説明

圧電振動子のマウント装置及びマウント方法、圧電振動子

【課題】高温ガスの熱がインナーリード押さえに逃げ難くする。
【解決手段】プラグのインナーリード3aに圧電振動片2のマウント2a部を接合する圧電振動子のマウント装置であって、プラグを支持するプラグ支持体と、プラグ支持体に隣接して配置され、圧電振動片2を支持する振動片支持体と、振動片支持体の上方に配置され、インナーリード3aとマウント部2aに高温ガスを噴射するガス噴射手段と、ガス噴射手段とプラグ支持体との間にて昇降可能に配置され、インナーリード3aを跨いでインナーリード3aを上から押さえる切り欠き部28を有し、切り欠き部28の両側に、ガス噴射手段から噴射される高温ガスがプラグ支持体側へ回り込むのを防止する高温ガス遮断部26が形成され、切り欠き部28を包囲する領域が他の領域よりも肉厚の薄い薄肉部30とされている板状のインナーリード押さえ23と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子のマウント装置及びマウント方法、圧電振動子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
時計や発振器、電子機器等の工業製品の製造に不可欠な電子素子として、圧電振動子があり、時刻源やタイミング源あるいは信号の基準源として用いられている。この圧電振動子のパッケージとして、円筒状のシリンダ型パッケージが慣用されている。
このシリンダ型パッケージの圧電振動子では、金属製の有底円筒状のケースの開口側にプラグが気密状態に嵌め込まれ、一対のリードがプラグを貫通してその先端部分であるインナーリードをケース内に突出して配置され、ケース内に収容された音叉型の圧電振動片のマウント部にインナーリードが接合されることで、リードと圧電振動片が電気的に接続されている。
【0003】
このように構成されたシリンダ型パッケージの圧電振動子は、プラグをケースに嵌合する前に、一対のリードを貫通させたプラグと圧電振動片とを用意し、プラグを貫通したインナーリードを圧電振動片のマウント部に接合している。この接合には半田が用いられており、所定温度に加熱されたガスをガス噴出ノズルから吹き付けることで、予めインナーリードの表面にメッキしておいた半田を溶融して行っている。
【0004】
前記接合工程において、加熱ガスを吹き付けたときに、加熱ガスがプラグ側に回り込むと、プラグの外周面に形成されている半田層が溶融してしまい、プラグをケースに圧入する際に不具合が生じる。
そこで、この接合工程において、プラグとガス噴出ノズルとの間に配置されるインナーリード押さえの下部に、2本のインナーリードを挿通させる切り欠き部と、この切り欠き部の両側に高温ガス遮断部を設け、切り欠き部で2本のインナーリードを押さえつつ、高温ガス遮断部で高温ガスがプラグ側に流れ込むのを阻止している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−306102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記インナーリード押さえはインナーリードに接触しているため、インナーリードと圧電振動片との接合部に供給している熱がインナーリード押さえに逃げる(吸熱される)という現象が生じる。そのため、インナーリード押さえに吸収される熱を見込んで高温ガスの温度を設定しなければならず、高温ガスの温度を半田材の融点よりもかなり高くしなければならなかった。
【0007】
ところが、高温ガスの温度を高くすると、圧電振動片に伝わる熱量も多くなって、圧電振動片を構成している水晶振動片の相転移温度(573゜C)に近付くため、圧電振動片に悪影響を及ぼす虞がある。
【0008】
また、圧電振動片のマウント部は、クロム等からなる下地金属層と金等からなる仕上金属層とが積層されて構成されているが、圧電振動片が加熱されると、下地金属層のクロム(またはクロム酸化物)が仕上金属層の表面に析出していまい、接合材料(例えば、高融点ハンダ)の濡れ性等が低下して、マウント部とインナーリードとの接合性が低下するという問題も生じる。
【0009】
さらに、インナーリード押さえの切り欠き部と2本のインナーリードとの相対位置が正しくないと、2本のインナーリードを均一に押さえることができず、接合強度が低下するという問題が生じる。
【0010】
そこで、本発明は、高温ガスの熱がインナーリード押さえに逃げ難くすることができる圧電振動子のマウント装置と、マウント方法、およびこれを用いて製造した圧電振動子を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
本発明に係る圧電振動子のマウント装置は、プラグのインナーリードに、圧電材料からなる圧電振動片のマウント部を接合する圧電振動子のマウント装置であって、前記プラグを支持するプラグ支持体と、前記プラグ支持体に隣接して配置され、前記圧電振動片を支持する振動片支持体と、前記振動片支持体の上方に配置され、前記インナーリードと前記マウント部に高温ガスを噴射するガス噴射手段と、前記ガス噴射手段と前記プラグ支持体との間にて昇降可能に配置され、前記インナーリードを跨いで該インナーリードを上から押さえる切り欠き部を有し、前記切り欠き部の両側に、前記ガス噴射手段から噴射される高温ガスが前記プラグ支持体側へ回り込むのを防止する高温ガス遮断部が形成され、前記切り欠き部を包囲する領域が他の領域よりも肉厚の薄い薄肉部とされている板状のインナーリード押さえと、を備えることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、インナーリード押さえの高温ガス遮断部は、ガス噴射手段から噴射された高温ガスが、プラグ支持体側へ回り込まないように遮断する。その結果、プラグの嵌合に使用される表面のメッキ層が高温になるのを防止することができ、前記メッキ層の溶融を防止することができる。
【0013】
また、インナーリード押さえに形成した薄肉部は、インナーリードからインナーリード押さえに熱が吸収されるのを抑制する。これにより、ガス噴射手段から噴射される高温ガスの温度を従来よりも低く設定することができる。その結果、圧電振動片を、これを構成している水晶振動片の相転移温度に近付かないようにすることができる。また、インナーリードの表面に付着している半田の濡れ性を良好に保つことができ、マウント部とインナーリードとの接合強度を高めることができる。
【0014】
また、本発明に係る圧電振動子のマウント装置は、前記インナーリード押さえの表裏いずれか一方の面をエッジングして形成された凹部によって前記薄肉部が形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、薄い板材からなるインナーリード押さえに、薄肉部を容易に形成することができる。
【0015】
また、本発明に係る圧電振動子のマウント装置は、前記凹部は、前記インナーリード押さえの表裏いずれか一方の面であって前記ガス噴射手段に近い方の面に形成されており、該凹部には前記切り欠き部の幅方向中央の上方に、位置決め用の凸部が設けられていることを特徴とする。
この構成によれば、凸部を目印にしてマウント時にインナーリードを正しく位置決めすることができる。その結果、2本のインナーリードを均一に押さえることができ、マウント部とインナーリードとの接合強度を高くすることができる。
【0016】
また、本発明に係る圧電振動子のマウント方法は、プラグのインナーリードに、圧電材料からなる圧電振動片のマウント部を接合する圧電振動子のマウント方法であって、前記プラグをプラグ支持体に載せ、前記圧電振動片を振動片支持体に載せ、前記インナーリードと前記マウント部とを接触させて固定し、前記プラグと前記圧電振動片との間に、下部に切り欠き部と高温ガス遮断部と前記切り欠き部を包囲する薄肉部とを有するインナーリード押さえを配置し、前記切り欠き部を前記インナーリードの上に接触させて該インナーリードを押さえるとともに、前記プラグと前記圧電振動片との間を遮蔽しながら、前記インナーリードと前記マウント部に高温ガスを噴射することを特徴とする。
この構成によれば、ガス噴射手段から噴射された高温ガスが、プラグ支持体側へ回り込まないように遮断することができるとともに、インナーリードからインナーリード押さえに熱が吸収されるのを抑制することができる。その結果、高品質で信頼性の高い圧電振動子を製造することができる。
【0017】
また、本発明に係る圧電振動子は、上記本発明の圧電振動子のマウント方法を用いて製造されたことを特徴とする。
この構成によれば、高品質で信頼性の高い圧電振動子を提供することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る圧電振動子のマウント装置、圧電振動子のマウント方法、および圧電振動子によれば、ガス噴射手段から噴射された高温ガスが、プラグ支持体側へ回り込まないように遮断することができるとともに、インナーリードからインナーリード押さえに熱が吸収されるのを抑制することができるので、高品質で信頼性の高い圧電振動子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る圧電振動子を透視して示す斜視図である。
【図2】前記圧電振動子のプラグの断面図である。
【図3】本発明に係る圧電振動子のマウント装置の全体概要を説明するための機能ブロック図である。
【図4】前記マウント装置において、ワークの搬送とマウントに使用されるマウントプレートの構成を模式的に示す図であり、(a)は上方から見た平面図、(b)は右側面図である。
【図5】前記マウント装置において、インナーリード押さえ昇降装置の概略斜視図である。
【図6】前記マウント装置の要部の外観を示す部分斜視図である。
【図7】前記マウント装置の要部を説明するための図であり、横方向から見た部分断面図である。
【図8】図7の切断線A−Aにおける部分断面図である。
【図9】リード押さえの正面図である。
【図10】リード押さえの要部を拡大して示す正面図である。
【図11】図10の切断線B−Bにおける断面図である。
【図12】本発明の圧電振動子を備えた発振器の構成図である。
【図13】本発明の圧電振動子を備えた電子機器の構成図である。
【図14】本発明の圧電振動子を備えた電波時計の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
<圧電振動子>
図1に示すように、本発明に係る圧電振動子1は、有底円筒状の金属製ケース6内に一対の音叉腕を有する音叉型の圧電振動片2を備えている。圧電振動片2は、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。この圧電振動片2の基部には一対のマウント部2aが設けられ、一対のリード3のインナーリード3aと電気的に接続されている。この一対のリード3は、気密端子とも呼ばれるプラグ5の環状のステム4内を貫通し、アウターリード3bとなって、図示しない外部の駆動電圧源に接続される。金属製のケース6とプラグ5の環状のステム4とは気密に嵌合されており、ケース6内は圧電振動片2の屈曲振動の妨げにならないように真空状態に保たれている。
【0021】
図2に示すように、プラグ5は、環状のステム4内に貫通するリード3を、絶縁材料であるほう珪酸ガラス7を介して埋め固めて構成させたものである。ステム4は、鉄とニッケルの合金からなっており、その表面にメッキ層4aが形成されている。メッキ層4aは、下地用の銅メッキ層と、その上に形成された錫および鉛からなる半田メッキ層から構成されている。尚、メッキ層4aは、その他に、鉛の代替材料として、銅を添加したSnCuメッキや、更にSnCuメッキ表面に銀メッキを施したものなどが適宜選択される。
【0022】
この圧電振動子1の製造においては、金属製のケース6をプラグ5に嵌合する前の工程で、圧電振動片2の一対のマウント部2aとインナーリード3aとを半田によって接合するマウント工程を有する。尚、マウント部2aとインナーリード3aとを接合する半田は、予めインナーリード3aの表面にメッキ層として形成されており、マウント工程においてマウント部2aとインナーリード3aとの接合部分に高温ガスを吹き付けて前記メッキ層を溶融することによって、マウント部2aとインナーリード3aとが半田接合される。
【0023】
<圧電振動子のマウント装置>
次に、前記マウント工程で用いられる本発明に係る圧電振動子のマウント装置を説明する。
図3は、本発明に係る圧電振動子のマウント装置の全体概要を説明するための機能的なブロック図である。図4は、本発明に係る圧電振動子のマウント装置において、ワークの搬送とマウントに使用されるマウントプレートの構成を模式的に示す図であり、(a)は上方から見た平面図、(b)は右側面図である。図5は、本発明に係る圧電振動子のマウント装置において、インナーリード押さえ昇降装置100の概略斜視図である。
【0024】
まず、マウントプレートについて図4を参照して簡潔に説明する。このマウントプレート8は、図4(a)及び(b)に示すように、複数の部材の組み合わせで構成される治具である。マウントプレート8は、平板状の金属板からなるベース9の上に、プラグ支持体である1個のノッチプレート22と、これに対向した位置に、振動片支持体ベース10が配置され、さらに振動片支持体ベース10の上にパイレックス(登録商標)等の耐熱ガラスからなる振動片支持体11が配置されて構成されている。この振動片支持体11によって、圧電振動片2が所定位置に載置状態で支持される。
【0025】
ノッチプレート22には、振動片支持体11に隣接する側の上面にノッチ形成部22aが形成されている。ノッチ形成部22aには、その詳細を後述する複数のノッチ部21(図7、図8参照)が所定の間隔で形成されている。そして、ノッチ部21は、プラグ5の外周面5aとの間に隙間が形成されないよう、その内周面21aの形状がプラグ5の外周面5aの形状に合致するように形成されている。ノッチプレート22には、複数個のプラグ5が、ノッチ部21の溝のピッチに合わせて複数整列されるが、図4(a)では、右端に2個、左端に1個のプラグのみを配置し、全体を代表させて図示している。
【0026】
ノッチプレート22及び振動片支持体ベース10、振動片支持体11を搭載するベース9は、長期の使用においても反りなどが発生することがないように、約3mm以上の厚みを持つ金属板で、かつ、穴加工等の機械加工が一方の面に偏らないように設計されている。ベース9とノッチプレート22及び振動片支持体ベース10との互いの固定は、位置決めピンとねじの併用によるものであり、プラグ5と圧電振動片2の配置関係が最適になるように固定されている。ベース9の具体的な寸法の1例としては、長辺と短辺がそれぞれ略120mmと50mmである。また、ノッチプレート22上のノッチ部21のピッチは例えば4mm程度であり、長辺が120mmの場合は、合計22個のプラグの整列が可能になっている。ノッチプレート22、振動片支持体11の詳細な形状とその説明は後述する。
【0027】
図5に示すように、インナーリード押さえ昇降装置100は、図示しない昇降機構に駆動されて昇降する昇降アーム101の下部に、水平方向に延びる22個の板ばね102の基部が片持ち支持されている。板ばね102は、熱風により昇温してもバネ性が変化しないコバルト・ニッケル基の高弾性合金やベリリウム銅等の合金材料で形成されている。板ばね102はほぼ隙間なく平行に並んで配置されており、各板ばね102の先端にインナーリード押さえ23が1つずつ鉛直姿勢に保持されている。板ばね102及びインナーリード押さえ23は、ノッチプレート22上のノッチ部21のピッチと同じピッチで配置されている。インナーリード押さえ昇降装置100は、昇降アーム101が下降したときに、インナーリード押さえ23の裏面がノッチプレート22の前端面よりも若干前側(振動片支持体11に近い側)に位置するように配置されている。そして、インナーリード押さえ昇降装置100の昇降アーム101が下降すると、各インナーリード押さえ23が各一対のインナーリード3aを上から押圧し、インナーリード3aが圧電振動片2のマウント部2aに接触する。インナーリード押さえ23の詳細な形状とその説明は後述する。
【0028】
続いて圧電振動子のマウント装置の概要について、図3の機能ブロック図を参照して簡潔に説明する。
図3に示すように、マウント装置は、ワーク供給ステーション、加熱ステーション、取出しステーションの3つの処理ステーションを備えている。この3つの処理ステーションでは、上述のマウントプレート8に整列されたワーク(プラグ5及び圧電振動片2)に対して、一括して所定の処理動作が実施される。
【0029】
ワーク供給ステーションでは、まず、図示しないハンドリングロボットを介して複数個の圧電振動片2を把持し、振動片支持体11上の所定箇所に位置決めした状態で所定数を載置する。次いで、所定数のプラグ5を図示しない他のハンドリングロボットを介してノッチ部21に嵌入させる。これにより、プラグ5が左右にずれないようノッチプレート22により支持される。また、プラグ5の外周面5aは、ノッチプレート22の内周面21aと接触し、上下関係が位置決めされる。ただし、この時点では、先に載置された圧電振動片2のマウント部2aと、プラグ5のインナーリード3aとはわずかに接触する程度であり、密着した状態とはなっていない。マウント部2aとインナーリード3aは、次のステーションで確実に密着させる。ここでプラグ5は、予め別途の装置で、キャリアプレートのような保持具に、ノッチプレート22上に形成されたノッチ部21と同一ピッチで整列・保持させておくことが望ましい。これにより、キャリアプレートごと一括して移載できるので、複数のプラグ5を個々に移載するのに比較して、移載のタクトタイムを格段に短縮できる。
【0030】
続いて、マウントプレート8は次の加熱ステーションに搬送される。加熱ステーションには、高温ガス噴射用のガス噴出ノズル25、インナーリード押さえ23、プラグ押さえ27、マウントプレート送り機構が備えられている。
圧電振動片2とプラグ5が整列載置されているマウントプレート8は、加熱ステーションに送られてきて所定の位置で停止する。停止直後、マウントプレート8の上方から、インナーリード押さえ23とプラグ押さえ27が動作して、インナーリード押さえ23が全てのプラグ5のインナーリード3aを押さえ、プラグ押さえ27が全てのプラグ5のステム4を押さえる。なお、プラグ押さえ27は、バネ性を有する弾性材料で加工されている。
【0031】
全てのインナーリード押さえ23は、前述したようにインナーリード押さえ昇降装置100によって同時に昇降するので、一度に22組すべてのインナーリード3aを押さえることができる。そして、各インナーリード押さえ23の下部には、インナーリード3aを押さえる部分を跨いで下方に突出する高温ガス遮断部26が設けられているので、インナーリード押さえ23が動作した時点で、高温ガス遮断部26も全て下方の位置に自動的に移動して、すべてのプラグ5は同時に高温ガスから遮断される準備が整うことになる。
【0032】
尚、インナーリード押さえ23は前述したように板ばね102を介して支持されており、また、プラグ押さえ27はバネ性を有する弾性材料で加工されている。これにより、どのプラグ5のインナーリード3aも、そしてプラグ5自体も安定して押さえることが可能になる。このように、インナーリード押さえ23とプラグ押さえ27が動作することにより、インナーリード3aと圧電振動片2のマウント部2aは位置決めされ、かつ当接されることで密着状態になる。
【0033】
次に、このようにインナーリード押さえ23とプラグ押さえ27により位置決めされた後、この状態を保ったまま、マウントプレート8と、インナーリード押さえ23を保持したインナーリード押さえ昇降装置100と、プラグ押さえ27が、共に水平に移動する。この水平移動は、マウントプレート送り機構によって一定速度で行われる。水平移動の途中で、マウントプレート8は高温ガス噴射用のガス噴出ノズル25の下を通過する。マウントプレート8上に整列・配置された所定数のインナーリード3aと圧電振動片2のマウント部2aは、ガス噴出ノズル25から噴出されたガスにより、マウントプレート8の端に配置されたインナーリード3aとマウント部2aの組から、順次加熱される。マウントプレート8の反対の端までガス噴出ノズル25の下を通過した時点で、加熱が終了となる。このようにして、1枚のマウントプレート8上のインナーリード3aと、圧電振動片2のマウント部2aとの全ての組の接合が行われることになる。
【0034】
加熱が終了した時点でマウントプレート8の水平移動は停止し、インナーリード押さえ23とプラグ押さえ27は上昇動作を行い、押さえ力が解除され、マウントプレート8とは分離される。そして、インナーリード押さえ23とプラグ押さえ27とマウントプレート送り機構は、元の位置に復帰して、ワーク供給ステーションから続いて送られて来る次のマウントプレート8に対応する。
【0035】
尚、ここで、加熱時のマウントプレート8の送り速度はおよそ9mm/秒〜6mm/秒程度である。この条件は、プラグ5のリード3のメッキ材料とインナーリード3aの熱容量、熱風の流量等を考慮して調整する。例えば、リード3のメッキが鉛の含有量が約90%程度(重量比)のSnPbメッキ(耐熱半田メッキ)や、Cuの含有率の高いSnCuメッキ等である場合は、固相線温度が高く溶融しにくいので、送り速度をやや低速に調整し、高温ガスの単位面積当りの照射時間を長くする。換言すれば、高温ガスの単位時間当りの照射面積を狭くする。
【0036】
また、マウントプレート8の送りは、間欠移動よりも一定速度で滑らかに移動させることが望ましい。これは、加熱溶融したメッキが、室温まで下がり切らない状態で停止・起動を繰り返すと、インナーリード3aと圧電振動片2のマウントパッド2a間で位置ずれが発生する懸念があるからである。前述のように4mmピッチでプラグが22個整列している場合は、21回の停止・起動が必要となる。しかも、1ピッチ4mm移動する毎に停止する必要があり、頻繁に繰り返される停止・起動による振動の他、機構への負荷も大きく、実用的な方法ではないからである。
【0037】
そしてまた、ガス噴出ノズル25から噴射させるガスは、マウント装置が稼動中は、1枚のマウントプレート8上での接合が終了しても噴射を止めることなく出し続け、ガス流量とガス温度を定常状態に保っている。ガス流量は、通常数リットル毎分に設定され、マスフローコントローラーにより精密かつ再現性良く制御されている。また加熱用ヒータは、精密な温度制御を実施している。
【0038】
加熱ステーション内で、インナーリード押さえ23とプラグ押さえ27が上昇し、押さえ力が解除されて分離されたマウントプレート8は、続いて、取出しステーションに送られる。取出しステーションでは、圧電振動片2を接合したプラグ5は、図示しないハンドリングロボット等でノッチプレート22から取出され、例えば次工程の整列用のプレートに並べられる。一方、ワークが取出されたマウントプレート8は、回収用のベルトラインに移され、最初のワーク供給用ステーションに自動的に戻される。ここでも、プラグ5の取出しは、一括して取出すことが可能なように、キャリアプレートに保持させておくと良い。このようにして一連のマウント工程が繰り返し実施される。
【0039】
以下に、図6〜図11を参照して、本実施形態に係る圧電振動子のマウント装置について詳細に説明する。これらの図においては、1組のプラグ5と圧電振動片2に絞って図示している。図6は、マウント装置の要部の外観を示す部分斜視図である。図7、図8は、マウント装置の要部を説明するための図であり、図7は、横方向から見た部分断面図、図8は図7の切断線A−Aにおける部分断面図である。図9は、インナーリード押さえ23の正面図であり、図10は、インナーリード押さえ23の要部を拡大して示す正面図であり、図11は、図10の切断線B−Bにおける断面図である。
【0040】
図6〜図8に示すように、本実施形態では、ベース9上に、振動片支持体ベース10が配置される。振動片支持体ベース10のインナーリード3a近傍は、インナーリード3aに加えられた熱を放熱させないようにパイレクスガラスで構成されている。さらに振動片支持体ベース10の上に、金属製の平板状の振動片支持体11を備えており、圧電振動片2を載置状態で支持する。1つの振動片支持体ベース10及び振動片支持体11には、例えば、22個の圧電振動片をその幅方向に所定の間隔で整列支持できるようになっている。
【0041】
圧電振動片2の寸法諸元は、幅が約0.5mm〜0.6mm、全長が約2.0mm〜3.5mm、厚みは、約50μm〜150μmである。圧電振動片2の重量は1mg以下であるため、振動や風などで簡単に動いてしまう。圧電振動片2がこのように、小型・軽量であるため、振動片支持体11は、金属薄板をエッチング処理等で精密に外形加工して、振動片支持体11の圧電振動片2を囲む輪郭と圧電振動片2の隙間を適切な値に設定して、圧電振動片2を確実に保持する必要がある。
【0042】
この振動片支持体ベース10及び振動片支持体11に隣接して、ノッチプレート22が設けられている。ノッチプレート22には、振動片支持体11に隣接する側の上面にノッチ形成部22aが形成されている。ノッチ形成部22aには、U字溝状に形成された22個のノッチ部21が、振動片支持体11に配置された圧電振動片2用の配列ピッチと同間隔で設けられている。
【0043】
ノッチ部21は、プラグ5の外周面5aとの間に隙間が形成されないよう、その内周面21aの形状がプラグ5の外周面5aの形状に合致するよう、断面半円状に形成されている。すなわち、これにより、プラグ5からノッチ部21へ熱を積極的に放散する放熱手段が構成される。この場合、プラグ5の外周面5aの形状が円形であるため、ノッチ部21の内周面21aの形状がU字状の断面半円形状に設定されているが、プラグ5の外周面5aの形状が他の形状、例えば、楕円形状あるいは、長方形状であれば、それに対応させて、ノッチ部21の内周面21aの形状も半楕円形状あるいは長方形状に設定される。
【0044】
なお、この実施形態では、ノッチプレート22のノッチ部21にプラグ5を嵌入させた際に、ノッチ部21の内周面21aとプラグ5の外周面5aと間に隙間が形成されず、両者が面接触するように、ノッチ部21の内周面21aの形状がプラグ5の外周面5aの形状に正確に合致するよう設定されているが、必ずしもその必要はない。その場合、両者の間に形成される隙間ができるだけ小さくなるように、ノッチ部21の内周面21aの形状をプラグ5の外周面5aの形状にほぼ合致するよう設定するのが好ましい。
【0045】
加熱ステーションには、プラグ5のステム4を押さえることでノッチプレートの内周面21と密着させてプラグ5の外周面5aの放熱を促すプラグ押さえ27が備えられている。プラグ押さえ27は、図示しない上下移動機構に取り付けられており、下方に移動する場合に、適度な荷重を加えることで押さえる動作を行い、上方に戻したときに、荷重による押さえを解除するようになっている。
【0046】
インナーリード押さえ23インナーリード押さえ23 加熱ステーションには、22個のインナーリード押さえ23を同時に昇降させるインナーリード押さえ昇降装置100が備えられている。前述したように、各インナーリード押さえ23は鉛直姿勢に配置され、それぞれに専用の板ばね102によって支持されている。
インナーリード押さえ23は、インナーリード3aの半田が付着せず、かつ耐食性と耐熱性に優れたステンレス製の板状体により形成されている。
図9に示すように、インナーリード押さえ23は、上下方向に細長く、略上半分は略下半分よりも左右方向の幅が狭くなっている。インナーリード押さえ23の上端近傍には左右両側からスリット24が形成されており、このスリット24に板ばね102の先端部が嵌合することでインナーリード押さえ23は、板ばね102の先端に吊り下げ支持されている。
【0047】
図10に示すように、インナーリード押さえ23の下部中央には、左右対称形をなす台形状の切り欠き部28が形成されている。切り欠き部28の上辺28aは水平に直線状に形成され、左右の斜辺28b,28cは下方に進むにしたがって外側に傾斜する直線状に形成されている。このインナーリード押さえ23が下降してきたときに、一対のインナーリード3aが切り欠き部28内に収まり、一方のインナーリード3aは切り欠き部28の上辺28aと一方の斜辺28bに接触し、他方のインナーリード3aが切り欠き部28の上辺28aと他方の斜辺28cに接触する。そして、切り欠き部28の上辺28aが2本のインナーリード3aを押さえることで、2本のインナーリード3aの先端を圧電振動片2のマウント部2aに当接させて、各インナーリード3aとマウント部2aを密着させるように構成されている。
【0048】
インナーリード押さえ23において切り欠き部28の左右両側は高温ガス遮断部26とされており、これら高温ガス遮断部26よって、インナーリード3aよりも外側部分では、インナーリード押さえ23と振動片支持体11との間は隙間が生じないように塞がれており、ガス噴出ノズル25から噴射される高温ガスが、ノッチプレート22側へ回り込むのを防止する。
【0049】
さらに、インナーリード押さえ23の下部には、インナーリード押さえ23の表裏の面のうちガス噴出ノズル25に近い側の面に、切り欠き部28を包囲するように正面視略半円形状の凹部29が形成されている。凹部29は、インナーリード押さえ23においてガス噴出ノズル25に近い側の前記面を部分的にエッジングすることによって形成されたものである。図11に示すように、この凹部29が形成されている領域における肉厚t2は、インナーリード押さえ23において凹部29以外の領域における肉厚t1よりも薄く(t2<t1)、凹部29が形成されている領域は薄肉部30とされている。凹部29(換言すると薄肉部30)は、2本のインナーリード3aが前述のように切り欠き部28の上辺28a、斜辺28b,28cに接触したときの2本のインナーリード3aの両軸心間の中央を中心とした所定半径の円弧内の内側領域に亘って形成されている。
【0050】
凹部29には、切り欠き部28の幅方向における中央の上方に対応する位置に、縦長の楕円状をなす位置決め用の凸部31が設けられている。即ち、凸部31は、凹部29の左右対称となる中心線上に配置されている。凸部31は、エッジングにより凹部29を形成する際に非エッジング部分として残すことにより形成されたものである。凸部31は、インナーリード押さえ23を下降させたときに2本のインナーリード3aを正しい位置にセットするのを容易にするための位置決め用のマークであり、切り欠き部28内に2本のインナーリード3aを収容したときに、2本のインナーリード3aの間に凸部31が位置することで、2本のインナーリード3aを正しい位置にセットすることができる。
【0051】
インナーリード押さえ23を下降させたときに2本のインナーリード3aが正しく位置決めされていないと、2本のインナーリード3aを均一に押さえることができず、圧電振動子のマウント部2aとインナーリード3aとを半田接合したときに、接合強度が低下する等の不具合が生じる虞があるが、本実施形態では凸部31を位置決め用の目印として利用することで、前述したようにインナーリード3aを正しく位置決めすることができるので、このような不具合が生じるのを防止することができる。
【0052】
インナーリード押さえ23は、前述したように板ばね102を介して支持されており、下方に移動したときに板ばね102を介して適度な荷重を加えることでインナーリード3aを押さえる動作を行い、上方に戻したときに、荷重による押さえを解除するようになっている。
【0053】
加熱ステーションには、高温ガスを噴射するガス噴出ノズル25が備えられている。図6及び図7に示すように、ガス噴出ノズル25は、振動片支持体11の所定箇所に位置決めされた圧電振動片2のマウント部2aと、ノッチプレート22上のインナーリード3aとの接合部分16に、指向するように配置されている。より具体的には、振動片支持体11の上方、詳しくは、振動片支持体11によって支持される圧電振動片2の上方に配置されている。ガス噴出ノズル25は、内部にヒータ25aが組み込まれている。
【0054】
ガス噴出ノズル25から吹き出される高温ガス(例えば窒素ガス)は、インナーリード押さえ23に沿って下降し、インナーリード3aの先端部、および、圧電振動片2とインナーリード3aとの接合部分16にあたってインナーリード3aの先端部表面に付着している半田を溶融させ、この溶融させた半田を圧電振動片2のマウント部2aまで流すことによって、インナーリード3aと圧電振動片2とを電気的に接続させる。
【0055】
次に加熱ステーションにおける接合時の状況をより詳細に述べる。
ガス噴出ノズル25の先端から、ヒータ25aにより加熱された窒素ガスは、一定速度で通過する圧電振動片2側からプラグ5側に向けて噴出される。ガス噴出ノズル25から噴出された窒素ガスは、インナーリード3aの先端部、および、圧電振動片2のマウント部2aとインナーリード3aとの接合部分16に当たる。このように加熱された窒素ガスが当たることによって、インナーリード3aの先端部表面の予めメッキしておいた半田が溶融し、この溶融した半田が圧電振動片2のマウント部2aまで流れる。これによって、インナーリード3aと圧電振動片2とが電気的に接続される。
【0056】
このように、ガス噴出ノズル25から噴出された窒素ガスは接合部分16等に当たり、その後、プラグ5の下面側に回り込もうとするが、インナーリード押さえ23の下部であって、インナーリード3aから左右外側方へそれぞれ張り出すように設けられた高温ガス遮断部26が、振動片支持体11との間に隙間が生じないよう、両部材23,11間を塞いでいる。このため、接合部分16に当たった後の窒素ガスのプラグ5方向への流れが遮断され、プラグ5の下面側へ回りこむことはない。
【0057】
また、前述したように、加熱ステーションでまずインナーリード押さえ23とプラグ押さえ27が動作する。このとき同時に、高温ガス遮断部26も自動的に所定の位置に配置される。即ち、マウントプレート8上のどの位置のプラグも、高温ガスから遮断される。従って、この状態でガス噴出ノズル25の下を通過する場合は、任意のプラグ5が、ガス噴出ノズル25のガスで加熱される前でも、ガス噴出ノズル25のガスで加熱中でも、そしてまた、加熱後にガス噴出ノズル25から遠ざかる場合でも、高温ガスから遮断されている。
【0058】
また、仮に、インナーリード3a周りの隙間を介して、あるいは、高温ガス遮断部26と振動片支持体11との間のわずかの隙間を介して、前記窒素ガスがプラグ5の下面側に回り込もうとする場合であっても、ノッチ部21の内周面21aの形状をプラグ5の外周面5aの形状に合致させることで、予め、ノッチ部21の内周面21aとプラグ5の外周面5aとの間に隙間が形成されないようにしているので、前記窒素ガスが、プラグ5の下面側へ回り込むのを極力防止することができる。
【0059】
また、プラグ5の周辺にガス噴出ノズル25から吹き出された高温ガスが当たることで、プラグ5自体の温度が上がることが懸念されるが、この実施形態では、ノッチ部21の内周面21aをプラグ5の外周面5aに面接触させているので、プラグ5(具体的にはステム4)の熱を、熱伝導性に優れた金属製のノッチプレート22によって積極的に放散することができる。このため、プラグ5の温度が上昇するのを抑えることができる。
【0060】
また、インナーリード押さえ23はインナーリード3aと強く接触して一定荷重でインナーリードを押しつけているため、高温ガスからインナーリード3aに供給された熱は、接触部を介してインナーリード押さえ23側にも熱流速として熱伝導する。このインナーリード押さえ23に吸収される熱量が多いと、インナーリード3aの温度上昇が阻害されてしまう。また、ガス噴出ノズル25から噴射する高温ガスの温度は、インナーリード押さえ23に吸収される熱量を見込んで設定するため、インナーリード押さえ23に吸収される熱量が多い場合には、高温ガスの設定温度が高くなってしまう。
【0061】
しかしながら、この実施形態におけるインナーリード押さえ23では、インナーリード3aとの接触部となっている切り欠き部28の周囲に薄肉部30が形成されているので、インナーリード3aからインナーリード押さえ23への熱伝導を抑制することができる。したがって、インナーリード押さえ23に吸収される熱量を低減することができるので、ガス噴出ノズル25から噴射する高温ガスの温度を従来よりも低く設定することができ、インナーリード3aの表面に付着している半田の融点に近い温度に設定することができる。
【0062】
そして、ガス噴出ノズル25から噴射する高温ガスの温度を低く設定することができると、圧電振動片2に伝わる熱量も少なくすることができ、圧電振動片2を、これを構成している水晶振動片の相転移温度に近付かないようにすることができる。
また、ガス噴出ノズル25から噴射する高温ガスの温度を低く設定することができると、圧電振動子のマウント部2aの表面に積層されている下地金属層のクロムが、仕上金属層を構成する金の表面に析出することがないので、インナーリード3aの表面に付着している半田の濡れ性に悪影響を与えることがなく、マウント部2aとインナーリード3aとの接合強度が高くなる。
【0063】
尚、インナーリード押さえ23は、加熱ステーションに設置されて、持続して流動してくるマウントプレート8ごとに加熱される。マウントプレート8の流動のタクトタイムは約10秒〜15秒程度であるので、インナーリード押さえ23の部分の温度が大幅に低下することがなく、所定の温度範囲の中に維持させることができる。
【0064】
以上の方法で、インナーリード3aと圧電振動片2とをマウントできる。その後、不要なひずみを除去するベーキング工程、および圧電振動片2に対する周波数調整工程を経た後、金属製ケース6にプラグ5を圧入することで、図1に示すような圧電振動子1を得ることができる。
【0065】
以上のように、この圧電振動子のマウント装置では、インナーリード押さえ23に高温ガス遮断部26を形成したので、ガス噴出ノズル25から吹き出された高温ガスが、インナーリード3aの表面に付着している半田を溶融させた後、プラグ5の下面側に回り込もうとするのを極力防止することができる。
その結果、プラグ5のステム4におけるメッキ層4aの半田メッキ層の一部が、高温ガスの熱によって溶融し、高温ガスの流れに沿ってステム4の底部側に移動してしまうといった現象は生じない。また、ステム4の半田メッキ層の溶融に起因して、ケース6をプラグ5に圧入する際に問題が生じることもない。
【0066】
また、インナーリード押さえ23に切り欠き部28を包囲するように薄肉部30を形成したので、インナーリード押さえ23に吸収される熱量を抑制することができ、ガス噴出ノズル25から噴射する高温ガスの温度を従来よりも低く設定することができる。
その結果、圧電振動片2を、これを構成している水晶振動片の相転移温度に近付かないようにすることができる。また、インナーリード3aの表面に付着している半田の濡れ性を良好に保つことができ、マウント部2aとインナーリード3aとの接合強度を高くすることができる。
また、インナーリード押さえ23に位置決め用の凸部31を形成したので、マウント時にインナーリード3aを正しく位置決めすることができる。その結果、2本のインナーリード3aを均一に押さえることができ、マウント部2aとインナーリード3aとの接合強度を高くすることができる。
したがって、高品質で、信頼性の高い圧電振動子1を提供することができる。
【0067】
なお、前述した実施形態では、ガス噴出ノズル25から吹き出された高温ガスが、プラグ5の下面側に回り込もうとするのを防止するため、インナーリード押さえ23の下部に高温ガス遮断部26を設ける構成要素と、ノッチ部21の内周面21aの形状をプラグ5の外面形状に合致させる構成要素の双方を採用していているが、後者の構成要素を用いなくてもよい。
【0068】
また、前述した実施形態では、ノッチ部21の内周面21aをプラグ5の下面に接触させることで、プラグ5の熱をノッチプレート22によって積極的に放散しているが、さらに、図7及び図8において破線で示すように、ノッチプレート22のノッチ部21の底部に、冷却手段を構成するジャケット部22bを設け、このジャケット部22bに冷却用の媒体を供給することで、プラグ5の熱を、より一層、積極的に放散するようにしてもよい。
【0069】
<発振器>
次に、本発明の圧電振動子を備えた発振器の一例について、図12を参照して説明する。
この発振器38は、図12に示すように、前述した圧電振動子1を、集積回路43に電気的に接続された発振子として構成したものである。発振器38は、コンデンサなどの電子部品39が実装された基板40を備えている。基板40には、発振器用の集積回路43が実装されており、この集積回路43の近傍に、圧電振動子1が実装されている。そして、これら電子部品39、集積回路43及び圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0070】
このように構成された発振器38において、圧電振動子1に電圧を印加すると、圧電振動子1内の圧電振動片2が振動し、その振動が、圧電振動片2が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路43に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路43によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路43の構成を、例えばRTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することにより、時計用単機能発振器などの他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダーなどを提供したりする機能を付加することができる。
【0071】
上述したように、この発振器38によれば、高品質で、信頼性の高い圧電振動子1を備えているので、発振器38自体も同様に高品質化を図ることができる。さらにこれに加えて、長期にわたって安定した高精度な周波数信号を得ることができる。
【0072】
<電子機器>
次に、本発明の圧電振動子を備えた電子機器の一例について、図13を参照して説明する。なお電子機器として、前述した圧電振動子1を有する携帯情報機器46を例にして説明する。携帯情報機器46は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
この携帯情報機器46は、電力を供給するための電源部47を備えている。電源部47は、例えばリチウム二次電池からなっている。電源部47には、各種制御を行う制御部48と、時刻等のカウントを行う計時部51と、外部との通信を行う通信部52と、各種情報を表示する表示部56と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部53とが並列に接続されている。そして、電源部47によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0073】
制御部48は、各機能部を制御して、音声データの送信及び受信、現在時刻の計測や表示など、システム全体の動作制御を行う。また、制御部48は、あらかじめプログラムが書き込まれたROMと、このROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、このCPUのワークエリアとして使用されるRAMなどを備えている。
【0074】
計時部51は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路及びインターフェイス回路などを内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると、圧電振動片2が振動し、その振動が、水晶が有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェイス回路を介して、制御部48と信号の送受信が行われ、表示部56に、現在時刻や現在日付あるいはカレンダー情報などが表示される。
【0075】
通信部52は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部57、音声処理部58、切替部61、増幅部62、音声入出力部63、電話番号入力部66、着信音発生部67及び呼制御メモリ部68を備えている。
無線部57は、音声データ等の各種データを、アンテナを介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部58は、無線部57または増幅部62から入力された音声信号を符号化及び複合化する。増幅部62は、音声処理部58または音声入出力部63から入力された信号を所定のレベルまで増幅する。音声入出力部63は、スピーカやマイクロフォンなどからなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0076】
また、着信音発生部67は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部61は、着信時に限って、音声処理部58に接続されている増幅部62を着信音発生部67に切り替えることによって、着信音発生部67において生成された着信音が、増幅部62を介して音声入出力部63に出力される。
なお、呼制御メモリ部68は、通信の発着呼制御に係るブログラムを格納する。また、電話番号入力部66は、例えば0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キーなどを押下することにより、通話先の電話番号などが入力される。
【0077】
電圧検出部53は、電源部47によって制御部48などの各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部48に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部52を安定して動作させるために必要な最低限の電圧としてあらかじめ設定されている値であり、例えば3V程度となる。電圧検出部53から電圧降下の通知を受けた制御部48は、無線部57、音声処理部58、切替部61及び着信音発生部67の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部57の動作停止は必須となる。さらに、表示部56に、通信部52が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0078】
すなわち、電圧検出部53と制御部48とによって、通信部52の動作を禁止し、その旨を表示部56に表示することができる。この表示は、文字メッセージであってもよいが、より直感的な表示として、表示部56の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしてもよい。
なお、携帯情報機器46は、通信部52の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部69を備えており、この電源遮断部69によって、通信部52の機能が確実に停止される。
【0079】
上述したように、この携帯情報機器46によれば、高品質で、信頼性の高い圧電振動子1を備えているので、携帯情報機器46自体も同様に高品質化を図ることができる。さらにこれに加えて、長期にわたって安定した高精度な計時情報を表示することができる。
【0080】
<電波時計>
次に、本発明の圧電振動子を備えた電波時計の一例について、図14を参照して説明する。
この電波時計は、図14に示すように、フィルタ部80に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
【0081】
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)に標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHzもしくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表を反射しながら伝播する性質を併せ持つため、伝播範囲が広く、上記の2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0082】
以下、電波時計71の機能的構成について説明する。
アンテナ74は、前記40kHzもしくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、前記40kHzもしくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ75によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部80によって濾波、同調される。この圧電振動子1は、上記搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部76,79をそれぞれ備えている。
さらに、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路81により検波復調される。続いて、波形成形回路84を介してタイムコードが取り出され、CPU85でカウントされる。CPU85では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC86に反映され、正確な時刻情報が表示される。
【0083】
搬送波は、40kHzもしくは60kHzであるから、水晶振動子部76,79は、前述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
なお、上述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計71を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0084】
上述したように、この電波時計71によれば、高品質で、信頼性の高い圧電振動子1を備えているので、電波時計71自体も同様に高品質化を図ることができる。さらにこれに加えて、長期にわたって安定して高精度に時刻をカウントすることができる。
【0085】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこれら実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0086】
1 圧電振動子
2 圧電振動片
2a マウント部
3a インナーリード
5 プラグ
11 振動片支持体
22 ノッチプレート(プラグ支持体)
23 インナーリード押さえ
25 ガス噴出ノズル(ガス噴射手段)
26 高温ガス遮断部
28 切り欠き部
29 凹部
30 薄肉部
31 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラグのインナーリードに、圧電材料からなる圧電振動片のマウント部を接合する圧電振動子のマウント装置であって、
前記プラグを支持するプラグ支持体と、
前記プラグ支持体に隣接して配置され、前記圧電振動片を支持する振動片支持体と、
前記振動片支持体の上方に配置され、前記インナーリードと前記マウント部に高温ガスを噴射するガス噴射手段と、
前記ガス噴射手段と前記プラグ支持体との間にて昇降可能に配置され、前記インナーリードを跨いで該インナーリードを上から押さえる切り欠き部を有し、前記切り欠き部の両側に、前記ガス噴射手段から噴射される高温ガスが前記プラグ支持体側へ回り込むのを防止する高温ガス遮断部が形成され、前記切り欠き部を包囲する領域が他の領域よりも肉厚の薄い薄肉部とされている板状のインナーリード押さえと、
を備えることを特徴とする圧電振動子のマウント装置。
【請求項2】
前記インナーリード押さえの表裏いずれか一方の面をエッジングして形成された凹部によって前記薄肉部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動子のマウント装置。
【請求項3】
前記凹部は、前記インナーリード押さえの表裏いずれか一方の面であって前記ガス噴射手段に近い方の面に形成されており、該凹部には前記切り欠き部の幅方向中央の上方に、位置決め用の凸部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の圧電振動子のマウント装置。
【請求項4】
プラグのインナーリードに、圧電材料からなる圧電振動片のマウント部を接合する圧電振動子のマウント方法であって、
前記プラグをプラグ支持体に載せ、
前記圧電振動片を振動片支持体に載せ、
前記インナーリードと前記マウント部とを接触させて固定し、
前記プラグと前記圧電振動片との間に、下部に切り欠き部と高温ガス遮断部と前記切り欠き部を包囲する薄肉部とを有するインナーリード押さえを配置し、
前記切り欠き部を前記インナーリードの上に接触させて該インナーリードを押さえるとともに、前記プラグと前記圧電振動片との間を遮蔽しながら、前記インナーリードと前記マウント部に高温ガスを噴射することを特徴とする圧電振動子のマウント方法。
【請求項5】
請求項4に記載の圧電振動子のマウント方法を用いて製造されたことを特徴とする圧電振動子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2013−78062(P2013−78062A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217965(P2011−217965)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】