説明

圧電発振器

【課題】外部周囲温度の影響を受け難い圧電発振器を提供する。
【解決手段】水晶発振器1には、メイン基板2と発振基板3とからなる二つの基板と、水晶振動子4とが設けられている。メイン基板2には、水晶振動子4の温度制御を行う温度制御回路を構成する温度制御部23と、外部と電気的に接続された外部端子26とが設けられている。発振基板3には、水晶振動子4を発振子とした圧電発振回路を構成する発振部33が設けられている。また、水晶振動子4は、当該水晶振動子4の温度を所定温度に保つための恒温槽5によって覆われている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電発振器では、内部に配する圧電振動子を発振子とした発振回路の温度制御を行うことで周波数の高安定化を図ることができ、温度制御を行ったものとして恒温槽付圧電発振器(以下、OCXOという)がある。
【0003】
この恒温槽付圧電発振器(以下、OCXOという)は、圧電振動子が恒温槽に覆われた状態で、発振回路とともに本体筐体に配されたものである(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
下記する特許文献1に示すようなOCXOによれば、外部の温度変化に影響することなく、圧電振動子を恒温槽内で温度制御することにより周波数の高安定化を図ることができる。
【0005】
また、OCXOによれば、周波数安定度として1×10-7〜1×10-10程度の圧電振動子で得られる最高水準の周波数安定度を得ることができるため、OCXOは、無線基地局や伝送ラインなどの基準周波数として利用されている。
【0006】
下記する特許文献1では、1枚の基板に、発振回路を構成する発振用素子と、温度制御回路を構成する温度制御素子と、水晶振動子を加熱するヒータ部である発熱用のチップ抵抗とが配置されている。
【0007】
具体的に、基板の一主面に発振用素子と温度制御素子とが設けられ、基板の他主面の対向位置にチップ抵抗が設けられている。なお、恒温槽に覆われた水晶振動子は、チップ抵抗の上方に熱伝導性の柔軟性物体を介して設けられている。
【特許文献1】特開2005−124129号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記した特許文献1に示すように、1枚の基板に、発振用素子と温度制御素子とが設けられているだけでなく、外部と金属線などで接続される外部端子が設けられている。そのため、この外部端子からの外部影響を発振用素子及び温度制御素子が受け易く、特に外部周囲温度の影響を発振用素子及び温度制御素子が受け易い。
【0009】
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、外部周囲温度の影響を受け難い圧電発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる圧電発振器は、一方の基板と他方の基板とからなる二つの基板と、圧電振動子とが設けられ、前記一方の基板は、前記圧電振動子の温度制御を行う温度制御回路を構成する温度制御部と、外部と電気的に接続され外部入出力回路を構成する外部端子とが設けられたメイン基板であり、 前記他方の基板は、前記圧電振動子を発振子とした圧電発振回路を構成する発振部が設けられた発振基板であり、前記圧電振動子は、当該圧電振動子の温度を所定温度に保つための恒温槽によって覆われたことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、前記メイン基板と前記発振基板(OSC基板)と前記圧電振動子とが設けられ、前記メイン基板には前記温度制御部と前記外部端子とが設けられ、前記発振基板には前記発振部が設けられ、前記圧電振動子は前記恒温槽によって覆われているので、前記発振部と前記圧電振動子とが外部周囲温度の影響を受けるのを抑えることが可能となる。すなわち、本発明によれば、前記発振部と前記外部端子とが別々の基板に設けられるので、前記発振部が前記外部端子から外部影響を受け難く、特に外部周囲温度の影響を受け難い。その結果、前記圧電振動子と前記発振部との温度差が生じるのを抑えることが可能となる。
【0012】
前記構成において、前記二つの基板が、前記圧電振動子を間に配した状態で対向して設けられてもよい。
【0013】
この場合、前記二つの基板が、前記圧電振動子を間に配した状態で対向して設けられるので、前記二つの基板により、前記恒温槽によって覆われた前記圧電振動子を挟みこむ構造とすることが可能となり、その結果、前記恒温槽の熱が逃げるのを前記二つの基板により防ぐことが可能となる。
【0014】
前記構成において、前記メイン基板には、前記圧電振動子を加熱するヒータ部が設けられてもよい。
【0015】
この場合、前記メイン基板に前記ヒータ部が設けられているので、前記発振基板に設けられた前記発振部は前記ヒータ部から直接熱を受けることもなく、安定して温度を一定に保つことが可能とあり、その結果、前記圧電振動子および前記発振部の温度を一定に保つ高安定な圧電発振器とすることが可能となる。
【0016】
前記構成において、前記ヒータ部は、少なくとも抵抗とトランジスタとから構成され、前記メイン基板上において前記抵抗と前記トランジスタとが近接して配されてもよい。
【0017】
この場合、前記ヒータ部が少なくとも抵抗とトランジスタとから構成され、前記メイン基板上において前記抵抗と前記トランジスタとが近接して配されるので、前記ヒータ部だけでなく前記温度制御部も発熱するが、この前記温度制御部の発熱によって温度勾配の変動が生じるのを抑制することが可能となる。
【0018】
前記構成において、前記発振基板の熱伝導率に対して、前記メイン基板の熱伝導率が低くてもよい。例えば、前記発振基板としてアルミナセラミックからなる基板を用い、前記メイン基板としてこのアルミナセラミックに対して熱伝導率の低いガラスエポキシからなる基板を用いてもよい。また、他に前記発振基板としてLTCC(Low Temperature Co−fired Ceramics)を用い、前記メイン基板としてテフロンを用いてもよい。
【0019】
この場合、前記発振基板の熱伝導率に対して、前記メイン基板の熱伝導率が低いので、所定の温度に保たれた前記発振基板から前記メイン基板と外部端子を介して外部へ熱が伝わって逃げてしまうのを抑えることができる。その結果、周波数の安定化に重要な前記発振部が搭載された前記発振基板は前記外部端子から外部影響を受け難く、特に外部周囲温度の影響を受け難く、前記圧電振動子と前記発振部との温度差が生じるのを抑えることが可能となり、周波数のさらなる高安定化に寄与する。また、前記メイン基板の熱伝導率に対して、前記発振基板の熱伝導率が高いので、前記ヒータ部の熱が前記メイン基板から前記発振基板へと伝わりやすく、前記圧電振動子と前記発振部との温度差を無くすのに好適である。なお、アルミナセラミックスの熱伝導率は、20W/mkであり、ガラスエポキシの熱伝導率は、0.4W/mkであり、LTCC(Low Temperature Co−fired Ceramics)の熱伝導率は、3W/mkであり、テフロンの熱伝導率は、0.25W/mkであり、すなわち、上記したように、前記発振基板の熱伝導率の数値は、前記メイン基板の熱伝導率の数値に対して、少なくとも1桁以上の差となることが望まれる。
【0020】
前記構成において、前記恒温槽には、前記圧電振動片の温度を測るセンサが設けられ、前記センサは前記温度制御部に接続されてもよい。
【0021】
この場合、前記恒温槽に前記圧電振動片の温度を測るセンサが設けられ、前記センサは前記温度制御部に接続されるので、前記圧電振動片の温度をより正確な状態で一定に保つことが可能となる。
【0022】
前記構成において、前記恒温槽は、アルミニウムからなってもよい。
【0023】
この場合、前記恒温槽はアルミニウムからなるので、熱伝導率が高く温度制御を行うことがし易い。さらに前記恒温槽を軽くすることが可能となるので、前記恒温槽を支える当該圧電発振器の本体筐体の部材を強化しなくてもよい。
【0024】
前記構成において、前記メイン基板に前記恒温槽が熱伝導性樹脂により接合されるとともに、前記発振基板に前記恒温槽が熱伝導性樹脂により接合されてもよい。
【0025】
この場合、前記メイン基板に前記恒温槽が前記熱伝導性樹脂により接合されるとともに、前記発振基板に前記恒温槽が前記熱伝導性樹脂により接合されるので、前記ヒータ部の熱を前記恒温槽に伝えることが容易となるとともに、前記恒温槽の熱が前記発振基板に伝わり易くなり、その結果、前記恒温槽に覆われた前記圧電振動子と前記発振基板に設けられた前記発振部との温度差を無くすのに好適である。特に、前記メイン基板と前記恒温槽、および前記発振基板と前記恒温槽の互いの接触する部分においてその部分全体で前記熱伝導性樹脂により接合することで、より均一な状態で熱が伝わり、前記発振部との温度差を無くすのにより好ましい。なお、前記発振基板と前記恒温槽とが接触部分全面において接合されるのがより好適である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、外部周囲温度の影響を受け難い圧電発振器を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施例では、圧電発振器として、圧電材料として水晶を用いた水晶発振器に本発明を適用した場合を示す。
【0028】
本発明にかかる水晶発振器1は、図1に示すように、金属材料のベース11および蓋12から構成される本体筐体13内に、二つの基板(一方の基板であるメイン基板2と他方の基板である発振基板3(OSC基板))が対向して設けられている。
【0029】
これらメイン基板2と発振基板3との間には、図1に示すように、水晶振動子4が配されている。この水晶振動子4は、当該水晶振動子4の温度を所定温度(本実施例では約80度)に保つための恒温槽5に装填され、結果、恒温槽5によって水晶振動子4は覆われている。また、恒温槽5はメイン基板2の一主面21に熱伝導性樹脂6によって接合され、同様に恒温槽5は発振基板3の他主面32に熱伝導性樹脂6によって接合されている。すなわち、図1,3に示すように発振基板3上に熱伝導性樹脂6を介して恒温槽5,メイン基板2が順に積層されている。もしくは、メイン基板2上に熱伝導性樹脂6を介して恒温槽5,発振基板3が順に積層されている。なお、本実施例では、熱伝導性樹脂6としては、熱伝導性の高いシリコーン系樹脂やエポキシ系樹脂を用いる。
【0030】
水晶振動子4は、図1に示すように、蓋41によってベース42に配されたATカット水晶振動板からなる水晶振動片(図示省略)が気密封止されてなる。水晶振動片には、励振電極(図示省略)と、この励振電極から引き出された引出電極(図示省略)が形成され、この引出電極がリード端子43に接続されている。このように構成された水晶振動子4は、図1に示すように、発振基板3に設けられた集積回路素子やその他の電子部品などの発振回路からなる発振部33(下記参照)に電気的に接続されている。
【0031】
メイン基板2は、ガラスエポキシからなり、熱伝導率は0.4W/mkである。このメイン基板2の一主面21には、図1に示すように、水晶振動子4を加熱するヒータ部22と、水晶振動子4の温度制御を行う温度制御回路(図2参照)を構成する温度制御部23と、外部と電気的に接続され外部入出力回路(図示省略)を構成する外部端子26とが設けられている。ここで外部端子26のみが、外部機器との電気的接続を行うために本体筐体13外へ延出している。また、メイン基板2の一主面21上において温度制御部23とヒータ部22とが近接して配されている。また、これら温度制御部23とヒータ部22とは、メイン基板2の一主面21上において熱導電性樹脂6によって覆われている。なお、メイン基板2は1W/mk以下の熱伝導率を有することが条件として挙げられ、具体的にメイン基板2としてガラスエポキシ以外に、例えばテフロン(熱伝導率が0.25W/mk)を用いてもよい。
【0032】
ヒータ部22は厚膜印刷抵抗などの膜抵抗体からなる抵抗28とトランジスタ25(下記参照)からなり、必要な配線パターン(図示せず)とともにメイン基板2の一主面21上に印刷形成されている。このヒータ部22は、トランジスタ25のリード端子(図示省略)を介してメイン基板2の配線パターン(図示省略)に電気的機械的に接続されている。
【0033】
温度制御部23は、センサ7の出力に応じてヒータ部22の温度を所定温度に保つためにヒータ部22への電流を制御するものであり、図2に示すように少なくともオペアンプ29と抵抗24とトランジスタ25とから構成されている。なお、本実施例でいうトランジスタ25は、温度制御部23の構成であるとともにヒータ部22の構成でもあり、本実施例では、トランジスタ25として加熱に適したパワートランジスタを用いている。
【0034】
発振基板3は、アルミナセラミックス(熱伝導率が20W/mk)からなり、上記したメイン基板2の熱伝導率に対して発振基板3の熱伝導率が高い(発振基板3の熱伝導率に対してメイン基板2の熱伝導率が低い)。この発振基板3の一主面31には、図1に示すように、水晶振動子4を発振子とした発振回路(図示省略)を構成する発振部33が設けられている。なお、発振基板3は2W/mk以上の熱伝導率を有することが条件として挙げられ、具体的に発振基板3としてアルミナセラミックス以外に、例えば、熱伝導率が3W/mkであるLTCC(Low Temperature Co−fired Ceramics)を用いてもよい。このように、発振基板3の熱伝導率の数値は、メイン基板2の熱伝導率の数値に対して、約3倍以上高いことが好適である。
【0035】
恒温槽5は、図1に示すように、アルミニウムからなるアルミブロックの恒温ベース51と恒温蓋52とからなる。
【0036】
恒温ベース51は、一端を開口端53とした凹状態の箱型形状からなり、その底面部54の中央部分には貫通孔55が設けられている。そして、この貫通孔55には、水晶振動子4の温度を測るセンサ7が設けられ、貫通孔55を塞ぐように熱伝導性樹脂6にてセンサ7が埋められる。
【0037】
センサ7は、サーミスタなどからなり、水晶振動子4に近傍の位置となる恒温ベース51の底面部54に設けられ、メイン基板2に設けられた温度制御部23に接続されている。
【0038】
また、恒温蓋52は、直方体からなり、下記する水晶振動子4のリード端子43を挿通する挿通孔56が両主面間を貫通して形成されている。
【0039】
そして、恒温槽5への水晶振動子4の装填について、まず、センサ7が埋められた状態の恒温ベース51内に熱伝導性樹脂6を注入し、その後に恒温ベース51にリード端子43付きの水晶振動子4を挿入する。なお、この水晶振動子の挿入では、リード端子43を露出する状態で水晶振動子4の蓋41を恒温ベース51の開口端53から挿入する。そして、恒温ベース51へ水晶振動子4を挿入した後、恒温蓋52にてリード端子43を挿通孔56から挿通させた状態で水晶振動子4を恒温ベース51内に封止し、恒温ベース51内に水晶振動子4を封止した状態で挿通孔56を熱伝導性樹脂6にて埋めて、恒温槽5へ水晶振動子4を装填的に接続する。上記したように恒温槽5に水晶振動子4を配することで、恒温槽5の内部に水晶振動子4が密接した状態で隙間なく格納されている。そのため、恒温槽5の内部に密接していない状態で配された水晶振動子と比べて、水晶振動子4への熱の伝導率を良くすることができる。
【0040】
上記した構成からなる水晶発振器1では、水晶振動子4がリード端子43により発振基板3の発振部33の発振回路に電気的に接続され、発振部33の発振回路はリード線8(図3参照)によりメイン基板2に設けられた温度制御部23の温度制御回路や外部端子26の外部入出力回路に電気的に接続されている。なお、リード線8以外に金属板によるリードフレームやフレキシブル基板などにより、発振部33の発振回路が、温度制御部23の温度制御回路や外部端子26の外部入出力回路に電気的に接続されてもよい。
【0041】
上記したように、本実施例にかかる水晶発振器1によれば、二つの基板(メイン基板2と発振基板3)と水晶振動子4とが設けられ、メイン基板2には温度制御部23と外部端子26とが設けられ、発振基板3には発振部33が設けられ、水晶振動子4は恒温槽5によって覆われているので、発振部33と水晶振動子4とが外部周囲温度の影響を受けるのを抑えることができる。
【0042】
すなわち、本実施例によれば、発振部33と外部端子26とが別々の基板(メイン基板2と発振基板3)に設けられるので、発振部33が外部端子26から外部影響を受け難く、特に外部周囲温度の影響を受け難い。その結果、水晶振動子4と発振部33との温度差が生じるのを抑えることができる。
【0043】
また、二つの基板(メイン基板2と発振基板3)が、水晶振動子4を間に配した状態で対向して設けられるので、二つの基板(メイン基板2と発振基板3)により、恒温槽5によって覆われた水晶振動子4を挟みこむ構造とすることができる。その結果、恒温槽5の熱が逃げるのを二つの基板(メイン基板2と発振基板3)により防ぐことができる。
【0044】
また、メイン基板2にヒータ部22が設けられているので、発振基板3に設けられた発振部33はヒータ部22から直接熱を受けることもなく、安定して温度を一定に保つことができる。その結果、水晶振動子4および発振部33の温度を一定に保つ高安定な水晶発振器1とすることができる。
【0045】
また、ヒータ部22が少なくとも抵抗24とトランジスタ25とから構成され、メイン基板2上において抵抗24と前記トランジスタ25とが近接して配されるので、ヒータ部22だけでなく温度制御部23も発熱するが、この温度制御部23の発熱によって温度勾配の変動が生じるのを抑制することができる。
【0046】
また、発振基板3の熱伝導率に対して、メイン基板2の熱伝導率が低いので、所定の温度に保たれた発振基板3からメイン基板2と外部端子26を介して外部へ熱が伝わって逃げてしまうのを抑えることができる。その結果、周波数の安定化に重要な発振部33が搭載された発振基板3は外部端子26から外部影響を受け難く、特に外部周囲温度の影響を受け難く、水晶振動子4と発振部33との温度差が生じるのを抑えることができ、周波数のさらなる高安定化に寄与する。また、メイン基板2の熱伝導率に対して、発振基板3の熱伝導率が高いので、ヒータ部22の熱がメイン基板2から発振基板3へと伝わりやすく、水晶振動子4と発振部33との温度差を無くすのに好適である。なお、アルミナセラミックスの熱伝導率は20W/mkであり、ガラスエポキシの熱伝導率は0.4W/mkであり、LTCCの熱伝導率は3W/mkであり、テフロンの熱伝導率は0.25W/mkであり、本実施例に示すように、発振基板3の熱伝導率の数値は、メイン基板2の熱伝導率の数値に対して、少なくとも1桁以上の差となることが望まれる。
【0047】
また、恒温槽5に水晶振動子の温度を測るセンサ7が設けられ、センサ7は温度制御部23に接続されるので、水晶振動子4(水晶振動片)の温度をより正確な状態で一定に保つことができる。
【0048】
また、恒温槽5はアルミニウムからなるので、熱伝導率が高く温度制御を行うことがし易い。さらに恒温槽5を軽くすることができるので、恒温槽5を支える当該水晶発振器1の本体筐体13の部材を強化しなくてもよい。
【0049】
また、メイン基板2に恒温槽5が熱伝導性樹脂6により接合されるとともに、発振基板3に恒温槽5が熱伝導性樹脂6により接合されるので、ヒータ部22の熱を恒温槽5に伝えることが容易となるとともに、恒温槽5の熱が発振基板3に伝わり易くなる。その結果、本実施例は、恒温槽5に覆われた水晶振動子4と発振基板3に設けられた発振部33との温度差を無くすのに好適な形態となる。特に、メイン基板2と恒温槽5、および発振基板3と恒温槽5の互いの接触する部分においてその接触部分全体で熱伝導性樹脂6により接合することで、より均一な状態で熱が伝わり、発振部33との温度差を無くすのにより好ましい。なお、本実施例に示すように発振基板3と恒温槽5とが接触部分全面において接合されるのがより好適である。
【0050】
なお、本実施例では、メイン基板2の一主面21にヒータ部22と温度制御部23とを設けているが、これに限定されるものではなく、メイン基板2の一主面21にヒータ部22を設け、メイン基板2の他主面27に温度制御部23を設けてもよい。この時、互いに対向させる位置にヒータ部22と温度制御部23とが配されることが、より好ましい。
【0051】
また、本実施例では、発振基板3の一主面31に発振部33を設けているが、これに限定されるものではなく、発振基板3の他主面32に発振部33を設けてもよい。
【0052】
また、本実施例では、加熱に関係する部材としてヒータ部を用いているが、さらに冷却に関する部材としてペルチェ素子などの冷却要素を別途設けてもよい。
【0053】
また、本実施例では、水晶振動子4やセンサ7やトランジスタ25などの他の電子部品素子としてリード端子を設けたものとしているが、これに限定されるものではなく、面実装型の電子部品素子であってもよい。また、当該圧電発振器自体を面実装型のものとしてもよい。
【0054】
また、本実施例では、ヒータ部22として膜抵抗体を用いているが、これに限定されるものではなく、チップ抵抗を用いてもよい。この時、トランジスタ25の構造として、単体トランジスタのみで回路構成してもよく、ダーリントン接続のトランジスタでも構成してもよい。
【0055】
また、本実施例では、図1,2に示すように、メイン基板2の一主面21にヒータ部22と温度制御部23と外部端子26とが設けられているので、メイン基板2の他主面27における回路設計の変更が容易となる。しかしながら、本実施例はこれに限定されるものではなく、図4に示すように、メイン基板2の一主面21に外部端子26が設けられ、他主面27にヒータ部22と温度制御部23とが設けられてもよい。この場合、発振基板3の一主面31における回路設計の変更が容易となる。
【0056】
なお、本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、発振回路を構成する発振部と圧電振動子とを設けた恒温槽付圧電発振器に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は、本実施例にかかる水晶発振器の内部を公開した概略断面図である。
【図2】図2は、本実施例にかかる水晶発振器の概略回路図である。
【図3】図3は、本実施例にかかる水晶発振器の本体筐体内部の二つの基板と恒温槽との関係を示した概略斜視図である。
【図4】図4は、本実施例の他の例にかかる水晶発振器の本体筐体内部の二つの基板と恒温槽との関係を示した概略斜視図である。
【符号の説明】
【0059】
1 水晶発振器
11 ベース
12 蓋
13 本体筐体
2 メイン基板
21 一主面
22 ヒータ部
23 温度制御部
24 抵抗
25 トランジスタ
26 外部端子
27 他主面
3 発振基板
31 一主面
32 他主面
33 発振部
4 水晶振動子
41 蓋
42 ベース
43 リード端子
5 恒温槽
51 恒温ベース
52 恒温蓋
53 開口端
54 底面部
55 貫通孔
56 挿通孔
6 熱伝導性樹脂
7 センサ
8 リード線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電発振器において、
一方の基板と他方の基板とからなる二つの基板と、圧電振動子とが設けられ、
前記一方の基板は、前記圧電振動子の温度制御を行う温度制御回路を構成する温度制御部と、外部と電気的に接続され外部入出力回路を構成する外部端子とが設けられたメイン基板であり、
前記他方の基板は、前記圧電振動子を発振子とした圧電発振回路を構成する発振部が設けられた発振基板であり、
前記圧電振動子は、当該圧電振動子の温度を所定温度に保つための恒温槽によって覆われたことを特徴とする圧電発振器。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電発振器において、
前記二つの基板が、前記圧電振動子を間に配した状態で対向して設けられたことを特徴とする圧電発振器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の圧電発振器において、
前記メイン基板には、前記圧電振動子を加熱するヒータ部が設けられたことを特徴とする圧電発振器。
【請求項4】
請求項3に記載の圧電発振器において、
前記ヒータ部は、少なくとも抵抗とトランジスタとから構成され、
前記メイン基板上において前記抵抗と前記トランジスタとが近接して配されたことを特徴とする圧電発振器。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちいずれか1つに記載の圧電発振器において、
前記発振基板の熱伝導率に対して、前記メイン基板の熱伝導率が低いことを特徴とする圧電発振器。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちいずれか1つに記載の圧電発振器において、
前記恒温槽には、前記圧電振動片の温度を測るセンサが設けられ、前記センサは前記温度制御部に接続されたことを特徴とする圧電発振器。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちいずれか1つに記載の圧電発振器において、
前記恒温槽は、アルミニウムからなることを特徴とする圧電発振器。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちいずれか1つに記載の圧電発振器において、
前記メイン基板に前記恒温槽が熱伝導性樹脂により接合されるとともに、前記発振基板に前記恒温槽が熱伝導性樹脂により接合されたことを特徴とする圧電発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−103610(P2010−103610A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−270725(P2008−270725)
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】