、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中にてろう接による気密封止を行う。このような接合により、水晶振動板と補強部が一体化され、かつ水晶振動板の励振部分が気密封止されたチップ型のモジュールを得ることができる。
【0055】
次にこのチップ型のモジュールの外側に端子部を接合する。端子部16,17の接合は金属ろう材S2を用いるが、導電性樹脂接合材や封止用ガラス材を用いてもよい。なお、当該金属ろう材S2は前記金属ろう材の融点より低い材料を用いることが好ましい。以上によりチップ型の圧電振動デバイスを得ることができる。なお、補強部14と端子部16,補強部15と端子部17それぞれを予め接合しておき、その後補強部側を水晶振動板に接合する方法を用いることも可能である。
【0056】
このような圧電振動デバイスは各端子部16と17が実装基板Pに形成された電極パッドP1,P2にそれぞれ直接接触するように搭載し、低融点金属ろう材等により接合される。このような搭載構成により、水晶振動板の各励振電極は各電極パッドと電気的に接続される。
【0057】
本実施の形態によれば、端子体が補強部と端子部とからなる構成であるので、補強部と端子部との接続構成により実装基板から受ける可能性のある応力を緩和することができ、水晶振動板に対する応力の影響を与えにくくする。また、補強部と端子部との接合を柔軟性の高い接合材で接合したり、あるいは端子部に例えば銅のように緩衝性の高い金属体を用いることにより、緩衝性能をより向上させることができる。
【0058】
本発明による第3の実施の形態を図5,図6とともに説明する。図5は第3の実施の形態による圧電振動デバイスの斜視図、図6は図5のC−C断面図である。
【0059】
第3の実施形態においては、上記第1,第2の実施の形態に対して、水晶振動板の構成が逆メサ構成である点と端子体の構成について補強部と端子部のサイズが異なっている点が主な相違点となる。
【0060】
水晶振動板21はATカット水晶振動素子からなり、主面がX軸とZ軸からなる平面視正方形状となっている。また水晶振動板21の表裏主面の中央領域にはそれぞれ正方形状の薄肉部が形成されており、その外周には薄肉部より厚い厚肉部が形成され、これにより逆メサ構成となっている。表裏の薄肉部の中央部分には各々励振電極211,212が形成されている。各励振電極は矩形状または円形状であり、水晶振動板を介して対向して形成されている。また各励振電極とつながる引出電極211a,212aが形成されている。引出電極211a,212aは細幅構成であり、それぞれ薄肉部から厚肉部に引き出され、水晶振動板21の主面外周近傍まで延びている。
【0061】
また水晶振動板の外周近傍には周状の金属膜211b、212bが形成されている。当該周状の金属膜は後述する補強部との接合時に用いられる。また当該周状の金属膜は前記引出電極211a,212aと電気的につながっている。
【0062】
励振電極、引出電極および周状の金属膜は、多層薄膜電極構成であり、例えば水晶振動板に接してクロム層、金層あるいは銀層の順で形成されている。これら電極形成は電極形成用の開口部を有する蒸着マスクを用いて行ってもよいし、あるいはフォトリソグラフィ技術を用いて形成してもよい。
【0063】
水晶振動板21の表裏主面には端子体が接続されている。本実施に形態においては端子体は各々補強部22,23と端子部24,25とからなっている。本実施の形態では水晶振動板や補強部の外形サイズに対して端子部のサイズを大きく形成している。
【0064】
補強部22,23は水晶あるいはセラミックス等の絶縁体で構成されている。また補強部22,23は水晶振動板21との接合面221,231と、当該接合面の反対面に連結電極22b、23bの形成面を有している。前記補強部の接合面221,231は平面構成であるが、対向する水晶振動板の薄肉部により中央部分にキャビティCが形成されている。
【0065】
また接合面221,231の表裏主面の外周近傍には第2の周状の金属膜221a,231aが形成されている。また各補強部22,23の側面には導出電極22a,23aが形成されている。当該導出電極22a,23aにより、前記第2の周状の金属膜221a,231aと前記連結電極22b、23bが電気的に接続されている。
【0066】
前記第2の周状の金属膜、導出電極および連結電極は多層薄膜電極構成であり、例えば端子体に接してクロム層、金層あるいは銀層の順で形成されている。また第2の周状の金属膜上には金属ろう材が形成されている。当該金属ろう材は例えば金錫ろう材あるいは金ゲルマニウム等の低融点金属ろう材であり、厚膜印刷技術やメッキ技術等を用いて第2の周状の金属膜上に形成されている。
【0067】
補強部22,23のそれぞれの外側には端子部24,25が接合されている。端子部24,25は平面視正方形状であり、水晶やセラミックスあるいは樹脂の表面に金属膜24a,25aを形成した構成であり、前記補強部より高さ寸法を含む外形寸法が大きい構成となっている。表面に金属膜を形成した構成により、全体として接続電極の役割も担っている。
【0068】
圧電振動デバイスをアッセンブリする際は、まず水晶振動板21と補強部22,23を接合する。すなわち、水晶振動板の周状の金属膜に前記補強部の金属ろう材を重ね合わせて所定の温度条件で加熱を行うことによりろう接を行う。ろう接時には水晶振動板の励振時の雰囲気を得るために、真空雰囲気にする際は真空雰囲気内でろう接による気密封止を行い、不活性ガス雰囲気にする際は、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中にてろう接による気密封止を行う。また表裏で気密雰囲気を異ならせてもよい。このような接合により、水晶振動板と補強部が一体化され、かつ水晶振動板の励振部分が気密封止されたチップ型のモジュールを得ることができる。
【0069】
次にこのチップ型のモジュールの外側に端子部24,25を接合する。端子部の接合は導電性樹脂接合材や金属ろう材により接合する。これによりチップ型の圧電振動デバイスを得ることができる。
【0070】
このような圧電振動デバイスは端子部24,25が実装基板に形成された電極パッドにそれぞれ直接接触するように搭載し、低融点金属ろう材等により接合される。このような搭載構成により、水晶振動板の各励振電極は各電極パッドと電気的に接続される。
【0071】
本実施の形態によれば、端子体が補強部と端子部とからなる構成であるので、補強部と端子部との接続構成により実装基板から受ける可能性のある応力を緩和することができ、水晶振動板に対する応力の影響を与えにくくする。また、補強部と端子部との接合を例えばシリコーン系樹脂接合材のように柔軟性の高い接合材で接合したり、あるいは端子部に例えば銅のように緩衝性の高い金属体を用いることにより、緩衝性能をより向上させることができる。
【0072】
また、上述のとおり本実施の形態では、端子部が水晶振動板や補強部より大きな構成であるので、水晶振動板部分が実装基板と密着しない構成とすることができる。従って、実装基板側の応力が直接圧電振動板に伝わることはなく、圧電振動デバイスの特性を安定させることができる。また、端子体間の短絡も防止することができる。また、端子部が平面視正方形状であるので、実装基板への搭載時に方向性を持たず、実装効率を向上させることができる。
【0073】
本発明による第4の実施の形態を図7とともに説明する。図7は第4の実施の形態による圧電振動デバイスの内部断面図である。
【0074】
第4の実施形態においては、上記各実施の形態に対して、水晶振動板の構成が逆メサおよびメサ構成の複合構成である点と端子体の外側に補助端子が形成されている点が主な相違点となる。
【0075】
水晶振動板31はATカット水晶振動素子からなり、X軸とZ軸からなる平面視正方形状となっている。また水晶振動板31の表裏主面の中央領域にはそれぞれ正方形状の薄肉部が形成されており、その外周には薄肉部より厚い厚肉部が形成され、これにより逆メサ構成となっている。また薄肉部はその中央部分がやや厚くかつ厚肉部より薄い中厚領域を有しており、薄肉部自体はメサ構成を採っている。
【0076】
表裏の薄肉部中央部分の中厚領域には各々励振電極311,312が形成されている。各励振電極は矩形状または円形状であり、水晶振動板を介して対向して形成されている。また各励振電極とつながる引出電極311a,312aが形成されている。引出電極311a,312aは細幅構成であり、それぞれ薄肉部から厚肉部に引き出され、水晶振動板31の主面外周近傍の厚肉部上面まで延びている。なお、この実施の形態においては周状の金属膜は形成されていないが、引出電極が厚肉部まで形成されているので導電接合材により導通接合を行うことができる。
【0077】
励振電極、引出電極および周状の金属膜は、多層薄膜電極構成であり、例えば水晶振動板に接してクロム層、金層あるいは銀層の順で形成されている。これら電極形成は電極形成用の開口部を有する蒸着マスクを用いて行ってもよいし、あるいはフォトリソグラフィ技術を用いて形成してもよい。
【0078】
水晶振動板31の表裏主面には端子体が接続されている。本実施に形態においては端子体は各々補強部32,33と端子部34,35、そして補助端子部36,37からなっている。本実施の形態では補強部の外形サイズに対して端子部のサイズを大きく形成している。
【0079】
補強部32,33は水晶あるいはセラミックス等の絶縁体で構成されている。また補強部32,33は水晶振動板31との接合面321,331を有するとともに、接合面から側面を経由して接合面の反対面に延びる導出電極32a,33aが形成されている。前記補強部の接合面321,331は平面構成であるが、対向する水晶振動板の薄肉部により中央部分にキャビティが形成されている。前記導出電極は多層薄膜電極構成であり、例えば端子体に接してクロム層、金層あるいは銀層の順で形成されている。
【0080】
補強部32,33のそれぞれの外側には端子部34,35が接合されている。端子部は水晶やセラミックスあるいは樹脂の表面に金属膜34a,35aを形成した構成であり、前記補強部より高さ寸法を含む外形寸法が大きい構成となっている。表面に金属膜を形成した構成により、全体として接続電極の役割も担っている。
【0081】
さらに本実施の形態では、前記端子部34,35の各々の外側面であって、実装基板と接する下方側に補助端子部36,37が接合されている。当該補助端子部は金属板を屈曲させた構成であり、実装時に圧電振動デバイスが安定する作用を有する。
【0082】
圧電振動デバイスをアッセンブリする際は、まず水晶振動板31と補強部32,33を接合する。この接合は導電性樹脂接合材S1を用いる。補強部の接合面の外周近傍に導電性樹脂接合材S1を塗布し、前記水晶振動板31の表裏面に重ね合わせる。そして所定の温度条件で加熱を行うことにより導電性樹脂接合材を硬化させ導電接合を行う。なお、導電性樹脂接合材に代えて、ナノ金属微粒子を用いた接合材を用いてもよい。これは例えば、特開2001−225180号に開示された金属微粒子を有機溶媒中に分散させたペーストであり、導電接合を行うことができる。以上により、水晶振動板と補強部が一体化され、かつ水晶振動板の励振部分が気密封止されたチップ型のモジュールを得ることができる。
【0083】
次にこのチップ型のモジュールの外側に端子部34,35を接合する。端子部の接合は導電性樹脂接合材やナノ金属微粒子を用いた接合材により接合する。さらに当該端子部34,35の外側面であって、実装基板と接する下方側に補助端子部36,37を導電性樹脂接合材等にて接合する。なお、導電性樹脂接合材は主面端部(側面との稜部分)より内側に形成してもよい。このような構成により、接合時において接合材が側面にはみ出ることを抑制し、接合材による短絡事故を抑制する。
【0084】
このような圧電振動デバイスは端子部や補助端子部が実装基板に形成された電極パッドにそれぞれ直接接触するように搭載し、低融点金属ろう材等により接合される。このような搭載構成により、水晶振動板の各励振電極は各電極パッドと電気的に接続される。
【0085】
本実施の形態によれば、水晶振動板は基本構成が逆メサ構成であるとともに薄肉部にメサ構成を採用しているので、効率よくエネルギー閉じ込めされた状態で励振電極が形成された励振領域の振動を行わしめることができる。従って、圧電振動デバイスの特性を向上させかつ安定させることができる。
【0086】
また端子体が補強部と端子部そして補助端子部とからなる構成であるので、実装基板から受ける可能性のある応力を緩和することができ、水晶振動板に対する応力の影響を与えにくくする。また、各構成部分の接合を例えばシリコーン系樹脂接合材のように柔軟性の高い接合材で接合したり、あるいは補助端子部に例えば銅のように緩衝性の高い金属体を用いることにより、緩衝性能をより向上させることができる。
【0087】
上述のとおり本実施の形態においても、端子部が水晶振動板や補強部より大きな構成であるので、水晶振動板部分が実装基板と密着しない構成とすることができる。従って、実装基板側の応力が直接圧電振動板に伝わることはなく、圧電振動デバイスの特性を安定させることができる。また、端子体間の短絡も防止することができる。
【0088】
本発明による第5の実施の形態を図8とともに説明する。図8は第5の実施の形態による圧電振動デバイスの内部断面図である。
【0089】
第5の実施形態においては、上記各実施の形態に対して、逆メサ構成の水晶振動板において薄肉部の構成が異なっている点と補強部の構成が異なっている。
【0090】
水晶振動板41はATカット水晶振動素子からなり、X軸とZ軸からなる平面視長方形状となっている。また水晶振動板41の表裏主面の中央領域にはそれぞれ長方形状の薄肉部41aが形成されており、その外周には薄肉部41aより厚い厚肉部41bが形成され、これにより逆メサ構成となっている。また薄肉部41aは傾斜面構成となっている。
【0091】
当該傾斜面構成は、厚肉部の一方の主面または主面近傍から厚肉部の他方の主面または主面近傍に延びる斜め配置構成である。斜め配置構成は必ずしも厚肉部表面の上面から厚肉部裏面の上面に及んでいる必要はなく、表面近傍から裏面近傍に至るような緩やかな斜め配置構成であってもよい。
【0092】
このような斜め配置構成は例えばフォトリソグラフィ技術を用い、断続的にレジスト膜の厚さを異ならせるような方法や、エッチングレートを異ならせる等の方法により得ることができる。
【0093】
傾斜面構成の薄肉部の表裏中央部分には各々励振電極411,412が形成されている。各励振電極は矩形状または円形状であり、水晶振動板を介して対向して形成されている。また各励振電極とつながる引出電極が形成されている。各引出電極は傾斜面に設けられそれぞれ薄肉部から厚肉部に引き出され、水晶振動板41の主面外周近傍の厚肉部上面まで延びている。なお、この実施の形態においては周状の金属膜は形成されていないが、引出電極が厚肉部まで形成されているので導電接合材により導通接合を行うことができる。
【0094】
励振電極および引出電極は、多層薄膜電極構成であり、例えば水晶振動板に接してクロム層、金層あるいは銀層の順で形成されている。これら電極形成は電極形成用の開口部を有する蒸着マスクを用いて行ってもよいし、あるいはフォトリソグラフィ技術を用いて形成してもよい。
【0095】
水晶振動板41の表裏主面には端子体が接続されている。本実施に形態においては端子体は各々複数の補強部421,422、431,432と端子部44,45とからなっている。本実施の形態では複数の補強部の外形サイズに対して端子部のサイズを大きく形成している。
【0096】
複数の補強部421,422、431,432はそれそれ金属板からなる。一方の補強部421,422は金属ろう材あるいは導電性樹脂接合材により接合され、他方の補強部431,432も同様に金属ろう材あるいは導電性樹脂接合材により接合されている。水晶振動板と接合される補強部421,431の水晶振動板との接合面は平面構成であるが、対向する水晶振動板の薄肉部により中央部分にキャビティCが形成されている。なお、前記複数の補強板は金属板ではなく、水晶やセラミック等の絶縁体に導電路を形成した構成であってもよい。
【0097】
補強部422、432のそれぞれの外側には端子部44,45が接合されている。端子部は金属板でもよいし、水晶やセラミックスあるいは樹脂の表面に金属膜を形成した構成でもよい。本実施の形態では金属板を用いている。金属板を用いることにより端子部は接続電極の役割も担っている。なお、前記補強部より高さ寸法を含む外形寸法が大きい構成となっている。
【0098】
圧電振動デバイスをアッセンブリする際は、補強部421,422の一体化物を水晶振動板の一主面に接合し、補強部431,432の一体化物を水晶振動板の他主面に接合する。この接合は導電性樹脂接合材S1を用いるが、補強部の接合面の外周近傍に導電性樹脂接合材S1を塗布し、前記水晶振動板41の表裏面に重ね合わせる。そして所定の温度条件で加熱を行うことにより導電性樹脂接合材を硬化させ導電接合を行う。なお、導電性樹脂接合材に代えて、前記したナノ金属微粒子を用いた接合材を用いてもよい。以上により、水晶振動板と補強部が一体化され、かつ水晶振動板の励振部分が気密封止されたチップ型のモジュールを得ることができる。
【0099】
次にこのチップ型のモジュールの外側に端子部44,45を接合する。端子部の接合は金属ろう材や導電性樹脂接合材や封止用ガラス材等により接合する。端子部の高さ寸法は補強部の高さ寸法より大きい構成を採用しているが、本実施の形態においては、実装基板への実装側に隙間が形成されるように配置し接合を行っている。このような構成により、実装基板との短絡を防止している。
【0100】
このような圧電振動デバイスは端子部や補助端子部が実装基板に形成された電極パッドにそれぞれ直接接触するように搭載し、低融点金属ろう材等により接合される。このような搭載構成により、水晶振動板の各励振電極は各電極パッドと電気的に接続される。
【0101】
本実施の形態によれば、薄肉部の斜め配置構成により、薄肉部の領域を広げることになり、実質的な振動領域拡大により圧電振動デバイスの特性を向上させることができる。また、端子部が水晶振動板や補強部より大きな構成であるので、水晶振動板部分が実装基板と密着しない構成とすることができる。従って、実装基板側の応力が直接圧電振動板に伝わることはなく、圧電振動デバイスの特性を安定させることができる。また、端子体間の短絡も防止することができる。
【0102】
本発明による第6の実施形態について、図9、図10,図11とともに説明する。第6の実施形態においても圧電振動板としてATカットの水晶振動板を用いている。図9は圧電振動デバイスの斜視図であり、図10は水晶振動板の平面図、図11は図9のD−D断面図である。
【0103】
第6の実施形態においては、水晶振動板に形成される電極配置構成が他の実施の形態と異なっている。
【0104】
水晶振動板51は平板状のATカット水晶振動素子からなり、X軸が長辺、Z軸が短辺となる平面視長方形形状となっている。また水晶振動板1の表裏面の中央領域には各々励振電極511,512が形成されている。各励振電極は長方形状であり、水晶振動板を介して対向して形成されているが、本実施の形態では各励振電極511,512は、水晶振動板の長方形状に対して平面視で斜めに傾いた平面視傾斜構成となっている。このような平面視傾斜構成により、例えば、周波数帯によっては輪郭系の不要モードの励振を抑制するとか、あるいは厚み滑り振動の基本波振動を抑制してオーバートーンモードの励振を促進する等の効果を得ることができる。なお、平面視斜め配置構成以外に対向する励振電極を水晶振動子の中央部分から端部に偏らせて配置することによっても周波数帯によっては同様の効果を得ることができる。特に水晶振動板(圧電振動板)の主面外周を端子体で強く拘束する本発明においては、上記抑制効果を効率的に得ることができる。
【0105】
また各励振電極とつながる引出電極511a,521aが形成されている。引出電極511a、512aはそれぞれ水晶振動板5の主面外周近傍まで延びている。
【0106】
励振電極および引出電極は、多層薄膜電極構成であり、例えば水晶振動板に接してクロム層、金層あるいは銀層の順で形成されている。またクロム、銀、金の順で各層を形成してもよい。これら電極形成は電極形成用の開口部を有する蒸着マスクを用いて行ってもよいし、あるいはフォトリソグラフィ技術を用いて形成してもよい。
【0107】
水晶振動板11の表裏主面には端子体が接続されている。本実施に形態においては端子体は各々補強部52,53と端子部54,55とからなっており、全体として端子体は直方体ブロック状である。
【0108】
補強部52,53は水晶あるいはセラミックス等の絶縁体で構成されている。また補強部52,53は水晶振動板51との接合面521,531を有するとともに、当該接合面の反対面に連結電極52b、53bを有している。前記補強部の接合面521,531にはキャビティCが設けられている。キャビティCは端子体の接合面の中央部分であって、水晶振動板の前記励振電極形成部分に対応してかつ励振電極より大きいサイズに形成された凹部である。
【0109】
また各補強部52,53の側面には溝が形成され当該溝の中に導出電極52a,53a(一部図示せず)が形成されている。当該導出電極52a,53aにより、前記引出電極511a,512aと前記連結電極52b、53bが電気的に接続されている。
【0110】
前記導出電極および連結電極は多層薄膜電極構成であり、例えば端子体に接してクロム層、金層あるいは銀層の順で形成されている。あるいはクロム、銀、金の順で各層を形成してもよいし、他の金属材料を用いてもよい。
【0111】
補強部52,53のそれぞれの外側には端子部54,55が接合されている。端子部は例えば銅や洋泊等の金属体からなり、接続性向上のために表面に金属メッキ層や金属ろう材が形成された構成であってもよい。また端子部は補強部の高さ寸法と同様か若干大きい外形寸法となっている。また端子部は金属体からなる構成により、接続電極の役割も担っている。なお、端子部は絶縁体の一部または全部に導電膜を形成した構成であってもよい。この場合は、前記連結電極52b、53bと導電接合するとともにこれを接続電極へ導出する導電膜が必要となる。
【0112】
圧電振動デバイスをアッセンブリする際は、所定の雰囲気環境にてまず水晶振動板51と補強部52,53を接合する。接合には金属ろう材や導電性樹脂接合材等を用いる。このような接合により、水晶振動板と補強部が一体化されるとともに水晶振動板の励振部分が気密封止され、かつ励振電極が連結電極まで導出されたチップ型のモジュールを得ることができる。
【0113】
次にこのチップ型のモジュールの外側に端子部54,55を接合する。端子部の接合は導電性樹脂接合材や金属ろう材により接合する。これによりチップ型の圧電振動デバイスを得ることができる。
【0114】
このような圧電振動デバイスは各接続電極12bと13bが実装基板Pに形成された電極パッドP1,P2にそれぞれ直接接触するように搭載し、低融点金属ろう材等により接合される。このような搭載構成により、水晶振動板の各励振電極は各電極パッドと電気的に接続される。
【0115】
本実施の形態によれば、端子体が補強部と端子部とからなる構成であるので、補強部と端子部との接続構成により実装基板から受ける可能性のある応力を緩和することができ、水晶振動板に対する応力の影響を与えにくくする。また、補強部と端子部との接合を柔軟性の高い接合材で接合したり、あるいは端子部に例えば銅のように緩衝性の高い金属体を用いることにより、緩衝性能をより向上させることができる。
【0116】
また、励振電極の平面視傾斜構成により、例えば、周波数帯によっては輪郭系の不要モードの励振を抑制するとか、あるいは厚み滑り振動の基本波振動を抑制してオーバートーンモードの励振を促進する等の効果を得ることができる。
【0117】
本発明による第7の実施形態について図面に基づいて説明する。本実施の形態においても圧電振動板として厚みすべり振動にて動作するATカットの水晶振動板を用いている。
【0118】
図12は第7の実施形態による圧電振動デバイスの斜視図であり、図13は図12のE−E断面図である。
【0119】
水晶振動板61は平板状のATカット水晶振動素子からなり、その主面においてX軸が長辺、Z軸が短辺となる平面視長方形形状となっている。当該水晶振動板61の表裏主面には端子体62,63が接続されている。端子体62,63は直方体ブロック状であり、水晶あるいはセラミックス等の絶縁体で構成されている。
【0120】
当該端子体62,63は水晶振動板61との対向面(接合面)を有し、当該接合面の反対面に接続電極62b、63bの形成面を有している。前記水晶振動板との対向面にはその中央領域に各々励振電極621,631が形成されている。各励振電極は長方形状であり、水晶振動板を介して対向して形成されている。また各励振電極とつながる引出電極が形成されており、当該引出電極は図示していないが細幅構成であり、それぞれ水晶振動板1の主面外周近傍まで延びている。なお、励振電極形状は長方形に切り欠きを設けた構成や、円形状や長円形状であってもよい。
【0121】
また各端子体62,63の側面には溝が形成され当該溝の中に導出電極62a,63a(一部図示せず)が形成されている。当該導出電極62a,63aにより、前記引出電極と接続電極62b、63bが電気的に接続されている。なお、端子体に貫通孔を設け、当該貫通孔に導出電極を設けてもよい。
【0122】
励振電極、引出電極および接続電極は、多層薄膜電極構成であり、例えば水晶振動板や端子体に接してクロム層、金層あるいは銀層の順で形成されている。これら電極形成は電極形成用の開口部を有する蒸着マスクを用いて行ってもよいし、あるいはフォトリソグラフィ技術を用いて形成してもよい。
【0123】
水晶振動板61と端子体62,63とは封止用ガラス材を用いて接合している。具体的には、端子体の水晶振動板対向面の外周近傍に封止用ガラスを形成し、水晶振動板と各端子体を不活性ガス等の雰囲気中で重ね合わせ、所定の温度条件で加熱を行うことにより封止用ガラス材による気密封止を行う。このような接合により、水晶振動板に対してエアギャップ方式で励振電界を印加する構成のチップ型の圧電振動デバイスを得ることができる。なお、前記封止用ガラスにより、水晶振動板の励振領域と端子体の励振電極間にギャップが形成され、励振空間を得ることができる。当該ギャップの調整は封止用ガラス材の厚さにより調整することができ、また必要に応じて水晶振動板あるいは端子体に凹部あるいは凸部を形成することにより、ギャップの調整を行うことができる。なお、気密封止は封止用ガラス材以外に金属ろう材や樹脂接合材を用いてもよい。
【0124】
このような圧電振動デバイスは各接続電極62bと63bが実装基板に形成された電極パッドにそれぞれ直接接触するように搭載し、無鉛半田等の低融点金属ろう材等S5により接合される。このような搭載構成により、水晶振動板の各励振電極は各電極パッドと電気的に接続される。
【0125】
なお、上記実施の形態においては、水晶振動板(圧電振動板)と端子体との接合を金属ろう材を用い、全体的な加熱によりろう接を行ったが、レーザービーム等のエネルギービームにより接合部分を局所的に加熱してもよい。
【0126】
上記構成により、従来のようにセラミックパッケージを用いることなく、シンプルな構成とすることができ、また水晶振動板を実装した際は実装基板に対しほぼ垂直に搭載された構成となり、端子体との一体構成により極めて小さなチップ型の圧電振動デバイスを得ることができる。
【0127】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、例えば水晶振動素子や励振電極が円形や長円形等であってもよく、様々な変形例を適用することができる。本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0128】
水晶振動子の量産に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】本発明による第1の実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】図1をアセンブリした際のA−A断面図である。
【図3】本発明による第2の実施形態を示す斜視図である。
【図4】図3のB−B断面図である。
【図5】本発明による第3の実施形態を示す斜視図である。
【図6】図5のC−C断面図である。
【図7】本発明による第4の実施形態を示す断面図である。
【図8】本発明による第5の実施形態を示す断面図である。
【図9】本発明による第6の実施形態を示す斜視図である。
【図10】本発明による第6の実施形態の水晶振動板の平面図である。
【図11】図9のC−C断面図である。
【図12】本発明による第7の実施形態を示す斜視図である。
【図13】図12のD−D断面図である。
【符号の説明】
【0130】
11,21,31,41、51、61 水晶振動板(圧電振動板)
111,112,211,212,311,312,411,412、511,512、621、631 励振電極
12,13、62,63 端子体
14,15、22,23、32,33、421,422,431,432,52,53 補強部
16,17,24,25,44,45,54,55 端子部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏主面に一対の励振電極が形成され、かつ当該励振電極と接続される引出電極を外周近傍に引き出した矩形圧電振動板と、当該圧電振動板の表裏外周近傍と接続され、前記表裏主面と同じか大きい接合面を有する直方体ブロック状の一対の端子体とを有する圧電振動デバイスであって、
前記各端子体は前記引出電極の一方または他方のみとつながる配線パターンを有し、前記圧電振動板と接続される接合面の反対面に電極を導出し、当該反対面に接続電極が形成された構成の絶縁体からなり、各端子体が各々実装基板と直接接触し、導電接合材により電気的機械的に接続されることを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項2】
前記矩形圧電振動板の両主面の外周近傍には前記引出電極とつながる周状の金属膜が形成され、前記各端子体の配線パターンは、各端子体の前記接合面の外周部分に形成された第2の周状の金属膜と、前記反対面に形成された接続電極と、前記各端子体の側面に形成され、前記第2の周状の金属膜と前記接続電極を接続する導出電極からなることを特徴とする請求項1記載の圧電振動デバイス。
【請求項3】
矩形状の圧電振動板と、当該圧電振動板の表裏外周近傍と接続され、前記表裏主面と同じか大きい接合面を有する直方体ブロック状の一対の端子体とを有する圧電振動デバイスであって、
前記各端子体は前記圧電振動板と対向する接合面に各々励振電極を有するとともに、当該各励振電極を各端子体の外周近傍に引き出す引出電極と、前記接合面の反対面に形成した接続電極と、前記引出電極と前記接続電極を接続する導出電極とを有した構成の絶縁体からなり、各端子体が各々実装基板と直接接触し、導電接合材により電気的機械的に接続されることを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項4】
前記端子体は圧電振動板の表裏外周近傍と接続されるとともに、圧電振動板の中央部分に対向する位置にはキャビティが形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の圧電振動デバイス。
【請求項5】
前記圧電振動板は端子体と接続される外周近傍が厚肉部を有し、中央部分が厚肉部より薄い薄肉部を有する構成であり、当該薄肉部に励振電極が形成されるか、あるいは端子体の前記薄肉部に対応する領域に励振電極が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の圧電振動デバイス。
【請求項6】
前記薄肉部は厚肉部の一方の主面または主面近傍から厚肉部の他方の主面または主面近傍に延びる斜め配置構成であることを特徴とする請求項5記載の圧電振動デバイス。
【請求項7】
圧電振動板の高さ寸法より各端子体の高さ寸法が大きく、実装基板搭載時に圧電振動板と実装基板間に間隙が形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の圧電振動デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−66922(P2011−66922A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249160(P2010−249160)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【分割の表示】特願2006−266945(P2006−266945)の分割
【原出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】