説明

圧電素子、液体噴射ヘッド、および液体噴射装置

【課題】信頼性の高い圧電素子を提供する。
【解決手段】本発明に係る圧電素子100は、第1電極10と、第1電極10の上方に、長手方向と短手方向とを有して形成された圧電体層20と、圧電体層20の上方に形成された第2電極30と、を含み、圧電体層20の前記短手方向の側面22の少なくとも一部は、凹凸面23であり、第2電極30から第1電極10に向かうに従って、圧電体層20の前記短手方向の幅Wyは、凹凸面23によって変化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子、液体噴射ヘッド、および液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電素子は、電圧印加によりその形状を変化させる特性を有する素子であり、圧電体層を上部電極および下部電極で挟んだ構造を有する。圧電素子は、例えばインクジェットプリンターの液体噴射ヘッド部分や、各種アクチュエーターなど多様な用途に用いられている。
【0003】
例えば特許文献1には、下部電極を共通電極とし、上部電極を個別電極とした形態の圧電素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−178293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧電素子は、その製造時または駆動時などにおいて、圧電体層の側面に水分等が付着する場合があり、圧電体層の側面が、上部電極と下部電極との間のリークパスとなることがある。上部電極と下部電極との間にリーク電流が発生すると、圧電体層が焼損し、圧電素子の信頼性が低下することがある。
【0006】
本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、信頼性の高い圧電素子を提供することにある。また、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、上記圧電素子を含む液体噴射ヘッド、および液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る圧電素子は、
第1電極と、
前記第1電極の上方に、長手方向と短手方向とを有して形成された圧電体層と、
前記圧電体層の上方に形成された第2電極と、
を含み、
前記圧電体層の前記短手方向の側面の少なくとも一部は、凹凸面であり、
前記第2電極から前記第1電極に向かうに従って、前記圧電体層の前記短手方向の幅は、前記凹凸面によって変化する。
【0008】
このような圧電素子によれば、例えば、圧電体層の側面が平坦な面である場合に比べて、第1電極と第2電極との間の側面長(電極間の側面に沿った長さ)を大きくすることができる。したがって、圧電体層の側面を経由する電極間のリーク電流を低減することができる。よって、このような圧電体素子は、高い信頼性を有することができる。
【0009】
なお、本発明に係る記載では、「上方」という文言を、例えば、「特定のもの(以下「A」という)の「上方」に他の特定のもの(以下「B」という)を形成する」などと用いている。本発明に係る記載では、この例のような場合に、A上に直接Bを形成するような場合と、A上に他のものを介してBを形成するような場合とが含まれるものとして、「上方」という文言を用いている。
【0010】
本発明に係る圧電素子において、
前記圧電体層と前記第1電極とは、交差しており、
前記第1電極の外周と交差する点において前記圧電体層の前記短手方向の側面は、平坦な面であってもよい。
【0011】
このような圧電素子によれば、能動部と非能動部との境界である応力が集中しやすい部分において、変位を抑えることができ、応力集中によるクラック等の発生を抑制することができる。
【0012】
本発明に係る圧電素子において、
前記第2電極の前記短手方向の幅は、前記圧電体層の前記短手方向の幅の最小値より小さくてもよい。
【0013】
このような圧電素子によれば、第2電極の大きさによって、圧電体層の能動部の大きさを決定することができる。
【0014】
本発明に係る圧電素子において、
前記第2電極の前記短手方向の側面は、前記圧電体層の前記短手方向の側面に接続されていてもよい。
【0015】
このような圧電素子によれば、被覆層を形成した場合に、前記圧電体層と前記第2電極との界面を、より確実に保護することができる。
【0016】
本発明に係る圧電素子において、
前記圧電体層の前記短手方向の側面は、被覆層によって覆われており、
前記被覆層のヤング率は、前記圧電体層のヤング率より小さくてもよい。
【0017】
このような圧電素子によれば、圧電体層の側面に被覆層が形成されていても、圧電体層の変位量が低下することを抑制できる。
【0018】
本発明に係る圧電素子において、
前記圧電体層の前記短手方向の側面は、前記圧電体層の上面に接続された平坦面を有し、
前記凹凸面は、前記平坦面に接続され、
前記平坦面および前記第2電極の側面は、第1被覆層によって覆われており、
前記凹凸面は、第2被覆層によって覆われており、
前記第2被覆層のヤング率は、前記第1被覆層のヤング率および前記圧電体層のヤング率より小さくてもよい。
【0019】
このような圧電素子によれば、圧電体層と第2電極との界面に水分等が浸入することを防ぎつつ、圧電体層の変位量が低下することを抑制できる。
【0020】
本発明に係る圧電素子において、
前記第1被覆層の材質は、酸化アルミニウムであり、
前記第2被覆層の材質は、ポリイミドであってもよい。
【0021】
このような圧電素子によれば、圧電体層と第2電極との界面に水分等が浸入することを防ぎつつ、圧電体層の変位量が低下することを抑制できる。
【0022】
本発明に係る液体噴射ヘッドは、
本発明に係る圧電素子を含む。
【0023】
このような液体噴射ヘッドによれば、本発明に係る圧電素子を含むため、高い信頼性を有することができる。
【0024】
本発明に係る液体噴射装置は、
本発明に係る液体噴射ヘッドを含む。
【0025】
このような液体噴射装置によれば、本発明に係る液体噴射ヘッドを含むため、高い信頼性を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施形態に係る圧電素子を模式的に示す断面図。
【図2】本実施形態に係る圧電素子を模式的に示す平面図。
【図3】本実施形態に係る圧電素子を模式的に示す断面図。
【図4】本実施形態に係る圧電素子の製造工程を模式的に示す断面図および平面図。
【図5】本実施形態に係る圧電素子の製造工程を模式的に示す断面図および平面図。
【図6】本実施形態に係る圧電素子の製造工程を模式的に示す断面図および平面図。
【図7】本実施形態の第1変形例に係る圧電素子を模式的に示す断面図。
【図8】本実施形態の第1変形例に係る圧電素子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図9】本実施形態の第1変形例に係る圧電素子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図10】本実施形態の第2変形例に係る圧電素子を模式的に示す断面図。
【図11】本実施形態の第2変形例に係る圧電素子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図12】本実施形態の第2変形例に係る圧電素子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図13】本実施形態の第2変形例に係る圧電素子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図14】本実施形態の第2変形例に係る圧電素子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図15】本実施形態の第2変形例に係る圧電素子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図16】本実施形態の第2変形例に係る圧電素子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図17】本実施形態の第3変形例に係る圧電素子を模式的に示す断面図。
【図18】本実施形態の第4変形例に係る圧電素子を模式的に示す断面図。
【図19】本実施形態の第4変形例に係る圧電素子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図20】本実施形態の第4変形例に係る圧電素子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図21】本実施形態の第4変形例に係る圧電素子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図22】本実施形態に係る実験例のSEM観察結果。
【図23】本実施形態に係る液体噴射ヘッドを模式的に示す断面図。
【図24】本実施形態に係る液体噴射ヘッドを模式的に示す分解斜視図。
【図25】本実施形態に係る液体噴射装置を模式的に示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0028】
1. 圧電素子
まず、本実施形態に係る圧電素子について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る圧電素子100を模式的に示す断面図である。図2は、本実施形態に係る圧電素子100を模式的に示す平面図である。図3は、本実施形態に係る圧電素子100を模式的に示す断面図である。なお、図1は、図2のI−I線断面図であり、図3は、図2のIII−III線断面図である。また、便宜上、図2では、第2電極30の図示を省略している。
【0029】
圧電素子100は、図1および図2に示すように、第1電極10と、圧電体層20と、第2電極30と、を含む。圧電素子100は、例えば、基板1上に形成されている。
【0030】
基板1は、例えば、半導体、絶縁体で形成された平板である。基板1は、単層であっても、複数の層が積層された構造であってもよい。基板1は、上面が平面的な形状であれば内部の構造は限定されず、例えば、内部に空間等が形成された構造であってもよい。
【0031】
基板1は、可撓性を有し、圧電体層20の動作によって変形(屈曲)することのできる振動板を含んでいてもよい。振動板の材質としては、例えば、酸化シリコン、酸化ジルコニウム、またはこれらの積層体が挙げられる。
【0032】
第1電極10は、基板1上に形成されている。第1電極10の形状は、例えば、層状または薄膜状である。第1電極10の厚みは、例えば、50nm以上300nm以下である。第1電極10の平面形状は、第2電極30が対向して配置されたときに両者の間に圧電体層20を配置できる形状であれば、特に限定されないが、例えば、矩形ある。
【0033】
第1電極10の材質としては、例えば、ニッケル、イリジウム、白金などの各種の金属、それらの導電性酸化物(例えば酸化イリジウムなど)、ストロンチウムとルテニウムとの複合酸化物(SrRuO:SRO)、ランタンとニッケルとの複合酸化物(LaNiO:LNO)が挙げられる。第1電極層10は、上記に例示した材料の単層構造でもよいし、複数の材料を積層した構造であってもよい。
【0034】
第1電極10は、第2電極30と一対になって、圧電体層20に電圧を印加するための一方の電極(例えば、圧電体層20の下方に形成された下部電極)となることができる。
【0035】
なお、基板1が振動板を有さず、第1電極10が振動板としての機能を有していてもよい。すなわち、第1電極10は、圧電体層20に電圧を印加するための一方の電極としての機能と、圧電体層20の動作によって変形することのできる振動板としての機能と、を有していてもよい。
【0036】
また、図示はしないが、第1電極10と基板1との間には、例えば、両者の密着性を付与する層や、強度や導電性を付与する層が形成されてもよい。このような層の例としては、例えば、チタン、ニッケル、イリジウム、白金などの各種の金属、それらの酸化物の層が挙げられる。
【0037】
圧電体層20は、図1に示すように、第1電極10上に形成されている。圧電体層20の形状は、例えば、層状または薄膜状である。圧電体層20の厚みは、例えば、300nm以上3000nm以下である。
【0038】
圧電体層20は、図2に示すように平面視において、X軸方向に延出している。圧電体層20は、X軸方向に沿う長手方向と、Y軸方向に沿う短手方向と、を有している。圧電体層20は、第1電極10と交差していてもよい。圧電体層20は、複数設けられていてもよい。図示の例では、圧電体層20は、3つ設けられているが、その数は特に限定されない。複数の圧電体層20は、例えば、Y軸方向に沿って、配列している。なお、複数の圧電体層20は、図示せぬ部分で、一体的に互いに接続されていてもよい。
【0039】
圧電体層20の側面22の少なくとも一部は、図1および図2に示すように、凹凸面23である。図2に示す例では、凹凸面23の少なくとも一部は、第1電極10の外周12の内側であって、圧電体層20の長手方向(X軸方向)に沿う側面に形成されている。側面22は、短手方向の側面といえる。
【0040】
図1に示すように、圧電体層20の幅(短手方向の幅、すなわちY軸方向の長さ)Wyは、第2電極30から第1電極10に向かうに従って、凹凸面23により変化する。すなわち、圧電体層20の側面22は、第2電極30から第1電極10に向かう方向に沿って、凹凸を有しているともいえる。凹凸面23の形状は、特に限定されないが、例えば、隣り合う凸部の頂点23aと凹部の頂点23bとの間のY軸方向における距離Dは、50nm以上1000nm以下である。図示の例では、1つの側面22において凸部の頂点23aは、4つ形成されているが、その数は特に限定されない。
【0041】
圧電体層20は、実質的な変位駆動部分となる能動部28と、能動的には駆動しない非能動部29と、を有する。能動部28は、第1電極10と第2電極30とに挟まれた圧電体層20の部分であって、一定の幅(短手方向の幅)W1を有する部分である。幅W1は、第2電極30から第1電極10に向かう方向において、一定の値である。図示の例では、能動部28の幅W1は、圧電体層20の幅Wyの最小値と同じであり、より具体的には、上面26のY軸方向の長さと同じである。能動部28は、2つの非能動部29に挟まれている。凹凸面23は、非能動部29を構成している。
【0042】
図2に示すように平面視において、圧電体層20は、第1電極10の外周12を跨いで形成されている。すなわち、圧電体層20は、外周12と交差する点2を有する。外周12と重なる圧電体層20の側面22(点2における圧電体層20の側面22)は、図3に示すように、例えば、平坦な面である。外周12と重なる圧電体層20の側面22は、圧電体層20の上面26に鈍角θで接続されている。
【0043】
圧電体層20としては、ペロブスカイト型酸化物の圧電材料を用いることができる。より具体的には、圧電体層20の材質としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O:PZT)、ニオブ酸チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti,Nb)O:PZTN)、チタン酸バリウム(BaTiO)、ニオブ酸カリウムナトリウム((K,Na)NbO)が挙げられる。
【0044】
圧電体層20は、圧電性を有することができ、第1電極10および第2電極30によって電圧が印加されることで変形することができる。
【0045】
第2電極30は、圧電体層20上に形成されている。第2電極30は、第1電極10と対向して配置されている。第2電極30の形状は、例えば、層状または薄膜状の形状である。第2電極30の厚みは、例えば、30nm以上300nm以下である。第2電極30の平面形状は、第1電極10に対向して配置されたときに両者の間に圧電体層20を配置できる形状であれば、特に限定されない。
【0046】
第2電極30の材質は、例えば、ニッケル、イリジウム、白金などの各種の金属、それらの導電性酸化物(例えば酸化イリジウムなど)、ストロンチウムとルテニウムとの複合酸化物(SrRuO:SRO)、ランタンとニッケルとの複合酸化物(LaNiO:LNO)などを例示することができる。第2電極30は、これら例示した材料の単層構造でもよいし、複数の材料を積層した構造であってもよい。
【0047】
第2電極30の機能の一つとしては、第1電極10と一対になって、圧電体層20に電圧を印加するための他方の電極(例えば、圧電体層20の上方に形成された上部電極)となることが挙げられる。
【0048】
第2電極30は、複数の圧電体層20に対応して複数設けられてもよい。図2に示す例では、3つの圧電体層20に対応して、第2電極30は、3つ設けられてもよい。複数の第2電極30は、互いに電気的に分離していてもよい。一方、第1電極10は、複数の圧電体層20に対して、共通した電極であってもよい。すなわち、複数の圧電体層20に対して、第2電極30は、個別電極であり、第1電極10は、共通電極であってもよい。これにより、複数の圧電体層20の各々を、独立して駆動させることができる。第2電極30は、X軸方向に沿う長手方向と、Y軸方向に沿う短手方向と、を有していてもよい。
【0049】
以上のような圧電素子100は、例えば、圧力発生室内の液体を加圧する圧電アクチュエーターとして、液体噴射ヘッドや、該液体噴射ヘッドを用いた液体噴射装置(インクジェットプリンター)などに適用されてもよいし、圧電体層の変形を電気信号として検出する圧電センサー等その他の用途として用いてもよい。
【0050】
本実施形態に係る圧電素子100は、例えば、以下の特徴を有する。
【0051】
圧電素子100によれば、圧電体層20の側面(短手方向の側面)22の少なくとも一部は、凹凸面23であり、第2電極30から第1電極10に向かうに従って、圧電体層20の幅(短手方向の幅)Wyは、凹凸面23によって変化する。そのため、例えば、圧電体層の側面が平坦な面である場合に比べて、第1電極10と第2電極30との間の側面長(電極10,30間の側面22に沿った長さ)を大きくすることができる。したがって、側面22を経由する電極10,30間のリーク電流を低減することができる。よって、圧電体素子100は、高い信頼性を有することができる。
【0052】
仮に、電極間の側面長を大きくするために、圧電体層の上面に対する側面の角度(図1に示すθ)を大きくすることも考えられる。このような形態では、平坦な圧電体層の側面であっても、電極間の側面長を大きくすることができるが、非能動部の体積も大きくなる。非能動部の体積が大きくなると、非能動部によって能動部の動作が制限され、圧電素子の変位量が低下するという問題が生じる場合がある。本実施形態に係る圧電素子100では、このような変位量の低下を回避しつつ、電極10,30間の側面長を大きくすることができる。
【0053】
圧電素子100によれば、圧電体層20と第1電極10とは、平面視において、交差しており、第1電極10の外周12と重なる圧電体層20の側面22は、平坦な面であることができる。第1電極10の外周12と重なる圧電体層20は、能動部と非能動部との境界であるため応力が集中しやすい部分である。このような部分では、側面22を凹凸面23とせずに平坦な面とし、変位を抑えることで、応力集中によるクラック等の発生を抑制することができる。
【0054】
2. 圧電素子の製造方法
次に、本実施形態に係る圧電素子100の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図4〜図6は、本実施形態に係る圧電素子100の製造工程を模式的に示す図である。なお、図4〜図6において、(a)は、図1に対応する断面図であり、(b)は、図2に対応する平面図である。
【0055】
図4に示すように、基板1上に、第1電極10を形成する。第1電極10は、例えば、スパッタ法、めっき法、真空蒸着法などにより導電層(図示せず)を成膜し、該導電層をパターニングすることによって形成される。パターニングは、例えば、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によって行われる。
【0056】
次に、第1電極10上に、圧電体層20aを成膜する。圧電体層20aは、例えば、ゾルゲル法、MOD(Metal Organic Deposition)法により成膜される。より具体的には、圧電体の前駆体層をスピンコートで成膜し、酸素雰囲気中で750℃程度で焼成することにより、前駆体層を結晶化させる。この成膜・焼成工程を複数回繰り返すことにより、所望の膜厚を有する圧電体層20aを得ることができる。例えば、成膜・焼成工程の回数によって、凸部の頂点23a(図1参照)の数を決定することができる。
【0057】
次に、圧電体層20a上に第2電極30aを成膜する。第2電極30aは、例えば、スパッタ法、めっき法、真空蒸着法により成膜される。次に、圧電体層20a上に、所望の形状を有するレジストR1を形成する。レジストR1は、公知の方法により形成される。
【0058】
図5に示すように、レジストR1をマスクとして、第2電極30aおよび圧電体層20aをエッチングする。これにより、第2電極30が形成される。エッチングは、例えば、塩素系およびフッ素系の混合ガスを用いたドライエッチングより行われる。なお、レジストR1は、公知の方法により除去される。
【0059】
図6(b)に示すように、第1電極10の外周12を含む領域(第1電極10と基板1の境界線を含む領域)に、所望の形状を有するレジストR2を形成する。レジストR2は、公知の方法により形成される。
【0060】
図1および図2に示すように、第2電極30およびレジストR2をマスクとして、圧電体層20aをエッチングし、圧電体層20を形成する。エッチングは、ウェットエッチングにより行われる。上述のように、スピンコートによる成膜・焼成を複数回繰り返して圧電体層20aを形成した場合、その焼成界面がウェットエッチングにより選択的に除去されやすい。そのため、圧電体層20の側面22に、凹凸面23を形成することができる。ウェットエッチングのエッチング液としては、例えば、20%バッファードフッ酸、硝酸、および塩酸の混合液を用いることができる。例えば、バッファードフッ酸のみでエッチングを行い、その際に生じた残渣物を硝酸で除去する2段階の方法で、エッチングを行ってもよい。バッファードフッ酸を使用すると、サイドエッチング量を小さくすることができる。
【0061】
なお、第1電極10の外周12と重なる圧電体層20aは、レジストR2によりマスクされているため、図3に示すように、外周12と重なる圧電体層20の側面22は、ウェットエッチングによりエッチングされず、平坦な面となることができる。なお、レジストR2は、公知の方法により除去される。
【0062】
以上の工程により、圧電素子100を製造することができる。
【0063】
圧電素子100の製造方法によれば、上記のとおり、圧電体層20の側面22に凹凸面23を形成することができるので、高い信頼性を有する圧電素子100を形成することができる。
【0064】
3. 圧電素子の変形例
3.1. 第1変形例に係る圧電素子
次に、本実施形態の第1変形例に係る圧電素子について、図面を参照しながら説明する。図7は、本実施形態の第1変形例に係る圧電素子200を模式的に示す断面図であって、図1に対応するものである。
【0065】
以下、本実施形態の第1変形例に係る圧電素子200において、本実施形態に係る圧電素子100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。このことは、後述する、本実施形態の第2変形例に係る圧電素子300、および本実施形態の第3変形例に係る圧電素子400においても、同様である。
【0066】
圧電素子100の例では、図1に示すように、第2電極30の幅は、圧電体層20の幅Wyの最小値より大きかった。
【0067】
これに対し、圧電素子200では、図7に示すように、第2電極30の幅W2(第2電極の短手方向の幅であって、第2電極30の幅の最大値)は、圧電体層20の幅Wyの最小値より小さい。これにより、第2電極30の面積によって、圧電体層20の能動部28の面積を決定することができる。すなわち、能動部28の幅W1は、第2電極30の幅W2と同じ大きさとなる。図示の例では、第2電極30の側面(短手方向の側面)32は、圧電体層20の上面26に接続されている。
【0068】
次に、本実施形態の第1変形例に係る圧電素子200の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図8および図9は、本実施形態の第1変形例に係る圧電素子200の製造工程を模式的に示す断面図であって、図7に対応している。なお、本実施形態の圧電素子100の製造方法と基本的に同じ工程については、その説明を簡略化ないし省略する。
【0069】
圧電素子200の製造方法では、第2電極30a上にレジストR1を形成した後(図4参照)、図8に示すように、レジストR1をマスクとして、第2電極30aをエッチングし、第2電極30を形成する。
【0070】
図9に示すように、第2電極30上および圧電体層20a上に、所望の形状を有するレジストR3を形成する。レジストR3は、公知の方法により形成される。レジストR3は、第2電極30の面積より大きな面積を有する。レジストR3の寸法と第2電極30の寸法との差は、後述するウェットエッチングにおいて圧電体層20aに生じるサイドエッチング量よりも大きいことが好ましい。
【0071】
図7に示すように、レジストR3をマスクとして、圧電体層20aをエッチングする。エッチングは、ウェットエッチングにより行われる。これにより、凹凸面23を有する圧電体層20を形成することができる。なお、レジストR3は、公知の方法により除去される。
【0072】
以上の工程により、圧電素子200を製造することができる。
【0073】
3.2. 第2変形例に係る圧電素子
次に、本実施形態の第2変形例に係る圧電素子について、図面を参照しながら説明する。図10は、本実施形態の第2変形例に係る圧電素子300を模式的に示す断面図であって、図1に対応するものである。
【0074】
圧電素子300では、図10に示すように、圧電体層20の側面22は、凹凸面23と、平坦面24と、によって構成されている。平坦面24は、圧電体層20の上面26に接続されている。凹凸面23は、平坦面24に接続されており、さらに、圧電体層20の下面27に接続されている。図示の例では、第2電極30の側面32は、圧電体層20の側面22(平坦面24)に接続されている。平坦面24と第2電極30の側面32とは、連続しているともいえる。
【0075】
次に、本実施形態の第2変形例に係る圧電素子300の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図11および図12は、本実施形態の第2変形例に係る圧電素子300の製造工程を模式的に示す断面図であって、図10に対応している。なお、本実施形態に係る圧電素子100の製造方法と基本的に同じ工程については、その説明を簡略化ないし省略する。
【0076】
圧電素子300の製造方法では、第2電極30a上にレジストR1を形成した後(図4参照)、図11に示すように、レジストR1をマスクとして、第2電極30aおよび圧電体層20aの一部をエッチングする。これにより、平坦面24が形成される。圧電体層20aのエッチング量によって、平坦面24の大きさを決定することができる。
【0077】
図12に示すに、第2電極30上および圧電体層20a上に、所望の形状を有するレジストR4を形成する。レジストR4は、第2電極30の面積より大きな面積をし、第2電極30および平坦面24を覆うように形成される。レジストR4は、公知の方法により形成される。
【0078】
図10に示すように、レジストR4をマスクとして、圧電体層20aをエッチングする。エッチングは、ウェットエッチングにより行われる。これにより、凹凸面23が形成され、凹凸面23および平坦面24を有する圧電体層20を形成することができる。なお、レジストR4は、公知の方法により除去される。
【0079】
以上の工程により、圧電素子300を製造することができる。
【0080】
次に、本実施形態の第2変形例に係る圧電素子300の別の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図13〜図16は、本実施形態の第2変形例に係る圧電素子300の製造工程を模式的に示す断面図であって、図10に対応している。なお、本実施形態に係る圧電素子100の製造方法と基本的に同じ工程については、その説明を簡略化ないし省略する。
【0081】
圧電素子300の別の製造方法では、図13に示すように、第1電極10上に、第1圧電体層320を成膜する。第1圧電体層320は、ゾルゲル法、MOD法により成膜される。より具体的には、圧電体の前駆体層をスピンコートで成膜し、酸素雰囲気中で750℃程度で焼成することにより、前駆体層を結晶化させる。この成膜・焼成工程を複数回繰り返すことにより、所望の膜厚を有する第1圧電体層320を得ることができる。次に、圧電体層320上に、所望の形状を有するレジストR5を形成する。レジストR5は、公知の方法により形成される。
【0082】
図14に示すように、レジストR5をマスクとして、第1圧電体層320をエッチングする。エッチングは、バッファードフッ酸をエッチング液としたウェットエッチングによって行われる。これにより、第1圧電体層320の側面に、凹凸面23を形成することができる。ここで、バッファードフッ酸は、少なくとも第1圧電体層320を形成する一部の材料しか溶かさないように調整される。または、バッファードフッ酸は、結晶粒界のように、第1圧電体層320のきちんとした結晶になっていない部分を選択的に溶かすように調整される。このようなバッファードフッ酸を用いたウェットエッチングにより、第1圧電体層320は全て除去されず、溶解しない元素を含んだ酸化物やエッチング溶液の成分と反応した反応物が残る。これによって、多孔質性のポーラス層322を形成することができる。
【0083】
図15に示すように、第1圧電体層320上およびポーラス層322上に、第2圧電体層324を成膜する。第2圧電体層324は、例えば、第1圧電体層320の同じ方法で成膜される。次に、第2圧電体層324上に、第2電極30aを成膜する。次に、第2電極30a上に、所望の形状を有するレジストR6を形成する。レジストR6は、公知の方法により形成される。
【0084】
図16に示すように、レジストR6をマスクとして、第2電極30aおよび圧電体層324をエッチングし、第2電極30および圧電体層20を形成する。エッチングは、ドライエッチングにより行われ、これにより、平坦面24を形成することができる。なお、レジストR6は、公知の方法により除去される。
【0085】
図10に示すように、ポーラス層322を、エッチングにより選択的に除去する。エッチングは、例えば、硝酸をエッチング液としたウェットエッチングにより行われる。
【0086】
以上の工程によっても、圧電素子300を製造することができる。図13〜図16に示した製造方法によれば、第1圧電体層320の厚みによって、凹凸面23を形成する領域を決定することができる。すなわち、凹凸面23を形成する領域を、精度よく形成することができる。
【0087】
3.3. 第3変形例に係る圧電素子
次に、本実施形態の第3変形例に係る圧電素子について、図面を参照しながら説明する。図17は、本実施形態の第3変形例に係る圧電素子400を模式的に示す断面図であって、図1に対応するものである。
【0088】
圧電素子400は、図17に示すように、被覆層40を有する。被覆層40は、第1電極10の上面14、圧電体層20の側面22、第2電極30の側面32、および第2電極30の上面34の一部を覆って形成されている。被覆層40は、水分等から圧電体層20を保護する機能を有することができる。
【0089】
被覆層40としては、圧電体層20よりヤング率の小さい材料を用いることができる。具体的には、被覆層40の材質としては、ポリイミドが挙げられる。これにより、圧電体層20の側面22に被覆層40が形成されていても、圧電体層20の変位量が低下することを抑制できる。
【0090】
第1電極10の上面14に形成された被覆層40の厚みT1は、第2電極30の上面34に形成された被覆層40の厚みT2より大きい。厚みT1は、例えば、1μm程度であり、厚みT2は、例えば、0.5μm程度である。これにより、被覆層40によって、圧電体層20の側面22を確実に保護することができ、信頼性を向上させることができる。
【0091】
第2電極30の上面34に形成された被覆層40は、開口部42を有することができる。開口部42によって、第2電極30の上面34の一部は、露出されていてもよい。開口部42により、被覆層40が形成されていても、圧電体層20の変位量が低下することを抑制できる。第2電極30の上面34と接続する被覆層40の側面44は、第2電極30の上面34に対して傾斜していてもよい。
【0092】
次に、本実施形態の第3変形例に係る圧電素子400の製造方法について説明する。なお、本実施形態に係る圧電素子100の製造方法と基本的に同じ工程については、その説明を簡略化ないし省略する。
【0093】
圧電素子400の製造方法では、圧電体層20を形成した後(図6参照)、第1電極10、圧電体層20、および第2電極30を覆うように、被覆層40を形成する。被覆層40は、スピンコートにより成膜される。また、必要に応じて、被覆膜40を硬化させるための熱処理を行ってもよい。これにより、第1電極10の上面14に形成された被覆層40の厚みT1を、第2電極30の上面34に形成された被覆層40の厚みT2より大きくすることができる。
【0094】
次に、第2電極30の上面34に形成された被覆層40をパターニングして、開口部42を形成する。被覆層40の材質が感光性ポリイミドの場合は、エッチング工程を用いることなく、露光のみで開口部42を形成することができる。そのため、製造コストを削減することができる。
【0095】
以上の工程により、本実施形態の第3変形例に係る圧電素子400を製造することができる。
【0096】
3.4. 第4変形例に係る圧電素子
次に、本実施形態の第4変形例に係る圧電素子について、図面を参照しながら説明する。図18は、本実施形態の第4変形例に係る圧電素子500を模式的に示す断面図であって、図10に対応するものである。以下、本実施形態の第4変形例に係る圧電素子500において、本実施形態の第2変形例に係る圧電素子300の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0097】
圧電素子500は、図18に示すように、被覆層50(第1被覆層50ともいえる)を有する。被覆層50は、平坦面24および第2電極30の側面32を覆って形成されている。平坦面24と第2電極30の側面32とは、連続しているので、圧電体層20と第2電極30との界面に、被覆層50を欠陥なく形成することができる。被覆層50の厚みは、例えば、100nm程度である。
【0098】
被覆層50の材質としては、例えば、酸化アルミニウム、窒化シリコンなどが挙げられる。これにより、圧電体層20と第2電極30との界面に水分等が浸入することを、より確実に抑制することができる。
【0099】
被覆層40(第2被覆層40ともいえる)は、凹凸面23および被覆層50を覆って形成されている。被覆層40のヤング率は、圧電体層20のヤング率および被覆層50のヤング率より小さい。具体的には、被覆層40の材質としては、ポリイミドが挙げられる。これにより、圧電体層20と第2電極30との界面に水分等が浸入することを防ぎつつ、圧電体層20の変位量が低下することを抑制できる。例えば、圧電体層20の側面22をXZ平面に投影させたとき、平坦面24の面積は、凹凸面23の面積の半分以下であってもよい。これにより、被覆層50が形成される面積を小さくすることができ、より確実に圧電体層20の変位量が低下することを抑制できる。なお、その他の被覆層40の説明は、上述した本実施形態の第3変形例に係る圧電素子400で用いた説明を適用することができる。
【0100】
次に、本実施形態の第4変形例に係る圧電素子500の製造方法について説明する。図19〜図21は、本実施形態の第4変形例に係る圧電素子500の製造工程を模式的に示す断面図であって、図18に対応している。なお、本実施形態の第2変形例に係る圧電素子300の製造方法と基本的に同じ工程については、その説明を簡略化ないし省略する。
【0101】
圧電素子500の製造方法では、圧電体層20aの一部をエッチングして平坦面24を形成した後(図11参照)、図19に示すように、第2電極30上および圧電体層20a上に被覆層50aを成膜する。被覆層50aは、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により成膜される。
【0102】
図20に示すように、第2電極30上の被覆層50a、および平坦面24上の被覆層50aを覆うように、レジストR7を形成する。レジストR7は、公知の方法により形成される。次に、レジストR7をマスクとして、被覆層50aをエッチングする。エッチングは、例えば、塩素系ガスを用いたドライエッチングにより行われる。なお、レジストR7は、公知の方法により除去される。
【0103】
図21に示すように、被覆層50aをマスクとして、圧電体層20aをウェットエッチングし、凹凸面23を有する圧電体層20を形成する。
【0104】
図18に示すように、被覆層50aをパターニングして、被覆層50を形成する。次に、例えば、スピンコートにより、開口部42を有する被覆層40を形成する。
【0105】
以上の工程により、圧電素子500を製造することができる。
【0106】
4. 実験例
以下に実験例を示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実験例によってなんら限定されるものではない。
【0107】
4.1. 試料の作製
シリコン基板上に、スパッタ法により200nmの白金を成膜し、第1電極とした。次に、PZTの前駆体をスピンコートで成膜し、酸素雰囲気中において750℃で焼成した。この成膜・焼成工程を5回繰り返して、1μmのPZTを形成し、圧電体層とした。次に、PZT上に、スパッタ法により100nmのイリジウムを成膜し、第2電極とした。
【0108】
次に、レジストをマスクとして、イリジウムおよびPZTをドライエッチングした。ドライエッチングは、塩素系およびフッ素系の混合ガスを用いて行った。次に、ウェットエッチングによって、PZTをエッチングした。ウェットエッチングは、20%バッファードフッ酸、硝酸、および塩素の混合液を用いて行った。
【0109】
4.2. SEM観察結果
図22は、上記のように作製した試料のSEM観察結果である。図22より、PZTの側面に凹凸面が形成されていることがわかった。
【0110】
5. 液体噴射ヘッド
次に、本実施形態にかかる液体噴射ヘッドについて、図面を参照しながら説明する。図23は、液体噴射ヘッド600の要部を模式的に示す断面図である。図24は、液体噴射ヘッド600の分解斜視図であり、通常使用される状態とは上下を逆に示したものである。
【0111】
液体噴射ヘッド600は、本発明に係る圧電素子を有する。以下では、本発明に係る圧電素子として、圧電素子100を用いた例について説明する。
【0112】
液体噴射ヘッド600は、図23および図24に示すように、例えば、振動板1aと、ノズル板610と、流路形成基板620と、圧電素子100と、筐体630と、を含む。なお、図24では、圧電素子100を簡略化して図示している。
【0113】
ノズル板610は、図23および図24に示すように、ノズル孔612を有する。ノズル孔612からは、インクが吐出される。ノズル板610には、例えば、複数のノズル孔612が設けられている。図24に示す例では、複数のノズル孔612は、一列に並んで形成されている。ノズル板610の材質としては、例えば、シリコン、ステンレス鋼(SUS)が挙げられる。
【0114】
流路形成基板620は、ノズル板610上(図24の例では下)に設けられている。流路形成基板620の材質としては、例えば、シリコンが挙げられる。流路形成基板620がノズル板610と振動板1aとの間の空間を区画することにより、図24に示すように、リザーバー(液体貯留部)624と、リザーバー624と連通する供給口626と、供給口626と連通する圧力発生室622と、が設けられている。図24に示す例では、リザーバー624と、供給口626と、圧力発生室622と、が区別されているが、これらはいずれも液体の流路(例えば、マニホールドということもできる)であって、このような流路はどのように設計されても構わない。例えば、供給口626は、図示の例では流路の一部が狭窄された形状を有しているが、設計にしたがって任意に形成することができ、必ずしも必須の構成ではない。
【0115】
リザーバー624は、外部(例えばインクカートリッジ)から、振動板1aに設けられた貫通孔628を通じて供給されるインクを一時貯留することができる。リザーバー624内のインクは、供給口626を介して、圧力発生室622に供給されることができる。圧力発生室622は、振動板1aの変形により容積が変化する。圧力発生室622はノズル孔612と連通しており、圧力発生室622の容積が変化することによって、ノズル孔612からインク等が吐出される。
【0116】
なお、リザーバー624および供給口626は、圧力発生室622と連通していれば、流路形成基板620とは別の部材(図示せず)に設けられていてもよい。
【0117】
圧電素子100は、流路形成基板620上(図24の例では下)に設けられている。圧電素子100は、駆動回路(図示せず)に電気的に接続され、駆動回路の信号に基づいて動作(振動、変形)することができる。振動板1aは、圧電体層20の動作によって変形し、圧力発生室622の内部圧力を適宜変化させることができる。
【0118】
筐体630は、図24に示すように、ノズル板610、流路形成基板620、振動板1a、および圧電素子100を収納することができる。筐体630の材質としては、例えば、樹脂、金属などを挙げることができる。
【0119】
液体噴射ヘッド600によれば、圧電素子100を有する。したがって、液体噴射ヘッド600は、高い信頼性を有することができる。
【0120】
なお、上記の例では、液体噴射ヘッド600がインクジェット式記録ヘッドである場合について説明した。しかしながら、本実施形態の液体噴射ヘッドは、例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドなどとして用いられることもできる。
【0121】
6. 液体噴射装置
次に、本実施形態にかかる液体噴射装置について、図面を参照しながら説明する。図25は、本実施形態にかかる液体噴射装置700を模式的に示す斜視図である。
【0122】
液体噴射装置700は、本発明に係る液体噴射ヘッドを有する。以下では、本発明に係る液体噴射ヘッドとして、液体噴射ヘッド600を用いた例について説明する。
【0123】
液体噴射装置700は、図25に示すように、ヘッドユニット730と、駆動部710と、制御部760と、を含む。さらに、液体噴射装置700は、装置本体720と、給紙部750と、記録用紙Pを設置するトレイ721と、記録用紙Pを排出する排出口722と、装置本体720の上面に配置された操作パネル770と、を含むことができる。
【0124】
ヘッドユニット730は、上述した液体噴射ヘッド600から構成されるインクジェット式記録ヘッド(以下単に「ヘッド」ともいう)を有する。ヘッドユニット730は、さらに、ヘッドにインクを供給するインクカートリッジ731と、ヘッドおよびインクカートリッジ731を搭載した運搬部(キャリッジ)732と、を備える。
【0125】
駆動部710は、ヘッドユニット730を往復動させることができる。駆動部710は、ヘッドユニット730の駆動源となるキャリッジモーター741と、キャリッジモーター741の回転を受けて、ヘッドユニット730を往復動させる往復動機構742と、を有する。
【0126】
往復動機構742は、その両端がフレーム(図示せず)に支持されたキャリッジガイド軸744と、キャリッジガイド軸744と平行に延在するタイミングベルト743と、を備える。キャリッジガイド軸744は、キャリッジ732が自在に往復動できるようにしながら、キャリッジ732を支持している。さらに、キャリッジ732は、タイミングベルト743の一部に固定されている。キャリッジモーター741の作動により、タイミングベルト743を走行させると、キャリッジガイド軸744に導かれて、ヘッドユニット730が往復動する。この往復動の際に、ヘッドから適宜インクが吐出され、記録用紙Pへの印刷が行われる。
【0127】
なお、本実施形態では、液体噴射ヘッド600および記録用紙Pがいずれも移動しながら印刷が行われる液体噴射装置の例を示しているが、本発明の液体噴射装置は、液体噴射ヘッド600および記録用紙Pが互いに相対的に位置を変えて記録用紙Pに印刷される機構であればよい。また、本実施形態では、記録用紙Pに印刷が行われる例を示しているが、本発明の液体噴射装置によって印刷を施すことができる記録媒体としては、紙に限定されず、布、フィルム、金属など、広範な媒体を挙げることができ、適宜構成を変更することができる。
【0128】
制御部760は、ヘッドユニット730、駆動部710および給紙部750を制御することができる。
【0129】
給紙部750は、記録用紙Pをトレイ721からヘッドユニット730側へ送り込むことができる。給紙部750は、その駆動源となる給紙モーター751と、給紙モーター751の作動により回転する給紙ローラー752と、を備える。給紙ローラー752は、記録用紙Pの送り経路を挟んで上下に対向する従動ローラー752aおよび駆動ローラー752bを備える。駆動ローラー752bは、給紙モーター751に連結されている。制御部760によって供紙部750が駆動されると、記録用紙Pは、ヘッドユニット730の下方を通過するように送られる。ヘッドユニット730、駆動部710、制御部760および給紙部750は、装置本体720の内部に設けられている。
【0130】
液体噴射装置700によれば、液体噴射ヘッド600を有する。したがって、液体噴射装置700は、高い信頼性を有することができる。
【0131】
なお、上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0132】
上記のように、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できよう。したがって、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0133】
1 基板、10 第1電極、12 第1電極の外周、14 第1電極の上面、
20 圧電体層、22 圧電体層の側面、23 凹凸面、24 平坦面、
26 圧電体層の上面、27 圧電体層の下面、28 能動部、29 非能動部、
30 第2電極、32 第2電極の側面、34 第2電極の上面、40 被覆層、
42 開口部、44 被覆層の側面、50 被覆層、100 圧電素子、
200 圧電素子、300 圧電素子、320 第1圧電体層、322 ポーラス層、
324 第2圧電体層、400 圧電素子、500 圧電素子、
600 液体噴射ヘッド、610 ノズル板、612 ノズル孔、
620 流路形成基板、622 圧力発生室、624 リザーバー、626 供給口、
628 貫通孔、630 筐体、700 液体噴射装置、710 駆動部、
720 装置本体、721 トレイ、722 排出口、730 ヘッドユニット、
731 インクカートリッジ、732 キャリッジ、741 キャリッジモーター、
742 往復動機構、743 タイミングベルト、744 キャリッジガイド軸、
750 給紙部、751 給紙モーター、752 給紙ローラー、
752a 従動ローラー、752b 駆動ローラー、760 制御部、
770 操作パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
前記第1電極の上方に、長手方向と短手方向とを有して形成された圧電体層と、
前記圧電体層の上方に形成された第2電極と、
を含み、
前記圧電体層の前記短手方向の側面の少なくとも一部は、凹凸面であり、
前記第2電極から前記第1電極に向かうに従って、前記圧電体層の前記短手方向の幅は、前記凹凸面によって変化する、圧電素子。
【請求項2】
請求項1において、
前記圧電体層と前記第1電極とは、交差しており、
前記第1電極の外周と交差する点において前記圧電体層の前記短手方向の側面は、平坦な面である、圧電素子。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記第2電極の前記短手方向の幅は、前記圧電体層の前記短手方向の幅の最小値より小さい、圧電素子。
【請求項4】
請求項1または2において、
前記第2電極の前記短手方向の側面は、前記圧電体層の前記短手方向の側面に接続されている、圧電素子。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、
前記圧電体層の前記短手方向の側面は、被覆層によって覆われており、
前記被覆層のヤング率は、前記圧電体層のヤング率より小さい、圧電素子。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれか1項において、
前記圧電体層の前記短手方向の側面は、前記圧電体層の上面に接続された平坦面を有し、
前記凹凸面は、前記平坦面に接続され、
前記平坦面および前記第2電極の側面は、第1被覆層によって覆われており、
前記凹凸面は、第2被覆層によって覆われており、
前記第2被覆層のヤング率は、前記第1被覆層のヤング率および前記圧電体層のヤング率より小さい、圧電素子。
【請求項7】
請求項6において、
前記第1被覆層の材質は、酸化アルミニウムであり、
前記第2被覆層の材質は、ポリイミドである、圧電素子。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の圧電素子を含む、液体噴射ヘッド。
【請求項9】
請求項8項に記載の液体噴射ヘッドを含む、液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−192541(P2012−192541A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56276(P2011−56276)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】