圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法
【課題】分極方向と分極方向に直交する方向との応力状態の違いを測定することができる圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法を提供する。
【解決手段】母相と前記母相中に分散された添加材相との複合構造を有する圧電/電歪セラミックス焼結体について、分極していない状態で、予定分極方向及び予定分極方向に直交する方向の2方向からラマン分光分析を行い、予定分極方向を分極方向として分極された圧電/電歪セラミックス焼結体について、分極方向及び分極方向に直交する方向の2方向からラマン分光分析を行い、分極していない圧電/電歪セラミックス焼結体についての2方向からのラマン分光分析の結果と、分極された圧電/電歪セラミックス焼結体についての2方向からのラマン分光分析の結果とから、圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態を得る圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法。
【解決手段】母相と前記母相中に分散された添加材相との複合構造を有する圧電/電歪セラミックス焼結体について、分極していない状態で、予定分極方向及び予定分極方向に直交する方向の2方向からラマン分光分析を行い、予定分極方向を分極方向として分極された圧電/電歪セラミックス焼結体について、分極方向及び分極方向に直交する方向の2方向からラマン分光分析を行い、分極していない圧電/電歪セラミックス焼結体についての2方向からのラマン分光分析の結果と、分極された圧電/電歪セラミックス焼結体についての2方向からのラマン分光分析の結果とから、圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態を得る圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法に関し、更に詳しくは、分極方向と分極方向に直交する方向との応力状態の違いを測定することができる圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電アクチュエータは、サブミクロンのオーダーで変位を精密に制御することが出来るという利点を有する。特に、圧電/電歪セラミックス焼結体を圧電/電歪体(圧電/電歪素子)として用いた圧電アクチュエータは、上記変位を精密に制御することに加えて、電気機械変換効率が高く、発生力が大きく、応答速度が速く、耐久性が高く、更に消費電力が少ないという利点をも有する。そのため、このような圧電アクチュエータは、これらの利点を生かして、インクジェットプリンタのヘッドやディーゼルエンジンのインジェクタ等に採用されている。
【0003】
また、このような圧電アクチュエータに用いられる圧電/電歪セラミックス焼結体としては、母相と添加材相を含むとともに、母相と添加材相がコンポジット化した構造を有し、当該母相及び添加材相の材質等の条件が特定の条件に限定された圧電/電歪セラミックス焼結体が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
このような圧電/電歪セラミックス焼結体は、母相を構成する粒子の内部(粒内)に、圧縮応力が導入された状態となり、優れた電気的特性(電界誘起歪、比誘電率、圧電定数、誘電損失等)を示す。このような、圧電/電歪セラミックス焼結体に生じた応力の存在は、ラマン分光分析によって確認されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−53022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来、このような圧電/電歪セラミックス焼結体内に生じた応力の、異方性を測定することはできなかった。
【0007】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、分極方向と分極方向に直交する方向との応力状態の違いを測定することができる圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1] 母相と前記母相中に分散された添加材相との複合構造を有する圧電/電歪セラミックス焼結体について、分極していない状態で、予定分極方向及び前記予定分極方向に直交する方向の2方向からラマン分光分析を行い、前記予定分極方向を分極方向として分極された圧電/電歪セラミックス焼結体について、前記分極方向及び前記分極方向に直交する方向の2方向からラマン分光分析を行い、前記分極していない圧電/電歪セラミックス焼結体についての前記2方向からの前記ラマン分光分析の結果と、前記分極された圧電/電歪セラミックス焼結体についての前記2方向からの前記ラマン分光分析の結果とから、前記圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態を得る圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法。
【0009】
[2] それぞれの前記ラマン分光分析において、測定された波数シフトを統計処理したものをそれぞれの前記ラマン分光分析の結果とする[1]に記載の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法。
【0010】
[3] 前記母相及び前記添加材相のそれぞれについて、ダイヤモンドアンビルセル内で圧力を変化させながらラマン分光分析を行い、前記母相及び前記添加材相のそれぞれについての、波数シフトと応力との関係を示す検量線を作成し、前記検量線と、それぞれの前記圧電/電歪セラミックス焼結体のラマン分光分析の結果とから、前記圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態を得る[1]又は[2]に記載の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法。
【0011】
[4] それぞれの前記圧電/電歪セラミックス焼結体のラマン分光分析を行う際に、前記圧電/電歪セラミックス焼結体におけるラマン分光分析を行う面を、複数箇所に区分けし、前記区分けされた箇所毎にラマン分光分析を行い、前記圧電/電歪セラミックス焼結体の前記ラマン分光分析を行った面における応力の分布を得る[1]〜[3]のいずれかに記載の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法によれば、分極前の圧電/電歪セラミックス焼結体と分極後の圧電/電歪セラミックス焼結体のそれぞれについて、「分極方向(又は予定分極方向)」及び「分極方向(又は予定分極方向)に直交する方向」の2方向からラマン分光分析を行うため、「分極方向に直交する方向」における応力状態と、「分極方向」における応力状態との違い(応力の異方性)を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法の一実施形態の測定対象である圧電/電歪セラミックス焼結体の断面を示す模式図である。
【図2】本発明の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法の一実施形態における、ラマン分光分析を説明する模式図である。
【図3】本発明の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法の一実施形態における、ラマン分光分析を説明する模式図である。
【図4】ダイヤモンドアンビルセル及び試料の断面を示す模式図である。
【図5】本発明の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法の他の実施形態において、圧電/電歪セラミックス焼結体のラマン分光分析を行う際に、レーザー光を照射する、圧電/電歪セラミックス焼結体の面を示す模式図である。
【図6】分極していない圧電/電歪セラミックス焼結体についての予定分極方向からのラマン分光分析の結果を示すグラフである。
【図7】分極された圧電/電歪セラミックス焼結体についての分極方向からのラマン分光分析の結果を示すグラフである。
【図8】分極された圧電/電歪セラミックス焼結体についての分極方向に直交する方向からのラマン分光分析の結果を示すグラフである。
【図9】母相の検量線を示すグラフである。
【図10】添加材相の検量線を示すグラフである。
【図11】分極された圧電/電歪セラミックス焼結体の、分極方向のラマン分光分析の結果を示す拡大写真である。
【図12】分極されていない圧電/電歪セラミックス焼結体の、分極方向のラマン分光分析の結果を示す拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0015】
本発明の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法の一実施形態は、図1に示される母相1と母相1中に分散された添加材相2との複合構造を有する圧電/電歪セラミックス焼結体100について、分極していない状態で、予定分極方向及び予定分極方向に直交する方向の2方向からラマン分光分析を行い、予定分極方向を分極方向として分極された圧電/電歪セラミックス焼結体について、分極方向及び分極方向に直交する方向の2方向からラマン分光分析を行い、分極していない圧電/電歪セラミックス焼結体についての2方向からのラマン分光分析の結果と、分極された圧電/電歪セラミックス焼結体についての2方向からのラマン分光分析の結果とから、圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態を得る方法である。尚、圧電/電歪セラミックス焼結体とは、圧力を加えると電荷が発生し、電界をかけると歪曲(変形)するセラミックス焼結体のことである。図1は、本発明の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法の測定対象である圧電/電歪セラミックス焼結体の断面を示す模式図である。
【0016】
このように、本実施形態の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法は、分極前の圧電/電歪セラミックス焼結体と分極後の圧電/電歪セラミックス焼結体のそれぞれについて、「分極方向(又は予定分極方向)」及び「分極方向(又は予定分極方向)に直交する方向」の2方向からラマン分光分析を行うため、「分極方向に直交する方向」における応力状態と、「分極方向」における応力状態との違い(応力の異方性)を測定することができる。
【0017】
(1)圧電/電歪セラミックス焼結体:
本実施形態の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法の測定対象である圧電/電歪セラミックス焼結体は、図1に示すように、母相1と母相1中に分散された添加材相2との複合構造を有する(母相と添加材相がコンポジット化した構造を有する)ものである。母相は母材となる部分であり、添加材相は母材に分散する充填剤(微粒子)である。
【0018】
母相は、圧電/電歪材料で構成されていることが好ましく、添加材相は、圧電/電歪材料で構成されていてもよいし、圧電/電歪材料ではないセラミック材料や金属酸化物で構成されていてもよい。母相を構成する圧電/電歪材料としては、ニオブ酸アルカリ系の強誘電体、チタン酸バリウム系の強誘電体、PZT、PbTiO3、(Bi0.5,Na0.5)TiO3等が挙げられる。添加剤相を構成する圧電/電歪材料としては、母相と組成は異なるが、ニオブ酸アルカリ系の強誘電体、チタン酸バリウム系の強誘電体、PZT、PbTiO3、(Bi0.5,Na0.5)TiO3等が挙げられる。
【0019】
(2)ラマン分光分析:
本実施形態の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法においては、図2に示すように、まず、圧電/電歪セラミックス焼結体100について、分極していない状態で、予定分極方向11及び予定分極方向11に直交する方向の2方向からラマン分光分析を行う。ここで、圧電/電歪セラミックス焼結体を分極していない状態では、「分極方向」を特定することができない(分極方向がまだ存在しない)ため、後に、圧電/電歪セラミックス焼結体を分極する際の分極方向を、分極していない状態における圧電/電歪セラミックス焼結体の「予定分極方向」と称する。また、上記「ラマン分光分析を行う「方向」」は、ラマン分光分析を行う際のレーザー光の進行方向である。従って、予定分極方向11からラマン分光分析を行う際には、分極予定方向11に対して平行にレーザー光13を照射して、圧電/電歪セラミックス焼結体100のラマン分光分析を行う。また、予定分極方向11に直交する方向からラマン分光分析を行う際には、予定分極方向11に対して垂直にレーザー光14を照射して、圧電/電歪セラミックス焼結体100のラマン分光分析を行う。図2において、圧電/電歪セラミックス焼結体100は四角柱状であり、予定分極方向11は、四角柱の一の面に対して直交する方向である。また、ラマン分光分析の条件は、日本分光社製、レーザーラマン分光装置(NRS−2000)において、励起光波長を514.5nmとし、出力を10mWとし、露光時間を10秒とし、測定積算回数を40回とした。図2は、本発明の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法の一実施形態における、ラマン分光分析を説明する模式図である。
【0020】
ラマン分光分析においては、測定された波数シフトの計測データを頻度分布処理したものをそれぞれのラマン分光分析の結果とすることが好ましい。
【0021】
また、ラマン分光分析を行う際には、母相及び添加材相のそれぞれについて、図4に示すようなダイヤモンドアンビルセル(Diamond Anvil Cell(DAC))21内で圧力(応力)を変化させながらラマン分光分析を行い、母相及び添加材相のそれぞれについての、「波数シフト」と「応力」との関係を示す検量線を作成し、「検量線」と、「それぞれの圧電/電歪セラミックス焼結体のラマン分光分析の結果(波数シフト)」とから、圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態を得ることが好ましい。図4は、ダイヤモンドアンビルセル及び試料の断面を示す模式図である。
【0022】
ここで、ダイヤモンドアンビルセル(DAC)21は、図4に示すように、「所定の間隔を開けて配置された2つのダイヤモンド22,22」と、「貫通孔が形成されたガスケット23」とによって形成された空間24内が、高圧で加圧されるように形成されたものである。そして、空間24内を高圧で加圧することにより、空間24内に配置した試料25が、高圧で加圧される。空間24内を加圧する際には、空間24内に圧力媒体を充満し、2つのダイヤモンド22,22に対して、2つのダイヤモンド22,22が互いに近づく方向に力を加える。圧力媒体としては、メタノールとエタノールとの混合液(メタノール:エタノール=4:1(体積比))を用いる。ガスケット23は、2つのダイヤモンド22,22の間に挟まれるように配置され、ガスケット23の貫通孔部分が空間24を構成している。ガスケット23の材質は、ステンレス鋼が好ましい。
【0023】
「母相について、ダイヤモンドアンビルセル(DAC)内で圧力(応力)を変化させながらラマン分光分析を行う」というときは、「圧電/電歪セラミックス焼結体を構成する母相」と同じ材質の圧電/電歪セラミックス焼結体(母相のみ)を試料25として空間24内に配置するとともに空間24内を圧力媒体で満たし、空間24内の圧力を変化させながら、「母相のみ」のラマン分光分析を行うことを意味する。また、添加材相について、ダイヤモンドアンビルセル(DAC)内で圧力を変化させながらラマン分光分析を行う場合も、同様に、圧電/電歪セラミックス焼結体を構成する添加材相と同じ材質の圧電/電歪セラミックス焼結体(添加材相のみ)を試料25として空間24内に配置するとともに空間24内を圧力媒体で満たし、空間24内の圧力を変化させながら、「添加材相のみ」のラマン分光分析を行うことを意味する。
【0024】
検量線を作成する際に変化させる圧力(応力)の範囲は、0〜5GPaが好ましく、0〜4GPaが更に好ましい。5GPaを超えると、相転移が起こりやすく、同一結晶系における応力見積もりに誤りを生じる可能性がある。
【0025】
次に、予定分極方向を分極方向として分極された圧電/電歪セラミックス焼結体について、分極方向及び「分極方向に直交する方向」の2方向からラマン分光分析を行う。尚、圧電/電歪セラミックス焼結体を分極処理する際には、分極前の圧電/電歪セラミックス焼結体に2〜10kV/mmの電圧を1分間以上印加することが好ましい。このときに、電圧を印加する方向が分極方向(予定分極方向)となる。
【0026】
分極された圧電/電歪セラミックス焼結体についてラマン分光分析を行う方法は、上記分極していない(されていない)圧電/電歪セラミックス焼結体についてラマン分光分析を行う方法と同じであることが好ましい。
【0027】
上記のように、分極していない圧電/電歪セラミックス焼結体について所定の2方向(予定分極方向と、それに直交する方向)からラマン分光分析を行い、更に、分極された圧電/電歪セラミックス焼結体について所定の2方向(分極方向と、それに直交する方向)からラマン分光分析を行うことにより、非破壊で、圧電/電歪セラミックス焼結体の分極方向と分極方向に直交する方向との応力状態の違いを測定することができる。分極していない圧電/電歪セラミックス焼結体と、分極された圧電/電歪セラミックス焼結体についてラマン分光分析を行うのは、分極処理前の圧電/電歪セラミックス焼結体に予め応力状態の異方性が導入されているか調べるためであり、異方性が有る場合はその影響を排除して比較評価する必要が生じるためである。
【0028】
次に、本発明の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法の他の実施形態について説明する。
【0029】
本実施形態の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法は、それぞれの圧電/電歪セラミックス焼結体のラマン分光分析を行う際に、圧電/電歪セラミックス焼結体におけるラマン分光分析を行う面を、複数箇所に区分けし、区分けされた箇所毎にラマン分光分析を行い、圧電/電歪セラミックス焼結体のラマン分光分析を行った面における応力の分布を得るものである。
【0030】
ここで、「圧電/電歪セラミックス焼結体におけるラマン分光分析を行う面」とは、圧電/電歪セラミックス焼結体についてラマン分光分析を行う際に、レーザー光を照射する面(圧電/電歪セラミックス焼結体における「レーザー光の照射面」)を意味する。
【0031】
また、「圧電/電歪セラミックス焼結体におけるラマン分光分析を行う面を、複数箇所に区分けし」とは、図5に示されるように、圧電/電歪セラミックス焼結体100におけるレーザー光の照射面31を、複数の「区分けされた箇所32」に区分けすることを意味する。複数の「区分けされた箇所32」は、複数の「区分けにより形成された小さな面」である。区分けの方法は、特に限定されないが、図5に示されるように、複数の平行線と、それらに直交する複数の平行線とにより、圧電/電歪セラミックス焼結体100におけるレーザー光の照射面31に、四角形の「区分けされた箇所32」が複数個所形成されるようにすることが好ましい。「区分けされた箇所32」の形状は、特に限定されないが、正方形が好ましい。尚、ここで「区分けする」というときは、ラマン分光分析を行う範囲を複数個所に分ける(「区分けされた箇所」毎に、別々にラマン分光分析を行う)ことを意味し、圧電/電歪セラミックス焼結体100におけるレーザー光の照射面31に対して実際に線を引いたり、当該レーザー光の照射面31を切断したりすることを意味するものではない。図5は、本発明の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法の他の実施形態において、圧電/電歪セラミックス焼結体のラマン分光分析を行う際に、レーザー光を照射する、圧電/電歪セラミックス焼結体の面(レーザー光の照射面)を示す模式図である。
【0032】
また、「それぞれの圧電/電歪セラミックス焼結体のラマン分光分析を行う際」とは、「圧電/電歪セラミックス焼結体について、分極していない状態で、予定分極方向及び予定分極方向11に直交する方向の2方向からラマン分光分析を行う際、並びに、予定分極方向を分極方向として分極された圧電/電歪セラミックス焼結体について、分極方向及び分極方向に直交する方向の2方向からラマン分光分析を行う際」ということを意味する。
【0033】
本実施形態の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法は、「圧電/電歪セラミックス焼結体におけるラマン分光分析を行う面を、複数箇所に区分けし、区分けされた箇所毎にラマン分光分析を行い、圧電/電歪セラミックス焼結体のラマン分光分析を行った面における応力の分布を得る」ものであるため、圧電/電歪セラミックス焼結体中に分散する添加材相の配置を特定することができる。そのため、本実施形態の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法によって、圧電/電歪セラミックス焼結体における、添加材相の分散状態を測定することができる。
【0034】
母相と母相中に分散された添加材相との複合構造を有する圧電/電歪セラミックス焼結体においては、通常、分極後の母相の歪の大きさと、分極後の添加材相の歪の大きさとが異なるため、母相と添加材相とが、互いに応力がかかった状態となる。このように、母相と添加材相との間に応力が生じている(母相が添加材相により応力を受けているとともに、添加材相が母相により応力を受けている)ため、この応力を測定することができれば、母相中に添加材相がどのように分散しているかを知ることができる。本実施形態の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法は、このような、母相と添加材相との間に生じている応力を測定することができるため、添加材相の分散状態を測定することができる。
【0035】
また、圧電/電歪セラミックス焼結体におけるレーザー光の照射面を、複数の「区分けされた箇所32」に区分けする際の、1つの「区分けされた箇所32」の大きさは、10〜200μm2が好ましく、20〜100μm2が更に好ましく、40〜60μm2が特に好ましい。10μm2より小さいと、添加材相の分布を確認し難くなることがある。200μm2より大きいと、データ数が多くなるだけである。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0037】
(実施例1)
母相と母相中に分散された添加材相との複合構造を有する圧電/電歪セラミックス焼結体について、分極していない状態で、予定分極方向及び前記予定分極方向に直交する方向の2方向からラマン分光分析を行った。そして、予定分極方向を分極方向として上記圧電/電歪セラミックス焼結体を分極し、分極された圧電/電歪セラミックス焼結体について、分極方向及び分極方向に直交する方向の2方向からラマン分光分析を行った。圧電/電歪セラミックス焼結体としては、以下に示すものを用いた。また、ラマン分光分析は、以下に示す方法で行った。
【0038】
そして、分極していない圧電/電歪セラミックス焼結体についての2方向からのラマン分光分析の結果と、分極された圧電/電歪セラミックス焼結体についての2方向からのラマン分光分析の結果と、以下に示される方法で作成した検量線とから、圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態を確認した。結果を図6〜図8に示す。尚、分極していない圧電/電歪セラミックス焼結体については、2方向からのラマン分析の結果がほぼ同じであるため、予定分極方向からのラマン分光分析の結果のみを示した。図6は、分極していない圧電/電歪セラミックス焼結体についての予定分極方向からのラマン分光分析の結果を示すグラフである。図7は、分極された圧電/電歪セラミックス焼結体についての分極方向からのラマン分光分析の結果を示すグラフである。図8は、分極された圧電/電歪セラミックス焼結体についての分極方向に直交する方向からのラマン分光分析の結果を示すグラフである。
【0039】
図6〜図8のそれぞれのグラフの形状が異なることより、圧電/電歪セラミックス焼結体における応力の異方性が観測されていることがわかる。図6〜図8のラマン分光分析の結果と、図9、図10の検量線とから、圧電/電歪セラミックス焼結体全体における応力の状態を読み取ることができる。具体的には、以下のように解析を行う。線形複合則によれば、複合構造のラマンシフトFcompは「Fcomp=(VmFm+VfFf)/(Vm+Vf)=0.8Fm+0.2Ff」で示される。ここで、VmおよびVfはそれぞれ母相と添加材相の体積分率を示し、FmおよびFfはそれぞれ母相のみ及び添加材相のみから得たラマンシフトを示す。一方、検量線を直線近似した場合、FmおよびFfは、それぞれ、「Fm=χmP+C1」及び「Ff=χfP+C2」となる。ここで、「C1」は、図9の検量線におけるy軸切片(620)である。また、「C2」は、図10の検量線におけるy軸切片(618)である。また、χmおよびχfはそれぞれ母相と添加材相の圧力感受率(勾配)であり、グラフ中から直線近似して求められる。したがって、上記Fcomp、Fm及びFfの式より、FcompとPの関係が導かれる。以上より、測定したFcompのヒストグラム、が応力分布図(圧電/電歪セラミックス焼結体の応力の状態)に書き換えられ、更に、測定したFcompの平面分布が、応力等高線図(圧電/電歪セラミックス焼結体全体における応力の状態)等に書き換えられる。
【0040】
(圧電/電歪セラミックス焼結体)
[{Li0.06(K0.45Na0.55)0.94}0.9995Bi0.0005]1.01(Nb0.878Ta0.082Sb0.040)O3+0.05モル%Mnの組成からなる仮焼/粉砕粉(母相原料粉末、粒径:0.2〜0.5μm)と、[{Li0.06(K0.45Na0.55)0.94}0.9995Bi0.0005]1.00(Nb0.918Ta0.082)O3+0.05モル%Mnの組成からなる添加材相原料粉末(粒径:1〜5μm)とをそれぞれ用意した。母相と添加材相をコンポジット化した焼結体(圧電/電歪セラミックス焼結体)の全体(ただし、気孔部を除く)に対する、添加材相の体積分率が、20体積%となるように母相原料粉末と添加材相原料粉末を混合した後、ペレット状に成形し、ペレット状試料を得た。ペレット状試料を大気中、500〜1000℃/時間の速度で1000〜1100℃まで昇温し、1〜2分間保持した後、300〜2000℃/時間の速度で850〜990℃まで冷却し、更に1〜15時間保持した後、室温まで冷却して圧電/電歪セラミックス焼結体を得た。得られた焼結体の相対密度は94〜95%であった。
【0041】
得られたペレット状の圧電/電歪セラミックス焼結体を成形加工して、短冊状試料(12mm×3mm×1mm)を得た。そして、短冊状試料について、大気中、600〜900℃で1時間熱処理して、加工応力を除去した。ここで得られた短冊状の圧電/電歪セラミックス焼結体を、分極前の圧電/電歪セラミックス焼結体として、ラマン分光分析に用いた。
【0042】
また、分極していない状態でラマン分光分析を行った圧電/電歪セラミックス焼結体について、25℃に保持したシリコンオイル中で5kV/mmの電圧で15分間分極処理を行い、「分極された圧電/電歪セラミックス焼結体」を得た。
【0043】
(ラマン分光分析)
励起波長514.5nmのレーザーを搭載したラマン分光分析装置を用いて、短冊状試料(圧電/電歪セラミックス焼結体)についてラマン分光分析を行った。短冊状試料は、加工歪を除去するため、分析前に試料の断面を、Arイオンを用いたCP法(Cross−Section Polishing)により研磨した。また、ラマン分光分析装置のレーザー径を約1μmとした。なお、測定温度は室温とした。また、測定された波数シフトを頻度分布処理したものをラマン分光分析の結果とした。
【0044】
(検量線)
圧電/電歪セラミックス焼結体を構成する母相と同じ材質の圧電/電歪セラミックス焼結体、及び圧電/電歪セラミックス焼結体を構成する添加材相と同じ材質の圧電/電歪セラミックス焼結体のそれぞれについて、図4に示すようなダイヤモンドアンビルセル21内で圧力(応力)を変化させながらラマン分光分析を行い、母相及び添加材相のそれぞれについての、「波数シフト」と「応力」との関係を示す検量線を作成した。検量線を作成する際に変化させる圧力(応力)の範囲は、0〜4GPaとした。得られた検量線を図9、図10に示す。図9は、母相の検量線を示すグラフである。図10は、添加材相の検量線を示すグラフである。
【0045】
(実施例2)
各ラマン分光分析を行う際に、ラマン分光分析装置のレーザー径を約0.4μmとし、ラマン分光分析を行う面を複数箇所に区分けし、区分けされた箇所毎にラマン分光分析を行った(スペクトル波数のマッピング分析)を行った以外は、実施例1と同様にして、圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態の測定を行った。各「区分けされた箇所」は、0.4μm×0.4μmの正方形(XY走査ステップ幅:0.4μm)とした。結果を図11、図12に示す。図11は、分極された圧電/電歪セラミックス焼結体の、分極方向のラマン分光分析の結果を示す拡大写真である。図12は、分極されていない圧電/電歪セラミックス焼結体の、分極方向のラマン分光分析の結果を示す拡大写真である。図11、図12において、色が濃いほど、応力が強くかかっていることを示す。そして、応力が強くかかっている位置に添加材相が配置されている。
【0046】
従って、図11に示される応力の分散状態より、分極された圧電/電歪セラミックス焼結体の添加材相の分散状態を確認することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法は、圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態の測定に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1:母相、2:添加材相、11:予定分極方向、12:分極方向、13,14,15,16:レーザー光、21:ダイヤモンドアンビルセル、22:ダイヤモンド、23:ガスケット、24:空間、25:試料、31:レーザー光の照射面、32:区分けされた箇所、100:圧電/電歪セラミックス焼結体。
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法に関し、更に詳しくは、分極方向と分極方向に直交する方向との応力状態の違いを測定することができる圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電アクチュエータは、サブミクロンのオーダーで変位を精密に制御することが出来るという利点を有する。特に、圧電/電歪セラミックス焼結体を圧電/電歪体(圧電/電歪素子)として用いた圧電アクチュエータは、上記変位を精密に制御することに加えて、電気機械変換効率が高く、発生力が大きく、応答速度が速く、耐久性が高く、更に消費電力が少ないという利点をも有する。そのため、このような圧電アクチュエータは、これらの利点を生かして、インクジェットプリンタのヘッドやディーゼルエンジンのインジェクタ等に採用されている。
【0003】
また、このような圧電アクチュエータに用いられる圧電/電歪セラミックス焼結体としては、母相と添加材相を含むとともに、母相と添加材相がコンポジット化した構造を有し、当該母相及び添加材相の材質等の条件が特定の条件に限定された圧電/電歪セラミックス焼結体が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
このような圧電/電歪セラミックス焼結体は、母相を構成する粒子の内部(粒内)に、圧縮応力が導入された状態となり、優れた電気的特性(電界誘起歪、比誘電率、圧電定数、誘電損失等)を示す。このような、圧電/電歪セラミックス焼結体に生じた応力の存在は、ラマン分光分析によって確認されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−53022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来、このような圧電/電歪セラミックス焼結体内に生じた応力の、異方性を測定することはできなかった。
【0007】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、分極方向と分極方向に直交する方向との応力状態の違いを測定することができる圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1] 母相と前記母相中に分散された添加材相との複合構造を有する圧電/電歪セラミックス焼結体について、分極していない状態で、予定分極方向及び前記予定分極方向に直交する方向の2方向からラマン分光分析を行い、前記予定分極方向を分極方向として分極された圧電/電歪セラミックス焼結体について、前記分極方向及び前記分極方向に直交する方向の2方向からラマン分光分析を行い、前記分極していない圧電/電歪セラミックス焼結体についての前記2方向からの前記ラマン分光分析の結果と、前記分極された圧電/電歪セラミックス焼結体についての前記2方向からの前記ラマン分光分析の結果とから、前記圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態を得る圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法。
【0009】
[2] それぞれの前記ラマン分光分析において、測定された波数シフトを統計処理したものをそれぞれの前記ラマン分光分析の結果とする[1]に記載の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法。
【0010】
[3] 前記母相及び前記添加材相のそれぞれについて、ダイヤモンドアンビルセル内で圧力を変化させながらラマン分光分析を行い、前記母相及び前記添加材相のそれぞれについての、波数シフトと応力との関係を示す検量線を作成し、前記検量線と、それぞれの前記圧電/電歪セラミックス焼結体のラマン分光分析の結果とから、前記圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態を得る[1]又は[2]に記載の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法。
【0011】
[4] それぞれの前記圧電/電歪セラミックス焼結体のラマン分光分析を行う際に、前記圧電/電歪セラミックス焼結体におけるラマン分光分析を行う面を、複数箇所に区分けし、前記区分けされた箇所毎にラマン分光分析を行い、前記圧電/電歪セラミックス焼結体の前記ラマン分光分析を行った面における応力の分布を得る[1]〜[3]のいずれかに記載の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法によれば、分極前の圧電/電歪セラミックス焼結体と分極後の圧電/電歪セラミックス焼結体のそれぞれについて、「分極方向(又は予定分極方向)」及び「分極方向(又は予定分極方向)に直交する方向」の2方向からラマン分光分析を行うため、「分極方向に直交する方向」における応力状態と、「分極方向」における応力状態との違い(応力の異方性)を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法の一実施形態の測定対象である圧電/電歪セラミックス焼結体の断面を示す模式図である。
【図2】本発明の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法の一実施形態における、ラマン分光分析を説明する模式図である。
【図3】本発明の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法の一実施形態における、ラマン分光分析を説明する模式図である。
【図4】ダイヤモンドアンビルセル及び試料の断面を示す模式図である。
【図5】本発明の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法の他の実施形態において、圧電/電歪セラミックス焼結体のラマン分光分析を行う際に、レーザー光を照射する、圧電/電歪セラミックス焼結体の面を示す模式図である。
【図6】分極していない圧電/電歪セラミックス焼結体についての予定分極方向からのラマン分光分析の結果を示すグラフである。
【図7】分極された圧電/電歪セラミックス焼結体についての分極方向からのラマン分光分析の結果を示すグラフである。
【図8】分極された圧電/電歪セラミックス焼結体についての分極方向に直交する方向からのラマン分光分析の結果を示すグラフである。
【図9】母相の検量線を示すグラフである。
【図10】添加材相の検量線を示すグラフである。
【図11】分極された圧電/電歪セラミックス焼結体の、分極方向のラマン分光分析の結果を示す拡大写真である。
【図12】分極されていない圧電/電歪セラミックス焼結体の、分極方向のラマン分光分析の結果を示す拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0015】
本発明の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法の一実施形態は、図1に示される母相1と母相1中に分散された添加材相2との複合構造を有する圧電/電歪セラミックス焼結体100について、分極していない状態で、予定分極方向及び予定分極方向に直交する方向の2方向からラマン分光分析を行い、予定分極方向を分極方向として分極された圧電/電歪セラミックス焼結体について、分極方向及び分極方向に直交する方向の2方向からラマン分光分析を行い、分極していない圧電/電歪セラミックス焼結体についての2方向からのラマン分光分析の結果と、分極された圧電/電歪セラミックス焼結体についての2方向からのラマン分光分析の結果とから、圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態を得る方法である。尚、圧電/電歪セラミックス焼結体とは、圧力を加えると電荷が発生し、電界をかけると歪曲(変形)するセラミックス焼結体のことである。図1は、本発明の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法の測定対象である圧電/電歪セラミックス焼結体の断面を示す模式図である。
【0016】
このように、本実施形態の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法は、分極前の圧電/電歪セラミックス焼結体と分極後の圧電/電歪セラミックス焼結体のそれぞれについて、「分極方向(又は予定分極方向)」及び「分極方向(又は予定分極方向)に直交する方向」の2方向からラマン分光分析を行うため、「分極方向に直交する方向」における応力状態と、「分極方向」における応力状態との違い(応力の異方性)を測定することができる。
【0017】
(1)圧電/電歪セラミックス焼結体:
本実施形態の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法の測定対象である圧電/電歪セラミックス焼結体は、図1に示すように、母相1と母相1中に分散された添加材相2との複合構造を有する(母相と添加材相がコンポジット化した構造を有する)ものである。母相は母材となる部分であり、添加材相は母材に分散する充填剤(微粒子)である。
【0018】
母相は、圧電/電歪材料で構成されていることが好ましく、添加材相は、圧電/電歪材料で構成されていてもよいし、圧電/電歪材料ではないセラミック材料や金属酸化物で構成されていてもよい。母相を構成する圧電/電歪材料としては、ニオブ酸アルカリ系の強誘電体、チタン酸バリウム系の強誘電体、PZT、PbTiO3、(Bi0.5,Na0.5)TiO3等が挙げられる。添加剤相を構成する圧電/電歪材料としては、母相と組成は異なるが、ニオブ酸アルカリ系の強誘電体、チタン酸バリウム系の強誘電体、PZT、PbTiO3、(Bi0.5,Na0.5)TiO3等が挙げられる。
【0019】
(2)ラマン分光分析:
本実施形態の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法においては、図2に示すように、まず、圧電/電歪セラミックス焼結体100について、分極していない状態で、予定分極方向11及び予定分極方向11に直交する方向の2方向からラマン分光分析を行う。ここで、圧電/電歪セラミックス焼結体を分極していない状態では、「分極方向」を特定することができない(分極方向がまだ存在しない)ため、後に、圧電/電歪セラミックス焼結体を分極する際の分極方向を、分極していない状態における圧電/電歪セラミックス焼結体の「予定分極方向」と称する。また、上記「ラマン分光分析を行う「方向」」は、ラマン分光分析を行う際のレーザー光の進行方向である。従って、予定分極方向11からラマン分光分析を行う際には、分極予定方向11に対して平行にレーザー光13を照射して、圧電/電歪セラミックス焼結体100のラマン分光分析を行う。また、予定分極方向11に直交する方向からラマン分光分析を行う際には、予定分極方向11に対して垂直にレーザー光14を照射して、圧電/電歪セラミックス焼結体100のラマン分光分析を行う。図2において、圧電/電歪セラミックス焼結体100は四角柱状であり、予定分極方向11は、四角柱の一の面に対して直交する方向である。また、ラマン分光分析の条件は、日本分光社製、レーザーラマン分光装置(NRS−2000)において、励起光波長を514.5nmとし、出力を10mWとし、露光時間を10秒とし、測定積算回数を40回とした。図2は、本発明の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法の一実施形態における、ラマン分光分析を説明する模式図である。
【0020】
ラマン分光分析においては、測定された波数シフトの計測データを頻度分布処理したものをそれぞれのラマン分光分析の結果とすることが好ましい。
【0021】
また、ラマン分光分析を行う際には、母相及び添加材相のそれぞれについて、図4に示すようなダイヤモンドアンビルセル(Diamond Anvil Cell(DAC))21内で圧力(応力)を変化させながらラマン分光分析を行い、母相及び添加材相のそれぞれについての、「波数シフト」と「応力」との関係を示す検量線を作成し、「検量線」と、「それぞれの圧電/電歪セラミックス焼結体のラマン分光分析の結果(波数シフト)」とから、圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態を得ることが好ましい。図4は、ダイヤモンドアンビルセル及び試料の断面を示す模式図である。
【0022】
ここで、ダイヤモンドアンビルセル(DAC)21は、図4に示すように、「所定の間隔を開けて配置された2つのダイヤモンド22,22」と、「貫通孔が形成されたガスケット23」とによって形成された空間24内が、高圧で加圧されるように形成されたものである。そして、空間24内を高圧で加圧することにより、空間24内に配置した試料25が、高圧で加圧される。空間24内を加圧する際には、空間24内に圧力媒体を充満し、2つのダイヤモンド22,22に対して、2つのダイヤモンド22,22が互いに近づく方向に力を加える。圧力媒体としては、メタノールとエタノールとの混合液(メタノール:エタノール=4:1(体積比))を用いる。ガスケット23は、2つのダイヤモンド22,22の間に挟まれるように配置され、ガスケット23の貫通孔部分が空間24を構成している。ガスケット23の材質は、ステンレス鋼が好ましい。
【0023】
「母相について、ダイヤモンドアンビルセル(DAC)内で圧力(応力)を変化させながらラマン分光分析を行う」というときは、「圧電/電歪セラミックス焼結体を構成する母相」と同じ材質の圧電/電歪セラミックス焼結体(母相のみ)を試料25として空間24内に配置するとともに空間24内を圧力媒体で満たし、空間24内の圧力を変化させながら、「母相のみ」のラマン分光分析を行うことを意味する。また、添加材相について、ダイヤモンドアンビルセル(DAC)内で圧力を変化させながらラマン分光分析を行う場合も、同様に、圧電/電歪セラミックス焼結体を構成する添加材相と同じ材質の圧電/電歪セラミックス焼結体(添加材相のみ)を試料25として空間24内に配置するとともに空間24内を圧力媒体で満たし、空間24内の圧力を変化させながら、「添加材相のみ」のラマン分光分析を行うことを意味する。
【0024】
検量線を作成する際に変化させる圧力(応力)の範囲は、0〜5GPaが好ましく、0〜4GPaが更に好ましい。5GPaを超えると、相転移が起こりやすく、同一結晶系における応力見積もりに誤りを生じる可能性がある。
【0025】
次に、予定分極方向を分極方向として分極された圧電/電歪セラミックス焼結体について、分極方向及び「分極方向に直交する方向」の2方向からラマン分光分析を行う。尚、圧電/電歪セラミックス焼結体を分極処理する際には、分極前の圧電/電歪セラミックス焼結体に2〜10kV/mmの電圧を1分間以上印加することが好ましい。このときに、電圧を印加する方向が分極方向(予定分極方向)となる。
【0026】
分極された圧電/電歪セラミックス焼結体についてラマン分光分析を行う方法は、上記分極していない(されていない)圧電/電歪セラミックス焼結体についてラマン分光分析を行う方法と同じであることが好ましい。
【0027】
上記のように、分極していない圧電/電歪セラミックス焼結体について所定の2方向(予定分極方向と、それに直交する方向)からラマン分光分析を行い、更に、分極された圧電/電歪セラミックス焼結体について所定の2方向(分極方向と、それに直交する方向)からラマン分光分析を行うことにより、非破壊で、圧電/電歪セラミックス焼結体の分極方向と分極方向に直交する方向との応力状態の違いを測定することができる。分極していない圧電/電歪セラミックス焼結体と、分極された圧電/電歪セラミックス焼結体についてラマン分光分析を行うのは、分極処理前の圧電/電歪セラミックス焼結体に予め応力状態の異方性が導入されているか調べるためであり、異方性が有る場合はその影響を排除して比較評価する必要が生じるためである。
【0028】
次に、本発明の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法の他の実施形態について説明する。
【0029】
本実施形態の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法は、それぞれの圧電/電歪セラミックス焼結体のラマン分光分析を行う際に、圧電/電歪セラミックス焼結体におけるラマン分光分析を行う面を、複数箇所に区分けし、区分けされた箇所毎にラマン分光分析を行い、圧電/電歪セラミックス焼結体のラマン分光分析を行った面における応力の分布を得るものである。
【0030】
ここで、「圧電/電歪セラミックス焼結体におけるラマン分光分析を行う面」とは、圧電/電歪セラミックス焼結体についてラマン分光分析を行う際に、レーザー光を照射する面(圧電/電歪セラミックス焼結体における「レーザー光の照射面」)を意味する。
【0031】
また、「圧電/電歪セラミックス焼結体におけるラマン分光分析を行う面を、複数箇所に区分けし」とは、図5に示されるように、圧電/電歪セラミックス焼結体100におけるレーザー光の照射面31を、複数の「区分けされた箇所32」に区分けすることを意味する。複数の「区分けされた箇所32」は、複数の「区分けにより形成された小さな面」である。区分けの方法は、特に限定されないが、図5に示されるように、複数の平行線と、それらに直交する複数の平行線とにより、圧電/電歪セラミックス焼結体100におけるレーザー光の照射面31に、四角形の「区分けされた箇所32」が複数個所形成されるようにすることが好ましい。「区分けされた箇所32」の形状は、特に限定されないが、正方形が好ましい。尚、ここで「区分けする」というときは、ラマン分光分析を行う範囲を複数個所に分ける(「区分けされた箇所」毎に、別々にラマン分光分析を行う)ことを意味し、圧電/電歪セラミックス焼結体100におけるレーザー光の照射面31に対して実際に線を引いたり、当該レーザー光の照射面31を切断したりすることを意味するものではない。図5は、本発明の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法の他の実施形態において、圧電/電歪セラミックス焼結体のラマン分光分析を行う際に、レーザー光を照射する、圧電/電歪セラミックス焼結体の面(レーザー光の照射面)を示す模式図である。
【0032】
また、「それぞれの圧電/電歪セラミックス焼結体のラマン分光分析を行う際」とは、「圧電/電歪セラミックス焼結体について、分極していない状態で、予定分極方向及び予定分極方向11に直交する方向の2方向からラマン分光分析を行う際、並びに、予定分極方向を分極方向として分極された圧電/電歪セラミックス焼結体について、分極方向及び分極方向に直交する方向の2方向からラマン分光分析を行う際」ということを意味する。
【0033】
本実施形態の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法は、「圧電/電歪セラミックス焼結体におけるラマン分光分析を行う面を、複数箇所に区分けし、区分けされた箇所毎にラマン分光分析を行い、圧電/電歪セラミックス焼結体のラマン分光分析を行った面における応力の分布を得る」ものであるため、圧電/電歪セラミックス焼結体中に分散する添加材相の配置を特定することができる。そのため、本実施形態の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法によって、圧電/電歪セラミックス焼結体における、添加材相の分散状態を測定することができる。
【0034】
母相と母相中に分散された添加材相との複合構造を有する圧電/電歪セラミックス焼結体においては、通常、分極後の母相の歪の大きさと、分極後の添加材相の歪の大きさとが異なるため、母相と添加材相とが、互いに応力がかかった状態となる。このように、母相と添加材相との間に応力が生じている(母相が添加材相により応力を受けているとともに、添加材相が母相により応力を受けている)ため、この応力を測定することができれば、母相中に添加材相がどのように分散しているかを知ることができる。本実施形態の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法は、このような、母相と添加材相との間に生じている応力を測定することができるため、添加材相の分散状態を測定することができる。
【0035】
また、圧電/電歪セラミックス焼結体におけるレーザー光の照射面を、複数の「区分けされた箇所32」に区分けする際の、1つの「区分けされた箇所32」の大きさは、10〜200μm2が好ましく、20〜100μm2が更に好ましく、40〜60μm2が特に好ましい。10μm2より小さいと、添加材相の分布を確認し難くなることがある。200μm2より大きいと、データ数が多くなるだけである。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0037】
(実施例1)
母相と母相中に分散された添加材相との複合構造を有する圧電/電歪セラミックス焼結体について、分極していない状態で、予定分極方向及び前記予定分極方向に直交する方向の2方向からラマン分光分析を行った。そして、予定分極方向を分極方向として上記圧電/電歪セラミックス焼結体を分極し、分極された圧電/電歪セラミックス焼結体について、分極方向及び分極方向に直交する方向の2方向からラマン分光分析を行った。圧電/電歪セラミックス焼結体としては、以下に示すものを用いた。また、ラマン分光分析は、以下に示す方法で行った。
【0038】
そして、分極していない圧電/電歪セラミックス焼結体についての2方向からのラマン分光分析の結果と、分極された圧電/電歪セラミックス焼結体についての2方向からのラマン分光分析の結果と、以下に示される方法で作成した検量線とから、圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態を確認した。結果を図6〜図8に示す。尚、分極していない圧電/電歪セラミックス焼結体については、2方向からのラマン分析の結果がほぼ同じであるため、予定分極方向からのラマン分光分析の結果のみを示した。図6は、分極していない圧電/電歪セラミックス焼結体についての予定分極方向からのラマン分光分析の結果を示すグラフである。図7は、分極された圧電/電歪セラミックス焼結体についての分極方向からのラマン分光分析の結果を示すグラフである。図8は、分極された圧電/電歪セラミックス焼結体についての分極方向に直交する方向からのラマン分光分析の結果を示すグラフである。
【0039】
図6〜図8のそれぞれのグラフの形状が異なることより、圧電/電歪セラミックス焼結体における応力の異方性が観測されていることがわかる。図6〜図8のラマン分光分析の結果と、図9、図10の検量線とから、圧電/電歪セラミックス焼結体全体における応力の状態を読み取ることができる。具体的には、以下のように解析を行う。線形複合則によれば、複合構造のラマンシフトFcompは「Fcomp=(VmFm+VfFf)/(Vm+Vf)=0.8Fm+0.2Ff」で示される。ここで、VmおよびVfはそれぞれ母相と添加材相の体積分率を示し、FmおよびFfはそれぞれ母相のみ及び添加材相のみから得たラマンシフトを示す。一方、検量線を直線近似した場合、FmおよびFfは、それぞれ、「Fm=χmP+C1」及び「Ff=χfP+C2」となる。ここで、「C1」は、図9の検量線におけるy軸切片(620)である。また、「C2」は、図10の検量線におけるy軸切片(618)である。また、χmおよびχfはそれぞれ母相と添加材相の圧力感受率(勾配)であり、グラフ中から直線近似して求められる。したがって、上記Fcomp、Fm及びFfの式より、FcompとPの関係が導かれる。以上より、測定したFcompのヒストグラム、が応力分布図(圧電/電歪セラミックス焼結体の応力の状態)に書き換えられ、更に、測定したFcompの平面分布が、応力等高線図(圧電/電歪セラミックス焼結体全体における応力の状態)等に書き換えられる。
【0040】
(圧電/電歪セラミックス焼結体)
[{Li0.06(K0.45Na0.55)0.94}0.9995Bi0.0005]1.01(Nb0.878Ta0.082Sb0.040)O3+0.05モル%Mnの組成からなる仮焼/粉砕粉(母相原料粉末、粒径:0.2〜0.5μm)と、[{Li0.06(K0.45Na0.55)0.94}0.9995Bi0.0005]1.00(Nb0.918Ta0.082)O3+0.05モル%Mnの組成からなる添加材相原料粉末(粒径:1〜5μm)とをそれぞれ用意した。母相と添加材相をコンポジット化した焼結体(圧電/電歪セラミックス焼結体)の全体(ただし、気孔部を除く)に対する、添加材相の体積分率が、20体積%となるように母相原料粉末と添加材相原料粉末を混合した後、ペレット状に成形し、ペレット状試料を得た。ペレット状試料を大気中、500〜1000℃/時間の速度で1000〜1100℃まで昇温し、1〜2分間保持した後、300〜2000℃/時間の速度で850〜990℃まで冷却し、更に1〜15時間保持した後、室温まで冷却して圧電/電歪セラミックス焼結体を得た。得られた焼結体の相対密度は94〜95%であった。
【0041】
得られたペレット状の圧電/電歪セラミックス焼結体を成形加工して、短冊状試料(12mm×3mm×1mm)を得た。そして、短冊状試料について、大気中、600〜900℃で1時間熱処理して、加工応力を除去した。ここで得られた短冊状の圧電/電歪セラミックス焼結体を、分極前の圧電/電歪セラミックス焼結体として、ラマン分光分析に用いた。
【0042】
また、分極していない状態でラマン分光分析を行った圧電/電歪セラミックス焼結体について、25℃に保持したシリコンオイル中で5kV/mmの電圧で15分間分極処理を行い、「分極された圧電/電歪セラミックス焼結体」を得た。
【0043】
(ラマン分光分析)
励起波長514.5nmのレーザーを搭載したラマン分光分析装置を用いて、短冊状試料(圧電/電歪セラミックス焼結体)についてラマン分光分析を行った。短冊状試料は、加工歪を除去するため、分析前に試料の断面を、Arイオンを用いたCP法(Cross−Section Polishing)により研磨した。また、ラマン分光分析装置のレーザー径を約1μmとした。なお、測定温度は室温とした。また、測定された波数シフトを頻度分布処理したものをラマン分光分析の結果とした。
【0044】
(検量線)
圧電/電歪セラミックス焼結体を構成する母相と同じ材質の圧電/電歪セラミックス焼結体、及び圧電/電歪セラミックス焼結体を構成する添加材相と同じ材質の圧電/電歪セラミックス焼結体のそれぞれについて、図4に示すようなダイヤモンドアンビルセル21内で圧力(応力)を変化させながらラマン分光分析を行い、母相及び添加材相のそれぞれについての、「波数シフト」と「応力」との関係を示す検量線を作成した。検量線を作成する際に変化させる圧力(応力)の範囲は、0〜4GPaとした。得られた検量線を図9、図10に示す。図9は、母相の検量線を示すグラフである。図10は、添加材相の検量線を示すグラフである。
【0045】
(実施例2)
各ラマン分光分析を行う際に、ラマン分光分析装置のレーザー径を約0.4μmとし、ラマン分光分析を行う面を複数箇所に区分けし、区分けされた箇所毎にラマン分光分析を行った(スペクトル波数のマッピング分析)を行った以外は、実施例1と同様にして、圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態の測定を行った。各「区分けされた箇所」は、0.4μm×0.4μmの正方形(XY走査ステップ幅:0.4μm)とした。結果を図11、図12に示す。図11は、分極された圧電/電歪セラミックス焼結体の、分極方向のラマン分光分析の結果を示す拡大写真である。図12は、分極されていない圧電/電歪セラミックス焼結体の、分極方向のラマン分光分析の結果を示す拡大写真である。図11、図12において、色が濃いほど、応力が強くかかっていることを示す。そして、応力が強くかかっている位置に添加材相が配置されている。
【0046】
従って、図11に示される応力の分散状態より、分極された圧電/電歪セラミックス焼結体の添加材相の分散状態を確認することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法は、圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態の測定に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1:母相、2:添加材相、11:予定分極方向、12:分極方向、13,14,15,16:レーザー光、21:ダイヤモンドアンビルセル、22:ダイヤモンド、23:ガスケット、24:空間、25:試料、31:レーザー光の照射面、32:区分けされた箇所、100:圧電/電歪セラミックス焼結体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
母相と前記母相中に分散された添加材相との複合構造を有する圧電/電歪セラミックス焼結体について、分極していない状態で、予定分極方向及び前記予定分極方向に直交する方向の2方向からラマン分光分析を行い、
前記予定分極方向を分極方向として分極された圧電/電歪セラミックス焼結体について、前記分極方向及び前記分極方向に直交する方向の2方向からラマン分光分析を行い、
前記分極していない圧電/電歪セラミックス焼結体についての前記2方向からの前記ラマン分光分析の結果と、前記分極された圧電/電歪セラミックス焼結体についての前記2方向からの前記ラマン分光分析の結果とから、前記圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態を得る圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法。
【請求項2】
それぞれの前記ラマン分光分析において、測定された波数シフトを統計処理したものをそれぞれの前記ラマン分光分析の結果とする請求項1に記載の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法。
【請求項3】
前記母相及び前記添加材相のそれぞれについて、ダイヤモンドアンビルセル内で圧力を変化させながらラマン分光分析を行い、前記母相及び前記添加材相のそれぞれについての、波数シフトと応力との関係を示す検量線を作成し、
前記検量線と、それぞれの前記圧電/電歪セラミックス焼結体のラマン分光分析の結果とから、前記圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態を得る請求項1又は2に記載の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法。
【請求項4】
それぞれの前記圧電/電歪セラミックス焼結体のラマン分光分析を行う際に、前記圧電/電歪セラミックス焼結体におけるラマン分光分析を行う面を、複数箇所に区分けし、前記区分けされた箇所毎にラマン分光分析を行い、
前記圧電/電歪セラミックス焼結体の前記ラマン分光分析を行った面における応力の分布を得る請求項1〜3のいずれかに記載の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法。
【請求項1】
母相と前記母相中に分散された添加材相との複合構造を有する圧電/電歪セラミックス焼結体について、分極していない状態で、予定分極方向及び前記予定分極方向に直交する方向の2方向からラマン分光分析を行い、
前記予定分極方向を分極方向として分極された圧電/電歪セラミックス焼結体について、前記分極方向及び前記分極方向に直交する方向の2方向からラマン分光分析を行い、
前記分極していない圧電/電歪セラミックス焼結体についての前記2方向からの前記ラマン分光分析の結果と、前記分極された圧電/電歪セラミックス焼結体についての前記2方向からの前記ラマン分光分析の結果とから、前記圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態を得る圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法。
【請求項2】
それぞれの前記ラマン分光分析において、測定された波数シフトを統計処理したものをそれぞれの前記ラマン分光分析の結果とする請求項1に記載の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法。
【請求項3】
前記母相及び前記添加材相のそれぞれについて、ダイヤモンドアンビルセル内で圧力を変化させながらラマン分光分析を行い、前記母相及び前記添加材相のそれぞれについての、波数シフトと応力との関係を示す検量線を作成し、
前記検量線と、それぞれの前記圧電/電歪セラミックス焼結体のラマン分光分析の結果とから、前記圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態を得る請求項1又は2に記載の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法。
【請求項4】
それぞれの前記圧電/電歪セラミックス焼結体のラマン分光分析を行う際に、前記圧電/電歪セラミックス焼結体におけるラマン分光分析を行う面を、複数箇所に区分けし、前記区分けされた箇所毎にラマン分光分析を行い、
前記圧電/電歪セラミックス焼結体の前記ラマン分光分析を行った面における応力の分布を得る請求項1〜3のいずれかに記載の圧電/電歪セラミックス焼結体の応力状態測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−198126(P2012−198126A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62855(P2011−62855)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【Fターム(参考)】
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