説明

圧電発振器

【課題】セラミックパッケージを不要にするとともに、既成の集積回路部を用いて極めて安価に、かつ、小型化・低背化した圧電発振器を得る。
【解決手段】シリコン半導体基板の上面部2aに集積回路部4を形成した回路基板2と該回路基板2に接合・積層したカバー5とからなる圧電発振器において、前記回路基板2の側面に前記回路基板の上面部2aと前記回路基板の下面部2bとを電気的に接続する電気的導通部22を設ける。また、集積回路部4の寸法よりも大きく回路基板2を形成して、集積回路部4とその周縁部間にスペースを形成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電発振器、とくに電子回路が集積されたシリコン半導体基板を利用して発振器の小型化、低背化を図った圧電発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の圧電発振器、例えば表面実装型水晶発振器50は、図8に示すように、積層セラミックからなる断面凹状のセラミックパッケージ51と、セラミックパッケージの凹状部の底面51dにバンプ52eを介して配置されたICチップ52と、積層セラミックパッケージ51の上面に圧電素子3が、配置された構造となっている。また、圧電素子3の周囲の気密を保つために、カバー5により密封されている。さらに、積層セラミックパッケージ51の底面に配置された表面実装用の外部端子55とからなり、ICチップ52と圧電素子3が互に電気的に接続されて、表面実装型発振器として機能するようになっている。
【0003】
近年の電子部品の小型化促進の流れの中で、圧電発振器、とくに、この種の水晶発振器も年々その小型化、低背化が進められ、その外形寸法も、例えば2.5mm×2.0mm、2.0mm×1.6mm、1.6mm×1.2mmというように、段々と小型化されている。
【0004】
そして、これらの水晶発振器は、水晶振動子とシリコン基板上に電子回路を形成した集積回路とセラミックパッケージとカバーの4部品とから構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−179950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、圧電発振器の小型化、低背化が進展するにしたがい、セラミックパッケージ内に集積回路(LSI)をその厚み方向に配置することが、とくに高さ(厚み)方法の寸法を大きくするため、その小型化、低背化が極めて困難になる問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために、本発明の圧電発振器では、シリコン半導体基板の上面部に集積回路部を形成した回路基板と回路基板に接合・積層したカバーとからなる圧電発振器を構成し、回路基板の側面に回路基板の上面部と回路基板の下面部とを電気的に接続する電気的導通部を設ける。
【0008】
また、本発明では、回路基板に既製の集積回路部を設け、集積回路の寸法よりも大きく回路基板を形成して、集積回路と集積回路の周縁部間のスペースに圧電素子接続用電極パッド等を形成するようにする。
【0009】
本発明では、前記集積回路部内または外に圧電素子接続用電極パッドを設ける。
【0010】
さらに、本発明では、圧電発振器が、その出力周波数が外部信号により変化される機能を有した周波数可変圧電発振器であって、該外部信号を直流電圧とする。
【0011】
またさらに、本発明では、圧電発振器を、その出力周波数が外部温度によらず一定の周波数を出力する機能を有した温度補償型圧電発振器とする。
【0012】
さらにまた、本発明では、圧電素子が、外部との雰囲気を遮断するため、気密化されたパッケージ内に封入される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の圧電発振器では、シリコン基板上に形成した集積回路の上面と下面に外部接続パッドを設け、電気的導通部により接続して、セラミックパッケージの機能をもたせたので、セラミックパッケージが不要となるとともに、安価に、小型化、低背化した圧電発振器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の圧電発振器のパッケージを取り除いて圧電素子を仮想線で表示し、集積回路部が形成されるシリコン半導体基板の上面を上から見た集積回路部内に圧電素子接続用電極パッドを形成した実施例の平面図である。
【図2】図1に示した本発明の圧電発振器のII−II矢視断面、図2(a)と、図2(a)に示したB矢視部の拡大部分断面(b)を示す。
【図3】図1に示した本発明の圧電発振器をその底面から見た底面図である。
【図4】本発明の圧電発振器のパッケージを取り除いて圧電素子を仮想線で表示し、集積回路部が形成されるシリコン半導体基板の上面を上から見た集積回路の外に圧電素子接続用電極パッドを形成した実施例の平面図、図4(a)、図4(a)に示した本発明の圧電発振器のIV−IV矢視断面(b)、及び図4(b)に示したC矢視部の拡大部分断面(c)をそれぞれ示す。
【図5】本発明の圧電発振器が複数個シリコンウェハ上に形成された個片への切断前の状態を示す平面図。
【図6】図5に示した本発明の圧電発振器(圧電素子接続用電極パッドを集積回路部内に形成した実施例)をウェハレベルで製造するのに用いられるウェハの図5に示すE矢視部の詳細を示し、図6(a)はウェハの集積回路部形成面の、また図6(b)はウェハの底面をそれぞれ示す。
【図7】図5に示した本発明の圧電発振器(圧電素子接続用電極パッドを集積回路の外に形成した実施例)をウェハレベルで製造するのに用いられるウェハの図5に示すE矢視部の詳細を示し、図7(a)はウェハの集積回路部形成面の、また図7(b)はウェハの底面をそれぞれ示す。
【図8】従来の圧電発振器の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施例
圧電発振器
本発明の圧電発振器、とくに圧電素子として水晶を用いた水晶発振器を、本発明の実施例として説明する。図1は、本発明の実施例の水晶発振器のカバーを取り除いて集積回路部が形成される回路形成面を上から見たシリコン半導体基板の平面図、図2は、本発明の実施例の水晶発振器を図1に示すII−II矢視方向から見た矢視断面図、図3は、本実施例の水晶発振器をその底面方向から見た底面図である。
【0016】
本発明の圧電発振器の実施例の水晶発振器1は、図1、図2及び図3に示したように、シリコン半導体基板(回路基板)2と、この回路基板2の上面に接合される水晶振動片3とカバー5とを縦方向に積層して形成されている。
【0017】
図1に示すように、水晶振動片3と対向するシリコン半導体基板2の主面(上面部)2aの中央には、集積回路部(LSI)4とシリコン半導体基板2の反対側(底面)の主面2bには、実装基板(図示せず)と電気的に接続される外部入出力用電極パッド(外部接続用端子)23が、例えば6個、設けられている。
【0018】
また、シリコン半導体基板2の上面部(主面)2aに形成された集積回路部4の周縁部にはシールド41が設けられるとともに、シリコン半導体基板(回路基板)2の側面には、シリコン半導体ウェハの加工時にスルーホールとして形成された半円部に、例えば、金等をスパッタリングして形成された、半導体基板2の集積回路部4の上面部に形成した集積回路用電極パッド42、電気導通配線43aと、基板2下面部2bに外部入出力用電極パッド23とを接続する、端面電極22(電気的導通部)が設けられている。なお、電極パッド42は、集積回路の製造工程で、また、電気導通配線43aと、端面電極22とは、その後の製造工程で形成される。
【0019】
ここで、集積(電子)回路部4の領域内に、図1に示すように、圧電素子接続用電極パッド43bを形成する実施例では、図2に示すように、パッド43bの上面に接合剤43cを塗布し、水晶振動片3の一端を接着保持する。そして、カバー5を半導体基板2の主面に被せ、圧電素子(水晶振動片)3が収容される領域を真空または窒素ガス等を封入して接合封止し圧電発振器1を構成する。
【0020】
図4に示した本発明の圧電発振器の他の実施例では、図4(a)に示すように、これらの圧電素子接続用電極パッド43bを電子回路が形成されていない集積回路部4の領域外に設け、すなわち図4(c)に示すように、集積回路部4の周辺に形成されたシールド41の外の領域に設けた電極パッド21の上に集積回路部4への電気導通配線43dを配設し、この電気導通配線43dの上に圧電素子接続用電極パッド43bを設け、この電極パッド43bに接合剤43cを介して水晶振動片(圧電素子)3の一端部を接着固定する。
【0021】
これによって、圧電素子3の実装時の集積回路部4へのストレスが大幅に低減でき、また、圧電素子接続用電極パッド43bに塗布された接合剤43cが電極パッド43bからはみ出しても、電極パッド43bが集積回路部4から離れているので、集積回路部4の形成領域に形成された電子回路への影響がなくなり、周波数特性が安定し、かつ、生産性の良い圧電発振器が得られるようになる。
【0022】
また、搭載する圧電素子(水晶振動片)3の外形寸法に変更があっても、集積回路部4の設計変更をすることなしに、圧電素子接続用電極パッド43bを変更することで対応できるようになる。その結果、集積回路部4の電子回路のレイアウトの変更等を行う必要がなく、設計資産の有効な活用ができるようになる。
【0023】
また、本発明の圧電発振器の実施例では、圧電素子接続用電極パッド43bを前述したように、集積回路部4の形成領域内または外に形成し、電極パッド43bに圧電素子(水晶振動片)3が接合剤43cにより接続される。ここで、圧電素子3は、図5、図6及び図7に示すように、半導体ウェハ(集合基板)Wに電子回路及び電極を形成した後、個片に切断され、接合剤43cにより電極パッド43bに接着して接続される。
【0024】
本発明の圧電発振器、とくに、その実施例の水晶発振器では、規格化された所定寸法の既製(設計済)の集積回路部4を用いて電子回路を構成し、この集積回路部4をこれより大きい面積をもつシリコン半導体基板2上に形成したので、半導体基板4が従来のセラミックケースの役割をもつようになり、セラミックケースが不要になるとともに、極めて安価に、小型化、低背化した水晶発振器、電圧制御型水晶発振器、温度補償型水晶発振器等の圧電発振器を得ることができるようになる。
【0025】
また、本発明の圧電発振器の実施例において、圧電発振器が、その出力周波数が外部温度によらず一定の周波数を出力する機能を有した温度補償型圧電発振器、または、その出力周波数が外部信号により変化される機能を有した周波数可変圧電発振器であって、該外部信号を直流電圧として使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の圧電発振器は、小型化を必要とする水晶発振器、電圧制御型水晶発振器、温度補償型水晶発振器に、また本発明のLSIチップは、コンデンサや水晶振動子のように、ディスクリート部品として利用することもできる。
【符号の説明】
【0027】
1 圧電発振器
2 シリコン半導体基板(回路基板)
3 圧電素子(水晶振動片)
4 集積回路部
5 カバー
21 シリコン半導体基板用電極パッド
22 端面電極
23 外部入出力用電極パッド
31 水晶振動子用電極パッド
41 シールド
42 集積回路部用電極パッド
43a 電気導通配線
43b 圧電素子接続用電極パッド
43c 接合剤
43d 電気導通配線
W シリコンウェハ
D ダイシングライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン半導体基板の上面部に集積回路部を形成した回路基板と該回路基板に接合・積層したカバーとからなる圧電発振器において、前記回路基板の側面に前記回路基板の上面部と前記回路基板の下面部とを電気的に接続する電気的導通部を設けたことを特徴とする圧電発振器。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電発振器において、前記回路基板に既製の前記集積回路部を設け、前記集積回路の寸法よりも大きく前記回路基板を形成して、前記集積回路部と前記集積回路部の周縁部間にスペースを形成したことを特徴とする圧電発振器。
【請求項3】
請求項1に記載の圧電発振器において、前記圧電発振器が、その出力周波数が外部信号により変化される機能を有した周波数可変圧電発振器であって、該外部信号が直流電圧であることを特徴とする圧電発振器。
【請求項4】
請求項1に記載の圧電発振器において、前記集積回路部内に圧電素子接続用電極パッドを設けたことを特徴とする圧電発振器。
【請求項5】
請求項2に記載の圧電発振器において、前記集積回路部の外の前記スペースに圧電素子接続用電極パッドを設けたことを特徴とする圧電発振器。
【請求項6】
請求項1に記載の圧電発振器において、前記圧電発振器が、その出力周波数が外部温度によらず一定の周波数を出力する機能を有した温度補償型圧電発振器であることを特徴とする圧電発振器。
【請求項7】
請求項1に記載の圧電発振器において、前記圧電素子が、外部との雰囲気を遮断するため、気密化されたパッケージ内に封入されることを特徴とする圧電発振器。
【請求項8】
請求項1に記載の圧電発振器において、前記圧電発振器の圧電素子が、水晶振動片であることを特徴とする圧電発振器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−115627(P2013−115627A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260314(P2011−260314)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】