圧電振動子、発振器、電子機器、および電波時計
【課題】位置ずれが抑制され、所望の位置にマウントされた圧電振動片を具備し、良好な振動特性を発揮させること。
【解決手段】一対の振動腕部31,32、および一対の振動腕部の基端部側を一体的に固定する基部33を備えた圧電振動片30と、圧電振動片がマウントされるベース基板11と、ベース基板に接合され、該ベース基板との間に形成されたキャビティ内に圧電振動片を収容するリッド基板12と、を備え、ベース基板には、第一係合部50が形成され、圧電振動片の基部には、第一係合部に係合し、ベース基板の予め決められたマウント位置に該圧電振動片を案内して位置決めさせる第二係合部40が形成されている圧電振動子1を提供する。
【解決手段】一対の振動腕部31,32、および一対の振動腕部の基端部側を一体的に固定する基部33を備えた圧電振動片30と、圧電振動片がマウントされるベース基板11と、ベース基板に接合され、該ベース基板との間に形成されたキャビティ内に圧電振動片を収容するリッド基板12と、を備え、ベース基板には、第一係合部50が形成され、圧電振動片の基部には、第一係合部に係合し、ベース基板の予め決められたマウント位置に該圧電振動片を案内して位置決めさせる第二係合部40が形成されている圧電振動子1を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子、発振器、電子機器、および電波時計に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号のタイミング源、リファレンス信号源等として、水晶等を利用した圧電振動子が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが提供されているが、その一つとして、いわゆる音叉型の圧電振動片を有する圧電振動子が知られている。
【0003】
音叉型の振動片は、平行に配設された一対の振動腕部と、一対の振動腕部の基端部を支持する基部と、で構成されている。そして、圧電振動片の表面には電極膜が形成され、この電極膜に電圧が印加されることで、一対の振動腕部を、互いに接近又は離間する方向に所定の共振周波数で振動させることが可能とされている。
【0004】
このような振動片を備える圧電振動子として、該圧電振動片を、ベース基板とリッド基板とが接合されたパッケージの内部に形成されたキャビティ内に収納した表面実装型のものが知られている。
【0005】
この種の圧電振動子においては、図15に示すように、ベース基板1上に振動片5がマウントされる構成とされており、このベース基板1に対して図示しないリッド基板が接合されることで、マウントされた振動片5がキャビティ内に収納される。
ところで、振動片5はベース基板1に対して予め決められた位置にマウントされており、このマウントによって機械的に支持されると共に、ベース基板1側の電極に導通がなされている。
【0006】
この点、詳細に説明する。
図15に示すように、ベース基板1には、パッケージの内外を貫通する一対の貫通電極2A,2Bと、一対の引き回し電極3A,3Bと、が設けられている。各引き回し電極3A,3Bは、貫通電極2A,2Bと、振動片5の基部6に形成された図示しないマウント電極と、に接続されている。
なお、振動片5のマウント電極と引き回し電極3A,3Bとは、例えば導電性接着剤やバンプ(Au等)等のボンディング材8により導電性を確保しつつ接着されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
通常、圧電振動子の製造時には、ベース基板1上の所定位置に上記ボンディング材8を塗布した後、例えばロボット等により把持した振動片5を、ボンディング材8が塗布された上記所定位置にマウント電極が合致するように位置決めする。そして、振動片5をベース基板1に接近させ、マウント電極をボンディング材8に押し付けることで、振動片5をベース基板1に接着する。
なお、ボンディング材8としてバンプを用いる場合には、振動片5をベース基板1に接近させるに際して予めバンプを加熱して溶融させておく。そして、その状態で振動片5をバンプに押し付けた後、溶融したバンプを硬化させることで振動片5をマウントさせている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−9576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、振動片5をベース基板1にマウントする際、振動片5が傾いたままの状態でマウントされてしまう場合があり、本来のマウント位置からずれてしまう場合があった。特に、図15に示すように、ベース基板1の表面に沿った面内で回転する方向(図中に示す矢印方向)に傾いてしまう場合があった。この場合には、振動片5の一部がパッケージの内壁に接触する恐れがあり、振動特性が大きく損なわれてしまうものであった。
また、ロボット等で振動片5を位置決め制御しながらマウントしたとしても、例えば数十μm程度の位置精度が要求されるため、機械による制御が困難である。
【0010】
特に、ボンディング材8としてバンプを用いた場合には、仮にロボット等を利用して振動片5を高精度に位置決めしたとしても、未硬化状態のバンプが柔らかいため、ロボット等による振動片5の把持を開放した瞬間、振動片5がバンプ上で滑る等して変位する可能性があり、やはり上述した問題が生じてしまう。
また、ボンディング材8として導電性接着剤を用いた場合には、仮に振動片5を高精度に位置決めしたとしても、導電性接着剤が塑性変形し易いので、外部衝撃等により振動片5が位置ずれし、やはり上述した問題が生じてしまう。
【0011】
以上のことから、実際の製造工程では、振動片5がずれていないか検査する必要があり、手間とコストがかかるものであった。また、そのずれ量が予め定めた公差を外れた振動片5を有した圧電振動子は、不良品として排除されるため、ここにも無駄な材料コストが生じる。
【0012】
そこでなされた本発明の目的は、位置ずれが抑制され、所望の位置にマウントされた圧電振動片を具備し、良好な振動特性を発揮させることができる圧電振動子、これを備える発振器、電子機器、および電波時計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
本発明に係る圧電振動子は、互いに平行に配置された一対の振動腕部、および前記一対の振動腕部の長さ方向における基端部側を一体的に固定する基部を備えた圧電振動片と、前記圧電振動片がマウントされるベース基板と、前記ベース基板に対向して接合され、該ベース基板との間に形成されたキャビティ内に前記圧電振動片を収容するリッド基板と、を備え、前記ベース基板には、第一係合部が形成され、前記圧電振動片の基部には、前記第一係合部に係合し、前記ベース基板の予め決められたマウント位置に該圧電振動片を案内して位置決めさせる第二係合部が形成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、圧電振動片をベース基板に取り付けるに際し、第一係合部と第二係合部とを係合させることで、ベース基板における予め決められたマウント位置に圧電振動片を案内して位置決めすることができる。これにより、圧電振動片の位置ずれを防ぐことができ、所定の位置に正確にマウントさせ易い。
従って、圧電振動片がベース基板やリッド基板等に干渉してその振動特性が損なわれるのを防ぐことができる。また、第一係合部と第二係合部とが係合し合っているので、外部衝撃等によっても圧電振動片の位置ずれが生じ難い。この点においても、安定して良好な振動特性を発揮させ易い。
【0015】
また、上記本発明に係る圧電振動子において、前記第一係合部が、前記ベース基板の表面から突出した突起部とされ、前記第二係合部が、前記圧電振動片の基部に形成された凹部または貫通孔であることが好ましい。
【0016】
この場合には、第一係合部としての突起部を、第二係合部としての凹部または貫通孔に嵌め合わせることで、圧電振動片の位置ずれをより効果的に防止し易い。
【0017】
また、上記本発明に係る圧電振動子において、前記第一係合部および前記第二係合部が、複数組形成されていることが好ましい。
【0018】
この場合には、ベース基板側に第一係合部が複数形成され、圧電振動片側に第一係合部に対応して第二係合部が複数形成されているので、圧電振動片の位置ずれをさらに効果的に防止し易い。
【0019】
また、上記本発明に係る圧電振動子において、前記第一係合部は、前記ベース基板に形成され、前記圧電振動片に給電するための外部電極に導通し、前記第二係合部は、前記圧電振動片の前記ベース基板に形成されたマウント電極に導通し、前記第一係合部と前記第二係合部との係合により、前記外部電極と前記マウント電極とが互いに導通していることが好ましい。
【0020】
この場合には、第一係合部及び第二係合部を電極としても機能させることができるので、外部電極とマウント電極との電気導通性をより安定なものにすることができる。従って、安定して一対の振動腕部を振動させることができ、作動の信頼性を向上することができる。
【0021】
また、本発明に係る発振器は、上記本発明に係る前記圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする。
また、本発明に係る電子機器は、上記本発明に係る前記圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする。
また、本発明に係る電波時計は、上記本発明に係る前記圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、良好な振動特性を発揮する上記本発明の圧電振動子を備えているので、高い信頼性及び高い性能を有する発振器、電子機器、電波時計を提供することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、位置ずれが抑制され、所望の位置にマウントされた圧電振動片を具備し、良好な振動特性を発揮させることができる圧電振動子とすることができる。また、圧電振動片の位置ずれによる不良品率を抑え、その検査も簡素化又は不要とすることもでき、それにより上記圧電振動子を無駄なく低コストで製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る圧電振動子の一実施形態を示す外観斜視図である。
【図2】図4に示すA−A線に沿った圧電振動子の断面図である。
【図3】図1に示す圧電振動子の分解斜視図である。
【図4】図1に示す圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態で圧電振動片を上方から見た図である。
【図5】図4の左側面図である。
【図6】圧電振動子の第1の変形例を示す図であり、係合凹部および係合突起を複数設けた例を示す図である。
【図7】圧電振動子の第2の変形例を示す図であり、基部に側方に突出する突出部を設け、この突出部に係合凹部を形成した例を示す図である。
【図8】圧電振動子の第3の変形例を示す図であり、基部に設けたサイドアームに係合凹部を形成した例を示す図である。
【図9】圧電振動子の第4の変形例を示す図であり、図6に示した構成において、係合凹部を貫通孔に代えた例を示す図である。
【図10】圧電振動子の第5の変形例を示す図であり、図7に示した構成において、係合凹部を貫通孔に代えた例を示す図である。
【図11】圧電振動子の第6の変形例を示す図であり、図8に示した構成において、係合凹部を貫通孔に代えた例を示す図である。
【図12】本発明に係る発振器の一実施形態を示す構成図である。
【図13】本発明に係る電子機器の一実施形態を示す構成図である。
【図14】本発明に係る電波時計の一実施形態を示す構成図である。
【図15】圧電振動片が位置ずれしてしまった従来例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明に係る圧電振動子、発振器、電子機器、および電波時計を実施するための最良の形態を説明する。しかし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0026】
(圧電振動子の構成)
図1〜図5に示すように、本実施形態の圧電振動子10は、ベース基板11とリッド基板12とが例えば陽極接合や図示しない接合膜等を介して接合された箱状のパッケージ13と、パッケージ13の内部に形成されたキャビティC内に収納され、ベース基板11上にマウントされた圧電振動片30と、を備えた表面実装型の振動子とされている。
【0027】
図1、図2に示すように、ベース基板11およびリッド基板12は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明の絶縁基板であり、略板状に形成されている。リッド基板12には、ベース基板11が接合される接合面側に圧電振動片30が収まる矩形状の凹部12aが形成されている。この凹部12aは、ベース基板11およびリッド基板12が対向して重ね合わされたときに、圧電振動片30を収容するキャビティCを画成する凹部として機能する。
【0028】
図2に示すように、ベース基板11には、ベース基板11を厚さ方向に貫通する一対の貫通孔14,15が形成されている。この貫通孔14,15は、キャビティC内に収まる位置に形成されている。より詳しく説明すると、本実施形態の貫通孔14,15は、マウントされた圧電振動片30の後述する基部33側に対応した位置に一方の貫通孔14が形成され、後述する振動腕部31,32側に対応した位置に他方の貫通孔15が形成されている。
【0029】
そして、これら一対の貫通孔14,15には、これら貫通孔14,15を埋めるように形成された一対の貫通電極16,17が形成されている。これら貫通電極16,17は、例えば貫通孔14,15に対して一体的に固定された導電性の芯材であり、両端が平坦で、かつベース基板11の厚みと略同じ厚さとなるように形成されている。これにより、キャビティC内の気密を維持しつつ、ベース基板11の両面で電気導通性を確保している。
【0030】
なお、貫通電極16,17としては、上記の場合に限定されるものではなく、例えば貫通孔14,15に図示しない金属ピンを挿入した後、貫通孔14,15と金属ピンとの間にガラスフリットを充填して焼成することで形成しても構わない。更には、貫通孔14,15内に埋設された導電性接着剤であっても構わない。
【0031】
図3、図4に示すように、ベース基板11の上面側(リッド基板12が接合される接合面側)には、一対の引き回し電極18,19がパターニングされている。一対の引き回し電極18,19のうち、一方の引き回し電極18は、貫通電極16を覆うよう設けられている。また、他方の引き回し電極19は、一端側で貫通電極17を覆うとともに、他端側がベース基板11の長さ方向に延び、一方の引き回し電極18に隣接した位置に配置されている。
そして、図3及び図5に示すように、これら一対の引き回し電極18,19の上面には、それぞれ金等からなるバンプBが形成されている。
【0032】
また、ベース基板11の下面には、図1〜図3に示すように、一対の貫通電極16,17に対してそれぞれ電気的に接続される外部電極20,21が形成されている。
【0033】
(圧電振動片)
図3、図4に示すように、圧電振動片30は、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、互いに平行に延びるよう配置された一対の振動腕部31,32と、一対の振動腕部31,32の基端側を一体的に固定するプレート状の基部33と、を有している。
【0034】
一対の振動腕部31,32には、その外表面上に、一対の振動腕部31,32を振動させる図示しない励振電極が形成されている。また、基部33の外表面には図示しないマウント電極が形成され、図示しない引き回し電極により励振電極と電気的接続されている。
そして、圧電振動片30は、上記した引き回し電極18、19上に形成されたバンプBに対して、マウント電極が接触した状態でマウントされている。これにより、圧電振動片30は、ベース基板11の上面から浮いた状態で支持されるとともに、引き回し電極18,19に対してそれぞれ電気的接続された状態とされている。
【0035】
ところで、本実施形態の圧電振動片30には、基部33において、振動腕部31,32が形成された側とは反対側の端部33aの幅方向中央部に、係合凹部(第二係合部、凹部)40が形成されている。図示の例では、この係合凹部40は圧電振動片30の厚さ方向に亘って形成された切欠き凹部とされている。
【0036】
一方、ベース基板11には、圧電振動片30をベース基板11に対して所定のマウント位置に位置決めした状態で、係合凹部40に対向する位置に係合凸部(第一係合部、突起部)50が設けられている。この係合凸部50は、係合凹部40に嵌め合い可能な外径寸法を有する突起部であり、ベース基板11上に例えばスパッタリング等によって形成しても良いし、ピン等を立設させることで形成したものでも良い。
【0037】
そして、圧電振動片30の係合凹部40にベース基板11の係合凸部50が嵌り込んで、互いに係合し合っていることで、圧電振動片30が所望のマウント位置に位置決めされた状態でベース基板11にマウントされている。
【0038】
(圧電振動子の作用)
このように構成された圧電振動子10を作動させる場合には、ベース基板11に形成された外部電極20,21に対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片30の励振電極に電流を流すことができ、一対の振動腕部31,32を、互いに接近・離間する方向(幅方向)に所定の共振周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部31,32の振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として圧電振動子10を利用することができる。
【0039】
(圧電振動子の組み立て方法)
次いで、上記した圧電振動子10の製造方法について簡単に説明する。
まず、圧電振動片30を例えばロボット等によって把持し、ベース基板11上の所定のマウント位置に位置決めする。この際、圧電振動片30の係合凹部40をベース基板11の係合凸部50に対して嵌め込み、両者を係合させる。これにより、圧電振動片30が予め決められたベース基板11の所定のマウント位置に案内され、該圧電振動片30がそのマウント位置からずれてしまうのが抑制される。
【0040】
そして、その状態から、圧電振動片30をベース基板11に接近する側に押圧し、圧電振動片30のマウント電極を予め加熱して溶融しておいたバンプBに押し付ける。その後、バンプBが冷却硬化することで、圧電振動片30がベース基板11に固定される。この際、図3及び図4に示すように、係合凹部40にベース基板11の係合凸部50が嵌め込まれているので、例えばロボット等による圧電振動片30の把持を開放したとしても、従来とは異なり、圧電振動片30が所望のマウント位置から位置ずれしてしまい難い。
【0041】
そして、最後にベース基板11とリッド基板12とを例えば陽極接合によって接合し、両基板11,12の間に形成されたキャビティC内に圧電振動片30を収容することで、圧電振動子10の組み立てが完了する。
【0042】
(実施形態の効果)
本実施形態の圧電振動子10によれば、圧電振動片30に係合凹部40が形成され、この係合凹部40がベース基板11に設けられた係合凸部50に嵌め込まれて係合し合っている。これにより、ベース基板11の所定のマウント位置に圧電振動片30を案内して位置決めさせることができると共に、圧電振動片30がベース基板11の上面に平行な面内で変位するのを防ぐことができる。
【0043】
したがって、圧電振動片30がパッケージ13の内壁等に干渉してその振動特性が損なわれるのを防ぐことができる。また、係合凹部40と係合凸部50とが係合し合っているので、外部衝撃等が作用したとしても圧電振動片30に位置ずれ等が生じ難い。この点においても、安定して良好な振動特性を発揮させ易い。
加えて、圧電振動片30の位置ずれによる不良品率を抑え、その検査も簡素化、又は不要とすることもできる。その結果、良好な振動特性を有した圧電振動子10を無駄なく低コストで製造することが可能となる。
【0044】
以下、上記実施形態の変形例を示す。以下の説明においては、上記実施形態と異なる構成を中心に説明を行い、上記実施形態と共通する構成については、図中に同符号を付してその説明を省略する。
【0045】
(実施形態の第1変形例)
上記実施形態では、係合凹部40および係合凸部50を、1組のみ設ける構成としたが、この場合に限定されるものではなく、複数組を設けるようにしても良い。
例えば、図6に示すように、係合凹部40を、圧電振動片30の基部33の両側部にそれぞれ1箇所ずつ、合計2つ設け、各係合凹部40に嵌め合う位置に係合凸部50を形成するようにしても良い。
【0046】
このように構成することで、圧電振動片30をより確実に位置決め固定することができる。特にこの場合には、係合凹部40が、それぞれ幅方向の外側に向けて開口するとともに、基部33の厚さ方向に貫通しているので、この係合凹部40を、基部33において切り欠き部(ノッチ)として機能させることができる。そして、このノッチとして機能する係合凹部40により、基部33の形状を他の部分に比べて幅が狭い幅狭部とされたくびれ形状にすることができる。
【0047】
そして、係合凹部40によって形成された上記幅狭部により、振動腕部31,32によって励起された振動が基部33側に伝わってしまうルートを狭くできるので、該振動を振動腕部31,32側に閉じ込めて、基部33側に漏れてしまうことを抑制し易い。これにより、振動漏れを効果的に抑制でき、CI値が上昇するのを抑え、出力信号の品質が低下するのを抑えることができる。
【0048】
(実施形態の第2変形例)
図7は、圧電振動子の第2の変形例を示す図であり、基部に側方に突出する突出部を設け、この突出部に係合凹部を形成した例を示す図である。
【0049】
この図7に示すように、基部33において、振動腕部31,32とは反対側の端部33aに、両側方に向けて突出する突出部34H,35Hが形成されている。そして、突出部34H,35Hにおいて、振動腕部31,32側の側面34a,35aと、その反対側の側面34b,35bと、に上記した係合凹部40がそれぞれ形成され、各係合凹部40に嵌め合う位置に係合凸部50が形成されている。
【0050】
このように構成した場合であっても、圧電振動片30をより確実に位置決め固定することができる。
また、基部33に形成された突出部34H,35Hにより、基部33における振動を確実に吸収し、振動が外部に漏れてしまうのを防ぎ易い。また、振動が基部33において十分に減衰されずにマウント部分を通じてパッケージ13側に漏れてしまうと、共振周波数Fがシフトしてしまうが、基部33に突出部34H,35Hを形成することで、共振周波数Fのシフトを抑えるとともに、電気信号から機械振動への変換時の損失を抑え、CI値が上昇して品質が低下するのを防ぎ易い。
【0051】
(実施形態の第3変形例)
図8は、圧電振動子の第3の変形例を示す図であり、基部に設けたサイドアームに係合凹部を形成した例を示す図である。
この図8に示すように、基部33の幅方向両側に、長さ方向に沿って延在する一対のサイドアーム29を基部33に一体的に形成しても構わない(いわゆる、サイドアームタイプ)。
【0052】
具体的に、各サイドアーム29は、基部33の端部33a側から幅方向の両側に向けてそれぞれ延在するとともに、その外側端部から長さ方向に沿う振動腕部31,32側に向けて延在している。すなわち、各サイドアーム29は、基部33、および振動腕部31,32の基端部の幅方向両側に位置している。
この場合、サイドアーム29の先端部29aに図示しないマウント電極が位置するよう形成されている。また、引き回し電極18、19は、一端部が貫通電極16,17に導通され、他端部が、サイドアーム29の先端部29aのマウント電極に対向し、バンプBを介して導通するよう形成されている。
【0053】
このように構成された場合において、サイドアーム29の先端部29aに係合凹部40を形成し、各係合凹部40に嵌め合う位置に係合凸部50を形成することが可能である。この場合であっても、圧電振動片30をより確実に位置決め固定することができる。
【0054】
また、サイドアーム29,29を形成することで、基部33における振動腕部31,32との接続部と、マウント部分(サイドアーム29の先端部29a)との距離を長く確保することができる。その結果、圧電振動片30の全長を増大させることなく、振動漏れを抑制してCI値が上昇するのを抑え、出力信号の品質が低下するのを抑えることが可能となる。
【0055】
更に、図示の例では、基部33において、幅方向の両側面からそれぞれ幅方向の中心に向かって切り欠かれた切欠き部(ノッチ)37が形成されている。
これら切欠き部37は、それぞれ幅方向の外側に向けて開口するとともに、基部33の厚さ方向に貫通している。したがって、この場合の基部33は、他の部分に比べて幅が狭い幅狭部を有するくびれ形状をなしている。
この切欠き部33によって形成された上記幅狭部により、振動腕部31,32によって励起された振動が基部33側に伝わってしまうルートを狭くできるので、該振動を振動腕部31,32側に閉じ込めて、基部33側に漏れてしまうことを抑制しやすい。これにより、さらに振動漏れを効果的に抑制することが可能となる。
【0056】
(実施形態の第4〜第6変形例)
図9は、圧電振動子の第4の変形例を示す図であり、図6に示した構成において、係合凹部を貫通孔に代えた例を示す図である。
図10は、圧電振動子の第5の変形例を示す図であり、図7に示した構成において、係合凹部を貫通孔に代えた例を示す図である。
図11は、圧電振動子の第6の変形例を示す図であり、図8に示した構成において、係合凹部を貫通孔に代えた例を示す図である。
【0057】
これら図9〜図11に示したように、上記した係合凹部40に代えて、基部33の外周部より内側に貫通孔(第二係合部)40Hを形成し、この貫通孔40Hに係合凸部50を嵌め合わせる構成とすることも可能である。このような構成によっても、第1〜第3変形例と同様の効果を奏効することができる。
なお、図11に示したように、引き回し電極18,19の一部に係合凸部50を形成するようにしても良い。
【0058】
なお、上記した各実施形態において、係合凹部40や係合凸部50を電極として機能させることも可能である。具体的には、係合凸部50を例に挙げると、導電性材料で金属ピンの如く係合凸部50を形成しても良いし、樹脂製のピンの表面に導電成膜を形成することで係合凸部50としても良い。いずれにしても、係合凸部50の少なくとも表面を導電性材料で形成すれば良い。
そして、圧電振動片30の基部33に形成されたマウント電極に導通させた状態で係合凹部40を形成し、ベース基板11の外部電極20、21に導通させた状態で係合凸部50を形成する。なお、引き回し電極18,19自体に係合凸部50を設けることによって、外部電極20、21に導通させても良い。
【0059】
このような構成にすることで、係合凹部40と係合凸部50とを互いに係合させることで、外部電極20、21とマウント電極とを導通させることができる。特に、外部電極20、21とマウント電極との電気導通性をより安定なものにすることができるので、上記各実施形態における効果に加え、作動の信頼性を向上することができる。
【0060】
(発振器)
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図12を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器100は、図12に示すように、圧電振動子10を、集積回路101に電気的接続された発振子として構成したものである。この発振器100は、コンデンサ等の電子部品102が実装された基板103を備えている。基板103には、発振器用の上述した集積回路101が実装されており、この集積回路101の近傍に、圧電振動子10が実装されている。これら電子部品102、集積回路101および圧電振動子10は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0061】
このように構成された発振器100において、圧電振動子10に電圧を印加すると、この圧電振動子10内の圧電振動片30が振動する。この振動は、圧電振動片30が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路101に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路101によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子10が発振子として機能する。
また、集積回路101の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0062】
上述したように、本実施形態の発振器100によれば、良好な振動特性を発揮して高性能化された圧電振動子10を備えているので、高い信頼性及び高い性能を有する発振器100を提供することができる。
【0063】
(電子機器)
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図13を参照して説明する。なお電子機器として、上述した圧電振動子10を有する携帯情報機器(電子機器)110を例にして説明する。
ここで、本実施形態の携帯情報機器110は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカおよびマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化および軽量化されている。
【0064】
次に、本実施形態の携帯情報機器110の構成について説明する。この携帯情報機器110は、図13に示すように、圧電振動子10と、電力を供給するための電源部111とを備えている。電源部111は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部111には、各種制御を行う制御部112と、時刻等のカウントを行う計時部113と、外部との通信を行う通信部114と、各種情報を表示する表示部115と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部116とが並列に接続されている。そして、電源部111によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0065】
制御部112は、各機能部を制御して音声データの送信および受信、現在時刻の計測や表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部112は、予めプログラムが書き込まれたROMと、このROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、このCPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0066】
計時部113は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路およびインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子10とを備えている。圧電振動子10に電圧を印加すると圧電振動片30が振動し、この振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部112と信号の送受信が行われ、表示部115に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0067】
通信部114は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部117、音声処理部118、切替部119、増幅部120、音声入出力部121、電話番号入力部122、着信音発生部123および呼制御メモリ部124を備えている。
無線部117は、音声データ等の各種データを、アンテナ125を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部118は、無線部117又は増幅部120から入力された音声信号を符号化および複号化する。増幅部120は、音声処理部118又は音声入出力部121から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部121は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0068】
また、着信音発生部123は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部119は、着信時に限って、音声処理部118に接続されている増幅部120を着信音発生部123に切り替えることによって、着信音発生部123において生成された着信音が増幅部120を介して音声入出力部121に出力される。
なお、呼制御メモリ部124は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部122は、例えば、0から9の番号キーおよびその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0069】
電圧検出部116は、電源部111によって制御部112等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部112に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部114を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部116から電圧降下の通知を受けた制御部112は、無線部117、音声処理部118、切替部119および着信音発生部123の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部117の動作停止は、必須となる。更に、表示部115に、通信部114が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0070】
すなわち、電圧検出部116と制御部112とによって、通信部114の動作を禁止し、その旨を表示部115に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部115の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしても良い。
なお、通信部114の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部126を備えることで、通信部114の機能をより確実に停止することができる。
【0071】
上述したように、本実施形態の携帯情報機器110によれば、良好な振動特性を発揮して高性能化された圧電振動子10を備えているので、高い信頼性及び高い性能を有する携帯情報機器110を提供することができる。
【0072】
(電波時計)
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図14を参照して説明する。
本実施形態の電波時計130は、図14に示すように、フィルタ部131に電気的接続された圧電振動子10を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、上述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0073】
以下、電波時計130の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ132は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ133によって増幅され、複数の圧電振動子10を有するフィルタ部131によって濾波、同調される。
本実施形態における圧電振動子10は、上述した搬送周波数と同一の40kHzおよび60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部138、139をそれぞれ備えている。
【0074】
さらに、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路134により検波復調される。
続いて、波形整形回路135を介してタイムコードが取り出され、CPU136でカウントされる。CPU136では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC137に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部138、139は、上述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0075】
なお、上述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計130を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子10を必要とする。
【0076】
上述したように、本実施形態の電波時計130によれば、良好な振動特性を発揮して高性能化された圧電振動子10を備えているので、高い信頼性及び高い性能を有する電波時計130を提供することができる。
【0077】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこれら実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0078】
例えば、上記実施形態では、圧電振動片30の基部33とベース基板11側の引き回し電極18、19をバンプBにより固定する構成としたが、これに代えて導電性接着材で接着する構成としても良い。
また、接合凹部40および接合凸部50の配置、設置数、形状等は、上記した場合に限定されるものではなく、自由に設定して構わない。
【0079】
さらに、上記実施形態では、圧電振動片30に接合凹部40を形成し、ベース基板11に係合凸部50を設けるようにしたが、圧力振動片30に係合凸部50を設け、ベース基板11の上面に係合凹部40を形成する構成としても良い。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0080】
10…圧電振動子、11…ベース基板、12…リッド基板、13…パッケージ、16,17…貫通電極、18,19…引き回し電極、20,21…外部電極、29…サイドアーム、30…圧電振動片、31,32…振動腕部、33…基部、40…係合凹部(第二係合部、凹部)、40H…貫通孔(第二係合部)、50…係合凸部(第一係合部、突起部)、100…発振器、101…集積回路、110…携帯情報機器(電子機器)、113…計時部、130…電波時計、131…フィルタ部、B…バンプ、C…キャビティ
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子、発振器、電子機器、および電波時計に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号のタイミング源、リファレンス信号源等として、水晶等を利用した圧電振動子が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが提供されているが、その一つとして、いわゆる音叉型の圧電振動片を有する圧電振動子が知られている。
【0003】
音叉型の振動片は、平行に配設された一対の振動腕部と、一対の振動腕部の基端部を支持する基部と、で構成されている。そして、圧電振動片の表面には電極膜が形成され、この電極膜に電圧が印加されることで、一対の振動腕部を、互いに接近又は離間する方向に所定の共振周波数で振動させることが可能とされている。
【0004】
このような振動片を備える圧電振動子として、該圧電振動片を、ベース基板とリッド基板とが接合されたパッケージの内部に形成されたキャビティ内に収納した表面実装型のものが知られている。
【0005】
この種の圧電振動子においては、図15に示すように、ベース基板1上に振動片5がマウントされる構成とされており、このベース基板1に対して図示しないリッド基板が接合されることで、マウントされた振動片5がキャビティ内に収納される。
ところで、振動片5はベース基板1に対して予め決められた位置にマウントされており、このマウントによって機械的に支持されると共に、ベース基板1側の電極に導通がなされている。
【0006】
この点、詳細に説明する。
図15に示すように、ベース基板1には、パッケージの内外を貫通する一対の貫通電極2A,2Bと、一対の引き回し電極3A,3Bと、が設けられている。各引き回し電極3A,3Bは、貫通電極2A,2Bと、振動片5の基部6に形成された図示しないマウント電極と、に接続されている。
なお、振動片5のマウント電極と引き回し電極3A,3Bとは、例えば導電性接着剤やバンプ(Au等)等のボンディング材8により導電性を確保しつつ接着されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
通常、圧電振動子の製造時には、ベース基板1上の所定位置に上記ボンディング材8を塗布した後、例えばロボット等により把持した振動片5を、ボンディング材8が塗布された上記所定位置にマウント電極が合致するように位置決めする。そして、振動片5をベース基板1に接近させ、マウント電極をボンディング材8に押し付けることで、振動片5をベース基板1に接着する。
なお、ボンディング材8としてバンプを用いる場合には、振動片5をベース基板1に接近させるに際して予めバンプを加熱して溶融させておく。そして、その状態で振動片5をバンプに押し付けた後、溶融したバンプを硬化させることで振動片5をマウントさせている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−9576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、振動片5をベース基板1にマウントする際、振動片5が傾いたままの状態でマウントされてしまう場合があり、本来のマウント位置からずれてしまう場合があった。特に、図15に示すように、ベース基板1の表面に沿った面内で回転する方向(図中に示す矢印方向)に傾いてしまう場合があった。この場合には、振動片5の一部がパッケージの内壁に接触する恐れがあり、振動特性が大きく損なわれてしまうものであった。
また、ロボット等で振動片5を位置決め制御しながらマウントしたとしても、例えば数十μm程度の位置精度が要求されるため、機械による制御が困難である。
【0010】
特に、ボンディング材8としてバンプを用いた場合には、仮にロボット等を利用して振動片5を高精度に位置決めしたとしても、未硬化状態のバンプが柔らかいため、ロボット等による振動片5の把持を開放した瞬間、振動片5がバンプ上で滑る等して変位する可能性があり、やはり上述した問題が生じてしまう。
また、ボンディング材8として導電性接着剤を用いた場合には、仮に振動片5を高精度に位置決めしたとしても、導電性接着剤が塑性変形し易いので、外部衝撃等により振動片5が位置ずれし、やはり上述した問題が生じてしまう。
【0011】
以上のことから、実際の製造工程では、振動片5がずれていないか検査する必要があり、手間とコストがかかるものであった。また、そのずれ量が予め定めた公差を外れた振動片5を有した圧電振動子は、不良品として排除されるため、ここにも無駄な材料コストが生じる。
【0012】
そこでなされた本発明の目的は、位置ずれが抑制され、所望の位置にマウントされた圧電振動片を具備し、良好な振動特性を発揮させることができる圧電振動子、これを備える発振器、電子機器、および電波時計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
本発明に係る圧電振動子は、互いに平行に配置された一対の振動腕部、および前記一対の振動腕部の長さ方向における基端部側を一体的に固定する基部を備えた圧電振動片と、前記圧電振動片がマウントされるベース基板と、前記ベース基板に対向して接合され、該ベース基板との間に形成されたキャビティ内に前記圧電振動片を収容するリッド基板と、を備え、前記ベース基板には、第一係合部が形成され、前記圧電振動片の基部には、前記第一係合部に係合し、前記ベース基板の予め決められたマウント位置に該圧電振動片を案内して位置決めさせる第二係合部が形成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、圧電振動片をベース基板に取り付けるに際し、第一係合部と第二係合部とを係合させることで、ベース基板における予め決められたマウント位置に圧電振動片を案内して位置決めすることができる。これにより、圧電振動片の位置ずれを防ぐことができ、所定の位置に正確にマウントさせ易い。
従って、圧電振動片がベース基板やリッド基板等に干渉してその振動特性が損なわれるのを防ぐことができる。また、第一係合部と第二係合部とが係合し合っているので、外部衝撃等によっても圧電振動片の位置ずれが生じ難い。この点においても、安定して良好な振動特性を発揮させ易い。
【0015】
また、上記本発明に係る圧電振動子において、前記第一係合部が、前記ベース基板の表面から突出した突起部とされ、前記第二係合部が、前記圧電振動片の基部に形成された凹部または貫通孔であることが好ましい。
【0016】
この場合には、第一係合部としての突起部を、第二係合部としての凹部または貫通孔に嵌め合わせることで、圧電振動片の位置ずれをより効果的に防止し易い。
【0017】
また、上記本発明に係る圧電振動子において、前記第一係合部および前記第二係合部が、複数組形成されていることが好ましい。
【0018】
この場合には、ベース基板側に第一係合部が複数形成され、圧電振動片側に第一係合部に対応して第二係合部が複数形成されているので、圧電振動片の位置ずれをさらに効果的に防止し易い。
【0019】
また、上記本発明に係る圧電振動子において、前記第一係合部は、前記ベース基板に形成され、前記圧電振動片に給電するための外部電極に導通し、前記第二係合部は、前記圧電振動片の前記ベース基板に形成されたマウント電極に導通し、前記第一係合部と前記第二係合部との係合により、前記外部電極と前記マウント電極とが互いに導通していることが好ましい。
【0020】
この場合には、第一係合部及び第二係合部を電極としても機能させることができるので、外部電極とマウント電極との電気導通性をより安定なものにすることができる。従って、安定して一対の振動腕部を振動させることができ、作動の信頼性を向上することができる。
【0021】
また、本発明に係る発振器は、上記本発明に係る前記圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする。
また、本発明に係る電子機器は、上記本発明に係る前記圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする。
また、本発明に係る電波時計は、上記本発明に係る前記圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、良好な振動特性を発揮する上記本発明の圧電振動子を備えているので、高い信頼性及び高い性能を有する発振器、電子機器、電波時計を提供することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、位置ずれが抑制され、所望の位置にマウントされた圧電振動片を具備し、良好な振動特性を発揮させることができる圧電振動子とすることができる。また、圧電振動片の位置ずれによる不良品率を抑え、その検査も簡素化又は不要とすることもでき、それにより上記圧電振動子を無駄なく低コストで製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る圧電振動子の一実施形態を示す外観斜視図である。
【図2】図4に示すA−A線に沿った圧電振動子の断面図である。
【図3】図1に示す圧電振動子の分解斜視図である。
【図4】図1に示す圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態で圧電振動片を上方から見た図である。
【図5】図4の左側面図である。
【図6】圧電振動子の第1の変形例を示す図であり、係合凹部および係合突起を複数設けた例を示す図である。
【図7】圧電振動子の第2の変形例を示す図であり、基部に側方に突出する突出部を設け、この突出部に係合凹部を形成した例を示す図である。
【図8】圧電振動子の第3の変形例を示す図であり、基部に設けたサイドアームに係合凹部を形成した例を示す図である。
【図9】圧電振動子の第4の変形例を示す図であり、図6に示した構成において、係合凹部を貫通孔に代えた例を示す図である。
【図10】圧電振動子の第5の変形例を示す図であり、図7に示した構成において、係合凹部を貫通孔に代えた例を示す図である。
【図11】圧電振動子の第6の変形例を示す図であり、図8に示した構成において、係合凹部を貫通孔に代えた例を示す図である。
【図12】本発明に係る発振器の一実施形態を示す構成図である。
【図13】本発明に係る電子機器の一実施形態を示す構成図である。
【図14】本発明に係る電波時計の一実施形態を示す構成図である。
【図15】圧電振動片が位置ずれしてしまった従来例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明に係る圧電振動子、発振器、電子機器、および電波時計を実施するための最良の形態を説明する。しかし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0026】
(圧電振動子の構成)
図1〜図5に示すように、本実施形態の圧電振動子10は、ベース基板11とリッド基板12とが例えば陽極接合や図示しない接合膜等を介して接合された箱状のパッケージ13と、パッケージ13の内部に形成されたキャビティC内に収納され、ベース基板11上にマウントされた圧電振動片30と、を備えた表面実装型の振動子とされている。
【0027】
図1、図2に示すように、ベース基板11およびリッド基板12は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明の絶縁基板であり、略板状に形成されている。リッド基板12には、ベース基板11が接合される接合面側に圧電振動片30が収まる矩形状の凹部12aが形成されている。この凹部12aは、ベース基板11およびリッド基板12が対向して重ね合わされたときに、圧電振動片30を収容するキャビティCを画成する凹部として機能する。
【0028】
図2に示すように、ベース基板11には、ベース基板11を厚さ方向に貫通する一対の貫通孔14,15が形成されている。この貫通孔14,15は、キャビティC内に収まる位置に形成されている。より詳しく説明すると、本実施形態の貫通孔14,15は、マウントされた圧電振動片30の後述する基部33側に対応した位置に一方の貫通孔14が形成され、後述する振動腕部31,32側に対応した位置に他方の貫通孔15が形成されている。
【0029】
そして、これら一対の貫通孔14,15には、これら貫通孔14,15を埋めるように形成された一対の貫通電極16,17が形成されている。これら貫通電極16,17は、例えば貫通孔14,15に対して一体的に固定された導電性の芯材であり、両端が平坦で、かつベース基板11の厚みと略同じ厚さとなるように形成されている。これにより、キャビティC内の気密を維持しつつ、ベース基板11の両面で電気導通性を確保している。
【0030】
なお、貫通電極16,17としては、上記の場合に限定されるものではなく、例えば貫通孔14,15に図示しない金属ピンを挿入した後、貫通孔14,15と金属ピンとの間にガラスフリットを充填して焼成することで形成しても構わない。更には、貫通孔14,15内に埋設された導電性接着剤であっても構わない。
【0031】
図3、図4に示すように、ベース基板11の上面側(リッド基板12が接合される接合面側)には、一対の引き回し電極18,19がパターニングされている。一対の引き回し電極18,19のうち、一方の引き回し電極18は、貫通電極16を覆うよう設けられている。また、他方の引き回し電極19は、一端側で貫通電極17を覆うとともに、他端側がベース基板11の長さ方向に延び、一方の引き回し電極18に隣接した位置に配置されている。
そして、図3及び図5に示すように、これら一対の引き回し電極18,19の上面には、それぞれ金等からなるバンプBが形成されている。
【0032】
また、ベース基板11の下面には、図1〜図3に示すように、一対の貫通電極16,17に対してそれぞれ電気的に接続される外部電極20,21が形成されている。
【0033】
(圧電振動片)
図3、図4に示すように、圧電振動片30は、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、互いに平行に延びるよう配置された一対の振動腕部31,32と、一対の振動腕部31,32の基端側を一体的に固定するプレート状の基部33と、を有している。
【0034】
一対の振動腕部31,32には、その外表面上に、一対の振動腕部31,32を振動させる図示しない励振電極が形成されている。また、基部33の外表面には図示しないマウント電極が形成され、図示しない引き回し電極により励振電極と電気的接続されている。
そして、圧電振動片30は、上記した引き回し電極18、19上に形成されたバンプBに対して、マウント電極が接触した状態でマウントされている。これにより、圧電振動片30は、ベース基板11の上面から浮いた状態で支持されるとともに、引き回し電極18,19に対してそれぞれ電気的接続された状態とされている。
【0035】
ところで、本実施形態の圧電振動片30には、基部33において、振動腕部31,32が形成された側とは反対側の端部33aの幅方向中央部に、係合凹部(第二係合部、凹部)40が形成されている。図示の例では、この係合凹部40は圧電振動片30の厚さ方向に亘って形成された切欠き凹部とされている。
【0036】
一方、ベース基板11には、圧電振動片30をベース基板11に対して所定のマウント位置に位置決めした状態で、係合凹部40に対向する位置に係合凸部(第一係合部、突起部)50が設けられている。この係合凸部50は、係合凹部40に嵌め合い可能な外径寸法を有する突起部であり、ベース基板11上に例えばスパッタリング等によって形成しても良いし、ピン等を立設させることで形成したものでも良い。
【0037】
そして、圧電振動片30の係合凹部40にベース基板11の係合凸部50が嵌り込んで、互いに係合し合っていることで、圧電振動片30が所望のマウント位置に位置決めされた状態でベース基板11にマウントされている。
【0038】
(圧電振動子の作用)
このように構成された圧電振動子10を作動させる場合には、ベース基板11に形成された外部電極20,21に対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片30の励振電極に電流を流すことができ、一対の振動腕部31,32を、互いに接近・離間する方向(幅方向)に所定の共振周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部31,32の振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として圧電振動子10を利用することができる。
【0039】
(圧電振動子の組み立て方法)
次いで、上記した圧電振動子10の製造方法について簡単に説明する。
まず、圧電振動片30を例えばロボット等によって把持し、ベース基板11上の所定のマウント位置に位置決めする。この際、圧電振動片30の係合凹部40をベース基板11の係合凸部50に対して嵌め込み、両者を係合させる。これにより、圧電振動片30が予め決められたベース基板11の所定のマウント位置に案内され、該圧電振動片30がそのマウント位置からずれてしまうのが抑制される。
【0040】
そして、その状態から、圧電振動片30をベース基板11に接近する側に押圧し、圧電振動片30のマウント電極を予め加熱して溶融しておいたバンプBに押し付ける。その後、バンプBが冷却硬化することで、圧電振動片30がベース基板11に固定される。この際、図3及び図4に示すように、係合凹部40にベース基板11の係合凸部50が嵌め込まれているので、例えばロボット等による圧電振動片30の把持を開放したとしても、従来とは異なり、圧電振動片30が所望のマウント位置から位置ずれしてしまい難い。
【0041】
そして、最後にベース基板11とリッド基板12とを例えば陽極接合によって接合し、両基板11,12の間に形成されたキャビティC内に圧電振動片30を収容することで、圧電振動子10の組み立てが完了する。
【0042】
(実施形態の効果)
本実施形態の圧電振動子10によれば、圧電振動片30に係合凹部40が形成され、この係合凹部40がベース基板11に設けられた係合凸部50に嵌め込まれて係合し合っている。これにより、ベース基板11の所定のマウント位置に圧電振動片30を案内して位置決めさせることができると共に、圧電振動片30がベース基板11の上面に平行な面内で変位するのを防ぐことができる。
【0043】
したがって、圧電振動片30がパッケージ13の内壁等に干渉してその振動特性が損なわれるのを防ぐことができる。また、係合凹部40と係合凸部50とが係合し合っているので、外部衝撃等が作用したとしても圧電振動片30に位置ずれ等が生じ難い。この点においても、安定して良好な振動特性を発揮させ易い。
加えて、圧電振動片30の位置ずれによる不良品率を抑え、その検査も簡素化、又は不要とすることもできる。その結果、良好な振動特性を有した圧電振動子10を無駄なく低コストで製造することが可能となる。
【0044】
以下、上記実施形態の変形例を示す。以下の説明においては、上記実施形態と異なる構成を中心に説明を行い、上記実施形態と共通する構成については、図中に同符号を付してその説明を省略する。
【0045】
(実施形態の第1変形例)
上記実施形態では、係合凹部40および係合凸部50を、1組のみ設ける構成としたが、この場合に限定されるものではなく、複数組を設けるようにしても良い。
例えば、図6に示すように、係合凹部40を、圧電振動片30の基部33の両側部にそれぞれ1箇所ずつ、合計2つ設け、各係合凹部40に嵌め合う位置に係合凸部50を形成するようにしても良い。
【0046】
このように構成することで、圧電振動片30をより確実に位置決め固定することができる。特にこの場合には、係合凹部40が、それぞれ幅方向の外側に向けて開口するとともに、基部33の厚さ方向に貫通しているので、この係合凹部40を、基部33において切り欠き部(ノッチ)として機能させることができる。そして、このノッチとして機能する係合凹部40により、基部33の形状を他の部分に比べて幅が狭い幅狭部とされたくびれ形状にすることができる。
【0047】
そして、係合凹部40によって形成された上記幅狭部により、振動腕部31,32によって励起された振動が基部33側に伝わってしまうルートを狭くできるので、該振動を振動腕部31,32側に閉じ込めて、基部33側に漏れてしまうことを抑制し易い。これにより、振動漏れを効果的に抑制でき、CI値が上昇するのを抑え、出力信号の品質が低下するのを抑えることができる。
【0048】
(実施形態の第2変形例)
図7は、圧電振動子の第2の変形例を示す図であり、基部に側方に突出する突出部を設け、この突出部に係合凹部を形成した例を示す図である。
【0049】
この図7に示すように、基部33において、振動腕部31,32とは反対側の端部33aに、両側方に向けて突出する突出部34H,35Hが形成されている。そして、突出部34H,35Hにおいて、振動腕部31,32側の側面34a,35aと、その反対側の側面34b,35bと、に上記した係合凹部40がそれぞれ形成され、各係合凹部40に嵌め合う位置に係合凸部50が形成されている。
【0050】
このように構成した場合であっても、圧電振動片30をより確実に位置決め固定することができる。
また、基部33に形成された突出部34H,35Hにより、基部33における振動を確実に吸収し、振動が外部に漏れてしまうのを防ぎ易い。また、振動が基部33において十分に減衰されずにマウント部分を通じてパッケージ13側に漏れてしまうと、共振周波数Fがシフトしてしまうが、基部33に突出部34H,35Hを形成することで、共振周波数Fのシフトを抑えるとともに、電気信号から機械振動への変換時の損失を抑え、CI値が上昇して品質が低下するのを防ぎ易い。
【0051】
(実施形態の第3変形例)
図8は、圧電振動子の第3の変形例を示す図であり、基部に設けたサイドアームに係合凹部を形成した例を示す図である。
この図8に示すように、基部33の幅方向両側に、長さ方向に沿って延在する一対のサイドアーム29を基部33に一体的に形成しても構わない(いわゆる、サイドアームタイプ)。
【0052】
具体的に、各サイドアーム29は、基部33の端部33a側から幅方向の両側に向けてそれぞれ延在するとともに、その外側端部から長さ方向に沿う振動腕部31,32側に向けて延在している。すなわち、各サイドアーム29は、基部33、および振動腕部31,32の基端部の幅方向両側に位置している。
この場合、サイドアーム29の先端部29aに図示しないマウント電極が位置するよう形成されている。また、引き回し電極18、19は、一端部が貫通電極16,17に導通され、他端部が、サイドアーム29の先端部29aのマウント電極に対向し、バンプBを介して導通するよう形成されている。
【0053】
このように構成された場合において、サイドアーム29の先端部29aに係合凹部40を形成し、各係合凹部40に嵌め合う位置に係合凸部50を形成することが可能である。この場合であっても、圧電振動片30をより確実に位置決め固定することができる。
【0054】
また、サイドアーム29,29を形成することで、基部33における振動腕部31,32との接続部と、マウント部分(サイドアーム29の先端部29a)との距離を長く確保することができる。その結果、圧電振動片30の全長を増大させることなく、振動漏れを抑制してCI値が上昇するのを抑え、出力信号の品質が低下するのを抑えることが可能となる。
【0055】
更に、図示の例では、基部33において、幅方向の両側面からそれぞれ幅方向の中心に向かって切り欠かれた切欠き部(ノッチ)37が形成されている。
これら切欠き部37は、それぞれ幅方向の外側に向けて開口するとともに、基部33の厚さ方向に貫通している。したがって、この場合の基部33は、他の部分に比べて幅が狭い幅狭部を有するくびれ形状をなしている。
この切欠き部33によって形成された上記幅狭部により、振動腕部31,32によって励起された振動が基部33側に伝わってしまうルートを狭くできるので、該振動を振動腕部31,32側に閉じ込めて、基部33側に漏れてしまうことを抑制しやすい。これにより、さらに振動漏れを効果的に抑制することが可能となる。
【0056】
(実施形態の第4〜第6変形例)
図9は、圧電振動子の第4の変形例を示す図であり、図6に示した構成において、係合凹部を貫通孔に代えた例を示す図である。
図10は、圧電振動子の第5の変形例を示す図であり、図7に示した構成において、係合凹部を貫通孔に代えた例を示す図である。
図11は、圧電振動子の第6の変形例を示す図であり、図8に示した構成において、係合凹部を貫通孔に代えた例を示す図である。
【0057】
これら図9〜図11に示したように、上記した係合凹部40に代えて、基部33の外周部より内側に貫通孔(第二係合部)40Hを形成し、この貫通孔40Hに係合凸部50を嵌め合わせる構成とすることも可能である。このような構成によっても、第1〜第3変形例と同様の効果を奏効することができる。
なお、図11に示したように、引き回し電極18,19の一部に係合凸部50を形成するようにしても良い。
【0058】
なお、上記した各実施形態において、係合凹部40や係合凸部50を電極として機能させることも可能である。具体的には、係合凸部50を例に挙げると、導電性材料で金属ピンの如く係合凸部50を形成しても良いし、樹脂製のピンの表面に導電成膜を形成することで係合凸部50としても良い。いずれにしても、係合凸部50の少なくとも表面を導電性材料で形成すれば良い。
そして、圧電振動片30の基部33に形成されたマウント電極に導通させた状態で係合凹部40を形成し、ベース基板11の外部電極20、21に導通させた状態で係合凸部50を形成する。なお、引き回し電極18,19自体に係合凸部50を設けることによって、外部電極20、21に導通させても良い。
【0059】
このような構成にすることで、係合凹部40と係合凸部50とを互いに係合させることで、外部電極20、21とマウント電極とを導通させることができる。特に、外部電極20、21とマウント電極との電気導通性をより安定なものにすることができるので、上記各実施形態における効果に加え、作動の信頼性を向上することができる。
【0060】
(発振器)
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図12を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器100は、図12に示すように、圧電振動子10を、集積回路101に電気的接続された発振子として構成したものである。この発振器100は、コンデンサ等の電子部品102が実装された基板103を備えている。基板103には、発振器用の上述した集積回路101が実装されており、この集積回路101の近傍に、圧電振動子10が実装されている。これら電子部品102、集積回路101および圧電振動子10は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0061】
このように構成された発振器100において、圧電振動子10に電圧を印加すると、この圧電振動子10内の圧電振動片30が振動する。この振動は、圧電振動片30が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路101に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路101によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子10が発振子として機能する。
また、集積回路101の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0062】
上述したように、本実施形態の発振器100によれば、良好な振動特性を発揮して高性能化された圧電振動子10を備えているので、高い信頼性及び高い性能を有する発振器100を提供することができる。
【0063】
(電子機器)
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図13を参照して説明する。なお電子機器として、上述した圧電振動子10を有する携帯情報機器(電子機器)110を例にして説明する。
ここで、本実施形態の携帯情報機器110は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカおよびマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化および軽量化されている。
【0064】
次に、本実施形態の携帯情報機器110の構成について説明する。この携帯情報機器110は、図13に示すように、圧電振動子10と、電力を供給するための電源部111とを備えている。電源部111は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部111には、各種制御を行う制御部112と、時刻等のカウントを行う計時部113と、外部との通信を行う通信部114と、各種情報を表示する表示部115と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部116とが並列に接続されている。そして、電源部111によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0065】
制御部112は、各機能部を制御して音声データの送信および受信、現在時刻の計測や表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部112は、予めプログラムが書き込まれたROMと、このROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、このCPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0066】
計時部113は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路およびインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子10とを備えている。圧電振動子10に電圧を印加すると圧電振動片30が振動し、この振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部112と信号の送受信が行われ、表示部115に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0067】
通信部114は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部117、音声処理部118、切替部119、増幅部120、音声入出力部121、電話番号入力部122、着信音発生部123および呼制御メモリ部124を備えている。
無線部117は、音声データ等の各種データを、アンテナ125を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部118は、無線部117又は増幅部120から入力された音声信号を符号化および複号化する。増幅部120は、音声処理部118又は音声入出力部121から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部121は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0068】
また、着信音発生部123は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部119は、着信時に限って、音声処理部118に接続されている増幅部120を着信音発生部123に切り替えることによって、着信音発生部123において生成された着信音が増幅部120を介して音声入出力部121に出力される。
なお、呼制御メモリ部124は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部122は、例えば、0から9の番号キーおよびその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0069】
電圧検出部116は、電源部111によって制御部112等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部112に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部114を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部116から電圧降下の通知を受けた制御部112は、無線部117、音声処理部118、切替部119および着信音発生部123の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部117の動作停止は、必須となる。更に、表示部115に、通信部114が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0070】
すなわち、電圧検出部116と制御部112とによって、通信部114の動作を禁止し、その旨を表示部115に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部115の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしても良い。
なお、通信部114の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部126を備えることで、通信部114の機能をより確実に停止することができる。
【0071】
上述したように、本実施形態の携帯情報機器110によれば、良好な振動特性を発揮して高性能化された圧電振動子10を備えているので、高い信頼性及び高い性能を有する携帯情報機器110を提供することができる。
【0072】
(電波時計)
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図14を参照して説明する。
本実施形態の電波時計130は、図14に示すように、フィルタ部131に電気的接続された圧電振動子10を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、上述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0073】
以下、電波時計130の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ132は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ133によって増幅され、複数の圧電振動子10を有するフィルタ部131によって濾波、同調される。
本実施形態における圧電振動子10は、上述した搬送周波数と同一の40kHzおよび60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部138、139をそれぞれ備えている。
【0074】
さらに、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路134により検波復調される。
続いて、波形整形回路135を介してタイムコードが取り出され、CPU136でカウントされる。CPU136では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC137に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部138、139は、上述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0075】
なお、上述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計130を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子10を必要とする。
【0076】
上述したように、本実施形態の電波時計130によれば、良好な振動特性を発揮して高性能化された圧電振動子10を備えているので、高い信頼性及び高い性能を有する電波時計130を提供することができる。
【0077】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこれら実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0078】
例えば、上記実施形態では、圧電振動片30の基部33とベース基板11側の引き回し電極18、19をバンプBにより固定する構成としたが、これに代えて導電性接着材で接着する構成としても良い。
また、接合凹部40および接合凸部50の配置、設置数、形状等は、上記した場合に限定されるものではなく、自由に設定して構わない。
【0079】
さらに、上記実施形態では、圧電振動片30に接合凹部40を形成し、ベース基板11に係合凸部50を設けるようにしたが、圧力振動片30に係合凸部50を設け、ベース基板11の上面に係合凹部40を形成する構成としても良い。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0080】
10…圧電振動子、11…ベース基板、12…リッド基板、13…パッケージ、16,17…貫通電極、18,19…引き回し電極、20,21…外部電極、29…サイドアーム、30…圧電振動片、31,32…振動腕部、33…基部、40…係合凹部(第二係合部、凹部)、40H…貫通孔(第二係合部)、50…係合凸部(第一係合部、突起部)、100…発振器、101…集積回路、110…携帯情報機器(電子機器)、113…計時部、130…電波時計、131…フィルタ部、B…バンプ、C…キャビティ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に配置された一対の振動腕部、および前記一対の振動腕部の長さ方向における基端部側を一体的に固定する基部を備えた圧電振動片と、
前記圧電振動片がマウントされるベース基板と、
前記ベース基板に対向して接合され、該ベース基板との間に形成されたキャビティ内に前記圧電振動片を収容するリッド基板と、を備え、
前記ベース基板には、第一係合部が形成され、
前記圧電振動片の基部には、前記第一係合部に係合し、前記ベース基板の予め決められたマウント位置に該圧電振動片を案内して位置決めさせる第二係合部が形成されていることを特徴とする圧電振動子。
【請求項2】
前記第一係合部が、前記ベース基板の表面から突出した突起部とされ、
前記第二係合部が、前記圧電振動片の基部に形成された凹部または貫通孔であることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動子。
【請求項3】
前記第一係合部および前記第二係合部が、複数組形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の圧電振動子。
【請求項4】
前記第一係合部は、前記ベース基板に形成され、前記圧電振動片に給電するための外部電極に導通し、
前記第二係合部は、前記圧電振動片の前記ベース基板に形成されたマウント電極に導通し、
前記第一係合部と前記第二係合部との係合により、前記外部電極と前記マウント電極とが互いに導通していることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の圧電振動子。
【請求項5】
請求項1に記載の前記圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項6】
請求項1に記載の前記圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項1に記載の前記圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。
【請求項1】
互いに平行に配置された一対の振動腕部、および前記一対の振動腕部の長さ方向における基端部側を一体的に固定する基部を備えた圧電振動片と、
前記圧電振動片がマウントされるベース基板と、
前記ベース基板に対向して接合され、該ベース基板との間に形成されたキャビティ内に前記圧電振動片を収容するリッド基板と、を備え、
前記ベース基板には、第一係合部が形成され、
前記圧電振動片の基部には、前記第一係合部に係合し、前記ベース基板の予め決められたマウント位置に該圧電振動片を案内して位置決めさせる第二係合部が形成されていることを特徴とする圧電振動子。
【請求項2】
前記第一係合部が、前記ベース基板の表面から突出した突起部とされ、
前記第二係合部が、前記圧電振動片の基部に形成された凹部または貫通孔であることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動子。
【請求項3】
前記第一係合部および前記第二係合部が、複数組形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の圧電振動子。
【請求項4】
前記第一係合部は、前記ベース基板に形成され、前記圧電振動片に給電するための外部電極に導通し、
前記第二係合部は、前記圧電振動片の前記ベース基板に形成されたマウント電極に導通し、
前記第一係合部と前記第二係合部との係合により、前記外部電極と前記マウント電極とが互いに導通していることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の圧電振動子。
【請求項5】
請求項1に記載の前記圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項6】
請求項1に記載の前記圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項1に記載の前記圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−77889(P2013−77889A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215148(P2011−215148)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
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