説明

圧電装置

【課題】
本発明は、集積回路素子の電極パッドと、半田バンプとの接合強度の低下を防ぐ圧電装置を提供することを課題とする。
【解決手段】
本発明の圧電装置100は、素子搭載部材110と、素子搭載部材110に搭載されている圧電素子120と、素子搭載部材110の表面に形成されており、素子搭載領域118aおよび引き回し領域118bを含んでいる金属パターン118と、半田バンプ132によって金属パターン118の素子搭載領域118aに電気的に接続されている集積回路素子130とを備え、金属パターン118が素子搭載領域118aと引き回し領域118bとの間に設けられた凸部119を有しており、凸部119の少なくとも表面部分が金属酸化物から成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等に用いられる圧電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば携帯用の電子機器には、各種圧電装置が用いられている。従来の圧電装置200は、図5に示されているように、素子搭載部材210と、素子搭載部材210の第1の凹部K1に収容された圧電素子220と、素子搭載部材210の第2の凹部K2に収容された集積回路素子230とを含んでいる。
【0003】
素子搭載部材210には、図6に示されているように、集積回路素子230を搭載するための金属パターン218が設けられている。集積回路素子230は、半田バンプ232によって金属パターン218に接合されている。半田バンプ232は、加熱工程で溶融された後に、冷却固化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−267866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の圧電装置200は、例えば、集積回路素子230と金属パターン218との接合において半田バンプ232の接合後に例えばリフロー等の250℃程度の加熱工程を複数回行う場合があり半田バンプ232が再溶融することがあった。その結果、再溶融した半田バンプ232が金属パターン218上に拡がり、集積回路素子230と金属パターン218との接合に関する信頼性が低下する場合があった。
【0006】
本発明は、半田バンプによる集積回路素子と金属パターンとの接合の信頼性に関して向上された圧電装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの態様による圧電装置は素子搭載部材と、素子搭載部材に搭載されている圧電素子と、素子搭載部材の表面に形成された金属パターンと、半田バンプによって金属パターンに電気的に接続されている集積回路素子とを含んでいる。金属パターンは、素子搭載領域および引き回し領域を含んでいる。集積回路素子は、金属パターンの素子搭載領域に電気的に接続されている。金属パターンは、素子搭載領域と引き回し領域との間に設けられた凸部を有しており、凸部の少なくとも表面部分が金属酸化物から成る。
【発明の効果】
【0008】
このように、本発明の一つの態様による圧電装置において、素子搭載部材の表面に形成された金属パターンが素子搭載領域および引き回し領域を含んでいるとともに素子搭載領域と引き回し領域との間に設けられた凸部を有しており、凸部の少なくとも表面部分が金属酸化物から成っている。本発明の一つの態様による圧電装置は、このような構成を含んでいることによって、例えばニッケル(Ni)などの半田濡れ性の低い金属酸化物から成る少なくとも表面部分を有する凸部において溶融された半田バンプの拡がりが抑えられる。その結果、本発明の一つの態様による圧電装置は、集積回路素子230と金属パターン218との接合に関する信頼性に関して向上されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一つの実施形態における圧電装置の一例を示した断面図である。
【図2】図1に示された圧電装置の下面図である。
【図3】図2に示された圧電装置において符号Bによって示された部分の拡大図である。
【図4】図3に示された圧電装置の部分拡大図のY−Y線縦断面図である。
【図5】従来の圧電装置を示した断面図である。
【図6】従来の圧電装置の集積回路素子の搭載面側の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。
【0011】
図1に示されているように、本発明の一つの実施形態における圧電装置100は、素子搭載部材110と、素子搭載部材110に搭載された圧電素子120および集積回路素子130と、蓋部材150とを含んでいる。なお、図1は、図2に示された圧電装置のA―Aにおける縦断面図を示している。
【0012】
素子搭載部材110は、基板部111と、基板部111の一方の主面に設けられた第一の枠部112と、基板部111の他方の主面に設けられた第二の枠部113とを含んでいる。素子搭載部材110を構成する基板部111と、第一の枠部112および第二の枠部113は、例えば、ガラス−セラミックス、アルミナセラミックス等のセラミック材料からなる。
【0013】
また、基板部111は、一方の主面に圧電素子120を搭載するための圧電素子搭載用パターン114が配置され、他方の主面に集積回路素子130を搭載するための金属パターン118が配置されている。また、図2に示されているように、基板部111の他方の主面の金属パターン118は、例えば3行2列に6個配置されている。図1では、金属パターン118の1列を横切って切断した断面図を示している。素子搭載部材110に配置された金属パターン118は、後述する集積回路素子130の電極パッド134が半田バンプ132を介して接合されている。また、基板部111の内部には、内層配線(図示せず)が設けられ、圧電素子搭載用パターン114と金属パターン118とが内層配線(図示せず)を介して電気的に接続されている。
【0014】
また、素子搭載部材110は、基板部111および第一の枠部112によって囲まれた第一の凹部K1を有している。第一の凹部K1には、圧電素子120が収容されている。圧電素子120が収容されている第一の凹部K1は、蓋部材150によって気密封止されている。
【0015】
また、素子搭載部材110は、基板部111および第二の枠部113によって囲まれた第二の凹部K2を有している。第二の凹部K2には、集積回路素子130が収容されている。第二の枠部113の四隅には、複数の外部接続端子116が設けられている。複数の外部接続端子116は、それぞれVCC端子、VCON端子、OUT端子、グランド端子として機能する。
【0016】
圧電素子120は、圧電素板の両主面に励振用電極(図示せず)と接続用電極(図示せず)を備える構造となっている。また、圧電素子120の接続用電極(図示せず)は、導電性接着剤121を介して素子搭載部材110に配置された圧電素子搭載用パターン114に接続されている。また、圧電素子120は、所定の結晶軸でカットした圧電素板に外部からの変動電圧が印加されると、所定の周波数の厚みすべり振動が励振される。圧電素板としては、例えば水晶が用いられる。
【0017】
集積回路素子130は、少なくとも発振回路を備える構成となっている。集積回路素子130は、回路が形成された面に電極パッド134が形成される。電極パッド134は、素子搭載部材110に配置された金属パターン118に、半田バンプ132を介して接合されている。また、集積回路素子130の電極パッド134と、素子搭載部材110に配置された金属パターン118との間には、樹脂140が充填されている。
【0018】
半田バンプ132は、集積回路素子130の回路の形成された面の電極パッド134上にスクリーン印刷により形成され、バンプ径が例えば80〜100μm程度で、高さが例えば60〜100μm程度の大きさで形成されている。また、本実施形態に用いられる半田バンプ132は、例えばSn―Cu−Ni系の組成を持つ鉛フリー半田が用いられる。
【0019】
蓋部材150は、基板部111と第一の枠部112で形成された第一の凹部K1を気密封止している。蓋部材150の材質は、42アロイまたはコバール、リン青銅等からなる。
【0020】
ここで、本実施形態における圧電装置100は、図1、図2に示すように、圧電装置100の素子搭載部材110に配置された金属パターン118が、素子搭載領域118aおよび引き回し領域118bを備え、素子搭載領域118aに電気的に接続されている半田バンプ132と、半田バンプ132に電気的に接続されている集積回路素子130を備えている。また、本発明の実施形態における金属パターン118は、図3、図4に示すように、素子搭載領域118aと引き回し領域118bとの間に設けられた凸部119を有しており、凸部119の少なくとも表面部分が金属酸化物から成っている。これにより、本実施形態における圧電装置100は、凸部119がダムとなる物理的作用と金属酸化物が濡れにくい化学的作用により半田バンプ132を形成する半田の拡がりを抑えることができる。
【0021】
また、図4は、本実施形態における圧電装置100の金属パターン118の断面の拡大図を示す。本実施形態における金属パターン118は、素子搭載領域118aと引き回し領域118bとの間に設けられた凸部119を備える構成となっている。金属パターン118は、3層構造になっており、例えば下層にモリブデン(Mo)が形成され、例えば中間層にニッケル(Ni)が形成され、例えば上層に金(Au)が形成されている。
【0022】
このような本実施形態における圧電装置100の凸部119は、金属パターン118にレーザを照射して、金属パターン118の中間層の例えばニッケル(Ni)と上層の例えば金(Au)をカットして、金属パターン118に溝部117を設けることで形成される。これにより、凸部119は、金属パターン118の中間層の例えばニッケル(Ni)がレーザで削られ、また発熱することにより空気と反応し金属酸化物が生成される。また、本実施形態における凸部119は、金属パターン118の素子搭載領域118a側に素子搭載領域側面119aを有し、引き回し領域118b側に引き回し領域側面119bを有する構造になっている。
【0023】
また、図3は、本実施形態における圧電装置100の金属パターン118の上面の拡大図を示す。本実施形態における金属パターン118は、素子搭載領域118aと引き回し領域118bとの間に設けられた凸部119と、凸部119よりも引き回し領域118b側に形成された溝部117を備える構成となっている。ここで、本実施形態における圧電装置100の凸部119は、素子搭載領域118a側に形成された素子搭載領域側面119aが、複数の凹部119cを有しており、複数の凹部119cのそれぞれが平面視において引き回し領域118bの方向へ向かって狭まるように凹んでいる構造となっている。また、溝部117は、複数の微少な凹凸による模様が形成されている。溝部117の複数の微小な凹凸は、平面視において、仮に半田が素子搭載領域118aから引き回し領域118bの方向へ流れ出した場合にその流れが妨げられるような曲線模様を有している。
【0024】
本実施形態における圧電装置100の凸部119は、高さが例えば1〜2μm程度であり、溝部117の深さが例えば0.5〜1μm程度であり、溝部117の幅が例えば30〜50μm程度である。また、本実施形態における圧電装置100の凸部119は、例えばレーザー照射によって形成される場合には、レーザのスポット径または出力強度などを変えることで高さまたは傾きについて調整される。同様に、複数の凹部119cの形状、溝部117の幅または深さについても、レーザのスポット径または出力強度などを変えることで調整することができる。ここで、レーザとしては、例えば、炭酸ガスレーザ、YAGレーザ、YVO4レーザ、半導体レーザ、またはエキシマレーザ等が用いられる。
【0025】
このように、本実施形態における圧電装置100の素子搭載部材110に配置された金属パターン118は、素子搭載領域118aと引き回し領域118bとの間に設けられた凸部119を有しており、凸部119の少なくとも表面部分が金属酸化物から成っている。これにより、本発明の実施形態における圧電装置100は、凸部119の金属酸化物が例えばニッケル(Ni)などの半田濡れ性の低い酸化された金属からなることから、溶融した半田バンプ132の拡がりが凸部119において抑えることができる。その結果、本実施形態における圧電装置100は、集積回路素子130の電極パッド134と半田バンプ132との接合部分の面積を確保でき、半田バンプ132の接合強度の低下を抑えることができる。
【0026】
また、本実施形態における圧電装置100の凸部119は、素子搭載領域側面119aを有し、素子搭載領域側面119aに複数の凹部119cを有しており、複数の凹部119cのそれぞれが平面視において引き回し領域118bの方向へ向かって狭まるように凹んでいる。これにより、素子搭載領域118aから加熱工程で溶融して拡がった半田バンプ132を半田の表面張力により拡がりを抑えることができる。
【0027】
更に、本実施形態における圧電装置100の凸部119は、素子搭載領域側面119aと引き回し領域側面119bとを有しており、素子搭載領域側面119aが引き回し側面119bよりも急傾斜となっている。これにより、本施形態における圧電装置100の凸部119は、半田バンプ132の拡がりを抑えることができる。
【0028】
また、本実施形態における圧電装置100の金属パターン118は、引き回し領域118bに設けられた溝部117を有している。これにより、本発明の実施形態における圧電装置100の金属パターン118は、凸部119の素子搭載領域側面119aで半田バンプ132を形成する半田が止まらなかったとしても、引き回し領域118bに設けられた溝部117で半田バンプ132を形成する半田の拡がりを止め、溝部117以降の引き回し領域118bへの半田の拡がりを抑えることができる。
【0029】
更に、本実施形態における圧電装置100の溝部117は、図3に示すように、複数の微少な凹凸が形成されていることで、素子搭載領域側面119aを超えて半田バンプ132が拡がったとしても、溝部117の複数の微少な凹凸で半田バンプ132の拡がりを抑えることができる。また、本実施形態における溝部117は、複数の微少な凹凸が半田の流れを抑える方向に形成されており、半田の流れが複数の微少な凹凸で止まるように形成されている。
【0030】
また、前記した実施形態以外にも、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。例えば、金属パターン118は、3層構造を示したが例えば4層構造の多層構造でも構わない。また、金属パターン118の3層構造の組成も、例えば、下層にモリブデン(Mo)、中間層にニッケル(Ni)、上層に金(Au)が形成された構造を示したがこれに限定されず、他の金属の組み合わせでも構わない。例えば、金属パターン118は、下層にタングステン(W)、中間層に銅(Cu)、上層に銀(Ag)などの組み合わせでも構わない。また、前記実施形態に示した圧電装置100の第一の凹部K1に搭載される圧電素子120は、平面視矩形状の圧電素板の両主面に励振用電極と接続用電極を備える構造を示したが、これに限定することなく、例えば、平面視形状が円形や、音叉形の圧電素板に各種電極を設けた形態の圧電素子でもよく、又圧電素子に変えて弾性表面波素子を用いても構わない。
【符号の説明】
【0031】
100・・・圧電装置
110・・・素子搭載部材
111・・・基板部
112・・・第一の枠部
113・・・第二の枠部
114・・・圧電素子搭載用パターン
116・・・外部接続端子
117・・・溝部
118・・・金属パターン
118a・・・素子搭載領域
118b・・・引き回し領域
119・・・凸部
119a・・・素子搭載領域側面
119b・・・引き回し領域側面
119c・・・凹部
120・・・圧電素子
121・・・導電性接着剤
130・・・集積回路素子
132・・・半田バンプ
134・・・電極パッド
140・・・樹脂
150・・・蓋部材
K1・・・第一の凹部
K2・・・第二の凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子搭載部材と、
前記素子搭載部材に搭載されている圧電素子と、
前記素子搭載部材の表面に形成されており、素子搭載領域および引き回し領域を含んでいる金属パターンと、
半田バンプによって前記金属パターンの前記素子搭載領域に電気的に接続されている集積回路素子とを備え、
前記金属パターンが前記素子搭載領域と前記引き回し領域との間に設けられた凸部を有しており、前記凸部の少なくとも表面部分が金属酸化物から成ることを特徴とする圧電装置。
【請求項2】
前記凸部が素子搭載領域側面を有しており、前記素子搭載領域側面が平面視において複数の凹部を有しており、複数の凹部のそれぞれが平面視において前記引き回し領域の方向へ向かって狭まるように凹んでいることを特徴とする請求項1記載の圧電装置。
【請求項3】
前記凸部が素子搭載領域側面と引き回し領域側面とを有しており、前記素子搭載領域側面が前記引き回し側面よりも急傾斜であることを特徴とする請求項1記載の圧電装置。
【請求項4】
前記金属パターンは、前記引き回し領域に設けられた溝部を有していることを特徴とする請求項1記載の圧電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−51556(P2013−51556A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188447(P2011−188447)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000104722)京セラクリスタルデバイス株式会社 (870)
【Fターム(参考)】