説明

圧電発振器の製造方法

【課題】発振回路や温度補償回路を構成する電子部品を搭載する配線基板の上部
に、柱部材を用いてパッケージ化された圧電振動子を固定した構成を備えた圧電
発振器において、柱部材の寸法のバラツキやリフロー時における柱部材の戴置ミ
スなどを除き、信頼性が高く作業効率の優れた圧電発振器を提供することを目的
とする。
【解決手段】上面のランド14上に発振回路及び温度補償回路を構成する複数の
電子部品15を搭載すると共に外部電極16を備えた配線基板17と、該配線基
板17の上面に固定した柱部材18を介して所定のギャップを隔てて固定された
水晶振動子19とを備えた水晶発振器である。又、柱部材18の底部電極20を
配線基板17の上面に形成した柱部材固定用パターン21に電気的機械的に固定
し、柱部材18の上部電極22を水晶振動子19の底面電極23と電気的機械的
に固定している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧電発振器の製造方法に関し、特に発振回路や温度補償回路を構成する電子部
品を搭載する配線基板の上部に、柱部材を用いてパッケージ化された圧電振動子を固定し
た構成を備えた圧電発振器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機等の移動体通信機器の普及に伴う低価格化及び小型化の急激な進展により、
これらの通信機器に使用される水晶発振器等の圧電発振器に対しても低価格化、小型化及
び薄型化の要請が高まっている。
そこで、従来、チップ部品を使用してパッケージ化した圧電発振器の製造が行われてお
り、その構造は、発振回路や温度補償回路を構成する電子部品を搭載する配線基板の上部
に、柱部材を用いてパッケージ化された圧電振動子を固定する構造のものが多く、電子部
品を搭載する配線基板上にあるランド上に、クリームハンダをスクリーン印刷してリフロ
ー方式によりチップ部品を固定し、パッケージ化された圧電振動子を配線基板に固定した
柱部材の上部に立体的に配置することにより専有面積の低減を図っている。
【0003】
図3は、従来の圧電発振器の一例である水晶発振器について、第一の外観構造を示す。
同図は、縦断面図であり、上面のランド1上に発振回路及び温度補償回路を構成する複数
の電子部品2を搭載すると共に外部電極3を備えた平板状の配線基板4と、該配線基板4
の上面に固定した柱部材5を介して所定のギャップを隔てて固定された水晶振動子6とを
備えた水晶発振器である。又、柱部材5の底部電極7を配線基板4の上面に形成した柱部
材固定用パターン8に電気的機械的に固定し、柱部材5の上部電極9を水晶振動子6の底
面電極10と電気的機械的に固定している。ここで使用されている柱部材5は、四角柱、
その他の多角柱のセラミックブロックと、セラミックブロックの底部に設けた底部電極7
と、セラミックブロックの上部に設けた上部電極9と、両電極間を導通する接続導体とに
より構成する。
【0004】
この柱部材5を配線基板4上の柱部材固定用パターン8上に固定する場合には、スクリ
ーン印刷により柱部材固定用パターン8上に塗布したクリームハンダを用いたリフロー接
続を行う。このスクリーン印刷においては、ランド1に対するクリームハンダの塗布作業
も同時に実施し、クリームハンダを塗布したランド1及び柱部材固定用パターン8上に夫
々電子部品2及び柱部材5を戴置した上で、リフロー炉内で同時に加熱を行い、その後冷
却することにより、電子部品2及び柱部材5を固定する。
水晶振動子6については、柱部材5を配線基板4上に固定した上で、柱部材5の上部電
極9上に導電性接着剤等を用いて底面電極10を固定してもよいし、上部電極9と底面電
極10との接続を、電子部品2等をリフロー接続する際に同時に実施してもよい。
【0005】
図4は、従来の圧電発振器の一例である水晶発振器について、第二の外観構造を示す。
本従来例と図3との相違点は、配線基板と水晶振動子とを電気的機械的に固定する柱部材
の材質として、本従来例では、金属製のボールを用いたことにある。そこで、図4におい
ては、金属ボールからなる柱部材11を用いて配線基板4上の柱部材固定用パターン8と
、水晶振動子6の底面電極10とを接続した例を示している。柱部材5と柱部材固定用パ
ターン8との間の接続や、柱部材5と水晶振動子6の底面電極10との接続方法は、それ
ぞれクリームハンダを用いたリフロー接続であってもよいし、導電性接着剤を用いた接続
であってもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら従来の圧電発振器においては、次のような問題点が生じていた。 図3に
示した水晶発振器は、角柱の柱部材5を使用しており、この柱部材5を配線基板4の柱部
材固定用パターン8上に固定する場合には、スクリーン印刷により柱部材固定用パターン
8上に塗布したクリームハンダを用いたリフロー接続等を行う。そこで、柱部材5を柱部
材固定用パターン8のクリームハンダ上に戴置する際は、常に柱部材5の電極面が正しく
柱部材固定用パターン8面に接触するよう戴置する必要があるが、従来においては、誤っ
て柱部材5の電極面が柱部材固定用パターン8の表面に接触しない方向で戴置されるとい
う危険性を伴う。
【0007】
図5に、従来の角型の柱部材を配線基板に取り付けた際の外観構造を示す。柱部材は、
セラミック等の素材の上面及び下面に電極12を設け、上面と下面の電極間をスルーホー
ル13等により導通したものである。この柱部材を配線基板に取り付ける際は、図の(a
)に示すように柱部材は、上面、下面方向に電極12が位置する必要があり、(b)に示
すように柱部材の両サイドに電極12が位置すると、水晶発振器を柱部材に取り付けた際
に配線基板と水晶発振器の導通が得られないことになる。
又、柱部材の寸法について、多少なりと製造誤差が生じ、柱部材を用いて水晶振動子を
固定した際に、柱部材の高さの寸法がばらついて、電気的機械的な固定に不具合が発生す
ることがある。
【0008】
一方、図4に示した水晶発振器は、金属ボールの柱部材5を使用しており、この柱部材
5を配線基板4の柱部材固定用パターン8上に固定する場合には、柱部材5と柱部材固定
用パターン8との間の接続や、柱部材5と水晶振動子6の底面電極10との接続を、それ
ぞれクリームハンダを用いたリフロー接続等により行うが、金属ボールは転がり易くクリ
ームハンダ上に戴置した際に配線基板に設けた柱部材固定用パターン8からずれる可能性
があり、作業性が低下するという問題を生ずる。
本発明は、上述したような従来の圧電発振器の製造の際に生ずる問題を解決するために
なされたものであって、配線基板と圧電振動子とを電気的機械的に固定する柱部材を改良
することによって、信頼性が高く作業効率の優れた圧電発振器を提供することを目的とす
る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形
態又は適用例として実現することが可能である。
【0010】
[適用例1]上面に少なくとも発振回路を構成する電子部品を搭載すると共に底面に外
部電極を備えた平面状の配線基板と、圧電振動子とを、側面に切断面と上面及び底面にそ
れぞれが互いに導通した金属面とを有した柱部材を介して導通固定した圧電発振器の製造
方法であって、複数個分の前記配線基板を区画形成した配線基板母材に電子部品を搭載す
る工程と、複数の柱部材を区画形成した柱部材用母材を、前記配線基板母材上の柱部材固
定用パターンと前記柱部材の底面側の前記金属面とが導通するよう固定する工程と、前記
配線基板母材を前記柱部材用母材と共に切断し、区画毎の個片に分割する工程とを含むこ
とを特徴とする。
【0011】
[適用例2]前記柱部材用母材は、格子状部材と該格子状部材から半島状に延びる柱部
材とを一体的に構成したものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上述したように、配線基板の上部にパッケージ化された圧電振動子を固定した
構成を備えた圧電発振器において、適用例1、2共に、配線基板と圧電振動子を電気的機
械的に固定する柱部材として、大面積の柱部材用母材上に区画形成された柱部材ブロック
に設けた柱部材を使用し、この柱部材と大面積の配線基板母材に区画形成した配線基板と
を一括接合するため、圧電発振器の組立を行う際に、信頼性と生産効率の向上が図られ、
圧電発振器の低コスト化に著しい効果を発揮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係わる圧電発振器の一例である水晶発振器について、その縦断面図(a)、及び分解斜視図(b)である。
【図2】本発明に係わる圧電発振器の一実施例である水晶発振器について、配線基板と柱部材の製造方法及び両者の接合固定方法を示す図である。
【図3】従来の圧電発振器の一例である水晶発振器について、第一の外観構造を示す図である。
【図4】従来の圧電発振器の一例である水晶発振器について、第二の外観構造を示す図である。
【図5】従来の角型の柱部材を配線基板に取り付けた際の外観構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図示した実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
図1(a)及び(b)は、本発明に係わる圧電発振器の一例である水晶発振器について
、その縦断面図、及び分解斜視図である。
同図は、上面のランド14上に発振回路及び温度補償回路を構成する複数の電子部品1
5を搭載すると共に外部電極16を備えた配線基板17と、該配線基板17の上面に固定
した柱部材18を介して所定のギャップを隔てて固定された水晶振動子19とを備えた水
晶発振器である。又、柱部材18の底部電極(底面側電極)20を配線基板17の上面に
形成した柱部材固定用パターン21に電気的機械的に固定し、柱部材18の上部電極(上
面側電極)22を水晶振動子19の底面電極23と電気的機械的に固定している。ここで
使用されている柱部材18は、詳細を後述するが、同一のセラミック板に複数の穴を設け
て加工し形成したもので、セラミック板の厚さを柱部材の高さ方向とし、配線基板17に
搭載する電子部品15の最大実装高を上回る厚みを有している。柱部材18は、セラミッ
ク板の裏面に設けた底部電極20と、セラミック板の表面に設けた上部電極22と、両電
極間を導通する接続導体とにより構成する。
水晶振動子19については、柱部材18を配線基板17上に固定した上で、柱部材19
の上部電極22上に導電性接着剤等を用いて底面電極23を固定する。
【0015】
図2は、本発明に係わる圧電発振器の一例である水晶発振器について、配線基板と柱部
材の製造方法及び両者の接合固定方法を示す図である。
同図に示すように、配線基板用プリント板24と柱部材用セラミック板25は、夫々大
面積の配線基板母材及び柱部材用母材上に区画形成された配線基板17及び柱部材ブロッ
ク26を多数設けている。
ここで柱部材ブロック26とは、柱部材用セラミック板25に穴を形成することにより区
画を示す格子状部材と、この格子状部材から半島状の突起片として穴に突出する柱部材1
8とを一体的に形成したものである。そして各柱部材18は、配線基板17に設けた柱部
材固定用パターン21の位置に合わせて配置されている。柱部材用セラミック板25は、
表面と裏面がメタライズ化されており、柱部材18の所定位置には表面と裏面を導通させ
るためのスルーホール等が設けられており、柱部材18の底部電極と上部電極を構成する
。又、柱部材用セラミック板25の厚さは、配線基板17に搭載する電子部品15の実装
高に合わせて決定されている。
【0016】
そこで、水晶発振器の配線基板と柱部材の接合固定方法を説明すると、先ず、大面積の
配線基板母材上に区画形成して設けた配線基板を有する配線基板用プリント板24を製造
した後、電子部品15を搭載するランドにスクリーン印刷によってクリームハンダを塗布
し、夫々の電子部品15を戴置した後、リフロー炉内において加熱を行い、その後冷却す
ることにより電子部品15を固定する。次に、柱部材用母材上に所定の穴を設けることに
より区画形成した柱部材ブロック26を有する柱部材用セラミック板25を製造しておき
、電子部品15を搭載して固定済みである配線基板用プリント板24の夫々の配線基板ブ
ロック26に設けた柱部材固定用パターン21に、導電性接着剤を塗布した後柱部材固定
用パターン21と柱部材18の位置合わせをおこなって、配線用プリント板24と柱部材
用セラミック板25とを接合し固定する。その後、配線用プリント板24の点線にて図示
した位置において、ダイシング・ソー等の切断機を用いて切断し、柱部材18を固定した
配線基板17を分離する。
【0017】
配線基板用プリント板24と柱部材用セラミック板25との接合手順については、先ず
、最初に配線基板用プリント板24に設けた柱部材固定用パターン21と柱部材用セラミ
ック板25に設けた柱部材18の底部電極とを導電性接着剤等を用いて固定した後、配線
基板用プリント板24に設けた電子部品15を搭載するランド14にスクリーン印刷によ
ってクリームハンダを塗布し、夫々の電子部品15を戴置した後、リフロー炉内において
加熱を行い、その後冷却することにより電子部品15を固定する方法であってもよい。
【0018】
更に、配線基板用プリント板24と柱部材用セラミック板25との接合手順について、
配線基板用プリント板24に設けた電子部品15を搭載するランドと、柱部材固定用パタ
ーン21とに、スクリーン印刷によってクリームハンダを塗布して夫々の電子部品15を
戴置して、配線基板用プリント板24と柱部材用セラミック板25の位置を合わせして重
ね、リフロー炉内において加熱を行い、その後冷却することにより電子部品15と柱部材
用セラミック板25に設けた柱部材18とを固定する方法であってもよい。
【0019】
そこで、本発明による柱部材は、1枚の柱部材用セラミック板に複数の柱部材を形成し
て製造したものであるので、柱部材の高さは全て同一となり、圧電振動子を取り付ける際
に生じる柱部材の寸法不良による取付け不具合を防ぐことができると共に、大面積の柱部
材用母材上に区画形成された柱部材ブロックと、大面積の配線基板用プリント板上に区画
形成された配線基板とを一括して接合可能であるので、効率のよい生産が可能となる。
【0020】
又、大面積の柱部材用母材上に区画形成された柱部材ブロックを使用することにより、
柱部材を配線基板に設けた柱部材固定用パターンに個々に戴置する必要がなく、柱部材を
配置する際に必要な上下の位置関係も常に同一方向であり、柱部材の取り付け誤りを防ぐ
ことができると共に、柱部材をクリームハンダ上に戴置した際に配線基板に設けた柱部材
固定用パターンからずれる可能性もなく、作業効率の向上が図られる。
次に、柱部材18を固定した配線基板17の製造が完了すると、柱部材18の上部電極
22に導電性接着剤を塗布し、水晶振動子19の底面電極23に接着させることにより、
水晶振動子19を配線基板17に固定して水晶発振器は完成する。
【符号の説明】
【0021】
1・・ランド、 2・・電子部品、
3・・外部電極、 4・・配線基板、
5・・柱部材、 6・・水晶振動子、
7・・底部電極、 8・・柱部材固定用パターン、
9・・上部電極、 10・・底面電極、
11・・柱部材、 12・・電極、
13・・スルーホール、 14・・ランド、
15・・電子部品、 16・・外部電極、
17・・配線基板、 18・・柱部材、
19・・水晶振動子、 20・・底部電極、
21・・柱部材固定用パターン、 22・・上部電極、
23・・底面電極、 24・・配線基板用プリント板、
25・・柱部材用セラミック板、 26・・柱部材ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に少なくとも発振回路を構成する電子部品を搭載すると共に底面に外部電極を備え
た平面状の配線基板と、圧電振動子とを、側面に切断面と上面及び底面にそれぞれが互い
に導通した金属面とを有した柱部材を介して導通固定した圧電発振器の製造方法であって

複数個分の前記配線基板を区画形成した配線基板母材に電子部品を搭載する工程と、
複数の柱部材を区画形成した柱部材用母材を、前記配線基板母材上の柱部材固定用パタ
ーンと前記柱部材の底面側の前記金属面とが導通するよう固定する工程と、
前記配線基板母材を前記柱部材用母材と共に切断し、区画毎の個片に分割する工程とを
含むことを特徴とする圧電発振器の製造方法。
【請求項2】
前記柱部材用母材は、格子状部材と該格子状部材から半島状に延びる柱部材とを一体的
に構成したものであることを特徴とする請求項1記載の圧電発振器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−161802(P2010−161802A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60367(P2010−60367)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【分割の表示】特願2001−119196(P2001−119196)の分割
【原出願日】平成13年4月18日(2001.4.18)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】