説明

圧電素子を用いたタッチパネル構造

【課題】
使用者に対する水平方向の触感出力と、タッチパネルを用いた押圧以外の入力手段とを、単一の部品を用いて行う事の出来るタッチパネルを提供する。
【解決手段】
複合梃子型の変位拡大機構を検出兼駆動源としてタッチパネル側面に設けたことで、単純な振動出力だけではなく、接触箇所を介して進行波の出力ができると共に、タッチパネル本体の移動を変位拡大機構を介して検出することで、タッチパネル本体の移動による入力が可能となった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力箇所に対して振動を出力するタッチパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、タッチパネルに入力する際、使用者に対して体感振動を出力する振動発生装置が付加されたものがあり、基本的な構造としては特開平04−137419(以下特許文献1として記載)が出願後、公開されている。
【0003】
前記特許文献1記載の構造では、接触等によるタッチパネルへの入力信号を検出する検出回路によってタッチパネルへの入力を検出する制御方法を用いている。この為、駆動時には別途設けた制御回路によってタッチパネルへの入力を確認し、振動源に出力することでタッチパネルを振動させる構造となっている。
【0004】
前記特許文献1記載の方法では、タッチパネルへの加振方法に関して、単に振動アクチュエータを設けたのみの構造となっている。これに対して、加振方法に復帰手段を付加した構造が特開平09−167541(以下特許文献2として記載)として出願後、公開されている。
【0005】
前記特許文献2に記載の構造では、前記特許文献1に記載されたタッチパネルに情報表示パネルを付加した入力方法を用いている。このような構造としたことで、特許文献2に記載の構造はタッチパネルに対する入力方法の幅を増やし、表示画面上に直接触れて入力することを可能としている。
【0006】
上記効果に加えて、特許文献2に記載の構造では入力に対する応答として、タッチパネル自体を水平方向に振動させる際に、復帰手段を内蔵した駆動源を用いた構造としている。この為、タッチパネルへの入力を停止した際にタッチパネルを自動で初期位置に復帰させることを可能としている。
【0007】
この為、特許文献1記載の構造に代表される従来のタッチパネル入力に対する触感フィードバック機能を、タッチパネル本体の厚みを増やすことなく追加することができると共に、表示画面と重ねた配置によってイメージガイドを省略した構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平04−137419
【特許文献2】特開平09−167541
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献2に記載のタッチパネルはその構造上、タッチパネルに対する入力の検出手段とタッチパネル上での触感による出力手段とを別個に設ける必要があった。
これは、特許文献2に記載のタッチパネル構造が基本的に従来のタッチパネル構造の振動方向を変えた物に留まっている為で、制御方法に関しては従来のタッチパネルと同様、別個に設けた入出力系統を使用しなければならないという課題を有している。また、復帰部を設けた事により、連続して入力を行う際に、入力時のデータに対して復帰動作中の入力がノイズとなってしまうと言う課題も有している。
【0010】
このような課題を解決するべく、本願は入出力系統を単一とすることが可能で、上記従来のものと同様の効果を得ることが出来るタッチパネルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的のため、請求項1記載の発明では、圧電素子を駆動源とし、梃子を連結させた複合梃子型の変位拡大機構を、検出兼駆動源としてタッチパネル側面に設けた構造としている。この為、圧電素子を用いたタッチパネルの水平方向に於ける移動量の検出と、圧電素子の変位を前記変位拡大機構によって拡大したタッチパネル水平方向への変位出力とを、単一の部品で行うことが可能となる。
【0012】
また、タッチパネルとタッチパネル取付筐体とを分けて振動させる為、前記取付筐体に別途入力手段を設けた構造であっても、振動出力に関わらず操作を行うことが可能となる。また、タッチパネルへの入力時に於いても、タッチパネルが変位拡大機構を介して取り付けられている為、接触による入力を圧電素子に対する変位として容易に検知することができる。
【0013】
加えて、本発明に記載の構造ではタッチパネルが標準で有する入力機能も併せて使用することが可能となる為、タッチパネル本体への接触とタッチパネル本体の移動とを入力操作に併用する事で、多彩な入力機能を付加することができる。
【0014】
また、請求項2に記載の発明では、前記タッチパネルを変位拡大機構とサスペンションとで挟んだ支持構造を特徴としている。この為、入出力時に於いてタッチパネルの安定支持が可能になると共に、タッチパネル水平方向の移動を入力に用いる際でも、変位拡大機構を介した圧電素子への入力を安定して行うことができる。加えて、上記支持構造を用いることでパネル全体を水平方向に動かす構造となり、振動発生時に於いて、パネル上のどの位置でも同じ振動を感知することが可能となる。
【0015】
また、請求項3に記載の発明では上述した変位拡大機構を少なくとも2カ所に設けた構造を用いている。この為、タッチパネル上での平面的な入力と押圧方向の入力とを別個に検出することが出来ると共に、出力軸を増やした事によって振動方向の自由度増加という効果をも得ることが出来る。また、タッチパネルへの入力時に於いても、検出を複数とすることでタッチパネルの取付筐体に対する水平方向の変位の他に傾きといった値を入力値として使用することが出来る為、使用者のタッチパネルを用いた入力の幅を増やし、より簡略化された入力手段を付加することができる。
【0016】
また、請求項4に記載の発明では、前記変位拡大機構の駆動信号に進行波を用いる方法を提示している。この為、入力した進行波に従ってタッチパネルが使用者に対して方向性を付加した触感を提供することを可能としている。
【0017】
以上述べたように、本発明に記載の構造を用いたタッチパネルは、タッチパネル表面に設けた導電性フィルムによる検出とは別に、タッチパネル自体の移動による入力とを備えることとなり、タッチパネルを用いた使用者の入力手段を広げ、より高い操作性を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の最良の実施形態に於いて用いるタッチパネルの全体斜視図
【図2】本発明の最良の実施形態に於いて用いる変位拡大機構の斜視図
【図3】本発明の最良の実施形態に於いて用いる搬送用入力信号とそれに伴う動作
【実施例】
【0019】
以下に、図1〜図3を用いて、本発明に於ける最良の実施形態を示す。
【0020】
図1に本実施例に於いて用いるタッチパネル構造の斜視図を、図2に本実施例に於いて用いる変位拡大機構の斜視図をそれぞれ示す。
【0021】
図1及び図2から解るように、本実施例に於けるタッチパネルは、圧電素子13を駆動源とする複合梃子型の変位拡大機構1をタッチパネル本体3の側面2カ所に設け、それぞれの面の対向側にサスペンション2を設けて挟んだ支持構造となっている。この為、水平方向に自由度を有する振動をタッチパネル本体3に対して与えることが出来ると共に、タッチパネルに対する水平方向の入力をタッチパネル本体3の移動によって検出することも可能となった。
【0022】
加えて、前記変位拡大機構1は前述した圧電素子13の変位を支持部11と梃子部12とで拡大し、梃子部12の端部に設けたガイド14によって動作を安定させており、アクチュエータ自体の小型化によってタッチパネル本体3の面積を広く設定することを可能としている。
【0023】
更に、前記支持構造を用いたことで体感振動発生時に取付筐体4に対してタッチパネル本体3を独立して振動させることができた。
【0024】
上記効果に加えて、本実施例に記載のタッチパネルではその構造上、水平方向の振動発生時にタッチパネル本体3上のどの位置に触れていても同じ振動を感じることができるという利点がある。この為、タッチパネル本体3上を押圧移動させるような連続したタッチパネルへの入力に対しても、随時安定した触感フィードバックを返すことが可能となった。
【0025】
図3に本実施例に於いて変位拡大機構1の駆動信号に用いる進行波と、それによる変位拡大機構1の動作を示す。図3から解るように、本実施例に記載のタッチパネルでは鋸刃形状の入力信号を用いることで触感に対して指向性を持たせることを可能としている。より具体的には、移動する方向と逆方向にパネルを急速移動させ(図中A参照)、移動する方向に戻す動作を低速で(図中B参照)行う事で、支持部11を起点とした圧電素子13の変位が梃子部12を動かしてタッチパネル本体3を移動させる制御方法を用いている。このような制御方法を用いる事によって急速移動時(図中A参照)の動作に比べて低速動作時(図中B参照)の動作の方が使用者に感知されやすくなり、使用者に対して低速動作時の方向に沿った触感を伝達することができる。
【0026】
また、進行波の方向を逆転することで触感の上記進行方向を反対にすることができる。この為、タッチパネルに対する変位拡大機構1の設置箇所と入力信号との組み合わせによって本実施例に示した構造に限定される事のない、用途に合わせた触感出力と構成に調整することが可能となった。
【0027】
以上述べた効果に加えて、本実施例冒頭で述べた変位拡大機構1を用いたことで、上記述べたタッチパネル全体の構成を小さくまとめながら、タッチパネル本体3の振幅を大きく設定することができた。また、駆動源に圧電素子13を用いた事で立ち上がり時間を短縮すると共に、入力側に必要な回路構成を昇圧のみとし、簡単な制御で幅広い触感出力と入力手段とを提供することができた。
【0028】
また、前記変位拡大機構を関して前記タッチパネルへの入力を行う際に、タッチパネルに対する水平方向の入力を画面表示に反映させることも可能となるため、従来のタッチパネルスイッチのみで行う操作に加えて、より多彩な入力手段を付与することが可能となった。加えて、本実施例に於いて用いた変位拡大機構1は、支持部11と梃子部12とを一体成形によって構成しており、振動出力等の連続した付加に対しても高い耐久性を維持することが可能となった。
【0029】
以上述べたように、本実施例に記載の構造を用いることで、従来のタッチパネルが有していた効果に加えて、更なる操作性の向上が可能なタッチパネルを得ることができた。
【符号の説明】
【0030】
1 変位拡大機構
2 サスペンション
3 タッチパネル本体
4 取付筐体
11 支持部
12 梃子部
13 圧電素子
14 ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面に圧電素子を検出兼駆動源とする複合梃子型の変位拡大機構を設けたタッチパネル。
【請求項2】
両側面を前記変位拡大機構とサスペンションとで挟んで支持している支持構造を有する請求項1記載のタッチパネル。
【請求項3】
前記変位拡大機構とサスペンションとで挟んで支持する支持構造が、少なくとも2カ所に設けられている請求項2に記載のタッチパネル。
【請求項4】
前記変位拡大機構の駆動信号に進行波を用いる請求項1記載のタッチパネル駆動方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−244283(P2010−244283A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92049(P2009−92049)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(000240477)並木精密宝石株式会社 (210)
【Fターム(参考)】