説明

圧電発振器の製造方法、圧電発振器シート基板、及び圧電発振器

【課題】小型化された水晶発振器の大量生産に適した製造方法を提供する。
【解決手段】多層セラミック基板3上面にICチップを接続固定する為の接続電極8を、底面には実装基板への外部電極4がパターニングされる。11は接続電極や外部電極と導通している電解メッキ用配線パターンを示し、セラミック基板3を電解液中に浸してメッキ用電極11aを介して電圧を加えることによって、各電極部や接続配線部分に金又はアルミ等の金属メッキを施すことができる。接続電極8上に発振回路用のICチップを載置し、さらにその上方に水晶振動部(図示なし)を接続すると共に、メッキ配線パターン11の部分をハーフカットして除去すると、1枚のセラミック基板3上に電気的に独立した多数個の圧電発振器が整列した状態で構成される。この多数個取りのシート状セラミック基板上で、各発振器の特性測定や、修正データの入力を行った後、各発振器を分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子と発振回路を一体とした圧電発振器の製造方法と、その製造工程で生成された圧電発振器の多数個取りシート基板、及び該多数個取りシート基板から分割された圧電発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種の電子機器には基準周波数を発生するための圧電発振器が使用されており、特に、携帯電話等の電子機器においては、送受信用に、例えば、振動子として水晶片を採用した温度補償形水晶発振器(TCXO;Temperature Compensated Crystal Oscillator)や、表面実装型の各種水晶発振器が広く利用されている。
【0003】
このような水晶発振器の構造は各種提案されており、例えば、図6に示すような構造のものが良く知られている(特許文献1)。
この図6に示す水晶発振器100は、例えばセラミックからなる、浅い箱形形状の下層の容器部101に、発振回路を構成するICチップ102及び回路素子などが収容される。そして、この下層の容器部101の上に上層の容器部103の底面部を接合するようにしている。
上層の容器部103には水晶片104が収容され、蓋105によってこの容器部103の内部を気密封止することで圧電(水晶)振動部10が構成されている。
【0004】
上記図6に示したような水晶発振器100においては、下層の容器部101に搭載されるICチップ102の固着補強のために、図示していないが、ICチップ102の周囲にアンダーフィル材を充填している。
下層の容器部101の内部に収容したICチップ102の周囲にアンダーフィル材を注入するには、この容器部101の壁面とICチップ102との間にアンダーフィル材を注入するためのスペースを設ける必要があり、このようなスペースが小型化を図るうえで妨げになっている。
【0005】
そこで、本出願人は先にこのような問題を解消するために、図7に示すような圧電発振器を提供した(特許文献2)。
この図においても水晶発振器21は、例えば温度補償形水晶発振器(TCXO)であり、発振回路部22と水晶振動部20とから成る。
発振回路部22は発振回路用の下層の容器(以下、単に「容器」という)23にICチップ25が搭載されて形成される。
下層の容器23は後で述べるように2枚、又は3枚のセラミック基板を積層することによって底面23a、及び側壁23bが構成されており、この発振回路部22の4隅の底面には一部しか図示されていないが電子機器の実装基板に接続するための外部電極24が設けられている。
また、下層の容器23の底面23aには必要に応じて補助電極26が設けられ、この補助電極26を介して発振周波数の温度補償データ等が入力できるようになされている。
水晶振動部20と接続するために下層の容器23の側壁23bの上面には接続電極27,27,27,27が設けられ、図示されていないが水晶振動部20内に載置されている振動子電極と、ICチップ25の接続電極(図示されていない)の電気的な接続がなされるようにしている。
【0006】
このような圧電型発振器は近年極めて超小型化が要求され、かつ大量生産を行うために絶縁性の基板、例えば、セラミック基板を積層してICチップや圧電振動子を収容する容器が作られる。
図8は積層された3枚のセラミック基板30によって構成されている圧電発振器用の多数個取りシート状セラミック基板の一つの例を示したもので、セラミック基板30の下層板30aに対して外部電極が、セラミック基板30の中間板30bには接続電極(いずれも図示を省略)が形成され、上層板30cには前記した圧電振動部と接続される電極の配線パターンを金属メッキ等で形成し、多層に積み重ねた多数個取りのシート状セラミック基板としたものである。
【0007】
そして、この多数個取りシート状セラミック基板の凹部には図8(b)に示すように、前記したICチップ25が図示されていないが凹部の表面に形成されている配線パターンと衝合するように複数個配置され、ICチップ25と各電極部との接続が行われるようにしている。
そして、矢印A,A,A・・・に示す方向に多数個取りシート状セラミック基板をダイシングブレード等によって縦、及び横方向に基板を切り出し、さらに、ICチップ25が載置された発振回路部の上方に、前記した水晶振動部20を上乗せして水晶の振動電極と発振回路部を接続電極27等を介して電気的及び機械的に接続すると圧電発振器を大量生産することができる。
【0008】
【特許文献1】特開平2000−31598
【特許文献2】特願平2003−24670
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような多数個取りシート状セラミック基板はICチップ25を搭載するための凹部や底面及び上面に、発振回路を構成するICチップ25と水晶振動子とを電気的に接続する内部接続部や外部電極をセラミック基板面に形成すると共に、これら内部接続部や外部電極部とを電気的に接続する配線パターンを形成する必要がある。
この場合は、通常セラミック基板上に例えばスクリーン印刷技術等によってタングステンによる所望の配線パターンを形成し、メタライズされたタングステンの配線パターンが形成されたセラミック基板を電解液に浸けて前記タングステン層の上にニッケルメッキ、及び又は金メッキ等を施している。
【0010】
多数個取りシート状セラミック基板はこのような配線パターン上に、前記したICチップ25や、水晶振動子が収容されている容器をマトリックス状に搭載して電気的及び機械的に接続し、このシート状セラミック基板を切り離せば、一度に数十個の圧電発振器を得ることができるが、各圧電発振器はその発振周波数の温度特性や発振誤差を修正するために、所定の測定器によって発振特性を各発振器毎に測定して、ICチップ内に設けられている不揮発性のメモリ部に発振周波数を補正するためのデータを入力する必要がある。
【0011】
これは、多数個取りシート状セラミック基板上に形成された各圧電発振回路は、回路の接続電極や外部電極等をメッキするための、電解メッキ用配線パターンで導通されているので、各発振回路はセラミック基板上では電気的には相互に接続された状態になっており、各発振器の発振周波数の特性検査は前記多数個取りシート状のセラミック基板から各圧電発振器を切り離した後でないと行うことができない。
そのため、切り離された各圧電発振器を再び所定の位置に整列して、測定個所に移動し、各圧電発振器を駆動状態にして発振周波数特性の測定を行い、各圧電発振器毎に異なる温度補正用の補正データの入力を行うという工程が必要になり、大量生産を行う場合のネックとなっていた。
【0012】
そこで、上記したようなシート状のセラミック基板上に発振周波数特性を補正するためのデータ入力電極を設け、このデータ入力電極によってシート基板上に形成されている各圧電発振器の発振周波数特性の補正を行うデータを入力した後に、各圧電発振器の部分を分離して、より小型の圧電発振器を製造する方法が考えられている。
しかし、このような方法で製造された圧電振動子は、シートから切り離された後に発振周波数特性を所望の特性になっていないときは再調整することができず、最初のデータ入力時に不適正なデータが供給されとき、或いは周波数特性を変更したいときは,廃棄せざるを得なかった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の圧電発振器の製造方法はかかる問題点を解消するためになされたもので、少なくとも底面に電子機器へ実装するための複数の外部電極が形成され、上面にICチップと接続するための接続電極がパターンニングされている下層の絶縁基板と、前記ICチップを接続するための接続電極を含む複数箇所を凹部とするように側壁を形成し、該凹部の側壁上に圧電振動部と接続するための接続電極が形成されている上層の絶縁基板と、前記下層の絶縁基板と前記上層の絶縁基板を所定の位置で積層し、前記上層の絶縁基板の凹部に対面して配置され、内部に圧電振動子が収容されている圧電振動部とを有し、該圧電振動部と前記ICチップを電気的に接続することによって生成された複数個の圧電発振器がマトリックス状に配置されたシート状のセラミック基板を構成する。
そして、前記複数個の圧電発振器を区分する分割線に沿って、前記シート状のセラミック基板をハーフカットし、該ハーフカットによって前記各接続電極や外部電極部部へのメッキ配線パターンを分離したのち、前記複数個の圧電発振器の個々の調整工程をシート状セラミック基板上で行い、該調整工程が終了した後に前記分割線に沿っているハーフカット線に基づいて前記複数個の圧電発振器を切り離すことを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の他の発明は、上記した圧電発振器の製造方法で生成された多数個の圧電発振器がセラミック基板上に配設されている圧電発振器シート基板の構造を示すものであり、さらにこの多数個取りシート状セラミック基板から切り離された圧電発振器に関するものである。
【0015】
さらに、本発明の圧電振動子は、少なくとも底面に電子機器へ実装するための多数の外部電極が形成されている第1のセラミック基板と、
上面に複数個のICチップと接続するための接続電極がパターンニングされている第2のセラミック基板と、
前記各ICチップを接続するための接続電極を含む複数箇所を凹部とするように側壁を形成し、該凹部の側壁に圧電振動部と接続するための内部電極がパターニングされている上層の第3のセラミック基板と、
前記第1,及び第2のセラミック基板と前記第3のセラミック基板を所定の位置で積層し、そのときに形成された前記複数個の凹部に複数個の圧電振動部を配置し、
前記複数個の凹部、または側壁が隣接する領域に配置され、前記ICチップに対して発振周波数調整用のデータを入力するためのデータ入力電極を前記接続電極に対して電気的に接続した圧電発振器を複数個マトリックス状に配置したシート状のセラミック基板を構成し、
前記シート状のセラミック基板をカットして複数個の圧電発振器に分離したときに、分離された各圧電発振器の前記第2のセラミック基板の側面に発振周波数調整用の補助端子が形成されるようにするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、絶縁基板である例えばセラミック基板上に、多数個の圧電発振器を集積回路技術を応用して作成し、セラミック基板上に配列したまま、生成された各圧電発振器の温度特性や、発振周波数を規定の仕様値となるように調整することができるので、従来のように製造された各圧電発振器をセラミック基板上から切り離し、切り離された各圧電発振器を再び所定の位置に移動して各圧電発振器毎に発振特性を測定し、その測定の結果に基づいて発振周波数を修正するための補正データを入力して保存する調整工程を省略することができる。
その結果、圧電発振器の生産性が向上すると共に、製造コストを低下させることができる。
【0017】
また、上記したシート状のセラミック基板から切り出された各圧電振動子には、周波数特性を補正するためのデータ入力可能な補充電極端子が残されているので、大量生産された各圧電振動子に対して必要があれば、再度の発振周波数特性補正データを入力することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の圧電発振器の製造方法に適応されるシート基板について説明する。
図1(a)は前記した図8(a)に示すようなシート状のセラミック基板の各部の電極や配線パターンを示した上平面図であり、図1(b)はX−X線上から見た側断面図、図1(c)はY−Y線上から見た側断面図である。
この実施の形態では、下層の絶縁基板としては下層板3aと中間板3bを積層し、ICチップ等を搭載する凹部を形成するために上層の絶縁基板として上層板3cが積層される3層構造となっている。
但し、図1(a)は、3層のセラミック基板の下層板3aと中間板3bの電極と電解メッキを行う配線パターンの一部を示しており、水晶発振回路を構成する配線パターンは省略されている。また、側壁となる上層板3cとその上部電極7は図1(b)にのみ表示している。
【0019】
この図において8,8,8,8,8・・・は図3に示されているようにICチップ5のバンプを接続する接続電極であり、点線で囲まれている領域は下層板3aの底面側に形成されている外部電極4,4,4,4,とその配線ラインである。
また、円形の部分は必要に応じて発振器の容器の側面に電極部を形成する場合のスルーホールであるが、このスルーホールは側面に電極が必要としないときは省略することもできる。
【0020】
縦及び横方向に引かれているライン11,11,11,・・・は、積層されたセラミック基板3の各電極部及び配線パターンに接続されている電解メッキ用の電解メッキ配線パターンであり、基板の1カ所又は数カ所に設けられているメッキ用電極11aと、発振回路を構成する全ての電極・配線パターンを導通するものである。
したがって、このセラミック基板上の電極・配線パターンに電気メッキを施す場合は、このシート状のセラミック基板を電解メッキ液に浸し、前記メッキ用電極11aに電圧を印加することによって、シート状のセラミック基板3上の全ての電極・配線パターンに対してアルミメッキや、金メッキ、又は銅メッキ等を施すことができる。
【0021】
この実施の形態では、この電解メッキ配線パターン11は図1(b)に示されているように、積層されたセラミック基板の下層板3aの上面に例えば導電材料(タングステン)のスクリーン印刷等で敷設され、この下層板3aの電解メッキ配線パターン11に対して導通するように外部電極4,4,4,・・、及び接続電極8,8,8,・・・、上部電極7,7,・・がギザギザの線で示されているようにスルーホール等を介して接続されている。
しかし、電解メッキ配線パターン11は、電極・配線パターンによっては積層されたセラミック基板の中間板3bの上面、及び、または下面にも敷設し、これらの面に形成される電極と導通させると共に、上下面のメッキ配線パターン同士をスルーホールで導通するようにしてもよい。
【0022】
なお、各発振回路部毎に設けられる接続電極8,8,8・・・と、外部電極4,4,4・・・、上部電極7,7,・・及び水晶振動部等との間の接続を行う発振回路パターンの図示は省略されている。
中間板3bの上面には先に述べたようにICチップの装着を行う凹部を形成し、この凹部に対して水晶振動部10を重ねて接続するための側壁を形成する上層板3cのセラミック基板が積層され、この上層板3cの上面に内部電極7,7,7,7が形成されるが、この内部電極7,7,7・・もメッキ加工とするときは、スルーホール等によって電解メッキ配線パターン11のラインと導通するように構成することが好ましい。
【0023】
以下、本発明のシート状セラミック基板を使用した多数個取りの発振回路の製造法の手順を図2のフロー図面で述べる。
本発明の圧電発振器の製造方法は、例えば、先の図1に示すように、導電性の材料を使用して電極及び配線パターンや、メッキ用配線パターンが各層のセラミック基板にシルク印刷等によって形成された後に、シート状セラミック基板として積層される工程(S1)を有し、この配線導体の印刷工程において基板に形成されているスルーホール壁面にも導電性材料(タングステン)が塗布される。
次に、積層されたシート状のセラミック基板3(a、b、c)を電解メッキ液に浸し、メッキ用電極11aに所定の電圧を加え、各発振器回路の電極・配線パターンに対してアルミメッキや、金メッキ等を施す工程(S2)が行われる。
【0024】
そして、このメッキ工程で各部の電極や配線パターンに、金または銅メッキ等を形成したのち、前記した発振回路用のICチップ5をシート状セラミック基板上に形成されている凹部に載置して、ICチップ5のバンプと接続電極8,8,8・・を各発振回路毎に接続する工程(S3)を有する。
この接続工程は、通常はICチップの底面に付設されている半田バンプに対して加熱又は超音波加工等を加えて電気的な溶着を施すことにより行われる。
そして、ICチップ5と基板との間隙にアンダーフィル材を注入する工程(s4)でICチップ5や必要に応じて発振回路用のコンデンサ等を固定する。
【0025】
次に、このシート状セラミック基板の上面層3cの上に別工程で作られている水晶振動部(10)をそれぞれ載置し、上面の内部電極7,7,7・・・と各水晶振動部10の底面に設けられている接続電極を溶着する工程(S5)を施すことによって多数個取り発振器シート基板を作り、多数の圧電発振器をシート状のセラミック基板上に作成する。
しかし、このシート状のセラミック基板上に形成された多数の圧電発振器は、前記電解メッキ配線パターン11,11,11・・・によって電気的に相互に接続されている。
【0026】
そこで、本発明ではこの圧電発振器の製造工程において、図1(a)の矢印で示した、例えば各圧電発振器を区分する分割線を含んだHDA(一点鎖線)の範囲内をダイシングソウによってハーフカットし、少なくとも電解メッキ配線パターン(ライン)11が除去されるように切り込むハーフカット工程(S6)が行われる。
この切り込みは複数個の発振回路を分割する分割線に沿ったものであり、ハーフカットの形状は、図1(c)の断面図に示されているように、下層板3aの上面に形成されている電解メッキ用の配線パターン11が切断される深さdとなるようにコントロールされる。そして、このセラミック基板のハーフカット工程(S6)によって少なくとも横方向に延びている電解メッキ用の配線パターン11の部分が除去される。
そのため、各圧電発振回路を構成する部分のエリヤはこのハーフカット工程(S6)によってそれぞれ電気的には孤立した発振回路領域になるが、この発振回路領域はハーフカットによって小片に切り離されていないので、複数個の各発振回路部は依然として1枚のシート状セラミック基板上に配列されたままである。
【0027】
次に、ハーフカットされたセラミック基板上に形成された多数個取り圧電発振器のシート状セラミック基板を、例えばX−Yテーブル等を備えている測定機基台上に位置決めして載置し、シート基板上で電気的に孤立している各圧電発振器を1個ずつ所定の位置に移動できるように制御する。そして、各圧電発振器が順次所定の位置、すなわち、測定位置に位置に載置され時に圧電発振器に対して駆動用の電源を供給する。そして、電源が供給され発振動作となった圧電発振器の出力周波数を同一位置で測定器において測定しながらその発振周波数が所定の数値となるように補正するためのデータを入力する温度データ書込工程(S7)が行われる。
【0028】
測定装置は従来から使用されているように発振周波数とその温度特性を検出し、検出結果に基づいて圧電発振器を構成するICチップ内の不揮発性メモリに発振周波数補正のための補正データを入力するものと同様に構成される。
この場合は1枚のシート上に数十個の圧電発振器が整列されているセラミック基板が測定装置に供給されるため、測定作業の自動化が従来の測定工程より簡易化される。
【0029】
このようにして1枚のシート状セラミック基板上に構築された複数個の圧電発振器の発振特性がそれぞれ補正された後、次にこのシート状セラミック基板の各発振回路領域を切り離す分割工程(S8)が施される。
この分割工程(S8)は先のハーフカット工程(S6)によってカットされたHDAの範囲を横方向に切り離す工程と、図示されていないがメッキ配線パターン11に直交する方向の分割線に沿ってシート状セラミック基板を縦方向にカットする工程からなり、この分割工程によってマトリックス状に配列された複数個の(数十個)の圧電発振器を切り離す。
【0030】
図3(a)(b)は前記したような工程によって切り離された圧電発振器の側面断面図と底面図を示したもので、この図においても水晶発振器は、例えば温度補償形水晶発振器(TCXO)であり、発振回路部2と水晶振動部10とから成る。
発振回路部2は発振回路用の下層の容器(以下、単に「容器」という)3にICチップ5が搭載されて形成される。
下層の容器3は2枚、又は3枚のセラミック基板を積層することによって底面(3a、3b)及び側壁(3c)から構成されており、この発振回路部2の4隅の底面には一部しか図示されていないが電子機器の実装基板に接続するための外部電極4が設けられている。
また、下層の容器3の側壁には必要に応じて補助電極6が設けられ、この補助電極6を介して発振周波数の温度補償データ等が入力できるようになされている。
水晶振動部10と接続するために下層の容器3の側壁の上面には接続電極7,7,が設けられ、図示されていないが水晶振動部10内に載置されている振動子電極と、ICチップ5の接続電極(図示されていない)の電気的な接続がなされるようにしている。
【0031】
この図に示されているようにICチップ5の引出電極5aは半田バンプとして形成されており、この引出電極5aが前記した接続電極8,8,8,8と溶着又は電気的な接着剤等によって接続されている。そしてICチップの下面にアンダーフィル9が充填されICチップ5が発振回路に固定される。
上層板3cによって構成される側壁の上面に形成されている内部電極7,7は、圧電振動部10内の振動子電極に接続されている接続電極10aと溶着されて圧電発振器が構成されている。
【0032】
なお、補助電極端子6,6は下層の絶縁基板を構成するセラミック基板3(a、b)の側面にスルーホールによって構成されているが、圧電発振器をさらに小型化するときはこの補助電極端子6,6部分を分割工程で切り離すようにしてもよい。また、この補助電極端子6,6,6,・・を下層の絶縁基板3の上面にのみ設けるようにしてもよい。
【0033】
前記実施例の配線パターンは3層のセラミック基板を使用し、下層板3aの上面にメッキ用配線パターン11を敷設するように圧電発振回路を形成する場合について述べたが、2層のセラミック基板で下層の容器を形成する場合について適応することもできる。
この場合は3層のセラミック基板の下層板3aと中間面3bを1枚のセラミック底板とし、その上に上層板3cを積層して側壁を構成すると共に、前記1枚のセラミック底板の上面に接続電極8,8,8・・・・と電解メッキ配線パターン11をパターニングし、その下面に外部電極4,4,4,4を構成する。
外部電極4と電解メッキ配線ライン11をスルーホールを介して接続すると共に、外部電極4と接続電極8,8,8,・・、及び接続電極7,7,7等の接続回路を同じくスルーホール等を利用して立体的に接続できるようにすれば、2層のセラミック基板で多数個取りのシート状セラミック基板を作ることができる。
【0034】
上記実施の形態ではICチップ5と水晶振動部10が結合されて圧電発振器が完成された後に測定動作が行われる場合について述べたが、本発明の多数個取り用の圧電発振器シート基板の場合は、電解メッキ後にメッキ配線パターンがハーフカットを施すことによって取り除いているので、セラミック基板上に各ICチップ5,5,5・・・が接続電極8,8,8・・・に接続されたことを確認するための検査工程にも利用することもできる。
【0035】
なお、このICチップ5と接続電極8,8,8,・・・・の溶着状態は、ICチップの端子に半田バンプが使用され、接続電極8,8,8,・・・が正方形、又は長方形となるように構成されているので、半田の溶着によって接続電極の形(正方向、長方形)に半田濡れが起こる。半田濡れとなっている部分はX線が通過しないので、その形をX線を照射することによって画像化し、接続状態の良否を確認することができる。
すなわち、X線画像で接続電極8,8,8・・・の形が明確に観察された場合は接続良好であり、接続電極の形が半田バンプの状態、又は半田バンプが崩れた形となっているときは接続不良と判断する。
【0036】
図4は本発明の他の実施例を示すシート状セラミック基板の平面(a)と、その側断面図(b)(c)を示している。
この実施の形態は、下層板3a(第1のセラミック基板)、と中間板3b(第2のセラミック基板)、及び上層板3c(第3のセラミック基板)によって圧電振動子の筐体がシート状セラミック基板上に構成される。
この図において8,8,8,8,8・・・は前記したようなICチップ5のバンプを接続する接続電極であり、点線で囲まれている領域は下層板3aの底面側に形成されている外部電極4,4,4,4,とその配線ラインである。
また、円形の形に形成されている部分は補助電極端子6,6,・・となる部分で、本実施例の場合は、この補助電極端子6,6は中間板3bにのみスルーホールを設け、このスルーホールの内面に導電体を押出塗布して金属メッキを施すことによって形成されている。
そして、この補助電極端子6,6,・・・の、特に中央部の4カ所がICチップのデータ入力の接続電極8,8,・・として接続され、さらに、このデータ入力のためのデータ入力の接続電極8,8,・・は各圧電発振器の側壁部、または凹部に隣接するような領域(DA)に配置されているデータ入力電極12、12,・・・に接続されている。
【0037】
また、縦及び横方向に引かれているライン11,11,11,・・・は、積層されたセラミック基板3の各電極部及び配線パターンに接続されている電解メッキ用の電解メッキ配線パターンであり、基板の1カ所又は数カ所に設けられているメッキ用電極11aと、発振回路を構成する全ての電極・配線パターンを導通するものである。
したがって、図1の場合と同様にこのセラミック基板上の電極・配線パターンに電気メッキを施す場合は、このシート状のセラミック基板を電解メッキ液に浸し、前記メッキ用電極11aに電圧を印加することによって、シート状のセラミック基板3上の全ての電極・配線パターンに対してアルミメッキや、金メッキ、又は銅メッキ等を施すことができる。
【0038】
なお、各発振回路部毎に設けられる接続電極8,8,8・・・と、外部電極4,4,4・・・、上部電極7,7,・・及び水晶振動部等との間の接続を行う発振回路パターンの図示は省略されている。
中間板3bの上面には先に述べたようにICチップの装着を行う凹部を形成し、この凹部に対して水晶振動部10を重ねて接続するための側壁を形成する上層板3cのセラミック基板が積層され、この上層板3cの上面に内部電極7,7,・・が形成されるが、この内部電極7,7,・・もメッキ加工とするときは、スルーホール等によって電解メッキ配線パターン11のラインと導通するように構成することが好ましい。
【0039】
この実施の形態の場合も先に説明した図2の工程の流れ図に沿って加工される。そして、電解メッキ用の配線パターン11の部分がハーフカットによって削り取られ、各発振回路が電気的に独立した回路構成となるように加工することができる。
本実施の形態ではこの時点で各圧電発振器を順次駆動状態になるように電圧を印加すると共に、各圧電発振器の発振周波数を測定しながらシート基板上に設けられているデータ入力電極12を利用して、所望の発振周波数特性となるように各ICチップ5に対してデータを入力し、そのデータをICチップ内の不揮発性メモり等に記憶させる。
【0040】
このようにして、シート基板上の各圧電発振器の発振周波数の補償データが入力されると、マトリックス状に配置されている各圧電発振器を、HDAの領域及びDAの領域の除去によって切り離すが、本実施の形態では、切り離し前に発振周波数の補償データの入力が、別の領域に配置したデータ入力電極12を介して行われるので、データ入力のために接触する電極のコンタクト性が向上し補正データの入力が容易になる。
しかも、発振周波数の補償が行われた後に、切り離された各圧電発振器には図5に示すように補助電極端子6,6,・・が残されているので、切り離された後にさらに発振周波数特性の再補正データ(例えば、特別に精度の高い発振器にするための補正データ)を入力することも可能になる。
【0041】
図5(a)(b)は本実施の形態の圧電発振器の側断面図と、底面からみた斜視図(下層板と中間板のみを示す)を示したものである。
この図に見られるように、本実施の形態では、圧電発振器に残された補助電極端子6,6,・・は図5(a)(b)に見られるように圧電発振器の側面であって底面に到達しない範囲に形成されているので、圧電発振器を電子機器の基板に実装する際に、補助電極6,6・・に半田ブリッジが発生し、誤動作を生じるような事故を解消することができる。
これは、圧電発振器を小型化する点で非常に有利であると同時に、
切り離された各圧電発振器に対して実装時に障害とならないような補助電極端子が残されているので、最初の発振周波数の調整で不的確な状態に調整、又は調整不能とされた圧電発振器に対して再利用を計ることができるというメリット生じるものである。
【0042】
絶縁基板としてセラミック材を使用する場合について述べたが、絶縁性及び機械的な特性が優れている場合は(温度変動が少なく、かつある程度強度を有するもの)、他の無機材料、例えばガラスエポキシ等も使用することもできる。
また、データ入力電極12は側壁が隣接する領域に設けたが、各圧電発振器の凹部に隣接するように、例えば図4の補助電極端子6,6・・を電解メッキ用配線パターン11に接続する線上にデータ入力電極を設け、ハーフカットの工程でこのデータ入力電極を残すように電解メッキ用配線パターン11を削除し、次に圧電発振器の切り離しを行う際に、このデータ入力電極も切り離されるようにすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上の説明から理解されるように、本発明の圧電発振器の製造方法によれば、積層されたセラミック基板上に、複数個の発振回路チップが搭載される下層の容器を形成すると共に、この下層の容器に対して水晶振動部を載置して複数個の圧電発振器を作る場合に、発振器を構成する配線パターンや電極を形成する際に、電解メッキで必要な配線パターンや電極を形成できるようにする。
そして、該電解メッキ配線パターンをハーフカットによって除去できるようにハーフカット工程を取り入れるようにしているので、シート基板上で電気的に孤立した多数個の圧電発振器を構築することができ、配列された多数の圧電発振器の測定や発振周波数の修正工程を、多数個取りのシート基板上で行うことができる。したがって、圧電発振器をさらに小型化し、かつ大量生産をする際に製造時間と製造工程を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】多数個取りシート状セラミック基板の平面図と、正面図及び側面断面図である。
【図2】圧電発振器の製造工程を示す流れ図である。
【図3】シート状セラミック基板から切り離された圧電発振器の側断面図と底面図である。
【図4】他の実施の形態を示す多数個取りシート状セラミック基板の平面図と、正面図及び側面断面図である。
【図5】シート状セラミック基板から切り離された圧電発振器の側面と底面を示す図である。
【図6】従来の圧電発振器を分解した分解斜視図である。
【図7】小型化を図った圧電発振器の分解斜視図である。
【図8】多数個取りシート状セラミック基板の説明をするための斜視図である。
【符号の説明】
【0045】
1 水晶発振器、2 発振回路部、3 容器、4 外部電極、5 ICチップ、6 補助電極端子、7 内部電極、8 接続電極、9 アンダーフィル材、10 水晶振動部、11 電解メッキ配線パターン、12 データ入力電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも底面に電子機器へ実装するための複数の外部電極が形成され、上面に複数個のICチップを接続するための接続電極がパターンニングされている下層の絶縁基板と、
前記複数個のICチップを接続するための接続電極を含む箇所を凹部とするように側壁を形成し、該凹部の側壁上に圧電振動部と接続するための内部電極が形成されている上層の絶縁基板とを所定の位置で積層し、
前記凹部に対面して、内部に圧電振動子が収容されている複数個の圧電振動部(10)を配置し、
該圧電振動部と前記ICチップを電気的に接続することによって生成された複数個の圧電発振器がマトリックス状に配置されたシート状のセラミック基板を構成し、
前記複数個の圧電発振器を区分している分割線に沿って前記セラミック基板をハーフカットし、該ハーフカットによって前記各接続電極、外部電極部へのメッキ配線パターンを切離したのち、前記複数個の圧電発振器の個々の調整工程をシート状セラミック基板上で行い、該調整工程が終了した後に前記複数個の圧電発振器を個別に切り離すことを特徴とする圧電発振器の製造方法。
【請求項2】
少なくとも底面に電子機器へ実装するための多数の外部電極が形成され、上面に複数個のICチップと接続するための接続電極がパターンニングされている下層の絶縁基板と、
前記各ICチップを接続するための接続電極を含む複数箇所を凹部とするように側壁を形成し、該凹部の側壁に圧電振動部と接続するための内部電極が形成されている上層の絶縁基板と、
前記下層の絶縁基板と前記上層の絶縁基板を所定の位置で積層した時に形成される前記複数の凹部に対面して配置され、内部に圧電振動片が収容されている複数個の圧電振動部と、
前記各圧電振動部と前記各ICチップを電気的に接続することによって複数個の圧電発振器がマトリックス状に生成されたシート状のセラミック基板を構成し、前記各接続電極、外部電極部に対するメッキ配線パターンを切断するためのハーフカットが、前記各圧電発振器を分割するための分割線に沿って施されていることを特徴とする圧電発振器シート基板。
【請求項3】
少なくとも底面に電子機器へ実装するための多数の外部電極が形成され、上面に複数個のICチップと接続するための接続電極がパターンニングされている下層の絶縁基板と、
前記各ICチップを接続するための接続電極を含む複数箇所を凹部とするように側壁を形成し、該凹部の側壁に圧電振動部と接続するための内部電極がパターニングされている上層の絶縁基板と、
前記下層の絶縁基板と前記上層の絶縁基板を所定の位置で積層した時に形成された前記複数個の凹部に対面して配置され、内部に圧電振動片が収容されている複数個の圧電振動部と、
前記複数個の圧電振動部と前記各ICチップを電気的に接続することによって複数個の圧電発振器がマトリックス状に配置されたシート状のセラミック基板を構成し、
前記複数個の圧電発振器を分割するための分割線に沿って前記シート状のセラミック基板をハーフカットし、該ハーフカットによって前記各接続電極、外部電極部へのメッキ配線パターンが分離された後に、前記シート状のセラミック基板から切り離されたことを特徴とする圧電発振器。
【請求項4】
上記下層の絶縁基板は外部電極が底面に形成されている第1のセラミック基板と、ICチップ回路への接続を行うための接続電極が形成されている第2のセラミック基板を積層することによって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電発振器の製造方法。
【請求項5】
上記凹部の側壁は対向する二辺によって形成されていることを特徴とする請求項3に記載の圧電発振器。
【請求項6】
上記下層の絶縁基板には、上記ICチップに対して所要のデータを書き込むための補助電極端子が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の圧電発振器の製造方法。
【請求項7】
少なくとも底面に電子機器へ実装するための多数の外部電極が形成されている第1のセラミック基板と、
上面に複数個のICチップと接続するための接続電極がパターンニングされている第2のセラミック基板と、
前記各ICチップを接続するための接続電極を含む複数箇所を凹部とするように側壁を形成し、該凹部の側壁に圧電振動部と接続するための内部電極がパターニングされている上層の第3のセラミック基板上層板と、
前記第1,及び第2のセラミック基板と前記第3のセラミック基板を所定の位置で積層した時に形成された前記複数個の凹部に複数個の圧電振動部を配置し、
前記複数個の凹部又は側壁が隣接する領域に配置され、前記ICチップに対して発振周波数調整用のデータを入力するためのデータ入力電極を前記接続電極に対して電気的に接続した圧電発振器を複数個マトリックス状に配置したシート状のセラミック基板を構成し、
前記シート状のセラミック基板をカットして複数個の圧電発振器に分離したときに、分離された各圧電発振器の前記第2のセラミック基板の側面に発振周波数調整用の補助電極端子が形成されるようにしたことを特徴とする圧電発振器。
【請求項8】
上記補助電極端子は上記第2のセラミック基板のスルーホールを利用して形成されていることを特徴とする請求項7に記載の圧電発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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