説明

圧電素板の波形測定装置

【課題】 圧電素板の局所的な振動測定を正確に測定することができ、その平行度,平坦度の測定精度をより向上させることのできる圧電素板の波形測定装置を提供する。
【解決手段】 測定器本体1に接続される対向電極2の両側の電極21,22のそれぞれを、互いに絶縁された複数の電極群21a,・・,22a・・に分割するとともに、これら各側の電極を、スイッチ群3を介して互いに対向するものどうしを一組として、その各組を選択的に測定器本体1に接続されるよう構成することで、選択された電極対の組に挟まれた局所的な領域での圧電素板の振動特性の測定を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水晶振動子、水晶フィルタ、セラミック振動子、あるいはセラミックフィルタ等、圧電性基板に各種電極を形成してその圧電効果を利用するデバイスの製造プロセス等において、電極形成前の圧電性基板(以下、圧電素板と称する)の周波数応答波形を測定するための装置に関する。
【0002】
【従来の技術】水晶振動子や水晶フィルタ等の圧電デバイスを製造するプロセスにおいては、一般に、まず圧電結晶を板状に切り出し、所要の外形寸法並びに厚さに研磨した後に、その圧電素板の周波数選別を行う。この周波数選別は、通常、ネットワークアナライザ等の測定器に接続された対向電極間に圧電素板を挿入し、その周波数応答特性を測定することによって行われる。そして、このような周波数選別を経た圧電素板に対して所要の電極を形成することによって、最終的なデバイスの歩留りを向上させている。
【0003】ここで、近年の圧電デバイスの小型化の要求に伴う多電極化や、圧電素板の小型化並びに薄型化が進む中、周波数選別の精度が悪いと、電極膜形成後の周波数並びにインピーダンスのばらつきが大きくなる。このようなばらつきは、電極膜の最終蒸着によって調整されるが、このとき、圧電素板の周波数特性のばらつきが大きい場合には、調整量が多くなったり、インピーダンスの悪いものを調整した場合にはインピーダンス低下や定数のばらつき、スプリアスの増長等が発生し、規定の仕様に入らないデバイスが多発して歩留りを低下させる原因となる。
【0004】また、圧電素板の薄型化とデバイスの仕様の高度化に伴い、圧電素板の平行度や平坦度が無視し得ない状況になっている。すなわち、圧電素板を用いた振動子やフィルタの振動特性や通過帯域特性は、圧電素板の平行度や平坦度に依存することが知られているが、圧電素板の薄型化に伴ってその平行度や平坦度の素子特性に及ぼす影響が大きくなり、上記した電極膜の最終蒸着による調整量が大きくなったり、調整不能となって歩留りを低下させる原因となっている。
【0005】ところで、前記した圧電素板の周波数選別を行うための従来の装置は、対向電極が平行平板状のものであり、圧電素板全体としての周波数特性しか測定することはできず、圧電素板の平行度や平坦度の選別を行うことはできない。
【0006】このような問題を解決するための対策として、特開平6−140860号が提案されている。この提案では、測定器本体に接続される対向電極として、一方側の電極を平板状のものとするとともに、他方側の電極を複数に分割し、その分割された電極のいずれか一つを選択的に測定器本体に接続可能とすることにより、圧電素板上の異なる領域における振動特性の測定を可能とし、これによって圧電素板の平行度の調査を可能としている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記した従来の提案では、分割されている側の電極の一つを選択して振動特性を測定しても、それと反対側の電極を平板状としているが故に電界は比較的広い領域に分布し、得られる振動特性は選択された電極位置を中心とした領域のものとはなるものの、その領域は選択された電極面積に比して相当に広いものとなって、圧電素板の局所的な振動特性を表すものとは言いがたく、その結果として圧電素板の平行度や平坦度を正確に測定することはできない。そして、この従来の提案の電極構成によれば、分割電極の複数を選択して複数箇所の振動特性を同時に測定しようとする場合、各電極に対応する振動領域が広いが故に、その振動領域が相互に重複し、各領域の正確な振動特性を得ることはできない。
【0008】また、対向電極の一方側を複数に分割してそのいずれかを選択的に測定器に接続可能とした従来の提案の電極構成によれば、振動特性の測定可能領域は分割電極の配設位置に対応した離散的な領域のみとなり、圧電素板の面積が変わった場合にはそれに応じた電極を用意する必要があるし、圧電素板上の任意の領域における振動特性を細密に測定することはできない。
【0009】本発明はこのような実情に鑑みてなされたもので、その主たる目的は、圧電素板の局所的な振動特性を正確に測定することができ、その平行度並びに平坦度の測定精度をより向上させることのできる圧電素板の波形測定装置を提供することにある。
【0010】また、本発明の他の目的は、任意の面積を持つ圧電素板に対して、その任意の領域における局所的な振動特性を正確に測定することができ、圧電素板の任意方向への平行度や平坦度を正確に測定することのできる圧電素板の波形測定装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するための構成を、好適な実施の一形態を現す図1を参照しつつ説明すると、本発明の圧電素板の波形測定装置は、ネットワークアナライザ等の測定器本体1に接続される対向電極2の、その両側の電極21および22のそれぞれが、互いに絶縁された複数の電極群21a,21b,21cおよび22a,22b,22cからなり、その各側の個々の電極は、スイッチ群3を介して互いに対向するものどうし(例えば21aと22a,21bと22b等)を一組として、その任意の組が選択的に測定器本体1に接続されるよう構成されていることをによって特徴づけられる(請求項1に記載の構成)。
【0012】また、本発明では、上記の構成において、スイッチ群3により、互いに対向する電極どうしの少なくとも2組を、同時に測定器本体1に接続する構成を採用することができる。
【0013】また、本発明においては、対向電極2を構成する両側の電極群のうち、少なくとも一方の電極群の個々の電極を、それぞれ他方の電極に対して独立的に接近離反させるギャップ調整機構4を設けることが好ましい(図7参照)。
【0014】前記した目的を達成するための本発明の他の構成では、図8,図9に例示するように、ネットワークアナライザ等の測定器本体1に接続される対向電極2の、その両側の電極121,122のそれぞれが、マトリクス状に配列された多数の微小電極e,e,・・,eからなり、その各側の微小電極群のそれぞれは、スイッチ群31,32によって選択的に任意のものどうしを互いに導通させた状態で、測定器本体1の測定端子に接続可能な構成を採用している(請求項4に記載の構成)。
【0015】以上の本発明の各構成において、振動特性の測定領域の正確さを追求することを目的として、図11R>1に例示するように、測定すべき圧電素板Wを、対向電極2の対向方向(z方向)に直交する平面(x−y平面)上で、対向電極2に対して位置決めするための位置決め機構6を設けることが望ましい。
【0016】前記した目的を達成するための本発明の更に他の構成として、ネットワークアナライザ等の測定器本体1に接続される対向電極2の少なくともいずれか一方の電極面積が測定すべき圧電素板Wの面積より小さく、かつ、その対向電極2とその間に挿入された圧電素板Wとの、対向電極2の対向方向に直交する方向の平面上での相対的位置関係を変化させる移動機構を備え、その移動範囲内の任意の位置で周波数応答波形を測定可能とした構成を採用することができる(請求項6に記載の構成)。
【0017】そしてこの場合、具体的には、図12に例示するように、対向電極2の双方の電極221,222の電極面積を測定すべき圧電素板Wの面積より小さくし、移動機構81,82によって、圧電素板Wを対向電極2に対して、当該対向電極の対向方向に直交する方向の平面上で移動させるか、あるいは逆に双方の電極221,222を圧電素板Wに対して、同平面上で同時に移動させる構成を採用することができる。
【0018】また、圧電素板Wと対向電極2との相対的位置関係を変化させる他の具体的構成として、図13に例示するように、対向電極2の一方側の電極221を平板状とし、他方側の電極222の電極面積を、一方側の電極221の電極面積および測定すべき圧電素板Wの面積のいずれに対しても小さくし、移動機構83により、一方側の電極221の電極面に沿って、他方側の電極222を圧電素板Wに対して移動させるか、あるいは圧電素板W側を移動させる構成を採用することができる。
【0019】
【作用】請求項1に記載の構成においては、対向電極2の双方の電極21,22のそれぞれを複数の電極群に分割し、そのうち対向するものどうしの電極を一組とし、その各組を選択的に測定器本体1に接続可能としている。この構成によると、スイッチ群3によって選択された、互いに対向する比較的小面積の電極対の間で形成される電界に基づいて圧電素板Wが振動するため、圧電素板Wの局所的な領域での振動特性を測定することができ、圧電素板Wの正確な平行度並びに平坦度を求めることが可能となる。
【0020】このことは、互いに対向する電極群の複数組を同時に測定器本体1に接続して、圧電素板Wの複数の局所的領域における周波数応答波形を同時に正確に測定することを可能とし、そのような接続を可能とする構成の採用(請求項2に記載の構成)により、周波数選別効率を向上させることができる。
【0021】また、互いに対向する電極群21a,21b,21cと22a,22b,22cのうちのいずれか一方の電極群を、他方の電極群に対して独立的に接近離反させるためのギャップ調整機構4を設けることにより、圧電素板Wの平行度等の測定結果に応じて各電極と圧電素板Wとのギャップを調整することが可能となり、より正確な平行度,平坦度の測定が可能となる。
【0022】一方、対向電極2を双方の電極121,122の両側の電極121,122のそれぞれを、マトリクス状に配列された多数の微小電極e1 ,e,・・,eとし、それぞれの側の微小電極群を選択的に任意のものどうしを互いに導通させた状態で測定器本体1の測定端子に接続可能な構成を採用した請求項4に記載の構成では、各側の電極121,122の能動領域の形状・寸法(測定器本体1に接続されて能動かされる電極形状並びにその寸法)を、実質的に微小電極の集合として任意に選択することが可能となり、圧電素板Wの寸法や形状が変わっても、任意の領域における局所的な振動特性の測定が可能となる。
【0023】また、請求項6に記載の構成では、対向電極2の少なくともいずれか一方側の電極面積を、測定すべき圧電素板Wの面積よりも小さくし、対向電極2と圧電素板Wとの相対的位置関係を変化させることにより、圧電素板Wの振動測定領域の選択を連続的なものとし、圧電素板Wの任意方向への平行度並びに平坦度の測定が可能となる。
【0024】この場合、対向電極2の両側の電極221,222の電極面積の双方を圧電素板Wの面積よりも小さくして、その電極221,222を同時に、またはこれらに対して圧電素板W側を移動させることにより、圧電素板Wの任意の位置における局所的な領域での振動特性の測定が可能となる。
【0025】
【発明の実施の形態】図1は本発明の実施の形態の全体のシステム構成を示す模式図である。この例においてネットワークアナライザ等の測定器本体1は2チャンネルであり、2つのアウトプット端子と2つのインプット端子を備えている。
【0026】対向電極2の上側電極21および下側電極22は、それぞれが絶縁体Iによって相互に絶縁された3つの電極21a,21b,21c、および、22a,22b,22cに分割されている。これらの上下の電極群は、21aと22a、21bと22b、および21cと22cとが、互いに対向配置されている。周波数応答特性を測定すべき圧電素板Wは、この上下の電極群21a,21b,21c、および、22a,22b,22cの間に挿入される。
【0027】上側の電極群21a,21b,21cは、スイッチ群3を介して測定器本体1の2つのインプット端子に、また、下側の電極群22a,22b,22cは、同じくスイッチ群3を介して測定器本体の2つのアウトプット端子に接続されるようになっている。
【0028】スイッチ群3は実際にはトランジスタ等を用いた半導体スイッチであり、上側の電極群21a,21b,21cと下側の電極群22a,22b,22cのうち、互いに対向する上下の電極、例えば21aと22a、を一組として、任意の二組を測定器本体1の二組のインプット−アウトプット端子に選択的に接続することができる。この選択は、例えばキーボード等の入力手段(図示せず)の操作によって行われる。
【0029】以上の実施の形態によれば、圧電素板Wを対向電極2の間に挿入し、スイッチ群3によって電極21aと22a、および21cと22cを選択的に測定器本体1に接続すれば、圧電素板Wにおける、電極21aと22aで挟まれた領域と、電極21cと22cで挟まれた領域との、2つの領域での周波数応答波形を同時に測定することができる。
【0030】この実施の形態において特に注目すべき点は、上下の電極21および22の双方が比較的小さい電極面積を持ち、かつ、それぞれが互いに対向する電極群21a,21b,21cおよび22a,22b,22cに分割され、スイッチ群3によってその対向する組ごとに選択的に測定器本体1に接続される点であり、これにより、各組の電極対間に形成される電界の広がりが小さくなって、各組の電極対による振動特性測定対象領域が小さくなり、圧電素板W上での局所的な振動特性を把握することが可能となる。
【0031】このような局所的な振動特性の把握は、後述する圧電素板Wの平行度並びに平坦度の測定(推定)精度を良好なものとし、圧電素板Wの選別精度を向上させると同時に、その測定結果に基づいて圧電素板Wの研磨工程やラップ工程へのフィードバックをも可能とする。
【0032】そして、このような局所的な振動特性の測定が可能であるが故に、上記のように複数組の電極対による振動特性の同時測定を行っても、その各測定結果は相互に干渉することなく正確なものとなり、圧電素体Wの選別効率が向上する。
【0033】ここで、図1の例では上下の電極をそれぞれ3個に分割したが、本発明は上下それぞれ2個以上任意の複数個に分割することができ、また、3組以上の電極対による同時測定も可能である。
【0034】図2〜図6は、それぞれ、上下3組の電極対を同時にネットワークアナライザに接続して、各箇所における局所的な周波数応答波形を測定した例を示すグラフ(A)と、その測定箇所の説明図(B)であり、これらの図を参照しつつ、各位置での局所的な周波数応答特性と圧電素板Wの平行度並びに平坦度との関係について述べる。なお、これらの測定結果における測定条件は、上下の各分割電極のそれぞれの直径を1.5mm、上側の各電極と圧電素板Wの表面とのギャップを20μm(圧電素板Wが設計通りの厚さおよび形状であると想定してのギャップである)とした。
【0035】図2の測定結果においては、主振動の周波数が3ポイントともほぼ同じ値であり、これによって平行度が良好であると判る。また、この測定結果では、主振動の振幅レベルが3ポイントとも60dB以上あり、かつ、スプリアスSP1の周波数および振動レベルがほぼ同一であることから、平面度が良好であることが判る。
【0036】図3の測定結果においては、主振動の周波数が両端部分において互いに17kHzほど差があり、これにより、平行度が不良であり、また、一端部のポイント■の主振動周波数が最も小さく、他端部のポイント■の主振動周波数が最も大きいことから、ポイント■においてより厚い略楔状であることが判る。
【0037】図4の測定結果では、主振動の周波数差が6kHzほどあり、上記と図3の測定結果と同様に平行度不良があることが判るとともに、SP1の振幅レベルが位置によって大きく変わるため、平坦度不良であることが判る。
【0038】また、図5の測定結果においては、主振動の周波数が中央のポイント■で最も低く、圧電素板Wは凸状の平行度不良であることが判る。更に、図6の測定結果では、主振動とSP1の振幅レベルが逆転しているため、平坦度不良であることが判るとともに、各位置における主振動周波数の大小関係から、図3の測定結果と同様に全体として楔状の平行度不良が発生していることが判る。
【0039】このように、各ポイントにおける局所的な周波数特性の把握により、圧電素板Wの平行度並びに平坦度を高い精度のもとに知ることが可能であり、選別精度が向上すると同時に、これらの形状の把握に基づいて、圧電素板Wの製造工程へのフィードバックが可能となる。
【0040】ここで、図1の構成において、圧電素板Wの表面に対する上側の電極群21a,21b,21cのギャップは、周波数測定精度に影響を及ぼす。そこで、図7に斜視図で例示するすように、各電極21a,21b,21cをそれぞれ独立的に、対向する電極22a,22b,22c(図7において図示せず)に対して接近離反させるギャップ調整機構4を設けることにより、周波数特性の測定精度をより一層正確なものとすることができる。
【0041】この図7の例におけるギャップ調整機構4では、上側の各電極21a,21b,21cをフレーム40によって上下動自在に支承するとともに、これらの各電極21a,21b,21cにそれぞれナット41a,41b,41cを固着し、その各ナット41a,41b,41cに対してそれぞれネジ軸42a,42b,42cをねじ込んだ構造としている。そして、各ネジ軸42a,42b,42cを個別にサーボモータ43a,43b,43cに接続して独立的に回転駆動し得るように構成している。このような構成により、例えばサーボモータ43aを駆動することによって該当の電極21aのみを上下動させることが可能となる。
【0042】このようなギャップ調整機構4を備えることにより、例えば次のような使用が可能となる。まず各電極21a,21b,21cの上下位置を全て一定にした状態で、圧電素板Wの各電極位置における局所的な振動特性を測定する。その測定結果として、例えば電極21aの位置において最も主振動周波数が高く、よってこの位置における圧電素板Wの厚みが最も薄いことを知ったとき、サーボモータ43aを駆動して電極21aを下降させ、圧電素板Wとのギャップを縮めたうえで、その位置における振動特性を測定する。これにより、その位置での振動特性をより正確に知ることが可能となり、このようなデータの蓄積により、ひいては平行度の不良の程度を定量的に把握することも可能となる。
【0043】図8は本発明の他の実施の形態の全体のシステム構成を示す模式図で、図9はその上下の各電極121および122の電極面の正面図である。この例においては、対向電極2を構成する上下の電極121および122のそれぞれを、互いに絶縁された微小電極e,e,・・,eをマトリクス状に配列した構成とするとともに、その各電極121および122について、スイッチ群31および32によって、各微小電極e,e,・・,eの任意のものを選択的に導通させた状態で、それぞれ測定器本体1のインプット端子およびアウトプット端子に接続し得るように構成している。また、各スイッチ群31および32による微小電極の選択は、キーボード等の入力装置(図示せず)によって行うようになっている。
【0044】この図8および図9に示した実施の形態では、上下の電極121および122の各微小電極e,e,・・,eのうち、圧電素板W上で振動特性を測定したい領域に対応する領域内のものを、スイッチ群31および32によって選択的に導通させ、測定器本体1に接続する。すなわち、図10に例示するように、マトリクス状に配列された微小電極e,e,・・,eのうち、Aで示す領域のものを選択して相互に導通させた状態で測定器本体1に接続すると、その領域A内の微小電極群が実質的に1つの電極として機能し、このような微小電極の選択領域を、上下の電極121および122について互いに対向させることによって、圧電素板Wの領域Aに対応する領域での振動特性を測定することができる。
【0045】この図8,図9に示した実施の形態において特に注目すべき点は、スイッチ群31,32による微小電極群の選択的導通〜測定器本体1への接続領域を、微小電極群の配列ピッチを分解能として自由に選択することができ、もって対向電極2の実質的な面積並びに形状等を自由に変更させ得る点であり、これにより、振動特性の調査領域の自在性が得られるとともに、測定すべき圧電素板Wの形状・寸法が変わっても、それに応じて振動特性の測定領域を自由に変更することが可能となる。
【0046】なお、この図8,図9に示した実施の形態においても、微小電極群を導通させて測定器本体1に接続する領域を、上下それぞれ複数箇所とすることにより、一つの圧電素板Wの複数領域における局所的な振動特性を同時に測定することができる。
【0047】以上の各実施の形態において、対向電極2の上下の電極21および22、あるいは121および122と、測定すべき圧電素板Wとの水平方向への位置関係は、振動測定領域の設定の上で重要なファクターとなる。従って、対向電極2に対して圧電素板Wは常に一定の位置関係で配置された状態で、振動特性の測定に供される必要がある。
【0048】そこで、図11に例示するように、上記した各実施の形態における圧電素板Wの保持部に、その位置決め機構6を設けることが望ましい。この図11の例では、対向電極(図示せず)の対向方向(鉛直方向)をz方向とし、それに直交する方向への平面(水平面)をx−y平面としたとき、圧電素板Wの保持部に、x−y平面に沿って圧電素板Wの保持面61aを有し、かつ、その保持面61aでの圧電素板Wのx方向への基準となる当たり部61bと同じくy方向への基準となる当たり部61cを備えた保持部材61を設けている。そして、その保持面61aには下側の分割電極22またはマトリクス状電極122の各電極面を臨ませる。また、その保持部材61には、各当たり部材61bおよび61cのそれぞれに向けてバネ62,63で付勢された押圧部材64および65を設け、また、その押圧部材64および65を適当なアクチュエータ(図示せず)によって後退(付勢方向とは逆向き)させる得るように構成している。この構成において、各押圧部材64,65を後退させた状態で、圧電素板Wを保持面61a上に載せ、更にその状態で各押圧部材64,65をバネ62,63で付勢することにより、圧電素板Wの直交する二辺がそれぞれ当たり部材61bおよび61cに押しつけられ、x−y平面上で一定の位置に位置決めされ、対向電極に対して常に一定の位置関係で圧電素板Wがセットされる。
【0049】次に、本発明の更に他の実施の形態について述べる。図12はその全体のシステム構成を示す模式図である。この実施の形態においては、対向電極2を構成する上下の電極221および222をそれぞれ1個ずつとし、かつ、その電極面積を、測定すべき圧電素板Wの面積に比して小さくするとともに、これらを測定器本体1に接続している。
【0050】また、下側の電極222の前後左右の周囲は絶縁体Iで覆って、これらの上面が全体として水平面Hを形成するように配置している。圧電素板Wは保持部材7によって保持された状態で、その水平面H上に載せられる。そして、その保持部材7を、水平面H上で互いに直交する方向(xおよびy方向)に移動させるための移動機構81および82を設けている。なお、各移動機構81,82のアクチュエータとしては、サーボモータないしはステップモータ等を使用することができる。また、移動機構81および82は、例えばX−Yテーブル等の規制の移動機構を採用することができる。この場合、X−Yテーブル上に保持部材7を載せるとともに、そのテーブルの上面部分で、かつ、保持部材7の搭載位置の下方の部分に凹所を形成し、その凹所内に下側の電極222をテーブルとは非接触の状態で保持する等の構造を採用することができる。
【0051】この図12の実施の形態では、移動機構81および82の駆動により、水平素板Wの対向電極2に対する水平面上での位置を自由に変化させることができ、その任意の停止位置で測定器本体1により圧電素板Wの周波数応答波形を測定することができる。
【0052】この例においては、上下の電極221と222の電極面積が圧電素板Wの面積より小さいことから、圧電素板Wの所望領域が上下の電極221と222で挟まれるように移動機構81,82を駆動し、その状態で測定器本体1によって周波数応答波形を測定することにより、その領域での局所的な振動特性を測定することが可能となる。よってこの構成によれば、圧電素板W上での振動特性の測定領域の選択を、離散的なものではなく実質的に連続的に行うことが可能となり、局所的振動特性の測定領域を可及的に密にすることができる。
【0053】ここで、以上の例では圧電素板Wを対向電極2に対して移動させたが、対向電極2の上下の電極221および222を同時に、圧電素板Wに対して水平面上で移動させても、上記と全く同等の作用効果を奏することができる。
【0054】また、圧電素板Wと対向電極2の相対的位置関係を変化させる他の構成として、図13に例示する構成を採用することができる。この図13の構成では、対向電極2の下側の電極222を平板状の電極とし、その上に圧電素板Wを載せててこれら双方を装置フレーム等に固定する。また、上側電極221の電極面積を圧電素板Wの面積および下側の電極222の電極面積のいずれに対しても小さくしている。そして、下側の電極222および圧電素板Wに対して、上側の電極221を水平面上で互いに直交する方向(xおよびy方向)に移動させる移動機構83を設けている。
【0055】この図13の構成においては、上側の電極221を自由に移動させ、その任意の停止位置で測定器本体1により圧電素板Wの周波数応答波形を測定する。従ってこの例では、上側の電極221の停止位置に対応する領域での圧電素板Wの振動特性を測定することができ、図12に示した例に比して振動特性の測定対象領域は広くなってしまうものの、その測定領域の選択を実質的に連続的なものとすることができる点では、図12の例と同等の作用効果を奏することができる。
【0056】なお、以上の図12に示した実施の形態における圧電素板Wの保持部材7、あるいは図13に示した実施の形態において下側電極222に対して圧電素板Wを固定するための部材に関しても、圧電素板Wとこれらの部材との位置関係は正確に設定しておく必要があり、そのため、これらの部材に、前記した図11に例示した位置調決め構6を適用することが望ましい。
【0057】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、ネットワークアナライザ等の測定器本体に接続される対向電極の双方の電極について、それぞれ複数の電極群に分割し、その各電極群のうち、互いに対向するものを一組として、その各組を選択的に測定器本体に接続する構成を採用することにより、圧電素板の局所的な振動特性を個別に正確に測定することが可能となり、圧電素板の電極形成前の周波数選別精度および平行度および平坦度の選別精度を向上させることができる。また、対向電極の双方の電極を分割することによって、従来の提案に比して振動特性の測定対象領域をより局所化することが可能となったが故に、複数箇所における振動特性を同時に、かつ、個別に測定することが可能となり、上記の選別作業の能率を向上させることが可能となった。
【0058】また、測定器本体に接続される対向電極の双方の電極を、それぞれ多数の微小電極をマトリクス状に配列した構造とし、その双方の微小電極群について、任意の複数を選択的に導通させた状態で測定器本体に接続する構成を採用することにより、上記の効果に加えて、圧電素板上での振動特性の測定領域の形状および寸法の選択の自由度が増大し、また、特性を測定すべき圧電素板の寸法が変わっても、微小電極群の選択によって対処できる。
【0059】更に、測定器本体に接続される対向電極のうちの少なくとも一方の電極面積を、測定すべき圧電素板の面積よりも小さくするとともに、対向電極と圧電素板との相対的位置関係を変化させる移動機構を備えた構成を採用することにより、圧電素板上での振動特性の測定領域の位置選択を連続的なものとすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の全体のシステム構成を示す模式図
【図2】本発明を適用して、上下3組の電極対を同時にネットワークアナライザに接続し、圧電素板の各箇所における局所的な周波数応答波形を測定した例を示すグラフ(A)とその測定箇所の説明図(B)
【図3】同じく本発明を適用して、圧電素板の3箇所における局所的な周波数応答波形を測定した他の例を示すグラフ(A)とその測定箇所の説明図(B)
【図4】同じく本発明を適用して、圧電素板の3箇所における局所的な周波数応答波形を測定した更に他の例を示すグラフ(A)とその測定箇所の説明図(B)
【図5】同じく本発明を適用して、圧電素板の3箇所における局所的な周波数応答波形を測定した更にまた他の例を示すグラフ(A)とその測定箇所の説明図(B)
【図6】同じく本発明を適用して、圧電素板の3箇所における局所的な周波数応答波形を測定したまた更に他の例を示すグラフ(A)とその測定箇所の説明図(B)
【図7】本発明における分割された対向電極の各電極のギャップ調整機構の構成例を示す斜視図
【図8】本発明の他の実施の形態の全体のシステム構成を示す模式図
【図9】図8における上下の各電極121および122の電極面の正面図
【図10】図8,図9に示した実施の形態におけるマトリクス状の微小電極e1,1 ,e1,2 ・・i,j ・・n,m の選択の仕方の説明図
【図11】本発明の各実施の形態に適用可能な、圧電素板Wの位置決め機構の例を示す斜視図
【図12】本発明の更に他の実施の形態の全体のシステム構成を示す模式図
【図13】本発明の更にまた他の実施の形態の全体のシステム構成を示す模式図
【符号の説明】
1 測定器本体
2 対向電極
21,121,221 上側の電極
22,122,222 下側の電極
21a,21b,21c,22a,22b,22c 電極(分割電極)
3,31,32 スイッチ群
4 ギャップ調整機構
6 位置決め機構
7 保持部材
81,82,83 移動機構
e,e,・・,e 微小電極
W 圧電素板

【特許請求の範囲】
【請求項1】 所定の形状並びに寸法に仕上げられた状態の圧電素板の振動特性を求めるべく、測定器本体に接続された対向電極間に圧電素板を挿入して、その周波数応答波形を測定する装置において、対向電極の両側の電極のそれぞれが、互いに絶縁された複数の電極群からなり、その各側の個々の電極は、スイッチ群を介して互いに対向するものどうしを一組として、その任意の組が選択的に上記測定器本体に接続されるよう構成されていることを特徴とする圧電素板の波形測定装置。
【請求項2】 上記対向電極を構成する両側の電極群は、上記スイッチ群によって互いに対向する電極どうしの少なくとも2組が同時に上記測定器本体に接続され、測定器本体により圧電素板の少なくとも2箇所における周波数応答波形が同時に測定されることを特徴とする、請求項1に記載の圧電素板の波形測定装置。
【請求項3】 上記対向電極を構成する両側の電極群のうち、少なくとも一方の電極群の個々の電極を、それぞれ他方の電極に対して独立的に接近離反させるギャップ調整機構を備えていることを特徴とする、請求項1または2に記載の圧電素板のと波形測定装置。
【請求項4】 所定の形状並びに寸法に仕上げられた状態の圧電素板の振動特性を求めるべく、測定器本体に接続された対向電極間に圧電素板を挿入して、その周波数応答波形を測定する装置において、対向電極の両側の電極のそれぞれが、互いに絶縁され、かつ、マトリクス状に配列された多数の微小電極からなり、その各側の微小電極群のそれぞれは、スイッチ群によって選択的に任意のものどうしを互いに導通させた状態で、上記測定器本体の測定端子に接続されるよう構成されていることを特徴とする圧電素板の波形測定装置。
【請求項5】 測定すべき圧電素板を、上記対向電極の対向方向に直交する平面上で、当該対向電極に対して位置決めするための位置決め機構を備えていることを特徴とする、請求項1,2,3,または4に記載の圧電素板の波形測定装置。
【請求項6】 所定の形状並びに寸法に仕上げられた状態の圧電素板の振動特性を求めるべく、測定器本体に接続された対向電極間に圧電素板を挿入して、その周波数応答波形を測定する装置において、対向電極の少なくともいずれか一方の電極面積が測定すべき圧電素板の面積より小さく、かつ、その対向電極とその間に挿入された圧電素板との、対向電極の対向方向に直交する方向の平面上での相対的位置関係を変化させる移動機構を備え、その移動範囲内の任意の位置で周波数応答波形を測定し得るよう構成されていることを特徴とする圧電素板の波形測定装置。
【請求項7】 請求項6に記載の圧電素板の波形測定装置であって、上記対向電極の双方の電極の電極面積が測定すべき圧電素板の面積より小さく、上記移動機構は、双方の電極を同時に圧電素板に対して移動させる機構、または圧電基板を対向電極に対して移動させる機構であることを特徴とする圧電素板の波形測定装置。
【請求項8】 請求項6に記載の圧電素板の波形測定装置であって、上記対向電極の一方側の電極が平板状であり、他方側の電極はその対向面の面積が一方側の電極の対向面および測定すべき圧電素板の面積のいずれに対しても小さく、上記移動機構は、対向電極の上記一方側の電極面に沿って、上記他方側の電極を移動させる機構であることを特徴とする圧電素板の波形測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図5】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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