説明

圧電振動子の製造方法、圧電振動子、発振器、電子機器および電波時計

【課題】クリーニング工程後の実装工程で、圧電振動片の実装強度を確保できる圧電振動子の製造方法、圧電振動子、発振器、電子機器および電波時計を提供する。
【解決手段】実装工程S50の前に、接合ヘッド70の汚れを落とすクリーニング工程S40と、クリーニング工程S40の後に、擬似バンプB2が形成された擬似基板74に接合ヘッド70を用いて擬似圧電振動片76を実装する擬似実装工程S45と、を有しており、擬似実装工程S45は、擬似圧電振動片76の擬似バンプB2に対する潜り込み量Y3が所定値以上になるまで繰り返し行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圧電振動子の製造方法、圧電振動子、発振器、電子機器および電波時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号のタイミング源、リファレンス信号源等として水晶等を利用した圧電振動子が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが知られているが、その一つとして、2層構造タイプの表面実装型の圧電振動子が知られている。このタイプの圧電振動子は、ベース基板とリッド基板とが直接接合されることでパッケージ化された2層構造になっており、両基板の間に形成されたキャビティ内の内部電極に圧電振動片が実装されている。
【0003】
圧電振動片を内部電極に実装する方法として、エポキシ系樹脂等からなる溶剤に銀等の粒子を混合した導電性接着剤を用いて、圧電振動片を内部電極に直接接合するダイボンディングが知られている。具体的には、内部電極に導電性接着剤を塗布した後、圧電振動片を導電性接着剤に重ねて導電性接着剤を加熱することによって接続している。
【0004】
ここで、一般に、圧電振動片の周波数特性やインピーダンス特性等の電気的特性は、圧電振動片を封入しているキャビティ内が真空状態のほうが良い。しかし、エポキシ系樹脂等からなる溶剤は、高温になると蒸発してガスを発生する。このガスがキャビティ内に滞留することで、圧電振動片の発振周波数特性やインピーダンス特性等の電気的特性が悪化し、結果として圧電振動子の性能が悪化する虞がある。
【0005】
このような問題を解決するために、特許文献1には、導電性接着剤に代えて金属バンプを形成し、フリップチップボンディングにより圧電振動片を実装する方法が記載されている。具体的なフリップチップボンディングの方法としては、フリップチップボンダの接合ヘッドで水晶振動子板(本発明の圧電振動片に相当)をピックし、端子電極(本発明の引き回し電極に相当)上に形成された金等の金属からなるバンプに押付け、水晶振動子板に超音波を与えて振動させることにより、水晶振動子板をバンプに接合する。実装工程で圧電振動片をバンプに接合すると、圧電振動片の電極とバンプとの接合界面における金属拡散によって両者が互いに溶融しあい、圧電振動片がバンプに潜り込む。これにより、圧電振動片の実装強度を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−368564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、圧電振動片をピックしているフリップチップボンダの接合ヘッドが超音波振動しているとき、圧電振動片の上面に露出している電極と接合ヘッドとが接触するので、電極表面の金等の電極材料が接合ヘッドに付着する。これにより、接合ヘッドの表面が汚れることになる。
【0008】
接合ヘッドが汚れた状態で実装工程を継続すると、圧電振動片をピックしたときに圧電振動片と接合ヘッドとの間に電極材料が入り込む。この状態で圧電振動片をバンプに接合すると、圧電振動片のパッケージに対する実装高さが低くなったり、圧電振動片が傾いて接合されたりする等の実装時の不具合が発生する。これにより、圧電振動片とパッケージとのクリアランスが不足してしまい、接合された圧電振動片が振動した際に、圧電振動片がパッケージと干渉し、圧電振動片を所定の周波数で振動させることができない等の製造不良が発生する虞がある。
【0009】
そこで、接合ヘッドが汚れた場合には、圧電振動片の実装工程を一時中断して接合ヘッドの汚れを除去するクリーニング工程を設けることが提案されている。クリーニング工程は、アルミナ粒子を固着したクリーニングパッドに、接合ヘッドの表面を擦り付けることによって行う。
【0010】
ところが、クリーニング工程を実施すると、接合ヘッドの表面に、クリーニングパッドから剥離したアルミナ粒子が付着するなどして、接合ヘッドの表面が一時的に不安定な状態になる。そのため、接合ヘッドのクリーニング工程後に実装工程を再開すると、接合ヘッドから圧電振動片に超音波が伝達されにくくなる。これにより、圧電振動片の電極とバンプとの金属拡散が不十分となって、圧電振動片の実装強度を確保することが困難になるという問題がある。
【0011】
そこで本発明は、クリーニング工程後の実装工程で圧電振動片の実装強度を確保できる圧電振動子の製造方法、圧電振動子、発振器、電子機器および電波時計の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明の圧電振動子の製造方法は、振動部と、前記振動部に隣接する基部と、を有する圧電振動片と、前記圧電振動片を収容するキャビティを備えたパッケージと、前記キャビティの内部において前記パッケージに固着されたバンプと、を備え、前記圧電振動片の前記基部が前記バンプに接合されてなる圧電振動子の製造方法であって、前記基部の一方面側を接合ヘッドで吸着しつつ、前記基部の他方面側をフリップチップボンディングにより前記バンプに接合して、前記パッケージに前記圧電振動片を実装する実装工程を有し、前記実装工程の前に、前記接合ヘッドの汚れを落とすクリーニング工程と、前記クリーニング工程の後に、擬似バンプが形成された擬似基板に前記接合ヘッドを用いて擬似圧電振動片を実装する擬似実装工程と、を有しており、前記擬似実装工程は、前記擬似圧電振動片の前記擬似バンプに対する潜り込み量が所定値以上になるまで繰り返し行うことを特徴とする。
本発明によれば、クリーニング工程の実施により一時的に不安定となっていた接合ヘッドの表面状態が、擬似実装工程を繰り返し行うことで安定化する。さらに本発明では、擬似圧電振動片の擬似バンプに対する潜り込み量が所定値以上になるまで擬似実装工程を繰り返し行う。これにより、擬似圧電振動片の電極と擬似バンプとの金属拡散が十分になされるまで、接合ヘッドの表面状態が安定化したことを確認できる。そして、その後の実装工程でも、擬似実装工程と同様に圧電振動片のバンプに対する潜り込み量が所定値以上となるので、圧電振動片の電極とバンプとの金属拡散を十分に実現することができる。したがって、クリーニング工程後に圧電振動片の実装強度を確保することができる。
【0013】
また、前記実装工程では、複数の前記接合ヘッドを交代で用いて行い、一の前記接合ヘッドを用いて前記実装工程を行っている間に、他の前記接合ヘッドについて前記クリーニング工程および前記擬似実装工程を行うことが望ましい。
本発明によれば、クリーニング工程および擬似実装工程を行っても実装工程が停止することがないので、効率よく圧電振動子を製造することができる。
【0014】
また、本発明の圧電振動子は、上述した圧電振動子の製造方法により製造されたことを特徴とする。
本発明によれば、圧電振動片の実装強度を確保できるので、信頼性に優れた圧電振動子を提供することができる。
【0015】
本発明の発振器は、上述した圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする。
本発明の電子機器は、上述した圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする。
本発明の電波時計は、上述した圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする。
【0016】
本発明にかかる発振器、電子機器および電波時計によれば、圧電振動片の実装強度を確保でき、信頼性に優れた圧電振動子を備えているので、信頼性の高い発振器、電子機器および電波時計を製造することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、クリーニング工程の実施により一時的に不安定となっていた接合ヘッドの表面状態が、擬似実装工程を繰り返し行うことで安定化する。さらに本発明では、擬似圧電振動片の擬似バンプに対する潜り込み量が所定値以上になるまで擬似実装工程を繰り返し行う。これにより、擬似圧電振動片の電極と擬似バンプとの金属拡散が十分になされるまで、接合ヘッドの表面状態が安定化したことを確認できる。そして、その後の実装工程でも、擬似実装工程と同様に圧電振動片のバンプに対する潜り込み量が所定値以上となるので、圧電振動片の電極とバンプとの金属拡散を十分に実現することができる。したがって、クリーニング工程後に圧電振動片の実装強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】圧電振動子を示す外観斜視図である。
【図2】図1に示す圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態の平面図である。
【図3】図2のA−A線における断面図である。
【図4】図1に示す圧電振動子の分解斜視図である。
【図5】圧電振動片の平面図である。
【図6】圧電振動片の底面図である。
【図7】図5のB−B線における断面図である。
【図8】圧電振動子の製造方法のフローチャートである。
【図9】ウエハ体の分解斜視図である。
【図10】実装装置の構成図である。
【図11】フリップチップボンディングの説明図であり、図11(a)は実装工程の説明図であり、図11(b)は擬似実装工程の説明図である。
【図12】クリーニング工程の説明図である。
【図13】バンプに対する圧電振動片の潜り込み量の説明図であり、図13(a)は潜り込み前の説明図であり、図13(b)は潜り込み後の説明図である。
【図14】発振器の一実施形態を示す構成図である。
【図15】電子機器の一実施形態を示す構成図である。
【図16】電波時計の一実施形態を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(圧電振動子)
以下、本発明の実施形態に係る圧電振動子を、図面を参照して説明する。
なお、圧電振動子におけるベース基板のリッド基板との接合面を第1面Uとし、ベース基板の外側の面を第2面Lとして説明する。
図1は本実施形態における圧電振動子の外観斜視図である。
図2は圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態の平面図である。
図3は図2のA−A線における断面図である。
図4は図1に示す圧電振動子の分解斜視図である。
なお、図4においては、図面を見易くするために後述する励振電極15、引き出し電極19,20、マウント電極16,17および重り金属膜21の図示を省略している。
図1から図4に示すように、本実施形態の圧電振動子1は、ベース基板2およびリッド基板3が接合膜35を介して陽極接合されたパッケージ9と、パッケージ9のキャビティCに収納された圧電振動片4と、を備えた表面実装型の圧電振動子1である。
【0020】
(圧電振動片)
図5は圧電振動片の平面図である。
図6は圧電振動片の底面図である。
図7は図5のB−B線における断面図である。
図5から図7に示すように、圧電振動片4は、水晶やタンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。この圧電振動片4は、平行に配置された一対の振動腕部10,11と、前記一対の振動腕部10,11の基端側を一体的に固定する基部12と、一対の振動腕部10,11の両主面上に形成された溝部18とを備えている。この溝部18は、該振動腕部10,11の長手方向に沿って振動腕部10,11の基端側から略中間付近まで形成されている。
【0021】
本実施形態の圧電振動片4は、一対の振動腕部10,11の外表面上に形成されて一対の振動腕部10,11を振動させる第1の励振電極13および第2の励振電極14からなる励振電極15と、圧電振動片4をパッケージに実装するために基部12に形成されたマウント電極16,17と、第1の励振電極13および第2の励振電極14とマウント電極16,17とを電気的接続する引き出し電極19,20と、を有している。
【0022】
本実施形態において、励振電極15および引き出し電極19,20は、マウント電極16,17の下地層と同じ材料のクロムにより単層膜が形成されている。これにより、マウント電極16,17の下地層を成膜するのと同時に、励振電極15および引き出し電極19,20を成膜することができる。ただし、この場合に限られず、例えば、ニッケルやアルミニウム、チタン等により励振電極15および引き出し電極19,20を成膜しても構わない。
【0023】
励振電極15は、一対の振動腕部10,11を互いに接近又は離間する方向に所定の共振周波数で振動させる電極である。励振電極15を構成する第1の励振電極13および第2の励振電極14は、一対の振動腕部10,11の外表面に、それぞれ電気的に切り離された状態でパターニングされて形成されている。具体的には、第1の励振電極13が、一方の振動腕部10の溝部18上と他方の振動腕部11の両側面上とに主に形成され、第2の励振電極14が、一方の振動腕部10の両側面上と他方の振動腕部11の溝部18上とに主に形成されている。また、第1の励振電極13および第2の励振電極14は、基部12の両主面上において、それぞれ引き出し電極19,20を介して、後述するマウント電極16,17に電気的に接続されている。
【0024】
本実施形態のマウント電極16,17は、クロムと金との積層膜であり、水晶と密着性の良いクロム膜を下地層として成膜した後に、表面に金の薄膜を仕上げ層として成膜することにより形成される。ただし、この場合に限られず、例えば、クロムとニクロムを下地層として成膜した後に、表面にさらに金の薄膜を仕上げ層として成膜しても構わない。このようにマウント電極16,17の仕上げ層を金としているのは、後述するバンプと同じ材料にして、マウント電極16,17とバンプとの金属拡散を十分に実現するためである。
【0025】
また、一対の振動腕部10,11の先端には、自身の振動状態を所定の周波数の範囲内で振動するように調整(周波数調整)を行うための重り金属膜21が被膜されている。この重り金属膜21は、周波数を粗く調整する際に使用される粗調膜21aと、微小に調整する際に使用される微調膜21bとに分かれている。これら粗調膜21aおよび微調膜21bを利用して周波数調整を行うことで、一対の振動腕部10,11の周波数をデバイスの公称周波数の範囲内に収めることができる。
【0026】
(パッケージ)
図1、図3および図4に示すように、リッド基板3は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる陽極接合可能な基板であり、略板状に形成されている。リッド基板3におけるベース基板2との接合面側には、圧電振動片4を収容するキャビティ用凹部3aが形成されている。
【0027】
リッド基板3におけるベース基板2との接合面側の全体に、陽極接合用の接合膜35が形成されている。すなわち接合膜35は、キャビティ用凹部3aの内面全体に加えて、キャビティ用凹部3aの周囲の額縁領域に形成されている。本実施形態の接合膜35はシリコン膜で形成されているが、接合膜35をアルミニウムで形成することも可能である。そして後述するように、この接合膜35とベース基板2とが陽極接合され、キャビティCが真空封止されている。
【0028】
ベース基板2は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる基板であり、図1から図4に示すように、リッド基板3と同等の外形で略板状に形成されている。また、このベース基板2には、ベース基板2を厚さ方向に貫通する一対の貫通孔30,31と、一対の貫通電極32,33とが形成されている。
【0029】
図2および図3に示すように、貫通孔30,31は、圧電振動子1を形成したときにキャビティC内に収まるように形成される。より詳しく説明すると、本実施形態の貫通孔30,31は、後述する実装工程で実装される圧電振動片4の基部12側に対応した位置に一方の貫通孔30が形成され、振動腕部10,11の先端側に対応した位置に他方の貫通孔31が形成される。図3に示すように、本実施形態の貫通孔30,31は、第1面U側から第2面L側にかけて、内形が次第に大きくなるように形成されており、貫通孔30,31の中心軸Oを含む断面形状がテーパ状となるように形成されている。なお、テーパ角度は中心軸Oに対して10度から20度程度となるように形成される。また、本実施形態では、貫通孔30,31の中心軸Oに垂直な方向の断面形状は、円形状となるように形成されている。
【0030】
以下に貫通電極の説明をする。なお、以下には貫通電極32を例にして説明するが、貫通電極33についても同様である。
貫通電極32は、図3に示すように、貫通孔30の内部に配置されたガラスの筒体6および導電部材7によって形成されたものである。
本実施形態では、筒体6は、ペースト状のガラスフリットが焼成されたものである。筒体6は、両端が平坦で且つベース基板2と略同じ厚みに形成されている。筒体6の中心には、導電部材7が筒体6を貫通するように配されている。筒体6は、導電部材7および貫通孔30に対して強固に固着している。そして、筒体6および導電部材7は、貫通孔30を完全に塞いでキャビティC内の気密を維持している。
【0031】
図2から図4に示すように、ベース基板2の第1面U側には、一対の引き回し電極36,37がパターニングされている。一対の引き回し電極36,37のうち、一方の引き回し電極36は、一方の貫通電極32の真上に位置するように形成されている。また、他方の引き回し電極37は、一方の引き回し電極36に隣接した位置から、振動腕部10,11に沿って前記振動腕部10,11の先端側に引き回しされた後、他方の貫通電極33の真上に位置するように形成されている。
【0032】
そして、図4に示すように、一対の引き回し電極36,37上に、台座部B12を有するバンプB1が形成されている。また、バンプB1は、前述したマウント電極の仕上げ層と同じ金材料により形成される。これにより、フリップチップボンディングによりマウント電極16,17をバンプB1に接合する際に、マウント電極16,17とバンプB1との金属拡散を十分に実現することができる。
【0033】
圧電振動片4のマウント電極16,17は、バンプB1を介してベース基板2に実装されている。これにより、圧電振動片4の一方のマウント電極16が、一方の引き回し電極36を介して一方の貫通電極32に導通し、他方のマウント電極17が、他方の引き回し電極37を介して他方の貫通電極33に導通するようになっている。
【0034】
またベース基板2の第2面Lには、図1、図3および図4に示すように、一対の外部電極38,39が形成されている。一対の外部電極38,39は、ベース基板2の長手方向の両端部に形成され、一対の貫通電極32,33に対してそれぞれ電気的に接続されている。
【0035】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、ベース基板2に形成された外部電極38,39に対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片4の第1の励振電極13および第2の励振電極14からなる励振電極15に電圧を印加することができるので、一対の振動腕部10,11を接近・離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部10,11の振動を利用して、時刻源や制御信号のタイミング源、リファレンス信号源等として利用することができる。
【0036】
(圧電振動子の製造方法)
次に、上述した圧電振動子の製造方法を、フローチャートを参照しながら説明する。
図8は本実施形態の圧電振動子の製造方法のフローチャートである。
図9は、ウエハ体の分解斜視図である。なお、図9に示す点線は、後に行う切断工程で切断する切断線Mを図示している。
本実施形態に係る圧電振動子の製造方法は、主に、圧電振動片作製工程S10と、リッド基板用ウエハ作製工程S20と、ベース基板用ウエハ作製工程S30と、組立工程(S40以降)を有している。そのうち、圧電振動片作製工程S10、リッド基板用ウエハ作製工程S20およびベース基板用ウエハ作製工程S30は、並行して実施することが可能である。
【0037】
(圧電振動片作製工程)
圧電振動片作製工程S10では、図5から図7に示す圧電振動片4を作製する。具体的には、まず水晶のランバート原石を所定の角度でスライスして一定の厚みのウエハとする。続いて、このウエハをラッピングして粗加工した後、加工変質層をエッチングで取り除き、その後ポリッシュなどの鏡面研磨加工を行って、所定の厚みのウエハとする。続いて、ウエハに洗浄などの適切な処理を施した後、該ウエハをフォトリソグラフィ技術によって圧電振動片4の外形形状にパターニングするとともに、金属膜の成膜およびパターニングを行って、励振電極15、引き出し電極19,20、マウント電極16,17および重り金属膜21を形成する。これにより、複数の圧電振動片4を作製することができる。次に、圧電振動片4の共振周波数の粗調を行う。これは、重り金属膜21の粗調膜21aにレーザ光を照射して一部を蒸発させ、振動腕部10,11の重量を変化させることで行う。
【0038】
(リッド基板用ウエハ作製工程)
リッド基板用ウエハ作製工程S20では、図9に示すように、後にリッド基板となるリッド基板用ウエハ50を作製する。まず、ソーダ石灰ガラスからなる円板状のリッド基板用ウエハ50を、所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチングなどにより最表面の加工変質層を除去する(S21)。次いで、キャビティ形成工程S22では、リッド基板用ウエハ50におけるベース基板用ウエハ40との接合面に、キャビティ用凹部3aを複数形成する。キャビティ用凹部3aの形成は、加熱プレス成型やエッチング加工などによって行う。次に、接合面研磨工程S23では、ベース基板用ウエハ40との接合面を研磨する。
【0039】
次に、接合膜形成工程S24では、ベース基板用ウエハ40との接合面に、図1、図2および図4に示す接合膜35を形成する。接合膜35は、ベース基板用ウエハ40との接合面に加えて、キャビティCの内面全体に形成してもよい。これにより、接合膜35のパターニングが不要になり、製造コストを低減することができる。接合膜35の形成は、スパッタやCVD等の成膜方法によって行うことができる。なお、接合膜形成工程S24の前に接合面研磨工程S23を行っているので、接合膜35の表面の平面度が確保され、ベース基板用ウエハ40との安定した接合を実現することができる。
【0040】
(ベース基板用ウエハ作製工程)
ベース基板用ウエハ作製工程S30では、図9に示すように、後にベース基板となるベース基板用ウエハ40を作製する。まず、ソーダ石灰ガラスからなる円板状のベース基板用ウエハ40を、所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチングなどにより最表面の加工変質層を除去する(S31)。
【0041】
(貫通電極形成工程)
次いで、ベース基板用ウエハ40に、一対の貫通電極32,33を形成する貫通電極形成工程S32を行う。以下に、この貫通電極形成工程S32について説明する。なお、以下には貫通電極32の形成工程を例にして説明するが、貫通電極33の形成工程についても同様である。
【0042】
まず、ベース基板用ウエハ40の第2面Lから第1面Uにかけて、プレス加工等により図3に示す貫通孔30を成型する。次に、貫通孔30内に導電部材7を挿入してガラスフリットからなるペースト材を充填する。続いて、ペースト材を焼成して、図3に示すガラスの筒体6、貫通孔30および導電部材7を一体化させる。最後に、ベース基板用ウエハ40の第1面Uおよび第2面Lの両方を研磨して、第1面Uおよび第2面Lの両方に導電部材7を露出させつつ平坦面とすることにより、図3に示す貫通電極32を貫通孔30内に形成する。貫通電極32により、ベース基板用ウエハ40の第1面U側と第2面L側との導電性が確保されると同時に、キャビティC内の気密性を確保することができる。
【0043】
(電極パターン形成工程)
次に、図4および図9に示すように、ベース基板用ウエハ40の第1面Uに引き回し電極36,37を形成する、電極パターン形成工程S34を行う。引き回し電極36,37を同一の材料で形成するので、引き回し電極36,37を同時に形成することができる。引き回し電極36,37は、スパッタ法や真空蒸着法等により形成された被膜を、フォトリソグラフィ技術によりパターニングして形成される。
【0044】
そして、図4に示すように、一対の引き回し電極36,37上に一対のバンプB1を形成する。バンプB1は、ワイヤボンダを用いて形成される。具体的には、極細の金ワイヤの先端をアーク放電等により溶解し、金ワイヤの先端に、のちに台座部B12となる金ボールを形成する。続いて、引き回し電極36,37上のバンプ形成位置に金ワイヤの先端の金ボールを押付けつつ、超音波振動を印加することにより接合する。最後に金ワイヤを引っ張って切断することにより、先細りのワイヤ部B11と台座部B12とを有するバンプB1を形成する。なお、図9では図面の見易さのためバンプの図示を省略している。この時点で、ベース基板用ウエハ作製工程S30が終了する。
【0045】
(圧電振動子の組立工程)
次に、上述の通り作製した圧電振動片、リッド基板用ウエハおよびベース基板用ウエハを用いて圧電振動子の組立を行う。
図10は実装装置の構成図である。
図11は、フリップチップボンディングの説明図であり、図11(a)は実装工程の説明図であり、図11(b)は擬似実装工程の説明図である。
図12はクリーニング工程の説明図である。
本実施形態の圧電振動子の製造方法は、図10から図12に示すように、基部12の一方面側を接合ヘッド70で吸着しつつ、基部12の他方面側をフリップチップボンディングによりバンプB1に接合して、パッケージに圧電振動片4を実装する実装工程S50を有している。また、実装工程S50において、圧電振動片4を所定個数だけ実装し、接合ヘッド70の汚れ発生が推定される時点で、接合ヘッド70の汚れを落とすクリーニング工程S40と、擬似バンプB2が形成された擬似基板74に接合ヘッド70を用いて擬似圧電振動片76を実装する擬似実装工程S45と、を行う。擬似実装工程S45は、擬似圧電振動片76の擬似バンプB2に対する潜り込み量が所定値以上になるまで繰り返し行う。擬似実装工程S45が終了した後に、実装工程S50を再開する。
【0046】
(実装装置)
図10に示すように、本実施形態の圧電振動子の組立工程で用いる実装装置は、不図示のフリップチップボンダに設けられた接合ヘッド70と、接合ヘッド70の汚れを落とすクリーニングパッド72と、不図示のヒートステージと、を備えている。ヒートステージにはベース基板用ウエハ40および擬似基板74が載置される。これにより、フリップチップボンディングにより圧電振動片および擬似圧電振動片を実装する際に、ベース基板用ウエハ40上のバンプB1および擬似基板74上の擬似バンプB2を加熱することができる。
【0047】
接合ヘッド70は、例えばタングステンやコバルト等が配合された超硬合金からなる部材である。接合ヘッド70は、真空吸着等により圧電振動片をピックしつつ、圧電振動片をバンプに押付けながら超音波振動させることができる。
クリーニングパッド72は、例えば表面にアルミナ粒子を固着したシート状の部材であり、市販品を用いることができる。
擬似基板74はベース基板用ウエハ40と同じソーダ石灰ガラスからなる基板を用いるのが好ましいが、特にこれに限られない。擬似基板74の表面には、擬似バンプB2が形成されている。擬似バンプB2は、バンプB1と同一の材料により、同一の先細り形状に形成される。
【0048】
(実装工程S50)
図11(a)に示すように、ベース基板用ウエハ40の引き回し電極36,37上に、バンプB1を介して圧電振動片4を接合する実装工程S50を行う。具体的な実装方法としては、まず、ヒートステージにより予めバンプB1を加熱しておく。次に、フリップチップボンダの接合ヘッド70で圧電振動片4を真空吸着してピックし、圧電振動片4をベース基板用ウエハ40上に移動する。次に、ベース基板用ウエハ40上に形成されたバンプB1上に、圧電振動片4のマウント電極16,17を押付ける。そして、接合ヘッド70で圧電振動片4のマウント電極16,17をバンプB1に加圧して押付けつつ、接合ヘッド70を超音波振動させて、圧電振動片4のマウント電極16,17をバンプB1に超音波接合する。ここで、実装工程S50において、接合ヘッド70は、例えば、15kHzから20kHz程度の周波数で、水平方向および垂直方向に圧電振動片4を振動させる。そして、図11(a)に示すように、圧電振動片4がベース基板用ウエハ40から浮いた状態で、基部およびバンプB1が機械的に固着される。この時点で、実装工程S50が終了する。
【0049】
(クリーニング工程S40)
上述の実装工程S50により圧電振動片4を複数個実装すると、接合ヘッド70に圧電振動片4の電極材料が付着して接合ヘッド70の表面が汚れる。そして、接合ヘッド70が汚れた状態で実装工程S50を継続すると、圧電振動片4のベース基板用ウエハ40に対する実装高さが低くなったり、圧電振動片4が傾いて接合されたりする等の実装時の不具合が発生する。そこで、接合ヘッド70の汚れ発生が推定される時点で、クリーニング工程S40を行う。
【0050】
クリーニング工程S40では、図12に示すように、接合ヘッド70の先端の電子部品吸着面を、クリーニングパッド72の表面に所定の荷重で押付けつつ、接合ヘッド70をクリーニングパッド72の表面に沿って所定回数往復移動させる。これにより、接合ヘッド70に付着している圧電振動片の電極材料等の汚れを除去することができる。ただし、このとき、接合ヘッド70の表面に、クリーニングパッド72から剥離したアルミナ粒子が付着するなどして、接合ヘッド70の表面が一時的に不安定な状態になる。この状態で前述の実装工程S50を行うと、接合ヘッド70から圧電振動片に超音波振動が伝達されにくくなる。これにより、図11(a)において、マウント電極16,17とバンプB1との金属拡散が不十分となって、圧電振動片4のバンプB1に対する潜り込み量が少なくなる。その結果、圧電振動片4の実装強度を確保することが困難になる。そこで、次に述べる擬似実装工程S45を行う。
【0051】
(擬似実装工程S45)
次に、図11(b)に示すように、擬似バンプB2が形成された擬似基板74に接合ヘッド70を用いて擬似圧電振動片76を実装する擬似実装工程S45を行う。図11(b)に示すように、擬似実装工程S45では、擬似圧電振動片76のマウント電極16a,17aを擬似基板74上に形成されている擬似バンプB2に当接させつつ、接合ヘッド70を基部12に加圧して超音波振動を印加することにより、擬似圧電振動片76のマウント電極16a,17aを擬似バンプB2に実装する。
【0052】
擬似実装工程S45における擬似基板74および擬似バンプB2の加熱温度や接合ヘッド70の加圧力、振動周波数等の接合条件は、前述した実装工程S50の接合条件と同一に設定される。
擬似実装工程S45では、擬似圧電振動片76のマウント電極16a,17aと擬似バンプB2とが金属拡散しつつ、擬似圧電振動片76が擬似バンプB2に潜り込む。そして、擬似圧電振動片76は擬似バンプB2に機械的に支持され、擬似基板74の表面から浮いた状態で接合される。擬似実装工程S45を繰り返すことにより、クリーニング工程S40で接合ヘッド70の表面に付着したアルミナ粒子が、擬似圧電振動片76に移転して接合ヘッド70の表面から除去される。これにより、一時的に不安定となっていた接合ヘッド70の表面状態が安定化する。そのため、接合ヘッド70から擬似圧電振動片76に超音波振動が伝達されるようになり、擬似圧電振動片76の電極と擬似バンプB2との金属拡散が十分になされて、擬似圧電振動片76の擬似バンプB2に対する潜り込み量が回復する。
【0053】
図13は、バンプに対する圧電振動片の潜り込み量の説明図であり、図13(a)は潜り込み前の説明図であり、図13(b)は潜り込み後の説明図である。
具体的な潜り込み量の判定方法は以下の通りである。
まず、図13(a)に示すように、擬似圧電振動片76を接合ヘッド70でピックした状態で接合ヘッド70を下降させ、擬似圧電振動片76のマウント電極16a,17aを擬似バンプB2のワイヤ部B21の先端に当接させる。ここで、擬似圧電振動片76がワイヤ部B21の先端に当接したとき、擬似基板74の垂直方向における接合ヘッド70の位置Y1を、不図示のメモリ部に記録する。
【0054】
次に、接合ヘッド70で擬似圧電振動片76のマウント電極16a,17aを擬似バンプB2に所定の力で加圧して押付けつつ、接合ヘッド70を所定の振動周波数で所定時間だけ超音波振動させる。図13(b)に示すように、擬似圧電振動片76のマウント電極16a,17aと擬似バンプB2とが金属拡散しつつ、擬似圧電振動片76が擬似バンプB2に潜り込んで停止する。ここで、潜り込みが停止したとき、擬似基板74の垂直方向における接合ヘッド70の位置Y2を読み取り、メモリ部に記録されている位置Y1との差分を演算して、潜り込み量Y3を算出する。
【0055】
前述の通り、接合ヘッド70の表面に付着しているアルミナ粒子が、擬似圧電振動片76に移転して接合ヘッド70の表面から除去されるので、擬似実装工程S45を繰り返すことで、潜り込み量Y3が回復する。擬似圧電振動片76の擬似バンプB2に対する潜り込み量Y3が所定値以上になるまで、擬似実装工程S45を繰り返し行い、潜り込み量Y3が所定値以上になった時点で擬似実装工程S45が終了する。なお、擬似実装工程S45で使用した擬似基板74、擬似圧電振動片76および擬似バンプB2は廃棄する。このように、潜り込み量Y3が所定値以上になることにより、擬似圧電振動片76のマウント電極16a,17aと擬似バンプB2との金属拡散が十分になされるまで接合ヘッドが安定化したことを確認することができ、擬似圧電振動片76の実装強度を確保することができる。また、その後に行う実装工程S50では、擬似実装工程S45と同じ潜り込み量を確保することができるので、圧電振動片の実装強度を確保することができる。
【0056】
本実施形態では演算を行って潜り込み量Y3を算出し、潜り込み量Y3が所定値以上かどうかを判定している。しかし、この方法に限られることは無く、例えば、画像を用いて接合ヘッドの位置を認識することで、潜り込み量Y3が所定値以上かどうかを判定してもよい。ただし、カメラ等の画像処理機器が不要であり、実装装置の構成が簡単であるという点で本実施形態に優位性がある。
【0057】
なお、接合ヘッドが1個の場合、クリーニング工程S40および擬似実装工程S45を行っている間は、実装工程S50を行うことはできない。しかし、接合ヘッドを複数個設け、一の接合ヘッドを用いて実装工程S50を行っている間に、他の接合ヘッドについてクリーニング工程S40および擬似実装工程S45を行ってもよい。このように、実装工程S50、クリーニング工程S40および擬似実装工程S45を並行して実施することで、効率よく圧電振動子を製造することができる。
【0058】
擬似実装工程S45は、擬似圧電振動片76の擬似バンプB2に対する潜り込み量Y3が所定値以上になった時点で終了する。その後、実装工程S50を再開する。
【0059】
(重ね合わせ工程S60以降)
次に、図9に戻り、ベース基板用ウエハ40に対してリッド基板用ウエハ50を重ね合わせる重ね合わせ工程S60を行う。具体的には、図示しない基準マークなどを指標としながら、両ウエハ40,50を正しい位置にアライメントする。これにより、ベース基板用ウエハ40に実装された圧電振動片4が、リッド基板用ウエハ50のキャビティ用凹部3aとベース基板用ウエハ40とで囲まれるキャビティC内に収容された状態となる。
【0060】
重ね合わせ工程S60の後、重ね合わせた両ウエハ40,50を図示しない陽極接合装置に入れ、所定の温度雰囲気で所定の電圧を印加して陽極接合する接合工程S70を行う。具体的には、接合膜35とベース基板用ウエハ40との間に所定の電圧を印加する。すると、接合膜35とベース基板用ウエハ40との界面に電気化学的な反応が生じ、両者がそれぞれ強固に密着して陽極接合される。これにより、圧電振動片4をキャビティC内に封止することができ、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50とが接合した、図9に示すウエハ体60を得ることができる。なお、図9においては、図面を見易くするために、ウエハ体60を分解した状態を図示しており、リッド基板用ウエハ50から接合膜35の図示を省略している。
【0061】
次に、ベース基板用ウエハ40の第2面Lに導電性材料をパターニングして、一対の貫通電極32,33にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極38,39(図3参照)を複数形成する外部電極形成工程S80を行う。この工程により、圧電振動片4は、貫通電極32,33を介して外部電極38,39と導通する。
【0062】
次に、ウエハ体60の状態で、キャビティC内に封止された個々の圧電振動子の周波数を微調整して所定の範囲内に収める微調工程S90を行う。具体的には、図4に示す外部電極38,39から所定電圧を継続的に印加して、圧電振動片4を振動させつつ周波数を計測する。この状態で、ベース基板用ウエハ40の外部からレーザ光を照射し、図5および図6に示す重り金属膜21の微調膜21bを蒸発させる。これにより、一対の振動腕部10,11の先端側の重量が低下するため、圧電振動片4の周波数が上昇する。これにより、圧電振動子の周波数を微調整して、公称周波数の範囲内に収めることができる。
【0063】
周波数の微調が終了後、接合されたウエハ体60を図9に示す切断線Mに沿って切断する切断工程S100を行う。具体的には、まずウエハ体60のベース基板用ウエハ40の表面にUVテープを貼り付ける。次に、リッド基板用ウエハ50側から切断線Mに沿ってレーザを照射する(スクライブ)。次に、UVテープの表面から切断線Mに沿って切断刃を押し当て、ウエハ体60を割断する(ブレーキング)。その後、UVを照射してUVテープを剥離する。これにより、ウエハ体60を複数の圧電振動子に分離することができる。なお、これ以外のダイシング等の方法によりウエハ体60を切断してもよい。
【0064】
なお、切断工程S100を行って個々の圧電振動子にした後に、微調工程S90を行う工程順序でも構わない。但し、上述したように、微調工程S90を先に行うことで、ウエハ体60の状態で微調を行うことができるため、複数の圧電振動子をより効率良く微調することができる。よって、スループットの向上化を図ることができるため好ましい。
【0065】
その後、内部の電気特性検査S110を行う。即ち、圧電振動片4の共振周波数や共振抵抗値、ドライブレベル特性(共振周波数および共振抵抗値の励振電力依存性)等を測定してチェックする。また、絶縁抵抗特性等を併せてチェックする。そして、最後に圧電振動子の外観検査を行って、寸法や品質等を最終的にチェックする。これをもって圧電振動子の製造が終了する。
【0066】
本実施形態によれば、図13に示すように、擬似実装工程S45で擬似圧電振動片76を擬似バンプB2に接合すると、擬似圧電振動片76のマウント電極16a,17aと擬似バンプB2との接合界面における金属拡散によって互いに溶融しあい、擬似圧電振動片76が擬似バンプB2に潜り込む。さらに本実施形態では、擬似圧電振動片76の擬似バンプB2に対する潜り込み量Y3が所定値以上になるまで擬似実装工程S45を繰り返し行う。これにより、擬似圧電振動片76のマウント電極16a,17aと擬似バンプB2との金属拡散が十分であることを確認できる。そして、図11(a)に示すように、その後の実装工程S50でも、擬似実装工程S45と同様に圧電振動片4のバンプB1に対する潜り込み量が所定値以上となるので、圧電振動片4のマウント電極16,17とバンプB1との金属拡散を十分に実現することができる。したがって、クリーニング工程S40後に圧電振動片4の実装強度を確保することができる。
【0067】
(発振器)
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図14を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器110は、図14に示すように、圧電振動子1を、集積回路111に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器110は、コンデンサ等の電子素子部品112が実装された基板113を備えている。基板113には、発振器用の前記集積回路111が実装されており、この集積回路111の近傍に、圧電振動子1の圧電振動片が実装されている。これら電子素子部品112、集積回路111および圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0068】
このように構成された発振器110において、圧電振動子1に電圧を印加すると、圧電振動子1内の圧電振動片が振動する。この振動は、圧電振動片が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路111に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路111によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路111の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0069】
本実施形態の発振器110によれば、圧電振動片の実装強度を確保でき、信頼性に優れた圧電振動子1を備えているので、信頼性に優れた発振器110を提供することができる。
【0070】
(電子機器)
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図15を参照して説明する。なお電子機器として、前述した圧電振動子1を有する携帯情報機器120を例にして説明する。
始めに本実施形態の携帯情報機器120は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカおよびマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化および軽量化されている。
【0071】
次に、本実施形態の携帯情報機器120の構成について説明する。この携帯情報機器120は、図15に示すように、電力を供給するための電源部121と、圧電振動子1とを備えている。電源部121は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部121には、各種制御を行う制御部122と、時刻等のカウントを行う計時部123と、外部との通信を行う通信部124と、各種情報を表示する表示部125と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部126とが並列に接続されている。そして、電源部121によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0072】
制御部122は、各機能部を制御して音声データの送信や受信、現在時刻の計測、表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部122は、予めプログラムが書き込まれたROMと、該ROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、該CPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0073】
計時部123は、発振回路やレジスタ回路、カウンタ回路、インターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片が振動し、該振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部122と信号の送受信が行われ、表示部125に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0074】
通信部124は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部127、音声処理部128、切替部129、増幅部130、音声入出力部131、電話番号入力部132、着信音発生部133および呼制御メモリ部134を備えている。
無線部127は、音声データ等の各種データを、アンテナ135を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部128は、無線部127又は増幅部130から入力された音声信号を符号化および複号化する。増幅部130は、音声処理部128又は音声入出力部131から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部131は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0075】
また、着信音発生部133は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部129は、着信時に限って、音声処理部128に接続されている増幅部130を着信音発生部133に切り替えることによって、着信音発生部133において生成された着信音が増幅部130を介して音声入出力部131に出力される。
なお、呼制御メモリ部134は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部132は、例えば、0から9の番号キーおよびその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0076】
電圧検出部126は、電源部121によって制御部122等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部122に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部124を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部126から電圧降下の通知を受けた制御部122は、無線部127、音声処理部128、切替部129および着信音発生部133の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部127の動作停止は、必須となる。更に、表示部125に、通信部124が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0077】
すなわち、電圧検出部126と制御部122とによって、通信部124の動作を禁止し、その旨を表示部125に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部125の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしても良い。
なお、通信部124の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部136を備えることで、通信部124の機能をより確実に停止することができる。
【0078】
本実施形態の携帯情報機器120によれば、圧電振動片の実装強度を確保でき、信頼性に優れた圧電振動子1を備えているので、信頼性に優れた携帯情報機器120を提供することができる。
【0079】
(電波時計)
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図16を参照して説明する。
本実施形態の電波時計140は、図16に示すように、フィルタ部141に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、前述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0080】
以下、電波時計140の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ142は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ143によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部141によって濾波、同調される。
本実施形態における圧電振動子1は、前記搬送周波数と同一の40kHzおよび60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部148、149をそれぞれ備えている。
【0081】
更に、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路144により検波復調される。
続いて、波形整形回路145を介してタイムコードが取り出され、CPU146でカウントされる。CPU146では、現在の年や積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC148に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部148、149は、前述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0082】
なお、前述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計140を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0083】
本実施形態の電波時計140によれば、圧電振動片の実装強度を確保でき、信頼性に優れた圧電振動子1を備えているので、信頼性に優れた電波時計140を提供することができる。
【0084】
なお、この発明は上述した実施の形態に限られるものではない。
本実施形態では、音叉型の圧電振動片を用いた圧電振動子を例に挙げて、パッケージの製造方法を説明した。しかし、例えばATカット型の圧電振動片(厚み滑り振動片)を用いた圧電振動子に、上述した本発明のパッケージの製造方法を採用しても構わない。
【0085】
本実施形態において、表面実装型の圧電振動子を例にしてパッケージの製造方法を説明した。しかし、これに限らず、例えばシリンダーパッケージタイプの圧電振動子に本発明のパッケージの製造方法を採用しても構わない。
【符号の説明】
【0086】
1・・・圧電振動子 4・・・圧電振動片 9・・・パッケージ 10,11・・・振動腕部(振動部) 12・・・基部 70・・・接合ヘッド 擬似基板・・・74 擬似圧電振動片・・・76 110・・・発振器 120・・・携帯情報機器(電子機器) 123・・・計時部 140・・・電波時計 141・・・フィルタ部 B1・・・バンプ B2・・・擬似バンプ C・・・キャビティ S40・・・クリーニング工程 S45・・・擬似実装工程 S50・・・実装工程 Y3・・・潜り込み量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動部と、前記振動部に隣接する基部と、を有する圧電振動片と、
前記圧電振動片を収容するキャビティを備えたパッケージと、
前記キャビティの内部において前記パッケージに固着されたバンプと、を備え、
前記圧電振動片の前記基部が前記バンプに接合されてなる圧電振動子の製造方法であって、
前記基部の一方面側を接合ヘッドで吸着しつつ、前記基部の他方面側をフリップチップボンディングにより前記バンプに接合して、前記パッケージに前記圧電振動片を実装する実装工程を有し、
前記実装工程の前に、
前記接合ヘッドの汚れを落とすクリーニング工程と、
前記クリーニング工程の後に、擬似バンプが形成された擬似基板に前記接合ヘッドを 用いて擬似圧電振動片を実装する擬似実装工程と、
を有しており、
前記擬似実装工程は、前記擬似圧電振動片の前記擬似バンプに対する潜り込み量が所定値以上になるまで繰り返し行うことを特徴とする圧電振動子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法であって、
前記実装工程は、複数の前記接合ヘッドを交代で用いて行い、
一の前記接合ヘッドを用いて前記実装工程を行っている間に、他の前記接合ヘッドについて前記クリーニング工程および前記擬似実装工程を行うことを特徴とする圧電振動子の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の圧電振動子の製造方法により製造されたことを特徴とする圧電振動子。
【請求項4】
請求項3に記載の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項5】
請求項3に記載の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項3に記載の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−166448(P2011−166448A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26930(P2010−26930)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】