説明

圧電発振器

【課題】 小型化に伴ってプリント基板上のグランド配線パターンを細線化した場合でも、シールドケースに外来から到来する電磁波や静電気等によってグランドレベルが不安定になることがない圧電発振器を提供する。
【解決手段】 圧電素子を含む圧電発振回路を構成する部品4を搭載したプリント基板2と、部品4をシールドするシールドケース3とから構成される圧電発振器1において、シールドケース3をプリント基板2のグランドに接続しないようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧電発振器に係り、特に圧電発振器を小型化する場合に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
例えば無線LAN等の伝送機器においては、圧電発振器を利用したPLL(Phase Locked Loop)回路が広く利用されている。このような圧電発振器は、高周波信号を取り扱う電子機器であるため、圧電素子を含む圧電発振回路を構成する各種部品をプリント基板に搭載する。そして、このプリント基板を金属のシールドケースにより覆うことによって周波数の安定化を図るようにしている。
図3は、従来の圧電発振器の構造を示した図であり、(a)は組立斜視図、(b)は分解斜視図である。
この図3(a)(b)に示すように、従来の圧電発振器51では、プリント基板52上の各種部品54をシールドケース53により覆うようにしている。この場合、シールドケース53は、ハンダ55によりプリント基板52上のグランド(GND)パッド54に接続するようにしている。またシールドケース53に十分なシールド効果を持たせるため、シールドケース53が接続されるプリント基板52上のグランドパッド54と圧電発振器の実装端子であるグランド端子とを結線するグランド配線パターンを太く、且つ、短くして、グランド配線パターンのインダクタンス値をできるだけ小さく抑えるようにしていた。
なお、先行文献としては、水晶振動子を搭載したプリント基板と非接触となるよう平板形状のシールドケースを水晶振動子の上面に導通接続したシールド構造に関する技術がある(特許文献1)。
【特許文献1】特許第3349875号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年、各種電子機器の小型化に伴って、電子機器を構成する圧電発振器等においても小型化が求められており、プリント基板52上では、回路配線パターンを細線化せざるを得ないのが現状であり、グランド配線パターンも例外でない。
しかしながら、プリント基板52上のグランド配線パターンを細線化した場合は、グランド配線のインダクタンス値が大きくなる。このため、シールドケース53をプリント基板52のグランド配線パターンに接続した場合は、外来から到来する高レベルの電磁波や静電気等によって圧電発振器51のグランドレベルが不安定になるという問題点があった。
そこで、本発明は上記したような点を鑑みてなされたものであり、小型化に伴ってプリント基板上のグランド配線パターンを細線化した場合でも、外来から到来する電磁波や静電気等によってグランドレベルが不安定になることがない圧電発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、圧電素子を含む圧電発振回路を構成する部品を搭載したプリント基板と、前記部品をシールドするシールドケースとから構成される圧電発振器において、前記シールドケースを前記プリント基板のグランドに接続しないようにしたことを特徴とする。
また請求項2に記載の発明は、前記シールドケースは、絶縁性接着剤により前記部品に接着した請求項1に記載の圧電発振器を特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、シールドケースを前記プリント基板のグランドに接続しないようにしたことにより、例えば圧電発振器を小型化するためにプリント基板上のグランド配線パターンを細線化せざるを得ない場合でも外来ノイズにより圧電発振器のグランドレベルが不安定になるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態としての圧電発振器の構造を示した図であり、(a)は組立斜視図、(b)は分解斜視図である。
この図1(a)(b)に示すように、本実施の形態の圧電発振器1においては、圧電素子を含む圧電発振回路を構成する部品をプリント基板2に搭載し、このプリント基板2に搭載した部品4をシールドケース3により覆うようにしている。そして、本実施の形態の圧電発振器1においては、シールドケース3をプリント基板2上に固定するために、シールドケース3をプリント基板2上に搭載した部品4の上面に、例えば絶縁性の接着剤5により接着するようにしている。つまり、本実施の形態では、シールドケース3をプリント基板2のグランドに導通接続しないように構成している。
このように構成すると、例えば圧電発振器を小型化するために、細線化したプリント基板2のグランド配線パターンにシールドケース3を導通接続する場合に比べて、外来から到来する電磁波や静電気等の外来ノイズにより圧電発振器のグランド電位が変動するのを抑制できることがわかった。
また、シールドケース3に帯電した電荷は空中に放電されるため、大電流として圧電発振器内の回路に流れ込むことがなく、帯電した電荷によって圧電発振器のグランド電位が急激に変動することがないことも確認された。
従って、このような本実施の形態の圧電発振器によれば、例えば圧電発振器の小型化するためにプリント基板上の回路配線パターンを細線化せざるを得ない場合でも、外来ノイズにより圧電発振器のグランドレベルが不安定になるのを防止することができるようになる。
【0007】
図2は圧電発振器を搭載した電子機器において行った放電試験の説明図であり、(a)は放電試験条件の概略構成を示した図、(b)はその試験結果を示した図である。
図2(a)に示すように、放電試験に使用した放電装置10は、印加装置11と放電板(銅板)12とにより構成される。この場合、印加装置11から放電板12に印加する印加電圧は16kVに設定している。また放電板12と電子機器20との間の距離を100mmに設定している。
このような試験条件のもとで、例えばプリント基板2上の配線パターンを細線化したうえで、シールドケース3とグランド配線とを接続した圧電発振器を電子機器20に搭載して放電試験を行った場合は、60回中58回の頻度で外来ノイズによるグランド電位の変動が認められた。これに対して、本実施の形態の圧電発振器1を電子機器20に搭載して放電試験測定を行った場合は、グランド電位の変動は60回中39回まで低減されることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態としての圧電発振器の構造を示した図であり、(a)は組立斜視図、(b)は分解斜視図。
【図2】圧電発振器を搭載した電子機器において行った放電試験を説明した図であり、(a)は試験条件の概略構成を示した図、(b)は試験結果を示した図。
【図3】従来の圧電発振器の構造を示した図であり、(a)は組立斜視図、(b)は分解斜視図。
【符号の説明】
【0009】
1 圧電発振器、2 プリント基板、3 シールドケース、4 部品、5 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子を含む圧電発振回路を構成する部品を搭載したプリント基板と、前記部品をシールドするシールドケースとから構成される圧電発振器において、
前記シールドケースを前記プリント基板のグランドに導通接続しないようにしたことを特徴とする圧電発振器。
【請求項2】
前記シールドケースは、絶縁性接着剤により前記部品に接着したことを特徴とする請求項1に記載の圧電発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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