圧電膜付き基板、圧電膜付き基板の製造方法、及び成膜装置
【課題】膜厚の面内ばらつきを抑制でき、圧電特性に優れ、高品質な圧電膜付き基板、圧電膜付き基板の製造方法、及び成膜装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る圧電膜付き基板10は、平面視にて円形を有し、直径が4インチ以上の基板3と、前記基板3上に設けられた下地層と、前記下地層上に設けられたニオブ酸化物系ペロブスカイト構造を有する圧電材料を用いて構成される圧電膜1とを備え、前記圧電膜1が、0.3μm以上10μm以下の厚さを有し、前記圧電膜1の面内における前記圧電膜1の膜厚の標準偏差と前記膜厚の平均値とが、標準偏差/平均値≦0.03の関係式を満たす。
【解決手段】本発明に係る圧電膜付き基板10は、平面視にて円形を有し、直径が4インチ以上の基板3と、前記基板3上に設けられた下地層と、前記下地層上に設けられたニオブ酸化物系ペロブスカイト構造を有する圧電材料を用いて構成される圧電膜1とを備え、前記圧電膜1が、0.3μm以上10μm以下の厚さを有し、前記圧電膜1の面内における前記圧電膜1の膜厚の標準偏差と前記膜厚の平均値とが、標準偏差/平均値≦0.03の関係式を満たす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電膜付き基板、圧電膜付き基板の製造方法、及び成膜装置に関する。特に、本発明は、ペロブスカイト構造を有する圧電材料を用いて構成される圧電膜付き基板、圧電膜付き基板の製造方法、及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電体は、電圧印加し変形を生じさせるアクチュエータや、逆に素子の変形から発生する電圧をモニターするセンサなどの機能性電子部品として広く利用されている。アクチュエータやセンサ用途に利用されている圧電体としては、優れた圧電特性を有するPZTと呼ばれるPb(Zr1−xTix)O3系のペロブスカイト型強誘電体がこれまで広く用いられており、通常は、個々の元素からなる酸化物を焼結することで形成されている。
【0003】
また、各種の電子部品の小型化及び高性能化が進むにつれ、圧電素子においても小型化及び高性能化が強く求められるようになっている。しかしながら、従来からの圧電材料の製法である焼結法等により作製した圧電材料は、圧電材料の厚さが所定の厚さ、特に10μm以下の厚さになると、圧電材料を構成する結晶粒の大きさが圧電材料の厚さに近づき、その影響が無視できなくなる。そのため、圧電材料の特性のばらつき及び劣化が顕著になるので、圧電材料の特性のばらつき及び劣化を回避すべく、焼結法に代わる薄膜技術等を応用した圧電材料の製造法が研究されている。最近では、スパッタリング法で形成したPZT薄膜が高精細高速インクジェットプリンタのヘッド用アクチュエータとして実用化されている。
【0004】
例えば、電極層上に形成する圧電膜において、(NaxKy)NbO3(0<x<1、0<y<1、x+y=1)で表される第1アルカリニオブ酸化物膜と、その第1アルカリニオブ酸化物膜上に形成され、(NaxKyLiz)NbO3(0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1)で表される第2アルカリニオブ酸化物膜とからなる圧電膜が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−317853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、薄膜形成によって、圧電膜を成膜した場合、基板径が大きくなると、同一基板の面内、特に基板の中心から径方向への特性ばらつき分布が大きくなる可能性がある。このような同一基板の面内に特性分布があると、素子化したときの基板1枚からの素子取得率が低下し、コストの面で大きな問題になる。その中で、膜の厚さ分布の均一性は重要である。膜厚は電界(kV/cm)を一定にして、デバイスに電界を印加すれば、膜厚と圧電特性とは、直接影響のない因子になるが、通常のデバイスは電圧(V)を一定にして駆動するため、膜厚が異なる場合、出力される変位量が変わってしまう。また、圧電膜をセンサとして用いた場合も、膜厚が異なると、変位量に対して出力される電圧が変わってしまう。すなわち、感度が変化してしまうため、校正が必要となってしまう。
【0007】
更に、デバイス作製のために圧電膜をエッチングによって任意の形状に加工する場合、膜厚の面内分布があると、面内にエッチング残りが発生して不良の原因になったり、形状が安定しないなどの問題がある。
【0008】
よって、設計膜厚に対して、できるだけ、膜厚ばらつきの少ない膜が必要となるが、これも、基板径が大きくなると基板の中心から径方向へ分布が大きくなる可能性がある。更に、PZTから成る圧電焼結体や圧電膜は、鉛を60〜70重量%程度含有しているので、生態学的見地及び公害防止の面から好ましくない。そこで環境への配慮から鉛を含有しない圧電体の開発が望まれている。現在、様々な非鉛圧電材料が研究されているが、その中にニオブ酸カリウムナトリウム(一般式:(K1−xNax)NbO3(0<x<1))がある。このニオブ酸カリウムナトリウムは、ペロブスカイト構造を有する材料であり、非鉛の材料としては比較的良好な圧電特性を示すため、非鉛圧電材料の有力な候補として期待されている。ニオブ酸カリウムナトリウム薄膜も、スパッタリング法等の成膜方法で、MgO基板、SrTiO3基板、Si基板等の基板上への成膜が試されている。
【0009】
しかし、これまで基板径が75mm以上のニオブ酸カリウムナトリウム薄膜をスパッタリング法で成膜する場合、原料となるターゲットを基板の対向に設置し、それぞれ静止した状態で成膜する静止成膜により膜を付けていた。この場合、膜厚の「標準偏差/平均値」を0.05以下にするためには、基板の直径Dsに対して、ターゲット直径DtがDt/Ds=2〜3となるような大きいターゲットが必要で、更にばらつきを抑えたい場合は、よりターゲットを大きくする必要があった。しかし、ニオブ酸カリウムナトリウムのターゲットは、大きなターゲットを用いて、成膜速度を稼ぐために高周波電源の出力を上げていくと、熱伝導率が悪く、十分な放熱ができないため、割れてしまう。そして、割れ目から異種元素(ターゲットの下にある基材)が混入してしまう。
【0010】
一方で、ターゲットが割れないように、出力を抑えながら成膜すると、成膜速度が全く出ず、スループットが大幅に低下してしまう。しかも、スパッタリング法は、真空中でなければ、成膜できないため、一度の処理枚数が少ないと、真空引き時間がスループットを律速するようになる。しかし、ポンプの能力向上にも限界があり、静止成膜の場合、コスト低減のためにスループットを上げたい場合、成膜速度を上げる以外に大きく改善する方法がなく、製品化のためには大きな問題になっている。
【0011】
したがって、本発明の目的は、膜厚の面内ばらつきを抑制でき、圧電特性に優れ、高品質な圧電膜付き基板、圧電膜付き基板の製造方法、及び成膜装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明は、上記目的を達成するため、平面視にて円形を有し、直径が4インチ以上の基板と、前記基板上に設けられた下地層と、前記下地層上に設けられた非鉛のニオブ酸化物系ペロブスカイト構造を有する圧電材料を用いて構成される圧電膜とを備え、前記圧電膜が、0.3μm以上10μm以下の厚さを有し、前記圧電膜の面内における前記圧電膜の膜厚の標準偏差と前記膜厚の平均値とが、標準偏差/平均値≦0.03の関係式を満たす圧電膜付き基板が提供される。
【0013】
(2)また、上記圧電膜付き基板において、前記圧電膜が、一般式(K1−xNax)NbO3(0<x<1)で表されるニオブ酸カリウムナトリウム(KNN)と、0.06μg/cm2以上0.15μg/cm2以下のArとを含んでもよい。
【0014】
(3)また、上記圧電膜付き基板において、前記領域とは異なる前記圧電膜の前記面内の圧電定数d31の標準偏差と圧電定数d31の平均値とが、(圧電定数d31の標準偏差)/(圧電定数d31の平均値)≦0.05の関係式を満たすこともできる。
【0015】
(4)また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、Arプラズマを用いて圧電膜を成膜する成膜装置内に基板を設置する基板設置工程と、前記基板上に下地層を成膜する下地層成膜工程と、前記下地層上に圧電膜を成膜する圧電膜成膜工程とを備え、前記基板が、平面視にて円形状、又は円形の一部にオリエンテーションフラットを有する形状を有し、前記成膜装置が、前記圧電膜の原料であり、平面視にて円形状のターゲットを前記成膜装置内に有し、前記基板設置工程が、前記基板を前記ターゲットに投影した場合に、前記基板の中心と前記ターゲットの中心とが異なる位置になる配置で前記基板を前記成膜装置内に設置し、前記Arプラズマに晒されることにより前記ターゲットから放出される前記原料のスパッタ粒子により成膜される成膜領域の最外周から前記基板がはみ出している距離をXとし、前記基板の直径をDsとした場合に、X≦0.3Dsの関係式を満たす圧電膜付き基板の製造方法が提供される。
【0016】
(5)また、上記圧電膜付き基板の製造方法において、前記スパッタ粒子により成膜される領域が平面視にて直径Dtの円形状で、2≦Dt/Ds≦3の関係式を満たし、前記下地層成膜工程又は前記圧電膜成膜工程が、複数の前記基板を自公転させながら成膜を実施することもできる。
【0017】
(6)また、上記圧電膜付き基板の製造方法において、前記スパッタ粒子により成膜される領域が平面視にて直径Dtの円形状で、1≦Dt/Ds≦2の関係式を満たし、前記下地層成膜工程又は前記圧電膜成膜工程が、1枚の前記基板を自転させながら成膜を実施することもできる。
【0018】
(7)また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、ガス導入口、及び排気装置に連結されるガス排出口を有する真空チャンバと、前記真空チャンバ内に設けられ、基板を保持可能な基板保持部と、前記真空チャンバ内に設けられ、基板上に成膜する膜の原料であるターゲットを設置可能なターゲット設置部と、前記基板保持部と前記ターゲット設置部との間に電圧を印加可能な高圧電源とを備え、前記基板保持部が、前記基板を前記ターゲットに投影した場合に、前記基板保持部が保持可能な前記基板の中心と前記ターゲット設置部に設置可能な前記ターゲットの中心とが異なる位置になる配置で前記基板を保持可能である成膜装置が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る圧電膜付き基板、圧電膜付き基板の製造方法、及び成膜装置によれば、膜厚の面内ばらつきを抑制でき、圧電特性に優れ、高品質な圧電膜付き基板、圧電膜付き基板の製造方法、及び成膜装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る圧電膜付き基板の縦断面図である。
【図2】本実施の形態に係る圧電膜付き基板の製造方法の概略図である。
【図3】従来例(比較例1)の圧電膜付き基板の製造方法の概略図である。
【図4】実施例1に係る圧電膜付き基板を作製する際の圧電膜付き基板の配置図である。
【図5】実施例2に係る圧電膜付き基板を作製する際の圧電膜付き基板の配置図である。
【図6】実施例3に係る圧電膜付き基板を作製する際の圧電膜付き基板の配置図である。
【図7】実施例に係る圧電膜付き基板の膜厚測定位置の配置図である。
【図8】基板中心からX方向の距離における成膜速度を示す図である。
【図9】基板中心からY方向の距離における成膜速度を示す図である。
【図10】基板中心からの距離と圧電定数との関係を示す図である。
【図11】成膜装置の概略の構成を示す図である。
【図12】圧電特性評価方法の概略を示し、(a)は屈曲動作前の状態を示す図、(b)は屈曲動作後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[実施の形態]
(圧電膜1の構成)
図1は、本発明の実施の形態に係る圧電膜付き基板の縦断面の概要を示す。
【0022】
本実施の形態に係る圧電膜付き基板10は、一方の表面に酸化膜(図示しない)を有する基板3と、密着層(図示しない)を介して基板3上(すなわち、酸化膜の表面)に設けられる下地層としての下部電極2と、下部電極2上に設けられるニオブ酸化物系ペロブスカイト構造を有する圧電材料から主として構成される圧電膜1とを備える。なお、圧電膜1の表面(すなわち、圧電膜1の下部電極2と反対側の表面)の一部に上部電極を設けることもできる。
【0023】
圧電膜1は、一般式(K1−xNax)NbO3(0<x<1)で表されるニオブ酸カリウムナトリウム材料から主として形成される。また、圧電膜1は、0.3μm以上10μm以下の厚さを有して形成される。ここで、圧電膜1の所定の面内における圧電膜1の膜厚の標準偏差と膜厚の平均値とが、標準偏差/平均値≦0.03の関係式を満たしている。また、圧電膜1の所定の面内の圧電定数d31の標準偏差と圧電定数d31の平均値とが、(圧電定数d31の標準偏差)/(圧電定数d31の平均値)≦0.05の関係式を満たすことが好ましい。更に、圧電膜1は、0.06μg/cm2以上0.15μg/cm2以下の不活性ガス元素(例えば、Ar)を含有して形成される。
【0024】
なお、圧電膜1の「所定の面内」とは、平面視にて外周端から基板3の最大径の5%の距離まで内側に入った領域とは異なる面内である。一例として、基板3は、平面視にて円形状を有する(一例として、直径は4インチ以上である。)。そして、基板3の外周端から基板直径に対して5%の幅、すなわち、基板3の外周端から基板3の中心に向けて5mmの領域を除く面内の圧電膜1の膜厚の標準偏差と膜厚の平均値とが、標準偏差/平均値≦0.03を満たし、圧電定数d31の標準偏差と圧電定数d31の平均値とが、(圧電定数d31の標準偏差)/(圧電定数d31の平均値)≦0.05を満たす。
【0025】
基板3としては、Si基板、MgO基板、ZnO基板、SrTiO3基板、SrRuO3基板、ガラス基板、石英ガラス基板、GaAs基板、GaN基板、サファイア基板、Ge基板、又はステンレス基板等を用いることができる。本実施の形態においては、価格が低廉で、かつ、工業的に使用の実績が豊富なSi基板、例えば、(001)面に酸化膜としての熱酸化膜を有するSi基板を用いることが好ましい。なお、Si基板の面方位は(001)面に限られず、他の面方位を有するSi基板、熱酸化膜を有さないSi基板、SOI基板を用いることもできる。本実施の形態は、基板3の外径が、75mm以上、90mm以上又は100mm以上において特に有効である。
【0026】
酸化膜としては、基板3がSiから形成される場合、熱酸化により基板3の表面に形成される熱酸化膜を用いることができる。また、Chemical Vapor Deposition(CVD)法を用い、基板3の表面にSi酸化膜を形成することにより、酸化膜を形成することもできる。なお、Siを除く他の材料から基板3を形成する場合、基板3の表面に酸化膜を設けずに、石英ガラス基板、MgO基板、SrTiO3基板、SrRuO3基板等の酸化物からなる基板上に、Pt等からなる下部電極2を直接、形成することもできる。
【0027】
密着層としては、金属層、例えば、Ti層を用いることができる。また、密着層としては、Ta層を用いることもできる。更に、密着層を省略することもできる。
【0028】
下部電極2は、Pt若しくはPtを含む合金から形成することができる。また、下部電極2は、Pt若しくはPtを含む合金から形成される電極層と、導電性材料からなる電極層とを含む積層構造を有して形成することもできる。そして、下部電極2は、Au、Ru、若しくはIr等の金属材料、又はSrRuO3、LaNiO3等の金属酸化物から形成することもできる。
【0029】
圧電膜1は、上述のとおり、(K1−xNax)NbO3(0<x<1)で表されるニオブ酸カリウムナトリウム系材料から形成される。なお、圧電膜1を構成するニオブ酸カリウムナトリウムに、Li、Ta、Sb、Ca、Cu、Ba、及びTi等からなる群から選択される元素を5原子数%の濃度で添加することもできる。
【0030】
また、圧電膜1の歪は、圧電膜1中に含まれる不活性ガス元素(例えば、Ar)の含有量の変化に応じて発生する。例えば、圧電膜1中の不活性ガス元素の含有量の変化に応じ、圧電膜1の内部に、圧縮応力又は引張応力が発生する。また、圧電膜1中の不活性ガス元素の含有量を制御し、圧電膜1に応力が発生しない状態、すなわち無歪の状態の圧電膜1を形成することもできる。
【0031】
上部電極は、Pt若しくはPtを含む合金から形成することができる。また、上部電極は、Pt若しくはPtを含む合金から形成される電極層と、導電性材料からなる電極層とを含む積層構造を有して形成することもできる。更に、上部電極は、Ru、Ir、Sn、及びInからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む金属層から形成することもできる。
【0032】
このような構成を備える圧電膜付き基板10は、高い圧電定数を有する。また、圧電膜付き基板10を所定の形状に形成し、圧電膜付き基板10に電圧を印加する電圧印加部を圧電膜付き基板10に設けることにより、圧電膜デバイスを実現できる。更に、圧電膜付き基板10を所定の形状に形成し、圧電膜付き基板10に印加される電圧を検出する電圧検出部を圧電膜付き基板10に設けた圧電膜デバイスを実現することもできる。圧電膜デバイスは、例えば、アクチュエータ、センサ等である。
【0033】
(圧電膜付き基板10の製造方法)
図2は、本実施の形態に係る圧電膜付き基板の製造方法の概略を示す。また、図3は、従来の圧電膜付き基板の製造方法の概略を示す。
【0034】
本実施の形態に係る圧電膜付き基板10は、基板4に圧電膜1を、RFスパッタリング法、イオンビームスパッタ法、又はCVD法等を用いて成膜することで作製することができる。一例として、Arプラズマを用いたスパッタリング法について、以下、説明する。
【0035】
まず、本実施の形態に係る圧電膜付き基板10の製造方法は、Arプラズマを用いて圧電膜1を成膜する成膜装置内に基板4を設置する基板設置工程と、基板4上に下部電極2を成膜する下地層成膜工程と、下部電極2上に圧電膜1を成膜する圧電膜成膜工程とを備える。なお、圧電膜成膜工程における基板4面内の平均成膜速度は、成膜時における圧力、ターゲットに印加する電圧等を調整し、0.7μm/h以上に制御する。
【0036】
ここで、基板4は、平面視にて円形状、又は円形の一部にオリエンテーションフラットを有する形状を有すると共に、成膜装置は、圧電膜1の原料であり、平面視にて円形状のターゲット5を成膜装置内に有する。そして、基板設置工程は、基板4をターゲット5に投影した場合に、基板4の中心とターゲット5の中心とが異なる位置になる配置で基板4を成膜装置内に設置する。更に、Arプラズマに晒されることによりターゲット5から放出される原料のスパッタ粒子により成膜される有効領域(成膜領域)(直径Dt)の最外周から基板4がはみ出している距離をXとし、基板4の直径をDsとした場合に、X≦0.3Dsの関係式を満たすように、基板4とターゲット5とを配置する。
【0037】
すなわち、圧電膜1が成膜される基板4が円形、又は円形の一部にオリエンテーションフラットを有する形状であり、かつ、成膜装置に設置されるターゲット5が円形である。そして、従来の製造方法を示す図3に対して、基板4の中心がターゲット5の中心から偏心して配置される(つまり、平面視にて双方の中心が異なる位置にする)。更に、ターゲットのArプラズマに晒され、原料のスパッタ粒子により成膜される有効領域の最外周から、基板がはみ出している距離をXとした場合に、Xが、基板の直径Dsに対してX≦0.3Dsに設定される。
【0038】
また、スパッタ粒子による成膜領域が平面視にて直径Dtの円形状である場合に、2≦Dt/Ds≦3の関係式を満たし、下地層成膜工程又は圧電膜成膜工程が、複数の基板4を自公転させながら成膜を実施することもできる。
【0039】
すなわち、ターゲットのArプラズマに晒されて原料のスパッタ粒子により成膜される有効領域の直径Dtと基板の直径Dsとが、2≦Dt/Ds≦3の条件となる範囲で、図4のように基板4を配置する。これにより、成膜時に基板4を自転及び公転させながら複数枚の基板4を作製することがでる。ここで、ターゲットの有効領域Dtと基板径Dsとの比Dt/Dsは、Dt/Ds<2の範囲では、ターゲットの有効領域内に複数の基板及びその回転機構をX≦0.3Dsとなるように配置することが困難になる。また、Dt/Ds>3の領域では、ターゲット中心部に成膜に全く寄与しない無駄な領域が大きくなってしまい、ターゲットを大きくするメリットが損なわれてしまう。したがって、複数枚の基板を作製する場合におけるDt/Dsの最適の範囲は2≦Dt/Ds≦3にすることが好ましい。
【0040】
また、スパッタ粒子により成膜される領域が平面視にて直径Dtの円形状である場合に、1≦Dt/Ds≦2の関係式を満たし、下地層成膜工程又は圧電膜成膜工程が、1枚の基板4を自転させながら成膜を実施することもできる。
【0041】
すなわち、ターゲットのArプラズマに晒されて原料のスパッタ粒子により成膜される有効領域の直径Dtと基板の直径Dsとが、1≦Dt/Ds≦2の条件となる範囲で、成膜時に基板を自転しながら1枚の基板を作製することができる。ターゲット有効領域Dtと基板径Dsとの比Dt/Dsは、Ds<1の範囲では、X≦0.3Ds及び成膜有効領域の確保が難しくなり、膜厚ばらつき及び成膜速度が所望の範囲に入らなくなる。また、Dt/Ds>2の領域では、ターゲットの大半の部分の成膜に実質的に寄与しない領域が大きくなってしまい、ターゲットを大きくするメリットが損なわれてしまう。したがって、1枚の基板を作製する場合におけるDt/Dsの最適の範囲は1≦Dt/Ds≦2にすることが好ましい。
【0042】
(成膜装置の構成)
図11は、本実施の形態に係る成膜装置の概略の構成を示す。
また、本実施の形態に係る成膜装置は、以下の構成を備える。
【0043】
成膜装置50は、ガス供給部59Aに接続されたガス導入口59a、及びガス排気部59Bに連結されるガス排出口59bを有する真空チャンバ51と、真空チャンバ51内に設けられ、基板4を保持可能(つまり、基板4は、基板保持部58に保持されることが予定されている)な基板保持部58と、真空チャンバ51内に設けられ、基板4上に成膜する膜の原料であるターゲット5を設置可能(つまり、ターゲット5は、ターゲット設置部53に設置することが予定されている)なターゲット設置部53と、カソード52とターゲット設置部53との間に高周波電圧を印加可能なRF電源部54とを備える。そして、基板保持部58は、基板4をターゲット5に投影した場合に、基板保持部58が保持可能な基板4の中心とターゲット設置部53に設置可能なターゲット5の中心とが異なる位置になる配置で基板4を保持可能に設けられる。基板4は、基板保持部58の中心線58aを中心にモータ等による自転駆動部57によって回転可能に設けられている。自転駆動部57は、テーブル56の中心線(ターゲット5の中心とほぼ一致)56aからずれた位置に配置され、テーブル56は、中心線56aを中心にモータ等による公転駆動部55によって回転するように構成されている。制御部60は、基板4がターゲット5の中心の周りを自転しながら公転するように公転駆動部55及び自転駆動部57を制御する。なお、1つのモータでギヤを介して基板4を公転及び自転させる機構を採用してもよい。
【0044】
(実施の形態の効果)
本実施の形態に係る圧電膜付き基板10によれば、圧電膜付き基板10の外周5mmを除く面内の膜厚の「標準偏差/平均値」を0.03以下、面内の印可電圧一定時の圧電定数d31の「標準偏差/平均値」を0.05以下にすることで、従来の静止成膜での膜厚の面内ばらつきに比べて半分以下、圧電特性も同等以上の高品質な圧電膜付き基板10を提供することができる。
【0045】
また、本実施の形態に係る圧電膜付き基板の製造方法によれば、品質向上以外にも、従来よりも小さいターゲットの使用が可能となり、ターゲットの割れ等のリスクを軽減できる。更に、多数枚の同時成膜が可能となり、従来の製造方法に比べて、スループット向上が実現でき、より低価格な圧電膜付き基板及びその基板を用いた圧電体素子を供給することが可能となる。
【0046】
また、Arガス等の不活性ガスは、圧電膜1(つまり、KNN薄膜)との間で固溶体を形成せず、圧電膜1中に単独の原子として存在する。したがって、不活性ガスが混入する前の圧電膜1の組成等自体はほとんど変質せず、圧電膜1を構成する元素の原子半径とは異なる原子半径を有する不活性ガス原子が圧電膜1を構成する材料の結晶格子間に侵入するか、あるいは圧電膜1を構成する元素が不活性ガス原子に置換される。これにより、圧電膜1において歪(又は内部応力)の発生を抑制でき、d31のばらつきを制御できる。
【0047】
また、本実施の形態に係る圧電膜付き基板10の製造方法によれば、成膜時のプラズマ密度の分布(すなわち、成膜速度分布)やターゲットの不均一等を回転によってキャンセルできるので、従来よりも小さい面積のターゲットでも、膜厚や圧電特性の面内ばらつきがより小さい圧電膜付き基板10を作製することができる。また、ターゲットのArプラズマに晒されて原料のスパッタ粒子により成膜される有効領域の直径Dtと基板の直径Dsとが、2≦Dt/Ds≦3の条件になる範囲では複数枚の基板を同時に成膜できるので、スループットも大幅に改善することができる。
【実施例1】
【0048】
実施例1〜3及び比較例1〜2においてはそれぞれ、Si基板上に所定の条件で膜厚3μmのKNN薄膜を形成することにより圧電膜付き基板を作製した。そして、作製した圧電膜付き基板の圧電特性を評価した。
【0049】
(KNN薄膜の成膜)
まず、本実施の形態に係る圧電膜付き基板10の製造方法を用い、圧電膜付き基板を作製した。基板には両面ミラーの熱酸化膜付きSi基板(具体的には、(100)面方位を有し、厚さが0.525mmで、熱酸化膜厚さが200nmで、直径が100mmのSi基板)を用いた。
【0050】
まず、Si基板上にRFマグネトロンスパッタリング法で、Ti密着層(膜厚2nm)、Pt下部電極((111)面優先配向、膜厚200nm)を形成した。Ti密着層及びPt下部電極は、Si基板の温度を100℃以上350℃以下に加熱し、放電パワーを200Wに、導入ガスをAr雰囲気に、圧力を2.5Paに制御した上で、成膜時間を1分以上3分以下に制御して成膜した。
【0051】
次に、Pt下部電極上に、RFマグネトロンスパッタリング法で、3μm厚の(K1−xNax)NbO3薄膜を成膜した。(K1−xNx)NbO3圧電膜の成膜に用いたターゲットは、直径が4インチ、9インチ、又は12インチであり、Na/(K+Na)=0.65の(K1−xNax)NbO3焼結体から構成されたターゲットを用いた。そして、基板温度を500℃に、導入ガスをAr雰囲気に、圧力を0.3Paにそれぞれ設定して、成膜面を鉛直方向下向きにして成膜した。ただし、放電パワーについては、4インチのターゲットの場合に300W、9インチのターゲットの場合に800W、12インチのターゲットの場合に1800Wに設定した。そして、KNN膜のスパッタ成膜時間は、膜厚が略3μmになるようにそれぞれ調整した。このような条件で、X=30mm(X=100×0.3)の位置に、基板を図4、図5及び図6のように設置し、実施例1〜4に係る圧電膜付き基板を作製した。
【0052】
(比較例1)
一方、比較例として、同様のPt下部電極上に、直径9.3インチ(φ4インチの静止成膜用のターゲット)で、Na/(K+Na)=0.65の(K1−xNax)NbO3焼結体をターゲットに用い、基板温度を500℃に、放電パワーを800Wに、導入ガスをArに、圧力を0.3Paにそれぞれ制御して、成膜面を鉛直方向下向きに成膜した。そして、KNN膜のスパッタ成膜時間は、膜厚が略3μmになるように調整した。このような条件で、基板を図3のように設置し、比較例1に係る圧電膜付き基板を作製した。
【0053】
(比較例2)
更に、同様のPt下部電極上に、直径12インチ、Na/(K+Na)=0.65の(K1−xNax)NbO3焼結体をターゲットに用い、基板温度を500℃に、放電パワーを1800Wに、導入ガスをArに、圧力を0.3Paにそれぞれ制御して、成膜面を鉛直方向下向きに成膜した。KNN膜のスパッタ成膜時間は、膜厚が略3μmになるように調整した。このような条件で、X=35mmの位置に基板を図6のように設置し、比較例2に係る圧電膜付き基板を作製した。
【0054】
(膜厚ばらつき評価)
次に、膜厚の面内ばらつきを評価するために、Filmetrics社製の薄膜測定装置F20を用い、光学式の非接触厚さ測定で膜厚を測定した。この測定装置は、透明膜の厚さを、薄膜の表面からの反射と裏面(下地電極表面)からの反射とを解析することで算出する。また、本装置の測定結果は、薄膜断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で測定(SEM条件:10000倍、5kV)した厚さと比較して、校正した。具体的には、厚さ測定を図7に示す9点実施し、その標準偏差及び平均値を計算し、膜厚の面内ばらつきの大きさとして「標準偏差/平均値」を計算した。
【0055】
(圧電特性評価)
次に、圧電定数d31を評価するために変位量を測定する。図12は、圧電特性評価方法を示す概略図である。実施例及び比較例に係る圧電膜付き基板の上に白金上部電極(膜厚0.02μm)18をRFマグネトロンスパッタリング法で形成して、長さが20mmで幅が2.5mmの短冊形に切り出し、(K,Na)NbO3薄膜を含む圧電素子を作製した。次に、圧電素子の長手方向の端をクランプ20で固定することで簡易的なユニモルフカンチレバーを構成した。この状態で上下両電極間の(K,Na)NbO3薄膜に電圧を印加し、(K,Na)NbO3薄膜を伸縮させることでカンチレバー全体を屈曲動作させ、レバーの先端を動作させた。そして、レバーの先端の変位量300をレーザードップラ変位計30で測定した。
【0056】
圧電定数d31は、カンチレバー先端の変位量、カンチレバー長さ、基板の厚さ、薄膜の厚さ、ヤング率、及び印加電圧から算出することができる。実施例では、印可電圧が一定時における圧電定数のばらつきに注目したので、印可電圧を20Vで一定にした。更に、外周5mmを除く領域から60本の短冊形を切り出し、それらの圧電定数d31の標準偏差及び平均値を計算し、圧電定数d31の面内ばらつきの大きさとして「標準偏差/平均値」を計算した。また、圧電定数d31の算出する際に用いるKNN薄膜のヤング率としては、104GPaを用いた。
【0057】
このようにして作製した実施例1〜3に係る圧電膜付き基板は、表1に示すように、膜厚及び圧電定数の面内ばらつきが所定の範囲に入っており、従来の静止成膜である比較例2に比べ(表2を参照)、膜厚の面内ばらつきで半分以下、圧電定数の面内ばらつきが同等以上に改善された。また、成膜速度に関しては、従来の静止成膜である比較例2に比べ、30〜40%程度低下したが、実施例1及び実施例3のように複数枚を同時成膜できる場合には、1枚当たりのスループットは実質的に高くなり、より低コストでの製造が可能となることが示された。なお、表1におけるターゲット有効径とは、ターゲットを平面視したときに視認される領域、すなわち、ターゲット設置部に設置されているターゲットをターゲット設置部に固定する冶具等により覆われている領域を除く、外部に露出しているターゲットの領域である。
【0058】
一方、基板はみ出し量Xを30mmから35mmと大きくした比較例1では、ターゲット外周部にある成膜速度が急激に低下する部分に基板中心部が重なってしまい、実施例1〜3では、凸形状であった膜厚の面内分布が、中心が凹むようなM型の分布となった。そのため、膜厚の面内ばらつきの悪化及び平均成膜速度の低下が生じた。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
図8は、基板中心からX方向の距離における成膜速度を示し、図9は、基板中心からY方向の距離における成膜速度を示す。また、図10は、基板中心からの距離と圧電定数との関係を示す。基板の中心とターゲットの中心が一致している場合(比較例2)では、膜厚が凸形状の分布になる。これを実施例に示すようにX≦0.3Dsを満たすような配置にすることで、径方向に平坦な分布にすることができる。しかし、Xが0.3Dsよりも大きくなると、比較例1のように中心及び外周の成膜速度が低下し始め、径方向にM字形の分布となり、膜厚分布が悪化していく。また、同じ電圧を印加したときに、膜厚が薄い方が圧電特性が大きくなる傾向があり、図10に示すように、膜厚分布と圧電特性に相関がみられる。圧電特性の面内分布を確保するには、膜厚分布のばらつきを小さくする必要がある。
【0062】
以上、本発明の実施の形態及び実施例を説明したが、上記に記載した実施の形態及び実施例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態及び実施例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0063】
1…圧電膜、2…下部電極、3…基板、4…基板、5…ターゲット、10…圧電膜付き基板、18…上部電極、20…クランプ、30…レーザードップラ変位計、50…成膜装置、51…真空チャンバ、53…ターゲット設置部、54…RF電源部、55…公転駆動部、56…テーブル、56a…テーブルの中心線、57…自転駆動部、58…基板保持部、58a…基板保持部の中心線、59A…ガス供給部、59a…ガス導入口、59B…ガス排気部、59b…ガス排出口、60…制御部、300…変位量
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電膜付き基板、圧電膜付き基板の製造方法、及び成膜装置に関する。特に、本発明は、ペロブスカイト構造を有する圧電材料を用いて構成される圧電膜付き基板、圧電膜付き基板の製造方法、及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電体は、電圧印加し変形を生じさせるアクチュエータや、逆に素子の変形から発生する電圧をモニターするセンサなどの機能性電子部品として広く利用されている。アクチュエータやセンサ用途に利用されている圧電体としては、優れた圧電特性を有するPZTと呼ばれるPb(Zr1−xTix)O3系のペロブスカイト型強誘電体がこれまで広く用いられており、通常は、個々の元素からなる酸化物を焼結することで形成されている。
【0003】
また、各種の電子部品の小型化及び高性能化が進むにつれ、圧電素子においても小型化及び高性能化が強く求められるようになっている。しかしながら、従来からの圧電材料の製法である焼結法等により作製した圧電材料は、圧電材料の厚さが所定の厚さ、特に10μm以下の厚さになると、圧電材料を構成する結晶粒の大きさが圧電材料の厚さに近づき、その影響が無視できなくなる。そのため、圧電材料の特性のばらつき及び劣化が顕著になるので、圧電材料の特性のばらつき及び劣化を回避すべく、焼結法に代わる薄膜技術等を応用した圧電材料の製造法が研究されている。最近では、スパッタリング法で形成したPZT薄膜が高精細高速インクジェットプリンタのヘッド用アクチュエータとして実用化されている。
【0004】
例えば、電極層上に形成する圧電膜において、(NaxKy)NbO3(0<x<1、0<y<1、x+y=1)で表される第1アルカリニオブ酸化物膜と、その第1アルカリニオブ酸化物膜上に形成され、(NaxKyLiz)NbO3(0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1)で表される第2アルカリニオブ酸化物膜とからなる圧電膜が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−317853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、薄膜形成によって、圧電膜を成膜した場合、基板径が大きくなると、同一基板の面内、特に基板の中心から径方向への特性ばらつき分布が大きくなる可能性がある。このような同一基板の面内に特性分布があると、素子化したときの基板1枚からの素子取得率が低下し、コストの面で大きな問題になる。その中で、膜の厚さ分布の均一性は重要である。膜厚は電界(kV/cm)を一定にして、デバイスに電界を印加すれば、膜厚と圧電特性とは、直接影響のない因子になるが、通常のデバイスは電圧(V)を一定にして駆動するため、膜厚が異なる場合、出力される変位量が変わってしまう。また、圧電膜をセンサとして用いた場合も、膜厚が異なると、変位量に対して出力される電圧が変わってしまう。すなわち、感度が変化してしまうため、校正が必要となってしまう。
【0007】
更に、デバイス作製のために圧電膜をエッチングによって任意の形状に加工する場合、膜厚の面内分布があると、面内にエッチング残りが発生して不良の原因になったり、形状が安定しないなどの問題がある。
【0008】
よって、設計膜厚に対して、できるだけ、膜厚ばらつきの少ない膜が必要となるが、これも、基板径が大きくなると基板の中心から径方向へ分布が大きくなる可能性がある。更に、PZTから成る圧電焼結体や圧電膜は、鉛を60〜70重量%程度含有しているので、生態学的見地及び公害防止の面から好ましくない。そこで環境への配慮から鉛を含有しない圧電体の開発が望まれている。現在、様々な非鉛圧電材料が研究されているが、その中にニオブ酸カリウムナトリウム(一般式:(K1−xNax)NbO3(0<x<1))がある。このニオブ酸カリウムナトリウムは、ペロブスカイト構造を有する材料であり、非鉛の材料としては比較的良好な圧電特性を示すため、非鉛圧電材料の有力な候補として期待されている。ニオブ酸カリウムナトリウム薄膜も、スパッタリング法等の成膜方法で、MgO基板、SrTiO3基板、Si基板等の基板上への成膜が試されている。
【0009】
しかし、これまで基板径が75mm以上のニオブ酸カリウムナトリウム薄膜をスパッタリング法で成膜する場合、原料となるターゲットを基板の対向に設置し、それぞれ静止した状態で成膜する静止成膜により膜を付けていた。この場合、膜厚の「標準偏差/平均値」を0.05以下にするためには、基板の直径Dsに対して、ターゲット直径DtがDt/Ds=2〜3となるような大きいターゲットが必要で、更にばらつきを抑えたい場合は、よりターゲットを大きくする必要があった。しかし、ニオブ酸カリウムナトリウムのターゲットは、大きなターゲットを用いて、成膜速度を稼ぐために高周波電源の出力を上げていくと、熱伝導率が悪く、十分な放熱ができないため、割れてしまう。そして、割れ目から異種元素(ターゲットの下にある基材)が混入してしまう。
【0010】
一方で、ターゲットが割れないように、出力を抑えながら成膜すると、成膜速度が全く出ず、スループットが大幅に低下してしまう。しかも、スパッタリング法は、真空中でなければ、成膜できないため、一度の処理枚数が少ないと、真空引き時間がスループットを律速するようになる。しかし、ポンプの能力向上にも限界があり、静止成膜の場合、コスト低減のためにスループットを上げたい場合、成膜速度を上げる以外に大きく改善する方法がなく、製品化のためには大きな問題になっている。
【0011】
したがって、本発明の目的は、膜厚の面内ばらつきを抑制でき、圧電特性に優れ、高品質な圧電膜付き基板、圧電膜付き基板の製造方法、及び成膜装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明は、上記目的を達成するため、平面視にて円形を有し、直径が4インチ以上の基板と、前記基板上に設けられた下地層と、前記下地層上に設けられた非鉛のニオブ酸化物系ペロブスカイト構造を有する圧電材料を用いて構成される圧電膜とを備え、前記圧電膜が、0.3μm以上10μm以下の厚さを有し、前記圧電膜の面内における前記圧電膜の膜厚の標準偏差と前記膜厚の平均値とが、標準偏差/平均値≦0.03の関係式を満たす圧電膜付き基板が提供される。
【0013】
(2)また、上記圧電膜付き基板において、前記圧電膜が、一般式(K1−xNax)NbO3(0<x<1)で表されるニオブ酸カリウムナトリウム(KNN)と、0.06μg/cm2以上0.15μg/cm2以下のArとを含んでもよい。
【0014】
(3)また、上記圧電膜付き基板において、前記領域とは異なる前記圧電膜の前記面内の圧電定数d31の標準偏差と圧電定数d31の平均値とが、(圧電定数d31の標準偏差)/(圧電定数d31の平均値)≦0.05の関係式を満たすこともできる。
【0015】
(4)また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、Arプラズマを用いて圧電膜を成膜する成膜装置内に基板を設置する基板設置工程と、前記基板上に下地層を成膜する下地層成膜工程と、前記下地層上に圧電膜を成膜する圧電膜成膜工程とを備え、前記基板が、平面視にて円形状、又は円形の一部にオリエンテーションフラットを有する形状を有し、前記成膜装置が、前記圧電膜の原料であり、平面視にて円形状のターゲットを前記成膜装置内に有し、前記基板設置工程が、前記基板を前記ターゲットに投影した場合に、前記基板の中心と前記ターゲットの中心とが異なる位置になる配置で前記基板を前記成膜装置内に設置し、前記Arプラズマに晒されることにより前記ターゲットから放出される前記原料のスパッタ粒子により成膜される成膜領域の最外周から前記基板がはみ出している距離をXとし、前記基板の直径をDsとした場合に、X≦0.3Dsの関係式を満たす圧電膜付き基板の製造方法が提供される。
【0016】
(5)また、上記圧電膜付き基板の製造方法において、前記スパッタ粒子により成膜される領域が平面視にて直径Dtの円形状で、2≦Dt/Ds≦3の関係式を満たし、前記下地層成膜工程又は前記圧電膜成膜工程が、複数の前記基板を自公転させながら成膜を実施することもできる。
【0017】
(6)また、上記圧電膜付き基板の製造方法において、前記スパッタ粒子により成膜される領域が平面視にて直径Dtの円形状で、1≦Dt/Ds≦2の関係式を満たし、前記下地層成膜工程又は前記圧電膜成膜工程が、1枚の前記基板を自転させながら成膜を実施することもできる。
【0018】
(7)また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、ガス導入口、及び排気装置に連結されるガス排出口を有する真空チャンバと、前記真空チャンバ内に設けられ、基板を保持可能な基板保持部と、前記真空チャンバ内に設けられ、基板上に成膜する膜の原料であるターゲットを設置可能なターゲット設置部と、前記基板保持部と前記ターゲット設置部との間に電圧を印加可能な高圧電源とを備え、前記基板保持部が、前記基板を前記ターゲットに投影した場合に、前記基板保持部が保持可能な前記基板の中心と前記ターゲット設置部に設置可能な前記ターゲットの中心とが異なる位置になる配置で前記基板を保持可能である成膜装置が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る圧電膜付き基板、圧電膜付き基板の製造方法、及び成膜装置によれば、膜厚の面内ばらつきを抑制でき、圧電特性に優れ、高品質な圧電膜付き基板、圧電膜付き基板の製造方法、及び成膜装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る圧電膜付き基板の縦断面図である。
【図2】本実施の形態に係る圧電膜付き基板の製造方法の概略図である。
【図3】従来例(比較例1)の圧電膜付き基板の製造方法の概略図である。
【図4】実施例1に係る圧電膜付き基板を作製する際の圧電膜付き基板の配置図である。
【図5】実施例2に係る圧電膜付き基板を作製する際の圧電膜付き基板の配置図である。
【図6】実施例3に係る圧電膜付き基板を作製する際の圧電膜付き基板の配置図である。
【図7】実施例に係る圧電膜付き基板の膜厚測定位置の配置図である。
【図8】基板中心からX方向の距離における成膜速度を示す図である。
【図9】基板中心からY方向の距離における成膜速度を示す図である。
【図10】基板中心からの距離と圧電定数との関係を示す図である。
【図11】成膜装置の概略の構成を示す図である。
【図12】圧電特性評価方法の概略を示し、(a)は屈曲動作前の状態を示す図、(b)は屈曲動作後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[実施の形態]
(圧電膜1の構成)
図1は、本発明の実施の形態に係る圧電膜付き基板の縦断面の概要を示す。
【0022】
本実施の形態に係る圧電膜付き基板10は、一方の表面に酸化膜(図示しない)を有する基板3と、密着層(図示しない)を介して基板3上(すなわち、酸化膜の表面)に設けられる下地層としての下部電極2と、下部電極2上に設けられるニオブ酸化物系ペロブスカイト構造を有する圧電材料から主として構成される圧電膜1とを備える。なお、圧電膜1の表面(すなわち、圧電膜1の下部電極2と反対側の表面)の一部に上部電極を設けることもできる。
【0023】
圧電膜1は、一般式(K1−xNax)NbO3(0<x<1)で表されるニオブ酸カリウムナトリウム材料から主として形成される。また、圧電膜1は、0.3μm以上10μm以下の厚さを有して形成される。ここで、圧電膜1の所定の面内における圧電膜1の膜厚の標準偏差と膜厚の平均値とが、標準偏差/平均値≦0.03の関係式を満たしている。また、圧電膜1の所定の面内の圧電定数d31の標準偏差と圧電定数d31の平均値とが、(圧電定数d31の標準偏差)/(圧電定数d31の平均値)≦0.05の関係式を満たすことが好ましい。更に、圧電膜1は、0.06μg/cm2以上0.15μg/cm2以下の不活性ガス元素(例えば、Ar)を含有して形成される。
【0024】
なお、圧電膜1の「所定の面内」とは、平面視にて外周端から基板3の最大径の5%の距離まで内側に入った領域とは異なる面内である。一例として、基板3は、平面視にて円形状を有する(一例として、直径は4インチ以上である。)。そして、基板3の外周端から基板直径に対して5%の幅、すなわち、基板3の外周端から基板3の中心に向けて5mmの領域を除く面内の圧電膜1の膜厚の標準偏差と膜厚の平均値とが、標準偏差/平均値≦0.03を満たし、圧電定数d31の標準偏差と圧電定数d31の平均値とが、(圧電定数d31の標準偏差)/(圧電定数d31の平均値)≦0.05を満たす。
【0025】
基板3としては、Si基板、MgO基板、ZnO基板、SrTiO3基板、SrRuO3基板、ガラス基板、石英ガラス基板、GaAs基板、GaN基板、サファイア基板、Ge基板、又はステンレス基板等を用いることができる。本実施の形態においては、価格が低廉で、かつ、工業的に使用の実績が豊富なSi基板、例えば、(001)面に酸化膜としての熱酸化膜を有するSi基板を用いることが好ましい。なお、Si基板の面方位は(001)面に限られず、他の面方位を有するSi基板、熱酸化膜を有さないSi基板、SOI基板を用いることもできる。本実施の形態は、基板3の外径が、75mm以上、90mm以上又は100mm以上において特に有効である。
【0026】
酸化膜としては、基板3がSiから形成される場合、熱酸化により基板3の表面に形成される熱酸化膜を用いることができる。また、Chemical Vapor Deposition(CVD)法を用い、基板3の表面にSi酸化膜を形成することにより、酸化膜を形成することもできる。なお、Siを除く他の材料から基板3を形成する場合、基板3の表面に酸化膜を設けずに、石英ガラス基板、MgO基板、SrTiO3基板、SrRuO3基板等の酸化物からなる基板上に、Pt等からなる下部電極2を直接、形成することもできる。
【0027】
密着層としては、金属層、例えば、Ti層を用いることができる。また、密着層としては、Ta層を用いることもできる。更に、密着層を省略することもできる。
【0028】
下部電極2は、Pt若しくはPtを含む合金から形成することができる。また、下部電極2は、Pt若しくはPtを含む合金から形成される電極層と、導電性材料からなる電極層とを含む積層構造を有して形成することもできる。そして、下部電極2は、Au、Ru、若しくはIr等の金属材料、又はSrRuO3、LaNiO3等の金属酸化物から形成することもできる。
【0029】
圧電膜1は、上述のとおり、(K1−xNax)NbO3(0<x<1)で表されるニオブ酸カリウムナトリウム系材料から形成される。なお、圧電膜1を構成するニオブ酸カリウムナトリウムに、Li、Ta、Sb、Ca、Cu、Ba、及びTi等からなる群から選択される元素を5原子数%の濃度で添加することもできる。
【0030】
また、圧電膜1の歪は、圧電膜1中に含まれる不活性ガス元素(例えば、Ar)の含有量の変化に応じて発生する。例えば、圧電膜1中の不活性ガス元素の含有量の変化に応じ、圧電膜1の内部に、圧縮応力又は引張応力が発生する。また、圧電膜1中の不活性ガス元素の含有量を制御し、圧電膜1に応力が発生しない状態、すなわち無歪の状態の圧電膜1を形成することもできる。
【0031】
上部電極は、Pt若しくはPtを含む合金から形成することができる。また、上部電極は、Pt若しくはPtを含む合金から形成される電極層と、導電性材料からなる電極層とを含む積層構造を有して形成することもできる。更に、上部電極は、Ru、Ir、Sn、及びInからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む金属層から形成することもできる。
【0032】
このような構成を備える圧電膜付き基板10は、高い圧電定数を有する。また、圧電膜付き基板10を所定の形状に形成し、圧電膜付き基板10に電圧を印加する電圧印加部を圧電膜付き基板10に設けることにより、圧電膜デバイスを実現できる。更に、圧電膜付き基板10を所定の形状に形成し、圧電膜付き基板10に印加される電圧を検出する電圧検出部を圧電膜付き基板10に設けた圧電膜デバイスを実現することもできる。圧電膜デバイスは、例えば、アクチュエータ、センサ等である。
【0033】
(圧電膜付き基板10の製造方法)
図2は、本実施の形態に係る圧電膜付き基板の製造方法の概略を示す。また、図3は、従来の圧電膜付き基板の製造方法の概略を示す。
【0034】
本実施の形態に係る圧電膜付き基板10は、基板4に圧電膜1を、RFスパッタリング法、イオンビームスパッタ法、又はCVD法等を用いて成膜することで作製することができる。一例として、Arプラズマを用いたスパッタリング法について、以下、説明する。
【0035】
まず、本実施の形態に係る圧電膜付き基板10の製造方法は、Arプラズマを用いて圧電膜1を成膜する成膜装置内に基板4を設置する基板設置工程と、基板4上に下部電極2を成膜する下地層成膜工程と、下部電極2上に圧電膜1を成膜する圧電膜成膜工程とを備える。なお、圧電膜成膜工程における基板4面内の平均成膜速度は、成膜時における圧力、ターゲットに印加する電圧等を調整し、0.7μm/h以上に制御する。
【0036】
ここで、基板4は、平面視にて円形状、又は円形の一部にオリエンテーションフラットを有する形状を有すると共に、成膜装置は、圧電膜1の原料であり、平面視にて円形状のターゲット5を成膜装置内に有する。そして、基板設置工程は、基板4をターゲット5に投影した場合に、基板4の中心とターゲット5の中心とが異なる位置になる配置で基板4を成膜装置内に設置する。更に、Arプラズマに晒されることによりターゲット5から放出される原料のスパッタ粒子により成膜される有効領域(成膜領域)(直径Dt)の最外周から基板4がはみ出している距離をXとし、基板4の直径をDsとした場合に、X≦0.3Dsの関係式を満たすように、基板4とターゲット5とを配置する。
【0037】
すなわち、圧電膜1が成膜される基板4が円形、又は円形の一部にオリエンテーションフラットを有する形状であり、かつ、成膜装置に設置されるターゲット5が円形である。そして、従来の製造方法を示す図3に対して、基板4の中心がターゲット5の中心から偏心して配置される(つまり、平面視にて双方の中心が異なる位置にする)。更に、ターゲットのArプラズマに晒され、原料のスパッタ粒子により成膜される有効領域の最外周から、基板がはみ出している距離をXとした場合に、Xが、基板の直径Dsに対してX≦0.3Dsに設定される。
【0038】
また、スパッタ粒子による成膜領域が平面視にて直径Dtの円形状である場合に、2≦Dt/Ds≦3の関係式を満たし、下地層成膜工程又は圧電膜成膜工程が、複数の基板4を自公転させながら成膜を実施することもできる。
【0039】
すなわち、ターゲットのArプラズマに晒されて原料のスパッタ粒子により成膜される有効領域の直径Dtと基板の直径Dsとが、2≦Dt/Ds≦3の条件となる範囲で、図4のように基板4を配置する。これにより、成膜時に基板4を自転及び公転させながら複数枚の基板4を作製することがでる。ここで、ターゲットの有効領域Dtと基板径Dsとの比Dt/Dsは、Dt/Ds<2の範囲では、ターゲットの有効領域内に複数の基板及びその回転機構をX≦0.3Dsとなるように配置することが困難になる。また、Dt/Ds>3の領域では、ターゲット中心部に成膜に全く寄与しない無駄な領域が大きくなってしまい、ターゲットを大きくするメリットが損なわれてしまう。したがって、複数枚の基板を作製する場合におけるDt/Dsの最適の範囲は2≦Dt/Ds≦3にすることが好ましい。
【0040】
また、スパッタ粒子により成膜される領域が平面視にて直径Dtの円形状である場合に、1≦Dt/Ds≦2の関係式を満たし、下地層成膜工程又は圧電膜成膜工程が、1枚の基板4を自転させながら成膜を実施することもできる。
【0041】
すなわち、ターゲットのArプラズマに晒されて原料のスパッタ粒子により成膜される有効領域の直径Dtと基板の直径Dsとが、1≦Dt/Ds≦2の条件となる範囲で、成膜時に基板を自転しながら1枚の基板を作製することができる。ターゲット有効領域Dtと基板径Dsとの比Dt/Dsは、Ds<1の範囲では、X≦0.3Ds及び成膜有効領域の確保が難しくなり、膜厚ばらつき及び成膜速度が所望の範囲に入らなくなる。また、Dt/Ds>2の領域では、ターゲットの大半の部分の成膜に実質的に寄与しない領域が大きくなってしまい、ターゲットを大きくするメリットが損なわれてしまう。したがって、1枚の基板を作製する場合におけるDt/Dsの最適の範囲は1≦Dt/Ds≦2にすることが好ましい。
【0042】
(成膜装置の構成)
図11は、本実施の形態に係る成膜装置の概略の構成を示す。
また、本実施の形態に係る成膜装置は、以下の構成を備える。
【0043】
成膜装置50は、ガス供給部59Aに接続されたガス導入口59a、及びガス排気部59Bに連結されるガス排出口59bを有する真空チャンバ51と、真空チャンバ51内に設けられ、基板4を保持可能(つまり、基板4は、基板保持部58に保持されることが予定されている)な基板保持部58と、真空チャンバ51内に設けられ、基板4上に成膜する膜の原料であるターゲット5を設置可能(つまり、ターゲット5は、ターゲット設置部53に設置することが予定されている)なターゲット設置部53と、カソード52とターゲット設置部53との間に高周波電圧を印加可能なRF電源部54とを備える。そして、基板保持部58は、基板4をターゲット5に投影した場合に、基板保持部58が保持可能な基板4の中心とターゲット設置部53に設置可能なターゲット5の中心とが異なる位置になる配置で基板4を保持可能に設けられる。基板4は、基板保持部58の中心線58aを中心にモータ等による自転駆動部57によって回転可能に設けられている。自転駆動部57は、テーブル56の中心線(ターゲット5の中心とほぼ一致)56aからずれた位置に配置され、テーブル56は、中心線56aを中心にモータ等による公転駆動部55によって回転するように構成されている。制御部60は、基板4がターゲット5の中心の周りを自転しながら公転するように公転駆動部55及び自転駆動部57を制御する。なお、1つのモータでギヤを介して基板4を公転及び自転させる機構を採用してもよい。
【0044】
(実施の形態の効果)
本実施の形態に係る圧電膜付き基板10によれば、圧電膜付き基板10の外周5mmを除く面内の膜厚の「標準偏差/平均値」を0.03以下、面内の印可電圧一定時の圧電定数d31の「標準偏差/平均値」を0.05以下にすることで、従来の静止成膜での膜厚の面内ばらつきに比べて半分以下、圧電特性も同等以上の高品質な圧電膜付き基板10を提供することができる。
【0045】
また、本実施の形態に係る圧電膜付き基板の製造方法によれば、品質向上以外にも、従来よりも小さいターゲットの使用が可能となり、ターゲットの割れ等のリスクを軽減できる。更に、多数枚の同時成膜が可能となり、従来の製造方法に比べて、スループット向上が実現でき、より低価格な圧電膜付き基板及びその基板を用いた圧電体素子を供給することが可能となる。
【0046】
また、Arガス等の不活性ガスは、圧電膜1(つまり、KNN薄膜)との間で固溶体を形成せず、圧電膜1中に単独の原子として存在する。したがって、不活性ガスが混入する前の圧電膜1の組成等自体はほとんど変質せず、圧電膜1を構成する元素の原子半径とは異なる原子半径を有する不活性ガス原子が圧電膜1を構成する材料の結晶格子間に侵入するか、あるいは圧電膜1を構成する元素が不活性ガス原子に置換される。これにより、圧電膜1において歪(又は内部応力)の発生を抑制でき、d31のばらつきを制御できる。
【0047】
また、本実施の形態に係る圧電膜付き基板10の製造方法によれば、成膜時のプラズマ密度の分布(すなわち、成膜速度分布)やターゲットの不均一等を回転によってキャンセルできるので、従来よりも小さい面積のターゲットでも、膜厚や圧電特性の面内ばらつきがより小さい圧電膜付き基板10を作製することができる。また、ターゲットのArプラズマに晒されて原料のスパッタ粒子により成膜される有効領域の直径Dtと基板の直径Dsとが、2≦Dt/Ds≦3の条件になる範囲では複数枚の基板を同時に成膜できるので、スループットも大幅に改善することができる。
【実施例1】
【0048】
実施例1〜3及び比較例1〜2においてはそれぞれ、Si基板上に所定の条件で膜厚3μmのKNN薄膜を形成することにより圧電膜付き基板を作製した。そして、作製した圧電膜付き基板の圧電特性を評価した。
【0049】
(KNN薄膜の成膜)
まず、本実施の形態に係る圧電膜付き基板10の製造方法を用い、圧電膜付き基板を作製した。基板には両面ミラーの熱酸化膜付きSi基板(具体的には、(100)面方位を有し、厚さが0.525mmで、熱酸化膜厚さが200nmで、直径が100mmのSi基板)を用いた。
【0050】
まず、Si基板上にRFマグネトロンスパッタリング法で、Ti密着層(膜厚2nm)、Pt下部電極((111)面優先配向、膜厚200nm)を形成した。Ti密着層及びPt下部電極は、Si基板の温度を100℃以上350℃以下に加熱し、放電パワーを200Wに、導入ガスをAr雰囲気に、圧力を2.5Paに制御した上で、成膜時間を1分以上3分以下に制御して成膜した。
【0051】
次に、Pt下部電極上に、RFマグネトロンスパッタリング法で、3μm厚の(K1−xNax)NbO3薄膜を成膜した。(K1−xNx)NbO3圧電膜の成膜に用いたターゲットは、直径が4インチ、9インチ、又は12インチであり、Na/(K+Na)=0.65の(K1−xNax)NbO3焼結体から構成されたターゲットを用いた。そして、基板温度を500℃に、導入ガスをAr雰囲気に、圧力を0.3Paにそれぞれ設定して、成膜面を鉛直方向下向きにして成膜した。ただし、放電パワーについては、4インチのターゲットの場合に300W、9インチのターゲットの場合に800W、12インチのターゲットの場合に1800Wに設定した。そして、KNN膜のスパッタ成膜時間は、膜厚が略3μmになるようにそれぞれ調整した。このような条件で、X=30mm(X=100×0.3)の位置に、基板を図4、図5及び図6のように設置し、実施例1〜4に係る圧電膜付き基板を作製した。
【0052】
(比較例1)
一方、比較例として、同様のPt下部電極上に、直径9.3インチ(φ4インチの静止成膜用のターゲット)で、Na/(K+Na)=0.65の(K1−xNax)NbO3焼結体をターゲットに用い、基板温度を500℃に、放電パワーを800Wに、導入ガスをArに、圧力を0.3Paにそれぞれ制御して、成膜面を鉛直方向下向きに成膜した。そして、KNN膜のスパッタ成膜時間は、膜厚が略3μmになるように調整した。このような条件で、基板を図3のように設置し、比較例1に係る圧電膜付き基板を作製した。
【0053】
(比較例2)
更に、同様のPt下部電極上に、直径12インチ、Na/(K+Na)=0.65の(K1−xNax)NbO3焼結体をターゲットに用い、基板温度を500℃に、放電パワーを1800Wに、導入ガスをArに、圧力を0.3Paにそれぞれ制御して、成膜面を鉛直方向下向きに成膜した。KNN膜のスパッタ成膜時間は、膜厚が略3μmになるように調整した。このような条件で、X=35mmの位置に基板を図6のように設置し、比較例2に係る圧電膜付き基板を作製した。
【0054】
(膜厚ばらつき評価)
次に、膜厚の面内ばらつきを評価するために、Filmetrics社製の薄膜測定装置F20を用い、光学式の非接触厚さ測定で膜厚を測定した。この測定装置は、透明膜の厚さを、薄膜の表面からの反射と裏面(下地電極表面)からの反射とを解析することで算出する。また、本装置の測定結果は、薄膜断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で測定(SEM条件:10000倍、5kV)した厚さと比較して、校正した。具体的には、厚さ測定を図7に示す9点実施し、その標準偏差及び平均値を計算し、膜厚の面内ばらつきの大きさとして「標準偏差/平均値」を計算した。
【0055】
(圧電特性評価)
次に、圧電定数d31を評価するために変位量を測定する。図12は、圧電特性評価方法を示す概略図である。実施例及び比較例に係る圧電膜付き基板の上に白金上部電極(膜厚0.02μm)18をRFマグネトロンスパッタリング法で形成して、長さが20mmで幅が2.5mmの短冊形に切り出し、(K,Na)NbO3薄膜を含む圧電素子を作製した。次に、圧電素子の長手方向の端をクランプ20で固定することで簡易的なユニモルフカンチレバーを構成した。この状態で上下両電極間の(K,Na)NbO3薄膜に電圧を印加し、(K,Na)NbO3薄膜を伸縮させることでカンチレバー全体を屈曲動作させ、レバーの先端を動作させた。そして、レバーの先端の変位量300をレーザードップラ変位計30で測定した。
【0056】
圧電定数d31は、カンチレバー先端の変位量、カンチレバー長さ、基板の厚さ、薄膜の厚さ、ヤング率、及び印加電圧から算出することができる。実施例では、印可電圧が一定時における圧電定数のばらつきに注目したので、印可電圧を20Vで一定にした。更に、外周5mmを除く領域から60本の短冊形を切り出し、それらの圧電定数d31の標準偏差及び平均値を計算し、圧電定数d31の面内ばらつきの大きさとして「標準偏差/平均値」を計算した。また、圧電定数d31の算出する際に用いるKNN薄膜のヤング率としては、104GPaを用いた。
【0057】
このようにして作製した実施例1〜3に係る圧電膜付き基板は、表1に示すように、膜厚及び圧電定数の面内ばらつきが所定の範囲に入っており、従来の静止成膜である比較例2に比べ(表2を参照)、膜厚の面内ばらつきで半分以下、圧電定数の面内ばらつきが同等以上に改善された。また、成膜速度に関しては、従来の静止成膜である比較例2に比べ、30〜40%程度低下したが、実施例1及び実施例3のように複数枚を同時成膜できる場合には、1枚当たりのスループットは実質的に高くなり、より低コストでの製造が可能となることが示された。なお、表1におけるターゲット有効径とは、ターゲットを平面視したときに視認される領域、すなわち、ターゲット設置部に設置されているターゲットをターゲット設置部に固定する冶具等により覆われている領域を除く、外部に露出しているターゲットの領域である。
【0058】
一方、基板はみ出し量Xを30mmから35mmと大きくした比較例1では、ターゲット外周部にある成膜速度が急激に低下する部分に基板中心部が重なってしまい、実施例1〜3では、凸形状であった膜厚の面内分布が、中心が凹むようなM型の分布となった。そのため、膜厚の面内ばらつきの悪化及び平均成膜速度の低下が生じた。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
図8は、基板中心からX方向の距離における成膜速度を示し、図9は、基板中心からY方向の距離における成膜速度を示す。また、図10は、基板中心からの距離と圧電定数との関係を示す。基板の中心とターゲットの中心が一致している場合(比較例2)では、膜厚が凸形状の分布になる。これを実施例に示すようにX≦0.3Dsを満たすような配置にすることで、径方向に平坦な分布にすることができる。しかし、Xが0.3Dsよりも大きくなると、比較例1のように中心及び外周の成膜速度が低下し始め、径方向にM字形の分布となり、膜厚分布が悪化していく。また、同じ電圧を印加したときに、膜厚が薄い方が圧電特性が大きくなる傾向があり、図10に示すように、膜厚分布と圧電特性に相関がみられる。圧電特性の面内分布を確保するには、膜厚分布のばらつきを小さくする必要がある。
【0062】
以上、本発明の実施の形態及び実施例を説明したが、上記に記載した実施の形態及び実施例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態及び実施例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0063】
1…圧電膜、2…下部電極、3…基板、4…基板、5…ターゲット、10…圧電膜付き基板、18…上部電極、20…クランプ、30…レーザードップラ変位計、50…成膜装置、51…真空チャンバ、53…ターゲット設置部、54…RF電源部、55…公転駆動部、56…テーブル、56a…テーブルの中心線、57…自転駆動部、58…基板保持部、58a…基板保持部の中心線、59A…ガス供給部、59a…ガス導入口、59B…ガス排気部、59b…ガス排出口、60…制御部、300…変位量
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視にて円形を有し、直径が4インチ以上の基板と、
前記基板上に設けられた下地層と、
前記下地層上に設けられた非鉛のニオブ酸化物系ペロブスカイト構造を有する圧電材料を用いて構成される圧電膜と
を備え、
前記圧電膜が、0.3μm以上10μm以下の厚さを有し、前記圧電膜の面内における前記圧電膜の膜厚の標準偏差と前記膜厚の平均値とが、標準偏差/平均値≦0.03の関係式を満たす圧電膜付き基板。
【請求項2】
前記圧電膜が、一般式(K1−xNax)NbO3(0<x<1)で表されるニオブ酸カリウムナトリウムと、0.06μg/cm2以上0.15μg/cm2以下のArとを含む請求項1に記載の圧電膜付き基板。
【請求項3】
前記領域とは異なる前記圧電膜の前記面内の圧電定数d31の標準偏差と圧電定数d31の平均値とが、(圧電定数d31の標準偏差)/(圧電定数d31の平均値)≦0.05の関係式を満たす請求項2に記載の圧電膜付き基板。
【請求項4】
Arプラズマを用いて圧電膜を成膜する成膜装置内に基板を設置する基板設置工程と、
前記基板上に下地層を成膜する下地層成膜工程と、
前記下地層上に圧電膜を成膜する圧電膜成膜工程と
を備え、
前記基板が、平面視にて円形状、又は円形の一部にオリエンテーションフラットを有する形状を有し、
前記成膜装置が、前記圧電膜の原料であり、平面視にて円形状のターゲットを前記成膜装置内に有し、
前記基板設置工程が、前記基板を前記ターゲットに投影した場合に、前記基板の中心と前記ターゲットの中心とが異なる位置になる配置で前記基板を前記成膜装置内に設置し、
前記Arプラズマに晒されることにより前記ターゲットから放出される前記原料のスパッタ粒子により成膜される成膜領域の最外周から前記基板がはみ出している距離をXとし、前記基板の直径をDsとした場合に、X≦0.3Dsの関係式を満たす圧電膜付き基板の製造方法。
【請求項5】
前記スパッタ粒子により成膜される領域が平面視にて直径Dtの円形状で、2≦Dt/Ds≦3の関係式を満たし、
前記下地層成膜工程又は前記圧電膜成膜工程が、複数の前記基板を自公転させながら成膜を実施する請求項4に記載の圧電膜付き基板の製造方法。
【請求項6】
前記スパッタ粒子により成膜される領域が平面視にて直径Dtの円形状で、1≦Dt/Ds≦2の関係式を満たし、
前記下地層成膜工程又は前記圧電膜成膜工程が、1枚の前記基板を自転させながら成膜を実施する請求項4に記載の圧電膜付き基板の製造方法。
【請求項7】
ガス導入口、及び排気装置に連結されるガス排出口を有する真空チャンバと、
前記真空チャンバ内に設けられ、基板を保持可能な基板保持部と、
前記真空チャンバ内に設けられ、基板上に成膜する膜の原料であるターゲットを設置可能なターゲット設置部と、
前記基板保持部と前記ターゲット設置部との間に電圧を印加可能な高圧電源と
を備え、
前記基板保持部が、前記基板を前記ターゲットに投影した場合に、前記基板保持部が保持可能な前記基板の中心と前記ターゲット設置部に設置可能な前記ターゲットの中心とが異なる位置になる配置で前記基板を保持可能である成膜装置。
【請求項1】
平面視にて円形を有し、直径が4インチ以上の基板と、
前記基板上に設けられた下地層と、
前記下地層上に設けられた非鉛のニオブ酸化物系ペロブスカイト構造を有する圧電材料を用いて構成される圧電膜と
を備え、
前記圧電膜が、0.3μm以上10μm以下の厚さを有し、前記圧電膜の面内における前記圧電膜の膜厚の標準偏差と前記膜厚の平均値とが、標準偏差/平均値≦0.03の関係式を満たす圧電膜付き基板。
【請求項2】
前記圧電膜が、一般式(K1−xNax)NbO3(0<x<1)で表されるニオブ酸カリウムナトリウムと、0.06μg/cm2以上0.15μg/cm2以下のArとを含む請求項1に記載の圧電膜付き基板。
【請求項3】
前記領域とは異なる前記圧電膜の前記面内の圧電定数d31の標準偏差と圧電定数d31の平均値とが、(圧電定数d31の標準偏差)/(圧電定数d31の平均値)≦0.05の関係式を満たす請求項2に記載の圧電膜付き基板。
【請求項4】
Arプラズマを用いて圧電膜を成膜する成膜装置内に基板を設置する基板設置工程と、
前記基板上に下地層を成膜する下地層成膜工程と、
前記下地層上に圧電膜を成膜する圧電膜成膜工程と
を備え、
前記基板が、平面視にて円形状、又は円形の一部にオリエンテーションフラットを有する形状を有し、
前記成膜装置が、前記圧電膜の原料であり、平面視にて円形状のターゲットを前記成膜装置内に有し、
前記基板設置工程が、前記基板を前記ターゲットに投影した場合に、前記基板の中心と前記ターゲットの中心とが異なる位置になる配置で前記基板を前記成膜装置内に設置し、
前記Arプラズマに晒されることにより前記ターゲットから放出される前記原料のスパッタ粒子により成膜される成膜領域の最外周から前記基板がはみ出している距離をXとし、前記基板の直径をDsとした場合に、X≦0.3Dsの関係式を満たす圧電膜付き基板の製造方法。
【請求項5】
前記スパッタ粒子により成膜される領域が平面視にて直径Dtの円形状で、2≦Dt/Ds≦3の関係式を満たし、
前記下地層成膜工程又は前記圧電膜成膜工程が、複数の前記基板を自公転させながら成膜を実施する請求項4に記載の圧電膜付き基板の製造方法。
【請求項6】
前記スパッタ粒子により成膜される領域が平面視にて直径Dtの円形状で、1≦Dt/Ds≦2の関係式を満たし、
前記下地層成膜工程又は前記圧電膜成膜工程が、1枚の前記基板を自転させながら成膜を実施する請求項4に記載の圧電膜付き基板の製造方法。
【請求項7】
ガス導入口、及び排気装置に連結されるガス排出口を有する真空チャンバと、
前記真空チャンバ内に設けられ、基板を保持可能な基板保持部と、
前記真空チャンバ内に設けられ、基板上に成膜する膜の原料であるターゲットを設置可能なターゲット設置部と、
前記基板保持部と前記ターゲット設置部との間に電圧を印加可能な高圧電源と
を備え、
前記基板保持部が、前記基板を前記ターゲットに投影した場合に、前記基板保持部が保持可能な前記基板の中心と前記ターゲット設置部に設置可能な前記ターゲットの中心とが異なる位置になる配置で前記基板を保持可能である成膜装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−167316(P2012−167316A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28558(P2011−28558)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】
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