説明

圧電振動片、および圧電振動子

【課題】より安価で小型化に有利な圧電振動デバイスの接合構造が得られる圧電振動片および圧電振動子を提供する。
【解決手段】一対の励振電極292が形成され、これらの励振電極を端子電極と電気機械的に接合させるために前記励振電極からそれぞれ引き出された一対の引出電極293が形成された圧電振動片2において、前記引出電極の先端部が前記圧電振動片の一主面の一端部近傍に引き出された接続電極を有し、前記接続電極の上面には前記接続電極より表面粗さが粗く平面積が小さな第1金属膜M1を有しており、前記第1金属膜と前記接続電極の間には前記接続電極より表面粗さが粗く、前記第1金属膜と同材質でかつ前記第1金属膜より厚みの薄い第2金属膜M2が形成された状態で、前記第1金属膜により端子電極と超音波接合により電気機械的に接合してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器などに用いられる圧電振動片およびそれを用いた圧電振動子に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電振動子に代表される圧電振動デバイスは、携帯電話など移動体通信機などに広く用いられている。前記圧電振動子に用いられる圧電振動片の一つとして水晶振動片がある。水晶振動片は表裏主面に励振電極とこれらの励振電極を水晶振動片の端部に延出するための引出電極などが形成されている。このような水晶振動片は、上部が開口した箱状のパッケージ内部に形成された端子電極と、水晶振動片の引出電極の端部に形成された接合部(接続電極)とを導電性接合材を介して接合され、前記開口部分を蓋で気密封止することで表面実装型の水晶振動子が構成される。
【0003】
例えば特許文献1に示す水晶振動子では、水晶振動板とパッケージとを金属バンプなどの導電性接合材で電気機械的に接合しており、お互いの接合強度向上するために、水晶振動板に形成される励振電極と接続電極とで下地電極の材料と電極形成方法とを異ならせたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−104719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の構成では、電極作成のための製造工程が増えるだけでなく、電極構造も複雑なものとなる。結果としてコスト高となるだけでなく、より簡易な構成が望ましい小型化された圧電振動子には不向きな構成であった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、より安価で小型化に有利な圧電振動デバイスの接合構造が得られる圧電振動片および圧電振動子を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1の構成によると、少なくとも一対の励振電極が形成され、これらの励振電極を端子電極と電気機械的に接合させるために前記励振電極からそれぞれ引き出された少なくとも一対の引出電極が形成された圧電振動片において、前記引出電極の先端部が前記圧電振動片の一主面の一端部近傍に引き出された接続電極を有し、前記接続電極の上面には前記接続電極より表面粗さが粗く平面積が小さな第1金属膜を有しており、前記第1金属膜と前記接続電極の間には前記接続電極より表面粗さが粗く、前記第1金属膜と同材質でかつ前記第1金属膜より厚みの薄い第2金属膜が形成された状態で、前記第1金属膜により端子電極と超音波接合により電気機械的に接合してなることを特徴とする。
【0008】
上述の構成により、圧電振動片を搭載する基板に形成された端子電極などの外部電極と圧電振動片の接続電極との接合に関して、接合材を用いることなく第1金属膜により超音波接合することができるので、より小型化された端子電極や接続電極に対しても位置ずれやはみ出しが生じることない。また接続電極より表面粗さが粗く平面積が小さな第1金属膜を用いているので、外部電極に対して第1金属膜がより安定した状態で熱拡散接合され電気的機械的な接合が安定する。また第1金属膜と接続電極の間には接続電極より表面粗さが粗く、第1金属膜と同材質でかつ第1金属膜より厚みの薄い第2金属膜が形成されているので、第1金属膜より鏡面の接続電極に対しては第1金属膜より厚みの薄い第2金属膜が接合されていることで、接続電極と第2金属膜の接合強度が高まりより安定したものとなる。加えて接続電極との接合強度が高く安定した第2金属膜に対して同材質の第1金属膜が接合されていることで、第1金属膜と第2金属膜の接合強度も高まり安定したものとなる。つまり、より厚みの薄い第2金属膜を第1金属膜と接続電極の間に介在させることで、第1金属膜を直接接続電極に接合するよりも強度が向上しより安定したものとなる。特に接合用の金属膜(本発明では第1金属膜)と接続電極との間でお互いの接合強度が弱いと、超音波接合する際、あるいは接続電極との接合後に落下などの衝撃が加わった際に、接合用の金属膜(本発明では第1金属膜)と接続電極との間で機械的な応力が生じて、クラックが生じることがあり、断線するなどの不具合が生じることがあるが、本発明ではこのような不具合が生じることもない。
【0009】
また、請求項2の構成のように、前記第2金属膜は、前記第1金属膜より平面積が大きくかつ前記接続電極より平面積が小さく形成されていてもよい。この構成により上述の作用効果に加え、接続電極の上部に位置ズレなど影響が生じにくい状態で第2金属膜がより安定して形成することができ、第2金属膜の上部に位置ズレなど影響が生じにくい状態で第1金属膜がより安定して形成することができる。また第1金属膜の接続電極側の接合領域全体に第2金属膜が介在しており、接続電極に対する第1金属膜の領域ごとの接合状態もより均一な状態となる。第2金属膜の平面積は第1金属膜より大きく形成することができるので、第2金属膜と接続電極との接合領域が拡がりお互いの接合強度も高められる。
以上の点から、第1金属膜から第2金属膜、第2金属膜から接続電極にいたる全体としての接合強度もより一層高く安定したものとすることができる。また超音波接合する際、あるいは接続電極との接合後に落下などの衝撃が加わった際に、介在用の金属膜(本発明では第2金属膜)が接合用の金属膜(本発明では第1金属膜)と接続電極との間で機械的な応力が生じも、応力を分散させクラックなどが生じる危険性がより一層なくなる。
【0010】
また、請求項3の構成のように、前記第1金属膜と第2金属膜はメッキ法により形成され、前記接続電極は蒸着法もしくはスパッタリング法により形成してもよい。この手法で構成することにより上述の作用効果に加え、接続電極に対して第1金属膜と第2金属膜の表面粗さを容易に粗く形成することができる。厚みの薄い第2金属膜はより鏡面の接続電極の上部であっても安定してメッキ膜を形成することができ、厚みの厚い第1金属膜であっても前記粗面の第2金属膜の上部に形成することで、膜境界でのメッキ膜の成長速度差の影響を小さくし安定してメッキ膜を成長させることができる。また第1金属膜と第2金属膜を形成する際に、圧電振動片に対して機械的な応力負荷を生じさせることなく、バッチ処理により行うことができより安価に作成することができ、表面面積や形状、厚みの設計自由度が極めて高くなる。
【0011】
また、請求項4の構成のように、上述の圧電振動片を基板の端子電極に接合したことを特徴とする圧電振動子であってもよい。この構成により上述の作用効果が得られる圧電振動子が得られるので、安価に特性も安定したより信頼性の高い小型化にも有利な圧電振動子を提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、安価に特性も安定したより信頼性の高い小型化にも有利な圧電振動片および圧電振動子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態を示す音叉型水晶振動子の模式的な断面図。
【図2】本発明の実施形態を示す音叉型水晶振動片の一主面側の平面図。
【図3】図2のA−A線における断面図。
【図4】本発明の実施形態の変形例における断面図。
【図5】本発明の他の実施形態を示す音叉型水晶振動片の一主面側の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、音叉型水晶振動子を例に挙げて図面とともに説明する。本実施形態で使用される音叉型水晶振動子1は、ベース3と図示しない蓋とが封止部材Hを介して接合されて筐体が構成される。具体的には、上部が開口したベースの電極パッド32上に音叉型水晶振動片2がメッキバンプなどの第1金属膜M1を介して接合され、前記ベースの開口部に対して封止部材Hを介して板状の蓋で接合した構成となっている。ここで、本実施形態では音叉型水晶振動子の公称周波数は32.768kHzとなっている。なお、前記公称周波数は一例であり、他の周波数にも適用可能である。
【0015】
ベース3は例えばセラミック材料からなる容器体であり、焼成によって形成されている。ベース3は周囲に堤部30を有しかつ上部が開口した断面視凹形状で、当該ベース3の内部(収納部)には音叉型水晶振動片を搭載するための段差部31が形成されている。そして前記段差部の上面には、一対の電極パッド32,32(一方のみ図示)が形成されている。一対の電極パッド32,32はベース内部に形成された図示しない配線パターンを介してベース底面(裏面)に形成されている2つ以上の端子電極33,33と電気的に接続されている。ベース3の堤部30の周囲にはメタライズ層(封止部材Hの一部を構成)34が周状に形成されている。前記電極パッド32,32や端子電極33,33、メタライズ層34は例えば3層から構成されており、下からタングステン、ニッケル、金の順で積層されている。タングステンはメタライズ技術により、セラミック焼成時に一体的に形成され、ニッケル、金の各層はメッキ技術により形成される。なお、前記タングステンの層にモリブデンを使用してもよい。
【0016】
図示しない蓋は、例えば金属材料やセラミック材料、ガラス材料などからなり、平面視矩形状の一枚板に成形されている。この蓋の下面には封止材(封止部材Hの一部を構成)が形成されている。この蓋はシーム溶接やビーム溶接、加熱溶融接合などの手法により封止材を介してベース3に接合されて、蓋とベース3とによる水晶振動子1の筐体が構成される。
【0017】
音叉型水晶振動片2は、図示していないが、異方性材料の水晶Z板からなる1枚の水晶ウェハに、多数個の音叉型水晶振動片がマトリックス状に一括形成されている。前記音叉型水晶振動片2の外形は、フォトリソグラフィ技術を用いて、レジストまたは金属膜をマスクとして例えばウェットエッチングによって一括的に成形されている。
【0018】
音叉型水晶振動片2は、図2に示すように、振動部である2本の第1脚部21および第2脚部22と、外部(本実施例ではベース3の電極パッド32,32)と接合する接合部23と、これら第1脚部21および第2脚部22と接合部23を突出して設けた基部25とから構成された外形からなる。
【0019】
基部25は、平面視左右対称形状とされ、図2に示すように、振動部(第1脚部21,第2脚部22)より幅広に形成されている。また、基部25の他端面252付近が、一端面251から他端面252にかけて幅狭になるように漸次段差形成されている。このため振動部である第1脚部21および第2脚部22の振動により発生した漏れ振動を他端面252により減衰させることができ、接合部23へ漏れ振動が伝わるのを抑制することができ、音響リーク(振動漏れ)を更に低減するのに好ましい。
【0020】
2本の第1脚部21および第2脚部22は、図2に示すように、基部25の一端面251から突出して隙間部253を介して並設されている。なお、ここでいう隙間部253は、一端面251の幅方向の中央位置(中央領域)に設けられている。これら第1脚部21および第2脚部22の先端部211,221は、第1脚部21および第2脚部22の他の部位と比べて突出方向に対して直交する方向に幅広に成形され(以下、脚部の幅広領域と称する)、さらにそれぞれ隅部は曲面形成されている。このように先端部211,221を幅広に成形することで、先端部211,221(先端領域)を有効に利用することができ、音叉型水晶振動片2の小型化に有用であり、低周波数化にも有用である。また、それぞれ先端部211,221の隅部を曲面形成することで、外力を受けた時などに堤部などに接触するのを防止することができる。
【0021】
また、2つの第1脚部21および第2脚部22の一主面261と他主面262には、音叉型水晶振動片2の小型化により劣化する直列共振抵抗値(本実施例ではCI値、以下同様)を改善させるために、溝部27がそれぞれ形成されている。また、音叉型水晶振動片2の外形のうち側面28は一主面261と他主面262に対して傾斜して成形されている。これは、音叉型水晶振動片2を湿式でエッチング成形する際に基板材料の結晶方向(X,Y方向)へのエッチングスピードが異なることに起因している。
【0022】
接合部23は、図2に示すように、下記する引出電極293,294を外部電極(本発明でいう外部であり、本実施例ではベース3の電極パッド32,32)と電気機械的に接合するためのものである。具体的に、接合部23は、2本の第1脚部21および第2脚部22が突出した基部25の一端面251と対向する他端面252の幅方向の中央位置(中央領域)から突出形成されている。すなわち、2本の第1脚部21と第2脚部22との間に配された隙間部253と正対向する位置に、接合部23が突出形成されている。
【0023】
接合部23は、基部25の他端面252に対して平面視垂直方向に突出した他端面252よりも幅狭な短辺部231と、短辺部231の先端部と連なり短辺部231の先端部において平面視直角に折曲されて基部25の幅方向に延出する長辺部232とから構成され、接合部23の先端部233は基部25の幅方向に向いている。すなわち、接合部23は、平面視L字状に成形され、平面視L字状に成形された折曲箇所である折曲部234が短辺部231の先端部に対応する。このように基部25の他端面252よりも短辺部231が幅狭な状態で形成されているので、振動漏れのさらなる抑制の効果が高まる。
【0024】
また、本実施例では、接合部23の基端部にあたる短辺部231の折曲部234が、外部と接合する接合領域とされ、接合部23の先端部233にあたる長辺部232の先端部が、外部と接合する接合領域とされる。そして、接合部23の基端部である短辺部231には下記する第2励振電極292から短辺部231の端部(一端部へ)引き出された引出電極294(本発明でいう接続電極)が形成され、接合部の先端部である長辺部232に、下記する第1励振電極291から長辺部232の端部(一端部へ)引き出された引出電極293(本発明でいう接続電極)が形成されている。
【0025】
また、接合部の一主面261の引出電極293,294の上面で、ベース3との接合部位となる箇所には、接続電極295,296より表面粗さが粗く平面積が小さな第2金属膜M2(M21,M22)が形成されている。第2金属膜M2(M21,M22)の上面には、第2金属膜M2(M21,M22)と同材質で接続電極295,296より表面粗さが粗く、第2金属膜M2(M21,M22)より平面積が小さく、かつ第2金属膜M2(M21,M22)より厚みの厚いメッキバンプとしての第1金属膜M1(M11,M12)が形成されている。
【0026】
具体的に、第1金属膜M11は接合部の一主面の折曲部234の接続電極296の上面に、第1金属膜M11と同材質で第1金属膜M11より平面積が大きくかつ接続電極296より平面積が小さく、第1金属膜M11より厚みの薄い第2金属膜M21を介在した状態で形成されている。第1金属膜M12は接合部の一主面の先端部233の接続電極295の上面に、第1金属膜M12と同材質で第1金属膜M12より平面積が大きくかつ接続電極295より平面積が小さく、第1金属膜M12より厚みの薄い第2金属膜M22を介在した状態で形成されている。また第2金属膜M2(M21,M22)は、第1金属膜M1(M11,M12)の平面積の1.2倍から3倍の大きさで形成されている。例えば第2金属膜M2(M21,M22)は、その厚みが1〜2μm程度、一辺が70μm程度で平面積が4900μm2の平面視正方形状で形成されており、第1金属膜M1(M11,M12)は、その厚みが5〜20μm程度、直径が50μm程度で平面積が約1962.5μm2の平面視円形状で形成されている。なお、超音波接合後(FCB後)には少なくとも第1金属膜M1(M11,M12)は面方向に拡がって潰れた状態となり、約半分程度の厚みになる。第1金属膜M1(M11,M12)の厚みが5μmより小さいと、音叉型水晶振動片2の接続電極295,296とベース3の電極パッド32,32との隙間が小さくなり、音叉型水晶振動子の電気的特性に悪影響を生じやすくなる。第1金属膜M1(M11,M12)の厚みが20μmより大きいと、音叉型水晶振動片2の傾きや位置ずれの影響が生じやすくなり、接合強度としてもばらつきが生じやすくなる。なお、メッキバンプとしての第1金属膜M1(M11,M12)の平面視形状、および中間メッキバンプとしての第2金属膜M2(M21,M22)の平面視形状は、接続電極などの平面視形状に応じて、円形や楕円形などの円形状のものや、長方形や正方形を含む多角形状のものなど自由に構成することができる。
【0027】
接合部23への第1金属膜M1(M11,M12)および第2金属膜M2(M21,M22)の形成に関しては、接合部23の各領域(接続電極295,296の上面)に図示しない第2金属膜の形成部(接続電極295,296より平面積の小さい窓部を有するマスク)をフォトリソグラフィ法により所望の形状(本形態では矩形状の窓部)に形成して、当該第2金属膜の形成部に第2金属膜M2(M21,M22)を電解メッキ法などの手法によりメッキ形成する。第2金属膜M2(M21,M22)の各領域(第2金属膜M2の上面)に図示しない第1金属膜の形成部(第2金属膜M2より平面積の小さい窓部を有するマスク)をフォトリソグラフィ法により所望の形状(本形態では円形状の窓部)に形成して、当該第1金属膜の形成部に第1金属膜M1(M11,M12)を電解メッキ法などの手法によりメッキ形成する。その後、アニール処理を行ってもよい。
【0028】
なお、上記第2金属膜M2については、図4の変形例における音叉型水晶振動片の断面図に示すように、第1金属膜M1と接続電極より平面積が小さく、かつ第1金属膜M1より厚みの薄い第2金属膜M2(M23,M24)を介在した状態で形成してもよい。また図示しないがこの第2金属膜M2は、1つの第1金属膜M1の下に2つ以上のものを介在させてもよい。このような構成による第1金属膜M1(M11,M12)の形成に関しては、接続電極295,296と第2金属膜M2(M21,M22)の各領域(接続電極と第2金属膜の上面)に図示しない第1金属膜の形成部(第2金属膜M2より平面積の大きい窓部を有するマスク)をフォトリソグラフィ法により所望の形状に形成して、当該第1金属膜の形成部に第1金属膜M1(M11,M12)を電解メッキ法などの手法によりメッキ形成する。その後、アニール処理を行ってもよい。以上のような構成では、第2金属膜M2がアンカーとして機能することで、最終的な第1金属膜M1(M11,M12)と接続電極295,296との接合強度も高まり安定したものとなる。さらにこのような第2金属膜が複数介在する多点アンカーとすることでその接合強度はより一層高まるものである。
【0029】
また、本実施例にかかる音叉型水晶振動片2には、異電位で構成された2つの第1励振電極291および第2励振電極292と、これら第1励振電極291および第2励振電極292を電極パッド32,32に電気的に接続させるためにこれら第1励振電極291および第2励振電極292から引き出された引出電極293,294と、その先端部に金属膜M1,M2が形成される接続電極295,296とが一体的に同時形成されている。なお、本実施例でいう引出電極293,294は、2つのこれら第1励振電極291および第2励振電極292から引き出された電極パターンのことをいう。接続電極295,296は、引出電極293,294の先端部分のうちベース3との接合部位となる箇所に形成されたものを示している。
【0030】
また、2つの第1励振電極291および第2励振電極292の一部は、溝部27の内部に形成されている。このため、音叉型水晶振動片2を小型化しても第1脚部21および第2脚部22の振動損失が抑制され、CI値を低く抑えることができる。
【0031】
第1励振電極291は、第1脚部21の両主面(一主面261と他主面262)と第2脚部22の両側面28に形成されている。同様に、第2励振電極292は、第2脚部22の両主面(一主面261と他主面262)と第1脚部21の両側面28に形成されている。
【0032】
上記した音叉型水晶振動片2の第1励振電極291および第2励振電極292や引出電極293,294、接続電極295,296は、金属蒸着によって各第1脚部21および第2脚部22上にクロム(Cr)層が形成され、このクロム層上に金(Au)層が形成されて構成される薄膜である。この薄膜は、真空蒸着法やスパッタリング法などの手法により基板全面に形成された後、フォトリソグラフィ法によりメタルエッチングして所望の形状に形成されることで、一体的に同時形成される。なお、第1励振電極291,第2励振電極292および引出電極293,294がクロム(Cr),金(Au)の順に形成されているが、例えば、クロム(Cr),銀(Ag)の順や,クロム(Cr),金(Au),クロム(Cr)の順や,クロム(Cr),銀(Ag),クロム(Cr)の順などであってもよい。
【0033】
また、各第1脚部21および第2脚部22の先端部211,221の一主面261と他主面262には、上記した脚部の幅広領域に対してほぼ全面に引出電極293,294がそれぞれ形成されている。これら一主面261の脚部の幅広領域に形成された引出電極293,294の上面には、レーザービームなどのビーム照射によって金属膜の質量削減を行うことで音叉型水晶振動片2の周波数を調整してなる調整用金属膜(周波数調整用錘)M3が前記引出電極に対して若干小さな面積で一体形成されている。
【0034】
上記調整用金属膜M3は、例えば、各領域の引出電極293,294に調整用金属膜の形成部をフォトリソグラフィ法により所望の形状に形成して、当該調整金属膜の形成部に調整用金属膜M3を電解メッキ法などの手法によりメッキ形成する。その後、アニール処理を行ってもよい。これらの金属膜をメッキ形成する際には、上記した第1金属膜M1(M11,M12)あるいは第2金属膜M2(M21,M22)の少なくとも1つ以上と同じ工程で同時に構成すると実用上より望ましい。
【0035】
以上のように構成された音叉型水晶振動片2は、上記ウェハの状態の際に各々の音叉型水晶振動片2の周波数を計測した後、各々の音叉型水晶振動片2の調整用金属膜M3をビーム照射などで減少させたり、パーシャル蒸着により増加させたりすることで、周波数の粗調整している。
【0036】
周波数粗調整が施されウェハから取り出された個片の音叉型水晶振動片2は、その一主面261側の接続電極295,296の上面に形成された第1金属膜M1(M11,M12)とベース3の電極パッド32,32とがFCB法により超音波接合され、ベース3に搭載される。
【0037】
ベース3に搭載された音叉型水晶振動片2は、周波数を再計測した後、音叉型水晶振動片2の調整用金属膜M3をビーム照射やイオンミーリングなどで減少させることで、周波数の微調整する最終の周波数調整を行っている。
【0038】
その後、最終の周波数調整が行われた音叉型水晶振動片2が搭載されたベース3に対して、図示しない蓋を加熱溶融接合などの手法により封止部材Hを介して接合し、音叉型水晶振動片2をベース3と図示しない蓋とで構成された筐体の内部に気密封止する。なお上述の気密封止の手法として、シーム溶接、ビーム溶接、雰囲気加熱などの手法をあげることができる。
【0039】
次に本発明の他の実施形態について図5とともに説明する。図5は本発明の他の実施形態を示す音叉型水晶振動片の一主面側の平面図である。上記実施形態と同様の部分については同番号を付しており説明の一部について割愛している。図5に示す実施形態では、2つの第1脚部21および第2脚部22の一主面261と他主面262(図示せず)には溝部が形成されておらず、2つの第1脚部21および第2脚部22の先端部211,221には脚部の幅広領域が形成されておらずストレート形状の音叉型水晶振動片2を使用している。また音叉型水晶振動片2の接合部23をなくした構成とするとともに、各脚部21,22と基部25の間には音叉型水晶振動片の側面28から延出する切り欠き部K,Kが形成されている。また音叉型水晶振動片2の基部25の領域内部で図示しないベースと接合される。このように構成された音叉型水晶振動片2はよりサイズの大きな音叉型水晶振動片などで用いられることが多く、上述の音叉型水晶振動片2に対してより簡易で安価な構成とすることができる。本発明ではこのように簡易な構成の音叉型水晶振動片2に対しても適用することができる。すなわち、基部25の一主面261の引出電極293,294の上面で、ベース3との接合部位となる箇所(図5では基部の他端面252に接した角部分2521,2522に近接する位置)には、接続引出電極295,296より表面粗さが粗く平面積が小さな第2金属膜M2(M21,M22)が形成されている。第2金属膜M2(M21,M22)の上面には、第2金属膜M2(M21,M22)と同材質で引出電極293,294より表面粗さが粗く、第2金属膜M2(M21,M22)より平面積が小さく、かつ第2金属膜M2(M21,M22)より厚みの厚いメッキバンプとしての第1金属膜M1(M11,M12)が形成されている。
【0040】
以上のような構成により、接合材にメッキバンプとしての第1金属膜M1(M11,M12)を用いることで、より小型化された電極パッド32,32や接続電極295,296に対しても位置ずれやはみ出しが生じることない。安定してベース3上に音叉型水晶振動片2を第1金属膜M1(M11,M12)により電気機械的に接合することができる。具体的に、メッキバンプとしての第1金属膜M1(M11,M12)を用いることで、音叉型水晶振動片2を外部(ベース3)に搭載する前に、音叉型水晶振動片2にメッキバンプとしての第1金属膜M1(M11,M12)を形成することができる。その結果、常に音叉型水晶振動片2の所望の形成位置にメッキバンプとしての第1金属膜M1(M11,M12)を形成しているので、例えば、音叉型水晶振動片2の外部(ベース3)への搭載位置が所望位置からずれた場合であっても、音叉型水晶振動片2が外部(ベース3)にバンプがずれた状態で搭載されることを防止することができ、安定したベース3への音叉型水晶振動片2の搭載を行うことができる。また接続電極295,296より表面粗さが粗く平面積が小さな第1金属膜M1(M11,M12)を用いているので、電極パッド32,32に対して第1金属膜M1(M11,M12)がより安定した状態で熱拡散接合され電気的機械的な接合が安定する。また第1金属膜M1(M11,M12)と接続電極295,296の間には接続電極295,296より表面粗さが粗く、第1金属膜と同材質でかつ第1金属膜より厚みの薄い第2金属膜M2(M21,M22、あるいはM23,M24)が介在した状態で形成されているので、接続電極295,296と第2金属膜M2(M21,M22、あるいはM23,M24)の接合強度が高まりより安定したものとなるだけでなく、第1金属膜M1(M11,M12)と第2金属膜M2(M21,M22、あるいはM23,M24)の接合強度も高まり安定したものとなる。また、接合領域とされた接合部23の基端部である短辺部231に、フォトリソグラフィ法により第1金属膜M1(M11,M12)および第2金属膜M2(M21,M22、あるいはM23,M24)が形成されるので、第1金属膜M1(M11,M12)および第2金属膜M2(M21,M22、あるいはM23,M24)を音叉型水晶振動片2に形成する際の位置決め精度を高めて、音叉型水晶振動片2の接合部23が小さくなった場合であっても、音叉型水晶振動片2の適切な位置へ接合部材として第1金属膜M1(M11,M12)を形成することができる。また、第1金属膜M1(M11,M12)、または第2金属膜M2(M21,M22、あるいはM23,M24)の少なくとも1つ以上の形成を、音叉型水晶振動片2の他の金属材料の形成と一括して行うことができる。特に音叉型水晶振動片2であれば、第1脚部21および第2脚部22の先端に形成される後述する調整用金属膜M3と第1金属膜M1あるいは第2金属膜M3の少なくとも1つ以上と同時形成することで、不要な工程を増加させることがなくなり、タクトを向上させることができる。
【0041】
また、第2金属膜M2(M21,M22)は、第1金属膜M1(M11,M12)より平面積が大きくかつ接続電極295,296より平面積が小さく形成されているので、接続電極295,296の上部に位置ズレなど影響が生じにくい状態で第2金属膜M2(M21,M22)がより安定して形成することができ、第2金属膜M2(M21,M22)の上部に位置ズレなど影響が生じにくい状態で第1金属膜M1(M11,M12)がより安定して形成することができる。また第1金属膜M1(M11,M12)の接続電極295,296側の接合領域全体に第2金属膜M2(M21,M22)が介在しており、接続電極295,296に対する第1金属膜M1(M11,M12)の領域ごとの接合状態もより均一な状態となる。第2金属膜M2(M21,M22)の平面積は第1金属膜M1(M11,M12)より大きく形成することができるので、第2金属膜M2(M21,M22)と接続電極295,296との接合領域が拡がりお互いの接合強度も高められる。以上の点から、第1金属膜M1(M11,M12)から第2金属膜M2(M21,M22)、第2金属膜M2(M21,M22)から接続電極295,296にいたる全体としての接合強度もより一層高く安定したものとすることができる。また超音波接合する際、あるいは接続電極295,296との接合後に落下などの衝撃が加わった際に、第2金属膜M2(M21,M22)が第1金属膜M1(M11,M12)と接続電極295,296との間で機械的な応力が生じも、応力を分散させクラックなどが生じる危険性がより一層なくなる。
【0042】
また、第1金属膜M1(M11,M12)と第2金属膜M2(M21,M22、あるいはM23,M24)はメッキ法により形成され、接続電極295,296は真空蒸着法もしくはスパッタリング法により形成しているので、接続電極295,296に対して第1金属膜M1(M11,M12)と第2金属膜M2(M21,M22、あるいはM23,M24)の表面粗さを容易に粗く形成することができる。厚みの薄い第2金属膜M2(M21,M22、あるいはM23,M24)はより鏡面の接続電極295,296の上部であっても安定してメッキ膜を形成することができ、厚みの厚い第1金属膜M1(M11,M12)であっても前記粗面の第2金属膜M2(M21,M22、あるいはM23,M24)の上部に形成することで、膜境界でのメッキ膜の成長速度差の影響を小さくし安定してメッキ膜を成長させることができる。また第1金属膜M2(M21,M22)と第2金属膜M2(M21,M22、あるいはM23,M24)を形成する際に、音叉型水晶振動片2に対して機械的な応力負荷を生じさせることなく、バッチ処理により行うことができより安価に作成することができ、表面面積や形状、厚みの設計自由度が極めて高くなる。
【0043】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均など範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。本発明は、屈曲振動してなる音叉型圧電振動片に限らず、ATカットなどの厚みすべり振動系や他の振動モードの圧電振動片、あるいは平板形状や逆メサ形状などの他の形状の圧電振動片にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、音叉型水晶振動子などの圧電振動デバイスに適用できる。
【符号の説明】
【0045】
1 音叉型水晶振動子
2 音叉型水晶振動片
3 ベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一対の励振電極が形成され、これらの励振電極を端子電極と電気機械的に接合させるために前記励振電極からそれぞれ引き出された少なくとも一対の引出電極が形成された圧電振動片において、
前記引出電極の先端部が前記圧電振動片の一主面の一端部近傍に引き出された接続電極を有し、
前記接続電極の上面には前記接続電極より表面粗さが粗く平面積が小さな第1金属膜を有しており、
前記第1金属膜と前記接続電極の間には前記接続電極より表面粗さが粗く、前記第1金属膜と同材質でかつ前記第1金属膜より厚みの薄い第2金属膜が形成された状態で、前記第1金属膜により端子電極と超音波接合により電気機械的に接合してなることを特徴とする圧電振動片。
【請求項2】
前記第2金属膜は、前記第1金属膜より平面積が大きくかつ前記接続電極より平面積が小さく形成されていることを特徴とする特許請求項1記載の圧電振動片。
【請求項3】
前記第1金属膜と第2金属膜はメッキ法により形成され、前記接続電極は蒸着法もしくはスパッタリング法により形成されてなることを特徴とする特許請求項1または特許請求項2記載の圧電振動片。
【請求項4】
特許請求項1乃至3記載の圧電振動片を基板の端子電極に接合したことを特徴とする圧電振動子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−23528(P2012−23528A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159534(P2010−159534)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】