説明

圧電振動片

【課題】接合応力が強い導電性バンプ73を用いた場合であっても、接合応力が振動領域52に伝わるのを抑制する。
【解決手段】水晶振動片2では、主面22,23が略矩形に形成された基板21に、一対の励振電極61,62が形成されて振動領域52が構成された振動部51と、外部と接合する一対の端子電極63,64が形成された接合部53とが一体的に設けられている。一対の端子電極63,64にはそれぞれ導電性バンプ73が形成され、一対の端子電極63,64は、一対の励振電極61,62にそれぞれ電気的に接続されている。また、水晶振動片2には、一対の端子電極63,64を導電性バンプ73を介してベース3の電極パッド36,37に接合する際に基板21に生じる接合応力が振動領域52に伝わるのを遮断する切り欠き部81が、振動部51と接合部53との間に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動片に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、圧電振動デバイスとして、例えば、水晶発振器や水晶振動子などが挙げられる。この種の圧電振動デバイスでは、その筐体が直方体のパッケージで構成されている。このパッケージはベースと蓋とから構成され、このパッケージ内部には圧電振動片が流動性材料の導電性接着剤によりベースに保持接合されている。そして、ベースと蓋とが接合されることで、パッケージの内部の圧電振動片が気密封止されている(例えば、下記する特許文献ご参照。)。
【0003】
下記する特許文献では、ベース上に圧電振動片を搭載する際、圧電振動片は導電性接着剤によりベースに接合される。この接合の際、導電性接着剤からの外的な応力(ベースへの圧電振動片の接合の際に発生する接合応力)が圧電振動片に直接かかってしまい、圧電振動片の特性(周波数等)に悪影響を及ぼす。
【0004】
また、下記する特許文献では、ベース上に異極となる電極が配されており、それぞれの電極上に導電性接着剤が塗布され、この導電性接着剤を用いてベースに圧電振動片が接合される。この導電性接着剤は、流動性材料であり、電極上に導電性接着剤を塗布した際や、導電性接着剤を用いてベースに圧電振動片を接合する際に、基板上に導電性接着剤が拡がり(流れ)、異極となる電極間のショートなどの不具合を起こす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−191709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、現在、上記した導電性接着剤に代わりに、ベースに圧電振動片を接合するために、金属バンプなどの非流動性材料の導電性バンプが用いられている。
【0007】
しかしながら、この導電性バンプは、非流動性部材で基板上に拡がる(流れる)ことはないが、ベースに圧電振動片を接合する際に圧電振動片に強い接合応力がかかる。この強い接合応力が圧電振動片の振動領域に伝わると、圧電振動片に歪みが生じて圧電振動片の発振周波数が変動する。
【0008】
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、接合応力が強い導電性バンプを用いた場合であっても、接合応力が振動領域に伝わるのを抑制する圧電振動片を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる圧電振動片は、主面が略矩形に形成された基板に、一対の励振電極が形成されて振動領域が構成された振動部と、外部と接合する一対の端子電極が形成された接合部とが設けられ、前記一対の端子電極にはそれぞれ導電性バンプが形成され、前記一対の端子電極は、前記一対の励振電極にそれぞれ電気的に接続され、前記一対の端子電極を前記導電性バンプを介して外部に接合する際に前記基板に生じる接合応力が前記振動領域に伝わるのを遮断する遮断手段が、前記振動部と前記接合部との間に設けられたことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、前記基板に前記振動部と前記接合部とが設けられ、前記一対の端子電極にはそれぞれ前記導電性バンプが形成され、前記一対の端子電極は前記一対の励振電極にそれぞれ電気的に接続され、前記一対の端子電極を前記導電性バンプを介して外部に接合する際に前記基板に生じる接合応力が前記振動領域に伝わるのを遮断する遮断手段が、前記振動部と前記接合部との間に設けられているので、接合応力が強い前記導電性バンプを介して当該圧電振動片を外部(本実施例ではベース)に接合した場合であっても、接合した際に前記基板に生じる接合応力が前記振動領域に伝わるのを抑制することが可能となる。その結果、当該圧電振動片の振動(発振周波数)に影響を与えず接合強度を高めることが可能となる。
【0011】
前記構成において、前記一対の端子電極のうち一端子電極は、前記接合部の対向する両端部のうち一端部に形成され、前記遮断手段は、前記基板の対向する両側辺の他側辺から一側辺に向かって形成された切り欠き部であり、前記一端子電極が形成された前記接合部の一端部近傍のみにおいて、前記振動部と前記接合部とが一体成形されてもよい。
【0012】
この場合、前記一端子電極は前記接合部の一端部に形成され、前記遮断手段は、前記基板の他側辺から一側辺に向かって形成された前記切り欠き部であり、前記一端子電極が形成された前記接合部の一端部近傍のみにおいて前記振動部と前記接合部とが一体成形されるので、前記切り欠き部により接合した際に前記基板に生じる接合応力を前記接合部に閉じ込め、接合応力を前記振動領域に伝えるのを抑制することが可能となる。
【0013】
前記構成において、前記一対の端子電極は、前記基板の対向する両側辺であって、前記接合部の両端部にそれぞれ形成され、前記遮断手段は、前記基板の両側辺からそれぞれ内方に向かって形成された2つの切り欠き部と、前記切り欠き部の間に形成された貫通孔とであってもよい。
【0014】
この場合、前記一対の端子電極は、前記基板の両側辺であって前記接合部の両端部にそれぞれ形成され、前記遮断手段は、前記基板の両側辺からそれぞれ内方に向かって形成された2つの切り欠き部と、前記切り欠き部の間に形成された貫通孔とであるので、前記切り欠き部と前記貫通孔により接合した際に前記基板に生じる接合応力を前記接合部に閉じ込め、前記基板に生じる接合応力を前記振動領域に伝えるのを抑制することが可能となる。具体的に、前記2つの切り欠き部により接合応力は、前記2つの切り欠き部の間に集中するが、この集中した接合応力が、前記貫通孔により前記振動領域に伝播するのを防ぎ、接合応力を前記接合部に閉じ込めさせることが可能となる。
【0015】
また、上記の目的を達成するため、本発明にかかる圧電振動片は、主面が略矩形に形成された基板に、一対の励振電極が形成されて振動領域が構成された振動部と、外部と接合する一対の端子電極が形成された接合部とが設けられ、前記一対の端子電極にはそれぞれ導電性バンプが形成され、前記一対の端子電極は、前記一対の励振電極にそれぞれ電気的に接続され、前記一対の端子電極は、前記基板の対向する両側辺のうち一側辺であって、前記接合部の対向する両端部のうち一端部に形成され、前記一対の端子電極を結ぶ仮想線と直交する仮想直交線上以外の位置に、前記振動領域が配されたことを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、前記基板に前記振動部と前記接合部とが設けられ、前記一対の端子電極にはそれぞれ前記導電性バンプが形成され、前記一対の端子電極は前記一対の励振電極にそれぞれ電気的に接続され、前記一対の端子電極は前記基板の一側辺であって前記接合部の一端部に形成され、前記一対の端子電極を結ぶ仮想線と直交する仮想直交線上以外の位置に前記振動領域が配されるので、接合応力が強い前記導電性バンプを介して当該圧電振動片を外部(本実施例ではベース)に接合した場合であっても、接合した際に前記基板に生じる接合応力は、前記振動領域とは異なる方向に生じるので、接合応力が前記振動領域に伝わるのを抑制することが可能となる。その結果、当該圧電振動片の振動(発振周波数)に影響を与えず接合強度を高めることが可能となる。
【0017】
前記構成において、前記一対の端子電極は、前記振動部への距離が遠近となるように並設されてもよい。
【0018】
この場合、前記一対の端子電極における(入出力の)前記導電性バンプ間で発生する前記導電性バンプ間の応力を、前記振動領域からみて近い前期導電性バンプ側で止めることができ、その結果、前記導電性バンプ間による応力を前記振動領域に対して影響しない構成とすることができる。
【0019】
前記構成において、前記一対の端子電極では、前記基板上における前記振動部までの距離が長い端子電極が、前記距離が短い端子電極よりも大きくてもよい。
【0020】
この場合、前記基板上における前記振動部までの距離が長い端子電極が、前記距離が短い端子電極よりも大きいので、前記振動部までの距離が長い端子電極における外部との接合強度を高めながら、前記一対の端子電極の外部への電気的接続を安定して行うことが可能となる。
【0021】
前記構成において、前記導電性バンプは、メッキバンプであってもよい。
【0022】
この場合、前記導電性バンプはメッキバンプであるので、外部との接合の際に前記導電性バンプが拡がる(流れる)ことはなく、電極間のショートを抑えることが可能となる。さらに、前記導電性バンプはメッキバンプであるので、接合強度を高めることが可能となる。
【0023】
前記構成において、前記一対の端子電極が形成された位置の前記基板が、凸状のポスト部に成形されてもよい。
【0024】
この場合、前記一対の端子電極が形成された位置の前記基板が凸状の前記ポスト部に成形されるので、外部と接合するための前記導電性バンプの高さを低くすることが可能となり、バンプの高さが高くなることによるバンプ高さ寸法やバンプ形状のバラツキを抑えることが可能となる。特に、前記一対の端子電極の表面を平坦にすることが可能となる。その結果、当該圧電振動片の外部への接合(搭載)を安定させることが可能となる。また、前記ポスト部を成形することで前記バンプの高さを抑えることが可能となり、前記バンプの量を少なくして製造コストを抑えることが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明にかかる圧電振動片によれば、接合応力が強い導電性バンプを用いた場合であっても、接合応力が振動領域に伝わるのを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本実施例1にかかる、内部空間を公開した水晶振動子の概略平面図である。
【図2】図2は、図1のA−A線端面図である。
【図3】図3は、本実施例1にかかる水晶振動片の製造工程の一工程である基板にレジストを形成した工程図である。
【図4】図4は、本実施例1にかかる水晶振動片の製造工程の一工程である基板にAuメッキを形成した工程図である。
【図5】図5は、本実施例1にかかる水晶振動片の製造工程の一工程である基板からレジストを除去した工程図である。
【図6】図6は、本実施例1にかかる水晶振動片の製造工程の一工程である基板から露出したCr−Au膜を除去した工程図である。
【図7】図7は、本実施例1にかかる水晶振動片の製造工程の一工程である基板にポスト部を成形した工程図である。
【図8】図8は、本実施例1にかかる水晶振動片の製造工程の一工程である基板に一対の端子電極を形成した工程図である。
【図9】図9は、本実施例1の他の例にかかる、内部空間を公開した水晶振動子の概略平面図である。
【図10】図10は、本実施例1の他の例にかかるポスト部の概略構成図である。
【図11】図11は、本実施例2にかかる、内部空間を公開した水晶振動子の概略平面図である。
【図12】図12は、本実施例3にかかる、内部空間を公開した水晶振動子の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下に示す各実施例では、圧電振動デバイスとして水晶振動子に本発明を適用した場合を示す。
【実施例1】
【0028】
本実施例1にかかる水晶振動子1には、図1,2に示すように、ATカット水晶からなる水晶振動片2(本発明でいう圧電振動片)と、この水晶振動片2を保持するベース3と、ベース3に保持した水晶振動片2を気密封止するための蓋4が設けられている。
【0029】
この水晶振動子1では、ベース3と蓋4とからパッケージ11が構成され、ベース3と蓋4とが接合されてパッケージ11の内部空間12が形成される。このパッケージ11の内部空間12のベース3上に水晶振動片2が保持され、パッケージ11の内部空間12が気密封止される。この際、図1,2に示すように、水晶振動片2は、ベース3に、金属メッキからなる導電性バンプ73を用いてFCB法(Flip Chip Bonding)により電気機械的に超音波接合されている。
【0030】
次に、この水晶振動子1の各構成について図1,2を用いて説明する。
【0031】
ベース3は、図1,2に示すように、底部31と、この底部31から上方に延出した壁部32とから構成される箱状体に成形されている。このベース3は、セラミック材料からなる平面視矩形状の一枚板上に、セラミック材料の直方体が積層して凹状に一体的に焼成されている。ベース3の平面視の寸法は、3.2mm×2.5mm以下に設定されている。なお、本実施例1では、平面視の寸法が1.6mm×1.2mm以下に設定されたベース3を用いる。
【0032】
このベース3の壁部32は、底部31の表面外周に沿って成形されている。この壁部32の上面は、蓋4との接合領域であり、この接合領域には、蓋4と接合するためのメタライズ層33(例えば、タングステンメタライズ層上にニッケル,金の順でメッキした構成)が設けられている。
【0033】
また、内部空間12におけるベース3(キャビティ)の底部31の対向する隅部(一隅部34と他隅部35)には、水晶振動片2の励振電極61,62それぞれと電気機械的に接合する2つの電極パッド36,37が形成されている。他隅部35に形成された電極パッド37の面積は、一隅部34に形成された電極パッド36の面積より大きい。具体的に、電極パッド36は一隅部34のみに形成され、電極パッド37は他隅部35から中央部38にかけて形成されている。これら電極パッド36,37は、ベース3の外周裏面に形成される外部端子電極(図示省略)にそれぞれ電気機械的に接合され、これら外部端子電極から外部部品や外部機器と接続される。なお、これら外部端子電極と電極パッド36,37とは、タングステン、モリブデン等のメタライズ材料を印刷した後にベース3と一体的に焼成して形成される。そして、外部端子電極と電極パッド36,37とのうち一部のものについては、メタライズ上部にニッケルメッキが形成され、その上部に金メッキが形成されて構成される。なお、ここでいうメッキ形成の工法として、電解メッキ法や無電解メッキ法が挙げられ、以下に述べるメッキ形成の工法も、同様である。
【0034】
蓋4は、図2に示すように、平面視矩形状の一枚板に成形されている。この蓋4は、下面にろう材(図示省略)が形成されている。この蓋4は、シーム溶接やビーム溶接等の手法によりベース3に接合されて、蓋4とベース3とによる水晶振動子1のパッケージ11が構成される。蓋4の平面視の寸法は、3.2mm×2.5mm以下に設定されている。なお、本実施例1では、平面視の寸法が1.6mm×1.2mmに設定された基板を用いる。
【0035】
この蓋4は、4層の熱膨張係数の異なる金属材料から形成されている。具体的に、ベース3との接続面となる蓋4の下面から、ろう材である金錫ろう層、ニッケル層、およびコバール層が順に積層されている。蓋4の下面側が金錫ろう層及びニッケル層であるため、他の層に比べてセラミックからなるベース3との熱接合がし易い。また、これら金錫ろう層及びニッケル層上にコバール層が積層されているので、セラミックからなるベース3との熱膨張率を略同じにしてベース3と蓋4との熱変形を同等にすることが可能となる。なお、熱変形を同等レベルにすることからコバール層の厚みはできるだけ厚く設計されている。この蓋4では、金錫ろう層、ニッケル層、およびコバール層が順に積層されているので、ベース3との接合の際に、金錫ろう層を不活性ガスまたは真空雰囲気の加熱炉で溶融させて内部空間12を気密封止させる。
【0036】
水晶振動片2は、ATカット水晶片の基板21からなり、その外形は、図1,2に示すように、平面視略矩形状の(両主面22,23が略矩形状に形成された)一枚板の直方体となっている。なお、本実施例1では、水晶振動片2の対向する平面視長辺のことを、一側辺24と他側辺25とする。なお、本実施例1では、主面寸法が1.1mm×0.7mmに設定され、厚さ寸法が30μmに設定された基板21を用いる。
【0037】
この水晶振動片2には、振動領域52が構成された振動部51と、外部電極であるベース3の電極パッド36,37(本発明でいう外部)と接合する接合部53とが設けられ、振動部51と接合部53とは一体成形されて基板21が構成される。
【0038】
水晶振動片2の振動部51に、励振を行う一対の励振電極61,62が形成されている。接合部53にベース3の電極パッド36,37と電気機械的に接合する一対の端子電極63,64が形成されている。これら振動部51および接合部53に一対の励振電極61,62を一対の端子電極63,64に引出す引出電極65,66が形成されている。この水晶振動片2では、一対の励振電極61,62が引出電極65,66により引回されて一対の端子電極63,64にそれぞれ電気的に接続されている。
【0039】
一対の励振電極61,62は、基板21の両主面22,23であって振動部51の平面視中央に対向して形成されている。これら一対の励振電極61,62は、例えば、基板21側からクロム、金の順に積層して形成されたCr−Au膜により構成される。これら一対の励振電極61,62の厚さ寸法は、0.1μm〜0.5μmの範囲に設定され、本実施例1では、一対の励振電極61,62の厚さ寸法は0.3μmである。
【0040】
引出電極65,66は、振動部51から接合部53にわたって対向せずに基板21の主面22,23や側面26に形成されている。これら引出電極65,66は、励振電極61,62と同様にして形成され、基板21側からクロム、金の順に積層して形成されたCr−Au膜により構成される。これら引出電極65,66の厚さ寸法は、0.05μm〜0.5μmの範囲に設定され、本実施例1では、引出電極65,66の厚さ寸法は0.3μmである。
【0041】
一対の端子電極63,64は、接合部53の他主面23に形成されている。具体的に、一対の端子電極63,64のうち一端子電極63は、基板21の対向する両側辺24,25のうちの一側辺24であって、接合部53の対向する両端部54,55のうちの一端部54に形成されている。また、他端子電極64は、接合部53の中央部56から他端部55にかけて形成されている。
【0042】
これら一対の端子電極63,64は、ポスト部71と導電性バンプ73と金属部76からなり、ポスト部71上に導電性バンプ73が形成され、導電性バンプ73上に金属部76が形成されて構成される。これら一対の端子電極63,64では、図1,2に示すように、基板21を側面視や平面視して、一対の端子電極63,64の内側(内包)にポスト部71と導電性バンプ73とが配される。つまり、一対の端子電極63,64に対して、ポスト部71や導電性バンプ73は、一回り小さい寸法となっている。
【0043】
ポスト部71は、基板21の材料である水晶をエッチングすることにより、一対の端子電極63,64が形成される位置の基板21が凸状に成形されてなる。このポスト部71の壁面72は、基板21の他主面23に対して垂直方向に延出している。
【0044】
導電性バンプ73は、非流動性部材のメッキバンプであり、クロム、金の順に積層して形成されたCr−Au膜74と、このCr−Au膜74上に積層された金メッキ95とにより構成される。この導電性バンプ73は、図2に示すように、金属部76(励振電極61,62や引出電極65,66)よりも厚みを有し、ポスト部71よりも薄い。
【0045】
金属部76は、一対の端子電極63,64の表面であり、励振電極61,62や引出電極65,66と同一材料のCr−Au膜からなり、引出電極65,66に連続して形成され、図1,2に示すようにポスト部71と導電性バンプ73とを覆う。なお、本実施例1では、クロムの層が40nmであり、金の層が150nmである。
【0046】
また、一対の端子電極63,64では、基板21上における振動部51までの距離が長い端子電極が、基板21上における振動部51までの距離が短い端子電極よりも大きい。具体的に、本実施例1では、他端子電極64が、一端子電極63よりも大きい。
【0047】
また、一対の端子電極63,64では、ポスト部71の厚みが、それ以外(本実施例1では、導電性バンプ73と金属部76)の厚みに対して3倍以上である。
【0048】
上記した一対の端子電極63,64の厚さ寸法は、0.05μm〜0.5μmの範囲に設定され、そのうち、ポスト部71の厚さ寸法は、2μm〜20μmの範囲に設定され、導電性バンプ73と金属部76の合計の厚さ寸法は、0.5μm〜5μmの範囲に設定されている。本実施例1では、ポスト部71の厚みが8μmであり、導電性バンプ73と金属部76との合計の厚みが2μmである。また、一端子部54のポスト部71のアスペクト比は、径(幅)が100μmに対して、高さが10μmとなるので、0.1である。なお、導電性バンプ73と金属部76の合計厚さ寸法が、1μm以上であると、FCB法による接合の信頼性を向上させることができ、本実施例1に示す導電性バンプ73と金属部76の合計厚さ寸法は好適な例である。
【0049】
また、水晶振動片2には、一対の端子電極63,64をベース3の電極パッド36,37に電気機械的に接合する際に基板21に生じる接合応力が、振動領域52に伝わるのを遮断する遮断手段が設けられている。この遮断手段は、一対の端子電極63,64を結ぶ仮想線と直交する仮想直交線上に、振動領域52が配され、振動部51と接合部53との間であって、仮想直交線上に設けられている。
【0050】
具体的に、遮断手段は、振動部51と接合部53との間に設けられ、基板21の他側辺25から一側辺24に向けて切り欠き形成された切り欠き部81である。この切り欠き部81により、一端子電極63が形成された接合部53の一端部54近傍のみにおいて、振動部51と接合部53とが一体成形される。
【0051】
上記した構成からなる水晶振動子1では、図1に示すように、ベース3と水晶振動片2とは一対の端子電極63,64の一構成である導電性バンプ73を介してFCB法により電気機械的に超音波接合される。この接合により、水晶振動片2の励振電極61,62が、引出電極65,66、端子電極63,64、導電性バンプ73を介してベース3の電極パッド36,37に電気機械的に接合される。そして、水晶振動片2が接合されたベース3に、蓋4が接合されて水晶振動片2が気密封止され、水晶振動子1が構成される。
【0052】
次に、上記した水晶振動片2の製造方法について図3〜8を用いて説明する。
【0053】
まず、基板21となるATカット水晶片を水晶インゴット(図示省略)から成形する。具体的に、水晶インゴットから成形し、複数の基板21を分割成形可能なウエハ9の両主面91,92上に、スパッタリングによりクロム、金を順に積層してCr−Au膜93を形成する。ウエハ9の両主面91,92上にCr−Au膜93を形成した後に、Cr−Au膜93上にレジスト層94を形成する(図3参照)。
【0054】
Cr−Au膜93上にレジスト層94を形成した後に、一対の端子電極61,62の導電性バンプ73を形成する位置のレジスト層94を除去して、その位置のCr−Au膜93を露出し、この露出したCr−Au膜93上に金メッキ95をメッキ形成する(図4参照)。この際、レジスト層94の除去を除去して形成され、金メッキ95を形成する孔の深さに対する径のアスペクト比が大きくなると、メッキ液の新液が回り込み難くなるため、メッキの析出レート(メッキ厚みに関連)や形状にばらつきが生じる。
【0055】
Cr−Au膜93上に金メッキ95を形成した後、レジスト層94を全除去し、金メッキ95を積層していない部分のCr−Au膜93を露出する(図5参照)。
【0056】
レジスト層94を全除去した後に、露出したCr−Au膜93をエッチング除去する(図6参照)。なお、このエッチング除去により、Cr−Au膜74と金メッキ75とからなる導電性バンプ73を形成する(以上の工程を、本発明でいう導電性バンプ形成工程)。
【0057】
露出したCr−Au膜93をエッチング除去した後、露出したCr−Au膜93のエッチング除去を行なった部分のウエハ9の基板を所望の深さ(本実施例1では8μm)だけ水晶エッチングし(図7参照)、水晶振動片2のポスト部71を成形する(以上の工程を、本発明でいうポスト部成形工程)。このポスト部成形工程と同時に水晶振動片2の基板21の外周縁や、切り欠き部81もエッチング形成する。なお、水晶振動片2の基板21の外周縁や切り欠き部81は、ポスト部成形工程とは別工程によりエッチング形成してもよい。
【0058】
ポスト部71を成形した後に、ウエハ9の両主面91,92にクロム、金の順にCr−Au膜(図示省略)を形成する。Cr−Au膜を形成した後に、Cr−Au膜の上にレジスト層(図示省略)を形成する。
【0059】
Cr−Au膜上にレジスト層を形成した後に、フォトリソグラフィ法により、水晶振動片2の一対の励振電極61,62と一対の端子電極63,64と引出電極65,66とを電極パターン以外の部分のレジスト層を除去し、このレジスト層の除去により露出したCr−Au膜をエッチング除去する。
【0060】
Cr−Au膜をエッチング除去した後にレジスト層を除去して、一対の励振電極61,62と、一対の端子電極63,64の金属部76と、引出電極65,66とを形成し(図8参照)、電気的に接続された一対の励振電極61,62と、一対の端子電極63,64と、引出電極65,66とを形成する(以上の工程を、本発明でいう端子電極形成工程)。一対の励振電極61,62と、一対の端子電極63,64と、引出電極65,66とを形成した後、ウエハ9から複数の基板2を分割成形し、後の所望の製造工程を終えて複数の水晶振動片2を製造する。
【0061】
上記した本実施例1にかかる水晶振動片2によれば、基板21に振動部51と接合部53とが一体的に設けられ、一対の端子電極63,64にはそれぞれ導電性バンプ73が形成され、一対の端子電極63,64は一対の励振電極61,62にそれぞれ電気的に接続されている。すなわち、水晶振動片2では振動部51と接合部53とが一体成形されている。
【0062】
この本実施例1にかかる水晶振動片2によれば、一対の端子電極63,64を導電性バンプ73を介して外部であるベース3の電極パッド36,37に接合する際に基板21に生じる接合応力が振動領域52に伝わるのを遮断する遮断手段が、振動部51と接合部53との間に設けられているので、接合応力が強い導電性バンプ73を介して当該水晶振動片2をベース3の電極パッド36,37に接合した場合であっても、接合した際に基板21に生じる接合応力が振動領域52に伝わるのを抑制することができる。その結果、水晶振動片2の振動(発振周波数)に影響を与えず接合強度を高めることができる。
【0063】
また、上記した本実施例1にかかる水晶振動片2によれば、一端子電極63は、基板21の一側辺24であって接合部53の一端部54に形成され、遮断手段は、基板21の他側辺25から一側辺24に向かって形成された切り欠き部81であり、一端子電極63が形成された接合部53の一端部54近傍のみにおいて振動部51と接合部53とが一体成形されるので、切り欠き部81により接合した際に基板21に生じる接合応力を接合部53に閉じ込め、接合応力を振動領域52に伝えるのを抑制することができる。
【0064】
また、上記した本実施例1にかかる水晶振動片2によれば、基板21上における振動部51までの距離が長い他端子電極64が、距離が短い一端子電極63よりも大きいので、振動部51までの距離が長い他端子電極64におけるベース3の電極パッド36,37との接合強度を高めながら、一対の端子電極63,64のベース3の電極パッド36,37への電気的接続を安定して行うことができる。
【0065】
また、上記した本実施例1にかかる水晶振動片2によれば、導電性バンプ73はメッキバンプであるので、ベース3の電極パッド36,37との接合の際に導電性バンプ73が拡がる(流れる)ことはなく、電極間のショートを抑えることができる。さらに、導電性バンプ73はメッキバンプであるので、接合強度を高めることができる。
【0066】
また、上記した本実施例1にかかる水晶振動片2によれば、一対の端子電極63,64が形成された位置の基板21が凸状のポスト部71に成形されるので、ベース3の電極パッド36,37と接合するための導電性バンプ73の高さを低くすることができ、導電性バンプ73の高さが高くなることによるバンプ高さ寸法やバンプ形状のバラツキを抑えることができる。特に、一対の端子電極63,64の表面を平坦することができる。その結果、水晶振動片2のベース3の電極パッド36,37への接合(搭載)を安定させることができる。また、ポスト部71を成形することで導電性バンプ73の高さを抑えることができ、導電性バンプ73の量を少なくして製造コストを抑えることができる。
【0067】
また、上記した本実施例1にかかる水晶振動片2によれば、一対の端子電極63,64の内側に導電性バンプ73が形成されるので、導電性バンプ73が一対の端子電極63,64の外にはみ出すことを抑えることができる。
【0068】
また、上記した本実施例1にかかる水晶振動片2によれば、一対の端子電極63,64では、ポスト部71の厚みがそれ以外の厚みに対して3倍以上であるので、一対の端子電極63,64の表面を平坦にするのに好適である。
【0069】
また、上記した本実施例1にかかる水晶振動片2によれば、一対の端子電極63,64の表面は、Cr−Au膜74により形成されているので、ベース3の電極パッド36,37が本実施例に示すようにAuの場合、Au−Au接合が容易に行える。また、一対の端子電極63,64の側面も含めてスパッタリングによる成膜ができるため、一対の端子電極63,64の表面および側面を全てCr−Au膜で覆うことができ、成膜部分においてアンカー効果が期待できる。
【0070】
また、上記した本実施例1にかかる水晶振動片2の製造方法によれば、端子電極形成工程とポスト部成形工程と導電性バンプ形成工程を有し、端子電極形成工程の工程中にポスト部成形工程および導電性バンプ形成工程を行うので、導電性バンプ73およびポスト部71を内包した端子電極63,64を形成することが可能となる。そのため、本発明によれば、ベース3の電極パッド36,37と接合するための導電性バンプ73の高さを低くすることができ、導電性バンプ73の高さが高くなることによるバンプ高さ寸法やバンプ形状のバラツキを抑えることができる。特に、一対の端子電極63,64の表面を平坦にすることができる。その結果、水晶振動片2のベース3の電極パッド36,37への接合(搭載)を安定させることができる。また、ポスト部71を成形することで導電性バンプ73の高さを押さえることができ、導電性バンプ73の量を少なくして製造コストを抑えることができる。
【0071】
なお、本実施例1では、水晶の基板21に用いているが、これは好適な例でありこれに限定されるものではなく、圧電材料であれば他の材料であってもよい。
【0072】
また、本実施例1では、ベース3に水晶振動片2を搭載した水晶振動子1を用いているが、さらにICチップなど他の電子部品を搭載した圧電発振器であってもよい。
【0073】
また、本実施例1では、平板状の水晶振動片2を対象としているが、これは好適な例であり、これに限定されるものでなく、高周波の圧電振動片を対象としてもよい。具体的に、高周波の圧電振動片として、圧電振動片の基板の主面に凹部が形成され、この凹部の内部に励振電極が形成された形態(逆メサ構造)を挙げることができる。
【0074】
また、本実施例1では、励振電極61,62と、端子電極63,64の金属部76と、引き出し電極65,66とは、クロム、金の順に積層して形成されたCr−Au膜からなるが、これに限定されるものではなく、例えば、クロム、金、クロム(Cr−Au−Cr)の順に、あるいはクロム、金、ニッケル(Cr−Au−Ni)の順に、あるいはクロム、銀、クロム(Cr−Ag−Cr)の順に、あるいはクロム、ニッケル(Cr−Ni)の順に、あるいはニッケル、クロム(Ni−Cr)の順に積層して形成されてもよい。
【0075】
また、本実施例1では、図1に示すように、平面視矩形上の一枚板の直方体に成形された蓋4と、凹状に成形されたベース3とを用いているが、これに限定されるものではない。ベースと蓋とにより水晶振動片2を気密封止できれば、ベースとキャップの形状は任意に設定してもよい。例えば、平面視矩形上の一枚板の直方体に成形されたベースと、凹状に成形された蓋とを用いてもよい。
【0076】
また、本実施例1では、図1に示すように、電極パッド36,37が非対称であるベース3を用いたが、これは電気的接続が良好となる好適な例であり、これに限定されるものではなく、図9に示すように電極パッド36,37が対称であるベース3を用いてもよい。
【0077】
また、本実施例1では、平板状の厚みすべり振動系の水晶振動片2を用いているが、これに限定されるものでなく、高周波の厚みすべり振動系の水晶振動片であってもよい。高周波の厚みすべり振動系の水晶振動片の場合、基板の主面に凹部を形成し、この凹部内に励振電極を配した逆メサ構造が好適である。
【0078】
また、本実施例1では、ポスト部71の壁面72が基板21の他主面23に対して垂直方向に延出しているが、これに限定されるものではなく、図10に示すように、ポスト部71の壁面72が基板21の他主面23に対してテーパー状に傾斜して延出形成してもよい。すなわち、ポスト部71の壁面72は、テーパー面を有してもよい。この場合、ポスト部71の強度を高めることができる。また、ポスト部71のエッジが無くなりポスト部71における一対の端子電極63,64の断線を抑制することができる。
【0079】
また、本実施例では、金錫ろう層からなるろう材を用いているが、これは好適な例であり、これに限定されるものではなく、ろう材としてガラス層を用いてもよい。この場合、セラミック材料のベース3の蓋4との封止面(壁部32の上面)にメタライズ層33を設けず、ろう材をベース3との接続面となる蓋4の下面の外周に形成する。そして、ベース3との接合の際に、金錫ろう層を不活性ガスまたは真空雰囲気の加熱炉で溶融させて内部空間12を気密封止させる。この場合、製造コストを抑えながら、実用的な接合強度を得ることができる。
【0080】
また、本実施例では、ベース3にセラミック材料を用いているが、ガラス材料を用いたベース3であってもよい。この場合、ベース3のメタライズ層33は、スパッタリング法あるいは真空蒸着法により形成したクロム、金(Cr−Au)からなる金属層上に、金メッキを積層した構成が好適である。なお、ベース3のメタライズ層33は、クロム、金(Cr−Au)からなる金属層上に、金メッキを積層した構成以外に、チタン、銅(Ti−Cu)からなる金属層上に、ニッケル−金からなるメッキ層を積層した構成や、モリブデン(もしくはタングステン)、金(Mo(W)−Au)からなる金属層上に、金メッキ層を積層した構成などであってもよい。
【実施例2】
【0081】
次に、本実施例2にかかる水晶振動子を図面を用いて説明する。なお、本実施例2にかかる水晶振動子は、上記した実施例1に対して、水晶振動片とベースの形状が異なる。そこで、本実施例2では、上記した実施例1と異なる構成について説明し、同一の構成についての説明を省略する。そのため、同一構成による作用効果及び変形例は、上記した実施例1と同様の作用効果及び変形例を有する。
【0082】
本実施例2にかかる水晶振動子1には、図11に示すように、水晶振動片2とベース3と蓋4(図示省略)が設けられている。
【0083】
次に、この水晶振動子1の各構成について説明する。
【0084】
ベース3は、上記した実施例1の他の例にかかる図9に示す形態と同様の形態である。そのため、ここでの説明は省略する。
【0085】
蓋4は、上記した実施例1にかかる図2に示す形態と同様の形態である。そのため、ここでの説明は省略する。
【0086】
水晶振動片2は、一対の端子電極63,64および引出電極65,66と、遮断手段が、上記した実施例1と異なる構成であり、他の構成は同様の構成となっている。そのため、実施例1と同様の構成の説明は省略する。
【0087】
一対の端子電極63,64は、接合部53の他主面23に形成されている。具体的に、一対の端子電極63,64のうち一端子電極63は、基板21の対向する両側辺24,25のうちの一側辺24であって、接合部53の対向する両端部54,55のうちの一端部54に形成されている。また、他端子電極64は、基板21の他側辺25であって、接合部53の他端部55に形成されている。
【0088】
上記した一対の端子電極63,64の厚さ寸法は、2μm〜30μmの範囲に設定され、そのうち、ポスト部71の厚さ寸法は、1μm〜19μmの範囲に設定され、導電性バンプ73と金属部76の合計の厚さ寸法は、0.5μm〜10μmの範囲に設定されている。なお、本実施例2では、ポスト部71の厚みが8μmであり、導電性バンプ73と金属部76との合計の厚みが2μmである。また、一対の端子電極63,64のポスト部71のアスペクト比は、0.1である。
【0089】
また、水晶振動片2には、一対の端子電極63,64をベース3の電極パッド36,37に電気機械的に接合する際に基板21に生じる接合応力が、振動領域52に伝わるのを遮断する遮断手段が設けられている。この遮断手段は、一対の端子電極63,64を結ぶ仮想線と直交する仮想直交線上に、振動領域52が配され、振動部51と接合部53との間であって、仮想直交線上に設けられている。
【0090】
遮断手段は、振動部51と接合部53との間に設けられ、基板21の一側辺24から内方である他側辺25に向けて切り欠き形成された切り欠き部82と、基板21の他側辺25から内方である一側辺24に向けて切り欠き形成された切り欠き部83と、これら切り欠き部82,83の間に形成された貫通孔84である。これら切り欠き部82,83と貫通孔84により、切り欠き部82と貫通孔84との間と、切り欠き部83と貫通孔84との間とにおいて振動部51と接合部53とが一体成形される。
【0091】
この水晶振動片2では、励振電極61から引出された引出電極65の電極パターンが、切り欠き部82と貫通孔84との間の一主面22に形成され、この引出電極65が接合部53の一端部54に形成された端子電極63に電気的に接続されている。また、励振電極62から引出された引出電極66の電極パターンが、切り欠き部83と貫通孔84との間の他主面23に形成され、この引出電極66が接合部53の他端部55に形成された端子電極64に電気的に接続されている。
【0092】
上記した本実施例2にかかる水晶振動片2によれば、上記した本実施例1と同様の構成を有しているので、本実施例1と同一構成による作用効果は、上記した本実施例1にかかる水晶振動子1と同様に有する。
【0093】
また、上記した本実施例2にかかる水晶振動片2によれば、一対の端子電極63,64は、基板21の両側辺24,25であって接合部53の両端部54,55にそれぞれ形成され、遮断手段は、基板21の両側辺24,25からそれぞれ内方に向かって形成された2つの切り欠き部82,83と、切り欠き部82,83の間に形成された貫通孔84とであるので、2つの切り欠き部82,83と貫通孔84により接合した際に基板に生じる接合応力を接合部53に閉じ込め、基板21に生じる接合応力を振動領域に伝えるのを抑制することができる。具体的に、2つの切り欠き部82,83により接合応力は、2つの切り欠き部82,83の間に集中するが、この集中した接合応力が、貫通孔84により振動領域52に伝播するのを防ぎ、接合応力を接合部53に閉じ込めさせることができる。
【実施例3】
【0094】
次に、本実施例3にかかる水晶振動子を図面を用いて説明する。なお、本実施例3にかかる水晶振動子は、上記した実施例2に対して、水晶振動片とベースの形状が異なる。そこで、本実施例3では、上記した実施例2と異なる構成について説明し、同一の構成についての説明を省略する。そのため、実施例1,2と同一構成による作用効果及び変形例は、上記した実施例1,2と同様の作用効果及び変形例を有する。
【0095】
本実施例3にかかる水晶振動子1には、図12に示すように、水晶振動片2とベース3と蓋4(図示省略)が設けられている。
【0096】
次に、この水晶振動子1の各構成について説明する。
【0097】
水晶振動片2は、一対の端子電極63,64および引出電極65,66と、遮断手段が、上記した実施例1と異なる構成であり、他の構成は同様の構成となっている。そのため、実施例1と同様の構成の説明は省略する。
【0098】
一対の端子電極63,64は、接合部53の他主面23に形成されている。具体的に、一対の端子電極63,64は、ともに、基板21の対向する両側辺24,25のうちの他側辺25であって、接合部53の対向する両端部54,55のうちの他端部55に形成されている。
【0099】
これら一対の端子電極63,64は、振動部51への距離が遠近となるように並設されている。また、一対の端子電極63,64では、一対の端子電極63,64を結ぶ仮想線と直交する仮想直交線上以外の位置に、記振動領域が配されている。
【0100】
また、一対の端子電極63,64では、基板21上における振動部51までの距離が長い端子電極63が、基板21上における振動部51までの距離が短い端子電極64よりも大きい。具体的に、本実施例3では、一端子電極63が、他端子電極64よりも大きい。
【0101】
上記した一対の端子電極63,64の厚さ寸法は、2μm〜30μmの範囲に設定され、そのうち、ポスト部71の厚さ寸法は、1μm〜19μmの範囲に設定され、導電性バンプ73と金属部76の合計の厚さ寸法は、0.5μm〜10μmの範囲に設定されている。なお、本実施例2では、ポスト部71の厚みが8μmであり、導電性バンプ73と金属部76との合計の厚みが2μmである。また、一対の端子電極63,64のポスト部71のアスペクト比は、それぞれ0.1である。
【0102】
ベース3は、電極パッド36,37が、上記した実施例1と異なる構成であり、他の構成は同様の構成となっている。そのため、実施例1と同様の構成の説明は省略する。
【0103】
内部空間12におけるベース3(キャビティ)の底部31の中央部38辺りには、水晶振動片2の励振電極61,62それぞれと電気機械的に接合する2つの電極パッド36,37が形成されている。なお、図12では、2つの電極パッド36,37のうち水晶振動片2によって隠れる部分を二点鎖線により示している。
【0104】
これら電極パッド36,37では、引回しパターンの関係により、電極パッド36の面積は、電極パッド37の面積より大きい。具体的に、電極パッド37は中央部38の平面視右側のみに形成され、電極パッド36は中央部38の平面視左側に形成されるとともに、水晶振動片2の端子電極63の位置に対応して平面視右下側に引回されている。これら電極パッド36,37は、ベース3に水晶振動片2を搭載した際に、水晶振動片2の端子電極63,64および引出電極65,66とそれぞれ重畳しないようにパターン形成されている。
【0105】
蓋4は、上記した実施例1,2にかかる図2に示す形態と同様の形態である。そのため、ここでの説明は省略する。
【0106】
上記した本実施例3にかかる水晶振動片2によれば、上記した本実施例1,2と同様の構成を有しているので、本実施例1,2と同一構成による作用効果は、上記した本実施例1,2にかかる水晶振動子1と同様に有する。
【0107】
また、上記した本実施例1にかかる水晶振動片2によれば、一対の端子電極63,64は基板21の一側辺24であって接合部53の一端部54に形成され、一対の端子電極63,64を結ぶ仮想線と直交する仮想直交線上以外の位置に振動領域が配されるので、接合応力が強い導電性バンプ73を介して水晶振動片2をベース3の電極パッド36,37に接合した場合であっても、接合した際に基板21に生じる接合応力は、振動領域52とは異なる方向に生じるので、接合応力が振動領域52に伝わるのを抑制することができる。その結果、水晶振動片2の振動(発振周波数)に影響を与えず接合強度を高めることができる。
【0108】
また、一対の端子電極63,64は、振動部への距離が遠近となるように並設されるので、一対の端子電極63,64における(入出力の)導電性バンプ73間で発生する導電性バンプ73間の応力を、振動領域52からみて近い導電性バンプ73側で止めることができ、その結果、導電性バンプ73間による応力を振動領域52に対して影響しない構成とすることができる。
【0109】
なお、本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、基板の材料に水晶を用いた圧電振動片に好適である。
【符号の説明】
【0111】
1 水晶振動子
2 水晶振動片
21 基板
22,23 両主面
24 一側辺
25 他側辺
36,37 電極パッド
51 振動部
52 振動領域
53 接合部
54 一端部
55 他端部
56 中央部
61,62 励振電極
63,64 端子電極
65,66 引出電極
71 ポスト部
72 壁面
73 導電性バンプ
74 Cr−Au膜
75 金メッキ
76 金属部
81 切り欠き部
82,83 切り欠き部
84 貫通孔
9 ウエハ
91,92 両主面
93 Cr−Au膜
94 レジスト層
95 金メッキ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動片において、
主面が略矩形に形成された基板に、一対の励振電極が形成されて振動領域が構成された振動部と、外部と接合する一対の端子電極が形成された接合部とが一体的に設けられ、
前記一対の端子電極にはそれぞれ導電性バンプが形成され、前記一対の端子電極は、前記一対の励振電極にそれぞれ電気的に接続され、
前記一対の端子電極を前記導電性バンプを介して外部に接合する際に前記基板に生じる接合応力が前記振動領域に伝わるのを遮断する遮断手段が、前記振動部と前記接合部との間に設けられたことを特徴とする圧電振動片。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電振動片において、
前記一対の端子電極のうち一端子電極は、前記接合部の対向する両端部のうち一端部に形成され、
前記遮断手段は、前記基板の対向する両側辺の他側辺から一側辺に向かって形成された切り欠き部であり、
前記一端子電極が形成された前記接合部の一端部近傍のみにおいて、前記振動部と前記接合部とが一体成形されたことを特徴とする圧電振動片。
【請求項3】
請求項1に記載の圧電振動片において、
前記一対の端子電極は、前記基板の対向する両側辺であって、前記接合部の両端部にそれぞれ形成され、
前記遮断手段は、前記基板の両側辺からそれぞれ内方に向かって形成された2つの切り欠き部と、前記切り欠き部の間に形成された貫通孔とであることを特徴とする圧電振動片。
【請求項4】
圧電振動片において、
主面が略矩形に形成された基板に、一対の励振電極が形成されて振動領域が構成された振動部と、外部と接合する一対の端子電極が形成された接合部とが設けられ、
前記一対の端子電極にはそれぞれ導電性バンプが形成され、前記一対の端子電極は、前記一対の励振電極にそれぞれ電気的に接続され、
前記一対の端子電極は、前記接合部の対向する両端部のうち一端部に形成され、
前記一対の端子電極を結ぶ仮想線と直交する仮想直交線上以外の位置に、前記振動領域が配されたことを特徴とする圧電振動片。
【請求項5】
請求項4に記載の圧電振動片において、
前記一対の端子電極は、前記振動部への距離が遠近となるように並設されたことを特徴とする圧電振動片。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちいずれか1つに記載の圧電振動片において、
前記一対の端子電極では、前記基板上における前記振動部までの距離が長い端子電極が、前記距離が短い端子電極よりも大きいことを特徴とする圧電振動片。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちいずれか1つに記載の圧電振動片において、
前記導電性バンプは、メッキバンプであることを特徴とする圧電振動片。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちいずれか1つに記載の圧電振動片において、
前記一対の端子電極が形成された位置の前記基板が、凸状のポスト部に成形されたことを特徴とする圧電振動片。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−66779(P2011−66779A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217053(P2009−217053)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】