説明

圧電振動デバイス

【課題】容器の機械的強度を低下させることなく、貫通孔端部の開口径のばらつき等を抑制することができる圧電振動デバイスを提供する。
【解決手段】水晶振動子1は、水晶振動片3を収容するための凹部20と凹部20の内底面に厚肉部25と薄肉部21とを備えた容器2と、厚肉部25に接合される水晶振動片3と、凹部20を気密に封止する蓋4が主要構成部材となっている。そして薄肉部21には一対の貫通孔29,29が形成されている。凹部20の内底面のうち、薄肉部21に貫通電極28,28が形成されているため貫通孔端部の開口径のばらつき等を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面実装型の圧電振動デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子に代表される圧電振動デバイスは携帯電話や移動体通信機器等に広く用いられている。例えば表面実装型と呼ばれる水晶振動子は、水晶振動片と、水晶振動片を収容する凹部を備えた容器と、当該容器との接合により前記凹部を気密に封止する蓋が主要構成部材となっている。そして前記容器の底面には、各種電子機器の基板と半田等を介して接合される外部接続端子が形成されている。この外部接続端子と水晶振動片の表裏に形成された励振電極とを電気的に接続する一手段として、例えば前記凹部の内底面と容器底面との間の容器基材を貫通する貫通孔の内部に導電性部材が充填された貫通電極を形成する方法がある。つまり外接続端子と水晶振動片の励振電極とを、前記貫通電極および配線パターン等を介して電気的に接続する方法である。このような構成の水晶振動子は例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3523502号
【特許文献2】特許第4547788号
【特許文献3】特開2008−118501号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで近年、携帯電話や移動体通信機器等の小型化および多機能化による高密度実装が進み、これらの機器等に実装される圧電振動デバイスも超小型(例えば平面視矩形の圧電振動デバイスの外形寸法が2.0mm×1.6mm以下)および超薄型のものが求められるようになってきている。このように圧電振動デバイスの超小型化・超薄型化が進むと、前述の貫通孔端部の開口面積が容器の内底面の面積に対して占める割合が大きくなってくる。その結果、容器の機械的強度が低下し、落下等による外部衝撃等の応力によって容器にクラック等が発生しやすくなり、気密信頼性が損なわれることになる。つまり貫通孔端部の開口径は貫通電極の導通抵抗等の特性を悪化させない程度でできるだけ小径化する必要がある。
【0005】
前記貫通孔は微細孔であり、このような微細孔の穿孔にはドライエッチング法やブラスト法、ウエットエッチング法等を用いることができるが、製造コストの点ではウエットエッチング法が好適である。ここで圧電振動デバイスの超小型化・超薄型化が進行すると、従来のセラミック等の絶縁性材料を基材とする容器では焼成精度の点から対応が困難になってくるためガラスや水晶等が基材として用いられる。このような結晶性材料からなる基材にウエットエッチング法を用いて貫通孔を穿孔する際、エッチング液と基材との化学反応によって副生成物が生成されるが、微細径でない貫通孔の場合は副生成物が存在しても貫通孔内部への新しいエッチング液の置換が行われてエッチングが進行するが、貫通孔が微細径になってくると副生成物の影響が大きくなって貫通孔内部への新しいエッチング液の置換が促進され難くなる。また基材が厚くなるにつれて基材内部へのエッチング液の循環が促進されにくくなる。これより貫通孔端部の開口径のばらつきが拡大しやすくなるとともに、貫通孔端部の開口径も相対的に大きくなってしまう。
【0006】
また、平面視略矩形の容器の凹部内に水晶振動片が片持ち接合される形態の水晶振動子では、定常状態では水晶振動片の自由端は凹部の内底面から離間していても、外部衝撃を受けた際に水晶振動片の自由端が撓んで凹部の内底面に接触することがある。前記接触によって水晶振動子の周波数が大きく変化したり、水晶振動片の破損等による発振停止等の不具合が発生することがある。これを防止するために例えば前記自由端に対応する凹部の内底面の領域だけを薄肉化して段差を形成し、自由端と内底面との隙間を拡大して前記接触を防止する方法がある。このような構成は例えば特許文献2乃至3に開示されている。特許文献2に開示されている水晶振動子によれば、貫通電極ではないが「通孔」と呼ばれる貫通孔が容器の底板部に穿孔されている。しかし前記貫通孔は前記底板部の厚肉部分である厚肉部に形成されているため、小径の貫通孔を穿孔するのは困難になってくる。
【0007】
以上のように、貫通孔端部の開口径のばらつき等を抑制するためには容器基材の厚みをできるだけ薄肉化することが好ましいが、容器の機械的強度が低下してしまう。一方、容器の機械的強度を向上させるために貫通孔を穿孔する領域の基材厚みを厚肉化すると貫通孔の開口径のばらつき等が拡大してしまうという問題が存在する。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、容器の機械的強度を低下させることなく、貫通孔端部の開口径のばらつき等を抑制することができる圧電振動デバイスを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、圧電振動片を収容するための凹部と当該凹部の内底面に厚肉部と薄肉部とを備えた容器と、前記厚肉部に接合される圧電振動片と、前記凹部を気密に封止する蓋とからなる圧電振動デバイスであって、前記薄肉部に貫通孔が形成されている。
【0010】
上記発明によれば、前記凹部の内底面のうち、薄肉部に貫通孔が形成されているため貫通孔端部の開口径のばらつき等を抑制することができる。これは例えばガラスを基材とする容器にウエットエッチング法によって貫通孔を穿孔する場合、薄肉部に貫通孔を形成することによって、貫通孔が微細径であっても貫通孔端部の周囲も薄肉領域とすることによりエッチング時の副生成物の影響を受けにくくなり、貫通孔内部への新しいエッチング液の置換が促進されやすくなるためである。また貫通孔を形成する領域の基材が薄肉であるため基材内部へのエッチング液の循環が促進されやすくなることによる。そして貫通孔端部の周囲のみを薄肉部とすることによって容器の強度的強度の低下を最小限に抑えることができる。
【0011】
上記目的を達成するために、前記凹部の内底面のうち、少なくとも前記容器の長手方向の中央を含む領域に前記厚肉部が形成されていてもよい。
【0012】
上記発明によれば、超小型・超薄型の圧電振動デバイスであっても容器へのクラック等の発生を防止することができる。平面視略矩形の容器の場合、長手方向つまり長辺方向の中央部分は各種応力が集中しやすい領域となるため長辺方向の中央部分にクラック等が発生しやすくなり、気密不良の原因となる。これに対して本発明の構成であれば、前記凹部の内底面のうち、少なくとも前記容器の長辺中央を含む領域に厚肉部が形成されているため容器の長辺中央を含む領域を補強することができる。本構造により、容器の機械的強度を維持することができるので容器へのクラック等の発生を防止することができる。
【0013】
また、上記目的を達成するために、圧電振動片が前記厚肉部に片持ち接合され、前記凹部の内底面のうち、少なくとも前記圧電振動片の自由端と対向する領域に前記薄肉部が形成されていてもよい。
【0014】
上記発明によれば、圧電振動片の自由端と容器凹部の内底面との接触を防止することができるとともに、貫通孔端部の開口径のばらつき等を抑制することができる。具体的に超小型の水晶振動子において、例えば基部から延出された一対の振動腕が屈曲振動する音叉型水晶振動片を用い、前記基部を接合材によって容器の凹部内に片持ち接合した場合、落下等による外部衝撃を受けた際に音叉型水晶振動片の自由端、つまり一対の振動腕の先端が撓んで振動腕の先端が容器凹部の内底面に接触することがある。音叉型水晶振動片は振動腕の先端が周波数変化に及ぼす影響が最も大きい領域であり、振動腕先端を含む領域が容器凹部の内底面と接触することにより、周波数変化等の各種不具合を引き起こすことになってしまう。これに対して本発明の構成は、前記凹部の内底面のうち、少なくとも前記圧電振動片の自由端と対向する領域に前記薄肉部が形成されている。これより、自由端と容器凹部の内底面との隙間を拡大して自由端と内底面との接触を防止するとともに、薄肉部に貫通孔を形成することにより、貫通孔端部の開口径のばらつき等を抑制することができる。なお前記薄肉部は容器凹部の内底面に複数形成されていてもよい。
【0015】
また、上記目的を達成するために、前記貫通孔が一対で、かつ前記容器の長手方向に沿って略同一直線上に配設されるとともに、容器の長手方向の中央を容器の短手方向に横断する仮想ラインを基準として線対称に配設されていてもよい。
【0016】
上記発明によれば、貫通孔は一対で、かつ前記容器の長手方向に沿って略同一直線上に配設されている。平面視略矩形の容器においては一対の貫通孔を長辺方向に沿って形成する方が、短辺方向に沿って形成するよりも貫通孔間の距離をより長く確保することができる。さらに一対の貫通孔が容器の長手方向の中央を容器の短手方向に横断する仮想ラインを基準として線対称に配設されるため、容器にバランスよく貫通孔が穿孔される。これにより、容器の機械的強度を維持することができる。
【0017】
また平面視略矩形の容器の場合、長辺の方が短辺よりも引張応力や圧縮応力等の各種応力の影響を受けやすくなる。したがって容器の剛性を向上させるため、凹部の側壁と内底面の境界の領域については特に長辺方向に沿って厚肉部で補強することが望ましい。対向する二長辺に沿って厚肉部を形成する場合、容器の短辺方向については当該厚肉部の内側に、端部の開口径のばらつきを抑制した貫通孔を形成するために薄肉部を設けることになるが、長辺方向に一対の貫通孔を略同一直線上に配設することによって、短辺方向において貫通孔が形成されない厚肉部のみからなる領域を最大化することができる。さらに略同一直線上に一対の貫通孔が配設されることにより、一対の貫通孔を平面視で斜対向の位置関係で配設した場合に比べ、容器に働く捩り応力等を抑制することができる。これにより容器へのクラック等の発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように本発明によれば、容器の機械的強度を低下させることなく、貫通孔端部の開口径のばらつき等を抑制することができる圧電振動デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す水晶振動子の断面模式図
【図2】本発明の第1の実施形態を示す水晶振動子の容器の平面図
【図3】本発明の第1の実施形態の変形例を示す水晶振動子の容器の平面図
【図4】本発明の第1の実施形態の変形例を示す水晶振動子の容器の平面図
【図5】本発明の第1の実施形態の変形例を示す水晶振動子の容器の平面図
【図6】本発明の第2の実施形態を示す水晶振動子の容器の平面図
【図7】本発明の第2の実施形態の変形例を示す水晶振動子の容器の平面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、圧電振動デバイスとして水晶振動子を例に挙げ、図面を参照しながら説明する。
−第1の実施形態−
本発明の第1の実施形態を示す水晶振動子の断面模式図を図1に示す。図1は図2に示す容器のA−A線における断面図に水晶振動片が搭載され蓋が接合された状態を表している。本発明の第1の実施形態において水晶振動子1は表面実装型の水晶振動子である。水晶振動子1は、水晶振動片を収容するための凹部20を備えた容器2と、凹部20の内部に接合部材6を介して接合される水晶振動片3と、凹部20を封止する平板状の蓋4が主な構成部材となっている。水晶振動片3は内部空間7に、蓋4と容器2とが接合されることによって外部環境から保護されるようになっている。
【0021】
図1および図2において容器2はホウケイ酸ガラスを基材とする箱状体である。容器2は底板部23と、底板部23の上方に起立する環状の堤部24と、底板部より厚肉の厚肉部25を有する構造となっている。そして環状の堤部24によって包囲される内側の空間が凹部20となっており、凹部20の内部に水晶振動片が搭載される。凹部20はガラスウエハをフォトリソグラフィ技術およびウエットエッチング法を用いて平面視略矩形に成形されている。そして凹部20の内底面には、中央に薄肉部21が形成され、当該薄肉部21の周囲に厚肉部25が形成されている。なお図1においてウエットエッチングによって掘り込まれた領域の側面は容器の基材がガラスであるため傾斜面となっている。
【0022】
厚肉部上面250の一端側には水晶振動片3の一端側が片持ち接合される。容器2の底面側には外部基板と接続される外部接続端子27が形成されており、貫通電極28および底板部23の表裏主面に形成された配線パターン85を経由して厚肉部上面250に形成された搭載パッド5に電気的に接続されている。
【0023】
図1に示すように容器2には底板部23の一主面(薄肉部21の底面210)と他主面(容器底面22)を貫く一対の貫通孔29が形成されている。貫通孔29の内壁面にはスパッタ膜81が被着され、その内側に樹脂材82が充填されたものが貫通電極28となっている。貫通孔29の内側面には、貫通孔の幅方向の外方に膨らむ曲面30が底板部23の一主面(薄肉部底面210)に連続して形成され、テーパー状の傾斜面31が他主面(容器底面22)に連続して形成されている。このような断面形状の貫通孔は電着コート法もしくはスプレーコート法とウエットエッチング法を用いることによって成形されている。前記穿孔方法によって成形された貫通孔は、一主面方向からのみウエットエッチング法によって穿孔する場合に比べて、底板部23の両主面における開口径を小さくすることができ、微小な開口径を有する貫通孔を形成する場合に有効である。
【0024】
図1において配線パターン85は、厚肉部上面250に形成された一対の搭載パッド5,5から、貫通孔29の内壁面を経由して容器底面22の外部接続端子27までを電気的に接続するように所定形状で配設されている。そして図1に示すように第1スパッタ膜81が、薄肉部21の貫通孔29の端部周辺と貫通孔内壁面および容器底面22に形成されている。本実施形態では第1スパッタ膜81として、Moからなるスパッタ膜上にCuからなるスパッタ膜が積層された2層構成となっており、第1スパッタ膜81の一部が配線パターン85となっている。
【0025】
容器2の底面側22には、外部接続端子27と配線パターン85と樹脂材82からなる樹脂パターンとが形成されている。そして底板部23の基材と第1スパッタ膜81の上部および貫通孔29の内部に感光性の樹脂からなる樹脂材82が形成されている。つまり容器の底面側の接触領域(後述)を除く全面に樹脂パターンが形成されている。本実施形態では樹脂材82としてポリベンズオキサゾール(PBO)が使用されている。そして配線パターン85および樹脂パターン上に外部接続端子27が積層されている。なお樹脂材82はポリベンズオキサゾールに限定されず、結晶性材料からなる容器との密着性が良好で、フォトリソグラフィ法によるパターン形成可能な樹脂材が使用可能である。例えばベンゾシクロブテン(BCB)やエポキシ、ポリイミド、フッ素系樹脂からなる樹脂材を使用してもよい。さらにインクジェット法やスクリーン印刷技術等の,フォトリソグラフィ法以外の手段を用いる場合、非感光性の樹脂も使用可能である。
【0026】
図1に示すように外部接続端子27と配線パターン85とを接触させる接触領域86が、一対の外部接続端子27,27のそれぞれに1箇所ずつ形成されている。この接触領域によって外部接続端子27と配線パターン85とが電気的に接続される。なお本実施形態では1つの外部接続端子27に対して1つの接触領域86が形成されているが、接触領域86の形成数は1つの外部接続端子に対して1つに限定されるものではなく、任意の個数で形成してもよい。
【0027】
前述の樹脂パターン上および接触領域86上に第2スパッタ膜83、めっき膜84が順に積層されて外部接続端子27が構成されている。なお、めっき膜84は複数のめっき層で構成されており、第2スパッタ膜83上にCuめっき膜、Niめっき膜、Auストライクめっき膜またはPdめっき膜、Auめっき膜の順に積層されている。図1ではこれらの4層からなるめっき膜を一体で表している。
【0028】
一方、容器2の凹部20側には、貫通孔一端部29a周辺に形成された第1スパッタ膜81を覆うようにして厚肉部25の上面にかけて配線パターン85が形成されている。図2に示すように凹部20に形成された配線パターン85は一対の貫通電極28,28からそれぞれ導出され、厚肉部上面250に形成された一対の搭載パッド5,5と各々電気的に接続されている。
【0029】
堤部24の上面には金属の積層膜からなる第1接合層S1が環状に形成されており、第1接合層S1の膜構成は、貫通孔一端部29aの周辺を除き、凹部内の配線パターン85の膜構成と同一となっている。つまり第1接合層S1の膜構成は、第2スパッタ膜83、めっき膜84が順に積層された構造となっている。そしてめっき膜84は第2スパッタ膜83上にCuめっき膜、Niめっき膜、Auストライクめっき膜またはPdめっき膜、Auめっき膜の順に積層されている。図1ではこれらの4層からなるめっき膜を一体で表している。
【0030】
図1において水晶振動片3はATカット切断された平面視略矩形の板状の水晶振動板である。なお図2において水晶振動片が搭載される位置を点線にて表している。水晶振動片2の表裏主面の中央には対向して一対の励振電極が形成されている(図示省略)。そして前記一対の励振電極の各々から水晶振動片の一短辺側まで、図示しない引出電極が導出されており、引出電極の終端には接続電極(図示省略)が各々形成されている。この一対の接続電極と、容器2の一対の搭載パッド5,5とが対応するように接合部材6を介して各々接合される。本実施形態において接合部材6にはめっきバンプが用いられており、水晶振動片3の前述の一対の接続電極の各々に予め形成される。そして容器2の一対の搭載パッド5,5上に、前記一対のめっきバンプが対応するように水晶振動片3が厚肉部25上に位置決め載置された後、FCB(Flip Chip Bonding)法によって水晶振動片3が容器2に接合される。なお水晶振動片3と容器2との接合はFCB法に限定されるものではなく、例えば接合部材として導電性接着材を用いて加熱硬化させて接合する方法や、その他の接合方法であってもよい。
【0031】
図1において蓋4は平面視略矩形の平板である。蓋4の一主面41は平坦面となっており、他主面42は周縁を含む領域に下方に突出した壁部43が環状に形成されている。壁部43の両側面431、432はテーパー状に成形されている。このような形状はウエットエッチング法によって成形されている。壁部43には壁部の天面433から外側面432にかけて第2接合層S2が形成されている。この第2接合層S2はTiからなるスパッタ膜の上にAuからなるスパッタ膜が積層された構造となっている。なおAuのスパッタ膜の代わりにCuからなるスパッタ膜を用いてもよい。
【0032】
容器2と蓋4とを接合するための接合材9は、蓋4の第2接合層S2に積層されている。接合材9の膜構成はAu/Sn膜のめっき膜の上に、Auストライクめっき膜、Auめっき膜の順に積層された構造となっている。前記構成によりAu/Sn膜が加熱によって溶融し、AuSn合金膜となる。なお加熱溶融によってAuSn合金を形成せずに初めから第2接合層S2にAuSn合金膜を形成してもよい。また接合材9は蓋側に形成せずに容器側、つまり第1接合層S1の上に形成してもよい。
【0033】
本発明の第1の実施形態において凹部20の内底面のうち、貫通孔一端部29aの周囲の領域が薄肉に形成されている(薄肉部21)。これにより、貫通孔29の端部(29a、29b)の開口径のばらつきおよび前記開口径の拡大を抑制することができる。これはウエットエッチング法を用いて貫通孔を穿孔する際、薄肉部に貫通孔を形成することによって、貫通孔が微細径であっても貫通孔端部の周囲も薄肉領域とすることによりエッチング時の副生成物の影響を受けにくくなり、貫通孔内部への新しいエッチング液の置換が促進されやすくなるためである。また貫通孔を形成する領域の基材が薄肉であるため基材内部へのエッチング液の循環が促進されやすくなることによる。本実施形態のように貫通孔29の周囲のみを薄肉化する構造であれば、容器2の強度的強度を維持しつつ、貫通孔29の端部の開口径のばらつき等を抑制することができる。
【0034】
また、図1および図2において点線Lに示す容器の長辺方向の中央を容器の短辺方向に横断する仮想ラインL上には、堤部24の内側に隣接して厚肉部が形成されている。このような構造によれば、超小型・超薄型の圧電振動デバイスであっても容器へのクラック等の発生を防止することができる。平面視略矩形の容器の場合、長辺方向の中央部分は各種応力が集中しやすい領域となるため長辺方向の中央部分にクラック等が発生しやすくなり、気密不良の原因となる。これに対して本発明の構成であれば、凹部20の内底面のうち、少なくとも容器の長辺中央を含む領域に厚肉部が形成されているため容器の長辺中央を含む領域を補強することができる。
【0035】
本構造により、容器2の機械的強度を維持することができるので容器へのクラック等の発生を防止することができる。なお本発明の第1の実施形態において水晶振動片3は厚肉部25に片持ち接合されているが、水晶振動片の支持形態は片持ち支持に限らず、図3に示すように水晶振動片3を厚肉部25上に両持ち接合してもよい。この場合、仮想ラインLを通るように厚肉部25と薄肉部21の境界となる厚肉部の二長辺側面から短辺方向に突出した一対の突起部26,26を対向形成することにより、長辺中央を含む領域をさらに補強することができる。
【0036】
本発明の第1の実施形態では凹部20の内底面の,水晶振動片3の自由端と対向する領域は厚肉部25となっているが、図4に示すように凹部20の内底面の,水晶振動片3の自由端と対向する領域に薄肉部21’が形成されていてもよい。つまり凹部20の内底面の,貫通孔端部の周囲の領域(薄肉部21)に加えて、水晶振動片の自由端の下方に対応する領域にも薄肉部21’を形成することにより、水晶振動片3の自由端と凹部20の内底面との接触を防止することができるとともに、貫通孔29の端部の開口径のばらつきを抑制することができる。具体的に、落下等による外部衝撃を受けた際に水晶振動片の自由端が撓んで容器凹部の内底面に接触することがある。これに対して図4の構造であれば凹部20の内底面のうち、少なくとも水晶振動片3の自由端と対向する領域に薄肉部21が形成されているため、前記自由端と凹部20の内底面との隙間を拡大して自由端と内底面との接触を防止することができる。そして貫通孔29の端部の周囲の領域も薄肉部となっているため、エッチング時の副生成物の影響を受けにくくなり、貫通孔内部への新しいエッチング液の置換が促進されやすくなる。また貫通孔を形成する領域の基材が薄肉であるため基材内部へのエッチング液の循環が促進されやすくなる。これにより、貫通孔端部の開口径のばらつき等を抑制することができる。
【0037】
本発明の第1の実施形態の変形例を図5に示す。図5において圧電振動片は基部と該基部から一方向に伸長する一対の振動腕を有する音叉型水晶振動片3’となっており、厚肉部25に前記基部が片持ち接合され、音叉型水晶振動片3’の自由端である一対の振動腕の先端と対向する凹部の内底面の領域には薄肉部21’’が形成されている。この薄肉部21’’は凹部20の内底面の中央付近に形成された一対の貫通孔の各端部を包含する薄肉の領域とつながっている。つまり平面視ではアルファベットの略「T」字状に薄肉部が凹部20の内底面に形成されている。
【0038】
上記形態の容器は、音叉型水晶振動片が厚肉部に片持ち接合される場合に特に効果的である。これは次の理由による。落下等による外部衝撃を受けた際に音叉型水晶振動片の自由端、つまり一対の振動腕の先端が撓んで振動腕の先端が容器凹部の内底面に接触することがある。音叉型水晶振動片は振動腕の先端が周波数変化に及ぼす影響が最も大きい領域であり、振動腕先端を含む領域が容器凹部の内底面と接触することにより、周波数変化等の各種不具合を引き起こすことになってしまう。これに対して図5に示す構成であれば、前記凹部の内底面のうち、少なくとも音叉型水晶振動片の自由端と対向する領域に薄肉部21’’が形成されている。
【0039】
上記構成により、自由端と容器凹部の内底面との隙間を拡大して自由端と内底面との接触を防止することができる。また、薄肉部に貫通孔を形成することにより、貫通孔端部の開口径のばらつき等を抑制することができる。さらに図5に示す構造の薄肉部であればウエットエッチングの際にエッチング液が貫通孔の形成領域に供給され易くなる。これによって貫通孔端部の開口径のばらつき等を抑制することができる。
【0040】
−第2の実施形態−
本発明の第2の実施形態を図6乃至7に示す。本発明の第2の実施形態において第1の実施形態と同様の構成については同番号を付して説明の一部を割愛するとともに、第1の実施形態と同一の作用効果を有する。以下、本発明の第1の実施形態との相違点を中心に説明する。なお図6乃至7においては凹部内の配線パターンおよび搭載パッドの記載は省略している。
【0041】
図6乃至7では一対の貫通電極28,28が容器2の長辺に沿って略同一直線上に配設されているが、その形成位置が本発明の第1の実施形態と異なっている。つまり一対の貫通電極28を結ぶ線分の中点Mが、容器2の対向する二長辺の中央を結ぶ仮想ラインL上に位置している。換言すれば一対の貫通電極28,28は、容器2の長辺方向の中央を容器の短辺方向に横断する仮想ラインLを基準として線対称に配設されている。
【0042】
上記構成によれば、貫通孔29は一対で、かつ容器2の長辺に沿って略同一直線上に配設されている。平面視略矩形の容器2において一対の貫通孔29,29を長辺方向に沿って形成する方が、短辺方向に沿って形成するよりも貫通孔間の距離をより長く確保することができる。さらに一対の貫通電極が容器の長辺方向の中央を容器の短辺方向に横断する仮想ラインLを基準として線対称に配設されているため、容器2にバランスよく貫通孔が穿孔される。これにより、容器2の機械的強度を維持することができる。
【0043】
なお本発明の第2の実施形態の変形例として図7に示すような構造であってもよい。図6では一対の貫通電極28,28のそれぞれの端部に近接する周辺領域が薄肉部21,21となっており、これらの薄肉部は独立して形成されている。これに対して図7では一対の貫通電極28,28の全体を包含するように貫通孔端部の周辺領域が薄肉部となっている。なお、一対の貫通孔(貫通電極)は、容器底面に形成される外部接続端子と平面視で干渉しない位置に形成することが望ましい。これは次の理由による。容器2は生産効率を考慮して1枚のウエハから多数形成される,いわゆる多数個取り基板の状態で取り扱われる。そして水晶振動子の製造工程において個々の水晶振動子の発振周波数を測定する工程が存在するが、この周波数測定は周波数測定用のプローブを外部接続端子に接触させて行う。このとき前記プローブが外部接続端子へ接触することによって外部接続端子に傷等が発生することがある。つまり貫通電極が平面視で外部接続端子に干渉する位置に形成されていると、前記プローブが貫通電極の端部に接触する可能性がある。この場合、貫通電極の端部へのプローブ接触による傷等によって貫通電極としての機能が劣化してしまうおそれがある。したがって平面視で外部接続端子と平面視で干渉しない位置に設定することが好ましい。
【0044】
また平面視略矩形の容器の場合、長辺の方が短辺よりも引張応力や圧縮応力等の各種応力の影響を受けやすくなる。したがって容器の剛性を向上させるため、凹部の側壁と内底面の境界の領域については特に長辺方向に沿って厚肉部で補強することが望ましい。対向する二長辺に沿って厚肉部を形成する場合、容器の短辺方向については当該厚肉部の内側に、端部の開口径のばらつきを抑制した貫通孔を形成するために薄肉部を設けることになるが、長辺方向に一対の貫通孔を略同一直線上に配設することによって、短辺方向において貫通孔が形成されない厚肉部のみからなる領域を最大化することができる。さらに略同一直線上に一対の貫通孔が配設されることにより、一対の貫通孔を平面視で斜対向の位置関係で配設した場合に比べ、容器に働く捩り応力等を抑制することができる。これにより容器へのクラック等の発生を防止することができる。
【0045】
本発明の実施形態では表面実装型の水晶振動子のパッケージを構成する容器を例に挙げているが、水晶振動子以外に水晶フィルタ、水晶発振器などの電子機器等に用いられる他の圧電振動デバイスのパッケージを構成する容器へも適用可能である。
【0046】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0047】
圧電振動デバイスの量産に適用できる。
【符号の説明】
【0048】
1 水晶振動子
2 容器
20 凹部
21、21’、21’’ 薄肉部
22 容器底面
23 底板部
24 堤部
25、26 厚肉部
28 貫通電極
29 貫通孔
29a 貫通孔一端部
29b 貫通孔他端部
30 曲面
31 傾斜面
L 仮想ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動片を収容するための凹部と当該凹部の内底面に厚肉部と薄肉部とを備えた容器と、前記厚肉部に接合される圧電振動片と、前記凹部を気密に封止する蓋とからなる圧電振動デバイスであって、前記薄肉部に貫通孔が形成されていることを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項2】
前記凹部の内底面のうち、少なくとも前記容器の長手方向の中央を含む領域に前記厚肉部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動デバイス。
【請求項3】
圧電振動片が前記厚肉部に片持ち接合され、前記凹部の内底面のうち、少なくとも前記圧電振動片の自由端と対向する領域に前記薄肉部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至2に記載の圧電振動デバイス。
【請求項4】
前記貫通孔が一対で、かつ前記容器の長手方向に沿って略同一直線上に配設されるとともに、容器の長手方向の中央を容器の短手方向に横断する仮想ラインを基準として線対称に配設されていることを特徴とする請求項1乃至3に記載の圧電振動デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−77975(P2013−77975A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216524(P2011−216524)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】