説明

圧電発電ユニットの製造方法

【課題】 配線を省くとともに、圧電素子の固定部の強度の高い圧電発電ユニットの製造方法を提供することにある。
【解決手段】 2枚の圧電セラミックス板1、2の間に弾性板を挟み込んで貼り合わせた圧電バイモルフの一端を支持し、この圧電バイモルフに加えられた外力によって発電を行う片端支持型の圧電発電ユニット50を製造するに際し、コの字状の第1の固定部材4と、柱状の第2の固定部材5の間に、圧電バイモルフを挟み込み固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電材料が外力によって変形や、振動を生じたときに発生する電気エネルギーを活用する圧電発電ユニットの製造方法に関し、特に発電用圧電素子の固定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧電材料に歪みを発生させたとき生ずる電気エネルギーを活用しようとする試みが広く行われている。従来この種の圧電素子による発電をする場合には通常、圧電素子に金属球、セラミック球などの衝撃体を衝突させたり、圧電素子の一端を固定してこの反対の端を押圧し変形させたりして、圧電素子の歪みによって発電する。このとき発電した電力を発光体の発光に利用したり、2次電池に充電して取り出し利用したりされている。特許文献1には、団扇に圧電バイモルフ素子を片端支持し、団扇の仰ぐ面に発光体やオルゴールICを取り付け、団扇を仰いだときの仰ぐ面の変形によって発電し、この電気エネルギーで発光体を発光させたり、オルゴールを鳴らしたりする団扇が開示されている。また、特許文献2には、圧電バイモルフを片もち梁で固定し反対側の端に力を加えることで発電する発明が開示されている。
【0003】
このような応用において片端支持の圧電バイモルフ振動子を固定する方法としては前記片もち梁で固定する方法が一般的である。図6に、従来の圧電発電ユニットにおける片もち梁で固定する方法を説明する斜視図を示す。図6に示すように、従来の圧電発電ユニット100は、アクリル製の角柱体11を使用し、圧電バイモルフ70の一端部を上下から挟み込むように配置し、圧電バイモルフ70の上下面の電極70aには電線12、13を半田付けし、電気的接続を取っている。なお、素子の固定については接着剤による接着や、板材等での挟み込みで固定するのが一般的である。
【0004】
また、特許文献3には、圧電バイモルフを片持ち支持し自由端側の圧電素子が変位する部分に凹みを設けて変位した圧電バイモルフの先端が接触しないような逃げを作り、圧電発電装置を構成する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−56728号公報
【特許文献2】特開平9−182465号公報
【特許文献3】特開平7−107752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの方法では、取り付ける基板部分が厚くなり、発電装置の厚みが厚くなり設置の際に制約があるという問題があった。また、特許文献3の方法では電気的接続を電線等の半田付けで行う必要があり、電線接続点数が多くなり作業数が多くなってしまったり、使用時に連続して振動等の機械的な力が加わった場合、配線部分が外れてしまったりするなど、半田付け部の信頼性に問題があった。また、特許文献3の方法では圧電バイモルフを固定する部分は接着剤等での接着で行う必要があるが、振動などの影響で接着面が剥がれてしまうなどの問題があった。
【0007】
従って本発明の目的は、配線を省くとともに、圧電素子の固定部の強度の高い圧電発電ユニットの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、この欠点を解決するために、圧電バイモルフまたは圧電ユニモルフの固定部材の一方をコの字形状にし、この内側部分と、対となるもう一方の固定部材との間に圧電バイモルフを挟み込み固定し、この部分の材質を真鍮、リン青銅などの導体とすることで、これらの固定部分を、基板上に形成したランド部分に固定することで電気的接続と固定を兼ねることを特徴としている。
【0009】
即ち本発明によれば、2枚の圧電セラミックス板の間に弾性板を挟み込んで貼り合わせた圧電バイモルフの一端を支持し、前記圧電バイモルフに加えられた外力によって発電を行う片端支持型の圧電発電ユニットの製造方法であって、コの字状の第1の固定部材と、柱状の第2の固定部材の間に、前記圧電バイモルフを挟み込み固定することを特徴とする圧電発電ユニットの製造方法が得られる。
【0010】
また、本発明によれば、前記第1の固定部材は、軸部と前記軸部の両端に接続する2つの直立部からなり、前記圧電セラミックス板に設けられた電極に、前記軸部の内側及び前記第2の固定部材の一面が接するように固定して、電気的に接続することを特徴とする上記の圧電発電ユニットの製造方法が得られる。
【0011】
また、本発明によれば、圧電セラミックス板と弾性板を貼り合わせた圧電ユニモルフの一端を支持し、前記圧電ユニモルフに加えられた外力によって発電を行う片端支持型の圧電発電ユニットの製造方法であって、コの字状の第1の固定部材と、柱状の第2の固定部材の間に、前記圧電ユニモルフを挟み込み固定することを特徴とする圧電発電ユニットの製造方法が得られる。
【0012】
また、本発明によれば、前記第1の固定部材は、軸部と前記軸部の両端に接続する2つの直立部からなり、前記圧電セラミックス板に設けられた電極に、前記軸部の内側または前記第2の固定部材の一面が接するように固定して、電気的に接続することを特徴とする上記の圧電発電ユニットの製造方法が得られる。
【発明の効果】
【0013】
これにより、本発明によれば、配線を省くとともに、連続使用時の素子の耐久性と配線の耐久性を向上でき、配線の信頼性を高めた圧電発電ユニットの製造方法を提供することができる。また、圧電バイモルフ、または圧電ユニモルフを挟み込んで固定することにより、圧電素子の固定部分の強度の高い圧電発電ユニットの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態における圧電発電ユニットの断面図。
【図2】本発明の一実施の形態における圧電発電ユニットの斜視図。
【図3】本発明の一実施の形態における圧電発電ユニットに用いられる圧電バイモルフの電気的接続方法を示す図。図3(a)は、並列接続を示す図。図3(b)は、直列接続を示す図。
【図4】本発明の一実施の形態における圧電発電ユニットの固定方法を示す斜視図。
【図5】本発明の一実施の形態における圧電発電ユニットを固定した後の状態を示す斜視図。
【図6】従来の圧電発電ユニットにおける片もち梁での固定方法を示す斜視図。
【図7】本発明と従来の圧電発電ユニットの電圧出力波形を示す図。図7(a)は、本発明の圧電発電ユニットの場合を示す図。図7(b)は、従来の圧電発電ユニットの場合を示す図。
【図8】本発明と従来の圧電発電ユニットの連続試験結果を示す図。
【発明の実施の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態の詳細を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施の形態における圧電発電ユニットの断面図である。図2は、本発明の一実施の形態における圧電発電ユニットの斜視図である。
【0016】
図1、2に示すように、本発明の一実施の形態の片端支持型発電用圧電バイモルフ20は、2枚の圧電セラミックス板1、2と、この2枚に挟み込まれる中間層である弾性板3で構成される。圧電セラミックス板1、2は、矩形が一般的であるが、固定端側を底辺とする二等辺三角形であったり台形であったりする場合もあるが、いずれの場合にも適応可能である。圧電セラミックス板1、2の表面にはそれぞれ電極(圧電セラミックス板1には電極20a)が形成されている。これらの電極は銀焼き付け電極やメッキ、スパッタ等の方法で形成される。中間層である弾性板3は金属板、ガラスエポキシ基板、炭素繊維素材、ガラス繊維素材など用途に合わせて様々な素材が用いられる。
【0017】
圧電バイモルフ20の長辺方向に垂直な一方の端部に、コ字状の第1の固定部材4、柱状の第2の固定部材5を配置する。コ字状の第1の固定部材4、柱状の第2の固定部材5には、リン青銅、真鍮などの導体を用いることができる。コ字状の第1の固定部材4は、軸部とその両端に接続する2つの直立部からなる。圧電セラミックス板1の電極20aに、コ字状の第1の固定部材4の軸部の内側、圧電セラミックス板2の電極と柱状の第2の固定部材5の一面が接するように配置する。コ字状の第1の固定部材4の2つの直立部の先端面のそれぞれにネジ6を固定可能なようにネジ穴4aが設けられている。また、柱状の第2の固定部材5の、圧電セラミックス板2の電極と接する面と相対する面における長辺方向の両端部分の2箇所にネジ穴5aが設けられている。ガラスエポキシ基板7に、固定部材4、5をネジ止めすることで、固定部材4と固定部材5間で圧電バイモルフ20を挟み込む状態になるような位置関係で固定する。この固定部材4、5を、圧電バイモルフの表面の電極、負荷側の端子やランドのそれぞれに固定することで、電気的接続と圧電素子の固定を兼ねている。
【0018】
通常の圧電バイモルフの接続方法では、一方の圧電セラミックス素子の中間層に接着される側の電極ともう一方の圧電セラミックス素子の中間層に接着される側の電極は導通して使用されることが多い。前記の素材中、金属板などの導体であれば、接着することで一方の圧電セラミックス素子の中間層に接着される側の電極ともう一方の圧電セラミックス素子の中間層に接着される側の電極を導通させることができるが、ガラスエポキシ基板などの絶縁体を使用した場合は、中間層である弾性板の表面に電極パターンを形成しておき、この部分に圧電セラミックス板の表面電極を接触させ弾性板の延長した部分まで取り出し、接着面以外の部分で電極を取り出し、導通をとる必要がある。
【0019】
図3は、本発明の一実施の形態における圧電発電ユニットに用いられる圧電バイモルフの電気的接続方法を示す図であり、図3(a)は、並列接続を示す図、図3(b)は、直列接続を示す図である。圧電バイモルフの接続方法には、図3(a)に示すように、圧電セラミックス板1、2のそれぞれの表面電極を短絡し中間層の弾性板3との間で出力を取り出す並列接続と、図3(b)に示すように、圧電セラミックス板1、2のそれぞれの表面電極間で出力を取り出す直列接続がある。同じ寸法の圧電バイモルフに同じ力を加え、比較した場合、並列接続の方が直列接続比べ低い負荷抵抗で高い出力を得られるという特徴があり、圧電素子に機械的入力を与え電気エネルギーを取り出すような用途には、並列接続が良く用いられる。
【0020】
このように構成した片端支持型発電用圧電バイモルフを用いた圧電発電ユニットは次のようにしてガラスエポキシ基板に取り付け、固定される。図4は、本発明の一実施の形態における圧電発電ユニットの固定方法を示す斜視図である。図4は、一例として中間層である弾性板は金属、接続方法は直列接続の場合を示した。図4に示すように、ガラスエポキシ基板7上には、半田メッキされたランド8、9が形成され、これらのランド8、9上には、整流回路10が設置されている。この整流回路10により、圧電バイモルフに入力を与えたときに生じる交流減衰型の電力を整流し正の成分の電力に変換し、LEDなどの発光体を発光させることも可能であるし、コンデンサや2次電池に一定量蓄え、必要に応じて取り出すことも可能である。本発明の圧電発電ユニット50では、圧電バイモルフ20を固定部材4、5により、ガラスエポキシ基板7上にネジ止めする。このように圧電バイモルフ20をネジ止めして固定するだけで電気的接続が得られる。また圧電バイモルフ20の表面電極と、固定部材4、5は、圧電素子を挟み込む際に接触し導通が得られる。電気的接続の安定化と強度安定化のため接触部分に導電接着剤等を塗布しても良い。この状態で固定端と反対側に力を加えると、圧電バイモルフ20から発生した電気エネルギーを取り出すことができる。
【0021】
本発明の固定方法には、上記のネジ止めの方法以外にも、固定部材を接着剤等で接着する方法を用いることができ、固定端の反対端に力が加えられた際にも外れない確実な固定がされており、かつ、固定部材と基板などの固定部分に形成したランドや端子部分との電気的接続が得られていればよい。
【0022】
また、圧電素子として、圧電ユニモルフも用いることができる。この場合、弾性板を基板側に向けて、圧電セラミックス板の電極とコ字状の第1の固定部材の軸部の内側、弾性板と柱状の第2の固定部材の一面が接するように配置するか、または圧電セラミックス板の電極を基板側に向けて、圧電セラミックス板の電極と柱状の第2の固定部材の一面、弾性板とコ字状の第1の固定部材の軸部の内側が接するように配置して、基板へ固定することにより、圧電バイモルフと同様に固定することができる。
【実施例】
【0023】
次に、本発明による固定方法と従来の固定方法の比較を行った。図5は、本発明の一実施の形態における圧電発電ユニットを固定した後の状態を示す斜視図である。図6は、従来の圧電発電ユニットにおける片もち梁での固定方法を示す斜視図である。図5、図6に示した圧電バイモルフ20、70における圧電セラミックス板には、いずれもNECトーキン製N10材で長さ35mm、幅10mm、厚さ0.25mmを用いた。中間層である弾性板には、ともに長さ36mm、幅11mm、厚み0.5mmの真鍮板を使用した。また、基板への圧電バイモルフの固定において、本実施例の固定部材4、5には、真鍮を使用した。従来例では、長さ22mm、幅6mm、厚み6mmのアクリル製の角柱体11を使用し、圧電バイモルフ70の上下から挟み込むように配置し、圧電バイモルフ70の上下面の電極70aには電線12、13を半田付けし、電気的接続を行った。
【0024】
図7に、本発明と従来の圧電発電ユニットの電圧出力波形を示した。図7(a)は、本発明の圧電発電ユニットの場合を示す図であり、図7(b)は、従来の圧電発電ユニットの場合を示す図である。実験では圧電バイモルフを固定した基板に対して下面から1Gの加速入力を10回/secで加え、圧電バイモルフを変形、自由振動させこのときの電圧出力をオシロスコープで観察した。図7から、発電による出力は本発明、従来例の方法でほとんど違いは見られない。
【0025】
次に下面からの加速による発電を連続して行い耐久性を確認する実験を行った。図8は、本発明と従来の圧電発電ユニットの連続試験結果を示す図である。本発明と従来の方法のバイモルフを各5個ずつ連続試験した。横軸に発電回数、縦軸に出力電圧を示している。従来の方法では、10万回を超えた回数で出力が低下、または出力しない素子が発生した。原因としては、圧電素子の表面が変位する度に接続していた導線が繰り返しの振動により断線し出力を得ることができなくなったからである。これに対し本発明では100万回を超えても出力の低下が見られず耐久性が向上した。
【0026】
なお 、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではないことはいうまでもなく、目的や用途に応じて設計変更可能である。例えば、圧電バイモルフ、圧電ユニモルフを構成する圧電セラミックス板、弾性体の材料や形状なども用途に合わせて選択可能である 。
【0027】
また、本発明は、バッテリなどの電源なしに振動等の機械的入力さえあれば発電装置として作用し、その電力を直接あるいはコンデンサなどに備蓄しておき必要に応じて電気エネルギーを取り出して発光ダイオードの発光や発信機の電源等に活用して応用することができるものである。
【符号の説明】
【0028】
1、2 圧電セラミックス板
3 弾性板
4 (第1の)固定部材
4a ネジ穴
5 (第2の)固定部材
5a ネジ穴
6 ネジ
7 ガラスエポキシ基板
8、9 (半田メッキされた)ランド
10 整流回路
11 角柱体
12、13 電線
20、70 圧電バイモルフ
20a、70a 電極
50、100 圧電発電ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の圧電セラミックス板の間に弾性板を挟み込んで貼り合わせた圧電バイモルフの一端を支持し、前記圧電バイモルフに加えられた外力によって発電を行う片端支持型の圧電発電ユニットの製造方法であって、コの字状の第1の固定部材と、柱状の第2の固定部材の間に、前記圧電バイモルフを挟み込み固定することを特徴とする圧電発電ユニットの製造方法。
【請求項2】
前記第1の固定部材は、軸部と前記軸部の両端に接続する2つの直立部からなり、前記圧電セラミックス板に設けられた電極に、前記軸部の内側及び前記第2の固定部材の一面が接するように固定して、電気的に接続することを特徴とする請求項1記載の圧電発電ユニットの製造方法。
【請求項3】
圧電セラミックス板と弾性板を貼り合わせた圧電ユニモルフの一端を支持し、前記圧電ユニモルフに加えられた外力によって発電を行う片端支持型の圧電発電ユニットの製造方法であって、コの字状の第1の固定部材と、柱状の第2の固定部材の間に、前記圧電ユニモルフを挟み込み固定することを特徴とする圧電発電ユニットの製造方法。
【請求項4】
前記第1の固定部材は、軸部と前記軸部の両端に接続する2つの直立部からなり、前記圧電セラミックス板に設けられた電極に、前記軸部の内側または前記第2の固定部材の一面が接するように固定して、電気的に接続することを特徴とする請求項3記載の圧電発電ユニットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−250536(P2011−250536A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119381(P2010−119381)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)