説明

圧電発振器

【課題】本発明の目的は、圧電発振器の発振周波数の高精度化、さらに狭公差の周波数規格に対応可能な圧電発振器を提供することにある。
【解決手段】絶縁基板に形成された圧電振動素子搭載領域には圧電振動子が搭載され、絶縁基板に形成された電子素子搭載領域には、少なくとも発振回路が形成内蔵されている集積回路素子が搭載され、且つ電子素子搭載領域に形成されたコンデンサ接続用電極パットには、チップ型コンデンサが搭載されており、圧電振動素子、集積回路素子及びチップ型コンデンサを電気的に接続してなる圧電発振器において、コンデンサ接続用電極パットの形態が、複数個のチップ型コンデンサを並列に導通固着できる少なくとも一対のコンデンサ接続用電極パットである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯用通信機器等の電子機器に用いられる電子部品の一つである圧電発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、携帯用通信機器等に搭載される電子機器の一つとして圧電発振器が用いられている。表面実装用の圧電発振器は小型・軽量であることから、特に、携帯電話等の動的環境下で使用される通信機器の周波数源として使用される。このようなものの一つに、感温素子(例えば、温度上昇とともに抵抗値の小さくなるサーミスタ)とコンデンサからなる直接法の温度補償回路を用いた圧電発振器がある。
【0003】
かかる従来の圧電発振器としては、図3にシールドリッドを外した状態の圧電発振器の上面図を示す。図3に示す従来の圧電発振器30は、主に圧電振動子31、チップ型コンデンサ32、集積回路素子33、チップ型電子素子34及びシールドリッドからなり、これらの素子を、外部接続電極を有する絶縁基板35に搭載してなる。圧電振動子31は主に容器、圧電振動素子及び金属製蓋体8とから構成されている。
【0004】
図3は従来の圧電発振器において、シールドリッドを外した状態の上面図を図示している。図3の上面図においては、絶縁基板35上に圧電振動子31、チップ型コンデンサ32、集積回路素子33、チップ型電子素子34を搭載している。図3における集積回路素子33は、発振回路を形成し、共振回路に接続して帰還増幅する発振用増幅器及びバイアス抵抗等を集積化している。また、チップ型電子素子34は電源アース間のバイパスコンデンサ、次段との結合コンデンサからなり、チップ型コンデンサ32は一端側を圧電振動子31の他端側に接続し、例えば粗調整用と微調整用としたチップ型コンデンサ32の並列回路からなる。
【0005】
上述したような圧電発振器の形態については、下記に開示の先行技術文献に記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−023189号公報
【特許文献2】特開2004−254212号公報
【0007】
なお、出願人は前記した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に関連する先行技術文献を、本件出願時までに発見するに至らなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来の圧電発振器30の周波数調整回路においては、その構造上、例えば粗調整用と微調整用とした各個独立したチップ型コンデンサ32の並列回路からなるため、周波数調整用(粗調整用、微調整用)のチップ型コンデンサ32の搭載後に更なる高精度の周波数調整が必要となった場合、周波数調整用のコンデンサ素子を更に追加搭載することが困難であり、所望とする狭公差の周波数範囲に発振周波数値を追い込むことが出来ないという欠点を有していた。
【0009】
本発明は上記欠点に鑑み考え出されたものであり、従ってその目的は、圧電発振器の発振周波数の高精度化、さらに狭公差の周波数規格に対応可能な圧電発振器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の圧電発振器は、絶縁基板に形成された圧電振動子搭載領域には圧電振動子が搭載され、この絶縁基板に形成された電子素子搭載領域には、少なくとも発振回路が形成内蔵されている集積回路素子が搭載され、且つ電子素子搭載領域に形成されたコンデンサ接続用電極パットには、チップ型コンデンサが搭載されており、圧電振動子,集積回路素子及びチップ型コンデンサを電気的に接続してなる圧電発振器において、上記コンデンサ接続用電極パットの形態が、複数個のチップ型コンデンサを並列に導通固着できる大きさの少なくとも一対のコンデンサ接続用電極パットであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の圧電発振器は、上記構成において圧電振動素子搭載領域及び電子素子搭載領域が、矩形状の絶縁基板の主面に開口する少なくとも1つの凹部内にそれぞれ形成されていることも特徴とする。
【0012】
更に、このコンデンサ接続用電極パッドに導通固着するチップ型コンデンサは、周波数調整用のコンデンサであることも特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の圧電発振器によれば、コンデンサ接続用電極パットの形態が、複数個のチップ型コンデンサを並列に導通固着できる少なくとも一対のコンデンサ接続用電極パットであることから、粗調整用と微調整用としたチップ型コンデンサの並列回路の周波数調整回路に、更に任意に周波数調整用のチップ型コンデンサを追加できるので、高精度の周波数調整が可能となり、狭公差の周波数規格の圧電発振器にも対応可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図においての同一の符号は同じ対象を示すものとする。尚、各図では、説明を明りょうにするため構造体の一部を図示せず、また寸法も一部誇張して図示している。
【0015】
図1は本発明に係る圧電発振器の一形態を図示したものであり、(a)はシールドリッド4を外した状態の本発明の実施形態にかかる圧電発振器Aの上面図であり、(b)は図1記載の仮想切断線A1−A2で切断した場合の本発明の実施形態にかかる圧電発振器Aの断面図である。また、図2は本発明に係る圧電発振器の他の形態を図示したものであり、(a)はシールドリッド4を外した状態の本発明の実施形態にかかる圧電発振器Bを実装側から図示した下面図であり、(b)は(a)記載の仮想切断線B1−B2で切断した場合の本発明の実施形態にかかる圧電発振器Bの断面図である。図1に図示する圧電発振器A及び図2に図示する圧電発振器Bは、大略的に言って、圧電振動子1と、チップ型コンデンサ2、集積回路素子3、シールドリッド4、チップ型電子素子7、絶縁基板11とで主に構成されている。
【実施例1】
【0016】
図1に図示する圧電発振器Aは、絶縁基板11上の圧電振動子搭載領域に圧電振動子1が配置されており、又、絶縁基板11上の圧電振動子搭載領域と同一面上に設けられた電子素子搭載領域には、圧電振動子1と電気的に接続する発振回路を内部に構成する集積回路素子3、抵抗、コンデンサ、サーミスタ、可変容量ダイオード等のチップ型電子素子7、及び周波数調整に用いられるチップ型コンデンサ2が搭載されている。この圧電振動子1、集積回路素子3、チップ型電子素子7及びチップ型コンデンサ2はシールドリッド4により覆われ封止されている。また、圧電振動子1は、図1に示すように主にセラミックスからなる容器体6、圧電振動素子5及び蓋体8で主に構成されている。
【0017】
また、セラミックスからなる容器体6は、平板状セラミック基板、リング状セラミック基板が積層され、更に、リング状セラミック基板の表面のキャビティ開口周囲にメタライズ層(図示なし)が形成され、そのメタライズ層上にろう材(図示なし)等によりシールリングが取着されている。これにより、セラミックパッケージからなる容器体6は、表面開口を有するキャビティが形成される。また、平板状セラミック基板上、即ち、キャビティ内の底面には、圧電振動素子5と機械的に固定及び電気的に接続される素子接続用電極パッドが形成されている。
【0018】
更に、セラミックパッケージからなる容器体6の外底面には、素子接続用電極パッドに導通する複数個の絶縁基板接続用端子電極が形成されている。そして、容器体6の内部にはその厚み方向に素子接続用電極パッドと所定の絶縁基板接続用端子電極を導通し、又はメタライズ層とGND端となる絶縁基板接続用端子電極とを導通する不図示のビアホール導体が形成されている。このような素子接続用電極パッド、絶縁基板接続用端子電極、メタライズ層は、所定のセラミックグリーンシートにモリブデンやタングステンなどの高融点金属材料から成る導電性ペーストを充填印刷するとともに、シート表面に所定形状に導電性ペーストを印刷することにより形成される。
【0019】
上記シールリングは不図示であるが42アロイやコバール、リン青銅からなる心材と、その表面にAuメッキ層、Niメッキ層が順次形成されている。シールリングの取り付けとしては、上述のようにリング状セラミック基板表面にモリブデンやタングステンなどの高融点金属材料からなる導電性ペーストを印刷し、所定雰囲気で焼成することによりメタライズ層を形成し、該メタライズ層上にNi、Auメッキ層を形成しAgろう等のろう材などを用いて接合されている。
【0020】
また、圧電振動素子5には、所定結晶軸でカットされた短冊状の水晶素板と、水晶基板の両主面に形成される励振電極と、その励振電極から水晶基板の一方の端部に延びる引き出し電極を具備した水晶振動素板を用いている。
【0021】
蓋体8は、例えば、Fe−Ni合金(42アロイ)やFe−Ni−Co合金(コバール)などから成る金属板と、その金属板の表面及び内面に封止用メッキ層であるNiメッキ層が形成されている。また、蓋体8の表面領域は、後述のシールドケース4とスポット溶接されるスポット溶接部が複数形成されることになる。このような蓋体8は、シールリング上に搭載されキャビティを窒素ガスや真空などで気密封止する。具体的には、所定雰囲気中で蓋体8をシールリング上に載置して、シールリングの表面の金属と蓋体8の金属の一部とが溶接するように溶接用のローラ電極に所定電流を印加して溶接を行う。
【0022】
図1に示すように絶縁基板11は、内部に所定の内層配線が形成された複数枚のセラミック基板、ガラスエポキシ基板などを積層した構造からなり、少なくとも各々の基板の表面に形成され、所定回路を構成する配線パターン13と、最外となる基板の底面や側面に形成され、配線パターン13に接続される外部接続用端子電極10とから構成されている。
【0023】
また、発振回路を内部に構成する集積回路素子3は、圧電発振器Aの主要な回路網を構成する。即ち、集積回路素子3は、上述した圧電振動子1とともに、温度補償回路部、周波数調整回路部、発振・増幅回路部を構成する各電子回路網に含まれる。例えば、温度補償回路部にあっては、集積回路素子の他にコンデンサ、抵抗、サーミスタ等からなるチップ型電子素子7により構成され、周波数調整回路部にあっては、集積回路素子3の他にチップ型コンデンサ2により構成され、発振・増幅回路部にあっては、集積回路素子3の他にトランジスタ、コンデンサ、抵抗、インダクタンス素子などのチップ型電子素子7により構成されている。
【0024】
シールドリッド4は、少なくとも圧電振動子1、集積回路素子3、チップ型コンデンサ2及びチップ型電子素子7を搭載した空間を封止する形状である。実施例1では平板形状のシールリッド4を開示したが、例えば、SUS304等の金属板をプレス成型して形成し、天井面、4つの側面を有する底面側から開口した筐体状となった形状のシールドリッド4でも良い。シールドリッド4の厚みは80μm程度となっている。このシールドリッド4の材質は外来ノイズの影響を内部の圧電振動子1や集積回路素子3等に伝えにくい遮蔽効果の高い金属材料が望ましい。なお、シールドリッド4は、その表面がカーボンなどの黒色顔料を有するメッキ槽でNiメッキされ、表面のみが例えば黒色化される場合もある。
【0025】
上述したシールドリッド4を絶縁基板11に搭載・接続された圧電振動子1の表面に絶縁基板11と対応する位置に載置し、圧電振動子1の蓋体8とスポット的にレーザーなどのエネルギービームを照射することにより、高温化し溶融接合させる。
【0026】
このような構成の圧電発振器Aにおいて、絶縁基板11の電子部品搭載領域に形成した上記周波数調整回路部を構成するチップ型コンデンサ2を複数個並列に配置導通できるサイズの一対のコンデンサ接続用電極パッド12が形成されている。本実施例では、チップ型コンデンサ2を3個並列に配列した際に、各チップ型コンデンサ2の長さ方向両端に形成されている電極を並列導通できるようなサイズの1対のコンデンサ接続用電極パッド12を開示している。
【0027】
本発明の要旨は、各図に図示したように、コンデンサ接続用電極パット12の形態が、複数個のチップ型コンデンサ2を並列に導通固着できる少なくとも一対のコンデンサ接続用電極パット12であることから、粗調整用と微調整用としたチップ型コンデンサ2の並列回路の周波数調整回路に、更に再微調整用としての周波数調整用コンデンサを追加できるので、より高精度の周波数調整が可能となる。
【実施例2】
【0028】
図2には、本発明に係る圧電発振器の他の形態を図示したもので、圧電発振器Bを構成する絶縁基板の一方の主面側に圧電振動子搭載領域を設け、圧電振動子1を配置固着し、絶縁基板の他方の主面側には、電子素子搭載領域が設けられ、圧電振動子1と電気的に接続する発振回路を内部に構成する集積回路素子3、及び周波数調整に用いられるチップ型コンデンサ2が搭載されている。尚、これら圧電振動子1、集積回路素子3及びチップ型コンデンサ2の構成、作用及び効果は、上記実施例1に開示の同素子類と同じである。
【0029】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。例えば、圧電振動子1やコンデンサ接続用電極パッド12などの形成位置などは、本発明の実施者が所望する配置パターンで構わない。又、実施例1及び実施例2に開示の圧電発振器では、圧電振動子搭載領域と電子素子搭載領域を同一の絶縁基板11に設けた形態を開示したが、これらの搭載領域を別々の絶縁基板に設け、その絶縁基板間を機械的及び電気的に接続して成る圧電発振器でも本発明は有効である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、本発明に係る圧電発振器の一形態を図示したものであり、(a)はシールドリッド4を外した状態の本発明の実施形態にかかる圧電発振器Aの上面図であり、(b)は図1記載の仮想切断線A1−A2で切断した場合の本発明の実施形態にかかる圧電発振器Aの断面図である。
【図2】図2は、本発明に係る圧電発振器の他の形態を図示したものであり、(a)は本発明の実施形態にかかる圧電発振器Bを外部回路網実装側から図示した下面図であり、(b)は(a)記載の仮想切断線B1−B2で切断した場合の本発明の実施形態にかかる圧電発振器Bの断面図である。
【図3】従来の圧電発振器の概略の上面図である。(シールドリッドを外した形態)
【符号の説明】
【0031】
A、B・・・圧電発振器
1・・・圧電振動子
2・・・チップ型コンデンサ
3・・・集積回路素子
4・・・シールドリッド
5・・・圧電振動素子
6・・・容器体
7・・・チップ型電子素子
10・・・外部接続用端子電極
11・・・絶縁基板
12・・・コンデンサ接続用電極パッド
13・・・配線パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板に形成された圧電振動子搭載領域には圧電振動子が搭載され、該絶縁基板に形成された電子素子搭載領域には、少なくとも発振回路が形成内蔵されている集積回路素子が搭載され、且つ該電子素子搭載領域に形成されたコンデンサ接続用電極パットには、チップ型コンデンサが搭載されており、該圧電振動子,該集積回路素子及び該チップ型コンデンサを電気的に接続してなる圧電発振器において、
該コンデンサ接続用電極パットの形態が、複数個のチップ型コンデンサを並列に導通固着できる少なくとも一対のコンデンサ接続用電極パットであることを特徴とする圧電発振器。
【請求項2】
該圧電振動子搭載領域及び該電子素子搭載領域が、平板形状の該絶縁基板の主面に開口する少なくとも1つの凹部内にそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1記載の圧電発振器。
【請求項3】
該コンデンサ接続用電極パッドに導通固着する該チップ型コンデンサは、周波数調整用のコンデンサであることを特徴とする請求項1及び請求項2に記載の圧電発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−13569(P2007−13569A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−191718(P2005−191718)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000104722)京セラキンセキ株式会社 (870)
【Fターム(参考)】