説明

圧電発振器

【課題】 例えば通信機器やコンピュータ等に使用される圧電発振器であって、出力周波数の周波数偏差を小さく抑える恒温手段を備える圧電発振器の実現を目的とする。
【解決手段】 課題を解決するために本発明は、少なくとも、圧電振動子と半導体回路素子と容器とから構成する圧電発振器であって、前記半導体回路素子に温冷手段を備えることにより圧電振動子の周囲環境温度を平準化する圧電発振器で、前記の温冷手段は、ペルチェ素子を用いることで実現し前記ペルチェ素子は前記半導体回路素子と一体的に半導体基板に形成されることにより課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば通信機器やコンピュータ等に使用される圧電発振器であって、出力周波数の周波数偏差を小さく抑える圧電発振器の構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から発振出力周波数を一定に保つために恒温槽を備えた温度補償型発振器が提案されている。この温度補償型発振器は、圧電振動子を覆う格好でその周囲に恒温槽を配置し、恒温槽により日常の環境温度よりも高い温度環境を整えることにより、恒温槽で覆われる圧電振動子の動作温度を高い温度環境に維持することで、圧電振動子からの出力周波数を安定にすることを狙ったものである。その結果、発振出力周波数を一定に保つことができる。一般的には恒温槽の内部温度は+65°〜85°付近に設定したもので、圧電発振器の周囲環境温度より遙かに高い温度雰囲気に圧電振動子を置くことにより出力周波数の周波数偏差を小さく抑えることができる。
【0003】
図3に示すのは恒温槽を備えた温度補償型発振器を簡素化して描画した構造である。三次曲線の温度特性を持ったATカット板あるいは圧力補償を持ったSCカットの圧電振動子を、発熱体を備えた金属容器と保温材とから成る恒温槽により覆うことで、圧電振動子は日常の温度変化の影響を全く受けない温度雰囲気を実現することができる。
【0004】
また、圧電振動子の出力周波数信号を基に発振回路段で所望の出力周波数を生成し、また恒温槽の温度制御を行う制御回路などとの組み合わせにより恒温槽を備えた温度補償型発振器を構成するものである。前記の温度補償型発振器は周波数の安定度を追求するためのものから、一般的には圧電材料には水晶材料を用い水晶振動子と発振回路とで構成することで、発振器の動作温度環境における出力発振周波数の周波数偏差を1×10−6程度で安定化させるのに対して、恒温槽を備えることにより1×10−8 と更に安定した周波数偏差を長期的に確保、実現することができるところに大きな特徴がある。
【0005】
上述するように恒温槽を備えた温度補償型発振器は周波数偏差(変化)量は飛躍的に良好で、特に発振器を動作させる環境温度の影響を受けないと言う点では動作温度環境の全ての温度範囲で周波数変動を小さく抑えることができる一方で、温度制御を行うために消費電力が必要であったり、発振器自体が恒温槽を備えることから大型化するなどの弊害はあるものの、放送局の基幹発振部品や山岳地帯に設置する放送機器の中継基地などで多用されているのが現状である。
【0006】
【特許文献1】特開平8−88514号公報 なお、出願人は前記した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に関連する先行技術文献を、本件出願時までに発見するに至らなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように従来の恒温槽を備えた温度補償型発振器は図3に示すように、本来の高精度圧電発振器の仕様を満足するために、圧電発振器自体の外形寸法が大きく、また発熱体により圧電振動子の周囲温度環境を均一に維持する構成から、消費電力が非常に大きくなってしまう。このことは、圧電発振器全体に関しても、発熱体、温度制御(補償)回路、発振回路、を駆動する全般についても言えることになる。
【0008】
また、その一方では発熱体は圧電振動子の周囲を覆う金属容器と保温材の金属容器の周囲に巻き付けるように発熱体を構成することから経時変化に対する発熱体の寿命を懸念する必要がある。そして、恒温槽を備えた温度補償型発振器の一連の製造工程においては、高精度の仕様を満足するために製造工程内の経時温度変化を安定化させる工程(エージング)が必要で、一品一様の製品という位置づけから標準化が困難で製造工程の標準化ができにくく、製品リードタイムが長くなり、全体的な製造コストにも影響を及ぼす現状にある。
【0009】
また、圧電発振器の外形寸法の観点から見ると、昨今の部品寸法に比べて非常に大きく、今後に向けての小型化の要求にも対応していく必要性を考慮するなどの課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで上述する課題を解決するために本発明は、少なくとも、圧電振動子と半導体回路素子と容器とから構成する圧電発振器であって、前記半導体回路素子に温冷手段を備えることにより圧電振動子の周囲環境温度を平準化する圧電発振器で、前記の温冷手段は、ペルチェ素子を用いることで実現し前記ペルチェ素子は前記半導体回路素子と一体的に半導体基板に形成されていることを特徴とする圧電発振器である。
【0011】
要するに、解決すべき課題に記述する、圧電発振器の消費電力、外形寸法の大小、一品一様の製品という位置づけから標準化が困難、と言ったことがらに対して、昨今広い範囲で汎用品として使用されている圧電発振器の概念を取り入れた構造、形状、寸法に近い恒温機能を備えた圧電発振器を実現するものである。
【0012】
最も大きな特徴には、圧電振動子に対する周囲環境温度を平準化し安定させるために、発熱体にペルチェ素子を用い、温度制御回路、発振回路と一体基板にモジュール化し、ペルチェ素子は温度制御回路や発振回路と言った半導体集積回路の製作時にシリコン基板上に形成しワンチップ化するものである。
【0013】
また、付随機能としては動作温度環境の中でより安定した周波数出力(周波数変動を抑える)を得るために、温度制御用のRAMを搭載し温度制御設定を書き換えることにより課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明によれば、半導体素子則ちワンチップ化された半導体集積回路の中に発熱体である温冷素子(ペルチェ素子)を用いるため、圧電発振器全体の消費電力を大幅に削減できる。上述により圧電発振器の駆動と温度制御回路、ペルチェ素子をワンチップ化することにより飛躍的な小型化が可能となり、製造工程の簡略化と製造コストの低減、更には製造工程の標準化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面に従ってこの発明の実施例を説明する。なお、各図において同一の符号は同様の対象を示すものとする。図1は本発明の恒温手段を備えた圧電発振器4の断面図(a)と平面図(b)である。少なくとも、圧電振動子1と半導体回路素子2と容器3とから構成しているが、これらの構造については、図1に示す断面図(a)から分かるように、容器3の凹部に圧電振動子1と半導体回路素子2とを配置する上で、前記半導体回路素子2に温冷手段を備えることが本発明の特徴である。なお、凹部上部に金属フタを被せて密閉容器を構成する。
【0016】
なお、容器材質はセラミック、有機材から構成されており半導体回路素子2はワイヤボンダー、フリップチップを用いて搭載され、圧電振動子1については導電性接着剤やバンプで実装されている。しかしながら実装手段に制限を受けるものでは無い。
【0017】
図1に示す半導体回路素子2には、圧電振動子1を実装する周囲環境温度を平準化するために、周囲温度をほぼ一定にできるように容器凹部の温度雰囲気を半導体回路素子2と一体化で組み込まれているペルチェ素子により温度制御がなされている。
【0018】
従って、上述する半導体回路素子2にはペルチェ素子と、ペルチェ素子を駆動し温度制御を行う制御回路と、圧電振動子1の周波数出力をクロック源とした発振器としての発振出力信号を生成する発振駆動回路とが一体としてワンチップで構成されている。
【0019】
図2は本発明で用いる半導体回路素子2に注目した概念図である。半導体回路素子2には上述するように大別して3つの機能が一体基板に集約されている。当然ながら同一シリコン基盤上に半導体回路素子2を製造するときに同じタイミングで形成するものである。そこで、重複するが、3つの機能としては、(1)ペルチェ素子と、(2)ペルチェ素子を駆動し温度制御を行う制御回路と、(3)圧電振動子1の周波数出力をクロック源とした発振器としての発振出力信号を生成する発振駆動回路の3つの機能である。
【0020】
図2(a)では半導体回路素子2として一体的に機能することを概念的に示したもので、図2(b)実際には半導体回路素子2のシリコン基板上に各機能を領域として示した図である。但し図2(b)については、各機能を配置する場所やその領域の大きさは変化する。
【0021】
しかしながら、本発明の半導体回路素子2には、圧電振動子1の本来持つ温度特性を補正するための温度制御用のRAMを搭載し温度制御設定を書き換える機能なども付加することで、本発明の目的である圧電振動子1の周囲温度環境をほぼ一定にすると共に、圧電発振器4からの周波数出力信号の偏差量を小さくすることができる。
【0022】
なお、ペルチェ素子とは、2つの異なる金属で接合されており接合された部分の温度が、ペルチェ素子3と接続される部分に流れる電流の向きに応じて上昇(加熱)又は下降(冷却)することを利用して圧電振動子1の周囲温度を制御するものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の圧電発振器の概念を示す断面図である。
【図2】本発明の半導体回路素子に注目した概念図である。
【図3】従来から使用されている恒温槽を備えた温度補償型発振器の概念図である。
【符号の説明】
【0024】
1 圧電振動子
2 半導体回路素子
3 容器
4 圧電発振器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、圧電振動子と半導体回路素子と容器とから構成する圧電発振器であって、圧電振動子の周囲環境温度を平準化するために前記半導体回路素子に温冷手段を備えることを特徴とする圧電発振器。
【請求項2】
請求項1に記載の温冷手段は、ペルチェ素子を用いることで実現し前記ペルチェ素子は前記半導体回路素子と一体的に半導体基板に形成されていることを特徴とする圧電発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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