圧電振動素子、圧電振動子、電子デバイス、及び電子機器
【課題】CI値が小さく、近傍のスプリアスを抑圧した高周波の小型圧電振動素子を基本波で実現する。
【解決手段】圧電振動素子1は、矩形の振動領域12、及び支持部13を有する圧電基板10と、励振電極25a、25bと、リード電極27a、27bと、を備えている。支持部13は、第1の支持部14、第2の支持部15、第3の支持部16及び第4の支持部と、を備えている。第2の支持部15は、第2の傾斜部15bと、第2の支持部本体15aと、を備えており、第2の支持部15には、少なくとも一つのスリット20が設けられている。
【解決手段】圧電振動素子1は、矩形の振動領域12、及び支持部13を有する圧電基板10と、励振電極25a、25bと、リード電極27a、27bと、を備えている。支持部13は、第1の支持部14、第2の支持部15、第3の支持部16及び第4の支持部と、を備えている。第2の支持部15は、第2の傾斜部15bと、第2の支持部本体15aと、を備えており、第2の支持部15には、少なくとも一つのスリット20が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚みすべり振動モードを励振する圧電振動子に関し、特に所謂逆メサ型構造を有する圧電振動素子、圧電振動子、電子デバイス、及び圧電振動子を用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ATカット水晶振動子は、励振する主振動の振動モードが厚みすべり振動であり、小型化、高周波数化に適し、且つ周波数温度特性が優れた三次曲線を呈するので、圧電発振器、電子機器等の多方面で使用されている。
特許文献1には、主面の一部に凹陥部を形成して高周波化を図った、所謂逆メサ構造のATカット水晶振動子が開示されている。水晶基板のZ’軸方向の長さが、X軸方向の長さより長い、所謂Z’ロング基板を用いている。
特許文献2には、矩形状の薄肉の振動部の三辺に各々厚肉の支持部が連設され、前記薄肉の振動部の一辺が露出した構造を有する逆メサ構造のATカット水晶振動子が開示されている。更に、水晶振動片は、ATカット水晶基板のX軸とZ’軸を、夫々Y’軸を中心に−120°〜+60°の範囲で回転させてなる面内回転ATカット水晶基板であり、振動領域を確保し、且つ量産性に優れた(多数個取り)構造であるという。
【0003】
特許文献3、4には、矩形状の薄肉の振動部の三辺に各々厚肉の支持部が連設され、前記薄肉の振動部の一辺が露出した構造を有する逆メサ構造のATカット水晶振動子が開示されており、水晶振動片は水晶基板のX軸方向の長さがZ’軸方向の長さより長い、所謂Xロング基板が用いられている。
特許文献5には、矩形状の薄肉の振動部の隣接する二辺に各々厚肉の支持部が連設され、平面視でL字状に厚肉部が設けられ、前記薄肉の振動部の二辺が露出した構造を有する逆メサ構造のATカット水晶振動子が開示されている。水晶基板にはZ’ロング基板が用いられている。
しかしながら、特許文献5においては、L字状の厚肉部を得るために、特許文献5の図1(c)、(d)に記載されているように線分αと、線分βに沿って厚肉部を削除しているが、当該削除はダイシング等の機械加工で削除することを前提としているため、切断面にチッピングやクラック等のダメージを負い、超薄部が破損してしまう問題がある。また、振動領域にスプリアスの原因となる不要振動の発生やCI値の増加等の問題が発生する。
特許文献6には、薄肉の振動部の一辺のみに厚肉の支持部が連設され前記薄肉の振動部の三辺が露出した構造を有する逆メサ構造のATカット水晶振動子が開示されている。
【0004】
特許文献7には、水晶基板の両主面であって表裏面で対向するように凹陥部を形成することにより、高周波化を図った逆メサ構造のATカット振動子が開示されている。水晶基板にはXロング基板が用いられ、凹陥部に形成された振動領域の平坦性が確保された領域に励振電極が設けられ構造が提案されている。
ところで、ATカット水晶振動子の振動領域に励振される厚み滑り振動モードは、弾性定数の異方性により振動変位分布がX軸方向に長径を有する楕円状になることが知られている。特許文献8には、圧電基板の表裏両面に表裏対称に配置された一対のリング状電極を有する厚みすべり振動を励振する圧電振動子が開示されている。リング状電極が対称零次モードのみを励起し、それ以外の非調和高次モードをほとんど励起しないように、リング状電極の外周の径と内周の径との差を設定したものである。
【0005】
特許文献9には、圧電基板、及び圧電基板の表裏に設ける励振電極の形状を、共に長円形状にした圧電振動子が開示されている。
特許文献10には、水晶基板の長手方向(X軸方向)の両端部、及び電極のX軸方向の両端部の形状を共に半楕円状とし、且つ楕円の長軸対短軸の比(長軸/短軸)を、ほぼ1.26とした水晶振動子が開示されている。
特許文献11には、楕円の水晶基板上に楕円の励振電極を形成した水晶振動子が開示されている。長軸対短軸の比は、1.26:1が望ましいが、製造寸法のバラツキ等を考慮すると、1.14〜1.39:1の範囲程度が実用的であるという。
【0006】
特許文献12には、厚みすべり圧電振動子のエネルギー閉じ込め効果をより改善するために、振動部と支持部との間に切り欠きやスリットを設けた構造の圧電振動子が開示されている。
ところで、圧電振動子の小型化を図る際に、接着剤に起因する残留応力により、電気的特性の劣化や周波数エージング特性に不良が生じることがある。特許文献13には、矩形平板状のATカット水晶振動子の振動部と支持部との間に、切り欠きやスリットを設けた水晶振動子が開示されている。このような構造を用いることにより、残留応力が振動領域へ広がるのを抑制できるという。
特許文献14には、マウント歪(応力)を改善(緩和)するために、逆メサ型圧電振動子の振動部と支持部との間に切り欠きやスリットを設けた振動子が開示されている。特許文献15には、逆メサ型圧電振動子の支持部にスリット(貫通孔)を設けることにより、表裏面の電極の導通を確保した圧電振動子が開示されている。
【0007】
特許文献16には、厚みすべり振動モードのATカット水晶振動子の支持部に、スリットを設けることにより、高次輪郭系の不要モードを抑圧した水晶振動子が開示されている。
また、特許文献17には、逆メサ型ATカット水晶振動子の薄肉の振動部と、厚肉の保持部との連設部、即ち傾斜面を有する残渣部に、スリットを設けることにより、スプリアスを抑圧する振動子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−165743公報
【特許文献2】特開2009−164824公報
【特許文献3】特開2006−203700公報
【特許文献4】特開2002−198772公報
【特許文献5】特開2002−033640公報
【特許文献6】特開2001−144578公報
【特許文献7】特開2003−264446公報
【特許文献8】特開平2−079508号公報
【特許文献9】特開平9−246903号公報
【特許文献10】特開2007−158486公報
【特許文献11】特開2007−214941公報
【特許文献12】実開昭61−187116号公報
【特許文献13】特開平9−326667号公報
【特許文献14】特開2009−158999公報
【特許文献15】特開2004−260695公報
【特許文献16】特開2009−188483公報
【特許文献17】特開2003−087087公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、圧電デバイスの小型化、高周波化、並びに高性能化に対する要求は強い。しかしながら、前述のごとき構造の圧電振動子は、主振動のCI値、近接するスプリアスCI値比(=CIs/CIm、ここでCImは主振動のCI値、CIsはスプリアスのCI値で、規格の1例は1.8以上)等が要求を満たせないという問題があることが判明した。
そこで、本発明は上記問題を解決するためになされたもので、高周波化(100〜500MHz帯)を図ると共に、主振動のCI値を低減し、スプリアスCI値比等の電気的要求を満たした圧電振動素子、圧電振動子、電子デバイス、及び本発明の圧電振動子を用いた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0011】
[適用例1]本発明に係る圧電振動素子は、振動領域を含む振動部と、当該振動部と一体化され、前記振動部の厚みよりも厚い支持部と、を有する圧電基板と、前記振動領域に表裏で対向するように配置された一対の励振電極と、を有する圧電振動素子であって、前記支持部は、前記振動部の主面の対向する2つの辺に沿って前記振動部を挟むように夫々設けられた第1の支持部と第2の支持部と、当該第1、第2の支持部の各々の一方の端部を連設する第3の支持部と、前記第1、第2の支持部の各々の他方の端部を連設する第4の支持部と、を備え、前記第1、第2の支持部の表裏の主面は前記振動部の表裏の主面よりも突設され、前記第3の支持部の一方の主面は前記振動部の一方の主面よりも突設され、前記第3の支持部の他方の主面と前記振動部の他方の主面とは同一面であり、前記第4の支持部の一方の主面は前記振動部の他方の主面よりも突設され、前記第4の支持部の他方の主面と前記振動部の一方の主面とは同一面であることを特徴とする圧電振動素子である。
【0012】
この構成によれば、高周波で基本波の圧電振動素子が小型化されると共に、振動領域の支持が強固となり、振動、衝撃等に強い圧電振動素子が得られるという効果がある。更に、スリットを設けることにより、接着・固定に起因する応力の広がりを抑圧することができるので、周波数温度特性、CI温度特性、及び周波数エージング特性に優れ、且つ主振動のCI値が小さく、主振動のCI値に対する近接したスプリアスのCI値の比、即ちCI値比の大きな圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0013】
[適用例2]また圧電振動素子は、前記圧電基板が、水晶の結晶軸である電気軸としてのX軸と、機械軸としてのY軸と、光学軸としてのZ軸と、からなる直交座標系の前記X軸を中心として、前記Z軸を前記Y軸の−Y方向へ所定の角度だけ傾けた軸をZ’軸とし、前記Y軸を前記Z軸の+Z方向へ前記所定の角度だけ傾けた軸をY’軸とし、前記X軸と前記Z’軸に平行な面で構成され、前記Y’軸に平行な方向を厚みとする水晶基板であることを特徴とする適用例1に記載の圧電振動素子である。
【0014】
この構成によれば、要求仕様をより適したカットアングル及び周波数で構成することが可能であり、且つ仕様にそった周波数温度特性を有する高周波基本波圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0015】
[適用例3]また圧電振動素子は、前記第3の支持部の突設部が、前記Z’軸のプラス側にあり、前記第4の支持部の突設部が、前記Z’軸のマイナス側にあることを特徴とする適用例2に記載の圧電振動素子である。
【0016】
この構成によれば、上記突設部により圧電振動素子の耐衝撃性、耐振動性が強化されるという効果がある。
【0017】
[適用例4]また圧電振動素子は、前記第2の支持部が、前記振動部と連設した一方の端縁から他方の端縁に向かって離間するにつれて厚みが増加する第2の傾斜部と、当該第2の傾斜部の前記他方の端縁に連設する第2の支持部本体と、を有することを特徴とする適用例1乃至3のうち何れか一項に圧電振動素子である。
【0018】
この構成によれば、高周波で基本波の圧電振動素子が小型化されると共に、振動部の支持が強固であり、振動、衝撃等に強い圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0019】
[適用例5]また圧電振動素子は、前記第2の支持部には、少なくとも一つのスリットが設けられていることを特徴とする適用例4に記載の圧電振動素子である。
【0020】
この構成によれば、圧電振動素子を接着・固定する際に生じる応力の広がりを抑圧することができるので、周波数温度特性、CI温度特性、及び周波数エージング特性の優れ圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0021】
[適用例6]また圧電振動素子は、前記スリットが、前記第2の傾斜部と前記第2の支持部本体との境界部に沿って前記第2の支持部本体に配置されていることを特徴とする適用例5に記載の圧電振動素子である。
【0022】
この構成によれば、圧電振動素子を接着・固定する際に生じる応力の広がりを抑圧することができるので、周波数温度特性、CI温度特性、及び周波数エージング特性の優れ圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0023】
[適用例7]また圧電振動素子は、前記スリットが、前記第2の傾斜部内に前記振動領域の一辺から離間して配置されていることを特徴とする適用例5に記載の圧電振動素子である。
【0024】
この構成によれば、スリットの形成が容易になり、圧電振動素子を接着・固定する際に生じる応力の広がりを抑圧することができるので、周波数温度特性、及びCI温度特性の優れ圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0025】
[適用例8]また圧電振動素子は、前記スリットが、前記第2の支持部本体に配置された第1のスリットと、前記第2の傾斜部内に前記振動領域の一辺から離間して配置された第2のスリットと、を備えていることを特徴とする適用例5に記載の圧電振動素子である。
【0026】
この構成によれば、第2の支持部に2つのスリットを設けることにより、圧電振動素子を接着・固定する際に生じる応力の広がりを、よりよく抑圧することができるため、周波数再現性、周波数温度特性、CI温度特性、及び周波数エージング特性に優れ圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0027】
[適用例9]また圧電振動素子は、前記第1のスリットが、前記第2の傾斜部と前記第2の支持部本体との境界部に沿って前記第2の支持部本体に配置されていることを特徴とする適用例8に記載の圧電振動素子である。
【0028】
この構成によれば、第1のスリットが第2の傾斜部と第2の支持部本体との境界部に沿って設けられることにより、圧電振動素子を接着・固定する際に生じる応力の広がりを、さらに強く抑圧することができるため、周波数再現性、周波数温度特性、CI温度特性、及び周波数エージング特性に優れ圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0029】
[適用例10]本発明に係る圧電振動子は、適用例1乃至9のうち何れか一項に記載の圧電振動素子と、該圧電振動素子を収容するパッケージと、を備えたことを特徴とする圧電振動子である。
【0030】
この構成によれば、高周波で基本波の圧電振動子が小型化されると共に、接着・固定に起因する応力の抑圧が可能であるため、周波数再現性、周波数温度特性、CI温度特性、及び周波数エージング特性に優れた圧電振動子が得られるという効果がる。更に、主振動のCI値を小さく、主振動のCI値に対する近接したスプリアスのCI値の比、即ちCI値比の大きな圧電振動素子が得られ、且つ容量比の小さな圧電振動子が得られるという効果がある。
【0031】
[適用例11]本発明に係る電子デバイスは、適用例1乃至9のうち何れか一項に記載の圧電振動素子と、電子部品と、をパッケージに備えたことを特徴とする電子デバイスである。
【0032】
この構成によれば、客先の要求に基づいて電子デバイスを選定することにより、本発明の圧電振動素子の特徴を生かせることができ、例えば周波数再現性、周波数温度特性、エージング特性が優れ、小型で且つ高周波(例えば490MHz帯)の電子デバイスが得られるという効果がある。
【0033】
[適用例12]また電子デバイスは、前記電子部品は、可変容量素子、サーミスタ、インダクタ、コンデンサーのうちの何れかであることを特徴とする適用例11に記載の電子デバイスである。
【0034】
以上のように、可変容量素子、サーミスタ、インダクタ、コンデンサーのうちの何れかを用いて電子デバイス(圧電デバイス)を構成すると、要求仕様により適した電子デバイスが、小型で且つ低コストで実現できるという効果がある。
【0035】
[適用例13]また電子デバイスは、前記圧電振動素子を励振する発振回路を前記パッケージに備えたことを特徴とする適用例11又は12に記載の電子デバイスである。
【0036】
この構成によれば、圧電発振器、温度補償型圧電発振器、及び電圧制御型圧電発振器等の電子デバイスを、基本波で且つ高周波で構成することが可能となる。また、電圧制御型圧電発振器を構成すると、周波数再現性、エージング特性が優れ、基本波を用いるため周波数可変範囲も広く、且つS/N比(信号雑音比)の良好な電子デバイスが得られるという効果がある。
【0037】
[適用例14]本発明に係る電子機器は、適用例10に記載の圧電振動子を備えたことを特徴とする電子機器である。
【0038】
この構成によれば、本発明の圧電振動子を電子機器の用いることにより、高周波で周波数安定度に優れ、S/N比の良好な基準周波数源を備えた電子機器が構成できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】第1の実施形態例の圧電振動素子1の構造を示した概略図であり、(a)は平面図であり、(b)はP−P断面を+X軸方向からみた断面図であり、(c)はQ−Q断面を−Z’方向からみた断面図。
【図2】ATカット水晶基板と結晶軸との関係を説明する図。
【図3】圧電振動素子の変形例の構成を示す平面図。
【図4】圧電振動素子の他の変形例の構成を示す平面図。
【図5】第2の実施形態例の圧電振動素子2の構造を示した概略図であり、(a)は平面図であり、(b)はP−P断面を+X軸方向からみた断面図であり、(c)はQ−Q断面を−Z’方向からみた断面図。
【図6】第3の実施形態例の圧電振動素子3の構造を示した概略図であり、(a)は平面図であり、(b)はP−P断面を+X軸方向からみた断面図であり、(c)はQ−Q断面を−Z’方向からみた断面図。
【図7】(a)及び(b)は、第3の実施形態例の変形例の構成を示す平面図。
【図8】本発明の圧電基板の製作工程を示す製作工程図。
【図9】本発明の圧電振動素子の励振電極及びリード電極の製作工程図。
【図10】(a)は圧電ウェハーに形成された凹陥部の平面図であり、(b)〜(e)は凹陥部及び溝部のX軸方向の一断面の切り口(切断面)を説明する図。
【図11】(a)は圧電ウェハーに形成された凹陥部の平面図であり、(b)〜(e)は凹陥部及び溝部のZ’軸方向の一断面の切り口を説明する断面図。
【図12】(a)は第1の実施形態例の圧電振動素子1の構成を示す斜視図、(b)は図1のQ−Q断面の詳細切り口図。
【図13】第4の実施形態例の圧電振動素子のQ−Q断面の切断面を示す図。
【図14】本発明に係る圧電振動子5の構成を示す図であって、(a)は縦断面図であり、(b)は蓋部を除いた平面図。
【図15】圧電振動子5の変形例の構成を示す図であって、(a)は縦断面図であり、(b)は蓋部を除いた平面図。
【図16】本発明に係る電子デバイス(圧電デバイス)6の縦断面図。
【図17】本発明に係る電子デバイス(圧電デバイス)7の、(a)は縦断面図であり、(b)は平面図。
【図18】電子デバイス7の変形例の縦断面図。
【図19】電子機器の模式図。
【図20】(a)〜(c)は、本発明に係る圧電基板の変形例の斜視図。
【図21】(a)〜(c)は、本発明に係る圧電基板の変形例の斜視図。
【図22】本発明に係る圧電振動素子1の変形例であり、(a)は平面図であり、(b)は要部の拡大図であり、(c)はその断面図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る圧電振動素子の構成を示す概略図である。同図(a)は平面図であり、(b)はP−P断面を+X軸方向からみた断面図であり、(c)はQ−Q断面を+Z’方向からみた断面図である。
圧電振動素子1は、薄肉の振動領域12、及び振動領域12に連設された厚肉支持部13を有する圧電基板10と、振動領域12の両主面に夫々対向して形成された励振電極25a、25bと、励振電極25a、25bから夫々厚肉部支持部13に延長形成されたリード電極27a、27bと、リード電極27a、27bの夫々の終端に接続されたパッド電極29a、29bと、を備えている。ここで、振動領域とは振動エネルギーが閉じ込められている領域、即ち振動エネルギーがほぼ零となる領域の内側を言い、X軸方向の振動領域の寸法と、Z’軸方向の振動領域の寸法との比は周知のように、1.26:1である。また、振動部とは振動領域とその周縁部とを含んだ圧電基板全体をいう。
【0041】
圧電基板10は、矩形で且つ薄肉平板状の振動領域の振動部12と、振動部12周縁の四辺に沿って一体化された四角い環状の厚肉支持部13と、を備えている。
厚肉支持部13は、振動領域12の主面の対向する2つの辺12a、12bに沿って両主面側に夫々突設された第1の支持部14、及び第2の支持部15と、振動領域12の一方の主面側(表面側)において第1及び第2の支持部14、15の夫々の一端部間を連設し且つ該表面側のみに突設された第3の支持部16と、第3の支持部16と対向する振動領域12の他辺12dの他方の主面側(裏面側)に沿って突設された第4の支持部17と、を備えている。前記2つの辺12a、12bは前記振動領域12を挟んで平行に配置された辺を言う。
【0042】
第1の支持部14は、薄肉平板状の振動領域12の一辺12aに連設し、両主面側に夫々突設されている。また、振動領域12の一辺12aから離間するにつれて厚みが漸増する第1の傾斜部14bと、第1の傾斜部14bの他端縁に連設する厚肉四角柱状の第1の支持部本体14aと、を備えている。つまり、図1(c)に示すように、第1の支持部14は、振動領域12の両主面(表面、及び裏面)に突設して形成されている。
同様に、第2の支持部15は、薄肉平板状の振動領域12の一辺12bに連設し、両主面に夫々突設されている。振動領域12の一辺12bから外側へ離間するにつれて厚みが漸増する第2の傾斜部15bと、第2の傾斜部15bの他端縁に連設する厚肉四角柱状の第2の支持部本体15aと、を備えている。つまり、第2の支持部15は、図1(c)に示すように、振動領域12の主面の両面(表面、及び裏面)に突設して形成されている。尚、支持部本体(第1、及び第2の支持部本体14a、15a等)とは、Y’軸に平行な厚みが一定の領域をいう。
【0043】
第3の支持部16は、薄肉平板状の振動領域12の表面側において、振動領域12の一辺12cに連設し、一辺12cから外側へ離間するにつれて厚みが漸増する第3の傾斜部16bと、第3の傾斜部16bの他端縁に連設する厚肉四角柱状の第3の支持部本体16aと、を備えている。つまり、第3の支持部16の一方の主面は、振動領域12の一方の主面(表面)よりも突設して形成されている。そして、前記第3の支持部16の他方の主面と前記振動部の他方の主面とは連続的に連接されており、同一面となるよう構成されている。なお、振動領域にメサ上の突出したエネルギー閉じ込め領域がある場合についても、振動領域の周縁部の主面が前記前記第3の支持部の他方の主面と連続的に連接されており、同一面となるように構成されていればよい。
第4の支持部17は、薄肉の振動領域12の裏面側において、第3の支持部16と対向するように振動領域12の一辺12dに連設し、振動領域12の一辺12dから離間するにつれて厚みが漸増する第4の傾斜部17bと、第4の傾斜部17bの他端縁に連設する厚肉四角柱状の第4の支持部本体17aと、を備えている。また、第4の支持部17は、振動領域の裏面側において第1の支持部14と第2の支持部15の他端部間を連接している。つまり、第4の支持部17の一方の主面は、振動領域12の他方の主面(裏面)よりも突設して形成されている。そして、前記第4の支持部17の他方の主面と前記振動部の一方の主面とは連続的に連接されており、同一面となるよう構成されている。なお、振動領域にメサ上の突出したエネルギー閉じ込め領域がある場合についても、振動領域の周縁部の主面が前記前記第4の支持部17の他方の主面と連続的に連接されており、同一面となるように構成されていればよい。
第3の支持部16と第4の支持部17とは、振動領域12の中点に対して点対称の関係にあり、第1、第2、第3及び第4の支持部は夫々の端部が連結されて、四角い環状を形成し、その中央部に振動領域12を保持している。
【0044】
略四角形の振動領域12は、その周縁の四辺を第1、第2、第3、及び第4の支持部14、15、16、17に包囲されている。つまり、矩形平板状の圧電基板の両主面からエッチングを進め、両主面に対向する2つの凹陥部を形成し、小型化を図るため不要な部位をカットして、薄肉の振動領域12を形成している。
更に、圧電基板10は、第2の支持部15に少なくとも一つの応力緩和用のスリット20が貫通形成されている。図1に示した実施形態例では、スリット20は第2の傾斜部16bと第2の支持部本体16aとの境界部(連接部)に沿って第2の支持部本体16aの面内に形成されている。
このように、スリット20を第2の支持本体15aの前記境界部(連接部)へ寄せて配置したので、第2の支持部本体15aの被支持部(パッド電極)29aの面積を広く確保することができ、塗布する導電性接着剤の径を大きくすることができる。これに対して、スリット20が第2の支持本体15aの被支持部(パッド電極)29a寄りに配置されると、被支持部(パッド電極)29aの面積が狭くなり、導電性接着剤の径を小さくしなければならない。その結果、導電性接着剤内に含まれる導電フィラーの絶対量も減り、導電性が悪化し、圧電振動素子1の共振周波数が安定しなくなり周波数変動(通称、F飛び)が発生しやすくなる虞がある。
従って、スリット20は第2の支持本体15aの前記境界部(連接部)へ寄せて配置することが好ましい。
なお、第1、及び第2の支持本体14a、15a夫々の一方の面(表面)と、第3の支持本体16aの一方の面(表面)とは同一平面上にあり、第1、第2の支持本体14a、15a夫々の他方の面(裏面)と、第4の支持本体17aの面(裏面)とは同一平面上にある。
【0045】
水晶等の圧電材料は三方晶系に属し、図2に示すように互いに直交する結晶軸X、Y、Zを有する。X軸、Y軸、Z軸は、夫々電気軸、機械軸、光学軸と呼称される。ATカット水晶基板10は、XZ面をX軸の回りに角度θだけ回転させた平面に沿って、水晶から切り出された平板である。ATカット水晶基板10の場合は、θは略35°15′である。なお、Y軸及びZ軸もX軸の周りにθ回転させて、夫々Y’軸、及びZ’軸とする。従って、ATカット水晶基板10は、直交する結晶軸X、Y’、Z’を有する。ATカット水晶基板10は、厚み方向がY’軸であって、Y’軸に直交するXZ’面(X軸及びZ’軸を含む面)が主面であり、厚みすべり振動が主振動として励振される。
【0046】
圧電基板10の一例は、図2に示すようにX軸(電気軸)、Y軸(機械軸)、Z軸(光学軸)からなる直交座標系のX軸を中心として、Z軸をY軸の−Y方向へ傾けた軸をZ’軸とし、Y軸をZ軸の+Z方向へ傾けた軸をY’軸とし、X軸とZ’軸に平行な面で構成され、Y’軸に平行な方向を厚みとするATカット水晶基板である。
尚、本発明に係る圧電基板は、前記角度θが略35°15′のATカットに限定されるものではなく、厚みすべり振動を励振するBTカット、等の圧電基板にも広く適用できるのは言うまでもない。
【0047】
圧電基板10は、図1(a)に示すように、Y’軸に平行な方向(以下、「Y’軸方向」という)を厚み方向として、X軸に平行な方向(以下、「X軸方向」という)を長辺とし、Z’軸に平行な方向(以下、「Z’軸方向」という)を短辺とする矩形の形状を有する。
圧電基板10を駆動する励振電極25a、25bは、図1に示す実施形態例では四角形状であり、振動領域12のほぼ中央部の表裏両面に対向して形成されている。図1(b)に示すように、裏面側の励振電極25bの面積は、表面側の励振電極25aの面積に対し、十分に大きく設定する。これは、励振電極の質量効果によるエネルギー閉じ込め係数を、必要以上に大きくしないためである。つまり、裏面側の励振電極25bの面積を十分に大きくすることにより、プレートバック量Δ(=(fs−fe)/fs、ここでfsは圧電基板のカットオフ周波数、feは圧電基板全面に励振電極を付着した場合の周波数)は、表面側の励振電極25aの質量効果のみに依存する。
【0048】
励振電極25a、25bは、蒸着装置、あるいはスパッター装置等を用いて、下地にニッケル(Ni)を成膜し、その上に金(Au)を重ねて成膜する。金(Au)の厚さは、オーミックロスが大きくならない範囲で、主振動のみを閉じ込めモード(S0)とし、斜対称インハーモニックモード(A0、A1・・)及び対称インハーモニックモード(S1、S3・・)を、閉じ込めモードとしないことが望ましい。しかし、例えば490MHz帯の圧電振動素子では、電極膜厚のオーミックロスを避けるように成膜すると、低次のインハーモニックモードがある程度、閉じ込められることは避けられない。
表面側に形成した励振電極25aは、振動領域12上から第3の傾斜部16bと、第3の支持部本体16aとを経由するリード電極27aにより、第2の支持部本体15aの表面に形成されたパッド電極29aに導通接続されている。また、裏面側に形成された励振電極25bは、振動領域12上から第4の傾斜部17bと、第4の支持部本体17aとを経由するリード電極27bにより、第2の支持部本体15aの裏面に形成されたパッド電極29bに導通接続されている。
【0049】
図1(a)に示した実施形態例は、リード電極27a、27bの引出し構造の一例であり、リード電極27aは他の支持部を経由してもよい。ただ、リード電極27a、27bの長さは最短であることが望ましく、リード電極27a、27b同志が交差しないように配慮することにより、静電容量の増加を抑えることが望ましい。静電容量の増加は圧電振動素子1の容量比γ(直列容量(モーショナルキャパシタンス)C1の対する並列容量(静電容量)C0の比)を悪化させる。
また、図1の実施形態例では、圧電基板10の表裏両面に近接して夫々パッド電極29a、29bを形成する例を示した。圧電振動素子1をパッケージに収容する際に、圧電振動素子1を裏返し、パッド電極29aを固定し、パッド電極29bと、パッケージの電極端子とをボンディングワイヤーで接続する。このように支持する部位が一点になると、導電性接着剤に起因して生じる応力を小さくすることが可能である。
また、圧電振動素子1のパッド電極29a、29bを、上記例よりも大きな間隔をあけて形成してもよい。
【0050】
振動領域12と、圧電振動素子1の被支持部であるパッド電極29a、29bとの間にスリット20を設ける理由は、導電性接着剤の硬化時に発生する応力の広がりを防止することにある。
即ち、導電性接着剤を用いて圧電振動素子のパッド電極をパッケージに支持する場合には、まず第2の支持部本体15aの被支持部(パッド電極)29aに導電性接着剤を塗布し、これを反転してパッケージ等の素子搭載パッドに載置し、少し押さえる。導電性接着剤を硬化させるために高温の炉内に所定の時間保持する。高温状態では第2の支持部本体16a、及びパッケージも共に膨張し、接着剤も一時的に軟化するので、被支持部(パッド電極)29aには応力は生じない。導電性接着剤が硬化した後、第2の支持部本体16a、及びパッケージが冷却してその温度が常温(25℃)に戻ると、導電性接着剤、パッケージ、及び第2の支持部本体16aの各線膨張係数の差により、硬化した道電性接着剤から生じる応力が被支持部(パッド電極)29aに伝わり、更に第2の支持部本体16aから第1及び第3の支持部14、18、振動領域12へと広がる。この応力の広がりを防止するために応力緩和用のスリット20を設けている。
【0051】
スリット20の形成部位と圧電基板10に生じる応力(∝歪)分布との関係は、有限要素法を用いたシミュレーションで解析するのが一般的である。振動領域12における応力が少ない程、周波数温度特性、周波数再現性、周波数エージング特性の優れた圧電振動素子が得られる。
導電性接着剤としては、シリコーン系、エポキシ系、ポリイミド系、ビスマレイミド系等があるが、圧電振動素子1の脱ガスによる周波数経年変化を考慮に入れて、ポリイミド系の導電性接着剤を用いる。ポリイミド系の導電性接着剤は硬いので、圧電振動素子1を離れた二カ所で支持するよりも一カ所で支持する方が、発生する応力の大きさを低減できる。目標とする490MHz帯の電圧制御型圧電発振器(Voltage Controlled Crystal Oscillator:VCXO)用の圧電振動素子1には、一カ所支持を用いた。
つまり、パッド電極29aに導電性接着を塗布し、反転して収容するパッケージの素子搭載パッドに載置し、乾燥して固定・接続し、他方のパッド電極29bにはボンディングワイヤーを用いて導通・接続することにした。図1(a)に示すように、パッド電極29aと、パッド電極29bとは、ほぼ対向して形成されているので、一カ所支持となる。
【0052】
図1に示した圧電基板10は、X軸方向の長さがZ’軸方向の長さより長い、所謂Xロングとした。これは周知のように、ATカット水晶基板のX軸方向の両端に力を加えたときの周波周変化と、Z’軸方向の両端に同じ力を加えたときの周波周変化と、を比べると、Z’軸方向の両端に力を加えたときの方が周波周変化が小さい。つまり、支持点はZ’軸方向に沿って設ける方が、応力による周波数変化は小さくなり、圧電振動素子としては好ましい。
また、図1に示した実施形態例では、薄肉の振動領域12は文字通り矩形をしているが、薄肉の振動領域12の第3の支持部16に連接する一辺12cの両端部に相当する両角隅部が面取りされていてもよい。
【0053】
図1の実施形態例では、励振電極25a、25bの形状として四角形、つまり正方形、または矩形(X軸方向を長辺とする)の例を示したが、本発明の圧電指導素子1に用いる励振電極は、これに限定する必要はない。図3に示す実施形態例は、図中表面側の励振電極25aが円形であり、図中裏面側の励振電極25bは、励振電極25aより十分に大きな四角形である。なお、裏面側の励振電極25bも十分に大きな円形であってもよい。
図4に示す実施形態例は、図中表面側の励振電極25aが楕円形であり、図中裏面側の励振電極25bは、励振電極25aより十分に面積が大きい四角形である。弾性定数の異方性によりX軸方向の変位分布と、Z’軸方向の変位分とが異なり、変位分布をX−Z’平面に平行な面で切った切断面は、楕円形になる。そのため、楕円形状の励振電極25aを用いた場合が最も効率よく、圧電振動素子1を駆動できる。即ち、圧電振動素子1の容量比γ(=C0/C1、ここで、C0は静電容量、C1は直列共振容量)を最小にできる。
また、励振電極25aは長円形であってもよい。
【0054】
図5は、第2の実施形態に係る圧電振動素子2の構成を示す概略図である。図5(a)は圧電振動素子2の平面図であり、同図(b)はP−P断面を+X軸方向からみた断面図であり、同図(c)はQ−Q断面を−Z’軸方向からみた断面図である。
圧電振動素子2が図1に示す圧電振動素子1と異なる点は、応力緩和用のスリット20を設ける位置にある。本実施例では、スリット20が薄肉の振動領域12の一辺12bより離間した第2の傾斜部15b内に形成されている。振動領域12の一辺12bに沿って、スリット20の一方の端縁が、辺12bに接するように第2の傾斜部15b内にスリット20を形成するのではなく、第2の傾斜部15bの両端縁より離間してスリット20を設けている。つまり第2の傾斜部15bには、振動領域12の一辺12bの端縁と連接する極細の細片15b’が残されている。換言すれば、一辺12aとスリット20との間に極細の細片15b’が形成されている。
【0055】
極細の傾斜部15b’を残した理由は次の通りである。即ち、振動領域12に励振電極25a、25bを形成して高周波電圧を印加し励振すると、主振動(S0)の他にインハーモニックモード(A0、S1、A1、S2・)が励振される。望ましいのは主振動(S0)モードのみを閉じ込めモードとし、他のインハーモニックモードは伝搬モード(非閉じ込めモード)とすることである。しかし、振動領域12が薄く成り、その基本波周波数が数百MHzとなると、電極膜のオーミックロスを避けるため、励振電極の膜厚を所定の厚さ以上にする必要がある。このため、プレートバック量が大きくなり、主振動に近接したインハーモニックモードがエネルギー閉じ込めモードになる。この低次のインハーモニックモードの振幅の大きさ(CI値に比例)を抑制するには、インハーモニックモードの定在波が成り立つ条件を妨げるようにすればよい。つまり、図5の振動領域12のZ’軸方向の両端縁の形状は点対称であり、またX軸方向の両端縁の形状も極細の細片15b’を残したことにより非対称となり、低次のインハーモニックモード定在波の振幅を抑えることができる。
【0056】
図6は、第3の実施形態に係る圧電振動素子3の構成を示す概略図である。図6(a)は圧電振動素子3の平面図であり、同図(b)はP−P断面を+X軸方向からみた断面図であり、同図(c)はQ−Q断面を−Z’軸方向からみた断面図である。
圧電振動素子3が図1に示す圧電振動素子1と異なる点は、第2の支持部15に2個の応力緩和用のスリットが並行に設けられている点である。即ち、第2の支持部本体15aの面内に第1のスリット20aが設けられると共に、第2の傾斜部15bの面内に第2のスリット20bが形成されている。第2の支持部本体15aの面内、及び第2の傾斜部15bの面内に夫々個別のスリットを形成することは、既に説明したので、ここでは省略する。
図6(a)に示す平面図のように、第1のスリット20a、及び第2のスリット20bを単にX軸方向に並置するのではなく、図7(a)の平面図に示すように、Z’軸方向に互い違いになるようにずらして配置してもよい。2個のスリット20a、20bを設けた圧電振動素子3の方が、導電性接着剤に起因して生じる応力を、振動領域12まで広げないように抑圧する効果を高めることが可能である。また、図7(b)に示す変形例の構成は、図1、図6に夫々示すスリット20の効果を合わせ持つようにした圧電振動素子であり、スリット20は、第2の傾斜部15bと第2の支持本体15aとに跨って構成されている。
【0057】
図8は、圧電基板10の両面に凹陥部11、11’を形成すると共に、圧電基板10の外形及びスリット20の形成に係る製造工程フローチャートである。ここでは、圧電ウェハーとして水晶ウェハーを例にし、断面図は断面のみを示す。工程S1では、両面がポリッシュ加工された所定の厚さ、例えば80μmの水晶ウェハー10Wを、十分に洗浄し、乾燥した後、表裏面にスパッタリング等により、クロム(Cr)を下地にし、その上に金(Au)を積層した金属膜(耐蝕膜)Mを夫々成膜する。
工程S2では、表裏面の金属膜Mの上に夫々フォトレジスト膜(レジスト膜と称す)Rを両面に塗布する。工程S3では、露光装置とマスクパターンを用いて、表裏面の凹陥部に相当する部位のレジスト膜Rを露光する。感光したレジスト膜Rを現像して感光したレジスト膜を剥離すると、表裏面の凹陥部に相当する位置の金属膜Mが夫々露出する。夫々のレジスト膜Rから露出した各金層膜Mを王水等の溶液を用いて溶かして除去すると、表裏面の凹陥部に相当する位置の水晶面が露出する。
【0058】
工程S4では、露出した水晶面をフッ化水素酸(フッ酸)とフッ化アンモニウムとの混合液を用いて、所望の厚さになるまで表裏面からエッチングする。工程S5では、所定の溶液を用いて両面のレジスト膜Rを剥離し、更に露出した両面の金属膜Mを王水等を用いて除去する。この段階で水晶ウェハー10Wは、両主面に夫々少しずれて凹陥部11、11’が形成され、夫々が格子状に規則的に並んだ状態となる。工程S6では、工程S5で得られた水晶ウェハー10Wの両面に金属膜M(Cr+Au)を成膜する。工程S7では、工程S6で形成された金属膜M(Cr+Au)の両面に夫々レジスト膜Rを塗布する。
工程S8では、露光装置と所定のマスクパターンを用いて、圧電基板10の外形とスリット(図示せず)とに相当する部位の各レジスト膜Rを表裏両面から感光し、現像して、各レジスト膜Rを剥離する。更に、露出した金属膜Mを王水等の溶液で溶かして除去する。
【0059】
工程S9では露出した水晶面をフッ化水素酸(フッ酸)とフッ化アンモニウムとの混合液を用いてエッチングし、圧電基板10の外形とスリット(図示せず)を形成する。工程S10では、残ったレジスト膜Rを剥離し、露出した余分の金属膜Mを溶かして除去する。この段階では水晶ウェハー10Wは、圧電基板10が支持細片で連接し、格子状に規則的に並んだ状態となる。本発明の特徴は、工程S10に示すように、圧電基板の両主面に夫々凹陥部11、11’が形成されて振動領域12となり、振動領域12に連設された第3及び第4の支持部16、17が、圧電基板10の中心に対して点対称に形成されていることである。
工程S10が終了した後、水晶ウェハー10Wに格子状に規則的に並んだ各圧電基板10の振動領域12の厚さを、例えば光学的手法を用いて計測する。計測した各振動領域12の厚さが所定の厚さより厚い場合には、夫々厚さの微調整を行って所定の厚さの範囲に入るようにする。
【0060】
水晶ウェハー10Wに形成された各圧電基板10の振動領域12の厚さを、所定の厚さの範囲内に調整した後、各圧電基板10に励振電極25a、25b、及びリード電極27a、27bを形成する手順を図9に示す製造工程フローチャートを用いて説明する。工程S11では、水晶ウェハー10Wの表裏全面にスパッタリング等でニッケル(Ni)薄膜を成膜し、その上に金(Au)薄膜を積層して、金属膜Mを成膜する。次に工程S12では、金属膜Mの上に夫々レジストを塗布しレジスト膜Rを成膜する。工程S13では、マスクパターンMkを用いて励振電極25a、25b、及びリード電極27a、27bに相当する部位のレジスト膜Rを露光する。工程S14では、感光したレジスト膜Rを現像して不要のレジスト膜Rを溶液を用いて剥離する。次に、レジスト膜Rが剥離して露出した金属膜Mを王水等の溶液で溶かして除去する。工程S15では、金属膜M上に残った不要のレジスト膜Rを剥離すると、各圧電基板10上には励振電極25a、25b、及びリード電極27a、27b等が形成されている。水晶ウェハー10Wに連接するハーフエッチングされた支持細片を折り取りすることにより、分割された圧電振動素子1が得られる。
【0061】
ところで、水晶をウェットエッチングすると、Z軸に沿ってエッチングが進行していくが、各結晶軸の方向に応じてエッチングの速度が変わるという水晶特有のエッチング異方性を有している。従って、このエッチングの異方性により現出するエッチング面は、各結晶軸の方向に応じて違いが現れることは、これまでエッチング異方性を研究テーマにした数多くの学術論文や先行特許文献において論じられてきた。このような背景があるにもかかわらず、水晶のエッチング異方性について明確に系統立てられた資料がない。小型圧電振動素子を製作するには、今後ますますナノ加工技術が必要とされる。しかしながら、エッチングの諸条件(エッチング溶液の種類や、エッチングレート、エッチング温度、等)の違いによるものなのか、文献によっては、現出する結晶面に相異があるものも多々見受けられるのが現状である。
そこで、本発明者は、本発明に係る圧電振動素子をフォトリソグラフィー技法と、ウェットエッチング技法とを用いて製造するに当たり、エッチングシミュレーションと、試作実験、並びにナノレベルでの表面分析と、観察とを繰り返し、本発明に係る圧電振動子は以下の態様となることが判明したので、以下詳細に説明をする。
【0062】
図10、図11は、エッチングにより形成される、ATカット水晶ウェハー10Wの両面の凹陥部11、11’の断面形状を説明する図である。図10(a)は、図8の工程S5における水晶ウェハー10Wの平面図である。この段階では、水晶ウェハー10Wの上下両面に凹陥部11、11’が格子状で且つ規則的に形成されている。図10(b)は、X軸方向の切断面(切り口)であり、上側の凹陥部11、及び下側の凹陥部11’の各壁面は垂直の壁面ではなく傾斜壁面を呈している。つまり、上側の凹陥部11の−X軸方向の壁面は傾斜壁面X1を形成し、+X軸方向の壁面は傾斜壁面X2を形成している。また、下側の凹陥部11’の−X軸方向の壁面は傾斜壁面X2を形成し、+X軸方向の壁面は傾斜壁面X1を形成している。各傾斜壁面は振動領域12の中心に対し点対称にエッチングされる。このように、エッチングの進行は結晶軸方向に異方性を有するので、エッチング用開口部は上下面で少しずらして配置するのが一般的である。
【0063】
図10(c)〜(e)は、凹陥部11、11’の壁面X1、X2、及び溝部の壁面X3の拡大図である。上側の凹陥部11の−X軸方向の傾斜壁面X1は、図10(c)に示すように、水晶ウェハー10Wの平面に対し略62度の傾斜でエッチングされる。また、+X軸方向の傾斜壁面X2は、水晶ウェハー10Wの平面に対し直交(90度)して少しエッチングが進むが、その後は緩やかな傾斜でエッチングが進行する。下側の凹陥部11’の−X軸方向の壁面は、傾斜壁面X2となり、−X軸方向の壁面は傾斜壁面X1となる。つまり、上側の凹陥部11の傾斜壁面と、下側の凹陥部11’の傾斜壁面とは、振動領域12の中心に対し点対称の関係にある。
上側の凹陥部11の底面と、下側の凹陥部11’との底面により形成される振動領域12の両面は、水晶ウェハーの元の平面と平行にエッチングされる。つまり、振動領域12は表裏面が平行な平板状となる。
【0064】
図10(d)は、圧電基板10の外形、及びスリット20を示す断面図である。図8の工程S9のエッチング工程で外形、及びスリット20が形成され、−X軸方向(図中左方)の端部に、第1の支持部本体14a、及び第1の傾斜部14bからなる第1の支持部14が形成され、+X軸方向(図中左右方)の端部に、第2の支持部本体15a、及び第2の傾斜部15bからなる第2の支持部15が形成される。第2の支持部本体15aの面内にはスリット20が形成されている。
図10(e)は、水晶ウェハー10Wに形成した折り取り用の溝部の断面図で、図8の工程S9におけるエッチング工程で形成される。X軸に直交して形成された溝部の断面は楔型を呈している。これは基板10の上側の溝部の壁面X3が、−X軸方向の壁面X1と、+X軸方向の壁面X2とで形成されるために、楔型となるのである。基板10の下側の溝部は、ほぼ振動領域12の中心に関し、上側の溝と点対称に形成される。
凹陥部11、11’が形成された面に電極を設ける場合は、+X軸方向に形成される壁面X2の垂直の壁面に注意する必要がある。電極膜の断裂が起り易いので避ける方が望ましい。
【0065】
図11は、圧電基板10に形成された表側、及び裏側凹陥部11、11’の、特にZ’軸方向の断面図の壁面を説明する図である。図11(a)は、図8の工程S5における水晶ウェハー10Wの平面図である。図11(b)は、水晶ウェハー10Wの上側凹陥部11、及び下側凹陥部11’のZ’軸方向に沿った切断面(切り口)である。上側凹陥部11の−Z’軸方向の壁面は傾斜壁面Z1が形成され、+Z’軸方向の壁面は傾斜壁面Z2が形成される。下側凹陥部11’はほぼ振動領域12の中心に関し、上側凹陥部11と点対称の関係に形成される。つまり、下側凹陥部11’ の−Z’軸方向の壁面は、傾斜壁面Z2が形成され、+Z’軸方向の壁面は傾斜壁面Z1が形成される。
【0066】
図11(c)〜(e)は上側、及び下側凹陥部11、11’の壁面Z1、Z2、及び溝部の壁面Z3の拡大図である。上側凹陥部11の−Z’軸方向の壁面は、図11(c)の図中左方に示すように、水晶ウェハー10Wの平面に対し比較的緩やかな傾斜でエッチングされ、傾斜壁面Z1となる。+Z’軸方向の壁面は、図11(c)の図中右方に示すように、傾斜壁面Z2を呈する。つまり、はじめ水晶ウェハー10Wの平面に対し急な傾斜壁面Z2aでエッチングされるが、その後は緩やかな傾斜壁面Z2bでエッチングが進行する。下側凹陥部11’のZ’軸方向に沿った壁面は、ほぼ振動領域12の中心に関し、上側凹陥部11と点対称な関係になる。
図11(d)は外形加工が施された後の圧電基板10の外形断面図であり、同図(c)の2つの破線Zc1、Zc2の所からエッチングにより外形加工されたものである。図8の工程S9のエッチング工程で外形が形成され、−Z’軸方向(図中左方)の端部に第3の支持部本体16a及び第3の傾斜部16bからなる第3の支持部16が形成され、+Z’軸方向(図中左右方)の端部に第4の支持部本体17a及び第4の傾斜部17bからなる第4の支持部17が形成される。第3の支持部16と第4の支持部17とは、振動領域12の中心に関しほぼ点対称に形成される。
【0067】
図11(e)はZ’軸方向に直交して形成した上側、及び下側溝部の断面図で、共に楔型断面Z3を呈する。この上側、及び下側の溝部は、水晶ウェハー10Wに折り取り用の溝部である。上側溝部の壁面Z3は、上側凹陥部11の−Z’軸方向の壁面Z1と、+Z’軸方向の壁面Z2(壁面Z2aと壁面Z2b)とで形成されるために、ほぼ楔型の断面を呈する。下側溝部の壁面Z3は、上側溝部の壁面と中心に関してほぼ対称に形成される。
X軸方向、Z’軸方向に折り取り用溝部を形成すると、その断面形状は楔型となり、折り取りが容易である。
本発明の特徴は、圧電基板10の両主面よりエッチングを進め、両主面に夫々対向する凹陥部11、11’を形成して振動領域12とした点にあり、エッチングに要する加工時間を半減することが可能となった。また、図11(d)に示すように、Zc1、Zc2で示す2つの破線の図中外側を共にエッチングにより取り去ることにより、圧電基板の小型化が図れたことも特徴の一つである。圧電基板10の両主面よりエッチングを進めるので、圧電基板10の夫々の主面からエッチングにより掘られる深さを浅くすることができるので、製造時に、ウェハー内の各個片がレイアウトされている領域間で、或いはウェハー間において、薄肉となる振動部の厚みのバラツキを低減することができた。この理由として、圧電基板10をエッチング溶液の中に長時間、浸していると、エッチング溶液内での溶液の濃度に差が生じる虞があり、当該濃度差に起因して、圧電基板10に対するエッチングの均一性が保てなくなる虞があり、ウェハー内の各個片がレイアウトされている領域間で、或いはウェハー間で前記振動部の厚みのバラツキが発生してしまい、厚みの制御が困難となる問題があるからである。
【0068】
更に、図11(c)、(d)に示すように、振動領域として不要な図中両端部を削除することを前提として製造方法を確立した。先行技術として掲げた従来の厚肉部を備えた構造に比べて、振動領域となる平坦な超薄部の面積を確保しながらも、圧電振動素子1のサイズを小型化することを実現できた。
また、更に前述したように、ATカット水晶基板のX軸方向の両端に力を加えた(実装に起因した応力・歪みを前記力として説明している)ときの周波周変化と、Z’軸方向の両端に同じ力を加えたときの周波周変化と、を比べると、Z’軸方向の両端に力を加えたときの方の周波周変化量を小さくできるため、圧電基板10のX軸方向の長さをZ’軸方向の長さより長い、所謂Xロングとしたので、X軸方向に振動部の面積を広く確保することができた。
また、本発明に係る圧電振動素子1の振動部の全周に亘って、振動部の主面に対して表裏のうちの少なくともどちらか一方には厚肉の支持部を設けているので、振動部の端部が外部に露出することがないので、圧電振動素子1の製造時や、圧電振動素子1を容器に実装し、圧電振動子を製造する過程、等で圧電振動素子1を何かにぶつけてしまう等による圧電振動素子1の耐衝撃性等の信頼性の観点でも、強度を高く維持しているので、信頼性を高く維持することができている。
この結果、振動領域に励振される厚み滑り振動モードの変位分布が、弾性定数の異方性によりX軸方向に長径を有する楕円状となることを十分に考慮して設計することが可能となり、長軸対短軸の比を、1.26:1、製造寸法のバラツキ等を考慮して、1.14〜1.39:1の範囲程度となるように十分設計可能となった。
【0069】
図12は、図1に示した圧電振動素子1の詳細な図であり、同図(a)は斜視図であり、同図(b)は図1(a)におけるQ−Q断面の切り口である。図12(b)に示すように、圧電振動素子1の外形では、X軸に交わる端面に傾斜面が現出し、−X軸側の端面には傾斜面1が現出し、+X軸側の端面には傾斜面2が現出している。傾斜面1と傾斜面2のXY’平面に平行な断面形状が、異なっていることが判明した。
また、傾斜面1、2共に、圧電基板の主表面と交わる付近には、図10(b)、(e)に示すような+X軸方向に形成される壁面X2の垂直の壁面は現出していない。この理由は、凹陥部11を形成するのに要するエッチング時間に比べて、傾斜面1と傾斜面2の形成に要する時間は、圧電基板(水晶基板)を表裏からエッチングし、貫通するまでエッチングするので、エッチング時間が十分に長いため、オーバーエッチングの作用により垂直の壁面が現出しないのである。
傾斜面1を構成する傾斜面a1、a2は、X軸に対してほぼ対称関係にあり、傾斜面2を構成する傾斜面b1、b2、b3、b4では、b1とb4、b2とb3とが、各々X軸に対してほぼ対称関係にあることが判明した。更に、傾斜面a1、a2のX軸に対する傾斜角度αと、傾斜面b1、b4のX軸に対する傾斜角度βとは、β<αの関係にあることが分かった。
【0070】
図13に示した実施形態例の圧電振動素子4は、図1に示した圧電振動素子1の変形例であり、第2の支持部本体15aの外端部寄りの一部15a’の厚みをエッチング等により薄くした構造をしている。この理由は第2の支持部本体15a’に形成したパッド電極29bと、外部の電極端子とをボンディングワイヤーBWで接続する際に、ボンディングワイヤーの頂点部分が、被せる蓋部材に接触しないようにするためである。
【0071】
図1、図5、図6、図7の実施形態例に示すように、高周波の圧電振動素子が小型化されると共に、振動領域の支持が強固であり、振動、衝撃等に強い圧電振動素子が得られるという効果がある。更に、スリットを設けることにより、接着・固定に起因する応力の広がりを抑圧することができるので、周波数温度特性、CI温度特性、及び周波数エージング特性に優れ、且つ主振動のCI値が小さく、主振動のCI値に対する近接したスプリアスのCI値の比、即ちCI値比の大きな圧電振動素子が得られるという効果がある。
また、圧電振動素子1を支持する部位が一点になると、導電性接着剤に起因して生じる応力を小さくすることが可能である。
図6の実施形態例に示すように、第2の支持部に2つのスリットを設けることにより、圧電振動素子を接着・固定する際に生じる応力の広がりを、よりよく抑圧することができるため、周波数再現性、周波数温度特性、CI温度特性、及び周波数エージング特性に優れ圧電振動素子が得られるという効果がある。
また、図1、図5、図6のように振動領域に接してその端部に突設部を設けることにより圧電振動素子の耐衝撃性、耐振動性が強化されるという効果がある。
【0072】
X軸の周りに回転した圧電基板を形成することにより、要求仕様をより適したカットアングル及び周波数で構成することが可能であり、且つ仕様にそった周波数温度特性を有する高周波基本波圧電振動素子が得られるという効果がある。
また、圧電基板に水晶ATカット水晶基板を用いることにより、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技法に関する永年の実績・経験が活用できるので、圧電基板の量産が可能であるのみならず、高精度の圧電基板が得られ、圧電振動素子の歩留まりが大幅に改善されるという効果がある。
また、図1に示すように、第2の支持部15が、振動部と連設した一方の端縁から他方の端縁に向かって離間するにつれて厚みが増加する第2の傾斜部15bと、この第2の傾斜部15の他方の端縁に連設する第2の支持部本体15aと、を有するように構成すれば、高周波で基本波の圧電振動素子が小型化されると共に、振動部の支持が強固であり、振動、衝撃等に強い圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0073】
図14は、本発明に係る実施形態の圧電振動子5の構成を示す図であり、同図(a)は縦断面図であり、同図(b)は蓋部材を除いた平面図である。圧電振動子5は、例えば上記の圧電振動素子1と、圧電振動素子1を収容するパッケージとを備えている。パッケージは、矩形の箱状に形成されているパッケージ本体40と、金属、セラミック、ガラス等から成る蓋部材49とから成る。
パッケージ本体40は、図14に示すように、第1の基板41と、第2の基板42と、第3の基板43とを積層して形成されており、絶縁材料として、酸化アルミニウム質のセラミック・グリーンシートを成形し、箱状とした後で、焼結して形成される。実装端子45は、第1の基板41の外部底面に複数形成されている。第3の基板43は中央部が除去された環状体であり、第3の基板43の上部周縁に例えばコバール等の金属シールリング44が形成されている。
【0074】
第3の基板43と第2の基板42とにより、圧電振動素子1を収容する凹部(キャビティ)が形成される。第2の基板42の上面の所定の位置には、導体46により実装端子45と電気的に導通する複数の素子搭載パッド47が設けられている。素子搭載パッド47の位置は、圧電振動素子1を載置した際に第2の支持部本体14aに形成したパッド電極29aに対応するように配置されている。
圧電振動子5を固定する際にはまず、圧電振動素子1のパッド電極29aに導電性接着剤30を塗布し、これを反転してパッケージ本体40の素子搭載パッド47に載置して荷重をかける。導電性接着剤30の特性として、接着剤30に起因する応力(∝歪)の大きさは、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリイミド系接着剤の順で大きくなる。また、脱ガスは、ポリイミド系接着剤、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤の順で大きくなる。導電性接着剤30としては経年変化を考慮して脱ガスの少ないポリイミド系接着剤を用いることにした。
【0075】
パッケージ本体40に搭載された圧電振動子1の導電性接着剤30を硬化させるために、所定の温度の高温炉内に所定の時間入れる。導電性接着剤30を硬化させた後、表面側になったパッド電極29bと、パッケージ本体40の電極端子48とをボンディングワイヤーBWで導通接続する。図14(b)に示すように、圧電振動素子1をパッケージ本体40に支持・固定する部分は、一カ所であるため、支持固定により生じる応力の大きさは小さくすることが可能となる。
アニール処理を施した後、励振電極25a、25bに質量を付加するか、又は質量を減じて周波数調整を行う。パッケージ本体40の上面に形成したシールリング44上に、蓋部材49を載置し、真空中か窒素N2ガス中で蓋部材49をシーム溶接して密封する。または、パッケージ本体40の上面に塗布した低融点ガラスに蓋部材49を載置し、溶融して密着する方法もある。パッケージのキャビティ内は真空にするか、又は窒素N2ガス等の不活性ガスで充填して、圧電振動子5は完成される。
パッド電極29bとパッケージの電極端子48とをボンディングワイヤーを用いて電気的に接続している。このように圧電振動素子1を支持する部位が一点になると、導電性接着剤に起因して生じる応力を小さくすることが可能である。
【0076】
図1に示す圧電振動素子1は、圧電基板10の上下面に近接して夫々パッド電極29a、29bを形成している。圧電振動素子1をパッケージに収容する際に、圧電振動素子1を裏返し、パッド電極29aとパッケージの端子電極とを導電性接着剤で固定・接続する。表面側になったパッド電極29bと、パッケージの電極端子とをボンディングワイヤーBWで接続する。このように圧電振動素子1を支持する部位が一点になると、導電性接着剤に起因して生じる応力を小さくすることが可能である。また、パッケージに収容するに当たり、圧電振動素子1を裏返して、より大きな励振電極25bを上面にすると、圧電振動素子1の周波数微調が容易となる。
【0077】
図15は、他の実施形態の圧電振動子5の構成を示す図であり、同図(a)は縦断面図であり、同図(b)は蓋部材を除いた平面図である。図15(b)の平面図に示すように、パッド電極29a、29bの間隔を離して、同一面に配置する。図14に示した実施形態例と異なる点は、圧電振動子1の支持の方法である。図14の実施形態例では一カ所支持であるのに対し、図15の実施形態例では圧電振動素子1の一方の面の第2の支持部15の2カ所(2点)に導電性接着剤を塗布して、導通と支持・固定を図るようにした構造である。低背化に適した構造であるが、導電性接着剤に起因する応力が少し大きくなる虞がある。そこで、第3の実施形態である図6や図7に示すようなスリットを2つ設けた圧電振動素子を採用することで、前記応力の振動領域への影響を抑圧できることが期待できる。または、導電性接着剤の硬度が比較的硬い場合には、導電性接着剤を塗布する「2カ所(2点)」の中心間距離を狭めることにより、前記2点間で生じる実装に係る歪み(応力)を低減させる手法もある。また一方、導電性接着剤の硬度が比較的柔らかい、シリコーン系接着剤を用いることにより、導電性接着剤に緩衝性を持たせ、前記2点間で生じる実装に係る歪み(応力)を低減させる手法もある。
以上の圧電振動子5の実施の形態例では、パッケージ本体40に積層板を用いた例を説明したが、パッケージ本体40に単層セラミック板を用い、蓋体に絞り加工を施したキャップを用いて圧電振動子を構成してもよい。
【0078】
図14の実施形態例に示すように、高周波の圧電振動子1が小型化されると共に、圧電振動素子1を支持する部位が一点になると、導電性接着剤に起因して生じる応力を小さくすることができる。この結果、周波数再現性、周波数温度特性、CI温度特性、及び周波数エージング特性に優れた圧電振動子が得られるという効果がる。更に、主振動のCI値を小さく、主振動のCI値に対する近接したスプリアスのCI値の比、即ちCI値比の大きな圧電振動素子が得られ、且つ容量比γの小さな圧電振動子5が得られるという効果がある。
また、図15の実施形態例に示すように、二点支持の圧電振動子を構成することにより、低背化した圧電振動子5を得ることができるという効果がある。スリットを2つ設けることで二点支持に起因した支持応力の振動部への影響を抑圧できる。
【0079】
図16は、本発明に係る圧電デバイス6の実施形態を示す縦断面図である。電子デバイス6は、本発明の圧電振動素子1(図16では圧電振動素子1の例を示したが、本発明の他の圧電振動素子であってもよい)と、電子部品の1つであり、温度センサーとしての感温素子であるサーミスタThと、圧電振動素子1及びサーミスタThを収容するパッケージと、を概略備えている。パッケージは、パッケージ本体40aと、蓋部材49とを備えている。パッケージ本体40aは、上面側に圧電振動素子1を収容するキャビティ31が形成され、外部裏面側にサーミスタThを収容する凹部32が形成されている。キャビティ31の内底面の端部に複数の素子搭載用パッド47が設けられ、各素子搭載用パッド47は内部導体46で複数の実装端子45と導通接続されている。圧電振動素子1のパッド電極29aに導電性接着剤30を塗布し、これを反転し、素子搭載用パッド47に載置する。パッケージ本体40aの上部には、コバール等からなるシールリングリング44が焼成されており、このシールリングリング44に蓋部材49を載置し、抵抗溶接機等を用いて溶接し、キャビティ31を気密封止する。キャビティ31内は真空にしてもよいし、不活性ガスを封入してもよい。
【0080】
以上の実施形態例では、パッケージ本体40aの外部下面側に凹部32を形成し、電子部品を搭載した例を説明したが、パッケージ本体40aの内部底面に凹部32を形成し、電子部品を搭載してもよい。
また、圧電振動素子1とサーミスタThとをパッケージ40aに収容した例を説明したが、パッケージ40aに収容する電子部品としては、サーミスタ、コンデンサー、リアクタンス素子、半導体素子のうち少なくとも一つを収容して電子デバイスを構成することが望ましい。
【0081】
図16に示す実施形態例は、圧電振動素子1とサーミスタThとをパッケージ40aに収容した例である。このように構成すると、感温素子のサーミスタThが圧電振動素子1の極めて近くに位置されているので、圧電振動素子1の温度変化を素早く感知することができるという効果がある。また、本発明の圧電振動素子と上記の電子部品とで電子デバイスを構成することにより、高周波、且つ小型の電子デバイスが構成できるので、多方面の用途に利用できるという効果がある。
また、電子部品に可変容量素子、サーミスタ、インダクタ、コンデンサーのうちの何れかを用いて電子デバイス(圧電デバイス)を構成すると、要求仕様により適した電子デバイスが、小型で且つ低コストで実現できるという効果がある。
【0082】
図17は、本発明の実施形態例に係る電子デバイスの一種である圧電発振器7の構成を示す図であって、同図(a)は縦断面図であり、同図(b)は蓋部材を除いた平面図ある。圧電発振器7は、パッケージ本体40b、及び蓋部材49と、圧電振動素子1と、圧電振動素子1を励振する発振回路を搭載したIC部品51と、電圧により容量が変化する可変容量素子、温度により抵抗が変化するサーミスタ、インダクタ等の電子部品52の少なくとも1つと、を備えている。
圧電振動素子1のパッド電極29aに導電性接着剤(ポリイミド系)30を塗布し、これを反転してパッケージ本体40bの素子搭載パッド47に載置し、パッド電極29aと素子搭載パッド47との導通を図る。上面側になったパッド電極29bと、パッケージ本体40bの他の電極端子48とをボンディングワイヤーにて接続し、IC部品51の1つの電極端子55との導通を図る。IC部品51をパッケージ本体40bの所定の位置に固定し、IC部品51の端子と、パッケージ本体40bの電極端子55とをボンディングワイヤーBWにて接続する。また、電子部品52は、パッケージ本体40bの所定に位置に載置し、金属バンプ等を用いて接続する。パッケージ本体40bを真空、あるいは窒素等の不活性気体で満たし、パッケージ本体40bを蓋部材49で密封して圧電発振器7を完成する。
パッド電極29aとパッケージの電極端子とをボンディングワイヤーBWで接続する工法は、圧電振動素子1を支持する部位が一点になり、導電性接着剤に起因して生じる応力を小さくすることが可能である。また、パッケージに収容するに当たり、圧電振動素子1を裏返して、より大きな励振電極25bを上面にしたので、電子デバイス(圧電発振器)7の周波数微調が容易となる。
【0083】
図17の実施形態に示した圧電発振器7は、同一圧電基板上に圧電振動素子1、IC部品51及び電子部品を配置したが、図18に示した実施形態の圧電発振器7は、H型のパッケージ本体60を用い、上部に形成したキャビティ31に圧電振動素子1を収容し、キャビティ内部を真空、又は窒素N2ガスで満たし、蓋部材61で密封する。下部には圧電振動素子1を励振する発振回路、増幅回路等を搭載したIC部品51と、可変容量素子、及び必要に応じてインダクタ、サーミスタ、コンデンサー等の電子部品52と、を金属バンプ(Auバンプ)68を介して、パッケージ本体60の端子67に導通・接続する。
本発明の電子デバイス(圧電発振器)7は、圧電振動素子1と、IC部品51及び電子部品52とを分離し、圧電振動素子1を単独で気密封止しているために、圧電発振器7の周波数エージングに優れている。
【0084】
図17、図18に示すように、圧電デバイス(例えば電圧制御型圧電発振器)を構成することにより、周波数再現性、周波数温度特性、エージング特性が優れ、小型で且つ高周波(例えば490MHz帯)の電圧制御型圧電発振器が得られるという効果がある。また、圧電デバイスは基本波の圧電振動素子1を用いているので、容量比が小さく、基本波圧電振動素子を用いているため周波数可変幅を広く、S/N比の良好な電圧制御型圧電発振器が得られるという効果がある。
また、圧電デバイスとして圧電発振器、温度補償型圧電発振器、及び電圧制御型圧電発振器等を構成することが可能であり、周波数再現性、エージング特性が優れた圧電発振器、周波数温度特性に優れた温度補償圧電発振器、周波数が安定で可変範囲の広く且つS/N比(信号雑音比)の良好な電圧制御型圧電発振器を構成することが得られるという効果がある。
【0085】
図19は本発明に係る電子機器の構成を示す概略構成図である。電子機器8は上記の圧電振動子5を備えている。圧電振動子5を用いた電子機器8としては、伝送機器等が挙げられる。これらの電子機器8において圧電振動子6は、基準信号源、あるいは電圧可変型圧電発振器(VCXO)等として用いられ、小型で、特性の良好な電子機器を提供できる。
図19の模式図に示すように、本発明の圧電振動子を電子機器の用いることにより、高周波で周波数安定度に優れ、S/N比の良好な基準周波数源を備えた電子機器が構成できるという効果がある。
【0086】
[変形実施形態]
圧電振動素子の実装に起因した応力を更に軽減、抑圧する手法として、以下に示すごとき構造を採用することができる。
図20(a)の実施形態における圧電基板10は、振動領域12を有する薄肉部と、前記薄肉部の周縁に設けられ、当該薄肉部よりも厚い厚肉部とを備えた圧電基板10であって、圧電基板においては、厚肉支持部13には、縁辺の方向に緩衝部Sを介してマウント部Fが横並びで接続され、緩衝部Sは、マウント部と厚肉支持部との間にスリット20を有し、マウント部Fは、マウント部Fと緩衝部Sと厚肉支持部13との並ぶ方向に対して直交方向の両端部に、面取り部21を有していることを特徴とする。
図20(b)の圧電基板10は、振動領域12を有する薄肉部と、薄肉部の周縁に設けられ、薄肉部よりも厚い厚肉支持部13とを備えた圧電基板10であって、厚肉支持部13には、緩衝部Sを介してマウント部Fが横並びで接続され、緩衝部Sは、マウント部Fと厚肉支持部13との間にスリット20を有し、マウント部は、マウント部Fと緩衝部Sと厚肉支持部13との並ぶ方向に対して直交方向の両端部に切欠き部22を有し、スリット20の長手方向は直交方向と平行であり、マウント部Fの直交方向の幅を、スリットの長手方向の幅より狭く、スリットの長手方向の両端部は、マウント部Fの両端部よりも緩衝部Sの直交方向の外周寄りにあることを特徴とする。
図20(c)の圧電基板10は、振動領域12を有する薄肉部と、薄肉部の周縁に設けられた厚肉支持部13とを備えた圧電基板10であって、厚肉支持部13には、緩衝部Sとマウント部Fが順に連結され、緩衝部Sは、マウント部Fと厚肉支持部13との間にスリット20を有し、マウント部Fは、マウント部Fと緩衝部Sと厚肉支持部13との並ぶ方向に対して直交方向の両端部に、切欠き部22を有していることを特徴とする。
【0087】
図21は、図20の構造に対し、2点支持、即ちマウント部F1、及びマウント部F2の形態をとることを特徴としている。
なお、図20、図21においては、厚肉支持部13の各支持部14、15、16の内壁に傾斜部が図示されている一方で、また厚肉支持部13の外側の側壁面には図12に示した如き傾斜面が図示されていないが、これらの傾斜部、傾斜面は図12に示しているように対応する部位に形成されることになる。
なお、図20、図21中の各符号は、上記各実施形態の同じ符号が示す部位と対応している。
【0088】
[変形実施例 その2]
更に、図22(a)は圧電振動素子1の平面図であり、同図(b)は圧電振動素子1のパッド電極29a(マウント部F)の実施形態例の拡大図平面図を示し、同図(c)はマウント部Fの断面図を示している。このマウント部Fにおいては、接着強度を向上させるために凹凸状とすることによって面積を稼いでいる。
【符号の説明】
【0089】
1、2、3、4…圧電振動素子、5、圧電振動子、6、7…圧電デバイス、8…電子機器、10…圧電基板、10W…水晶ウェハー、11、11’…凹陥部、12…振動領域、12a、12b、12c、12d…振動領域の一辺、13…支持部、14…第1の支持部、14a…第1の支持部本体、14b…第1の傾斜部、15…第2の支持部、15a…第2の支持部本体、15b…第2の傾斜部、15b’…極細片、16…第3の支持部、16a…第3の支持部本体、16b…第3の傾斜部、17…第4の支持部、17a…第4の支持部本体、17b…第4の傾斜部、20…スリット、20a…第1のスリット、20b…第2のスリット、21…面取り部、22…切欠き部、25a、25b…励振電極、27a、27b…リード電極、29a、29b…パッド電極、30…導電性接着剤、31…キャビティ、32…凹部、33…電子部品搭載用パッド、40、40a、40b…パッケージ本体、41…第1の基板、42…第2の基板、43…第3の基板、44…シールリング、45…実装端子、46…導体、47…素子搭載パッド、48…電極端子、49…蓋部材、51…IC部品、52電子部品、55…電極端子、60…パッケージ本体、61…蓋部材、65…実装端子、66…導体、67…部品端子、68…金属バンプ(Auバンプ)、Th…サーミスタ、F、F1、F2…マウント部、S…緩衝部
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚みすべり振動モードを励振する圧電振動子に関し、特に所謂逆メサ型構造を有する圧電振動素子、圧電振動子、電子デバイス、及び圧電振動子を用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ATカット水晶振動子は、励振する主振動の振動モードが厚みすべり振動であり、小型化、高周波数化に適し、且つ周波数温度特性が優れた三次曲線を呈するので、圧電発振器、電子機器等の多方面で使用されている。
特許文献1には、主面の一部に凹陥部を形成して高周波化を図った、所謂逆メサ構造のATカット水晶振動子が開示されている。水晶基板のZ’軸方向の長さが、X軸方向の長さより長い、所謂Z’ロング基板を用いている。
特許文献2には、矩形状の薄肉の振動部の三辺に各々厚肉の支持部が連設され、前記薄肉の振動部の一辺が露出した構造を有する逆メサ構造のATカット水晶振動子が開示されている。更に、水晶振動片は、ATカット水晶基板のX軸とZ’軸を、夫々Y’軸を中心に−120°〜+60°の範囲で回転させてなる面内回転ATカット水晶基板であり、振動領域を確保し、且つ量産性に優れた(多数個取り)構造であるという。
【0003】
特許文献3、4には、矩形状の薄肉の振動部の三辺に各々厚肉の支持部が連設され、前記薄肉の振動部の一辺が露出した構造を有する逆メサ構造のATカット水晶振動子が開示されており、水晶振動片は水晶基板のX軸方向の長さがZ’軸方向の長さより長い、所謂Xロング基板が用いられている。
特許文献5には、矩形状の薄肉の振動部の隣接する二辺に各々厚肉の支持部が連設され、平面視でL字状に厚肉部が設けられ、前記薄肉の振動部の二辺が露出した構造を有する逆メサ構造のATカット水晶振動子が開示されている。水晶基板にはZ’ロング基板が用いられている。
しかしながら、特許文献5においては、L字状の厚肉部を得るために、特許文献5の図1(c)、(d)に記載されているように線分αと、線分βに沿って厚肉部を削除しているが、当該削除はダイシング等の機械加工で削除することを前提としているため、切断面にチッピングやクラック等のダメージを負い、超薄部が破損してしまう問題がある。また、振動領域にスプリアスの原因となる不要振動の発生やCI値の増加等の問題が発生する。
特許文献6には、薄肉の振動部の一辺のみに厚肉の支持部が連設され前記薄肉の振動部の三辺が露出した構造を有する逆メサ構造のATカット水晶振動子が開示されている。
【0004】
特許文献7には、水晶基板の両主面であって表裏面で対向するように凹陥部を形成することにより、高周波化を図った逆メサ構造のATカット振動子が開示されている。水晶基板にはXロング基板が用いられ、凹陥部に形成された振動領域の平坦性が確保された領域に励振電極が設けられ構造が提案されている。
ところで、ATカット水晶振動子の振動領域に励振される厚み滑り振動モードは、弾性定数の異方性により振動変位分布がX軸方向に長径を有する楕円状になることが知られている。特許文献8には、圧電基板の表裏両面に表裏対称に配置された一対のリング状電極を有する厚みすべり振動を励振する圧電振動子が開示されている。リング状電極が対称零次モードのみを励起し、それ以外の非調和高次モードをほとんど励起しないように、リング状電極の外周の径と内周の径との差を設定したものである。
【0005】
特許文献9には、圧電基板、及び圧電基板の表裏に設ける励振電極の形状を、共に長円形状にした圧電振動子が開示されている。
特許文献10には、水晶基板の長手方向(X軸方向)の両端部、及び電極のX軸方向の両端部の形状を共に半楕円状とし、且つ楕円の長軸対短軸の比(長軸/短軸)を、ほぼ1.26とした水晶振動子が開示されている。
特許文献11には、楕円の水晶基板上に楕円の励振電極を形成した水晶振動子が開示されている。長軸対短軸の比は、1.26:1が望ましいが、製造寸法のバラツキ等を考慮すると、1.14〜1.39:1の範囲程度が実用的であるという。
【0006】
特許文献12には、厚みすべり圧電振動子のエネルギー閉じ込め効果をより改善するために、振動部と支持部との間に切り欠きやスリットを設けた構造の圧電振動子が開示されている。
ところで、圧電振動子の小型化を図る際に、接着剤に起因する残留応力により、電気的特性の劣化や周波数エージング特性に不良が生じることがある。特許文献13には、矩形平板状のATカット水晶振動子の振動部と支持部との間に、切り欠きやスリットを設けた水晶振動子が開示されている。このような構造を用いることにより、残留応力が振動領域へ広がるのを抑制できるという。
特許文献14には、マウント歪(応力)を改善(緩和)するために、逆メサ型圧電振動子の振動部と支持部との間に切り欠きやスリットを設けた振動子が開示されている。特許文献15には、逆メサ型圧電振動子の支持部にスリット(貫通孔)を設けることにより、表裏面の電極の導通を確保した圧電振動子が開示されている。
【0007】
特許文献16には、厚みすべり振動モードのATカット水晶振動子の支持部に、スリットを設けることにより、高次輪郭系の不要モードを抑圧した水晶振動子が開示されている。
また、特許文献17には、逆メサ型ATカット水晶振動子の薄肉の振動部と、厚肉の保持部との連設部、即ち傾斜面を有する残渣部に、スリットを設けることにより、スプリアスを抑圧する振動子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−165743公報
【特許文献2】特開2009−164824公報
【特許文献3】特開2006−203700公報
【特許文献4】特開2002−198772公報
【特許文献5】特開2002−033640公報
【特許文献6】特開2001−144578公報
【特許文献7】特開2003−264446公報
【特許文献8】特開平2−079508号公報
【特許文献9】特開平9−246903号公報
【特許文献10】特開2007−158486公報
【特許文献11】特開2007−214941公報
【特許文献12】実開昭61−187116号公報
【特許文献13】特開平9−326667号公報
【特許文献14】特開2009−158999公報
【特許文献15】特開2004−260695公報
【特許文献16】特開2009−188483公報
【特許文献17】特開2003−087087公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、圧電デバイスの小型化、高周波化、並びに高性能化に対する要求は強い。しかしながら、前述のごとき構造の圧電振動子は、主振動のCI値、近接するスプリアスCI値比(=CIs/CIm、ここでCImは主振動のCI値、CIsはスプリアスのCI値で、規格の1例は1.8以上)等が要求を満たせないという問題があることが判明した。
そこで、本発明は上記問題を解決するためになされたもので、高周波化(100〜500MHz帯)を図ると共に、主振動のCI値を低減し、スプリアスCI値比等の電気的要求を満たした圧電振動素子、圧電振動子、電子デバイス、及び本発明の圧電振動子を用いた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0011】
[適用例1]本発明に係る圧電振動素子は、振動領域を含む振動部と、当該振動部と一体化され、前記振動部の厚みよりも厚い支持部と、を有する圧電基板と、前記振動領域に表裏で対向するように配置された一対の励振電極と、を有する圧電振動素子であって、前記支持部は、前記振動部の主面の対向する2つの辺に沿って前記振動部を挟むように夫々設けられた第1の支持部と第2の支持部と、当該第1、第2の支持部の各々の一方の端部を連設する第3の支持部と、前記第1、第2の支持部の各々の他方の端部を連設する第4の支持部と、を備え、前記第1、第2の支持部の表裏の主面は前記振動部の表裏の主面よりも突設され、前記第3の支持部の一方の主面は前記振動部の一方の主面よりも突設され、前記第3の支持部の他方の主面と前記振動部の他方の主面とは同一面であり、前記第4の支持部の一方の主面は前記振動部の他方の主面よりも突設され、前記第4の支持部の他方の主面と前記振動部の一方の主面とは同一面であることを特徴とする圧電振動素子である。
【0012】
この構成によれば、高周波で基本波の圧電振動素子が小型化されると共に、振動領域の支持が強固となり、振動、衝撃等に強い圧電振動素子が得られるという効果がある。更に、スリットを設けることにより、接着・固定に起因する応力の広がりを抑圧することができるので、周波数温度特性、CI温度特性、及び周波数エージング特性に優れ、且つ主振動のCI値が小さく、主振動のCI値に対する近接したスプリアスのCI値の比、即ちCI値比の大きな圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0013】
[適用例2]また圧電振動素子は、前記圧電基板が、水晶の結晶軸である電気軸としてのX軸と、機械軸としてのY軸と、光学軸としてのZ軸と、からなる直交座標系の前記X軸を中心として、前記Z軸を前記Y軸の−Y方向へ所定の角度だけ傾けた軸をZ’軸とし、前記Y軸を前記Z軸の+Z方向へ前記所定の角度だけ傾けた軸をY’軸とし、前記X軸と前記Z’軸に平行な面で構成され、前記Y’軸に平行な方向を厚みとする水晶基板であることを特徴とする適用例1に記載の圧電振動素子である。
【0014】
この構成によれば、要求仕様をより適したカットアングル及び周波数で構成することが可能であり、且つ仕様にそった周波数温度特性を有する高周波基本波圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0015】
[適用例3]また圧電振動素子は、前記第3の支持部の突設部が、前記Z’軸のプラス側にあり、前記第4の支持部の突設部が、前記Z’軸のマイナス側にあることを特徴とする適用例2に記載の圧電振動素子である。
【0016】
この構成によれば、上記突設部により圧電振動素子の耐衝撃性、耐振動性が強化されるという効果がある。
【0017】
[適用例4]また圧電振動素子は、前記第2の支持部が、前記振動部と連設した一方の端縁から他方の端縁に向かって離間するにつれて厚みが増加する第2の傾斜部と、当該第2の傾斜部の前記他方の端縁に連設する第2の支持部本体と、を有することを特徴とする適用例1乃至3のうち何れか一項に圧電振動素子である。
【0018】
この構成によれば、高周波で基本波の圧電振動素子が小型化されると共に、振動部の支持が強固であり、振動、衝撃等に強い圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0019】
[適用例5]また圧電振動素子は、前記第2の支持部には、少なくとも一つのスリットが設けられていることを特徴とする適用例4に記載の圧電振動素子である。
【0020】
この構成によれば、圧電振動素子を接着・固定する際に生じる応力の広がりを抑圧することができるので、周波数温度特性、CI温度特性、及び周波数エージング特性の優れ圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0021】
[適用例6]また圧電振動素子は、前記スリットが、前記第2の傾斜部と前記第2の支持部本体との境界部に沿って前記第2の支持部本体に配置されていることを特徴とする適用例5に記載の圧電振動素子である。
【0022】
この構成によれば、圧電振動素子を接着・固定する際に生じる応力の広がりを抑圧することができるので、周波数温度特性、CI温度特性、及び周波数エージング特性の優れ圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0023】
[適用例7]また圧電振動素子は、前記スリットが、前記第2の傾斜部内に前記振動領域の一辺から離間して配置されていることを特徴とする適用例5に記載の圧電振動素子である。
【0024】
この構成によれば、スリットの形成が容易になり、圧電振動素子を接着・固定する際に生じる応力の広がりを抑圧することができるので、周波数温度特性、及びCI温度特性の優れ圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0025】
[適用例8]また圧電振動素子は、前記スリットが、前記第2の支持部本体に配置された第1のスリットと、前記第2の傾斜部内に前記振動領域の一辺から離間して配置された第2のスリットと、を備えていることを特徴とする適用例5に記載の圧電振動素子である。
【0026】
この構成によれば、第2の支持部に2つのスリットを設けることにより、圧電振動素子を接着・固定する際に生じる応力の広がりを、よりよく抑圧することができるため、周波数再現性、周波数温度特性、CI温度特性、及び周波数エージング特性に優れ圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0027】
[適用例9]また圧電振動素子は、前記第1のスリットが、前記第2の傾斜部と前記第2の支持部本体との境界部に沿って前記第2の支持部本体に配置されていることを特徴とする適用例8に記載の圧電振動素子である。
【0028】
この構成によれば、第1のスリットが第2の傾斜部と第2の支持部本体との境界部に沿って設けられることにより、圧電振動素子を接着・固定する際に生じる応力の広がりを、さらに強く抑圧することができるため、周波数再現性、周波数温度特性、CI温度特性、及び周波数エージング特性に優れ圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0029】
[適用例10]本発明に係る圧電振動子は、適用例1乃至9のうち何れか一項に記載の圧電振動素子と、該圧電振動素子を収容するパッケージと、を備えたことを特徴とする圧電振動子である。
【0030】
この構成によれば、高周波で基本波の圧電振動子が小型化されると共に、接着・固定に起因する応力の抑圧が可能であるため、周波数再現性、周波数温度特性、CI温度特性、及び周波数エージング特性に優れた圧電振動子が得られるという効果がる。更に、主振動のCI値を小さく、主振動のCI値に対する近接したスプリアスのCI値の比、即ちCI値比の大きな圧電振動素子が得られ、且つ容量比の小さな圧電振動子が得られるという効果がある。
【0031】
[適用例11]本発明に係る電子デバイスは、適用例1乃至9のうち何れか一項に記載の圧電振動素子と、電子部品と、をパッケージに備えたことを特徴とする電子デバイスである。
【0032】
この構成によれば、客先の要求に基づいて電子デバイスを選定することにより、本発明の圧電振動素子の特徴を生かせることができ、例えば周波数再現性、周波数温度特性、エージング特性が優れ、小型で且つ高周波(例えば490MHz帯)の電子デバイスが得られるという効果がある。
【0033】
[適用例12]また電子デバイスは、前記電子部品は、可変容量素子、サーミスタ、インダクタ、コンデンサーのうちの何れかであることを特徴とする適用例11に記載の電子デバイスである。
【0034】
以上のように、可変容量素子、サーミスタ、インダクタ、コンデンサーのうちの何れかを用いて電子デバイス(圧電デバイス)を構成すると、要求仕様により適した電子デバイスが、小型で且つ低コストで実現できるという効果がある。
【0035】
[適用例13]また電子デバイスは、前記圧電振動素子を励振する発振回路を前記パッケージに備えたことを特徴とする適用例11又は12に記載の電子デバイスである。
【0036】
この構成によれば、圧電発振器、温度補償型圧電発振器、及び電圧制御型圧電発振器等の電子デバイスを、基本波で且つ高周波で構成することが可能となる。また、電圧制御型圧電発振器を構成すると、周波数再現性、エージング特性が優れ、基本波を用いるため周波数可変範囲も広く、且つS/N比(信号雑音比)の良好な電子デバイスが得られるという効果がある。
【0037】
[適用例14]本発明に係る電子機器は、適用例10に記載の圧電振動子を備えたことを特徴とする電子機器である。
【0038】
この構成によれば、本発明の圧電振動子を電子機器の用いることにより、高周波で周波数安定度に優れ、S/N比の良好な基準周波数源を備えた電子機器が構成できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】第1の実施形態例の圧電振動素子1の構造を示した概略図であり、(a)は平面図であり、(b)はP−P断面を+X軸方向からみた断面図であり、(c)はQ−Q断面を−Z’方向からみた断面図。
【図2】ATカット水晶基板と結晶軸との関係を説明する図。
【図3】圧電振動素子の変形例の構成を示す平面図。
【図4】圧電振動素子の他の変形例の構成を示す平面図。
【図5】第2の実施形態例の圧電振動素子2の構造を示した概略図であり、(a)は平面図であり、(b)はP−P断面を+X軸方向からみた断面図であり、(c)はQ−Q断面を−Z’方向からみた断面図。
【図6】第3の実施形態例の圧電振動素子3の構造を示した概略図であり、(a)は平面図であり、(b)はP−P断面を+X軸方向からみた断面図であり、(c)はQ−Q断面を−Z’方向からみた断面図。
【図7】(a)及び(b)は、第3の実施形態例の変形例の構成を示す平面図。
【図8】本発明の圧電基板の製作工程を示す製作工程図。
【図9】本発明の圧電振動素子の励振電極及びリード電極の製作工程図。
【図10】(a)は圧電ウェハーに形成された凹陥部の平面図であり、(b)〜(e)は凹陥部及び溝部のX軸方向の一断面の切り口(切断面)を説明する図。
【図11】(a)は圧電ウェハーに形成された凹陥部の平面図であり、(b)〜(e)は凹陥部及び溝部のZ’軸方向の一断面の切り口を説明する断面図。
【図12】(a)は第1の実施形態例の圧電振動素子1の構成を示す斜視図、(b)は図1のQ−Q断面の詳細切り口図。
【図13】第4の実施形態例の圧電振動素子のQ−Q断面の切断面を示す図。
【図14】本発明に係る圧電振動子5の構成を示す図であって、(a)は縦断面図であり、(b)は蓋部を除いた平面図。
【図15】圧電振動子5の変形例の構成を示す図であって、(a)は縦断面図であり、(b)は蓋部を除いた平面図。
【図16】本発明に係る電子デバイス(圧電デバイス)6の縦断面図。
【図17】本発明に係る電子デバイス(圧電デバイス)7の、(a)は縦断面図であり、(b)は平面図。
【図18】電子デバイス7の変形例の縦断面図。
【図19】電子機器の模式図。
【図20】(a)〜(c)は、本発明に係る圧電基板の変形例の斜視図。
【図21】(a)〜(c)は、本発明に係る圧電基板の変形例の斜視図。
【図22】本発明に係る圧電振動素子1の変形例であり、(a)は平面図であり、(b)は要部の拡大図であり、(c)はその断面図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る圧電振動素子の構成を示す概略図である。同図(a)は平面図であり、(b)はP−P断面を+X軸方向からみた断面図であり、(c)はQ−Q断面を+Z’方向からみた断面図である。
圧電振動素子1は、薄肉の振動領域12、及び振動領域12に連設された厚肉支持部13を有する圧電基板10と、振動領域12の両主面に夫々対向して形成された励振電極25a、25bと、励振電極25a、25bから夫々厚肉部支持部13に延長形成されたリード電極27a、27bと、リード電極27a、27bの夫々の終端に接続されたパッド電極29a、29bと、を備えている。ここで、振動領域とは振動エネルギーが閉じ込められている領域、即ち振動エネルギーがほぼ零となる領域の内側を言い、X軸方向の振動領域の寸法と、Z’軸方向の振動領域の寸法との比は周知のように、1.26:1である。また、振動部とは振動領域とその周縁部とを含んだ圧電基板全体をいう。
【0041】
圧電基板10は、矩形で且つ薄肉平板状の振動領域の振動部12と、振動部12周縁の四辺に沿って一体化された四角い環状の厚肉支持部13と、を備えている。
厚肉支持部13は、振動領域12の主面の対向する2つの辺12a、12bに沿って両主面側に夫々突設された第1の支持部14、及び第2の支持部15と、振動領域12の一方の主面側(表面側)において第1及び第2の支持部14、15の夫々の一端部間を連設し且つ該表面側のみに突設された第3の支持部16と、第3の支持部16と対向する振動領域12の他辺12dの他方の主面側(裏面側)に沿って突設された第4の支持部17と、を備えている。前記2つの辺12a、12bは前記振動領域12を挟んで平行に配置された辺を言う。
【0042】
第1の支持部14は、薄肉平板状の振動領域12の一辺12aに連設し、両主面側に夫々突設されている。また、振動領域12の一辺12aから離間するにつれて厚みが漸増する第1の傾斜部14bと、第1の傾斜部14bの他端縁に連設する厚肉四角柱状の第1の支持部本体14aと、を備えている。つまり、図1(c)に示すように、第1の支持部14は、振動領域12の両主面(表面、及び裏面)に突設して形成されている。
同様に、第2の支持部15は、薄肉平板状の振動領域12の一辺12bに連設し、両主面に夫々突設されている。振動領域12の一辺12bから外側へ離間するにつれて厚みが漸増する第2の傾斜部15bと、第2の傾斜部15bの他端縁に連設する厚肉四角柱状の第2の支持部本体15aと、を備えている。つまり、第2の支持部15は、図1(c)に示すように、振動領域12の主面の両面(表面、及び裏面)に突設して形成されている。尚、支持部本体(第1、及び第2の支持部本体14a、15a等)とは、Y’軸に平行な厚みが一定の領域をいう。
【0043】
第3の支持部16は、薄肉平板状の振動領域12の表面側において、振動領域12の一辺12cに連設し、一辺12cから外側へ離間するにつれて厚みが漸増する第3の傾斜部16bと、第3の傾斜部16bの他端縁に連設する厚肉四角柱状の第3の支持部本体16aと、を備えている。つまり、第3の支持部16の一方の主面は、振動領域12の一方の主面(表面)よりも突設して形成されている。そして、前記第3の支持部16の他方の主面と前記振動部の他方の主面とは連続的に連接されており、同一面となるよう構成されている。なお、振動領域にメサ上の突出したエネルギー閉じ込め領域がある場合についても、振動領域の周縁部の主面が前記前記第3の支持部の他方の主面と連続的に連接されており、同一面となるように構成されていればよい。
第4の支持部17は、薄肉の振動領域12の裏面側において、第3の支持部16と対向するように振動領域12の一辺12dに連設し、振動領域12の一辺12dから離間するにつれて厚みが漸増する第4の傾斜部17bと、第4の傾斜部17bの他端縁に連設する厚肉四角柱状の第4の支持部本体17aと、を備えている。また、第4の支持部17は、振動領域の裏面側において第1の支持部14と第2の支持部15の他端部間を連接している。つまり、第4の支持部17の一方の主面は、振動領域12の他方の主面(裏面)よりも突設して形成されている。そして、前記第4の支持部17の他方の主面と前記振動部の一方の主面とは連続的に連接されており、同一面となるよう構成されている。なお、振動領域にメサ上の突出したエネルギー閉じ込め領域がある場合についても、振動領域の周縁部の主面が前記前記第4の支持部17の他方の主面と連続的に連接されており、同一面となるように構成されていればよい。
第3の支持部16と第4の支持部17とは、振動領域12の中点に対して点対称の関係にあり、第1、第2、第3及び第4の支持部は夫々の端部が連結されて、四角い環状を形成し、その中央部に振動領域12を保持している。
【0044】
略四角形の振動領域12は、その周縁の四辺を第1、第2、第3、及び第4の支持部14、15、16、17に包囲されている。つまり、矩形平板状の圧電基板の両主面からエッチングを進め、両主面に対向する2つの凹陥部を形成し、小型化を図るため不要な部位をカットして、薄肉の振動領域12を形成している。
更に、圧電基板10は、第2の支持部15に少なくとも一つの応力緩和用のスリット20が貫通形成されている。図1に示した実施形態例では、スリット20は第2の傾斜部16bと第2の支持部本体16aとの境界部(連接部)に沿って第2の支持部本体16aの面内に形成されている。
このように、スリット20を第2の支持本体15aの前記境界部(連接部)へ寄せて配置したので、第2の支持部本体15aの被支持部(パッド電極)29aの面積を広く確保することができ、塗布する導電性接着剤の径を大きくすることができる。これに対して、スリット20が第2の支持本体15aの被支持部(パッド電極)29a寄りに配置されると、被支持部(パッド電極)29aの面積が狭くなり、導電性接着剤の径を小さくしなければならない。その結果、導電性接着剤内に含まれる導電フィラーの絶対量も減り、導電性が悪化し、圧電振動素子1の共振周波数が安定しなくなり周波数変動(通称、F飛び)が発生しやすくなる虞がある。
従って、スリット20は第2の支持本体15aの前記境界部(連接部)へ寄せて配置することが好ましい。
なお、第1、及び第2の支持本体14a、15a夫々の一方の面(表面)と、第3の支持本体16aの一方の面(表面)とは同一平面上にあり、第1、第2の支持本体14a、15a夫々の他方の面(裏面)と、第4の支持本体17aの面(裏面)とは同一平面上にある。
【0045】
水晶等の圧電材料は三方晶系に属し、図2に示すように互いに直交する結晶軸X、Y、Zを有する。X軸、Y軸、Z軸は、夫々電気軸、機械軸、光学軸と呼称される。ATカット水晶基板10は、XZ面をX軸の回りに角度θだけ回転させた平面に沿って、水晶から切り出された平板である。ATカット水晶基板10の場合は、θは略35°15′である。なお、Y軸及びZ軸もX軸の周りにθ回転させて、夫々Y’軸、及びZ’軸とする。従って、ATカット水晶基板10は、直交する結晶軸X、Y’、Z’を有する。ATカット水晶基板10は、厚み方向がY’軸であって、Y’軸に直交するXZ’面(X軸及びZ’軸を含む面)が主面であり、厚みすべり振動が主振動として励振される。
【0046】
圧電基板10の一例は、図2に示すようにX軸(電気軸)、Y軸(機械軸)、Z軸(光学軸)からなる直交座標系のX軸を中心として、Z軸をY軸の−Y方向へ傾けた軸をZ’軸とし、Y軸をZ軸の+Z方向へ傾けた軸をY’軸とし、X軸とZ’軸に平行な面で構成され、Y’軸に平行な方向を厚みとするATカット水晶基板である。
尚、本発明に係る圧電基板は、前記角度θが略35°15′のATカットに限定されるものではなく、厚みすべり振動を励振するBTカット、等の圧電基板にも広く適用できるのは言うまでもない。
【0047】
圧電基板10は、図1(a)に示すように、Y’軸に平行な方向(以下、「Y’軸方向」という)を厚み方向として、X軸に平行な方向(以下、「X軸方向」という)を長辺とし、Z’軸に平行な方向(以下、「Z’軸方向」という)を短辺とする矩形の形状を有する。
圧電基板10を駆動する励振電極25a、25bは、図1に示す実施形態例では四角形状であり、振動領域12のほぼ中央部の表裏両面に対向して形成されている。図1(b)に示すように、裏面側の励振電極25bの面積は、表面側の励振電極25aの面積に対し、十分に大きく設定する。これは、励振電極の質量効果によるエネルギー閉じ込め係数を、必要以上に大きくしないためである。つまり、裏面側の励振電極25bの面積を十分に大きくすることにより、プレートバック量Δ(=(fs−fe)/fs、ここでfsは圧電基板のカットオフ周波数、feは圧電基板全面に励振電極を付着した場合の周波数)は、表面側の励振電極25aの質量効果のみに依存する。
【0048】
励振電極25a、25bは、蒸着装置、あるいはスパッター装置等を用いて、下地にニッケル(Ni)を成膜し、その上に金(Au)を重ねて成膜する。金(Au)の厚さは、オーミックロスが大きくならない範囲で、主振動のみを閉じ込めモード(S0)とし、斜対称インハーモニックモード(A0、A1・・)及び対称インハーモニックモード(S1、S3・・)を、閉じ込めモードとしないことが望ましい。しかし、例えば490MHz帯の圧電振動素子では、電極膜厚のオーミックロスを避けるように成膜すると、低次のインハーモニックモードがある程度、閉じ込められることは避けられない。
表面側に形成した励振電極25aは、振動領域12上から第3の傾斜部16bと、第3の支持部本体16aとを経由するリード電極27aにより、第2の支持部本体15aの表面に形成されたパッド電極29aに導通接続されている。また、裏面側に形成された励振電極25bは、振動領域12上から第4の傾斜部17bと、第4の支持部本体17aとを経由するリード電極27bにより、第2の支持部本体15aの裏面に形成されたパッド電極29bに導通接続されている。
【0049】
図1(a)に示した実施形態例は、リード電極27a、27bの引出し構造の一例であり、リード電極27aは他の支持部を経由してもよい。ただ、リード電極27a、27bの長さは最短であることが望ましく、リード電極27a、27b同志が交差しないように配慮することにより、静電容量の増加を抑えることが望ましい。静電容量の増加は圧電振動素子1の容量比γ(直列容量(モーショナルキャパシタンス)C1の対する並列容量(静電容量)C0の比)を悪化させる。
また、図1の実施形態例では、圧電基板10の表裏両面に近接して夫々パッド電極29a、29bを形成する例を示した。圧電振動素子1をパッケージに収容する際に、圧電振動素子1を裏返し、パッド電極29aを固定し、パッド電極29bと、パッケージの電極端子とをボンディングワイヤーで接続する。このように支持する部位が一点になると、導電性接着剤に起因して生じる応力を小さくすることが可能である。
また、圧電振動素子1のパッド電極29a、29bを、上記例よりも大きな間隔をあけて形成してもよい。
【0050】
振動領域12と、圧電振動素子1の被支持部であるパッド電極29a、29bとの間にスリット20を設ける理由は、導電性接着剤の硬化時に発生する応力の広がりを防止することにある。
即ち、導電性接着剤を用いて圧電振動素子のパッド電極をパッケージに支持する場合には、まず第2の支持部本体15aの被支持部(パッド電極)29aに導電性接着剤を塗布し、これを反転してパッケージ等の素子搭載パッドに載置し、少し押さえる。導電性接着剤を硬化させるために高温の炉内に所定の時間保持する。高温状態では第2の支持部本体16a、及びパッケージも共に膨張し、接着剤も一時的に軟化するので、被支持部(パッド電極)29aには応力は生じない。導電性接着剤が硬化した後、第2の支持部本体16a、及びパッケージが冷却してその温度が常温(25℃)に戻ると、導電性接着剤、パッケージ、及び第2の支持部本体16aの各線膨張係数の差により、硬化した道電性接着剤から生じる応力が被支持部(パッド電極)29aに伝わり、更に第2の支持部本体16aから第1及び第3の支持部14、18、振動領域12へと広がる。この応力の広がりを防止するために応力緩和用のスリット20を設けている。
【0051】
スリット20の形成部位と圧電基板10に生じる応力(∝歪)分布との関係は、有限要素法を用いたシミュレーションで解析するのが一般的である。振動領域12における応力が少ない程、周波数温度特性、周波数再現性、周波数エージング特性の優れた圧電振動素子が得られる。
導電性接着剤としては、シリコーン系、エポキシ系、ポリイミド系、ビスマレイミド系等があるが、圧電振動素子1の脱ガスによる周波数経年変化を考慮に入れて、ポリイミド系の導電性接着剤を用いる。ポリイミド系の導電性接着剤は硬いので、圧電振動素子1を離れた二カ所で支持するよりも一カ所で支持する方が、発生する応力の大きさを低減できる。目標とする490MHz帯の電圧制御型圧電発振器(Voltage Controlled Crystal Oscillator:VCXO)用の圧電振動素子1には、一カ所支持を用いた。
つまり、パッド電極29aに導電性接着を塗布し、反転して収容するパッケージの素子搭載パッドに載置し、乾燥して固定・接続し、他方のパッド電極29bにはボンディングワイヤーを用いて導通・接続することにした。図1(a)に示すように、パッド電極29aと、パッド電極29bとは、ほぼ対向して形成されているので、一カ所支持となる。
【0052】
図1に示した圧電基板10は、X軸方向の長さがZ’軸方向の長さより長い、所謂Xロングとした。これは周知のように、ATカット水晶基板のX軸方向の両端に力を加えたときの周波周変化と、Z’軸方向の両端に同じ力を加えたときの周波周変化と、を比べると、Z’軸方向の両端に力を加えたときの方が周波周変化が小さい。つまり、支持点はZ’軸方向に沿って設ける方が、応力による周波数変化は小さくなり、圧電振動素子としては好ましい。
また、図1に示した実施形態例では、薄肉の振動領域12は文字通り矩形をしているが、薄肉の振動領域12の第3の支持部16に連接する一辺12cの両端部に相当する両角隅部が面取りされていてもよい。
【0053】
図1の実施形態例では、励振電極25a、25bの形状として四角形、つまり正方形、または矩形(X軸方向を長辺とする)の例を示したが、本発明の圧電指導素子1に用いる励振電極は、これに限定する必要はない。図3に示す実施形態例は、図中表面側の励振電極25aが円形であり、図中裏面側の励振電極25bは、励振電極25aより十分に大きな四角形である。なお、裏面側の励振電極25bも十分に大きな円形であってもよい。
図4に示す実施形態例は、図中表面側の励振電極25aが楕円形であり、図中裏面側の励振電極25bは、励振電極25aより十分に面積が大きい四角形である。弾性定数の異方性によりX軸方向の変位分布と、Z’軸方向の変位分とが異なり、変位分布をX−Z’平面に平行な面で切った切断面は、楕円形になる。そのため、楕円形状の励振電極25aを用いた場合が最も効率よく、圧電振動素子1を駆動できる。即ち、圧電振動素子1の容量比γ(=C0/C1、ここで、C0は静電容量、C1は直列共振容量)を最小にできる。
また、励振電極25aは長円形であってもよい。
【0054】
図5は、第2の実施形態に係る圧電振動素子2の構成を示す概略図である。図5(a)は圧電振動素子2の平面図であり、同図(b)はP−P断面を+X軸方向からみた断面図であり、同図(c)はQ−Q断面を−Z’軸方向からみた断面図である。
圧電振動素子2が図1に示す圧電振動素子1と異なる点は、応力緩和用のスリット20を設ける位置にある。本実施例では、スリット20が薄肉の振動領域12の一辺12bより離間した第2の傾斜部15b内に形成されている。振動領域12の一辺12bに沿って、スリット20の一方の端縁が、辺12bに接するように第2の傾斜部15b内にスリット20を形成するのではなく、第2の傾斜部15bの両端縁より離間してスリット20を設けている。つまり第2の傾斜部15bには、振動領域12の一辺12bの端縁と連接する極細の細片15b’が残されている。換言すれば、一辺12aとスリット20との間に極細の細片15b’が形成されている。
【0055】
極細の傾斜部15b’を残した理由は次の通りである。即ち、振動領域12に励振電極25a、25bを形成して高周波電圧を印加し励振すると、主振動(S0)の他にインハーモニックモード(A0、S1、A1、S2・)が励振される。望ましいのは主振動(S0)モードのみを閉じ込めモードとし、他のインハーモニックモードは伝搬モード(非閉じ込めモード)とすることである。しかし、振動領域12が薄く成り、その基本波周波数が数百MHzとなると、電極膜のオーミックロスを避けるため、励振電極の膜厚を所定の厚さ以上にする必要がある。このため、プレートバック量が大きくなり、主振動に近接したインハーモニックモードがエネルギー閉じ込めモードになる。この低次のインハーモニックモードの振幅の大きさ(CI値に比例)を抑制するには、インハーモニックモードの定在波が成り立つ条件を妨げるようにすればよい。つまり、図5の振動領域12のZ’軸方向の両端縁の形状は点対称であり、またX軸方向の両端縁の形状も極細の細片15b’を残したことにより非対称となり、低次のインハーモニックモード定在波の振幅を抑えることができる。
【0056】
図6は、第3の実施形態に係る圧電振動素子3の構成を示す概略図である。図6(a)は圧電振動素子3の平面図であり、同図(b)はP−P断面を+X軸方向からみた断面図であり、同図(c)はQ−Q断面を−Z’軸方向からみた断面図である。
圧電振動素子3が図1に示す圧電振動素子1と異なる点は、第2の支持部15に2個の応力緩和用のスリットが並行に設けられている点である。即ち、第2の支持部本体15aの面内に第1のスリット20aが設けられると共に、第2の傾斜部15bの面内に第2のスリット20bが形成されている。第2の支持部本体15aの面内、及び第2の傾斜部15bの面内に夫々個別のスリットを形成することは、既に説明したので、ここでは省略する。
図6(a)に示す平面図のように、第1のスリット20a、及び第2のスリット20bを単にX軸方向に並置するのではなく、図7(a)の平面図に示すように、Z’軸方向に互い違いになるようにずらして配置してもよい。2個のスリット20a、20bを設けた圧電振動素子3の方が、導電性接着剤に起因して生じる応力を、振動領域12まで広げないように抑圧する効果を高めることが可能である。また、図7(b)に示す変形例の構成は、図1、図6に夫々示すスリット20の効果を合わせ持つようにした圧電振動素子であり、スリット20は、第2の傾斜部15bと第2の支持本体15aとに跨って構成されている。
【0057】
図8は、圧電基板10の両面に凹陥部11、11’を形成すると共に、圧電基板10の外形及びスリット20の形成に係る製造工程フローチャートである。ここでは、圧電ウェハーとして水晶ウェハーを例にし、断面図は断面のみを示す。工程S1では、両面がポリッシュ加工された所定の厚さ、例えば80μmの水晶ウェハー10Wを、十分に洗浄し、乾燥した後、表裏面にスパッタリング等により、クロム(Cr)を下地にし、その上に金(Au)を積層した金属膜(耐蝕膜)Mを夫々成膜する。
工程S2では、表裏面の金属膜Mの上に夫々フォトレジスト膜(レジスト膜と称す)Rを両面に塗布する。工程S3では、露光装置とマスクパターンを用いて、表裏面の凹陥部に相当する部位のレジスト膜Rを露光する。感光したレジスト膜Rを現像して感光したレジスト膜を剥離すると、表裏面の凹陥部に相当する位置の金属膜Mが夫々露出する。夫々のレジスト膜Rから露出した各金層膜Mを王水等の溶液を用いて溶かして除去すると、表裏面の凹陥部に相当する位置の水晶面が露出する。
【0058】
工程S4では、露出した水晶面をフッ化水素酸(フッ酸)とフッ化アンモニウムとの混合液を用いて、所望の厚さになるまで表裏面からエッチングする。工程S5では、所定の溶液を用いて両面のレジスト膜Rを剥離し、更に露出した両面の金属膜Mを王水等を用いて除去する。この段階で水晶ウェハー10Wは、両主面に夫々少しずれて凹陥部11、11’が形成され、夫々が格子状に規則的に並んだ状態となる。工程S6では、工程S5で得られた水晶ウェハー10Wの両面に金属膜M(Cr+Au)を成膜する。工程S7では、工程S6で形成された金属膜M(Cr+Au)の両面に夫々レジスト膜Rを塗布する。
工程S8では、露光装置と所定のマスクパターンを用いて、圧電基板10の外形とスリット(図示せず)とに相当する部位の各レジスト膜Rを表裏両面から感光し、現像して、各レジスト膜Rを剥離する。更に、露出した金属膜Mを王水等の溶液で溶かして除去する。
【0059】
工程S9では露出した水晶面をフッ化水素酸(フッ酸)とフッ化アンモニウムとの混合液を用いてエッチングし、圧電基板10の外形とスリット(図示せず)を形成する。工程S10では、残ったレジスト膜Rを剥離し、露出した余分の金属膜Mを溶かして除去する。この段階では水晶ウェハー10Wは、圧電基板10が支持細片で連接し、格子状に規則的に並んだ状態となる。本発明の特徴は、工程S10に示すように、圧電基板の両主面に夫々凹陥部11、11’が形成されて振動領域12となり、振動領域12に連設された第3及び第4の支持部16、17が、圧電基板10の中心に対して点対称に形成されていることである。
工程S10が終了した後、水晶ウェハー10Wに格子状に規則的に並んだ各圧電基板10の振動領域12の厚さを、例えば光学的手法を用いて計測する。計測した各振動領域12の厚さが所定の厚さより厚い場合には、夫々厚さの微調整を行って所定の厚さの範囲に入るようにする。
【0060】
水晶ウェハー10Wに形成された各圧電基板10の振動領域12の厚さを、所定の厚さの範囲内に調整した後、各圧電基板10に励振電極25a、25b、及びリード電極27a、27bを形成する手順を図9に示す製造工程フローチャートを用いて説明する。工程S11では、水晶ウェハー10Wの表裏全面にスパッタリング等でニッケル(Ni)薄膜を成膜し、その上に金(Au)薄膜を積層して、金属膜Mを成膜する。次に工程S12では、金属膜Mの上に夫々レジストを塗布しレジスト膜Rを成膜する。工程S13では、マスクパターンMkを用いて励振電極25a、25b、及びリード電極27a、27bに相当する部位のレジスト膜Rを露光する。工程S14では、感光したレジスト膜Rを現像して不要のレジスト膜Rを溶液を用いて剥離する。次に、レジスト膜Rが剥離して露出した金属膜Mを王水等の溶液で溶かして除去する。工程S15では、金属膜M上に残った不要のレジスト膜Rを剥離すると、各圧電基板10上には励振電極25a、25b、及びリード電極27a、27b等が形成されている。水晶ウェハー10Wに連接するハーフエッチングされた支持細片を折り取りすることにより、分割された圧電振動素子1が得られる。
【0061】
ところで、水晶をウェットエッチングすると、Z軸に沿ってエッチングが進行していくが、各結晶軸の方向に応じてエッチングの速度が変わるという水晶特有のエッチング異方性を有している。従って、このエッチングの異方性により現出するエッチング面は、各結晶軸の方向に応じて違いが現れることは、これまでエッチング異方性を研究テーマにした数多くの学術論文や先行特許文献において論じられてきた。このような背景があるにもかかわらず、水晶のエッチング異方性について明確に系統立てられた資料がない。小型圧電振動素子を製作するには、今後ますますナノ加工技術が必要とされる。しかしながら、エッチングの諸条件(エッチング溶液の種類や、エッチングレート、エッチング温度、等)の違いによるものなのか、文献によっては、現出する結晶面に相異があるものも多々見受けられるのが現状である。
そこで、本発明者は、本発明に係る圧電振動素子をフォトリソグラフィー技法と、ウェットエッチング技法とを用いて製造するに当たり、エッチングシミュレーションと、試作実験、並びにナノレベルでの表面分析と、観察とを繰り返し、本発明に係る圧電振動子は以下の態様となることが判明したので、以下詳細に説明をする。
【0062】
図10、図11は、エッチングにより形成される、ATカット水晶ウェハー10Wの両面の凹陥部11、11’の断面形状を説明する図である。図10(a)は、図8の工程S5における水晶ウェハー10Wの平面図である。この段階では、水晶ウェハー10Wの上下両面に凹陥部11、11’が格子状で且つ規則的に形成されている。図10(b)は、X軸方向の切断面(切り口)であり、上側の凹陥部11、及び下側の凹陥部11’の各壁面は垂直の壁面ではなく傾斜壁面を呈している。つまり、上側の凹陥部11の−X軸方向の壁面は傾斜壁面X1を形成し、+X軸方向の壁面は傾斜壁面X2を形成している。また、下側の凹陥部11’の−X軸方向の壁面は傾斜壁面X2を形成し、+X軸方向の壁面は傾斜壁面X1を形成している。各傾斜壁面は振動領域12の中心に対し点対称にエッチングされる。このように、エッチングの進行は結晶軸方向に異方性を有するので、エッチング用開口部は上下面で少しずらして配置するのが一般的である。
【0063】
図10(c)〜(e)は、凹陥部11、11’の壁面X1、X2、及び溝部の壁面X3の拡大図である。上側の凹陥部11の−X軸方向の傾斜壁面X1は、図10(c)に示すように、水晶ウェハー10Wの平面に対し略62度の傾斜でエッチングされる。また、+X軸方向の傾斜壁面X2は、水晶ウェハー10Wの平面に対し直交(90度)して少しエッチングが進むが、その後は緩やかな傾斜でエッチングが進行する。下側の凹陥部11’の−X軸方向の壁面は、傾斜壁面X2となり、−X軸方向の壁面は傾斜壁面X1となる。つまり、上側の凹陥部11の傾斜壁面と、下側の凹陥部11’の傾斜壁面とは、振動領域12の中心に対し点対称の関係にある。
上側の凹陥部11の底面と、下側の凹陥部11’との底面により形成される振動領域12の両面は、水晶ウェハーの元の平面と平行にエッチングされる。つまり、振動領域12は表裏面が平行な平板状となる。
【0064】
図10(d)は、圧電基板10の外形、及びスリット20を示す断面図である。図8の工程S9のエッチング工程で外形、及びスリット20が形成され、−X軸方向(図中左方)の端部に、第1の支持部本体14a、及び第1の傾斜部14bからなる第1の支持部14が形成され、+X軸方向(図中左右方)の端部に、第2の支持部本体15a、及び第2の傾斜部15bからなる第2の支持部15が形成される。第2の支持部本体15aの面内にはスリット20が形成されている。
図10(e)は、水晶ウェハー10Wに形成した折り取り用の溝部の断面図で、図8の工程S9におけるエッチング工程で形成される。X軸に直交して形成された溝部の断面は楔型を呈している。これは基板10の上側の溝部の壁面X3が、−X軸方向の壁面X1と、+X軸方向の壁面X2とで形成されるために、楔型となるのである。基板10の下側の溝部は、ほぼ振動領域12の中心に関し、上側の溝と点対称に形成される。
凹陥部11、11’が形成された面に電極を設ける場合は、+X軸方向に形成される壁面X2の垂直の壁面に注意する必要がある。電極膜の断裂が起り易いので避ける方が望ましい。
【0065】
図11は、圧電基板10に形成された表側、及び裏側凹陥部11、11’の、特にZ’軸方向の断面図の壁面を説明する図である。図11(a)は、図8の工程S5における水晶ウェハー10Wの平面図である。図11(b)は、水晶ウェハー10Wの上側凹陥部11、及び下側凹陥部11’のZ’軸方向に沿った切断面(切り口)である。上側凹陥部11の−Z’軸方向の壁面は傾斜壁面Z1が形成され、+Z’軸方向の壁面は傾斜壁面Z2が形成される。下側凹陥部11’はほぼ振動領域12の中心に関し、上側凹陥部11と点対称の関係に形成される。つまり、下側凹陥部11’ の−Z’軸方向の壁面は、傾斜壁面Z2が形成され、+Z’軸方向の壁面は傾斜壁面Z1が形成される。
【0066】
図11(c)〜(e)は上側、及び下側凹陥部11、11’の壁面Z1、Z2、及び溝部の壁面Z3の拡大図である。上側凹陥部11の−Z’軸方向の壁面は、図11(c)の図中左方に示すように、水晶ウェハー10Wの平面に対し比較的緩やかな傾斜でエッチングされ、傾斜壁面Z1となる。+Z’軸方向の壁面は、図11(c)の図中右方に示すように、傾斜壁面Z2を呈する。つまり、はじめ水晶ウェハー10Wの平面に対し急な傾斜壁面Z2aでエッチングされるが、その後は緩やかな傾斜壁面Z2bでエッチングが進行する。下側凹陥部11’のZ’軸方向に沿った壁面は、ほぼ振動領域12の中心に関し、上側凹陥部11と点対称な関係になる。
図11(d)は外形加工が施された後の圧電基板10の外形断面図であり、同図(c)の2つの破線Zc1、Zc2の所からエッチングにより外形加工されたものである。図8の工程S9のエッチング工程で外形が形成され、−Z’軸方向(図中左方)の端部に第3の支持部本体16a及び第3の傾斜部16bからなる第3の支持部16が形成され、+Z’軸方向(図中左右方)の端部に第4の支持部本体17a及び第4の傾斜部17bからなる第4の支持部17が形成される。第3の支持部16と第4の支持部17とは、振動領域12の中心に関しほぼ点対称に形成される。
【0067】
図11(e)はZ’軸方向に直交して形成した上側、及び下側溝部の断面図で、共に楔型断面Z3を呈する。この上側、及び下側の溝部は、水晶ウェハー10Wに折り取り用の溝部である。上側溝部の壁面Z3は、上側凹陥部11の−Z’軸方向の壁面Z1と、+Z’軸方向の壁面Z2(壁面Z2aと壁面Z2b)とで形成されるために、ほぼ楔型の断面を呈する。下側溝部の壁面Z3は、上側溝部の壁面と中心に関してほぼ対称に形成される。
X軸方向、Z’軸方向に折り取り用溝部を形成すると、その断面形状は楔型となり、折り取りが容易である。
本発明の特徴は、圧電基板10の両主面よりエッチングを進め、両主面に夫々対向する凹陥部11、11’を形成して振動領域12とした点にあり、エッチングに要する加工時間を半減することが可能となった。また、図11(d)に示すように、Zc1、Zc2で示す2つの破線の図中外側を共にエッチングにより取り去ることにより、圧電基板の小型化が図れたことも特徴の一つである。圧電基板10の両主面よりエッチングを進めるので、圧電基板10の夫々の主面からエッチングにより掘られる深さを浅くすることができるので、製造時に、ウェハー内の各個片がレイアウトされている領域間で、或いはウェハー間において、薄肉となる振動部の厚みのバラツキを低減することができた。この理由として、圧電基板10をエッチング溶液の中に長時間、浸していると、エッチング溶液内での溶液の濃度に差が生じる虞があり、当該濃度差に起因して、圧電基板10に対するエッチングの均一性が保てなくなる虞があり、ウェハー内の各個片がレイアウトされている領域間で、或いはウェハー間で前記振動部の厚みのバラツキが発生してしまい、厚みの制御が困難となる問題があるからである。
【0068】
更に、図11(c)、(d)に示すように、振動領域として不要な図中両端部を削除することを前提として製造方法を確立した。先行技術として掲げた従来の厚肉部を備えた構造に比べて、振動領域となる平坦な超薄部の面積を確保しながらも、圧電振動素子1のサイズを小型化することを実現できた。
また、更に前述したように、ATカット水晶基板のX軸方向の両端に力を加えた(実装に起因した応力・歪みを前記力として説明している)ときの周波周変化と、Z’軸方向の両端に同じ力を加えたときの周波周変化と、を比べると、Z’軸方向の両端に力を加えたときの方の周波周変化量を小さくできるため、圧電基板10のX軸方向の長さをZ’軸方向の長さより長い、所謂Xロングとしたので、X軸方向に振動部の面積を広く確保することができた。
また、本発明に係る圧電振動素子1の振動部の全周に亘って、振動部の主面に対して表裏のうちの少なくともどちらか一方には厚肉の支持部を設けているので、振動部の端部が外部に露出することがないので、圧電振動素子1の製造時や、圧電振動素子1を容器に実装し、圧電振動子を製造する過程、等で圧電振動素子1を何かにぶつけてしまう等による圧電振動素子1の耐衝撃性等の信頼性の観点でも、強度を高く維持しているので、信頼性を高く維持することができている。
この結果、振動領域に励振される厚み滑り振動モードの変位分布が、弾性定数の異方性によりX軸方向に長径を有する楕円状となることを十分に考慮して設計することが可能となり、長軸対短軸の比を、1.26:1、製造寸法のバラツキ等を考慮して、1.14〜1.39:1の範囲程度となるように十分設計可能となった。
【0069】
図12は、図1に示した圧電振動素子1の詳細な図であり、同図(a)は斜視図であり、同図(b)は図1(a)におけるQ−Q断面の切り口である。図12(b)に示すように、圧電振動素子1の外形では、X軸に交わる端面に傾斜面が現出し、−X軸側の端面には傾斜面1が現出し、+X軸側の端面には傾斜面2が現出している。傾斜面1と傾斜面2のXY’平面に平行な断面形状が、異なっていることが判明した。
また、傾斜面1、2共に、圧電基板の主表面と交わる付近には、図10(b)、(e)に示すような+X軸方向に形成される壁面X2の垂直の壁面は現出していない。この理由は、凹陥部11を形成するのに要するエッチング時間に比べて、傾斜面1と傾斜面2の形成に要する時間は、圧電基板(水晶基板)を表裏からエッチングし、貫通するまでエッチングするので、エッチング時間が十分に長いため、オーバーエッチングの作用により垂直の壁面が現出しないのである。
傾斜面1を構成する傾斜面a1、a2は、X軸に対してほぼ対称関係にあり、傾斜面2を構成する傾斜面b1、b2、b3、b4では、b1とb4、b2とb3とが、各々X軸に対してほぼ対称関係にあることが判明した。更に、傾斜面a1、a2のX軸に対する傾斜角度αと、傾斜面b1、b4のX軸に対する傾斜角度βとは、β<αの関係にあることが分かった。
【0070】
図13に示した実施形態例の圧電振動素子4は、図1に示した圧電振動素子1の変形例であり、第2の支持部本体15aの外端部寄りの一部15a’の厚みをエッチング等により薄くした構造をしている。この理由は第2の支持部本体15a’に形成したパッド電極29bと、外部の電極端子とをボンディングワイヤーBWで接続する際に、ボンディングワイヤーの頂点部分が、被せる蓋部材に接触しないようにするためである。
【0071】
図1、図5、図6、図7の実施形態例に示すように、高周波の圧電振動素子が小型化されると共に、振動領域の支持が強固であり、振動、衝撃等に強い圧電振動素子が得られるという効果がある。更に、スリットを設けることにより、接着・固定に起因する応力の広がりを抑圧することができるので、周波数温度特性、CI温度特性、及び周波数エージング特性に優れ、且つ主振動のCI値が小さく、主振動のCI値に対する近接したスプリアスのCI値の比、即ちCI値比の大きな圧電振動素子が得られるという効果がある。
また、圧電振動素子1を支持する部位が一点になると、導電性接着剤に起因して生じる応力を小さくすることが可能である。
図6の実施形態例に示すように、第2の支持部に2つのスリットを設けることにより、圧電振動素子を接着・固定する際に生じる応力の広がりを、よりよく抑圧することができるため、周波数再現性、周波数温度特性、CI温度特性、及び周波数エージング特性に優れ圧電振動素子が得られるという効果がある。
また、図1、図5、図6のように振動領域に接してその端部に突設部を設けることにより圧電振動素子の耐衝撃性、耐振動性が強化されるという効果がある。
【0072】
X軸の周りに回転した圧電基板を形成することにより、要求仕様をより適したカットアングル及び周波数で構成することが可能であり、且つ仕様にそった周波数温度特性を有する高周波基本波圧電振動素子が得られるという効果がある。
また、圧電基板に水晶ATカット水晶基板を用いることにより、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技法に関する永年の実績・経験が活用できるので、圧電基板の量産が可能であるのみならず、高精度の圧電基板が得られ、圧電振動素子の歩留まりが大幅に改善されるという効果がある。
また、図1に示すように、第2の支持部15が、振動部と連設した一方の端縁から他方の端縁に向かって離間するにつれて厚みが増加する第2の傾斜部15bと、この第2の傾斜部15の他方の端縁に連設する第2の支持部本体15aと、を有するように構成すれば、高周波で基本波の圧電振動素子が小型化されると共に、振動部の支持が強固であり、振動、衝撃等に強い圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0073】
図14は、本発明に係る実施形態の圧電振動子5の構成を示す図であり、同図(a)は縦断面図であり、同図(b)は蓋部材を除いた平面図である。圧電振動子5は、例えば上記の圧電振動素子1と、圧電振動素子1を収容するパッケージとを備えている。パッケージは、矩形の箱状に形成されているパッケージ本体40と、金属、セラミック、ガラス等から成る蓋部材49とから成る。
パッケージ本体40は、図14に示すように、第1の基板41と、第2の基板42と、第3の基板43とを積層して形成されており、絶縁材料として、酸化アルミニウム質のセラミック・グリーンシートを成形し、箱状とした後で、焼結して形成される。実装端子45は、第1の基板41の外部底面に複数形成されている。第3の基板43は中央部が除去された環状体であり、第3の基板43の上部周縁に例えばコバール等の金属シールリング44が形成されている。
【0074】
第3の基板43と第2の基板42とにより、圧電振動素子1を収容する凹部(キャビティ)が形成される。第2の基板42の上面の所定の位置には、導体46により実装端子45と電気的に導通する複数の素子搭載パッド47が設けられている。素子搭載パッド47の位置は、圧電振動素子1を載置した際に第2の支持部本体14aに形成したパッド電極29aに対応するように配置されている。
圧電振動子5を固定する際にはまず、圧電振動素子1のパッド電極29aに導電性接着剤30を塗布し、これを反転してパッケージ本体40の素子搭載パッド47に載置して荷重をかける。導電性接着剤30の特性として、接着剤30に起因する応力(∝歪)の大きさは、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリイミド系接着剤の順で大きくなる。また、脱ガスは、ポリイミド系接着剤、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤の順で大きくなる。導電性接着剤30としては経年変化を考慮して脱ガスの少ないポリイミド系接着剤を用いることにした。
【0075】
パッケージ本体40に搭載された圧電振動子1の導電性接着剤30を硬化させるために、所定の温度の高温炉内に所定の時間入れる。導電性接着剤30を硬化させた後、表面側になったパッド電極29bと、パッケージ本体40の電極端子48とをボンディングワイヤーBWで導通接続する。図14(b)に示すように、圧電振動素子1をパッケージ本体40に支持・固定する部分は、一カ所であるため、支持固定により生じる応力の大きさは小さくすることが可能となる。
アニール処理を施した後、励振電極25a、25bに質量を付加するか、又は質量を減じて周波数調整を行う。パッケージ本体40の上面に形成したシールリング44上に、蓋部材49を載置し、真空中か窒素N2ガス中で蓋部材49をシーム溶接して密封する。または、パッケージ本体40の上面に塗布した低融点ガラスに蓋部材49を載置し、溶融して密着する方法もある。パッケージのキャビティ内は真空にするか、又は窒素N2ガス等の不活性ガスで充填して、圧電振動子5は完成される。
パッド電極29bとパッケージの電極端子48とをボンディングワイヤーを用いて電気的に接続している。このように圧電振動素子1を支持する部位が一点になると、導電性接着剤に起因して生じる応力を小さくすることが可能である。
【0076】
図1に示す圧電振動素子1は、圧電基板10の上下面に近接して夫々パッド電極29a、29bを形成している。圧電振動素子1をパッケージに収容する際に、圧電振動素子1を裏返し、パッド電極29aとパッケージの端子電極とを導電性接着剤で固定・接続する。表面側になったパッド電極29bと、パッケージの電極端子とをボンディングワイヤーBWで接続する。このように圧電振動素子1を支持する部位が一点になると、導電性接着剤に起因して生じる応力を小さくすることが可能である。また、パッケージに収容するに当たり、圧電振動素子1を裏返して、より大きな励振電極25bを上面にすると、圧電振動素子1の周波数微調が容易となる。
【0077】
図15は、他の実施形態の圧電振動子5の構成を示す図であり、同図(a)は縦断面図であり、同図(b)は蓋部材を除いた平面図である。図15(b)の平面図に示すように、パッド電極29a、29bの間隔を離して、同一面に配置する。図14に示した実施形態例と異なる点は、圧電振動子1の支持の方法である。図14の実施形態例では一カ所支持であるのに対し、図15の実施形態例では圧電振動素子1の一方の面の第2の支持部15の2カ所(2点)に導電性接着剤を塗布して、導通と支持・固定を図るようにした構造である。低背化に適した構造であるが、導電性接着剤に起因する応力が少し大きくなる虞がある。そこで、第3の実施形態である図6や図7に示すようなスリットを2つ設けた圧電振動素子を採用することで、前記応力の振動領域への影響を抑圧できることが期待できる。または、導電性接着剤の硬度が比較的硬い場合には、導電性接着剤を塗布する「2カ所(2点)」の中心間距離を狭めることにより、前記2点間で生じる実装に係る歪み(応力)を低減させる手法もある。また一方、導電性接着剤の硬度が比較的柔らかい、シリコーン系接着剤を用いることにより、導電性接着剤に緩衝性を持たせ、前記2点間で生じる実装に係る歪み(応力)を低減させる手法もある。
以上の圧電振動子5の実施の形態例では、パッケージ本体40に積層板を用いた例を説明したが、パッケージ本体40に単層セラミック板を用い、蓋体に絞り加工を施したキャップを用いて圧電振動子を構成してもよい。
【0078】
図14の実施形態例に示すように、高周波の圧電振動子1が小型化されると共に、圧電振動素子1を支持する部位が一点になると、導電性接着剤に起因して生じる応力を小さくすることができる。この結果、周波数再現性、周波数温度特性、CI温度特性、及び周波数エージング特性に優れた圧電振動子が得られるという効果がる。更に、主振動のCI値を小さく、主振動のCI値に対する近接したスプリアスのCI値の比、即ちCI値比の大きな圧電振動素子が得られ、且つ容量比γの小さな圧電振動子5が得られるという効果がある。
また、図15の実施形態例に示すように、二点支持の圧電振動子を構成することにより、低背化した圧電振動子5を得ることができるという効果がある。スリットを2つ設けることで二点支持に起因した支持応力の振動部への影響を抑圧できる。
【0079】
図16は、本発明に係る圧電デバイス6の実施形態を示す縦断面図である。電子デバイス6は、本発明の圧電振動素子1(図16では圧電振動素子1の例を示したが、本発明の他の圧電振動素子であってもよい)と、電子部品の1つであり、温度センサーとしての感温素子であるサーミスタThと、圧電振動素子1及びサーミスタThを収容するパッケージと、を概略備えている。パッケージは、パッケージ本体40aと、蓋部材49とを備えている。パッケージ本体40aは、上面側に圧電振動素子1を収容するキャビティ31が形成され、外部裏面側にサーミスタThを収容する凹部32が形成されている。キャビティ31の内底面の端部に複数の素子搭載用パッド47が設けられ、各素子搭載用パッド47は内部導体46で複数の実装端子45と導通接続されている。圧電振動素子1のパッド電極29aに導電性接着剤30を塗布し、これを反転し、素子搭載用パッド47に載置する。パッケージ本体40aの上部には、コバール等からなるシールリングリング44が焼成されており、このシールリングリング44に蓋部材49を載置し、抵抗溶接機等を用いて溶接し、キャビティ31を気密封止する。キャビティ31内は真空にしてもよいし、不活性ガスを封入してもよい。
【0080】
以上の実施形態例では、パッケージ本体40aの外部下面側に凹部32を形成し、電子部品を搭載した例を説明したが、パッケージ本体40aの内部底面に凹部32を形成し、電子部品を搭載してもよい。
また、圧電振動素子1とサーミスタThとをパッケージ40aに収容した例を説明したが、パッケージ40aに収容する電子部品としては、サーミスタ、コンデンサー、リアクタンス素子、半導体素子のうち少なくとも一つを収容して電子デバイスを構成することが望ましい。
【0081】
図16に示す実施形態例は、圧電振動素子1とサーミスタThとをパッケージ40aに収容した例である。このように構成すると、感温素子のサーミスタThが圧電振動素子1の極めて近くに位置されているので、圧電振動素子1の温度変化を素早く感知することができるという効果がある。また、本発明の圧電振動素子と上記の電子部品とで電子デバイスを構成することにより、高周波、且つ小型の電子デバイスが構成できるので、多方面の用途に利用できるという効果がある。
また、電子部品に可変容量素子、サーミスタ、インダクタ、コンデンサーのうちの何れかを用いて電子デバイス(圧電デバイス)を構成すると、要求仕様により適した電子デバイスが、小型で且つ低コストで実現できるという効果がある。
【0082】
図17は、本発明の実施形態例に係る電子デバイスの一種である圧電発振器7の構成を示す図であって、同図(a)は縦断面図であり、同図(b)は蓋部材を除いた平面図ある。圧電発振器7は、パッケージ本体40b、及び蓋部材49と、圧電振動素子1と、圧電振動素子1を励振する発振回路を搭載したIC部品51と、電圧により容量が変化する可変容量素子、温度により抵抗が変化するサーミスタ、インダクタ等の電子部品52の少なくとも1つと、を備えている。
圧電振動素子1のパッド電極29aに導電性接着剤(ポリイミド系)30を塗布し、これを反転してパッケージ本体40bの素子搭載パッド47に載置し、パッド電極29aと素子搭載パッド47との導通を図る。上面側になったパッド電極29bと、パッケージ本体40bの他の電極端子48とをボンディングワイヤーにて接続し、IC部品51の1つの電極端子55との導通を図る。IC部品51をパッケージ本体40bの所定の位置に固定し、IC部品51の端子と、パッケージ本体40bの電極端子55とをボンディングワイヤーBWにて接続する。また、電子部品52は、パッケージ本体40bの所定に位置に載置し、金属バンプ等を用いて接続する。パッケージ本体40bを真空、あるいは窒素等の不活性気体で満たし、パッケージ本体40bを蓋部材49で密封して圧電発振器7を完成する。
パッド電極29aとパッケージの電極端子とをボンディングワイヤーBWで接続する工法は、圧電振動素子1を支持する部位が一点になり、導電性接着剤に起因して生じる応力を小さくすることが可能である。また、パッケージに収容するに当たり、圧電振動素子1を裏返して、より大きな励振電極25bを上面にしたので、電子デバイス(圧電発振器)7の周波数微調が容易となる。
【0083】
図17の実施形態に示した圧電発振器7は、同一圧電基板上に圧電振動素子1、IC部品51及び電子部品を配置したが、図18に示した実施形態の圧電発振器7は、H型のパッケージ本体60を用い、上部に形成したキャビティ31に圧電振動素子1を収容し、キャビティ内部を真空、又は窒素N2ガスで満たし、蓋部材61で密封する。下部には圧電振動素子1を励振する発振回路、増幅回路等を搭載したIC部品51と、可変容量素子、及び必要に応じてインダクタ、サーミスタ、コンデンサー等の電子部品52と、を金属バンプ(Auバンプ)68を介して、パッケージ本体60の端子67に導通・接続する。
本発明の電子デバイス(圧電発振器)7は、圧電振動素子1と、IC部品51及び電子部品52とを分離し、圧電振動素子1を単独で気密封止しているために、圧電発振器7の周波数エージングに優れている。
【0084】
図17、図18に示すように、圧電デバイス(例えば電圧制御型圧電発振器)を構成することにより、周波数再現性、周波数温度特性、エージング特性が優れ、小型で且つ高周波(例えば490MHz帯)の電圧制御型圧電発振器が得られるという効果がある。また、圧電デバイスは基本波の圧電振動素子1を用いているので、容量比が小さく、基本波圧電振動素子を用いているため周波数可変幅を広く、S/N比の良好な電圧制御型圧電発振器が得られるという効果がある。
また、圧電デバイスとして圧電発振器、温度補償型圧電発振器、及び電圧制御型圧電発振器等を構成することが可能であり、周波数再現性、エージング特性が優れた圧電発振器、周波数温度特性に優れた温度補償圧電発振器、周波数が安定で可変範囲の広く且つS/N比(信号雑音比)の良好な電圧制御型圧電発振器を構成することが得られるという効果がある。
【0085】
図19は本発明に係る電子機器の構成を示す概略構成図である。電子機器8は上記の圧電振動子5を備えている。圧電振動子5を用いた電子機器8としては、伝送機器等が挙げられる。これらの電子機器8において圧電振動子6は、基準信号源、あるいは電圧可変型圧電発振器(VCXO)等として用いられ、小型で、特性の良好な電子機器を提供できる。
図19の模式図に示すように、本発明の圧電振動子を電子機器の用いることにより、高周波で周波数安定度に優れ、S/N比の良好な基準周波数源を備えた電子機器が構成できるという効果がある。
【0086】
[変形実施形態]
圧電振動素子の実装に起因した応力を更に軽減、抑圧する手法として、以下に示すごとき構造を採用することができる。
図20(a)の実施形態における圧電基板10は、振動領域12を有する薄肉部と、前記薄肉部の周縁に設けられ、当該薄肉部よりも厚い厚肉部とを備えた圧電基板10であって、圧電基板においては、厚肉支持部13には、縁辺の方向に緩衝部Sを介してマウント部Fが横並びで接続され、緩衝部Sは、マウント部と厚肉支持部との間にスリット20を有し、マウント部Fは、マウント部Fと緩衝部Sと厚肉支持部13との並ぶ方向に対して直交方向の両端部に、面取り部21を有していることを特徴とする。
図20(b)の圧電基板10は、振動領域12を有する薄肉部と、薄肉部の周縁に設けられ、薄肉部よりも厚い厚肉支持部13とを備えた圧電基板10であって、厚肉支持部13には、緩衝部Sを介してマウント部Fが横並びで接続され、緩衝部Sは、マウント部Fと厚肉支持部13との間にスリット20を有し、マウント部は、マウント部Fと緩衝部Sと厚肉支持部13との並ぶ方向に対して直交方向の両端部に切欠き部22を有し、スリット20の長手方向は直交方向と平行であり、マウント部Fの直交方向の幅を、スリットの長手方向の幅より狭く、スリットの長手方向の両端部は、マウント部Fの両端部よりも緩衝部Sの直交方向の外周寄りにあることを特徴とする。
図20(c)の圧電基板10は、振動領域12を有する薄肉部と、薄肉部の周縁に設けられた厚肉支持部13とを備えた圧電基板10であって、厚肉支持部13には、緩衝部Sとマウント部Fが順に連結され、緩衝部Sは、マウント部Fと厚肉支持部13との間にスリット20を有し、マウント部Fは、マウント部Fと緩衝部Sと厚肉支持部13との並ぶ方向に対して直交方向の両端部に、切欠き部22を有していることを特徴とする。
【0087】
図21は、図20の構造に対し、2点支持、即ちマウント部F1、及びマウント部F2の形態をとることを特徴としている。
なお、図20、図21においては、厚肉支持部13の各支持部14、15、16の内壁に傾斜部が図示されている一方で、また厚肉支持部13の外側の側壁面には図12に示した如き傾斜面が図示されていないが、これらの傾斜部、傾斜面は図12に示しているように対応する部位に形成されることになる。
なお、図20、図21中の各符号は、上記各実施形態の同じ符号が示す部位と対応している。
【0088】
[変形実施例 その2]
更に、図22(a)は圧電振動素子1の平面図であり、同図(b)は圧電振動素子1のパッド電極29a(マウント部F)の実施形態例の拡大図平面図を示し、同図(c)はマウント部Fの断面図を示している。このマウント部Fにおいては、接着強度を向上させるために凹凸状とすることによって面積を稼いでいる。
【符号の説明】
【0089】
1、2、3、4…圧電振動素子、5、圧電振動子、6、7…圧電デバイス、8…電子機器、10…圧電基板、10W…水晶ウェハー、11、11’…凹陥部、12…振動領域、12a、12b、12c、12d…振動領域の一辺、13…支持部、14…第1の支持部、14a…第1の支持部本体、14b…第1の傾斜部、15…第2の支持部、15a…第2の支持部本体、15b…第2の傾斜部、15b’…極細片、16…第3の支持部、16a…第3の支持部本体、16b…第3の傾斜部、17…第4の支持部、17a…第4の支持部本体、17b…第4の傾斜部、20…スリット、20a…第1のスリット、20b…第2のスリット、21…面取り部、22…切欠き部、25a、25b…励振電極、27a、27b…リード電極、29a、29b…パッド電極、30…導電性接着剤、31…キャビティ、32…凹部、33…電子部品搭載用パッド、40、40a、40b…パッケージ本体、41…第1の基板、42…第2の基板、43…第3の基板、44…シールリング、45…実装端子、46…導体、47…素子搭載パッド、48…電極端子、49…蓋部材、51…IC部品、52電子部品、55…電極端子、60…パッケージ本体、61…蓋部材、65…実装端子、66…導体、67…部品端子、68…金属バンプ(Auバンプ)、Th…サーミスタ、F、F1、F2…マウント部、S…緩衝部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動領域を含む振動部と、
当該振動部と一体化され、前記振動部の厚みよりも厚い支持部と、
を有する圧電基板と、
前記振動領域に表裏で対向するように配置された一対の励振電極と、
を有する圧電振動素子であって、
前記支持部は、
前記振動部の主面の対向する2つの辺に沿って前記振動部を挟むように夫々設けられた第1の支持部と第2の支持部と、
当該第1、第2の支持部の各々の一方の端部を連設する第3の支持部と、
前記第1、第2の支持部の各々の他方の端部を連設する第4の支持部と、
を備え、
前記第1、第2の支持部の表裏の主面は前記振動部の表裏の主面よりも突設され、
前記第3の支持部の一方の主面は前記振動部の一方の主面よりも突設され、
前記第3の支持部の他方の主面と前記振動部の他方の主面とは同一面であり、
前記第4の支持部の一方の主面は前記振動部の他方の主面よりも突設され、
前記第4の支持部の他方の主面と前記振動部の一方の主面とは同一面であることを特徴とする圧電振動素子。
【請求項2】
前記圧電基板は、
水晶の結晶軸である電気軸としてのX軸と、機械軸としてのY軸と、光学軸としてのZ軸と、からなる直交座標系の前記X軸を中心として、
前記Z軸を前記Y軸の−Y方向へ所定の角度だけ傾けた軸をZ’軸とし、
前記Y軸を前記Z軸の+Z方向へ前記所定の角度だけ傾けた軸をY’軸とし、
前記X軸と前記Z’軸に平行な面で構成され、
前記Y’軸に平行な方向を厚みとする水晶基板であることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動素子。
【請求項3】
前記第3の支持部の突設部が、前記Z’軸のプラス側にあり、
前記第4の支持部の突設部が、前記Z’軸のマイナス側にあることを特徴とする請求項2に記載の圧電振動素子。
【請求項4】
前記第2の支持部は、
前記振動部と連設した一方の端縁から他方の端縁に向かって離間するにつれて厚みが増加する第2の傾斜部と、
当該第2の傾斜部の前記他方の端縁に連設する第2の支持部本体と、
を有することを特徴とする請求項1乃至3のうち何れか一項に圧電振動素子。
【請求項5】
前記第2の支持部には、
少なくとも一つのスリットが設けられていることを特徴とする請求項4に記載の圧電振動素子。
【請求項6】
前記スリットは、
前記第2の傾斜部と前記第2の支持部本体との境界部に沿って前記第2の支持部本体に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の圧電振動素子。
【請求項7】
前記スリットは、
前記第2の傾斜部内に前記振動領域の一辺から離間して配置されていることを特徴とする請求項5に記載の圧電振動素子。
【請求項8】
前記スリットは、
前記第2の支持部本体に配置された第1のスリットと、
前記第2の傾斜部内に前記振動領域の一辺から離間して配置された第2のスリットと、
を備えていることを特徴とする請求項5に記載の圧電振動素子。
【請求項9】
前記第1のスリットは、
前記第2の傾斜部と前記第2の支持部本体との境界部に沿って前記第2の支持部本体に配置されていることを特徴とする請求項8に記載の圧電振動素子。
【請求項10】
請求項1乃至9のうち何れか一項に記載の圧電振動素子と、
該圧電振動素子を収容するパッケージと、
を備えたことを特徴とする圧電振動子。
【請求項11】
請求項1乃至9のうち何れか一項に記載の圧電振動素子と、
電子部品と、
をパッケージに備えたことを特徴とする電子デバイス。
【請求項12】
前記電子部品は、
可変容量素子、サーミスタ、インダクタ、コンデンサーのうちの何れかであることを特徴とする請求項11に記載の電子デバイス。
【請求項13】
前記圧電振動素子を励振する発振回路を前記パッケージに備えたことを特徴とする請求項11又は12に記載の電子デバイス。
【請求項14】
請求項10に記載の圧電振動子を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項1】
振動領域を含む振動部と、
当該振動部と一体化され、前記振動部の厚みよりも厚い支持部と、
を有する圧電基板と、
前記振動領域に表裏で対向するように配置された一対の励振電極と、
を有する圧電振動素子であって、
前記支持部は、
前記振動部の主面の対向する2つの辺に沿って前記振動部を挟むように夫々設けられた第1の支持部と第2の支持部と、
当該第1、第2の支持部の各々の一方の端部を連設する第3の支持部と、
前記第1、第2の支持部の各々の他方の端部を連設する第4の支持部と、
を備え、
前記第1、第2の支持部の表裏の主面は前記振動部の表裏の主面よりも突設され、
前記第3の支持部の一方の主面は前記振動部の一方の主面よりも突設され、
前記第3の支持部の他方の主面と前記振動部の他方の主面とは同一面であり、
前記第4の支持部の一方の主面は前記振動部の他方の主面よりも突設され、
前記第4の支持部の他方の主面と前記振動部の一方の主面とは同一面であることを特徴とする圧電振動素子。
【請求項2】
前記圧電基板は、
水晶の結晶軸である電気軸としてのX軸と、機械軸としてのY軸と、光学軸としてのZ軸と、からなる直交座標系の前記X軸を中心として、
前記Z軸を前記Y軸の−Y方向へ所定の角度だけ傾けた軸をZ’軸とし、
前記Y軸を前記Z軸の+Z方向へ前記所定の角度だけ傾けた軸をY’軸とし、
前記X軸と前記Z’軸に平行な面で構成され、
前記Y’軸に平行な方向を厚みとする水晶基板であることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動素子。
【請求項3】
前記第3の支持部の突設部が、前記Z’軸のプラス側にあり、
前記第4の支持部の突設部が、前記Z’軸のマイナス側にあることを特徴とする請求項2に記載の圧電振動素子。
【請求項4】
前記第2の支持部は、
前記振動部と連設した一方の端縁から他方の端縁に向かって離間するにつれて厚みが増加する第2の傾斜部と、
当該第2の傾斜部の前記他方の端縁に連設する第2の支持部本体と、
を有することを特徴とする請求項1乃至3のうち何れか一項に圧電振動素子。
【請求項5】
前記第2の支持部には、
少なくとも一つのスリットが設けられていることを特徴とする請求項4に記載の圧電振動素子。
【請求項6】
前記スリットは、
前記第2の傾斜部と前記第2の支持部本体との境界部に沿って前記第2の支持部本体に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の圧電振動素子。
【請求項7】
前記スリットは、
前記第2の傾斜部内に前記振動領域の一辺から離間して配置されていることを特徴とする請求項5に記載の圧電振動素子。
【請求項8】
前記スリットは、
前記第2の支持部本体に配置された第1のスリットと、
前記第2の傾斜部内に前記振動領域の一辺から離間して配置された第2のスリットと、
を備えていることを特徴とする請求項5に記載の圧電振動素子。
【請求項9】
前記第1のスリットは、
前記第2の傾斜部と前記第2の支持部本体との境界部に沿って前記第2の支持部本体に配置されていることを特徴とする請求項8に記載の圧電振動素子。
【請求項10】
請求項1乃至9のうち何れか一項に記載の圧電振動素子と、
該圧電振動素子を収容するパッケージと、
を備えたことを特徴とする圧電振動子。
【請求項11】
請求項1乃至9のうち何れか一項に記載の圧電振動素子と、
電子部品と、
をパッケージに備えたことを特徴とする電子デバイス。
【請求項12】
前記電子部品は、
可変容量素子、サーミスタ、インダクタ、コンデンサーのうちの何れかであることを特徴とする請求項11に記載の電子デバイス。
【請求項13】
前記圧電振動素子を励振する発振回路を前記パッケージに備えたことを特徴とする請求項11又は12に記載の電子デバイス。
【請求項14】
請求項10に記載の圧電振動子を備えたことを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
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【図19】
【図20】
【図21】
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【公開番号】特開2013−46189(P2013−46189A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182245(P2011−182245)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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